説明

電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料の調製方法

【課題】電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料を調製する方法の提供。
【解決手段】電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料を調製する方法であって、ゴム粒子に重金属化合物を結合させることを特徴とする、ゴム粒子試料の調製方法、前記重金属化合物が四酸化オスミウムであることを特徴とする、前記記載のゴム粒子試料の調製方法、並びに、前記いずれか記載のゴム粒子試料の調製方法により調製されたゴム粒子試料を、電子顕微鏡を用いて観察することを特徴とする、ゴム粒子の観察方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡によって観察するための、ゴム粒子試料の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムは、弾性を有する高分子であり、主にゴムノキの乳管(laticifer)と呼ばれる細胞内で造られているラテックスという乳液を収集し、これに所望の加工をすることにより製造される(例えば、特許文献1参照。)。乳管は、ゴムノキの樹皮内の形成層の外側に年に数層発達する。ラテックスの収集は、一般的に、ゴムノキの幹にナイフ等を用いて溝状に傷をつけて(タッピング)、切断された乳管から流出するラテックスを回収することにより行われている。
【0003】
天然ゴムは、ゴム製品の主原料として、様々な用途において幅広くかつ大量に用いられている。このため、より高収率でラテックスを得る方法の開発が求められている。より大量のラテックスを採取する方法としては、例えば、ゴムノキの幹に対してエチレンやEthephon(2−クロロエチルホスホン酸)による刺激を加える方法がある。エチレン等を樹皮に塗布することにより、乳管から流出してくるラテックスが傷口で凝固することが抑制されるため、より多くのラテックスを採取することができる。
【0004】
また、医学・生物学の分野において、生体試料等の試料中のタンパク質の局在を観察する方法の1つとして免疫電子顕微鏡法が知られている。この方法は、免疫染色法と電子顕微鏡による観察法とを組み合わせた手法である。具体的には、まず、局在を調べる目的タンパク質と特異的に結合する抗体を一次抗体とし、この一次抗体を試料に添加して、免疫反応により目的タンパク質と一次抗体とを結合させる。次いで、目的タンパク質と結合した一次抗体に、さらに金粒子で標識した二次抗体を結合させる。こうして調製された試料を電子顕微鏡で観察すると、試料中の目的タンパク質の局在を、金粒子で標識されている部位として観察することができる。
【0005】
天然ゴムのラテックス(天然ゴムラテックス)中には、ゴム生合成に関わるといわれているREF(rubber elongation factor)等のタンパク質が存在している。これらのタンパク質に対する抗体を用いて免疫電子顕微鏡法を行うことにより、ラテックス中のタンパク質の局在も観察することができる。例えば、非特許文献1においては、REFに対する特異的な抗体を用いて、ラテックスに含まれているゴム粒子表面のREFの局在を免疫電子顕微鏡法により観察している。具体的には、まず、ラテックスをそのまま透過型電子顕微鏡(TEM)の観察グリッド膜上に滴下して乾燥させることにより、当該ラテックス中のゴム粒子を観察グリッド膜上に載せる。当該観察グリッド膜に抗REF抗体を滴下して、免疫反応によりゴム粒子表面のREFと抗REF抗体とを結合させた後、さらに金粒子標識二次抗体を抗REF抗体と結合させる。このように調製されたゴム粒子をオスミウムでコーティングした後、真空下で透過型電子顕微鏡観察を行うことにより、表面が金粒子で標識されているゴム粒子を観察している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−138102号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】シン(Singh)、他4名、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・ボタニー(Journal of Experimental Botany)、2003年、第54巻、第384号、第985〜992ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ゴム粒子は比重が軽く、ラテックス中で浮遊しているため、直径3mm程度のグリッド膜上にゴム粒子を載せる場合、滴下時に流出してしまい、試料のロスが大きいという問題がある。
