説明

電子部品

【課題】接続導体にクラックが発生すること及び外部電極の形成不良が発生することを低減できると共に、製造コストを低く抑えることができる電子部品を提供することである。
【解決手段】積層体12は、絶縁体層16が積層されてなる。コイルLは、積層体12に内蔵されている。外部電極は、積層体12の上面及び下面に設けられている。接続部C1,C2は、コイルLと2つの外部電極とを接続している。接続部C1,C2は、250μmより短い長さを有し、かつ、z軸方向に延在している複数のビアホール導体V1,Va〜Vd,V14と、複数のビアホール導体V1,Va〜Vd,V14を接続し、かつ、絶縁体層16上に設けられている接続導体層20,22と、を含んでいる。ビアホール導体Va〜Vdは、複数の絶縁体層16を貫通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、絶縁体層が積層されてなる積層体を備えている電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の電子部品が知られている。以下に、特許文献1に記載の電子部品について図面を参照しながら説明する。図5は、特許文献1に記載の電子部品500,600の断面構造図である。
【0003】
特許文献1には、図5(a)に示す電子部品500が記載されている。電子部品500は、積層体502、外部電極504(504a,504b)、ビアホール導体506(506a〜506d)、接続導体508(508a,508b)及びコイルLを備えている。積層体502は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている。外部電極504a,504bはそれぞれ、積層方向の両端に位置する面に設けられており、外部電極550a,550bに接続されている。コイルLは、積層体502内に内蔵されている。ビアホール導体506a,506b及び接続導体508aは、コイルLと外部電極504aとを接続している。また、ビアホール導体506c,506d及び接続導体508bは、コイルLと外部電極504bとを接続している。
【0004】
ここで、ビアホール導体506aは、積層体502の上下方向の上側において積層方向に延在している。一方、ビアホール導体506bは、積層体502の上下方向の中央において積層方向に延在している。そして、接続導体508aは、ビアホール導体506a,506bを接続している。同様に、ビアホール導体506cは、積層体502の上下方向の下側において積層方向に延在している。一方、ビアホール導体506dは、積層体502の上下方向の中央において積層方向に延在している。そして、接続導体508bは、ビアホール導体506c,506dを接続している。
【0005】
以上のような電子部品500では、ビアホール導体506b,506dが積層体502の上下方向の中央において積層方向に延在している。そのため、電子部品500の実装方向が変化したとしても、ビアホール導体506b,506dと外部電極550a,550bとの間の距離が変化しない。よって、電子部品500の実装方向によって、インダクタンス値が変化することが抑制される。
【0006】
しかしながら、電子部品500では、接続導体508においてクラックが発生するおそれ、及び、外部電極504a,504bの形成不良が発生するおそれがある。より詳細には、電子部品500では、積層方向に延在する比較的に長いビアホール導体506a〜506dが設けられている。ビアホール導体506は、一般的に銀を主成分とする導電性材料により作製され、積層体502を構成する絶縁体層は、一般的に磁性材料により作製される。そのため、焼成時におけるビアホール導体506の収縮率と積層体502の収縮率とは異なる。具体的には、焼成時に、積層体502は、ビアホール導体506よりも大きく収縮する。そのため、ビアホール導体506a,506bと接続導体508aとの接続部分A,B、及び、ビアホール導体506c,506dと接続導体508bとの接続部分C,Dにおいて、ビアホール導体506a〜506dが、接続導体508a,508bを突き破ってしまうおそれがある。その結果、電子部品500の接続導体508においてクラックが発生するおそれがある。また、ビアホール導体506b,506dの端部E,Fが、積層体502の表面から大きく突出するおそれがある。その結果、外部電極504a,504bの形成不良が発生するおそれがある。
【0007】
また、特許文献1には、図5(b)に示す電子部品600も記載されている。電子部品600は、積層体602、外部電極604(604a,604b)、接続部606(606a,606b)及びコイルLを備えている。積層体602は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている。外部電極604a,604bはそれぞれ、積層方向の両端に位置する面に設けられており、外部電極650a,650bに接続されている。コイルLは、積層体602内に内蔵されている。接続部606a,606bはそれぞれ、コイルLと外部電極604a,604bとを接続している。
【0008】
ここで、接続部606a,606bは、1層の絶縁体層を積層方向に貫通するビアホール導体と該絶縁体層に設けられている接続導体とが交互に接続されることにより、階段状をなしている。ただし、接続部606aは、段差が小さいために、図5(b)に示すように、積層体602の上下方向の上側から積層体602の上下方向の中央部へと斜め方向に延在しているように見える。同様に、接続部606bは、段差が小さいために、図5(b)に示すように、積層体602の上下方向の下側から積層体602の上下方向の中央部へと斜め方向に延在しているように見える。
