説明

電子部品

【課題】誘電体素体の電歪現象に起因して発生する音鳴りを抑制できる電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品は、誘電体と内部電極とが交互に積層された誘電体素体及び誘電体素体の対向する端面をそれぞれ別個に覆う一対の外部電極を有する素子と、外部電極の端面と電気的に接続される一対の接続端子と、を含み、一対の接続端子には、それぞれの外部電極から離れた位置で、外部電極と接続される側とは反対側の面にはんだ濡れ上がり防止層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装されるセラミックコンデンサ等の電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)又は携帯電話等の電子機器は、コンデンサ、インダクタ、バリスタ又はこれらを複合した複合部品が表面実装された回路基板を有する。このような構造により、前記電子機器は、高密度に電子部品を搭載して回路基板全体を小型化している。回路基板に搭載されるコンデンサとしては、例えば、セラミックコンデンサがある。
【0003】
セラミックコンデンサは、誘電体と内部電極とが交互に積層されている。誘電体を形成するセラミック材料には、誘電率が高いチタン酸バリウム等の強誘電体材料が用いられている。セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、誘電体を形成するセラミック材料は電歪現象を発生し、機械的な歪みを生じる。このため、交流電圧が印加されたセラミックコンデンサは振動する。この振動は、セラミックコンデンサが表面実装された回路基板にも伝達し、これを振動させる。その結果、セラミックコンデンサが表面実装された回路基板は、振動音を発生する(音鳴り)。このような、セラミックコンデンサの電歪現象に起因した回路基板の振動音、すなわち音鳴りを低減するため、コンデンサ素子の外部電極の側面に一対の金属端子を当接し、コンデンサ素子の下側に引き出して、回路基板へ接合する電子部品が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、両端部に端子電極が形成された、チップ状のセラミック電子部品本体と、U字状に折り曲げられた金属板をもって構成され、折り曲げ状態において外側に向く面を端子電極に対向させながら折り曲げにおける一方側部分が各端子電極に取り付けられ、折り曲げにおける他方側部分が基板への取付け側とされた、端子部材とを備え、端子部材の折り曲げ状態において内側に向く面には、半田になじまない半田非親和面が形成され、端子部材の折り曲げ状態において外側に向く面には、半田になじむ半田親和面が形成されている電子部品が知られている(例えば、特許文献2)。この電子部品では、半田になじまないようにするための処理は、好ましくは、樹脂を含む材料を金属板の表面に付与する処理と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−223357号公報
【特許文献2】特開平11−040454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された電子部品は、セラミックコンデンサと回路基板との間に空隙を設け、セラミックコンデンサで発生した振動が基板に伝播するのを抑制している。このように、特許文献1に記載された電子部品は、音鳴りを抑制できるが、近年においては、さらなる音鳴りの抑制が求められている。本発明は、誘電体の電歪現象に起因して発生する音鳴りを抑制できる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、セラミックコンデンサに代表される電子部品の外部電極の両端面を接続端子で挟持し、この外部電極を介して回路基板にセラミックコンデンサを実装する場合、外部電極のばね定数を小さくすることが有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子部品は、誘電体と内部電極とが交互に積層された誘電体素体及び前記誘電体素体の対向する端面をそれぞれ別個に覆う一対の外部電極を有する素子と、前記外部電極の端面と電気的に接続される脚部と、基板と電気的に接続される基板取付部とを有する一対の接続端子と、を含み、前記一対の接続端子は、はんだ濡れ上がり防止層が前記脚部の前記外部電極と接続される側とは反対側の面にそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構造により、本発明に係る電子部品は、接続端子と基板との間に介在するはんだがはんだ濡れ上がり防止層を超えて濡れ上がることがない。その結果、はんだによって形成されるフィレット形状の高さが制限される。このため接続端子の表面にはんだが付着するとばね定数Kが大きくなるのに対し、本発明に係る電子部品は、ばね定数Kを小さく保ったまま接続端子で電子部品を回路基板に実装できる。その結果、本発明に係る電子部品は、電歪現象に起因した音鳴りを効果的に抑制することができる。また、この電子部品は、はんだ濡れ上がりが抑制されるため、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記はんだ濡れ上がり防止層は、前記接続端子の基材の酸化層であることが好ましい。このような構造とすることで、基材層に形成する導電層よりもはんだとの濡れかたを小さくし、はんだ濡れ上がり防止層ではんだが堰き止められる。酸化層は、樹脂と比較してリフローでの加熱により剥離のおそれがない。また、樹脂が吸湿する場合は、樹脂からの湿気により基材が酸化するおそれがあるが、酸化層は一般に安定であり、高湿度環境下でも防錆効果がある。その結果、この電子部品は、リフロー工程での作業を容易とし、高湿度においても性能を発揮させることができる。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記基材層の表面には、前記はんだ濡れ上がり防止層以外に導電層が設けられることが好ましい。