説明

電子部品

【課題】素子を大型化させることなく、インダクタンス値を増加させることができる電子部品を提供する。
【解決手段】磁性体シート12は、長方形をなし、辺L1〜L4を有している。線状導体14は、階段形状をなし、かつ、磁性体シート12上において辺L1に対して斜め方向に向かって進行している。磁性体シート12は、同一平面内を辺L1が周回するように、コア16に対して巻き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、コイルを含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品として、例えば、特許文献1に記載の電子部品が知られている。以下に、該電子部品について図面を参照しながら説明する。図8(a)は、特許文献1に記載の電子部品に用いられるシート100及び導体パターン102を示した図であり、図8(b)は、セラミックグリーンコア104にシート100が巻きつけられた状態を示した図である。
【0003】
シート100は、セラミックグリーン体よりなり、図8(a)に示すように、長方形状をなしている。導体パターン102は、シート100の対角線上を延在する直線状の線状導体である。そして、シート100は、図8(b)に示すように、直方体状のセラミックグリーンコア104に巻きつけられる。これにより、導体パターン102は、螺旋状のコイルを構成するようになる。更に、シート100が巻きつけられたセラミックグリーンコア104の両端には、図示しない外部電極が形成される。以上で、特許文献1に記載の電子部品が完成する。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電子部品では、コイルのターン数を多くして、コイルのインダクタンス値を大きくするためには、導体パターン102の長さを長くする必要がある。その結果、シート100の長辺が長くなり、シート100が巻きつけられて得られる電子部品の径も大きくなってしまう。すなわち、電子部品が大型化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−190382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、素子を大型化させることなく、インダクタンス値を増加させることができる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る電子部品は、第1の辺を有する絶縁性シートと、階段形状をなし、かつ、前記絶縁性シート上において前記第1の辺に対して斜め方向に向かって進行している線状導体と、を備え、前記絶縁性シートは、同一平面内を前記第1の辺が周回するように巻かれていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、素子を大型化させることなく、インダクタンス値を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】図1の電子部品の分解図である。
【図3】図1の電子部品の製造過程における外観斜視図である。
【図4】シミュレーション結果を示したグラフである。
【図5】第1の変形例に係る磁性体シート及び線状導体を示した図である。
【図6】第2の変形例に係る磁性体シート及び線状導体を示した図である。
【図7】第3の変形例に係る磁性体シート及び線状導体を示した図である。
【図8】図8(a)は、特許文献1に記載の電子部品に用いられるシート及び導体パターンを示した図であり、図8(b)は、セラミックグリーンコアにシートが巻きつけられた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図1は、該電子部品10の外観斜視図である。図2は、該電子部品10の分解図である。図3は、電子部品10の製造過程における外観斜視図である。なお、図1及び図3における点線は、磁性体シート12によって隠れている線状導体14を示している。
【0011】
図1に示すように、電子部品10は、磁性体シート12、線状導体14、コア16及び外部電極18a,18bを備えている。コア16は、磁性体材料(例えば、マンガン亜鉛フェライト)からなる円柱形状の中実の棒状部材である。
【0012】
磁性体シート12は、磁性体材料(例えば、ニッケル亜鉛フェライト)からなり、図2に示すように、長方形状の絶縁体層である。より詳細には、磁性体シート12は、図2に示すように、辺L1〜L4を有している。辺L1,L2は、互いに平行であり、長方形の長辺を構成している。辺L3,L4は、互いに平行であり、長方形の短辺を構成している。辺L3,L4は、コア16の高さと等しい長さを有している。そして、磁性体シート12は、図1に示すように、コア16に対して巻きつけられる。
