説明

電極の効率及びエネルギー密度が改良されたカソード混合物

リチウム二次電池用のカソード混合物であって、下記の式I:
LiFe(P1−x) (I)
により表され、リン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999である組成物を有するカソード活性物質を含んでなり、カソード活性物質の操作効率を、アノード活性物質のより低い操作効率のレベルに合わせ、カソード活性物質のエネルギー密度を改良することができる、カソード混合物を提供する。
このカソード混合物は、バッテリーの操作効率を最大限にし、電極浪費を最少に抑え、従って、バッテリーの製造コストを下げる。さらに、本発明による、リン(P)のモル画分(1−x)が1未満であるカソード活性物質は、Fe2+及びFe3+の両方を含み、これによって、有利なことに、構造的変形を引き起こさず、イオン伝導性を改良し、優れた速度特性を示し、充電/放電によるIR低下を抑制し、それによって、バッテリーに高いエネルギー密度を与える。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電極効率及びエネルギー密度が改良されたカソード混合物に関する。より詳しくは、本発明は、カソード活性物質の操作効率を、アノード活性物質のより低い操作効率のレベルに合わせ、カソード活性物質のエネルギー密度を改良するために、カソード活性物質として、リン酸リチウム鉄(LiFe(P1−x))、式中、リン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999である、を含んでなるカソード混合物に関する。
【発明の背景】
【0002】
可動装置の技術的開発及び需要増加により、エネルギー供給源として二次電池の需要が急速に増加している。これら二次電池の中で、エネルギー密度及び電圧が高く、耐用寿命が長く、自己放電が低いリチウム二次電池が市販され、広く使用されている。
【0003】
リチウム二次電池は、一般的にアノード活性物質として炭素材料を使用する。また、アノード活性物質として、リチウム金属、硫黄化合物、ケイ素化合物、スズ化合物、等の使用が考えられている。一方、リチウム二次電池は、カソード活性物質として、一般的にリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)を使用する。また、カソード活性物質として、リチウム−マンガン複合酸化物、例えば層状結晶構造を有するLiMnO及びスピネル結晶構造を有するLiMn、及びリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、の使用も考えられている。
【0004】
LiCoOは、優れた物理的特性、例えばサイクル寿命、のために現在使用されているが、安定性が低く、コバルトを使用するためにコストが高く、天然資源の制限及び電気自動車用電力供給源としての大量使用に制限があるのが難点である。LiNiOは、その製造方法に関連する多くの特徴により、妥当なコストにおける大量生産に実使用するには不適等である。リチウムマンガン酸化物、例えばLiMnO及びLiMn、には、サイクル寿命が短いという欠点がある。
【0005】
近年、カソード活性物質としてリチウム遷移金属リン酸塩を使用する方法が研究されている。リチウム遷移金属リン酸塩は、大きくNASICON構造を有するLixM(PO)及びオリビン構造を有するLiMPOに分類され、従来のLiCoOと比較して、優れた高温安定性を示すことが分かっている。今日まで、Li(PO)が最も広く知られているNASICON構造化合物であり、LiFePO4及びLi(Mn、Fe) POが最も広く知られているオリビン構造化合物である。
【0006】
オリビン構造化合物の中で、LiFePOは、リチウム(Li)と比較して3.5Vの高い出力電圧及び170mAh/gの理論的容量を有し、コバルト(Co) と比較して優れた高温安定性を示し、成分として安価なFeを使用し、従って、リチウム二次電池用のカソード活性物質として非常に適している。しかし、そのようなオリビン型LiFePOは、操作効率が約100%であり、従って、アノードの操作効率で制御するのが困難である。
【0007】
これに関して、バッテリー中のカソード及びアノードに同等の操作効率を与えることにより、電極の非効率的な浪費を最少に抑えることができる。例えば、約100%の効率を有するアノードをバッテリーに使用する場合、そのバッテリーは100%効率を発揮することができるのに対し、100%効率を有するカソード及び90%効率を有するアノードをバッテリーに使用する場合、そのバッテリーは、90%効率しか発揮できない。その結果、カソードの10%効率は浪費され、不利である。
【0008】
例えば、一般的に使用される炭素系アノード活性物質の場合、第一充電を包含する初期充電/放電により約10〜20%の不可逆的容量が発生し、その可逆的容量は約80〜90%に過ぎない。従って、100%の効率を有する材料をカソード活性物質として使用すると、その電極材料は、不利なことに、約10〜20%の不可逆的容量に正比例して浪費される。さらに、比較的低い効率を有するアノード活性物質を使用する場合、カソードのより高い効率に応じて、使用するアノード活性物質の量を増加する必要があり、必然的に製造コストが増加し、不利である。