このような構造により、接続端子を外部電極にはんだ付けする場合、又は接続端子をランドにはんだ付けする場合に、はんだは低抵抗で電気的に接続する。その結果、この電子部品は、回路基板のランドと接続端子と外部電極とを確実に電気的に接続することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記接続端子は、前記外部電極の端面と接合する素子端面接合部及び前記基板と接続する前記基板取付部の基板接合部を有し、素子端面接合部と基板接合部との距離をHとし、前記はんだ濡れ上がり防止層と前記基板接合部との距離をhとすると、0<h/H≦0.6であることが好ましい。このような範囲であれば、はんだが接続端子の表面に濡れ上がる範囲が制限され、有効接続端子寸法を確保することができる。その結果、ばね定数Kを小さくできるため、接続端子は振動吸収作用を発揮しつつ、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記はんだ濡れ上がり防止層は、前記基板と接続する前記基板取付部の基板接合部と平行に形成されることが好ましい。はんだ濡れ上がりが一定の高さで抑制されるため、はんだ濡れ上がりのばらつきも抑制できる。その結果、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記一対の接続端子は、それぞれの前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端部が互いに対向するように曲げられることが好ましい。このようにすれば、脚部とつながっている基板取付部が素子の長手方向外側に張り出すことを抑制できるので、その分、電子部品の実装面積が大きくならずに、回路基板に対する実装密度を向上させることができる。このような構造の接続端子では、外部電極と接続される側とは反対側の面がはんだが濡れ上がりやすい。本発明の電子部品では、この面にはんだ濡れ上がり防止層が形成されているので、はんだ濡れ上がりが抑制されるため、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、誘電体の電歪現象に起因して発生する音鳴りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す側面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の断面図である。
【図5】図5は、接続端子の寸法を示す説明図である。
【図6−1】図6−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。
【図6−2】図6−2は、図6−1の平面図である。
【図7−1】図7−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。
【図7−2】図7−2は、図7−1の平面図である。
【図8−1】図8−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。
【図8−2】図8−2は、図8−1の平面図である。
【図9−1】図9−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。
【図9−2】図9−2は、図9−1の平面図である。
【図10−1】図10−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。
【図10−2】図10−2は、図10−1の平面図である。
【図11−1】図11−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。
【図11−2】図11−2は、図11−1の平面図である。
【図12】図12は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示すフローチャートである。
【図13】図13は、音圧の測定を行なう際に用いた試験装置の構成を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
本実施形態では、電子部品の素子として、セラミックコンデンサを用いて説明する。他の適用可能な電子部品としては、誘電体素体を有するインダクタ、フィルタ、バリスタ又は、これらの素子を組み合わせた複合型セラミック電子部品等がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す側面図である。セラミックコンデンサ1は、セラミックコンデンサ素子(以下、必要に応じてコンデンサ素子という)10と、一対の外部電極(端子電極)20、30と、一対の接続端子40、50と、を含む。このように、セラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10の外部電極20、30に、接続端子40、50を取り付けた構造の電子部品である。コンデンサ素子10は、積層型のセラミックコンデンサであり、その形状は、略四角柱形状である。コンデンサ素子10の構造については後述する。
【0020】
セラミックコンデンサ1は、回路基板(以下、「基板」という)60上に搭載されている。セラミックコンデンサ1は、1つのコンデンサ素子10により構成されているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、セラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10を複数積層して組み合わせてもよい。基板60は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、PDAや携帯電話等の小型の処理装置に用いられる。この基板60のセラミックコンデンサ1が実装される表面には、基板電極(ランド)61、61が設けられている。ランド61、61からは配線61A、61Aが延びている。一対の接続端子40、50は、はんだ15、16によってランド61、61に各々はんだ付けされる。
