説明

電極・電解質膜接合体の製造方法

【課題】 触媒層とガス拡散層との間に十分な接合強度を実現し、発電耐久性に優れた電極・電解質膜接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒付電極を備えた電極・電解質接合体を製造する際、
該固体高分子電解質膜を構成する電解質の溶液、または触媒付電極に含有される固体高分子電解質の溶液を、固体高分子電解質膜または触媒付電極に塗布する塗布工程と、塗布工程の後に固体高分子電解質膜と、触媒付電極とを加熱圧着させる圧着工程とを備える電極・電解質膜接合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子燃料電池などに使用される固体高分子電解質膜-電極接合体の製
造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質型燃料電池は、一対の触媒層に挟持された固体高分子電解質膜を備える膜−電極接合体を有しており、純水素または改質水素ガスを燃料ガスとして一方の触媒層(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として他方の触媒層(空気極)へ供給して起電力を得るものである。
【0003】
膜−電極接合体の製造方法としては、例えば、金属触媒が担持されたカーボン粒子と水素イオン伝導性の固体高分子電解質と有機溶剤とから構成される触媒ペーストを固体高分子電解質膜の両面に塗布また噴霧し、加熱乾燥で有機溶剤を除去して固体高分子電解質膜の両面に触媒層を形成後、カーボンペーパーなどのガス拡散層を両面の触媒層に配し、ホットプレスにより触媒層とガス拡散層を接合する方法が挙げられる。
【0004】
上記触媒層中の固体高分子電解質として、Nafion(登録商標)で代表されるスルホン化パーフルオロ炭化水素系を用いた場合、固体高分子電解質が熱可塑性の為、ホットプレス等の熱圧着法により触媒層とガス拡散層は容易に接合可能であるが、スルホン化ポリアリーレンに代表されるプロトン酸基含有芳香族系ポリマーのような耐熱材料を用いた場合、スルホン酸基がポリマーから脱離してしまう温度下でないと十分な接合強度を実現させることができなかった。
【0005】
固体高分子電解質膜と触媒層との接合強度が十分でないと、プロトン伝導の連続性が途切れ発電の出力が不十分となる。
また、触媒層とガス拡散層との接合強度が十分でないと、特に高加湿、高電流密度の作動条件下においてガス拡散層と触媒層との間に空隙が生じ、フラッティングが生じやすくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち本発明は、耐熱材料であるプロトン酸基含有芳香族系ポリマーからなる触媒層を両面に備えた固体高分子電解質膜において、固体高分子電解質と対面する面と反対に面にガス拡散層を形成する際に、触媒層とガス拡散層との間に十分な接合強度を実現し、発電耐久性に優れた固体高分子電解質膜-電極接合体の製造方法を提供することを目的とし
ている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術における問題点に鑑み鋭意検討した。その結果、固体高分子電解質膜と触媒電極の接合においては固体高分子電解質膜−触媒層接合界面、膜電極接合体とガス拡散層接合においては触媒層−ガス拡散層界面に、固体高分子電解質の溶液を接合層として挿入することで、上記課題を解決することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明に係る電極・電解質膜接合体の製造方法は、以下の通りである。
(1)非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒付電極を備えた電極・電解質接合体を製造する際、
該固体高分子電解質膜を構成する電解質の溶液、または触媒付電極に含有される固体高分子電解質の溶液を、固体高分子電解質膜または触媒付電極に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後に固体高分子電解質膜と、触媒付電極とを加熱圧着させる圧着工程とを
備える電極・電解質膜接合体の製造方法。
(2)非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒層を備え、触媒層のうち固体高分子電解質膜に対面する面と反対の面に、ガス拡散電極を備えた電極・電解質膜接合体を作製する際に、
該固体高分子電解質膜を構成する固体高分子電解質の溶液、または触媒層に含有される固体高分子電解質の溶液を、ガス拡散電極または触媒層に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後にガス拡散電極と、触媒層とを加熱圧着させる圧着工程とを
備える電極・電解質膜接合体の製造方法。
(3)非パーフルオロ固体高分子電解質膜中の固体高分子電解質が下記一般式(A)で表される構造単位、および下記一般式(B)で表される構造単位を含むスルホン酸基を有するポリアリーレンである(1)または(2)の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l
−(lは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Arは−SO3Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基
を有する芳香族基を示す。pは1〜12の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH
−、−COO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および
ハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素
原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。s、tは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。)
(4)固体高分子電解質溶液が、該固体高分子電解質を可溶性溶媒に溶解したものであって、濃度が0.1〜30重量%の溶液である(1)〜(3)の製造方法。
