電極バンプの形成方法および半導体パッケージの製造方法
【課題】高性能・小型化に対応した半導体装置に用いられるような電極バンプを形成する。
【解決手段】基板1に配設された電極パッド2上に電極バンプ7を形成する電極バンプの形成方法であって、(a)電極バンプ7の基材となる導電性物5を形成する工程と、(b)導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングする工程と、(c)電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされた導電性物5を載置した後、導電性物5に対して熱処理を施すことによって、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7を形成する工程と、を含む。
【解決手段】基板1に配設された電極パッド2上に電極バンプ7を形成する電極バンプの形成方法であって、(a)電極バンプ7の基材となる導電性物5を形成する工程と、(b)導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングする工程と、(c)電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされた導電性物5を載置した後、導電性物5に対して熱処理を施すことによって、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7を形成する工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極バンプの形成技術および半導体パッケージの製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2001−284382号公報(特許文献1)には、フラックス作用を有する熱硬化性樹脂(特許文献1では活性樹脂という)をLSIチップのバンプ先端および/または少なくとも実装基板のパッドに塗布し、それらを位置合わせして前記LSIチップを搭載し、はんだバンプを加熱・溶解してバンプと基板間を接続する技術が開示されている。この特許文献1の技術は、その明細書段落[0022]、[0023]に記載のように、フラックス残渣による信頼性への影響を防止するために、フラックスの代わりに活性樹脂を用いてはんだ接続するものである。
【0003】
また、特開2004−160514号公報(特許文献2)には、溶媒にフッ素樹脂を溶解した溶液中にはんだボールを浸漬し、前記溶液からはんだボールを取り出した後、はんだボール表面に付着した前記溶媒を揮発させてはんだボール表面をフッ素樹脂コーティングするはんだボールのコーティング方法が開示されている。この特許文献2の技術は、その明細書段落[0007]、[0008]に記載のように、はんだボール同士の微接着の発生を低減するために、はんだボール表面をフッ素樹脂でコーティングするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−284382号公報
【特許文献2】特開2004−160514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置のパッケージ形態として、例えば、はんだバンプ(あるいははんだボール)を有するBGA(Ball Grid Array)構造やCSP(Chip Size Package)構造がある。以下では、BGA構造の半導体パッケージの製造方法の一例を概略して説明する。
【0006】
まず、複数の電極パッドが配設された基板を形成した後、各電極パッド上にフラックス層を印刷法によって形成(塗布)する。次いで、電極パッド上にフラックス層を介してはんだボールを載置した後、リフロー(Reflow)処理することによってはんだボールと電極パッドとを接合する。その後、残存しているフラックス層を除去するために洗浄液を用いて洗浄を行い、基板を乾燥させることによって、電極バンプ(はんだバンプ)を有するBGA構造の半導体パッケージが形成される。
【0007】
しかしながら、半導体装置の高性能・小型化に伴って、半導体パッケージの電極バンプ径が小さくなり、またバンプ間も狭ピッチとなると、前述した製造方法では、フラックス層の除去を行ってもバンプ間にフラックスの残渣が発生する場合がある。フラックスの残渣は配線に用いられる金属の腐食を引き起こすためショート(短絡)の原因となり、半導体パッケージの信頼性を低下させてしまう。
【0008】
また、半導体装置の高性能・小型化に伴って、電極バンプが載置される電極パッド径も小さくなり、またパッド間も狭ピッチとなるので、その電極パッド上にのみフラックス層を薄く塗布することが困難となる。このため、電極バンプの基材となるはんだボールが、厚い余分なフラックス層内でセルフアライメントを起こし、隣接間で接合した電極バンプが形成されてしまう場合があり、半導体パッケージの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0009】
本発明の目的は、高性能・小型化に対応した半導体パッケージに用いられるような電極バンプを形成する技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施の形態は、基板に配設された電極パッド上に電極バンプを形成する電極バンプの形成方法であって、(a)前記電極バンプの基材となる導電性物を形成する工程と、(b)前記導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする工程と、(c)前記電極パッド上に前記コーティング剤でコーティングされた前記導電性物を載置した後、該導電性物に対して熱処理を施すことによって、前記電極パッドと電気的に接続された前記電極バンプを形成する工程と、を含む。
【0011】
なお、本発明者らは、本発明の一実施の形態に基づき、電極バンプと電極パッド間を接続するために、導電性物の表面をフラックスでコーティングする観点で先行技術調査を行っている。その結果、電極バンプと電極パッド間を接続する観点で特許文献1が抽出され、また、導電性物の表面をコーティングする観点で特許文献2が抽出された。
【0012】
特許文献1の技術は、フラックス残渣による信頼性への影響を防止するために、フラックス作用を有する熱硬化性樹脂を用い、バンプ先端および/または少なくともパッドに塗布して、バンプと基板間を接続するものである。この点で、電極バンプとなる導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする本発明の一実施の形態とは相違するものである。
【0013】
また、特許文献2の技術は、はんだボール同士の微接着の発生を低減するために、はんだボール表面をフッ素樹脂でコーティングするものであり、電極バンプと基板の電極パッド間を接続するために、導電性物の表面をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする本発明の一実施の形態とは相違するものである。なお、特許文献2の技術では、電極バンプ(はんだボール)と基板の電極パッド間を接続するために、電極パッド上にフラックスを例えば印刷法によって形成するなどの別工程が、必要であると考えられる。