【0009】
以上のような電子部品600では、ビアホール導体が1層の絶縁体層の厚み分の長さしか有していない。そのため、焼成時に積層体602及びビアホール導体に収縮が発生したとしても、ビアホール導体が、接続導体を突き破る可能性が低い。よって、電子部品600では、電子部品500に比べて、接続導体にクラックが発生する可能性が低い。同様に、電子部品600では、電子部品500に比べて、ビアホール導体の端部が、積層体602の表面から突出する量が少ない。よって、電子部品600では、電子部品500に比べて、外部電極604a,604bの形成不良が発生しにくい。
【0010】
しかしながら、電子部品600は、以下に説明するように、製造コストが高くつくという問題を有する。より詳細には、電子部品600では、階段状の接続部606a,606bを形成するために、複数の絶縁体層毎に異なる位置にビアホール導体及び接続導体を形成する必要がある。その結果、絶縁体層の種類が多くなってしまい、製造コストが増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−260644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の目的は、接続導体にクラックが発生すること及び外部電極の形成不良が発生することを低減できると共に、製造コストを低く抑えることができる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態に係る電子部品は、絶縁体層が積層されてなる積層体と、前記積層体に内蔵されている回路素子と、前記積層体の表面に設けられている外部電極と、前記回路素子と前記外部電極とを接続している接続部と、を備え、前記接続部は、250μmより短い長さを有し、かつ、積層方向に延在している複数のビアホール導体と、前記複数のビアホール導体を接続し、かつ、前記絶縁体層上に設けられている接続導体層と、を含み、少なくとも一部の前記ビアホール導体は、複数の前記絶縁体層を貫通していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続導体にクラックが発生すること及び外部電極の形成不良が発生することを低減できると共に、製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】図1の電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】図1の電子部品をy軸方向から透視した図である。
【図4】実験に用いた第1のサンプルないし第6のサンプルの透視図である。
【図5】特許文献1に記載の電子部品の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品について説明する。
【0017】
(電子部品の構成)
本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、図1の電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、図1の電子部品10をy軸方向から透視した図である。以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義する。また、z軸方向から平面視したときに、電子部品10の横方向の辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10の縦方向の辺に沿った方向をy軸方向と定義する。
【0018】
電子部品10は、図1ないし図3に示すように、積層体12、外部電極14(14a,14b)、接続部C1,C2(図2及び図3参照)及びコイル(回路素子)L(図2及び図3参照)を備えている。積層体12は、直方体状をなしている。外部電極14aは、z軸方向の正方向側に位置する積層体12の上面(表面)に設けられている。外部電極14bは、z軸方向の負方向側に位置する積層体12の下面(表面)に設けられている。すなわち、外部電極14a,14bは、積層体12の互いに対向する上面及び下面に設けられている。
【0019】
積層体12は、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16n)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されてなる。絶縁体層16は、磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなり、長方形状をなしている。なお、絶縁体層16は磁性体材料に限らず、非磁性体材料であってもよいし、非磁性体材料と磁性体材料の混合物であってもよい。また、以下では、絶縁体層16の正方向側の主面を表面と称し、絶縁体層16の負方向側の主面を裏面と称す。
【0020】
コイルLは、図2及び図3に示すように、積層体12に内蔵されており、コイル導体層(導体層)18(18a〜18d)及びビアホール導体V6〜V8により構成されている。より詳細には、コイルLは、コイル導体層18a〜18d及びビアホール導体V6〜V8が接続されることにより構成されており、z軸方向と平行なコイル軸を有する螺旋状のコイルである。