(5)固体高分子電解質溶液の塗布方法が、スプレー塗工法である(1)〜(4)の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固体高分子電解質膜と触媒電極との接合においては固体高分子電解質膜−触媒層接合界面、膜電極接合体とガス拡散層との接合においては触媒層−ガス拡散層界面に、固体高分子電解質の溶液を接合層として挿入しているので、接着強度が高く、また、プロトン伝導の連続性も高いので、発電の出力も高くすることができる。特に高加湿、高電流密度の作動条件下においてガス拡散層と触媒層との間に空隙が生じることもないので、フラッティングなども抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明に係る膜電極接合体の製造方法、構成材料について、詳細に説明する。
〔固体高分子電解質〕
本発明では、固体高分子電解質膜、または、固体高分子電解質を含む触媒付電極に、固体高分子電解質が使用される。
【0015】
固体高分子電解質としては、特に制限されるものではないが、非パーフルオロ系の固体高分子電解質が好ましく、とくに以下に示すスルホン酸基を有するポリアリーレンを含むポリアリーレン系高分子電解質が好適である。
【0016】
ポリアリーレン
本発明で使用されるポリアリーレンは、ポリアリーレン系高分子電解質は、下記一般式(A)で表されるスルホン酸基を有する構成単位と、下記一般式(B)で表されるスルホン酸基を有さない構成単位とを含むことが特徴であり、下記一般式(C)で表される重合体である。
<スルホン酸ユニット>
【0017】
【化3】

【0018】
一般式(A)において、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−CO
O−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち、−CO−、−SO2−が好ましい。
【0019】
Zは直接結合または、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち直接結合、−O−が好ましい。
【0020】
Arは−SO3Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置
換基(pは1〜12の整数を示す)を有する芳香族基を示す。
芳香族基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。−SO3
Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基(pは1〜12の整数を示す)は、少なくとも1個置換されていることが必要であり、ナフチル基である場合には2個以上置換していることが好ましい。
【0021】
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、nは0〜10、好ましくは0〜2の整
数であり、kは1〜4の整数を示す。
m、nの値とY、Z、Arの構造についての好ましい組み合わせとして、
(1)m=0、n=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを有
するフェニル基である構造、
(2)m=1、n=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(3)m=1、n=1、k=1であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(4)m=1、n=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として2個の−SO3
Hを有するナフチル基である構造、
(5)m=1、n=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−O(CH2)4SO3Hを有するフェニル基である構造などを挙げることができる。
<疎水性ユニット>
【0022】
【化4】

【0023】
一般式(B)において、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−S
O−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−(C
2)l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ここで、−CR’2−で表される構造の具体的な例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イ
ソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0024】
これらのうち、直接結合または、−CO−、−SO2−、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−が好ましい。
【0025】
Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、酸素原子が好ましい。
1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル
基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
【0026】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0027】
s、tは0〜4の整数を示す。rは0または1以上の整数を示し、上限は通常100、好ましくは1〜80である。
s、tの値と、A、B、D、R1〜R16の構造についての好ましい組み合わせとしては

(1)s=1、t=1であり、Aが−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化
水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または、−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(2)s=1、t=0であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または、−SO2−で
あり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(3)s=0、t=1であり、Aが−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化