【0013】
線状導体14は、例えばAg等からなる配線であり、コイルLを構成しており、図2に示すように、磁性体シート12の主面上に設けられている。線状導体14は、図2に示すように、引き出し部20a,20b、周回部22a〜22e及び接続部24a〜24dを有している。
【0014】
周回部22a〜22eは、辺L1,L2に平行な直線をなしており、辺L3から辺L4に向かう方向において、この順に並んでいる。また、周回部22a〜22eは、辺L1から辺L2に向かう方向において、この順に並んでいる。
【0015】
接続部24a〜24dはそれぞれ、辺L1から辺L2へと向かう方向に延在する直線をなしている。ただし、接続部24a〜24dは、辺L1,L2に対して垂直な方向から少し傾いている。そして、接続部24a〜24dは、周回部22a〜22eを接続している。具体的には、接続部24aは、周回部22a,22bを接続している。接続部24bは、周回部22b,22cを接続している。接続部24cは、周回部22c,22dを接続している。接続部24dは、周回部22d,22eを接続している。
【0016】
引き出し部20aは、線状導体14の端部を構成しており、図2に示すように、周回部22aに接続されていると共に、磁性体シート12の辺L1に引き出されている。引き出し部20bは、線状導体14の端部を構成しており、図2に示すように、周回部22eに接続されていると共に、磁性体シート12の辺L2に引き出されている。
【0017】
以上のような引き出し部20a,20b、周回部22a〜22e及び接続部24a〜24dにより、線状導体14は、引き出し部20a,20bのそれぞれにおいて磁性体シート12の辺L1,L2に接していると共に、辺L1に対して斜め方向に向かって進行している階段形状をなすようになる。
【0018】
以上のように構成された磁性体シート12は、引き出し部20aが引き出し部20bより内側に位置すると共に、線状導体14が設けられている主面が内側を向き、かつ、コア16の底面により構成される平面内を辺L1が渦巻状に周回するように、コア16に対して巻き付けられる。より詳細には、図2に示すように、辺L3がコア16の延在している方向と平行となるように、磁性体シート12をコア16に対して貼り付ける。この際、線状導体14が設けられている主面はコア16と対向し、引き出し部20aはコア16と接している。そして、辺L1とコア16の底面とが一致した状態を保ってコア16の周囲に磁性体シート12を巻きつける。その結果、図3に示すように、コア16及び磁性体シート12からなる中間体は、円柱形状を有している。
【0019】
外部電極18aは、図1に示すように、コア16の底面に設けられ、引き出し部20aと接続されている。具体的には、引き出し部20aは、図2に示すように、辺L1に接している。よって、磁性体シート12がコア16に巻きつけられたとしても、引き出し部20aは、図3の状態において、磁性体シート12の隙間から外部に露出している。よって、引き出し部20aが外部に露出した部分と外部電極18aとが接触することにより、外部電極18aと引き出し部20aとが接続されている。
【0020】
外部電極18bは、図1に示すように、コア16の上面に設けられ、引き出し部20bと接続されている。具体的には、引き出し部20bは、図2に示すように、辺L2に接している。よって、磁性体シート12がコア16に巻きつけられたとしても、引き出し部20bは、図3の状態において、磁性体シート12の隙間から外部に露出している。よって、引き出し部20bが外部に露出した部分と外部電極18bとが接触することにより、外部電極18bと引き出し部20bとが接続されている。
【0021】
以上のような構成を有する電子部品10では、階段形状の線状導体14が設けられた磁性体シート12がコア16に対して巻きつけられている。このとき、周回部22a〜22eはそれぞれ、図1に示すように、コア16の周囲を渦巻状に1周以上周回している。具体的には、周回部22aは、コア16の周囲を1.5周している。周回部22b〜22eはそれぞれ、コア16の周囲を2周している。
【0022】
また、周回部22a〜22eは、辺L3から辺L4に向かう方向において、この順に並んでいる。そのため、図1に示すように、周回部22a〜22eの周回半径は、この順に大きくなっていく。
【0023】
更に、周回部22a〜22eは、辺L1から辺L2に向かう方向において、この順に並んでいる。そのため、図1に示すように、周回部22a〜22eは、この順にコア16の底面から上面へと向かう方向に並んでいる。そして、周回部22a〜22eは、接続部24a〜24dにより接続されている。これにより、外部電極18a,18b間において、図1に示すような、螺旋状のコイルLが構成されている。
