説明

電子音源付きピアノ

【課題】外部出力するか否かに応じて、残響音及び/又は共鳴音の楽音信号を出力することができる電子音源付きピアノを提供することを課題とする。
【解決手段】電子音源付きピアノは、楽音信号を基に響板に振動を与える加振器(103)と、押鍵操作に応じて通常音の楽音信号を生成する通常音発生器(101)と、押鍵操作に応じて残響音及び/又は共鳴音を含む効果音の楽音信号を生成する効果音発生器(207)と、検出器により楽音信号を外部出力することが検出された場合には通常音発生器により生成された通常音の楽音信号及び効果音発生器により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号を外部出力し、検出器により楽音信号を外部出力しないことが検出された場合には効果音発生器により生成された効果音の楽音信号を加振器に出力せずに通常音発生器により生成された通常音の楽音信号を加振器に出力する出力制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子音源付きピアノに関する。
【背景技術】
【0002】
電子音源付きピアノは、電子音源により楽音信号を生成することができる。また、電子音源付きピアノは、残響音及び共鳴音の楽音信号を生成することができる。残響音及び共鳴音の種類及び強弱は、操作子の操作により指定可能である。
【0003】
また、押鍵を示す押鍵信号に応じて押鍵波形を読み出すとともに、ペダルが踏まれたことを示すペダルオン信号に基づいて共鳴波形を読み出す電子楽器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−213050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子音源による残響音及び共鳴音の有無は、操作子の操作により指定される。しかし、残響音及び共鳴音が不要な場合には、自動的に残響音及び共鳴音をオフにすることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、外部出力するか否かに応じて、残響音及び/又は共鳴音の楽音信号を出力することができる電子音源付きピアノを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子音源付きピアノは、鍵盤の鍵の押鍵操作を検出するタッチセンサと、振動により音を発生させる響板と、楽音信号を基に前記響板に振動を与える加振器と、楽音信号を外部出力するか否かを検出する検出器と、前記タッチセンサにより検出された押鍵操作に応じて通常音の楽音信号を生成する通常音発生器と、前記タッチセンサにより検出された押鍵操作に応じて残響音及び/又は共鳴音を含む効果音の楽音信号を生成する効果音発生器と、前記検出器により楽音信号を外部出力することが検出された場合には前記通常音発生器により生成された通常音の楽音信号及び前記効果音発生器により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号を外部出力し、前記検出器により楽音信号を外部出力しないことが検出された場合には前記効果音発生器により生成された効果音の楽音信号を前記加振器に出力せずに前記通常音発生器により生成された通常音の楽音信号を前記加振器に出力する出力制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
加振器により響板に振動を与えると内部の音響効果により残響音及び/又は共鳴音が発生するので、加振器には残響音及び/又は共鳴音の楽音信号を出力する必要がない。加振器に通常音の楽音信号を出力する場合には、残響音及び共鳴音の楽音信号を加振器に出力しないので、適正な残響音及び/又は共鳴音を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態による電子音源付きピアノの構成例を示す図である。
【図2】図1の電子音源付きピアノの一部のより具体的な構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による電子音源付きピアノの一部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による電子音源付きピアノの構成例を示す図である。演奏者は、消音操作子を操作することにより、通常演奏モードと消音演奏モードとを切り替えることができる。ストッパ113は、モータの駆動により、本体部113aが支点113bに回動自在に支持されている。モータは、電子音源101により駆動される。まず、通常演奏モードについて説明する。鍵盤の鍵104を押鍵すると、ハンマ106が弦108を叩き、発音する。この際、図1の実線で示すストッパ113はハンマ106の動きを制止しないので、弦108が振動可能になっている。弦108は、駒111及びピン110によりフレーム109に支持される。フレーム109は、響板112に固定される。弦108がハンマ106により叩かれると、弦108が振動し、通常音が発生する。その音は、ピアノ内部で反射し、その反射音により響板112が振動することにより残響音が発生する。また、弦108は、発生した音に共鳴することにより振動し、共鳴音が発生する。鍵盤の鍵104を離鍵すると、ダンパ107が弦108に接触し、弦108の振動が抑制され、消音する。