【0014】
これら特許文献1、2の技術からは、フラックス残渣による信頼性への影響を考慮しながら、電極バンプと基板の電極パッド間を接続するためには、本発明の一実施の形態のように、導電性物の表面全体を、フッ素樹脂より粘着性のあるフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングすることは容易に想到することができないものと思料される。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、高性能・小型化に対応した半導体パッケージに用いられるような電極バンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態における電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図2】図1に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図3】図2に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図4】図3に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図5】フラックス層を印刷によって形成する工程を含む電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図6】図5に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図7】従来技術を用いて、ボール径とパッド径を同程度とした場合における電極パッド上の導電性物の状態を説明するための図である。
【図8】従来技術を用いて、ボール径よりパッド径を大きくした場合における電極パッド上の導電性物の状態を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施の形態の技術を用いて、ボール径よりパッド径を大きくした場合における電極パッド上の導電性物の状態を説明するための図である。
【図10】図7に対応した導電性物の断面の状態を示すSEM写真である。
【図11】図7に対応した導電性物を斜視した状態を示すSEM写真である。
【図12】図8に対応した導電性物の断面の状態を示すSEM写真である。
【図13】図8に対応した導電性物を斜視した状態を示すSEM写真である。
【図14】図9に対応した導電性物の断面の状態を示すSEM写真である。
【図15】図9に対応した導電性物を斜視した状態を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
本実施の形態における電極バンプの形成方法について図面を参照して説明する。図1〜図4では、この電極バンプの形成方法を例えばBGA構造の半導体パッケージの配線基板10に適用した場合を示している。配線基板10は、図4に示すように、基板1に配設された複数の電極パッド2上のそれぞれに電極バンプ7が形成されることとなる。なお、図1、図3、図4では、製造工程中における半導体パッケージの配線基板10の断面が示されており、図2では、フラックス及び防錆剤を含むコーティング剤6でコーティングされた導電性物5の断面を示している。
【0019】
まず、図1に示すように、配線基板10の基材となる基板1を準備する。基板1は例えばガラスエポキシ基板である。このガラスエポキシ基板には図示しない例えばビルドアップ配線層やビア(VIA)などが形成されており、層間絶縁層(例えば絶縁樹脂層)によってそれらは絶縁されている。
【0020】
次いで、基板1上に配線層と電気的に接続された複数の電極パッド2を形成する。この電極パッド2は、例えばめっき法によって形成されたCu(銅)膜と、その上に例えばめっき法によって順次形成されたNi(ニッケル)膜、Au(金)膜を積層した積層膜とを含んで構成される。電極パッド2の最表面をAu膜とすることによって、電極パッド2が酸化するのを防止している。また、Ni膜を介することによって、電極バンプ7の基材(例えばはんだ)と、電極パッド2の基材(例えば銅)との接合を強固とするものとし、また電極パッド2の基材としての銅の拡散を防止している。
【0021】
次いで、基板1の表面を保護する保護膜3を形成した後、電極パッド2を露出する開口部4を形成する。この保護膜3に例えばソルダレジストを用いる場合、基板1上に感光性ソルダレジストを塗布した後、露光、現像によって開口部4を有するパターンを形成する。ソルダレジストは、耐熱性のコーティング剤であり、基板1を保護するとともに、不要な箇所に電極バンプ7を形成することを防止することができる。
【0022】
続いて、図2に示すように、電極バンプ7の基材となる導電性物5を形成した後、導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングする。コーティング剤6は、導電性物5と電極パッド2との接合時に、電極パッド2表面において自然に酸化した酸化膜を除去するとともに、導電性物5と電極パッド2の表面を再酸化することを防止し、導電性物5の濡れ性を向上するために用いられるものである。
【0023】
本実施の形態では、例えば径が60〜70μm程度のボール状の導電性物5を形成した後、活性化ロジン及び防錆処理剤を混合した液を希釈するため、溶媒として有機溶剤を混合したフラックスを浴槽に張り、その液中に導電性物5を浸漬(あるいは通過)させた後、例えば底面にメッシュ状の開口がある容器で取り出した導電性物5を乾燥することによって、コーティングする。このように、ボール状の導電性物5を液状のコーティング剤6内から取り出すため、導電性物5には均一に所定量のコーティング剤6がコーティングされるので、余分な付着を防止することができる。
【0024】
本実施の形態では、導電性物5は、例えば、Pb(鉛)−Sn(錫)、あるいはPbフリーのAg(銀)−Snを含んで構成されるはんだである。また、導電性物5は、その形状をボール状としたはんだボールとして形成される。導電性物5は、その表面全体をコーティング剤6でコーティングされることとなるが、導電性物5の形状をボール状とすることで、粘着性を有するコーティング剤6を均一な膜でコーティングすることができる。
【0025】
コーティング剤6の活性化ロジンとしては、例えば、ロジン系フラックス、アビエチレン酸などを用いることができる。また、コーティング剤6の防錆処理剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪族化炭化水素系滑剤、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤などを用いることができる。導電性物5として形成されたはんだボールは、経時変化で酸化してしまうので、形成後すぐにコーティング剤6によってコーティングすることが好ましい。コーティング剤6には酸化防止剤としての作用もあるので、導電性物5の表面が酸化するのを防止することができる。