【0024】
電子部品10が回路基板に実装される際には、回路基板に設けられたランド上に外部電極18aがはんだ付けされる。そして、外部電極18bが、回路基板上の別のランドに対してワイヤボンディング等により接続される。
【0025】
(製造方法)
以上のように構成された電子部品10の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
まず、図2に示すような円柱状のコア16を準備する。次に、大判のセラミックグリーンシートを金型により打ち抜くことにより、磁性体シート12となるべきセラミックグリーンシートを得る。
【0027】
次に、図2に示すように、磁性体シート12となるべきセラミックグリーンシートに対して、スクリーン印刷等によりAgペースト等を塗布して、線状導体14を形成する。
【0028】
次に、図2に示すように、磁性体シート12となるべきセラミックグリーンシートの線状導体14が設けられた主面をコア16に対向させる。そして、磁性体シート12となるべきセラミックグリーンシートの辺L3付近をコア16に対して貼り付ける。この後、磁性体シート12となるべきセラミックグリーンシートをコア16に巻き付ける。これにより、図3に示すような未焼成の中間体が得られる。
【0029】
次に、図3に示す中間体を袋に入れ、静水圧によりプレスを行って、磁性体シート12となるべきセラミックグリーンシートの圧着を行う。更に、図3に示す中間体に対して、脱脂及び焼成を施して、焼成された中間体を得る。
【0030】
次に、浸漬法等により、中間体の底面及び上面に、外部電極18a,18bとなるべき銀電極を形成する。その後、該銀電極の表面にNi−Snめっきを施すことにより、外部電極18a,18bを形成する。以上の工程を経て、図1に示す電子部品10が完成する。
【0031】
(効果)
以上のように構成された電子部品10は、以下に説明するように、素子を大型化することなく、インダクタンスを増加させることができる。より詳細には、線状導体14は、階段形状を有している。そのため、電子部品10では、直線の導体パターン102を有する図8の電子部品に比べて、同じサイズの磁性体シート12に対して、より長い線状導体14を形成することができる。そのため、線状導体14により構成されるコイルLのターン数は、図8の導体パターン102により構成されるコイルのターン数に比べて多くなる。よって、電子部品10では、素子を大型化することなくインダクタンス値を増加させることが可能である。
【0032】
特に、電子部品10では、周回部22a〜22eはそれぞれ、コア16の周囲を1周以上している。よって、コイルLは、図8の電子部品のようなコイルに比べて、より多くのターン数を有するようになる。そのため、電子部品10では、より効果的にインダクタンス値を大きくすることができる。
【0033】
また、電子部品10では、周回部22a〜22eの周回半径は、それぞれ異なっている。そのため、周回部22a〜22eのそれぞれにおける自己共振周波数は異なっている。その結果、周回部22a〜22eからなるコイルLは、複数の自己共振周波数を有するようになり、広帯域にわたって使用可能である。
【0034】
更に、電子部品10では、周回部22a〜22eはそれぞれ、コア16の周囲を1周以上しているので、複数の自己共振周波数を有する。そのため、電子部品10は、周回部がそれぞれコアの周囲を1周している電子部品に比べて、より広帯域にわたって使用可能である。
【0035】
また、電子部品10では、磁性体シート12は、線状導体14が設けられた主面が内側を向いた状態でコア16に対して巻きつけられている。これにより、線状導体14は、電子部品10の表面に露出することがなくなる。そのため、電子部品10が回路基板に実装される際に、外部電極18a,18bに付与されたはんだが、線状導体14に付着することがない。その結果、外部電極18a,18bと線状導体14とが短絡することが防止される。
【0036】
ここで、本願発明者は、電子部品10が奏する作用効果を明らかにするために、以下に説明するコンピュータシミュレーションを行った。具体的には、電子部品10の実施例として、図1に示す第1のモデルを作成した。また、比較例として、図2の線状導体14を直線の線状電極に置き換えた第2のモデルを作成した。そして、第1のモデル及び第2のモデルにおいて、周波数とインピーダンスとの関係を計算した。図4は、シミュレーション結果を示したグラフである。縦軸はインピーダンスを示し、横軸は周波数を示す。
【0037】