【0009】
他方、100%効率を有するカソードを使用するバッテリーに100%効率を与えるには、約100%効率を有するアノードを使用すべきである。この場合、アノード活性物質の選択範囲が狭くなり、不利である。
【0010】
しかし、今日まで、カソード活性物質としてLiFePOの効率を制御する方法を示唆する技術は無い。
【0011】
さらに、LiFePOの導電率を著しく改良し、初期IR低下及びLi拡散特性を改良することにより、Li拡散の問題を解決することができる技術的進歩が益々求められている。
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明は、上記の問題及び他の未解決の技術的問題を解決するためになされたものである。
【0013】
上記の問題を解決するための、様々な広範囲で集中的な研究及び実験の結果、本発明者らは、高効率リン酸リチウム鉄におけるリン(P)のモル画分(1−x)を0.910〜0.999の範囲内に制御することにより、カソード活性物質の効率を、アノード活性物質のより低い操作効率のレベルに合わせ、電極効率の浪費を最少に抑え、電極及びバッテリーの効率及び容量を究極的に最大限にすることが可能であること、及びFe原子価を制御することにより、IR低下及び速度(rate)特性の改良、充電/放電プラトー電位の改良、及びそれによってエネルギー密度の最大限の増加が可能になることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
【0014】
本発明の上記の、及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら記載する下記の詳細な説明により、より深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実験例2におけるXRD/ND精製検定の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実験例2におけるHRTEM構造分析の結果を示す画像である。
【図3】図3は、実験例2におけるMossbauer効果を使用するFe原子価分析の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、実験例2における放電結果を示すグラフである。
【好ましい実施態様の詳細な説明】
【0016】
本発明の一態様により、上記の、及び他の目的は、リチウム二次電池用のカソード混合物であって、下記の式I
LiFe(P1−x) (I)
により表され、リン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999である組成物を有するカソード活性物質を含んでなり、カソード活性物質の操作効率を、アノード活性物質のより低い操作効率のレベルに合わせ、カソード活性物質のエネルギー密度を改良することができる、カソード混合物を提供することにより、達成される。
【0017】
前に述べたように、LiFePOは、約100%の操作効率を有する。従って、より低い操作効率を有するアノード活性物質をアノード活性物質として使用する場合、電極材料は、アノード活性物質にカソード活性物質に匹敵する可逆的容量を持たせることが必要になり、従って、必然的に製造コストの増加を引き起こし、不利である。
【0018】
これに関して、本発明者らは、リン(P)のモル画分(1−x)を0.910〜0.999の範囲内に制御することにより、初期操作効率を相対的に下げられることを見出した。この発見により、操作効率が低いアノード活性物質を使用しても、カソード活性物質の操作効率をアノード活性物質の操作効率レベルに合わせることができる。
【0019】
従って、本発明により、電極材料の浪費を最少に抑え、それによって、製造コストを著しく下げ、バッテリーの所望の効率及び容量を確保することができ、製造プロセスが非常に有利になる。さらに、本発明により、アノード活性物質の不可逆的容量に関連する問題が解決され、バッテリー効率を考慮した時に、カソード活性物質と組み合わせて使用するアノード活性物質の選択範囲が広くなる。
【0020】
さらに、一般的なLiFePOは原子価が2+のFeだけを含むのに対し、本発明によるリン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999の範囲内にあるLiFe(P1−x)は、リン(P)のモル画分が減少しており、従って、Fe2+及びFe3+の両方を含む。活性物質の構造中に存在する金属が混合された原子価(例えばFe2+/Fe3+)を有する場合、単一原子価を有する金属と比較して、導電率及びLi拡散に関連するイオン伝導率が増加し、従って、全体的な速度特性が著しく改良される。
【0021】
本発明者らは、本発明のカソード活性物質が、構造的変化を全く引き起こさずに、充電/放電によるIR低下を抑制し、放電プロファイルを強化し、従って、究極的にバッテリーのエネルギー密度を増加させることを発見した。
【0022】