【0026】
ところで、一般的に用いられているフラックスは洗浄が必要なものである。フラックス残渣中に含まれる活性剤が、イオン化し、電気的絶縁性が阻害されて配線間でマイグレーションを引き起こし、信頼性を低下させてしまうため、このようなフラックスは電極バンプ形成後に洗浄によって取り除かれる。
【0027】
本実施の形態では、コーティング剤6に無洗浄用フラックスを適用することによって、フラックス洗浄工程を省略することができ、またフラックス残渣による半導体パッケージの信頼性の低下を防止することができる。この無洗浄用フラックスは、被金属表面の酸化膜を除去することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、電極バンプ7の形成時に気化させることによってフラックス残渣とならない量の、コーティング剤6を導電性物5の表面全体にコーティングしている。このため、コーティング剤6に、無洗浄用フラックスではなく、一般的に洗浄が必要なフラックスを用いても良い。すなわち、洗浄が必要、不要のいずれのフラックスを用いても、半導体パッケージの信頼性の低下をより確実に防止することができる。また、いずれのフラックスを用いる場合でも洗浄することで、より信頼性が向上する。
【0029】
続いて、図3に示すように、電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされたボール状の導電性物5を載置する。電極パッド2上に導電性物5を載置する方法は、いわゆる振り込み法によって、例えば、電極パッド2の位置に併せて開口部を有するマスクを基板1上に載置し、その開口部にボール状の導電性物5を振り込むことによって行うことができる。
【0030】
より具体的に説明すると、まず、コーティング剤6でコーティングされたボール状の導電性物5を、底面にメッシュ状の開口がある容器から降らせ、適量数の導電性物5がマスク上に落ちるようにする。次いで、マスクの各開口に各1個のボール状の導電性物5を振り込み、各開口と位置合わせされた電極パッド2上に導電性物5を載置する。ここで、マスク上に残存している導電性物5は、例えば刷毛などで取り除かれ、回収される。このようにして、電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされた導電性物5が載置される。
【0031】
次いで、コーティング剤6の軟化点以上に基板1を加熱して、導電性物5に対して熱処理を施す。これによって、電極パッド2と導電性物5とをコーティング剤6を介して仮固定する。例えば、ロジン入りのコーティング剤6を用いた場合、コーティング剤6の軟化点、例えば120℃以上にまで基板1を加熱し、コーティング剤6が軟化した時点で基板1を冷却する。これにより、コーティング剤6が硬化し、導電性物5の周りをコーティングしているコーティング剤6の粘着力で、電極パッド2上に導電性物5を仮固定する。
【0032】
この仮固定では、コーティング剤6を軟化させるために基板1に対して熱処理が行われるため、電極パッド2から熱を受けたコーティング剤6は、電極パッド2側へ移動されるようになると考えられる。また、ボール状の導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングしているので、導電性物5のどんな部分で電極パッド2上に載置されても、導電性物5はコーティング剤6を介して電極パッド2と仮固定されることとなる。なお、仮固定によって、ボール状の導電性物5の移動を考慮する必要が無くなるため、次工程まで基板1を搬送するときに、容易に行うことができる。
【0033】
続いて、図4に示すように、導電性物5に対して熱処理を施すことによって、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7を形成する。これによって、半導体パッケージの配線基板10が完成される。例えば、導電性物5にはんだを用いた場合、はんだの融点、例えば250℃以上にまで基板1をリフロー加熱する。溶融した導電性物5によって電極パッド2と導電性物5とが直接に接合し、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7が形成される。
【0034】
本実施の形態では、ボール状の導電性物5の表面全体に付着している量のコーティング剤6を用いているため、コーティング剤6は電極バンプ7を形成する他は、リフロー加熱による熱処理によって溶剤が気化してしまい、表面をコーティングしているフラックス量が少ないので、洗浄しなくとも残渣の発生を抑制している。フラックス残渣となる余分なコーティング剤6がないため、リフロー処理によっても、表面張力によって導電性物5は、ボール状が維持されたものとなる。
【0035】
ここで、本実施の形態における電極バンプの形成方法と比較するために、フラックス層を印刷によって形成する工程を含む電極バンプの形成方法について図面を参照して説明する。なお、図1を参照して説明した電極バンプの製造工程までは同様であるので、その後の製造工程から説明する。
【0036】
図5に示すように、保護膜3から露出する電極パッド2を覆うように、例えば印刷法によってゲル状のフラックス6aを例えば数10μm程度の厚さで形成した後、フラックス6aを介して電極パッド2上にボール状の導電性物5を載置する。なお、フラックス6aは、後の工程で洗浄を必要とするものであっても、無洗浄用のものであっても良いが、ここでは、洗浄を必要とするものを用いる。
【0037】
例えば、半導体装置の高性能・小型化に対応させた場合、電極バンプ7aが載置される電極パッド2径も小さくなり、またパッド間も狭ピッチとなるので、フラックス層を薄く塗布することが困難となる。このため、電極パッド2上には余分にフラックス6aが形成され、例えば、図5に示すように、電極パッド2を覆うフラックス6aは、パッド間の保護膜2上にも形成されてしまう場合がある。
【0038】
続いて、図6に示すように、リフロー処理することによって導電性物5を溶融し、電極パッド2と導電性物5とを直接に接合し、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7aを形成する。その後、基板1に対して、フラックス洗浄を行った後、乾燥する。
【0039】
図5に示したように、電極パッド2を覆うフラックス6aがパッド間の保護膜2上にも形成された場合、リフロー処理時において、フラックス6aは軟化して広がり、また、導電性物5がフラックス6a内で移動するセルフアライメントによって、隣接する電極バンプ7a同士が接続して形成されてしまう原因となる。このため、半導体パッケージの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0040】