【0011】
次に、消音演奏モードについて説明する。消音演奏モードでは、図1の点線で示されるストッパ113がハンマ106の動きを制止する。その結果、鍵盤の鍵104を押鍵しても、ハンマ106が弦108に接触せず、発音されない。この時、電子音源101は、楽音信号を生成し、ヘッドホン102又は加振器103に選択的に出力することができる。タッチセンサ105は、鍵盤の鍵104の音高情報を含む押鍵操作及び離鍵操作を検出する。電子音源101は、タッチセンサ105により検出された押鍵操作に応じて楽音信号を生成する。ヘッドホン102がピアノのヘッドホン端子に差し込まれると、電子音源101は、生成した楽音信号をヘッドホン102に出力する。ヘッドホン102は、その楽音信号に応じて発音する。この際、電子音源101は、上記の通常音の楽音信号の他、上記の残響音及び共鳴音の楽音信号を生成することができる。これにより、電子音源101は、生ピアノの通常音、残響音及び共鳴音を模倣した楽音信号を生成することができる。
【0012】
ヘッドホン102がピアノのヘッドホン端子に差し込まれていない場合には、電子音源101は、生成した楽音信号を加振器103に出力する。加振器103は、その楽音信号を基に響板112に振動を与える。響板112は、その振動により通常音を発生させる。その発生した音は、上記と同様に、ピアノ内部で反射し、その反射音により響板112が振動することにより残響音が発生する。また、弦108は、発生した音に共鳴することにより振動し、共鳴音が発生する。したがって、電子音源101は、通常音の楽音信号のみを加振器103に出力すればよく、残響音及び共鳴音の楽音信号を加振器103に出力する必要がない。
【0013】
仮に、電子音源101が加振器103に楽音信号を出力する場合に、ヘッドホン102に楽音信号を出力する場合と同様に、通常音の楽音信号の他、残響音及び共鳴音の楽音信号を加振器103に出力すると、残響音及び共鳴音が共に二重に生成されてしまい、不適切な音が発生してしまう。
【0014】
本実施形態では、ヘッドホン102がピアノのヘッドホン端子に差し込まれている場合には、電子音源101は、通常音の楽音信号の他、残響音及び/又は共鳴音の楽音信号をヘッドホン102に出力する。これに対し、ヘッドホン102がピアノのヘッドホン端子に差し込まれていない場合には、電子音源101は、通常音の楽音信号のみを加振器103に出力し、残響音及び共鳴音の楽音信号を加振器103に出力しない。これにより、ヘッドホン102の使用の有無に応じて、適切な音を発生させることができる。
【0015】
また、演奏者は、音量操作子を操作することにより、電子音源101により生成される楽音信号の音量を調整することができる。演奏者は、例えば夜間には、電子音源101により所望の小音量の楽音を発生させることができる。
【0016】
図2は、図1の電子音源付きピアノの一部のより具体的な構成例を示すブロック図である。タッチセンサ105は、鍵盤の鍵104の押鍵操作又は離鍵操作を検出すると、音高を含む押鍵情報又は離鍵情報を電子音源101に出力する。電子音源101は、通常音発生器201及び効果音発生器207を有する。効果音発生器207は、残響音発生器202及び共鳴音発生器203を有する。通常音発生器202は、タッチセンサ105により検出された押鍵操作に応じて通常音の楽音信号を生成する。残響音発生器202は、通常音の楽音信号を入力し、タッチセンサ105により検出された押鍵操作に応じて残響音の楽音信号を生成する。共鳴音発生器203は、通常音の楽音信号を入力し、タッチセンサ105により検出された押鍵操作に応じて共鳴音の楽音信号を生成する。
【0017】
なお、効果音発生器207は、残響音発生器202及び共鳴音発生器203の両方を有する場合に限定されず、いずれか一方を有するようにしてもよい。すなわち、効果音発生器207は、通常音の楽音信号を入力し、タッチセンサ105により検出された押鍵操作に応じて残響音及び/又は共鳴音を含む効果音の楽音信号を生成する。
【0018】
ミキサ204は、通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号及び効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号をミキシングし、ピアノのヘッドホン端子(外部出力端子)に出力する。ヘッドホン102をピアノのヘッドホン端子(外部出力端子)に差し込むと、ヘッドホン102はミキサ204により出力された楽音信号を入力し、その楽音信号を基に通常音及び効果音を発音する。
【0019】