【0009】
本発明は、電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料を調製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ラテックスを電子顕微鏡の観察グリッド膜上に滴下する前に、予め、ラテックス中のゴム粒子に重金属化合物を結合させ、ゴム粒子の比重を高めておくことにより、ゴム粒子を効率よく観察グリッド膜上に載せることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料を調製する方法であって、ゴム粒子に重金属化合物を結合させることを特徴とする、ゴム粒子試料の調製方法、
(2) (a)ラテックスに重金属化合物を添加し、当該ラテックスに含まれているゴム粒子と重金属化合物とを結合させる工程と、(b)前記工程(a)の後、遠心分離処理することにより、当該ラテックスから、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子を回収する工程と、を有することを特徴とする、前記(1)記載のゴム粒子試料の調製方法、
(3) さらに、(c)前記工程(b)において回収されたゴム粒子を、金粒子で標識された抗体を用いて標識する工程と、(d)前記工程(c)の後、遠心分離処理することにより、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子から余剰の抗体を除去する工程と、を有することを特徴とする、前記(2)記載のゴム粒子試料の調製方法、
(4) (a)ラテックスに重金属化合物を添加し、当該ラテックスに含まれているゴム粒子と重金属化合物とを結合させる工程と、(c’)前記工程(a)の後、前記ラテックス中のゴム粒子を、金粒子で標識された抗体を用いて標識する工程と、(d’)前記工程(c’)の後、遠心分離処理することにより、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子から余剰の抗体を除去する工程と、を有することを特徴とする、前記(1)記載のゴム粒子試料の調製方法、
(5) 前記重金属化合物が四酸化オスミウムであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載のゴム粒子試料の調製方法、
(6) 前記(1)〜(5)のいずれか記載のゴム粒子試料の調製方法により調製されたゴム粒子試料を、電子顕微鏡を用いて観察することを特徴とする、ゴム粒子の観察方法、
を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴム粒子試料の調製方法により、ラテックス中のゴム粒子を電子顕微鏡によって効率よく観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1において、遠心分離処理後のチューブの写真図である。
【図2】実施例1において、黒い遠心分離残渣の光学顕微鏡図である。
【図3】実施例1において、四酸化オスミウム溶液を滴下したラテックス(「オスミウム添加」)と四酸化オスミウム溶液を滴下しなかったラテックス(「オスミウム無添加」)の粒度分布の測定結果を示した図である。
【図4】実施例1において、回収されたゴム粒子の低真空SEM観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴム粒子試料の調製方法は、電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料を調製する方法であって、ゴム粒子に重金属化合物を結合させることを特徴とする。ゴム粒子に重金属化合物を結合させることにより、ゴム粒子の比重が高められる。比重が高められたゴム粒子を含む試料を、例えば、透過型電子顕微鏡用グリッド膜上に滴下した場合には、ゴム粒子が沈降するため、電子顕微鏡用グリッド膜上に効率よく載せることができる。
【0015】
重金属化合物としては、ゴム粒子と結合させることにより、ゴム粒子の比重を高めることが可能な重金属を含む化合物であれば特に限定されるものではない。重金属化合物としては、具体的には、四酸化オスミウム、過マンガン酸カリウム、酢酸ウラニル、ギ酸ウラニル、リンタングステン酸、モリブデン酸アンモニウム、及び塩化ハフニウム等が挙げられる。本発明においては、重金属化合物として、四酸化オスミウムを用いることが好ましい。四酸化オスミウムは炭素−炭素二重結合に付加する性質があり、天然ゴムの主成分である1,4−cis−ポリイソブレンと結合することができる。具体的には、ラテックス等のゴム粒子を含む試料に四酸化オスミウムを添加することにより、ゴム粒子と四酸化オスミウムとを結合させることができる。