なお、無洗浄用フラックスを用いた場合であっても、微細化・狭ピッチの電極パッド2上に形成されたフラックス6aでは、導電性物5と電極パッド2との接合以外に用いられる余分なフラックスも存在してしまう。このため、導電性物5がフラックス6a内で移動するセルフアライメントによって、隣接する電極バンプ7a同士が接続して形成されてしまう原因となり、半導体パッケージの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0041】
また、半導体装置の高性能・小型化に伴って、電極バンプ径が小さくなり、またバンプ間も狭ピッチとなると、洗浄を行ってもバンプ間にフラックス6aが残存してしまう。フラックスの残渣は、バンプ間の絶縁性が確保できずバンプ間でショートの原因となり、また配線に用いられる金属の腐食を引き起こすため、半導体パッケージの信頼性を低下させてしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態では、導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングし、電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされた導電性物5を載置した後、導電性物5に対して熱処理を施すことによって、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7を形成している。ボール状の導電性物5には、その大きさに付随した量のコーティング剤6が付着し、余分なフラックスを付着させないようにできるので、フラックス残渣の発生を抑制することができる。さらに、コーティング剤6の量が、導電性物5の表面全体をコーティングするだけの量であるため、そのすべてが電極パッド2と導電性物5とを接合するために用いられ、フラックス残渣の発生を抑制することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、コーティング剤6は無洗浄用フラックスを用いているので、フラックス洗浄の必要はないが、洗浄が必要なフラックスを用いた場合であっても、フラックスの量が少ないので、フラックス残渣を取り除くための洗浄も不要である。また、導電性物5はセルフアライメントによってコーティング剤6内を移動することもないので、導電性物5同士の接合を抑制することができる。
【0044】
ところで、図5、図6を参照して説明したフラックス印刷、搭載、リフロー加熱、洗浄の順で行う従来技術を用いた場合、ボール状の導電性物5(例えばはんだ)のボール径と電極パッド2のパッド径が同程度の大きさであれば、図7、図10、図11に示すように、ボール状の導電性物5の形状がそのまま維持された状態となる。例えばソルダレジストからなる保護膜3に形成された開口部4に、ボール状の導電性物5が近接しているため、導電性物5がボール状に維持される。しかしながら、ボール径よりもパッド径が大きい電極パッド2a上にボール状の導電性物5を搭載した場合では、図8、図12、図13に示すように、塗布されたフラックスによって導電性物5がボール形状を維持できず、潰れた半円の状態となってしまう。
【0045】
これに対し、本実施の形態によれば、図9、図14、図15に示すように、導電性物5をそのボール径よりも大きいパッド径の電極パッド2aに搭載し、仮固定の熱処理をした後、リフロー加熱した場合であっても、ボール状の導電性物5の形状がそのまま維持されたような状態で、導電性物5と電極パッド2aとを接続することができる。余分なコーティング剤6がないため、リフロー加熱によっても、表面張力によって導電性物5はボール状が維持されたものと考えられる。
【0046】
すなわち、ボール状の電極バンプを形成するにあたり、パッド径とボール径とを同程度にしなければならない従来技術とは異なり、本実施の形態によれば、パッド径とボール径とを同程度としなくても電極パッド上に電極バンプを形成することができる。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0048】
例えば、前記実施の形態では、電極バンプの形成方法を半導体パッケージの配線基板に適用した場合について説明したが、半導体装置(半導体チップ)にも適用することができる。例えば、図4で示した構造では、基板1として例えばSi(シリコン)などの半導体基板、電極パッド2として例えばAu(金)で覆われたCu(銅)パッド、保護膜3としてポリイミド系樹脂のパッシベーション膜、コーティング剤6でコーティングされた導電性物5として金(Au)ボールを適用することによって、半導体チップの電極バンプとして形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電極バンプの製造技術、特に、電極バンプを有する半導体パッケージの製造業に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2、2a 電極パッド
3 保護膜
4 開口部
5 導電性物
6 コーティング剤
6a フラックス
7、7a 電極バンプ
10 配線基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極バンプの形成技術および半導体パッケージの製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2001−284382号公報(特許文献1)には、フラックス作用を有する熱硬化性樹脂(特許文献1では活性樹脂という)をLSIチップのバンプ先端および/または少なくとも実装基板のパッドに塗布し、それらを位置合わせして前記LSIチップを搭載し、はんだバンプを加熱・溶解してバンプと基板間を接続する技術が開示されている。この特許文献1の技術は、その明細書段落[0022]、[0023]に記載のように、フラックス残渣による信頼性への影響を防止するために、フラックスの代わりに活性樹脂を用いてはんだ接続するものである。
【0003】
また、特開2004−160514号公報(特許文献2)には、溶媒にフッ素樹脂を溶解した溶液中にはんだボールを浸漬し、前記溶液からはんだボールを取り出した後、はんだボール表面に付着した前記溶媒を揮発させてはんだボール表面をフッ素樹脂コーティングするはんだボールのコーティング方法が開示されている。この特許文献2の技術は、その明細書段落[0007]、[0008]に記載のように、はんだボール同士の微接着の発生を低減するために、はんだボール表面をフッ素樹脂でコーティングするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−284382号公報
【特許文献2】特開2004−160514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置のパッケージ形態として、例えば、はんだバンプ(あるいははんだボール)を有するBGA(Ball Grid Array)構造やCSP(Chip Size Package)構造がある。以下では、BGA構造の半導体パッケージの製造方法の一例を概略して説明する。