通常音発生器201の出力端子は、スイッチ206を介して、加振器103に出力される。センサ205は、ピアノのヘッドホン端子(外部出力端子)にヘッドホン102が差し込まれたか否かを検出する検出器である。センサ205は、ヘッドホン102が差し込まれたことを検出した場合にはスイッチ206をオフし、ヘッドホン102が差し込まれたことを検出しない場合にはスイッチ206をオンする。
【0020】
ヘッドホン102が差し込まれた場合には、スイッチ206がオフし、加振器103は、通常音発生器201から楽音信号を入力せず、響板112に振動を与えず、響板112は発音しない。これに対し、ヘッドホン102が差し込まれていない場合には、スイッチ206がオンし、加振器103は、通常音発生器201から通常音の楽音信号を入力し、その通常音の楽音信号に基づき響板112に振動を与える。これにより、響板112は、通常音を発する。また、その通常音がピアノ内部で反射し、その反射音により響板112が残響音を発する。また、その発生した音に弦108が共鳴により振動し、共鳴音が発生する。
【0021】
出力制御部は、スイッチ206を有し、センサ205によりヘッドホン102が差し込まれたことが検出された場合には通常音発生器101により生成された通常音の楽音信号及び効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号をヘッドホン102に出力し、センサ205によりヘッドホン102が差し込まれたことが検出されない場合には効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号を加振器103に出力せずに通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号を加振器103に出力する。
【0022】
以上のように、加振器103により響板112に振動を与えるとピアノ内部の音響効果により残響音及び/又は共鳴音が発生するので、加振器103には残響音及び/又は共鳴音の楽音信号を出力する必要がない。加振器103に通常音の楽音信号を出力する場合には、残響音及び共鳴音の楽音信号を加振器103に出力しないので、適正な残響音及び/又は共鳴音を発生させることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による電子音源付きピアノの一部の構成例を示すブロック図である。図3は、図2に対応し、図1の電子音源付きピアノの一部のより具体的な構成例を示すブロック図である。図3は、図2に対し、スイッチ301を追加したものである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。効果音発生器207は、スイッチ301を介して、通常音発生器201から通常音の楽音信号を入力する。加振器103は、スイッチ206を介して、ミキサ204の出力信号を入力する。
【0024】
センサ205は、ヘッドホン102がピアノのヘッドホン端子に差し込まれたことを検出すると、スイッチ206をオフし、スイッチ301をオンする。スイッチ301がオンすると、効果音発生器207は、通常音発生器201から通常音の楽音信号を入力し、タッチセンサ105により検出された押鍵操作に応じて残響音及び/又は共鳴音を含む効果音の楽音信号を生成する。ミキサ204は、通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号及び効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号をミキシングし、ピアノのヘッドホン端子(外部出力端子)に出力する。ヘッドホン102は、ピアノのヘッドホン端子に接続されているので、ミキサ204により出力される楽音信号を基に通常音及び効果音を発音する。また、スイッチ206がオフするので、加振器103は、ミキサ204から楽音信号を入力せず、響板112に振動を与えない。したがって、響板112は、発音しない。
【0025】
これに対し、センサ205は、ヘッドホン102がピアノのヘッドホン端子に差し込まれたことを検出しない場合には、スイッチ206をオンし、スイッチ301をオフする。スイッチ301がオフすると、効果音発生器207は、通常音発生器201から通常音の楽音信号を入力せず、効果音の楽音信号を生成しない。したがって、ミキサ204は、通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号をそのまま出力する。スイッチ206がオンしているので、加振器103は、ミキサ204から通常音の楽音信号を入力し、響板112に振動を与える。これにより、響板112は、通常音を発する。また、その通常音がピアノ内部で反射し、その反射音により響板112が残響音を発する。また、その発生した音に弦108が共鳴により振動し、共鳴音が発生する。
【0026】