ここで使用する用語「より低い操作効率を有するアノード活性物質」は、式Iの化合物であるカソード活性物質の操作効率より低い操作効率を有する材料を意味し、カソード活性物質に匹敵する理論的容量を有するが、最初の充電を含む初期充電/放電により内部に発生した不可逆的容量のために、カソード活性物質と比較して、より低い効率を有する全てのアノード活性物質及び操作効率が低下したアノード活性物質を包含する。
【0023】
このアノード活性物質は、100%より低い、好ましくは90〜98%、より好ましくは90〜95%の操作効率を有する。
【0024】
例えば、そのようなアノード活性物質は、好ましくは高い放電容量を発揮できる炭素系材料である。
【0025】
リチウムイオンの可逆的挿入/脱挿入を可能にする限り、どのような炭素系材料でも、特に制限無く、使用できる。炭素系材料は、結晶性炭素系材料、無定形炭素系材料、またはそれらの組合せでよい。結晶性炭素系材料の代表的な例は、グラファイトである。グラファイト系結晶性炭素には、ポテト−またはメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)−形状の人造グラファイト、平らな縁部を得るために表面処理した天然グラファイト、等が挙げられる。さらに、無定形炭素系化合物は、無定形結晶構造を有する炭素原子を含んでなる材料であり、その例には、フェノールまたはフラン樹脂を熱分解にかけることにより調製した難黒鉛化性炭素(硬質炭素)及びコークス、ニードルコークスまたはピッチを炭素化することにより調製した易黒鉛化性炭素(軟質炭素)が挙げられる。
【0026】
好ましい実施態様では、炭素材料は、優れた密度及び導電性のために高い容量及び高いエネルギー密度を有し、従って、優れた出力及び速度特性を示す天然または人造グラファイトでよい。より好ましくは、炭素材料は、コークス、ピッチ、等を約400℃で加熱することにより調製した光学的異方性球状粒子であるメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)でよい。
【0027】
さらに、本発明で使用できる炭素材料の例としては、LiFe(0≦y≦1)、LiWO(0≦y≦1)及びSnMe1−xMe’(Me=Mn、Fe、Pb、Ge、Me’=Al、B、P、Si、周期律表のI族、II族及びIII族元素、ハロゲン、0<x≦1、1≦y≦3、及び1≦z≦8)金属複合酸化物、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素系合金、スズ系合金、及び金属酸化物、例えばSnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、等が挙げられる。
【0028】
本発明では、リン(P)のモル画分が0.910〜0.999、好ましくは0.955〜0.995の範囲内にある。リン(P)のモル画分が1である場合、操作効率は100%に近くなり、モル画分が0.91未満である場合、LiFeP(1−x)の結晶構造が変形し、不利なことに構造的安定性を維持するのが困難になる。
【0029】
カソード活性物質の操作効率は、実質的にリン(P)のモル画分に比例する。従って、本発明によるリン(P)のモル画分が0.910〜0.999であるカソード活性物質は、90〜99.9%、好ましくは95〜99%の操作効率のレベルに合わせることができる。
【0030】
リン(P)のモル画分を0.910〜0.999に調節するための幾つかの方法がある。例えば、LiFePOを製造する工程で添加するリン(P)前駆物質の量を下げるか、または合成工程でpH調節により制御する。前者の方法では、添加するリン(P)前駆物質の量を下げる場合、僅かに不足したリン(P)の存在下で反応生成物が製造され、望ましい範囲のモル画分が得られる。後者の方法では、僅かに低下したpHの下で、リン(P)の一部が反応生成物から溶離し、望ましい範囲のモル画分を確保する。
【0031】
カソード活性物質に加えて、カソード混合物は、所望により導電性材料、結合剤、充填材、等を含んでなることができる。
【0032】
導電性材料は、一般的に、カソード活性物質を包含する混合物の総重量に対して1〜50重量%の量で加える。導電性材料が好適な導電率を有し、製造された二次電池中で有害な化学変化を引き起こさない限り、どのような導電性材料でも使用できる。本発明で使用できる導電性材料の例としては、グラファイト、例えば天然または人造グラファイト、カーボンブラック、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、Ketjenブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラック、導電性繊維、例えば炭素繊維及び金属繊維、金属粉末、例えばフッ化炭素粉末、アルミニウム粉末及びニッケル粉末、導電性ホイスカー、例えば酸化亜鉛及びチタン酸カリウム、導電性金属酸化物、例えば酸化チタン、及びポリフェニレン誘導体を包含する導電性材料を挙げることができる。
【0033】