【0006】
まず、複数の電極パッドが配設された基板を形成した後、各電極パッド上にフラックス層を印刷法によって形成(塗布)する。次いで、電極パッド上にフラックス層を介してはんだボールを載置した後、リフロー(Reflow)処理することによってはんだボールと電極パッドとを接合する。その後、残存しているフラックス層を除去するために洗浄液を用いて洗浄を行い、基板を乾燥させることによって、電極バンプ(はんだバンプ)を有するBGA構造の半導体パッケージが形成される。
【0007】
しかしながら、半導体装置の高性能・小型化に伴って、半導体パッケージの電極バンプ径が小さくなり、またバンプ間も狭ピッチとなると、前述した製造方法では、フラックス層の除去を行ってもバンプ間にフラックスの残渣が発生する場合がある。フラックスの残渣は配線に用いられる金属の腐食を引き起こすためショート(短絡)の原因となり、半導体パッケージの信頼性を低下させてしまう。
【0008】
また、半導体装置の高性能・小型化に伴って、電極バンプが載置される電極パッド径も小さくなり、またパッド間も狭ピッチとなるので、その電極パッド上にのみフラックス層を薄く塗布することが困難となる。このため、電極バンプの基材となるはんだボールが、厚い余分なフラックス層内でセルフアライメントを起こし、隣接間で接合した電極バンプが形成されてしまう場合があり、半導体パッケージの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0009】
本発明の目的は、高性能・小型化に対応した半導体パッケージに用いられるような電極バンプを形成する技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施の形態は、基板に配設された電極パッド上に電極バンプを形成する電極バンプの形成方法であって、(a)前記電極バンプの基材となる導電性物を形成する工程と、(b)前記導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする工程と、(c)前記電極パッド上に前記コーティング剤でコーティングされた前記導電性物を載置した後、該導電性物に対して熱処理を施すことによって、前記電極パッドと電気的に接続された前記電極バンプを形成する工程と、を含む。
【0011】
なお、本発明者らは、本発明の一実施の形態に基づき、電極バンプと電極パッド間を接続するために、導電性物の表面をフラックスでコーティングする観点で先行技術調査を行っている。その結果、電極バンプと電極パッド間を接続する観点で特許文献1が抽出され、また、導電性物の表面をコーティングする観点で特許文献2が抽出された。
【0012】
特許文献1の技術は、フラックス残渣による信頼性への影響を防止するために、フラックス作用を有する熱硬化性樹脂を用い、バンプ先端および/または少なくともパッドに塗布して、バンプと基板間を接続するものである。この点で、電極バンプとなる導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする本発明の一実施の形態とは相違するものである。
【0013】
また、特許文献2の技術は、はんだボール同士の微接着の発生を低減するために、はんだボール表面をフッ素樹脂でコーティングするものであり、電極バンプと基板の電極パッド間を接続するために、導電性物の表面をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする本発明の一実施の形態とは相違するものである。なお、特許文献2の技術では、電極バンプ(はんだボール)と基板の電極パッド間を接続するために、電極パッド上にフラックスを例えば印刷法によって形成するなどの別工程が、必要であると考えられる。
【0014】
これら特許文献1、2の技術からは、フラックス残渣による信頼性への影響を考慮しながら、電極バンプと基板の電極パッド間を接続するためには、本発明の一実施の形態のように、導電性物の表面全体を、フッ素樹脂より粘着性のあるフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングすることは容易に想到することができないものと思料される。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、高性能・小型化に対応した半導体パッケージに用いられるような電極バンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態における電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図2】図1に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図3】図2に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図4】図3に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図5】フラックス層を印刷によって形成する工程を含む電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図6】図5に続く電極バンプの製造工程を説明するための図である。
【図7】従来技術を用いて、ボール径とパッド径を同程度とした場合における電極パッド上の導電性物の状態を説明するための図である。
【図8】従来技術を用いて、ボール径よりパッド径を大きくした場合における電極パッド上の導電性物の状態を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施の形態の技術を用いて、ボール径よりパッド径を大きくした場合における電極パッド上の導電性物の状態を説明するための図である。
【図10】図7に対応した導電性物の断面の状態を示すSEM写真である。
【図11】図7に対応した導電性物を斜視した状態を示すSEM写真である。
【図12】図8に対応した導電性物の断面の状態を示すSEM写真である。
【図13】図8に対応した導電性物を斜視した状態を示すSEM写真である。
【図14】図9に対応した導電性物の断面の状態を示すSEM写真である。
【図15】図9に対応した導電性物を斜視した状態を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
本実施の形態における電極バンプの形成方法について図面を参照して説明する。図1〜図4では、この電極バンプの形成方法を例えばBGA構造の半導体パッケージの配線基板10に適用した場合を示している。配線基板10は、図4に示すように、基板1に配設された複数の電極パッド2上のそれぞれに電極バンプ7が形成されることとなる。なお、図1、図3、図4では、製造工程中における半導体パッケージの配線基板10の断面が示されており、図2では、フラックス及び防錆剤を含むコーティング剤6でコーティングされた導電性物5の断面を示している。
【0019】