水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、Bが酸素原子であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子またはニトリル基であ
る構造が挙げられる。
<ポリマー構造>
【0028】
【化5】

【0029】
一般式(C)において、A、B、D、Y、Z、Ar、k、m、n、r、s、tおよびR1
〜R16は、それぞれ上記一般式(A)および(B)中のA、B、D、Y、Z、Ar、k、m、n、r、s、tおよびR1〜R16と同義である。x、yはx+y=100モル%とし
た場合のモル比を示す。
【0030】
本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、式(A)で表される構成単位すなわちxのユニットを0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、式(B)で表される構成単位すなわちyのユニットを99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有している。
<ポリマーの製造方法>
スルホン酸基を有するポリアリーレンの製造には、例えば下記に示すA法、B法、C法の3通りの方法を用いることができる。
【0031】
(A法)例えば、特開2004−137444号公報に記載の方法で、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、このスルホン酸エステル基を脱エステル化して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
【0032】
(B法)例えば、特開2001−342241に記載の方法で、上記一般式(A)で表される骨格を有しスルホン酸基、スルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、この重合体をスルホン化剤を用いて、スルホン化することにより合成することもできる。
【0033】
(C法)一般式(A)において、Arが−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2p
SO3Hで表される置換基を有する芳香族基である場合には、例えば、特開2005−6
0625号公報に記載の方法で、上記一般式(A)で表される構造単位となりうる前駆体のモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、次にアルキルスルホン酸またはフッ素置換されたアルキルスルホン酸を導入する方法で合成することもできる。
【0034】
(A法)において用いることのできる、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーの具体的な例として、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報に記載されているスルホン酸エステル類を挙げることができる。
【0035】
(B法)において用いることのできる、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸基、またはスルホン酸エステル基を有しないモノマーの具体的な例として、特開2001−342241号公報、特開2002−293889号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
【0036】
(C法)において用いることのできる、上記一般式(A)で表される構造単位となりうる前駆体のモノマーの具体的な例として、特開2005−36125号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
【0037】
また、いずれの方法においても用いられる、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーの具体的な例として、
r=0の場合、例えば4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロ
ロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニルエステル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリルが挙げられる。これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物などが挙げられる。
【0038】
r=1の場合、例えば特開2003−113136号公報に記載の化合物を挙げることができる。
r≧2の場合、例えば特開2004−137444号公報、特開2004−244517号公報、特開2004−346146号公報、特開2005−112985号公報、特願2003−348524、特願2004−211739、特願2004−211740に記載の化合物を挙げることができる。
【0039】
スルホン酸基を有するポリアリーレンを得るためは、まず、これらの、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、前駆体のポリアリーレンを得ることが必要である。この共重合は、触媒の存在下に行われるが、この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
【0040】
これらの触媒成分の具体的な例、各成分の使用割合、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件としては、特開2001−342241号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0041】
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、この前駆体のポリアリーレンをスルホン酸基を有するポリアリーレンに変換して得ることができる。この方法としては、下記の3通りの方法がある。
(A法)前駆体のスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを、特開2004−137444号公報に記載の方法で脱エステル化する方法。
(B法)前駆体のポリアリーレンを、特開2001−342241号公報に記載の方法でスルホン化する方法。
(C法)前駆体のポリアリーレンに、特開2005−60625号公報に記載の方法で、アルキルスルホン酸基を導入する方法。
【0042】