【0016】
通常の電子顕微鏡では、コントラストを増強させるために、四酸化オスミウムで観察試料をコーティングする。このため、重金属化合物として四酸化オスミウムを用いることにより、ゴム粒子を電子顕微鏡で感度よく観察することができる。
【0017】
本発明のゴム粒子試料の調製方法は、あらゆるゴム粒子を調製することができるが、ラテックス(主にポリイソプレン)中に含まれているゴム粒子に対してなされることが好ましい。このようなラテックスとしては、ラテックス産生植物から回収されたラテックスであれば、特に限定されるものではなく、ラテックス産生植物から回収された直後のものであってもよく、回収後一定期間保存されたものであってもよい。なお、ラテックス産生植物からの天然ゴムラテックスの回収は、常法により行うことができる。
【0018】
ラテックス産生植物は、ラテックス(主にポリイソプレン)を産生する植物であれば、特に限定されるものではなく、乳管を有しており、乳管中にラテックスが含まれている植物であってもよく、乳管細胞内ではなく細胞間隙中にラテックスが含まれている植物であってもよい。このようなラテックス産生植物として、例えば、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Havea brasiliensis)、セアラゴムノキ(Manihot glaziovii)、クワ科のインドゴムノキ(Ficus elastica)、パナゴムノキ(Castilloa elastica)、ラゴスゴムノキ(Ficus lutea Vahl)、マメ科のアラビアゴムノキ(Accacia senegal)、トラガントゴムノキ(Astragalus gummifer)、キョウチクトウ科のクワガタノキ(Dyera costulata)、ザンジバルツルゴム(Landolphia kirkii)、フンツミアエラスチカ(Funtumia elastica)、ウルセオラ(Urceola elastica)、キク科のグアユールゴムノキ(Parthenium argentatum)、ゴムタンポポ(Taraxacum kok−saghyz)、アカテツ科のガタパーチャノキ(palaguium gatta)、バラタゴムノキ(Mimusops balata)、サポジラ(Achras zapota)、ガガイモ科のオオバナアサガオ(Cryptostegia grandiflora)、トチュウ科のトチュウ(Eucommia ulmoides)等が挙げられる。中でも、パラゴムノキ、セアラゴムノキ、ゴムタンポポ等であることが好ましく、工業用天然ゴム原料として汎用されているパラゴムノキであることがより好ましい。
【0019】
ゴム粒子に重金属化合物を結合させると、比重が高められたゴム粒子は沈降しやすくなる。そこで、例えば、ラテックス中のゴム粒子に対しては、下記工程(c)及び(d)を行うことにより、ラテックスからゴム粒子を濃縮した状態で回収することもできる。
(a)ラテックスに重金属化合物を添加し、当該ラテックスに含まれているゴム粒子と重金属化合物とを結合させる工程と、
(b)前記工程(a)の後、遠心分離処理することにより、当該ラテックスから、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子を回収する工程。
【0020】
工程(b)により回収されたゴム粒子を電子顕微鏡観察に用いることにより、ゴム粒子濃度が低い場合であっても、効率よくゴム粒子を観察することができる。さらに、工程(b)により回収されたゴム粒子に水や適当なバッファーを加えた後に、遠心分離処理等によってゴム粒子を回収することにより、ゴム粒子を洗浄することもできる。
【0021】
また、通常、ゴム粒子表面のタンパク質の局在を電子顕微鏡により観察するためには、ゴム粒子を、金粒子で標識された抗体(金粒子標識抗体)を用いた免疫反応により標識する必要がある。ラテックスに直接抗体を添加して免疫反応を行うと、比重の軽いゴム粒子は沈降し難く、余剰の抗体の除去や、その後のゴム粒子の洗浄操作が困難であった。このため、ゴム粒子と結合している金粒子標識抗体と、ゴム粒子に結合していない余剰の金粒子標識抗体とが混在した状態のラテックスを電子顕微鏡用グリッド膜上の載せることになり、観察しづらいという問題があった。
【0022】
これに対して、重金属化合物を結合させたゴム粒子を金粒子標識抗体で標識した場合には、比重の差を利用することにより、免疫反応後に、余剰の金粒子標識抗体の除去やゴム粒子の洗浄を効率よく行うことができる。