まず、図1に示すように、配線基板10の基材となる基板1を準備する。基板1は例えばガラスエポキシ基板である。このガラスエポキシ基板には図示しない例えばビルドアップ配線層やビア(VIA)などが形成されており、層間絶縁層(例えば絶縁樹脂層)によってそれらは絶縁されている。
【0020】
次いで、基板1上に配線層と電気的に接続された複数の電極パッド2を形成する。この電極パッド2は、例えばめっき法によって形成されたCu(銅)膜と、その上に例えばめっき法によって順次形成されたNi(ニッケル)膜、Au(金)膜を積層した積層膜とを含んで構成される。電極パッド2の最表面をAu膜とすることによって、電極パッド2が酸化するのを防止している。また、Ni膜を介することによって、電極バンプ7の基材(例えばはんだ)と、電極パッド2の基材(例えば銅)との接合を強固とするものとし、また電極パッド2の基材としての銅の拡散を防止している。
【0021】
次いで、基板1の表面を保護する保護膜3を形成した後、電極パッド2を露出する開口部4を形成する。この保護膜3に例えばソルダレジストを用いる場合、基板1上に感光性ソルダレジストを塗布した後、露光、現像によって開口部4を有するパターンを形成する。ソルダレジストは、耐熱性のコーティング剤であり、基板1を保護するとともに、不要な箇所に電極バンプ7を形成することを防止することができる。
【0022】
続いて、図2に示すように、電極バンプ7の基材となる導電性物5を形成した後、導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングする。コーティング剤6は、導電性物5と電極パッド2との接合時に、電極パッド2表面において自然に酸化した酸化膜を除去するとともに、導電性物5と電極パッド2の表面を再酸化することを防止し、導電性物5の濡れ性を向上するために用いられるものである。
【0023】
本実施の形態では、例えば径が60〜70μm程度のボール状の導電性物5を形成した後、活性化ロジン及び防錆処理剤を混合した液を希釈するため、溶媒として有機溶剤を混合したフラックスを浴槽に張り、その液中に導電性物5を浸漬(あるいは通過)させた後、例えば底面にメッシュ状の開口がある容器で取り出した導電性物5を乾燥することによって、コーティングする。このように、ボール状の導電性物5を液状のコーティング剤6内から取り出すため、導電性物5には均一に所定量のコーティング剤6がコーティングされるので、余分な付着を防止することができる。
【0024】
本実施の形態では、導電性物5は、例えば、Pb(鉛)−Sn(錫)、あるいはPbフリーのAg(銀)−Snを含んで構成されるはんだである。また、導電性物5は、その形状をボール状としたはんだボールとして形成される。導電性物5は、その表面全体をコーティング剤6でコーティングされることとなるが、導電性物5の形状をボール状とすることで、粘着性を有するコーティング剤6を均一な膜でコーティングすることができる。
【0025】
コーティング剤6の活性化ロジンとしては、例えば、ロジン系フラックス、アビエチレン酸などを用いることができる。また、コーティング剤6の防錆処理剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪族化炭化水素系滑剤、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤などを用いることができる。導電性物5として形成されたはんだボールは、経時変化で酸化してしまうので、形成後すぐにコーティング剤6によってコーティングすることが好ましい。コーティング剤6には酸化防止剤としての作用もあるので、導電性物5の表面が酸化するのを防止することができる。
【0026】
ところで、一般的に用いられているフラックスは洗浄が必要なものである。フラックス残渣中に含まれる活性剤が、イオン化し、電気的絶縁性が阻害されて配線間でマイグレーションを引き起こし、信頼性を低下させてしまうため、このようなフラックスは電極バンプ形成後に洗浄によって取り除かれる。
【0027】
本実施の形態では、コーティング剤6に無洗浄用フラックスを適用することによって、フラックス洗浄工程を省略することができ、またフラックス残渣による半導体パッケージの信頼性の低下を防止することができる。この無洗浄用フラックスは、被金属表面の酸化膜を除去することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、電極バンプ7の形成時に気化させることによってフラックス残渣とならない量の、コーティング剤6を導電性物5の表面全体にコーティングしている。このため、コーティング剤6に、無洗浄用フラックスではなく、一般的に洗浄が必要なフラックスを用いても良い。すなわち、洗浄が必要、不要のいずれのフラックスを用いても、半導体パッケージの信頼性の低下をより確実に防止することができる。また、いずれのフラックスを用いる場合でも洗浄することで、より信頼性が向上する。
【0029】
続いて、図3に示すように、電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされたボール状の導電性物5を載置する。電極パッド2上に導電性物5を載置する方法は、いわゆる振り込み法によって、例えば、電極パッド2の位置に併せて開口部を有するマスクを基板1上に載置し、その開口部にボール状の導電性物5を振り込むことによって行うことができる。
【0030】
より具体的に説明すると、まず、コーティング剤6でコーティングされたボール状の導電性物5を、底面にメッシュ状の開口がある容器から降らせ、適量数の導電性物5がマスク上に落ちるようにする。次いで、マスクの各開口に各1個のボール状の導電性物5を振り込み、各開口と位置合わせされた電極パッド2上に導電性物5を載置する。ここで、マスク上に残存している導電性物5は、例えば刷毛などで取り除かれ、回収される。このようにして、電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされた導電性物5が載置される。
【0031】
次いで、コーティング剤6の軟化点以上に基板1を加熱して、導電性物5に対して熱処理を施す。これによって、電極パッド2と導電性物5とをコーティング剤6を介して仮固定する。例えば、ロジン入りのコーティング剤6を用いた場合、コーティング剤6の軟化点、例えば120℃以上にまで基板1を加熱し、コーティング剤6が軟化した時点で基板1を冷却する。これにより、コーティング剤6が硬化し、導電性物5の周りをコーティングしているコーティング剤6の粘着力で、電極パッド2上に導電性物5を仮固定する。
【0032】
この仮固定では、コーティング剤6を軟化させるために基板1に対して熱処理が行われるため、電極パッド2から熱を受けたコーティング剤6は、電極パッド2側へ移動されるようになると考えられる。また、ボール状の導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングしているので、導電性物5のどんな部分で電極パッド2上に載置されても、導電性物5はコーティング剤6を介して電極パッド2と仮固定されることとなる。なお、仮固定によって、ボール状の導電性物5の移動を考慮する必要が無くなるため、次工程まで基板1を搬送するときに、容易に行うことができる。