結合剤は、活性物質を導電性材料及び集電装置に結合し易くする成分である。結合剤は、一般的にアノード活性物質を包含するコンパウンドの総重量に対して1〜50重量%の量で添加する。結合剤の例には、ポリビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム及び各種の共重合体を挙げることができる。
【0034】
充填材は、アノードの膨脹を抑制するために使用する成分である。充填材には、製造されたバッテリー中で有害な化学変化を引き起こさず、繊維状材料である限り、特に制限は無い。充填材の例には、オレフィン重合体、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、及び繊維状材料、例えばガラス繊維及び炭素繊維、が挙げられる。
【0035】
また、本発明は、二次電池用のカソードを提供するが、そこではカソード混合物を集電装置に塗布する。
【0036】
二次電池用のカソードは、カソード混合物を溶剤、例えばNMP、と混合して得たスラリーをカソード集電装置に塗布し、続いて乾燥及びプレス−ロール加工することにより、製造することができる。
【0037】
カソード集電装置は、一般的に厚さが約3〜500μmになるように製造する。カソード集電装置が、製造するバッテリーで有害な化学変化を引き起こさずに、高い導電性を有する限り、カソード集電装置には特に制限は無い。カソード集電装置の例としては、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結させた炭素、及び炭素、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理したアルミニウムまたはステンレス鋼を挙げることができる。必要であれば、これらの集電装置は、カソード活性物質に対する密着強度を高めるために、その表面上に細かい凹凸を形成するように加工することができる。さらに、集電装置は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質構造、フォーム及び不織布を包含する様々な形態で製造することができる。
【0038】
また、本発明は、カソード、アノード、セパレータ、及びリチウム塩含有非水性電解質を含んでなるリチウム二次電池を提供する。リチウム二次電池は、カソード活性物質として、LiFe(P1−x)、式中、リン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999の範囲内にある、を使用し、それによって、カソード活性物質の操作効率を、アノード活性物質の操作効率のレベルに合わせ、有利なことに、高い導電性及びイオン伝導性により、バッテリー効率を最大にし、優れた速度特性及び改良されたエネルギー密度を実現することができる。
【0039】
例えば、アノードは、アノード活性物質を含んでなるアノード混合物をアノード集電装置に塗布し、続いて乾燥させることにより、製造される。アノード混合物は、上記の成分、すなわち、導電性材料、結合剤及び充填材、を含んでなることができる。
【0040】
アノード集電装置は、一般的に厚さが約3〜500μmになるように製造する。アノード集電装置には、それが、製造されるバッテリー中で有害な化学変化を引き起こさずに、好適な導電性を有する限り、特に制限は無い。アノード集電装置の例としては、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結させた炭素、及び炭素、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理した銅またはステンレス鋼、及びアルミニウム−カドミウム合金を挙げることができる。カソード集電装置と同様に、必要であれば、これらの集電装置も、アノード活性物質に対する密着強度を高めるために、処理して表面上に微小の凹凸を持たせることができる。さらに、集電装置は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質構造、フォーム及び不織布を包含する様々な形態で使用することができる。
【0041】
カソードとアノードとの間には、セパレータを配置する。セパレータとしては、高いイオン透過性及び機械的強度を有する絶縁性の薄いフィルムを使用する。セパレータは、典型的には細孔直径が0.01〜10μm、厚さが5〜300μmである。セパレータとしては、耐薬品性及び疎水性を有するオレフィン重合体、例えばポリプロピレン、及び/またはガラス繊維またはポリエチレンから製造されたシートまたは不織布を使用する。固体の電解質、例えば重合体、を電解質として使用する場合、その固体電解質は、セパレータ及び電解質の両方として作用することができる。
【0042】
リチウム塩含有非水性電解質は、非水性電解質及びリチウム塩から構成される。非水性電解質としては、非水性電解質溶液、固体電解質及び無機固体電解質を使用できる。
【0043】
本発明で使用できる非水性電解質溶液としては、例えば、非プロトン性有機溶剤、例えばN-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ−ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシFranc、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルを挙げることができる。