【0023】
例えば、前記工程(b)の後、下記工程(c)及び(d)を行うことにより、余剰の金粒子標識抗体が除去されたゴム粒子を回収することができる。
(c)前記工程(b)において回収されたゴム粒子を、金粒子標識抗体を用いて標識する工程と、
(d)前記工程(c)の後、遠心分離処理することにより、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子から余剰の抗体を除去する工程。
【0024】
また、ゴム粒子に対して金粒子標識抗体の標識を行う免疫反応を、ラテックス中で行うこともできる。具体的には、工程(a)の後、下記工程(c’)及び(d’)を行うことによっても、余剰の金粒子標識抗体が除去されたゴム粒子を回収することができる。
(c’)前記工程(a)の後、前記ラテックス中のゴム粒子を、金粒子で標識された抗体を用いて標識する工程と、
(d’)前記工程(c’)の後、遠心分離処理することにより、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子から余剰の抗体を除去する工程。
【0025】
金粒子標識抗体を用いてゴム粒子を標識する方法は、特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知のいずれの手法によって行ってもよい。例えば、金粒子標識抗体として、ゴム粒子表面に局在するタンパク質に対する特異的な抗体を金粒子で標識したものを用い、この金粒子標識抗体とゴム粒子とを免疫反応により結合させることにより、金粒子標識抗体でゴム粒子を標識することができる。また、ゴム粒子表面に局在するタンパク質に対する特異的な抗体を一次抗体と、当該一次抗体に特異的に結合する二次抗体を金粒子で標識した金粒子標抗体とを用いて、まず、一次抗体とゴム粒子とを結合させた後、当該一次抗体に金粒子標抗体を結合させることによっても、金粒子標識抗体でゴム粒子を標識することができる。
【0026】
本発明のゴム粒子試料の調製方法により調製されたゴム粒子試料は、透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡(SEM)のいずれを用いて観察してもよい。電子顕微鏡による観察は、常法により行うことができる。例えば、SEM観察は、低真空(1〜3000Pa、より一般的には1〜270Pa)下、加速電圧5〜15kvで行うことができる。
【0027】
本発明のゴム粒子試料の調製方法では、遠心分離処理等の比重差を利用した分取方法によりゴム粒子を効率よく回収することができる。このため、溶液中で金粒子標識抗体とゴム粒子とを直接結合させることができ、金粒子標識抗体により標識されたゴム粒子の懸濁液を得ることができる。このようにして得られたゴム粒子の懸濁液を、シャーレや走査型電子顕微鏡用試料台に滴下し、低真空SEMや大気圧SEMを用いることができる。従来の透過型電子顕微鏡による観察は、乾燥させたゴム粒子を真空下で観察するため、観察中にゴム粒子の収縮等の形態変化が起こる懸念があった。これに対して、水を含んだ状態で低真空下又は大気圧下で走査型電子顕微鏡観察することにより、ゴム粒子のロスが少なく、形態変化の懸念のないありのままの状態のゴム粒子を長時間観察することが可能となる。
【0028】
なお、本発明のゴム粒子試料の調製方法は、ゴム粒子以外の比重が軽い微粒子を含む懸濁液から当該微粒子を回収する方法、また、回収された微粒子を電子顕微鏡で観察する方法にも応用可能である。
【実施例】
【0029】
次に実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0030】
[実験例1]
パラゴムノキから回収された天然ゴムラテックスに、0.2%四酸化オスミウム溶液を滴下して静置したところ、ゴム粒子が沈殿することが観察された。
この四酸化オスミウムを滴下したラテックスを、12,000r.p.m.で10分間遠心処理を行ったところ、四酸化オスミウム溶液を滴下した系では、黒い遠心分離残渣が観察された。この黒い遠心分離残渣は、四酸化オスミウムが結合して染色されたゴム粒子と思われた。一方で、四酸化オスミウムを滴下しなかったラテックスに対して同様に遠心処理を行ったところ、上層に白いゴム層が観察された。図1は、遠心分離処理後のチューブの写真図である。図1の右列(「オスミウム添加」)が四酸化オスミウム溶液を滴下したラテックスの結果であり、左列(「オスミウム無添加」)が四酸化オスミウム溶液を滴下しなかったラテックスの結果である。また、両列の上段は遠心分離処理前であり、中段は遠心分離処理後の図を示す。また、下段は、中段図のチューブの拡大図である。