【0021】
それぞれの外部電極20、30は、略四角柱形状のコンデンサ素子10の対向する端面をそれぞれ別個に覆っている。外部電極20、30は、導電性の材料であり、後述するように、コンデンサ素子10の内部電極と電気的に接続されている。外部電極20、30は、例えば、パラジウム(Pd)又は銀/パラジウム合金(Ag/Pd)に、ニッケル(Ni)及びスズ(Sn)をこの順で積層した構造である。なお、外部電極20、30は、複数の金属電極層で構成されていてもよく、例えば、外部電極20、30は、Cuを主成分とした下地電極に、Niめっき層、Snめっき層を形成するようにしてもよい。本実施形態において、外部電極20、30は、誘電体素体11の端面と、当該端面と接続している側面のうち前記端面側の部分との両方を覆う。このように、外部電極20、30は、コンデンサ素子10の両方の端部(端面及び当該端面と接続する側面の前記端面側の部分)を覆う。このため、外部電極20、30は、端面21、31と、側面22、32とを有する。
【0022】
一対の接続端子40、50とそれぞれの外部電極20、30の端面21、31とは、それぞれ電気的に接続される。このため、本実施形態において、外部電極20、30は、少なくとも誘電体素体11の両方の端面を覆っていればよく、必ずしも誘電体素体11の側面まで覆う必要はない。
【0023】
本実施形態において、一対の接続端子40、50は、金属の基材層の両面に導電層を有し、いずれか一方の前記導電層が、外部電極20、30の端面21、31に電気的に接続される。一対の接続端子40、50には、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hが形成されている。
【0024】
図2に示すように、それぞれの接続端子40、50は、外部電極20、30と電気的に接続される脚部40A、50Aと、回路基板60のランド(基板電極)61と電気的に接続される基板取付部40B、50Bとを有する。以下において、接続端子40に対応する脚部と基板取付部とはそれぞれ符号40A、40Bで表すものとし、接続端子50に対応する脚部と基板取付部とはそれぞれ符号50A、50Bで表すものとする。
【0025】
脚部40A、50Aと基板取付部40B、50Bとは、それぞれ板状の構造体であり、両者の板面は互いに直交している。このため、接続端子40、50は、脚部40A、50A及び基板取付部40B、50Bと直交する平面で切った場合の断面が、L字形状をしている。本実施形態において、接続端子40、50は、脚部40A、50Aと基板取付部40B、50Bとを連続した1つの構造体として一体に構成したものである。
【0026】
本実施形態において、一対の接続端子40、50は、それぞれの外部電極20、30から離れた位置で、外部電極20、30と接続される側とは反対側にある端部40t、50tが、互いに対向するように曲げられる。端部40t、50tは、基板取付部40B、50Bの端部であり、接続端子40、50の基板取付部40B、50Bが端部40t、50tが対向するように曲げられる。このような構造とすることで、脚部40A、50Aとつながっている基板取付部40B、50Bがコンデンサ素子10の長手方向外側に張り出すことを抑制できるので、その分、回路基板60に対するセラミックコンデンサ1の実装密度を向上させることができる。
【0027】
脚部40A、50Aは、コンデンサ素子10の外部電極20、30の端面21、31と電気的に接続される。本実施形態において、脚部40A、50Aの基板取付部40B、50Bが突出している側の面が、外部電極20、30の端面21、31と電気的に接続される。外部電極20、30の端面21、31と電気的に接続される脚部40A、50Aの面は、電極接合部44、54である。本実施形態において、脚部40A、50Aの電極接合部44、54と、外部電極20、30の端面21、31とは、それぞれ、はんだ2、3で接続される。
【0028】
接続端子40、50の基板取付部40B、50Bは、回路基板60のランド61、61と電気的に接続される基板接合部43、53を有する。本実施形態において、基板接合部43、53は、脚部40A、50Aの電極接合部44、54と反対側の面である。基板取付部40B、50Bの基板接合部43、53は、例えば、はんだ15、16によって回路基板60のランド61と電気的に接続される。
【0029】
上述したように、接続端子40、50の基板取付部40B、50Bが端部40t、50tが対向するように曲げられる。基板接合部43、53と回路基板60のランド61、61との間にあるはんだ15、16が脚部40A、50Aへ表面張力により濡れ上がる。はんだ15、16は、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hを超えて濡れ上がることがない。その結果、はんだ15、16によって形成されるフィレット形状の高さが制限される。
【0030】
本実施形態では、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hは、基材の酸化層となっている。はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hは、基板接合部43、53と平行に形成されている。この結果、はんだ濡れ上がりは、一定の高さで抑制されるため、はんだ濡れ上がりのばらつきが低減される。
【0031】
本実施形態において、脚部40A、50Aの電極接合部44、54と、外部電極20、30の端面21、31とを接続するはんだ2、3が溶融する温度は、基板取付部40B、50Bの基板接合部43、53とランド61とを接続するはんだ15、16が溶融する温度よりも高いことが好ましい。セラミックコンデンサ1は、ランド61にはんだペーストが塗布された回路基板60に実装された後、リフロー炉内で加熱されることによりはんだペーストが溶融し、基板取付部40B、50Bとランド61とが電気的に接続される。はんだ2、3が溶融する温度を上述したように設定すれば、前記加熱においてはんだ2、3は溶融しないので、接続端子40、50とコンデンサ素子10との接続不良を回避しつつ、セラミックコンデンサ1を確実に回路基板60へ実装できる。次に、セラミックコンデンサ1が有するコンデンサ素子10について説明する。