【0033】
続いて、図4に示すように、導電性物5に対して熱処理を施すことによって、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7を形成する。これによって、半導体パッケージの配線基板10が完成される。例えば、導電性物5にはんだを用いた場合、はんだの融点、例えば250℃以上にまで基板1をリフロー加熱する。溶融した導電性物5によって電極パッド2と導電性物5とが直接に接合し、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7が形成される。
【0034】
本実施の形態では、ボール状の導電性物5の表面全体に付着している量のコーティング剤6を用いているため、コーティング剤6は電極バンプ7を形成する他は、リフロー加熱による熱処理によって溶剤が気化してしまい、表面をコーティングしているフラックス量が少ないので、洗浄しなくとも残渣の発生を抑制している。フラックス残渣となる余分なコーティング剤6がないため、リフロー処理によっても、表面張力によって導電性物5は、ボール状が維持されたものとなる。
【0035】
ここで、本実施の形態における電極バンプの形成方法と比較するために、フラックス層を印刷によって形成する工程を含む電極バンプの形成方法について図面を参照して説明する。なお、図1を参照して説明した電極バンプの製造工程までは同様であるので、その後の製造工程から説明する。
【0036】
図5に示すように、保護膜3から露出する電極パッド2を覆うように、例えば印刷法によってゲル状のフラックス6aを例えば数10μm程度の厚さで形成した後、フラックス6aを介して電極パッド2上にボール状の導電性物5を載置する。なお、フラックス6aは、後の工程で洗浄を必要とするものであっても、無洗浄用のものであっても良いが、ここでは、洗浄を必要とするものを用いる。
【0037】
例えば、半導体装置の高性能・小型化に対応させた場合、電極バンプ7aが載置される電極パッド2径も小さくなり、またパッド間も狭ピッチとなるので、フラックス層を薄く塗布することが困難となる。このため、電極パッド2上には余分にフラックス6aが形成され、例えば、図5に示すように、電極パッド2を覆うフラックス6aは、パッド間の保護膜2上にも形成されてしまう場合がある。
【0038】
続いて、図6に示すように、リフロー処理することによって導電性物5を溶融し、電極パッド2と導電性物5とを直接に接合し、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7aを形成する。その後、基板1に対して、フラックス洗浄を行った後、乾燥する。
【0039】
図5に示したように、電極パッド2を覆うフラックス6aがパッド間の保護膜2上にも形成された場合、リフロー処理時において、フラックス6aは軟化して広がり、また、導電性物5がフラックス6a内で移動するセルフアライメントによって、隣接する電極バンプ7a同士が接続して形成されてしまう原因となる。このため、半導体パッケージの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0040】
なお、無洗浄用フラックスを用いた場合であっても、微細化・狭ピッチの電極パッド2上に形成されたフラックス6aでは、導電性物5と電極パッド2との接合以外に用いられる余分なフラックスも存在してしまう。このため、導電性物5がフラックス6a内で移動するセルフアライメントによって、隣接する電極バンプ7a同士が接続して形成されてしまう原因となり、半導体パッケージの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0041】
また、半導体装置の高性能・小型化に伴って、電極バンプ径が小さくなり、またバンプ間も狭ピッチとなると、洗浄を行ってもバンプ間にフラックス6aが残存してしまう。フラックスの残渣は、バンプ間の絶縁性が確保できずバンプ間でショートの原因となり、また配線に用いられる金属の腐食を引き起こすため、半導体パッケージの信頼性を低下させてしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態では、導電性物5の表面全体をコーティング剤6でコーティングし、電極パッド2上にコーティング剤6でコーティングされた導電性物5を載置した後、導電性物5に対して熱処理を施すことによって、電極パッド2と電気的に接続された電極バンプ7を形成している。ボール状の導電性物5には、その大きさに付随した量のコーティング剤6が付着し、余分なフラックスを付着させないようにできるので、フラックス残渣の発生を抑制することができる。さらに、コーティング剤6の量が、導電性物5の表面全体をコーティングするだけの量であるため、そのすべてが電極パッド2と導電性物5とを接合するために用いられ、フラックス残渣の発生を抑制することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、コーティング剤6は無洗浄用フラックスを用いているので、フラックス洗浄の必要はないが、洗浄が必要なフラックスを用いた場合であっても、フラックスの量が少ないので、フラックス残渣を取り除くための洗浄も不要である。また、導電性物5はセルフアライメントによってコーティング剤6内を移動することもないので、導電性物5同士の接合を抑制することができる。
【0044】
ところで、図5、図6を参照して説明したフラックス印刷、搭載、リフロー加熱、洗浄の順で行う従来技術を用いた場合、ボール状の導電性物5(例えばはんだ)のボール径と電極パッド2のパッド径が同程度の大きさであれば、図7、図10、図11に示すように、ボール状の導電性物5の形状がそのまま維持された状態となる。例えばソルダレジストからなる保護膜3に形成された開口部4に、ボール状の導電性物5が近接しているため、導電性物5がボール状に維持される。しかしながら、ボール径よりもパッド径が大きい電極パッド2a上にボール状の導電性物5を搭載した場合では、図8、図12、図13に示すように、塗布されたフラックスによって導電性物5がボール形状を維持できず、潰れた半円の状態となってしまう。
【0045】
これに対し、本実施の形態によれば、図9、図14、図15に示すように、導電性物5をそのボール径よりも大きいパッド径の電極パッド2aに搭載し、仮固定の熱処理をした後、リフロー加熱した場合であっても、ボール状の導電性物5の形状がそのまま維持されたような状態で、導電性物5と電極パッド2aとを接続することができる。余分なコーティング剤6がないため、リフロー加熱によっても、表面張力によって導電性物5はボール状が維持されたものと考えられる。
【0046】