【0021】
コイル導体層18a〜18dはそれぞれ、絶縁体層16f〜16iの表面上に設けられている。コイル導体層18はそれぞれ、互いに重なり合うことにより長方形状の環状の軌道を形成しており、3/4ターンのターン数を有している線状導体である。すなわち、コイル導体層18は、前記軌道の1/4ターン分が切り欠かれた形状をなしている。以下では、コイル導体層18において、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りの上流側の端部を上流端とし、時計回りの下流側の端部を下流端とする。なお、コイル導体層18のターン数は、3/4ターンに限らない。よって、コイル導体層18のターン数は、例えば、1/2ターンであってもよいし、7/8ターンであってもよい。
【0022】
ビアホール導体V6〜V8は、絶縁体層16f〜16hをz軸方向に貫通するように設けられており、z軸方向に隣り合っているコイル導体層18同士を接続している。具体的には、ビアホール導体V6は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通し、コイル導体層18aの下流端及びコイル導体層18bの上流端に接続されている。ビアホール導体V7は、絶縁体層16gをz軸方向に貫通し、コイル導体層18bの下流端及びコイル導体層18cの上流端に接続されている。ビアホール導体V8は、絶縁体層16hをz軸方向に貫通し、コイル導体層18cの下流端及びコイル導体層18dの上流端に接続されている。
【0023】
接続部C1は、図1及び図2に示すように、コイルLのz軸方向の正方向側の端部(すなわち、コイル導体層18aの上流端)と外部電極14aとを接続しており、接続導体層20(20a〜20e)及びビアホール導体V1〜V5により構成されている。
【0024】
ビアホール導体V1〜V5はそれぞれ、図2及び図3に示すように、z軸方向に延在しており、絶縁体層16a〜16eをz軸方向に貫通している。より詳細には、ビアホール導体V1は、x軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する絶縁体層16aの角近傍に設けられている。ビアホール導体V1は、外部電極14aに接続されている。ビアホール導体V2,V3は、絶縁体層16b,16cの対角線の交点に設けられている。ビアホール導体V2,V3は、z軸方向から平面視したときに、互いに重なり合っており、1本のビアホール導体Vaを構成している。よって、ビアホール導体Vaは、複数の絶縁体層16b,16cを貫通している。ビアホール導体V4,V5は、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16d,16eの角近傍に設けられている。ビアホール導体V4,V5は、z軸方向から平面視したときに、互いに重なり合っており、1本のビアホール導体Vbを構成している。よって、ビアホール導体Vbは、複数の絶縁体層16d,16eを貫通している。以上のように、ビアホール導体V1,Va,Vbは、z軸方向から平面視したときに、重なり合っていない。更に、ビアホール導体V1,Va,Vbの内、少なくとも一部のビアホール導体Va,Vbは、複数の絶縁体層16を貫通している。
【0025】
接続導体層20a〜20cは、絶縁体層16a〜16cの表面上に設けられ、絶縁体層16a〜16cの対角線の交点からx軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する角に向かって延在する線状導体である。接続導体層20aは、x軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する絶縁体層16aの角近傍の端部においてビアホール導体V1と接続されている。接続導体層20bは、x軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する絶縁体層16bの角近傍の端部においてビアホール導体V1と接続されており、絶縁体層16bの対角線の交点近傍の端部においてビアホール導体Va(V2)と接続されている。すなわち、接続導体層20bは、z軸方向から平面視したときに、異なる位置に設けられているビアホール導体V1,Vaを接続している。接続導体層20cは、絶縁体層16bの対角線の交点近傍の端部においてビアホール導体Va(V2,V3)と接続されている。
【0026】
接続導体層20d,20eは、絶縁体層16d,16eの表面上に設けられ、絶縁体層16d,16eの対角線の交点からx軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する角に向かって延在する線状導体である。接続導体層20dは、絶縁体層16dの対角線の交点近傍の端部においてビアホール導体Va(V3)と接続され、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16dの角近傍の端部においてビアホール導体Vb(V4)と接続されている。すなわち、接続導体層20dは、z軸方向から平面視したときに、異なる位置に設けられているビアホール導体Va,Vbを接続している。接続導体層20eは、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16eの角近傍の端部においてビアホール導体Vb(V4,V5)と接続されている。
【0027】