【0032】
図3は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の斜視図である。コンデンサ素子10の長手方向、すなわち、一対の外部電極20、30の端面21、31と直交する方向をY軸とし、Y軸に直交する軸をそれぞれX軸、Z軸とする。コンデンサ素子10に設けられる外部電極20、30の端面21、31は、略正方形形状である。コンデンサ素子10は、外部電極20、30の端面21、31を両端面とし、これらにつながる4個の側面(素子側面)12を有する略四角柱形状、すなわち略直方体の電子部品である。
【0033】
外部電極20、30が有する端面21、31の辺の長さは、X軸方向、すなわち幅方向がLa、Z軸方向、すなわち厚さ方向がLbである。コンデンサ素子10のY軸方向の長さ、すなわち、コンデンサ素子10の長手方向の長さはLcである。Lcは、一対の端面21、31間の最短距離である。
【0034】
コンデンサ素子10は、上述したように略直方体形状であるので、平面視(Z軸又はX軸方向から見た状態)は矩形の形状(素子側面12の形状が矩形)である。コンデンサ素子10は、平面視において、長手方向(Y軸方向)及び短手方向(X軸又はZ軸方向)がある。本実施形態のセラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10の寸法は問わないが、特に、コンデンサ素子10の寸法が1608M(C5101−21:2006(IEC60384−21:2004)に規定される寸法記号)以上のものに好適である。なお、前記寸法記号において、1608Mとは、Lcが1.6mm±0.1mm、LaとLbとのうち大きい方が0.8mm±0.1mmである。次に、コンデンサ素子10の内部構造について、簡単に説明する。
【0035】
図4は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の断面図である。同図は、コンデンサ素子10を、外部電極20、30の端面21、31及び内部電極17、18と直交する平面で切った断面を示している。コンデンサ素子10は、誘電体素体11と、外部電極20、30とを有する。誘電体素体11は、内部電極17、18と誘電材料の誘電体11aとを含む。内部電極17、18は、例えば、パラジウム、銀/パラジウム合金、ニッケル、銅(Cu)等である。誘電体11aは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)等である。本実施形態において、誘電体素体11は、誘電体11aと内部電極17、18とが交互に積層される。誘電体素体11は、セラミックグリーンシート(未焼成セラミックシート)を複数枚積層した積層体を加熱圧着して一体化して、切断し、脱脂し、焼成することにより得られた直方体状の焼結体である。そして、誘電体素体11は、内部電極17に外部電極20が電気的に接続され、かつ内部電極18に外部電極30が電気的に接続されてコンデンサ素子10となる。コンデンサ素子10を始めとする電子部品が有する電子部品の素子は、内部電極と絶縁体とを有していれば、本実施形態の構造に限定されるものではない。
【0036】
誘電体素体11の端面(外部電極形成面)13、14には、それぞれ内部電極17、18が露出している。上述したように、一対の外部電極20、30は、それぞれ外部電極形成面13、14を別々に覆うとともに、複数の内部電極17、18と電気的に接続される。本実施形態において、外部電極20、30は、端面21、31と側面22、32とを有する。外部電極20、30の側面22、32は、端面21、31とつながり、かつ素子側面12の外部電極形成面13、14に延出する。
【0037】
セラミックコンデンサ1が有するコンデンサ素子10は、図4に示す誘電体11aに誘電材料が用いられる。コンデンサ素子10が、外部電極20、30をランド61に直接接続することにより回路基板60に実装した場合、外部電極20、30から交流電圧が印加されると、誘電体11aに電歪現象が発生し、コンデンサ素子10が変形する。すなわち、強誘電性を有するセラミックの誘電体11aの電歪現象効果により、コンデンサ素子10の積層方向に伸縮が生じる。そして、誘電体の一般的なポアソン比(=0.3)にしたがって、積層方向と直交する方向、すなわち、回路基板60の基板面に平行な方向にも伸縮が生じる。コンデンサ素子10は、積層方向に伸びると積層方向と直交する方向には縮み、積層方向に縮むと積層方向と直交する方向には伸びる。交流電圧がコンデンサ素子10に印加されることにより、コンデンサ素子10は、積層方向への伸縮と、積層方向と直交する方向への伸縮(積層方向への伸縮と位相が90度ずれる)とが繰り返される。その結果、コンデンサ素子10が実装された回路基板60は、基板面と略直交する方向へ振動する。コンデンサ素子10の振動の振幅は微少(1pmから1nm程度)であり、そのままでは音としてほとんど人間には認識されない。しかし、コンデンサ素子10が回路基板60に実装されると、回路基板60が音響インピーダンス変換器として働く。そして、振動の周波数が人間の可聴周波数帯域(20Hzから20kHz)になったときに、音として人間の耳に検知される。このように、セラミックコンデンサ1は、回路基板60に実装されると、誘電体材料の電歪現象に起因する音鳴りが発生することがある。
【0038】
セラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10の両方の外部電極20、30の端面21、31を接続端子40、50で挟持する。そして、セラミックコンデンサ1は、接続端子40、50を介して回路基板60に実装される。このような構造により、接続端子40、50がコンデンサ素子10の振動を吸収するので、コンデンサ素子10から回路基板60へ伝達される振動が抑制される。その結果、セラミックコンデンサ1が実装された回路基板60は、コンデンサ素子10の電歪現象に起因する音鳴りが抑制される。
【0039】
図5は、接続端子の寸法を示す説明図である。接続端子40、50の厚さをt、幅をb、セラミックコンデンサ1が回路基板60と接続する接続端子40、50の基板接合部43、53からはんだ濡れ上がり防止層40H、50Hの基板側までの距離をh、基板接合部43、53から脚部40A、50Aとコンデンサ素子10の外部電極20、30とを接続するはんだ2、3の基板側までの距離をH、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hの基板側からはんだ2、3の基板側までの距離(有効接続端子寸法)をLとする。Lは、Hからhを減算した長さとなっている。このとき、接続端子40、50のばね定数Kは、式(1)で表すことができる。式(1)中のEは、接続端子40、50のヤング率である。
【0040】
【数1】

【0041】
接続端子40、50のばね定数Kが小さい程、コンデンサ素子10の電歪現象に起因する音鳴りを抑制する効果が高くなることが見出された。これは、接続端子40、50のばね定数Kが小さい程、コンデンサ素子10からの振動を接続端子40、50が吸収しやすくなるからであると考えられる。また、接続端子40、50は、表面にはんだ15、16が付着すると、ばね定数Kが大きくなることが見出された。コンデンサ素子10の外部電極20、30と回路基板60のランド61とを電気的に接続するものであるため、はんだ15、16が必要である。接続端子40、50は、表面にはんだ15、16が付着すると、式(1)の厚さtが厚くなってしまうためばね定数Kが大きくなる。また、はんだ15、16は、接続端子40、50の表面を濡れ上がるため、濡れ上がりのばらつきによって、接続端子40、50のばね定数Kがばらついてしまう。
【0042】
本実施形態に係るセラミックコンデンサ1では、接続端子40、50は、外部端子20、30の端面と接合する素子端面接合部44、54及びセラミックコンデンサ1が基板60と接続する基板接合部43、53を有し、素子端面接合部44、54と基板接合部43、53との距離をHとし、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hと基板接合部43、53との距離をhとすると、0<h/H≦0.6であることが好ましい。さらに好ましくは、h/Hの範囲は、0<h/H≦0.5であることが好ましい。このような範囲であれば、はんだ15、16が接続端子40、50の表面に濡れ上がることが抑制され、有効接続端子寸法Lを確保することができる。その結果、ばね定数Kを小さくできるため、接続端子40、50は振動吸収作用を発揮しつつ、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0043】
本実施形態では、セラミックコンデンサ1の有する接続端子40、50にはんだ濡れ上がり防止層40H、50Hを有している。はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hは、回路基板60と接続する基板接合部43、53と平行に形成される。はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hは、接続端子40、50の全幅に渡って形成されており、接続端子40、50の幅bと同一の幅を有している。より具体的には、接続端子40、50は、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hとして、基材層に金属の酸化層を有する。一般に、酸化層は、基材層に形成する導電層よりもはんだとの濡れかたが小さいため、接続端子40、50は、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hではんだ15、16が堰き止められる。
【0044】
このような構造の接続端子40、50を有するセラミックコンデンサ1は、導電性を有し、かつばね定数Kの低い接続端子40、50を備えるので、電歪現象に起因した音鳴りを効果的に抑制することができる。なお、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hは、酸化層に限られず例えばポリイミド等の樹脂を設ける構造を採用することもできる。酸化層は、樹脂と比較してリフローでの加熱により剥離のおそれがない。また、樹脂が吸湿する場合は、樹脂からの湿気により基材が酸化するおそれがあるが、酸化層は一般に安定であり、高湿度環境下でも防錆効果がある。次に、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hの製造方法を説明する。
【0045】
図6−1、図7−1、図8−1、図9−1、図10−1及び図11−1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示す断面図である。これらの図は、接続端子40、50の電極接合部44、54及び基板接合部43、53と直交する平面で接続端子40、50を切った場合の断面を示している。図6−2、図7−2、図8−2、図9−2、図10−2及び図11−2は、図6−1、図7−1、図8−1、図9−1、図10−1及び図11−1の平面図である。これらの図は、接続端子40、50をはんだ濡れ上がり防止層40H、50Hを形成する側から見た平面図である。図12は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の製造方法を示すフローチャートである。
【0046】
図6−1、図6−2及び図12に示すように、接続端子40、50となる板材を用意する(ステップS1)。板材は、基材層41、51を有し、例えば銅(Cu)、又はりん青銅等の銅合金、NiFe合金、ステンレス、アルミニウムを使用する。