出力制御部は、スイッチ206及び301を有し、センサ205によりヘッドホン102が差し込まれたことが検出された場合には通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号及び効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号をヘッドホン102に出力し、センサ205によりヘッドホン102が差し込まれたことが検出されない場合には効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号を加振器103に出力せずに通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号を加振器103に出力する。
【0027】
なお、第1及び第2の実施形態では、ヘッドホン102をピアノのヘッドホン端子(外部出力端子)に差し込む場合を例に説明したが、それに限定されない。ヘッドホン102の代わりに、外部スピーカ等をピアノの外部出力端子に接続する場合にも適用することができる。その場合、センサ205は、外部スピーカ等が外部出力端子に接続されたか否かを検出し、スイッチ206及び/又は301を制御すればよい。
【0028】
すなわち、センサ205は、楽音信号を外部出力するか否かを検出する検出器である。出力制御部は、スイッチ206及び/又は301を有し、センサ205により楽音信号を外部出力することが検出された場合には通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号及び効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号を外部出力し、センサ205により楽音信号を外部出力しないことが検出された場合には効果音発生器207により生成された効果音の楽音信号を加振器103に出力せずに通常音発生器201により生成された通常音の楽音信号を加振器103に出力する。
【0029】
以上のように、加振器103により響板112に振動を与えるとピアノ内部の音響効果により残響音及び/又は共鳴音が発生するので、加振器103には残響音及び/又は共鳴音の楽音信号を出力する必要がない。加振器103に通常音の楽音信号を出力する場合には、残響音及び共鳴音の楽音信号を加振器103に出力しないので、適正な残響音及び/又は共鳴音を発生させることができる。
【0030】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
101 電子音源
102 ヘッドホン
103 加振器
104 鍵盤の鍵
105 タッチセンサ
106 ハンマ
107 ダンパ
108 弦
109 フレーム
110 ピン
111 駒
112 響板
113 ストッパ
201 通常音発生器
202 残響音発生器
203 共鳴音発生器
204 ミキサ
205 センサ
206 スイッチ
207 効果音発生器
301 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤の鍵の押鍵操作を検出するタッチセンサと、
振動により音を発生させる響板と、
楽音信号を基に前記響板に振動を与える加振器と、
楽音信号を外部出力するか否かを検出する検出器と、
前記タッチセンサにより検出された押鍵操作に応じて通常音の楽音信号を生成する通常音発生器と、
前記タッチセンサにより検出された押鍵操作に応じて残響音及び/又は共鳴音を含む効果音の楽音信号を生成する効果音発生器と、
前記検出器により楽音信号を外部出力することが検出された場合には前記通常音発生器により生成された通常音の楽音信号及び前記効果音発生器により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号を外部出力し、前記検出器により楽音信号を外部出力しないことが検出された場合には前記効果音発生器により生成された効果音の楽音信号を前記加振器に出力せずに前記通常音発生器により生成された通常音の楽音信号を前記加振器に出力する出力制御部と
を有することを特徴とする電子音源付きピアノ。
【請求項2】
前記検出器は、前記外部出力の端子にヘッドホンが差し込まれたか否かを検出し、
前記出力制御部は、前記検出器によりヘッドホンが差し込まれたことが検出された場合には前記通常音発生器により生成された通常音の楽音信号及び前記効果音発生器により生成された効果音の楽音信号をミキシングした信号を前記ヘッドホンに出力し、前記検出器によりヘッドホンが差し込まれたことが検出されない場合には前記効果音発生器により生成された効果音の楽音信号を前記加振器に出力せずに前記通常音発生器により生成された通常音の楽音信号を前記加振器に出力することを特徴とする請求項1記載の電子音源付きピアノ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−203347(P2012−203347A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70416(P2011−70416)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】