また、ビアホール導体V1,Va,Vbは、z軸方向において、250μmより短い長さを有している。ただし、ビアホール導体V1,Va,Vbは、より好ましくは、z軸方向において、100μmより短い長さを有している。
【0028】
接続部C2は、図1及び図2に示すように、コイルLのz軸方向の負方向側の端部(すなわち、コイル導体層18dの下流端)と外部電極14bとを接続しており、接続導体層22(22a〜22e)及びビアホール導体V9〜V14により構成されている。
【0029】
ビアホール導体V9〜V14はそれぞれ、図2及び図3に示すように、z軸方向に延在しており、絶縁体層16i〜16nをz軸方向に貫通している。より詳細には、ビアホール導体V9〜V11は、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16i〜16kの角近傍に設けられている。ビアホール導体V9〜V11は、z軸方向から平面視したときに、互いに重なり合っており、1本のビアホール導体Vcを構成している。よって、ビアホール導体Vcは、複数の絶縁体層16i〜16kを貫通している。ビアホール導体V12,V13は、絶縁体層16l,16mの対角線の交点に設けられている。ビアホール導体V12,V13は、z軸方向から平面視したときに、互いに重なり合っており、1本のビアホール導体Vdを構成している。よって、ビアホール導体Vdは、複数の絶縁体層16l,16mを貫通している。ビアホール導体V14は、x軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する絶縁体層16nの角近傍に設けられている。ビアホール導体V14は、外部電極14bに接続されている。以上のように、ビアホール導体Vc,Vd,V14は、z軸方向から平面視したときに、重なり合っていない。更に、ビアホール導体Vc,Vd,V14の内、少なくとも一部のビアホール導体Vc,Vdは、複数の絶縁体層16を貫通している。
【0030】
接続導体層22a〜22dは、絶縁体層16j〜16mの表面上に設けられ、絶縁体層16j〜16mの対角線の交点からx軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する角に向かって延在する線状導体である。接続導体層22aは、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16jの角近傍の端部においてビアホール導体Vc(V9,V10)と接続されている。接続導体層22bは、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16kの角近傍の端部においてビアホール導体Vc(V10,V11)と接続されている。接続導体層22cは、x軸方向の正方向側であってかつy軸方向の負方向側に位置する絶縁体層16lの角近傍の端部においてビアホール導体Vc(V11)と接続されており、絶縁体層16lの対角線の交点近傍の端部においてビアホール導体Vd(V12)と接続されている。すなわち、接続導体層22cは、z軸方向から平面視したときに、異なる位置に設けられているビアホール導体Vc,Vdを接続している。接続導体層22dは、絶縁体層16mの対角線の交点近傍の端部においてビアホール導体Vd(V12,V13)と接続されている。
【0031】
接続導体層22eは、絶縁体層16nの表面上に設けられ、絶縁体層16nの対角線の交点からx軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する角に向かって延在する線状導体である。接続導体層22eは、絶縁体層16nの対角線の交点近傍の端部においてビアホール導体Vd(V13)と接続され、x軸方向の負方向側であってかつy軸方向の正方向側に位置する絶縁体層16nの角近傍の端部においてビアホール導体V14と接続されている。すなわち、接続導体層22eは、z軸方向から平面視したときに、異なる位置に設けられているビアホール導体Vd,V14を接続している。
【0032】
また、ビアホール導体Vc,Vd,V14は、z軸方向において、250μmより短い長さを有している。ただし、ビアホール導体Vc,Vd,V14は、より好ましくは、z軸方向において、100μmより短い長さを有している。
【0033】
更に、接続導体層20,22は、図2に示すように、ビアホール導体V1〜V14の直径D1の2倍以上の長さD2を有している。
【0034】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図2を参照しながら説明する。
【0035】
まず、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0036】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤と可塑剤、湿潤材及び分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。
【0037】
次に、絶縁体層16a〜16nとなるべきセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体V1〜V14を形成する。具体的には、絶縁体層16a〜16nとなるべきセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。更に、ビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料からなるペーストを印刷塗布などの方法により充填して、ビアホール導体V1〜V14を形成する。