この黒い遠心分離残渣を光学顕微鏡で観察したところ、オスミウムが結合したゴム粒子であることが確認できた。図2に、黒い遠心分離残渣の光学顕微鏡図を示す。
さらに、この黒い遠心分離残渣の粒度分布を、粒度分布測定装置LS 13320(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。図3は、四酸化オスミウム溶液を滴下したラテックス(「オスミウム添加」)と四酸化オスミウム溶液を滴下しなかったラテックス(「オスミウム無添加」)の粒度分布の測定結果を示した図である。この結果、四酸化オスミウムを滴下しなかったラテックス中のゴム粒子とほぼ同様の粒度分布を示した。この測定結果から、黒い遠心分離残渣が、特定のゴム粒子のみが四酸化オスミウムと結合して回収されたものではないことが示された。
これらの結果から、ラテックスに四酸化オスミウムを滴下して、ゴム粒子に四酸化オスミウムを結合させることにより、ゴム粒子を遠心分離残渣として効率よく回収できることが明らかである。
【0031】
さらに、回収されたゴム粒子に抗REF抗体を滴下して、室温で1時間インキュベーションした後、さらに金粒子を結合させた金粒子標識抗マウスIgG抗体を添加して室温で1時間インキュベーションした。その後、遠心分離処理を行って、抗体と結合させたゴム粒子を遠心分離残渣として回収した。回収されたゴム粒子を、水分を含んだ懸濁液の状態で走査型電子顕微鏡用試料台に滴下し、低真空SEMで観察したところ、金粒子標識抗マウスIgG抗体が結合したゴム粒子を観察することができた。図4は、回収されたゴム粒子の低真空SEM観察像である。図中、ゴム粒子表面に観察された白い小粒子の幾つかを矢印で示した。この白い小粒子は、ゴム粒子表面のREFタンパク質と結合した金粒子標識抗マウスIgG抗体である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のゴム粒子試料の調製方法を用いることにより、天然ゴムラテックス等に含まれているゴム粒子を、電子顕微鏡を用いて、効率よくかつ詳細に観察し評価することができるため、天然ゴムの生産及び製造の分野で特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡観察のためのゴム粒子試料を調製する方法であって、
ゴム粒子に重金属化合物を結合させることを特徴とするゴム粒子試料の調製方法。
【請求項2】
(a)ラテックスに重金属化合物を添加し、当該ラテックスに含まれているゴム粒子と重金属化合物とを結合させる工程と、
(b)前記工程(a)の後、遠心分離処理することにより、当該ラテックスから、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子を回収する工程と、
を有することを特徴とする、請求項1記載のゴム粒子試料の調製方法。
【請求項3】
さらに、
(c)前記工程(b)において回収されたゴム粒子を、金粒子で標識された抗体を用いて標識する工程と、
(d)前記工程(c)の後、遠心分離処理することにより、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子から余剰の抗体を除去する工程と、
を有することを特徴とする、請求項2記載のゴム粒子試料の調製方法。
【請求項4】
(a)ラテックスに重金属化合物を添加し、当該ラテックスに含まれているゴム粒子と重金属化合物とを結合させる工程と、
(c’)前記工程(a)の後、前記ラテックス中のゴム粒子を、金粒子で標識された抗体を用いて標識する工程と、
(d’)前記工程(c’)の後、遠心分離処理することにより、前記重金属化合物が結合されたゴム粒子から余剰の抗体を除去する工程と、
を有することを特徴とする、請求項1記載のゴム粒子試料の調製方法。
【請求項5】
前記重金属化合物が四酸化オスミウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のゴム粒子試料の調製方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のゴム粒子試料の調製方法により調製されたゴム粒子試料を、電子顕微鏡を用いて観察することを特徴とする、ゴム粒子の観察方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203095(P2011−203095A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70228(P2010−70228)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】