【0047】
次に、図7−1、図7−2及び図12に示すように、基材層41、51には、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hを形成する所定位置の部分に、ポリイミド等の樹脂70を塗布される(ステップS2)。はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hを形成する所定位置の部分は、折り曲げにより基板接合部43、53とならない範囲となる。
【0048】
次に、図8−1、図8−2及び図12に示すように、基材層41、51には、ポリイミド等の樹脂70が塗布された領域を除き、導電層がめっきされる(ステップS3)。導電層は、第1金属被覆層45、55としてニッケル(Ni)めっきと、第2金属被覆層46、56としてスズ(Sn)めっきが施された2層構造である。導電層は、2層構造に限られず、単層であっても3層以上であってもよい。
【0049】
次に、図9−1、図9−2及び図12に示すように、ポリイミド等の樹脂70が基材層41、51から除去される(ステップS4)。基材層41、51には、導電層のない基材層41、51の露出面70aが現れる。
【0050】
次に、図10−1、図10−2及び図12に示すように、露出面70aが例えば150℃の熱処理を30分加えられ、基材層41、51の表面に酸化層が形成される(ステップS5)。この酸化層がはんだ濡れ上がり防止層40H、50Hとなる。
【0051】
次に、図11−1、図11−2及び図12に示すように、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hが形成された基材層41、51を折り曲げ加工して接続端子40、50が形成される(ステップS6)。
【0052】
このような製造方法により、例えば、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hの位置は折り曲げ加工される位置を考慮して、自由に形成することができる。
【0053】
以上、本実施形態に係るセラミックコンデンサは、誘電体と内部電極とが交互に積層された誘電体素体及び前記誘電体素体の対向する端面をそれぞれ別個に覆う一対の外部電極を有するコンデンサ素子と、前記外部電極の端面と電気的に接続される脚部と、基板と電気的に接続される基板取付部とを有する一対の接続端子と、を含み、前記一対の接続端子は、はんだ濡れ上がり防止層が前記脚部の前記外部電極と接続される側とは反対側の面にそれぞれ形成されている。このような構造により、本実施形態に係るセラミックコンデンサは、接続端子と基板との間に介在するはんだがはんだ濡れ上がり防止層を超えて濡れ上がることがない。その結果、はんだによって形成されるフィレット形状の高さが制限される。このため従来の接続端子の表面にはんだが付着するとばね定数Kが大きくなるのに対し、本実施形態のセラミックコンデンサは、ばね定数Kを小さく保ったまま接続端子でセラミックコンデンサを回路基板に実装できる。その結果、本実施形態に係るセラミックコンデンサは、電歪現象に起因した音鳴りを効果的に抑制することができる。また、本実施形態に係るセラミックコンデンサは、はんだ濡れ上がりが抑制されるため、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0054】
また、はんだ濡れ上がり防止層は、接続端子の基材の酸化層であることが好ましい。このような構造とすることで、基材層に形成する導電層よりもはんだとの濡れかたを小さくし、はんだ濡れ上がり防止層ではんだが堰き止められる。酸化層は、樹脂と比較してリフローでの加熱により剥離のおそれがない。また、樹脂が吸湿する場合は、樹脂からの湿気により基材が酸化するおそれがあるが、酸化層は一般に安定であり、高湿度環境下でも防錆効果がある。その結果、このセラミックコンデンサは、リフロー工程での作業を容易とし、高湿度においても性能を発揮させることができる。
【0055】
本実施形態に係るセラミックコンデンサは、基材層の表面には、前記はんだ濡れ上がり防止層以外に導電層が設けられることが好ましい。このような構造により、接続端子を外部電極にはんだ付けする場合、又は接続端子をランドにはんだ付けする場合に、はんだは低抵抗で電気的に接続する。その結果、このセラミックコンデンサは、回路基板のランドと接続端子と外部電極とを確実に電気的に接続することができる。
【0056】
本実施形態に係るセラミックコンデンサは、前記接続端子は、前記外部電極の端面と接合する素子端面接合部及び前記基板と接続する前記基板取付部の基板接合部を有し、素子端面接合部と基板接合部との距離をHとし、前記はんだ濡れ上がり防止層と前記基板接合部との距離を高さhとすると、0<h/H≦0.6であることが好ましい。このような範囲であれば、はんだが接続端子の表面に濡れ上がる範囲が制限され、有効接続端子寸法を確保することができる。その結果、ばね定数Kを小さくできるため、接続端子は振動吸収作用を発揮しつつ、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0057】
本実施形態に係るセラミックコンデンサでは、前記はんだ濡れ上がり防止層は、前記基板と接続する前記基板取付部の基板接合部と平行に形成されることが好ましい。はんだ濡れ上がりが一定の高さで抑制されるため、はんだの濡れ上がりのばらつきも抑制できる。その結果、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0058】
本実施形態に係るセラミックコンデンサでは、前記一対の接続端子は、それぞれの前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端部が互いに対向するように曲げられることが好ましい。このようにすれば、脚部とつながっている基板取付部が素子の長手方向外側に張り出すことを抑制できるので、その分、回路基板に対するセラミックコンデンサの実装密度を向上させることができる。このような構造の接続端子では、外部電極と接続される側とは反対側の面がはんだが濡れ上がりやすい。本実施形態に係るセラミックコンデンサでは、この面にはんだ濡れ上がり防止層が形成されているので、はんだ濡れ上がりが抑制されるため、電歪現象に起因した音鳴りのばらつきも低減することができる。