すなわち、ボール状の電極バンプを形成するにあたり、パッド径とボール径とを同程度にしなければならない従来技術とは異なり、本実施の形態によれば、パッド径とボール径とを同程度としなくても電極パッド上に電極バンプを形成することができる。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0048】
例えば、前記実施の形態では、電極バンプの形成方法を半導体パッケージの配線基板に適用した場合について説明したが、半導体装置(半導体チップ)にも適用することができる。例えば、図4で示した構造では、基板1として例えばSi(シリコン)などの半導体基板、電極パッド2として例えばAu(金)で覆われたCu(銅)パッド、保護膜3としてポリイミド系樹脂のパッシベーション膜、コーティング剤6でコーティングされた導電性物5として金(Au)ボールを適用することによって、半導体チップの電極バンプとして形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電極バンプの製造技術、特に、電極バンプを有する半導体パッケージの製造業に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2、2a 電極パッド
3 保護膜
4 開口部
5 導電性物
6 コーティング剤
6a フラックス
7、7a 電極バンプ
10 配線基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配設された電極パッド上に電極バンプを形成する電極バンプの形成方法であって、
(a)前記電極バンプの基材となる導電性物を形成する工程と、
(b)前記導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする工程と、
(c)前記電極パッド上に前記コーティング剤でコーティングされた前記導電性物を載置した後、該導電性物に対して熱処理を施すことによって、前記電極パッドと電気的に接続された前記電極バンプを形成する工程と、
を含むことを特徴とする電極バンプの形成方法。
【請求項2】
前記(a)工程では、前記導電性物をボール状に形成することを特徴とする請求項1記載の電極バンプの形成方法。
【請求項3】
前記(b)工程では、前記コーティング剤の液中に前記導電性物を浸漬した後、取り出した該導電性物を乾燥することによって、コーティングすることを特徴とする請求項1または2記載の電極バンプの形成方法。
【請求項4】
前記(c)工程の熱処理が、
(c1)前記コーティング剤が軟化するまで前記基板を加熱する工程と、
(c2)前記導電性物の融点まで前記基板を加熱する工程と、
を含み、
前記(c1)工程によって前記電極パッドと前記導電性物とが前記コーティング剤を介して仮固定し、
前記(c2)工程によって前記電極パッドと前記導電性物とが直接に接合することを特徴とする請求項1、2または3記載の電極バンプの形成方法。
【請求項5】
前記フラックスは、無洗浄用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極バンプの形成方法。
【請求項6】
前記導電性物は、はんだであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極バンプの形成方法。
【請求項7】
基板に配設された電極パッド上に電極バンプが形成された半導体パッケージの製造方法であって、
(a)前記電極バンプの基材となる導電性物を形成する工程と、
(b)前記導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする工程と、
(c)前記電極パッド上に前記コーティング剤でコーティングされた前記導電性物を載置した後、該導電性物に対して熱処理を施すことによって、前記電極パッドと電気的に接続された前記電極バンプを形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項1】
基板に配設された電極パッド上に電極バンプを形成する電極バンプの形成方法であって、
(a)前記電極バンプの基材となる導電性物を形成する工程と、
(b)前記導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする工程と、
(c)前記電極パッド上に前記コーティング剤でコーティングされた前記導電性物を載置した後、該導電性物に対して熱処理を施すことによって、前記電極パッドと電気的に接続された前記電極バンプを形成する工程と、
を含むことを特徴とする電極バンプの形成方法。
【請求項2】
前記(a)工程では、前記導電性物をボール状に形成することを特徴とする請求項1記載の電極バンプの形成方法。
【請求項3】
前記(b)工程では、前記コーティング剤の液中に前記導電性物を浸漬した後、取り出した該導電性物を乾燥することによって、コーティングすることを特徴とする請求項1または2記載の電極バンプの形成方法。
【請求項4】
前記(c)工程の熱処理が、
(c1)前記コーティング剤が軟化するまで前記基板を加熱する工程と、
(c2)前記導電性物の融点まで前記基板を加熱する工程と、
を含み、
前記(c1)工程によって前記電極パッドと前記導電性物とが前記コーティング剤を介して仮固定し、
前記(c2)工程によって前記電極パッドと前記導電性物とが直接に接合することを特徴とする請求項1、2または3記載の電極バンプの形成方法。
【請求項5】
前記フラックスは、無洗浄用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極バンプの形成方法。
【請求項6】
前記導電性物は、はんだであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極バンプの形成方法。
【請求項7】
基板に配設された電極パッド上に電極バンプが形成された半導体パッケージの製造方法であって、
(a)前記電極バンプの基材となる導電性物を形成する工程と、
(b)前記導電性物の表面全体をフラックス及び防錆剤を含むコーティング剤でコーティングする工程と、
(c)前記電極パッド上に前記コーティング剤でコーティングされた前記導電性物を載置した後、該導電性物に対して熱処理を施すことによって、前記電極パッドと電気的に接続された前記電極バンプを形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−283133(P2010−283133A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135087(P2009−135087)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【出願人】(390013505)株式会社アサヒ化学研究所 (4)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【出願人】(390013505)株式会社アサヒ化学研究所 (4)
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