図4に示すグラフによれば、第1のモデルの方が第2のモデルよりもインピーダンスが大きくなっていることが分かる。これは、第1のモデルの方が第2のモデルよりもインダクタンス値が大きくなっていることを示している。よって、本シミュレーションによれば、電子部品10は、大きなインダクタンス値を得ることができていることが分かる。
【0038】
更に、図4に示すグラフによれば、第1のモデルの方が第2のモデルよりも大きなインピーダンスを得られている周波数帯域が広いことが分かる。したがって、本シミュレーションによれば、電子部品10は、広帯域にわたって使用可能であることが分かる。
【0039】
(変形例)
本発明に係る電子部品は、前記電子部品10に限らない。よって、電子部品10は、その要旨の範囲内において変形されてもよい。
【0040】
図5は、第1の変形例に係る磁性体シート12a及び線状導体14aを示した図である。図5に示す線状導体14aでは、接続部24a〜24dは、辺L3,L4と平行な方向に延在している。これにより、図5に示す周回部22a〜22eは、図2に示す周回部22a〜22eよりも長くなる。その結果、図5に示す線状導体14aが用いられた場合には、図1に示す線状導体14が用いられた場合に比べて、電子部品10においてより大きなインダクタンス値を得ることができる。
【0041】
図6は、第2の変形例に係る磁性体シート12b及び線状導体14bを示した図である。図6に示すように、周回部22a〜22eは、辺L1,L2に対して僅かに傾斜していてもよい。また、図7は、第3の変形例に係る磁性体シート12c及び線状導体14cを示した図である。図7に示すように、接続部24a〜24dは、曲線であってもよい。すなわち、図6及び図7に示す線状導体14b,14cも、図2に示す線状導体14と同様に、階段形状を有しているものとする。
【0042】
なお、電子部品10では、コア16を用いているが、該コア16は必ずしも必要なものではない。コア16の代わりに、磁性体シート12,12a〜12cが中心から巻かれていてもよい。また、電子部品10において、大きなインダクタンス値が要求されない場合には、コア16を取り外してもよい。
【0043】
なお、磁性体シート12,12a〜12cは、長方形状でなくてもよい。したがって、磁性体シート12,12a〜12cは、辺L1を底辺とする直角三角形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電子部品に有用であり、特に、素子を大型化させることなく、インダクタンス値を増加させることができる点において優れている。
【符号の説明】
【0045】
L コイル
L1〜L4 辺
10 電子部品
12,12a,12b,12c 磁性体シート
14,14a,14b,14c 線状導体
16 コア
18a,18b 外部電極
20a,20b 引き出し部
22a〜22e 周回部
24a〜24d 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の辺を有する絶縁性シートと、
階段形状をなし、かつ、前記絶縁性シート上において前記第1の辺に対して斜め方向に向かって進行している線状導体と、
を備え、
前記絶縁性シートは、同一平面内を前記第1の辺が周回するように巻かれていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記絶縁性シートは、前記線状導体が設けられている主面が内側を向くように巻かれていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記絶縁性シートは、前記第1の辺に平行な第2の辺を有し、
前記線状導体は、前記第1の辺に接している第1の端部、及び、前記第2の辺に接している第2の端部を有していること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記絶縁性シートは、長方形状をなしていること、
を特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の端部に接続されている第1の外部電極と、
前記第2の端部に接続されている第2の外部電極と、
を更に備えていること、
を特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
磁性体材料からなる円柱形状のコアを、
更に備え、
前記絶縁性シートは、前記コアに対して巻きつけられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁性シートは、磁性体材料により構成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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