上記のような方法により製造される、一般式(C)のスルホン酸基を有するポリアリーレンの、イオン交換容量は通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く発電性能が低い。一方、5meq/gを超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがある。
【0043】
上記のイオン交換容量は、例えば一般式(A)で表される構造単位となりうる前駆体のモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーの種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。
【0044】
このようにして得られるスルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
【0045】
〔非パーフルオロ固体高分子電解質膜〕
本発明で使用される非パーフルオロ固体高分子電解質膜は、上記固体高分子電解質から構成される。このような非パーフルオロ固体高分子電解質膜は、通常、非パーフルオロ固体高分子電解質膜と下記有機溶媒から選ばれた溶媒から電解質溶液を作成し、公知の塗工方法により、ポリエチレンテレフタレートなどの支持体に流延された後、乾燥され、特開2004−79380号公報に示されるような脱溶媒処理を行うことで得られる。乾燥温度は塗工速度および材料により適切な温度を設定でき、固体高分子電解質のスルホン酸基が脱離しない程度の温度が望ましい。
【0046】
有機溶媒としては、上記非パーフルオロ固体高分子電解質を溶解または分散する溶媒であればよく、特に限定されるものではない。また、1種類単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
具体的には、水;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ブタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル1−プロパノール、シクロヘキサノール
、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒド
ロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ブチルエーテル、フェニルエーテル、イソペンチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、シネオール、ベンジルエチルエーテル、アニソール、フェネトール、アセタールなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−オクタノンなどのケトン類
;γーブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類;ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テ
トラメチル尿素などの非プロトン性極性溶媒;トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0048】
上記支持体としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系ポリマーからなるシート、または表面を離型剤処理したガラス板や金属板、ポリエチレンテレフタレート(PET)のシートなども用いることができる。
【0049】
塗布方法としては、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、ドクターブレード法、スクリーン印刷、スプレー塗布などが挙げられる。
なお、溶媒の除去は、乾燥温度20℃〜180℃、好ましくは50℃〜160℃、乾燥時間5分〜600分、好ましくは30分〜400分で行う。
【0050】
〔触媒付電極〕
本発明で使用される触媒付電極は、電極基材および該基材上に形成された、触媒層とからなる。
【0051】
触媒層は、上記固体高分子電解質(高分子電解質)、触媒担持炭素を含み、必要に応じて分散剤、炭素繊維などの他の成分を含んでいてもよい。
触媒担持炭素
触媒担持炭素としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば良く、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属またはそれらの合金、酸化物から選択することができる。上記触媒の粒径は10〜300Åが好ましく、さらには15〜100Åがより好ましい。これらの触媒担持炭素は、下記に示される炭素粒子などの導電性材料に担持されて用いられる。
【0052】
炭素粒子としては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが用いられる。また、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などを用いてもよい。
【0053】
上記オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製「バルカンXC−72」、「バルカンP」、「ブラックパールズ880」、「ブラックパールズ1100」、「ブラック
パールズ1300」、「ブラックパールズ2000」、「リーガル400」、ライオン製「ケッチェンブラックEC」、三菱化学製「#3150、#3250」などが挙げられる。また、上記アセチレンブラックとしては電気化学工業製「デンカブラック」などが挙げられる。
【0054】
これらのカーボンの形態としては、粒子状のほか、繊維状も用いることができる。
炭素繊維
必要に応じて含まれていても良い炭素繊維としては、レーヨン系炭素繊維、PAN系炭素
繊維、リグニンポバー系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等を挙げることができ、好ましくは、気相成長炭素繊維である。
【0055】
炭素繊維を添加すると、電極中の細孔容積が増加することにより、燃料ガスや酸素ガスの拡散性が向上し、また、生成する水によるフラッディング等を改善でき、発電性能が向上する。
【0056】
さらに、必要に応じてさらに他の成分を添加していてもよく、たとえば、フッ素系ポリマーやシリコン系ポリマーなどの撥水剤を添加してもよい。撥水剤は生成する水を効率よく排出する効果を奏し、発電性能の向上に寄与する。
【0057】