【0044】
本発明で使用する有機固体電解質の例としては、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステル重合体、ポリ攪拌リシン、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、及びイオン系解離基を含む重合体が挙げられる。
【0045】
本発明で使用する無機固体電解質の例としては、リチウムの窒化物、ハロゲン化物及び硫酸塩、例えばLiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH及びLiPO−LiS−SiSが挙げられる。
【0046】
リチウム塩は、上記の非水性電解質に容易に溶解する材料であり、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSO)NLi、塩化ホウ素酸リチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、リチウムテトラフェニルボレート及びイミドを包含することができる。
【0047】
さらに、充電/放電特性及び難燃性を改良するために、例えばピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサホスホリックトリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換されたオキサゾリジノン、N,N-置換されたイミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、等を非水性電解質に加えることができる。必要であれば、不燃性を付与するために、非水性電解質は、ハロゲン含有溶剤、例えば四塩化炭素及び三フッ化エチレン、をさらに包含することができる。さらに、高温貯蔵特性を改良するために、非水性電解質は、二酸化炭素ガスをさらに包含することができる。
【0048】
諸例
ここで、下記の例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。これらの例は、本発明を説明するためにのみ記載するのであって、本発明の範囲及び精神を制限するものではない。
【0049】
[製造例1〜4]
LiFePOの製造方法として良く知られている水熱製法により、リン(P)の含有量が0.94(製造例1)、0.96(製造例2)、0.97(製造例3)及び0.985(製造例4)であるカソード活性物質LiFe(P1−x)を下記の方法に従って製造した。より詳細な説明を以下に記載する。
【0050】
Li及びFe供給源として水酸化リチウム(LiOH-HO)及び硫酸鉄(FeSO4−6O)の蒸留水溶液及びP供給源としてリン酸(HPO)を反応チャンバーに入れた。反応チャンバー中に入れたこれらの材料のモル範囲は、FeSO0.5mol、LiOH-HO0.5mol〜1.5mol、HPO0.5mol〜0.6molであった。
【0051】
反応は、反応チャンバー中、380℃で15秒間行った。反応圧力は、圧力制御装置を使用して270barに維持した。過剰のLi及びP化合物を、一般的に遅い反応速度を有する水熱反応に加えた場合、高温、高圧下で不純物が一般的に発生し易い。従って、この例では、急反応速度を維持することにより、不純物の発生を抑制した。少量の水性アンモニアを加えることにより、溶液のpHを6に調整した。こうして調製したLiFePO粒子を洗浄し、次いで真空下90℃で乾燥させた。乾燥した粒子を、スクロースで炭素被覆し、700℃で10時間熱処理にかけた。
【0052】
[例1]
カソード活性物質として、製造例1で調製したLiFeP0.9490重量%、導電性材料としてSuper-P 5重量%及び結合剤としてPVdF 5重量%を、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)に加え、カソード混合物スラリーを調製した。このカソード混合物スラリーをアルミニウムホイルの一表面に塗布し、続いて乾燥させ、プレス加工してカソードを製造した。
【0053】
アノード活性物質として、炭素95重量%、導電性材料としてSuper-P 1.5重量%及び結合剤としてPVdF 3.5重量%を、溶剤としてNMPに加え、アノード混合物スラリーを調製した。このアノード混合物スラリーをアルミニウムホイルの一表面に塗布し、続いて乾燥させ、プレス加工してアノードを製造した。
【0054】
セパレータとしてcellguard(商品名)を使用し、カソード及びアノードを張り合わせて電極アセンブリーを製造し、この電極アセンブリーに、環状及び直鎖状カーボネート混合溶剤中に1MLiPFを含むリチウム非水性電解質を加え、バッテリーを製造した。
【0055】
[例2]
カソード活性物質として、製造例2で調製したLiFeP0.96を使用した以外は、例1と同じ様式でバッテリーを製造した。
【0056】
[例3]