【0059】
なお、セラミックコンデンサの振動は、主に内部電極と誘電体とが積層される方向に生ずるものと考えられる。このため、誘電体と内部電極とが積層される方向が回路基板の基板面と直交するようにセラミックコンデンサが回路基板へ実装される場合に、音鳴りは大きくなると考えられる。本実施形態に係るセラミックコンデンサは、接続端子のばね定数を小さくして、電歪現象に起因する振動の回路基板への伝達を抑制できる。このため、誘電体と内部電極とが積層される方向が回路基板の基板面と直交するようにセラミックコンデンサが回路基板へ実装された場合でも、前記振動の回路基板への伝達を抑制し、音鳴りを低減させることができる。
【0060】
(評価1)
上述した実施形態で説明した図1及び図2に示す接続端子を、実施例1−1〜1−5として、基材層の材料を変えて複数種類作製し、セラミックコンデンサの音圧を測定した。比較例1−1〜1−5としては、同じ基材層の材料ではんだ濡れ上がり防止層のない接続端子を複数種類作製し、セラミックコンデンサの音圧を測定した。基材層の材料は、表1に示すように、銅、鉄ニッケル合金、ステンレス(SUS304)、アルミニウム、りん青銅であり、具体的な組成を表1に示す。コンデンサ素子は、寸法が型式3225、厚さ2mm(図3に示すLc=3.2mm、La=2.5mm、Lb=2mm)を用いた。接続端子は、厚さt=0.1mm、幅b=2.5mm、基板接合部から基板と反対側の端面までの距離が3mmである。図5に示す寸法Hは1mm、高さhは0.2mmである。はんだ濡れ上がり防止層は、高さhからコンデンサ素子の厚み方向に0.3mmの高さ寸法で基板接合部と平行に形成されている。また、はんだ濡れ上がり防止層は、接続端子の幅b=2.5mmに渡って形成されている。実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−5の基材層の表面に第1金属被覆層としてニッケル(Ni)を被覆し、第1金属被覆層の表面に第2金属被覆層としてスズ(Sn)を被覆した。接続端子と素子の端面とを接合するはんだは、Sbを15質量%含むSn−Sb合金、接続端子と基板とを接合するはんだは、Agを3質量%、Cuを0.5質量%含むSn−Ag−Cu合金を用いた。実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−5のサンプルを各々30個用意し、音圧のばらつきを標準偏差で評価した。音圧の測定結果を、表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
(評価2)
上述した実施形態で説明した図1及び図2に示す接続端子を、実施例2−1〜2−6として、はんだ濡れ上がり防止層40H、50Hの図5に示す高さhを変えて、複数種類作製し、セラミックコンデンサの音圧を測定した。比較例2としては、同じ基材層の材料ではんだ濡れ上がり防止層のない接続端子を作製し、セラミックコンデンサの音圧を測定した。実施例2−1〜2−5及び比較例2のサンプルは各々30個用意し、音圧のばらつきを標準偏差で評価した。実施例2−1〜2−5及び比較例2の基材層の材料は、鉄ニッケル(FeNi)合金を用いた。また、実施例2−1〜2−5及び比較例2の基材層の表面に第1金属被覆層としてニッケルを被覆し、第1金属被覆層の表面に第2金属被覆層としてスズを被覆した。接続端子と素子の端面とを接合するはんだは、Sbを15質量%含むSn−Sb合金、接続端子と基板とを接合するはんだは、Agを3質量%、Cuを0.5質量%含むSn−Ag−Cu合金を用いた。音圧の測定結果を、表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
(測定方法)
図13は、音圧の測定を行なう際に用いた試験装置の構成を簡略に示す図である。試作したセラミックコンデンサ1を基板106に実装して交流電圧を印加した際に、基板106から発生する振動音の大きさ(音圧)を測定した。試験装置100は、無響箱101と、集音マイク(商品名:MI−1233、小野測器社製)102と、電源装置103と、FFTアナライザ(商品名:DS2100、小野測器社製)104とを備えている。そして、測定対象となるセラミックコンデンサ1は、基板106に設置された状態で、無響箱101内に設置される。
【0065】
セラミックコンデンサ1を設置した基板106は、その両端に正負一対の電極がそれぞれ設けられる。なお、基板106はガラスエポキシ基板であり、その寸法は、厚みが1.6mm、幅が40mm、長さが100mmである。無響箱101は、箱状に形成され、その内壁に吸音材107が設けられている。吸音材107は、グラスウール等を用いており、その表面を波型等に形成することで、音波の接触面積を拡大させ、吸音効果を高めている。
【0066】
電源装置103は、一対の配線108を介して、基板106の正負一対の電極にそれぞれ電気的に接続されている。基板106は、配線108に吊り下げられた状態で、セラミックコンデンサ1が無響箱101内の底面101Bに対向するように、無響箱101の中央部分に配置される。電源装置103は、セラミックコンデンサ1に対してDCバイアスを与えながら交流電圧を印加した。DCバイアスは20Vとした。交流電圧は、周波数を1kHz〜10kHzとした。また、交流電圧は、3Vp−p(peak to peak)となるように、すなわち、DCバイアスの20Vを中心として、交流電圧が±3Vの範囲で変化するように印加された。
【0067】