【0038】
次に、絶縁体層16a〜16nとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法又はフォトリソグラフィ法で塗布することにより、接続導体層20a〜20e、コイル導体層18a〜18d及び接続導体層22a〜22eを形成する。導電性材料からなるペーストは、例えば、Agに、ワニス及び溶剤が加えられたものである。なお、接続導体層20a〜20e、コイル導体層18a〜18d及び接続導体層22a〜22eを形成する工程とビアホールに対して導電性材料からなるペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0039】
次に、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを積層して未焼成のマザー積層体を得る。具体的には、絶縁体層16a〜16nとなるべきセラミックグリーンシートを1枚ずつ積層及び仮圧着する。圧着条件は、100トン〜120トンの圧力及び3秒間から30秒間程度の時間である。この後、未焼成のマザー積層体に対して、静水圧プレスにて本圧着を施す。
【0040】
次に、マザー積層体をカット刃により所定寸法(2.5mm×2.0mm×1.2mm)の積層体12にカットする。これにより未焼成の積層体12が得られる。この未焼成の積層体12には、脱バインダー処理及び焼成がなされる。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において500℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、870℃〜900℃で2.5時間の条件で行う。
【0041】
以上の工程により、焼成された積層体12が得られる。積層体12には、バレル加工が施されて、面取りが行われる。その後、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12の表面に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。
【0042】
最後に、銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14を形成する。以上の工程を経て、図1に示すような電子部品10が完成する。
【0043】
(効果)
以上のような電子部品10によれば、接続導体層20,22にクラックが発生すること及び外部電極14a,14bの形成不良が発生することを低減できる。以下に、詳細に説明する。
【0044】
本願発明者は、接続導体層20,22にクラックが発生する条件、及び、外部電極14a,14bの形成不良が発生する条件を調べるために、以下に説明するサンプルを作製した。図4(a)ないし図4(f)は、実験に用いた第1のサンプルないし第6のサンプルの透視図である。第1のサンプルないし第3のサンプルは、比較例に係る電子部品のサンプルであり、第4のサンプルないし第6のサンプルは、本発明に係る電子部品10のサンプルである。以下に、実験条件を列挙する。
【0045】
チップサイズ:1.00mm×0.5mm×0.5mm
ビアホール導体の積層方向の長さ:各300μm
絶縁体層に用いたフェライトの収縮率:20%
導体層及びビアホール導体に使用した銀ペーストの収縮率:12%
焼成温度:900℃
【0046】
本願発明者は、第1のサンプルないし第6のサンプルにおいて、ビアホール導体の積層体からの突出量及び接続導体のクラックの発生率を調べた。表1は、実験結果を示した表である。
【0047】
【表1】

【0048】
ここで、外部電極の形成不良が発生したサンプルは、第1のサンプル及び第3のサンプルであった。一方、第2のサンプル及び第4のサンプルないし第6のサンプルには、外部電極の形成不良が発生しなかった。よって、ビアホール導体の突出量は、表1より、20μmより小さいことが望ましいことが分かる。すなわち、ビアホール導体の収縮量と該ビアホール導体層が貫通している絶縁体層の収縮量との差が20μmより小さいことが望ましいことが分かる。
【0049】
また、第2のサンプルのように、ビアホール導体の突出量が小さくても、積層体内に長いビアホール導体が設けられていると、接続部にクラックが発生することが分かる。これは、積層体内のビアホール導体の収縮量と該ビアホール導体が貫通している絶縁体層の収縮量の差が内部応力を発生させることが原因であるが、この場合にも、ビアホール導体の収縮量と該ビアホール導体層が貫通している絶縁体層の収縮量との差が20μmより小さいことが望ましいことが分かる。
【0050】
以上より、ビアホール導体の収縮量と該ビアホール導体が貫通している絶縁体層の収縮量との差が20μmよりも小さくなっていれば、外部電極の形成不良が発生すること、及び、接続部にクラックが発生することを低減できることが分かる。そこで、以下に、ビアホール導体の収縮量と該ビアホール導体が貫通している絶縁体層の収縮量との差が20μmよりも小さくなる条件について説明する。
【0051】
電子部品10の焼成時では、絶縁体層16の収縮率は、20%〜25%であり、ビアホール導体V1,Va〜Vd,V14の収縮率は、5%〜12%である。そして、絶縁体層16及びビアホール導体V1,Va〜Vd,V14として適切な材料が選択されると、絶縁体層16の収縮率とビアホール導体V1,Va〜Vd,V14の収縮率との差は、8%〜20%となる。