カソード活性物質として、製造例3で調製したLiFeP0.97を使用した以外は、例1と同じ様式でバッテリーを製造した。
【0057】
[例4]
カソード活性物質として、製造例4で調製したLiFeP0.985を使用した以外は、例1と同じ様式でバッテリーを製造した。
【0058】
[比較例1]
カソード活性物質として、LiFePOを使用した以外は、例1と同じ様式でバッテリーを製造した。
【0059】
[実験例1]
例1及び比較例1で製造したバッテリーに対して操作効率を測定し、得られた結果を下記の表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
下記の表1から分かるように、各サイクルにおける充電/放電効率は、LiFePO中に存在するPの量を1未満のレベルに調整することにより、100%未満のレベルに調節することができる。
【0062】
[実験例2]
製造例4で得たカソード活性物質をXRDにかけ、例4及び比較例1で製造したバッテリーをND(中性子)精製検定、HRTEM構造的分析、及びMossbauer効果を使用するFe原子価分析にかけた。得られた結果を図1〜3に示す。
【0063】
これらの図から分かるように、本発明のカソード活性物質は、Pのモル画分が1未満であるが、構造的変化を受けず、その、不純物を含まない単結晶オリビン構造化合物維持していた。
【0064】
さらに、0.5C放電による電圧の変動を測定し、得られた結果を図4に示す。図4から分かるように、本発明のバッテリー(LiFe(P1−x)、x=0.015)は、比較例1のバッテリー(LiFe(PO)と比較して、初期IR低下がより低く、より高温で放電プロファイルを示した。これは、イオン伝導性及び導電性の著しい改良、従って、バッテリーのエネルギー密度の著しい改良を示唆している。
【0065】
この挙動は、図3に示すように、Mossbauer効果を使用するFe原子価分析で、支配的な量のFe2+及び少量のFe3+が測定されたことを考慮し、Fe2+及びFe3+がカソード活性物質中に共存しているためであると考えられる。これに関して、図1及び2から明らかなように、XRD/ND精製及びHRTEMで不純物を含まない単一相が観察され、これは、オリビン構造中におけるFe2+/3+共存を示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0066】
上記の説明から明らかなように、本発明により、高効率カソード活性物質であるLiFePOにおけるリン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999の範囲内に制御され、それによって、カソード活性物質の操作効率を、アノード活性物質のより低い操作効率のレベルに合わせ、バッテリーの有効効率を最大限にし、電極浪費を最少に抑え、バッテリーの製造コストを下げることができる。さらに、Fe原子価を制御することにより、IR低下及び速度特性ならびに充電/放電プラトー電位が改良され、エネルギー密度を増加した優れたバッテリーの製造が実現される。
【0067】
本発明の好ましい実施態様を例示のために開示したが、当業者には明らかなように、請求項に記載する本発明の範囲及び精神から離れることなく、様々な修正、追加、及び置き換えが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用のカソード混合物であって、
下記式(I)により表される組成物を有してなるカソード活性物質を含んでなり、
LiFe(P1−x) (I)
上記式中、リン(P)のモル画分(1−x)が0.910〜0.999であり、
前記カソード活性物質の操作効率を、アノード活性物質のより低い操作効率のレベルに合わせてなり、かつ、
前記カソード活性物質のエネルギー密度を改良するものである、カソード混合物。
【請求項2】
前記アノード活性物質の操作効率が90〜98%である、請求項1に記載のカソード混合物。
【請求項3】
前記アノード活性物質が炭素系材料である、請求項2に記載のカソード混合物。
【請求項4】
前記リン(P)のモル画分(1−x)が0.955〜0.995である、請求項1に記載のカソード混合物。
【請求項5】
前記アノード活性物質の操作効率が95〜99.9%のレベルとされてなる、請求項1に記載のカソード混合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のカソード混合物が集電装置上に塗布されてなる電極を備えてなる、カソードリチウム二次電池。
【請求項7】
請求項6に記載のカソードを備えてなるリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−506610(P2012−506610A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533102(P2011−533102)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006082
【国際公開番号】WO2010/047522
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】