集音マイク102は、無響箱101内の底面101Bに設けられ、無響箱101の中央部分に設置されたセラミックコンデンサ1と所定距離(本評価例では5cm)を保つようにして配置される。FFTアナライザ104は、集音マイク102により集音された振動音の大きさ(音圧)を解析した。なお、ISO226に規定される等感度曲線から、人間の耳の感度は3kHzから4kHzで最も鋭くなる。このため、本評価例においては、人間の耳の感度がもっと鋭くなる周波数(より具体的には3kHz)での音圧を測定した。
【0068】
試験装置100の電源装置103が基板106に実装されたセラミックコンデンサ1に上述した交流電圧及びDCバイアスを印加すると、セラミックコンデンサ1で振動が発生し、セラミックコンデンサ1の振動が基板106に伝達される。その結果、基板106から振動音が発生する。この振動音を、集音マイク102を用いて集音し、集音した振動音を、FFTアナライザ104で解析することで、基板106から発生する振動音の大きさ(音圧)を得た。
【0069】
(評価結果)
表1の評価結果が示すように、音圧は、同じ材料の基材層同士を比較した場合、実施例1−1〜1−5のサンプルは、比較例1−1〜1−5のサンプルよりいずれも音圧が低く、音鳴り抑制効果ありと判定した。実施例1−1〜1−5のサンプルは、比較例1−1〜1−5の同じ材質のサンプルより音圧がそれぞれ8dBから12dB低い。実施例1−1〜1−5の中では、アルミニウムを基材層とすると、実施例1−4のサンプルが比較例1−1〜1−5のサンプルと比較して最も低く、同じ材質の比較例1−4のサンプルより12dBの音圧低減効果があった。実施例1−1〜1−5のサンプルが比較例1−1〜1−5のサンプルと比較して標準偏差も低くなっており、いずれの実施例1−1〜1−5のサンプルもばらつきが低減されていることが分かる。
【0070】
表2の評価結果が示すように、はんだ濡れ上がり防止層がない比較例2よりも、はんだ濡れ上がり防止層のある実施例2−1〜2−6は、特に、h/Hの値が0.6以下(実施例2−1〜2−4)であれば、音圧低減できることが分かる。実施例2−1〜2−5の音圧は、h/Hが大きいほど音圧も高くなる傾向にある。h/Hが小さいほど音圧が低くなったのは、はんだが接続端子の表面に濡れ上がる範囲を制限し、有効接続端子寸法を確保することができたからと考えられる。その結果、接続端子の振動吸収作用が抑制されたことが原因と考えられる。
【0071】
表2の評価結果が示すように、0<h/H≦0.6の範囲にはんだが接続端子の表面に濡れ上がる範囲を制限すると、比較例のサンプルよりも音圧を下げることができる。好ましくは、0<h/H≦0.5の範囲にはんだが接続端子の表面に濡れ上がる範囲を制限すると、比較例のサンプルよりも大きく音圧を下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明に係る電子部品は、回路基板に実装されたときにおいて音鳴りを抑制することに有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 セラミックコンデンサ
10 コンデンサ素子(セラミックコンデンサ素子)
11 誘電体素体
11a 誘電体
12 素子側面
13、14 外部電極形成面
17、18 内部電極
20、30 外部電極
21、31 端面
40H、50H はんだ濡れ上がり防止層
40A、50A 脚部
40B、50B 基板取付部
40、50 接続端子
40t、50t 端部
41、51 基材層
43、53 基板接合部
44、54 電極接合部
45、55 第1金属被覆層
46、56 第2金属被覆層
60 回路基板
61 ランド
100 試験装置
101 無響箱
101B 底面
102 集音マイク
103 電源装置
104 FFTアナライザ
106 基板
107 吸音材
108 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と内部電極とが交互に積層された誘電体素体及び前記誘電体素体の対向する端面をそれぞれ別個に覆う一対の外部電極を有する素子と、
前記外部電極の端面と電気的に接続される脚部と、基板と電気的に接続される基板取付部とを有する一対の接続端子と、を含み、
前記一対の接続端子は、はんだ濡れ上がり防止層が前記脚部の前記外部電極と接続される側とは反対側の面にそれぞれ形成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記はんだ濡れ上がり防止層は、前記接続端子の基材の酸化層である請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記基材層の表面には、前記はんだ濡れ上がり防止層以外に導電層が設けられる請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記接続端子は、前記外部電極の端面と接合する素子端面接合部及び前記基板と接続する前記基板取付部の基板接合部を有し、素子端面接合部と基板接合部との距離をHとし、前記はんだ濡れ上がり防止層と前記基板接合部との距離をhとすると、0<h/H≦0.6である請求項1から3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記はんだ濡れ上がり防止層は、前記基板と接続する前記基板取付部の基板接合部と平行に形成される請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記一対の接続端子は、それぞれの前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端部が互いに対向するように曲げられる請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−94785(P2012−94785A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242840(P2010−242840)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】