【0052】
まず、収縮率の差が8%である場合(例えば、絶縁体層16の収縮率が20%であり、ビアホール導体V1,Va〜Vd,V14の収縮率が12%である場合)について検討する。なお、一例として、ビアホール導体Vaとビアホール導体Vaが貫通している絶縁体層16b,16cとを用いて検討する。この場合、ビアホール導体Vaの収縮量と絶縁体層16b,16cの収縮量との差が20μmとなるのは、ビアホール導体Vaの長さ及び絶縁体層16b,16cの厚みが250μmのときである。よって、収縮率の差が8%である場合には、ビアホール導体Vaの長さは、250μmより短いことが望ましい。
【0053】
次に、収縮率の差が20%である場合(例えば、絶縁体層16の収縮率が25%であり、ビアホール導体V1,Va〜Vd,V14の収縮率が5%である場合)について検討する。なお、一例として、ビアホール導体Vaとビアホール導体Vaが貫通している絶縁体層16b,16cとを用いて検討する。この場合、ビアホール導体Vaの収縮量と絶縁体層16b,16cの収縮量との差が20μmとなるのは、ビアホール導体Vaの長さ及び絶縁体層16b,16cの厚みが100μmのときである。よって、収縮率の差が20%である場合には、ビアホール導体Vaの長さは、100μmより短いことが望ましい。
【0054】
以上より、ビアホール導体V1,Va〜Vd,V14の長さは、250μmより短いことが好ましく、より好ましくは、100μmより短いことが好ましい。これにより、接続導体層20,22にクラックが発生すること、及び、外部電極14a,14bの形成不良が発生することを低減できる。
【0055】
また、電子部品10によれば、以下に説明するように、製造コストを低く抑えることができる。より詳細には、特許文献1に記載の電子部品600は、階段状の接続部606a,606bを形成するために、複数の絶縁体層毎に異なる位置にビアホール導体及び接続導体を形成している。その結果、絶縁体層の種類が多くなってしまい、製造コストが増大していた。
【0056】
一方、電子部品10では、ビアホール導体Va〜Vdは、複数の絶縁体層16を貫通している。そのため、ビアホール導体Vaが貫通している絶縁体層16b,16cは同じ構造をとることができる。同様に、ビアホール導体Vbが貫通している絶縁体層16d,16eは同じ構造をとることができる。同様に、ビアホール導体Vcが貫通している絶縁体層16j,16kは同じ構造をとることができる。同様に、ビアホール導体Vdが貫通している絶縁体層16l,16mは同じ構造をとることができる。よって、電子部品10では、特許文献1に記載の電子部品600に比べて、絶縁体層16の種類を減らすことができ、製造コストを低くすることが可能である。
【0057】
また、電子部品10では、接続導体層20,22は、図2に示すように、ビアホール導体V1〜V14の直径D1の2倍以上の長さD2を有している。これにより、z軸方向から平面視したときに、ビアホール導体V1,Va〜Vd,V14がz軸方向に隣り合うもの同士で重なることが防止される。その結果、より効果的に、接続導体層20,22にクラックが発生することを低減できる。
【0058】
なお、電子部品10において、接続導体層20,22の形状は、図2に示した線状導体に限らない。よって、接続導体層20,22は、例えば、円形状や四角形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電子部品に有用であり、特に、接続導体にクラックが発生すること及び外部電極の形成不良が発生することを低減できると共に、製造コストを低く抑えることができる点において優れている。
【符号の説明】
【0060】
C1,C2 接続部
L コイル
V1〜V14,Va〜Vd ビアホール導体
10 電子部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
16a〜16n 絶縁体層
18a〜18d コイル導体層
20a〜20e,22a〜22e 接続導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体に内蔵されている回路素子と、
前記積層体の表面に設けられている外部電極と、
前記回路素子と前記外部電極とを接続している接続部と、
を備え、
前記接続部は、
250μmより短い長さを有し、かつ、積層方向に延在している複数のビアホール導体と、
前記複数のビアホール導体を接続し、かつ、前記絶縁体層上に設けられている接続導体層と、
を含み、
少なくとも一部の前記ビアホール導体は、複数の前記絶縁体層を貫通していること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記接続導体層は、前記ビアホール導体の直径の2倍以上の長さを有していること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記複数のビアホール導体は、積層方向から平面視したときに、重なり合っていないこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記複数のビアホール導体は、100μmより短い長さを有していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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