触媒電極層は電極基材表面(ガス拡散極)に形成されている。電極基材としては燃料電池に一般に用いられる電極基材が特に限定されることなく用いられる。例えば、導電性物質を主たる構成材とする多孔質導電シートなどが挙げられ、この導電性物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛および膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。導電性物質の形態は繊維状または粒子状など特に限定されないが、繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートとしては、織布または不織布いずれの構造も使用可能である。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法などの方法で製造されたものが特に限定されること無く用いられる。また無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートは編物であっても構わない。
【0058】
これらの布帛として特に炭素繊維を用いる場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化または黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工をした後に炭化または黒鉛化した不織布、耐炎化糸または炭化糸または黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましい。例えば、東レ製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが好ましく用いられる。
【0059】
これらの基材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系ポリマーなどで表面処理されていてもよい。
触媒層は、上記した上記固体高分子電解質(高分子電解質)、触媒担持炭素、必要に応じて分散剤、炭素繊維などが、有機溶媒に分散した触媒ペーストが使用して形成される。有機溶媒としては、上記したものが例示される。
【0060】
たとえば、電極基材や支持基材上に電極触媒ペーストを塗布し、乾燥すれば、触媒層を形成できる。
塗布方法としては、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、ドクターブレード法、スクリーン印刷、スプレー塗布などが挙げられ、他の基材(転写基材)上に塗布して触媒層をいったん形成した後、電極基材に転写してもよい。この場合の転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、または表面を離型剤処理したガラス板や金属板なども用いることができる。
【0061】
なお、触媒ペーストおよび固体高分子電解質溶液の塗布は、上記と同様の方法で行うこ
とができる。溶媒の除去は、乾燥温度20℃〜180℃、好ましくは50℃〜160℃、乾燥時間5分〜600分、好ましくは30分〜400分で行う。
【0062】
触媒層の厚さは、特に制限されるものではないが、触媒として担持された金属が、単位面積あたり、0.01〜2.0mg/cm2、好ましくは0.05〜1.0mg/cm2の範囲で存在することが望ましい。この範囲にあれば、十分に高い触媒活性が発揮され、また効率的にプロトンを伝導することができる。
【0063】
電極層の細孔容積は、0.05〜3.0ml/g、好ましくは0.1〜2.0ml/gの範囲にあることが望ましい。
ガス拡散層
ガス拡散電極層は、固体高分子電解質膜の両面に当接するように設けられる。このようなガス拡散層として、公知のものを特に制限なく使用できるが、通常、多孔質酸化物、カーボンペーパーなどから構成される。
〔膜−電極接合体の製造方法〕
本発明に係る膜電極接合体(以下「CCM」ともいう)の製造方法では、
非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒付電極を備えた電極・電解質接合体を製造する際、
該固体高分子電解質膜を構成する電解質の溶液、または触媒付電極に含有される固体高分子電解質の溶液を、固体高分子電解質膜または触媒付電極に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後に固体高分子電解質膜と、触媒付電極とを加熱圧着させる圧着工程とを備える。
【0064】
なお、電極・電解質接合体では、電極が電解質膜と接触していればよく、このため、電解質膜を電極で挟持されていても、また、一部のみが接触していてもよく、さらには、電解質膜表面に電極が印刷されているものであってもよい。
【0065】
また、非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒層を備え、触媒層のうち固体高分子電解質膜に対面する面と反対の面に、ガス拡散電極を備えた電極・電解質膜接合体を作製する際に、
該固体高分子電解質膜を構成する固体高分子電解質の溶液、または触媒層に含有される固体高分子電解質の溶液を、ガス拡散電極または触媒層に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後にガス拡散電極と、触媒層とを加熱圧着させる圧着工程とを
備える。
【0066】
本発明の界面層形成用の固体高分子電解質溶液はスルホン酸基を有する固体高分子電解質であれば、特に限定されることなく用いられる。
該固体高分子電解質の可溶溶媒(たとえば前記した有機溶媒)に0.1〜30重量%の濃度となるように溶解した溶液を作製し、スプレー塗工にて噴霧することで、本発明の効果を得られる。スプレー塗工量としては特に制限されるものではないが、通常0.1〜1g/cm2、好ましくは0.2〜0.4g/cm2の範囲にあることが望ましい。
【0067】
加圧圧着条件としては、溶剤が揮散するとともに、高い接合強度のものが得られれば特に制限されるものではないが、通常、10〜100kgf/cm2、100〜160℃の条件、
好ましくは120〜150℃で、1〜60分、好ましくは10〜20分、加圧圧着すればよい。
【0068】
またこのとき使用される加圧圧着装置としては特に制限されるものではないが、通常(ヒーター付平行平板型加圧装置)などが使用される。
本発明の膜電極接合体の製造方法は、固体高分子型燃料電池における膜電極接合体の製
造法として用いることができる。
【0069】
なお、本発明に係る膜電極接合体の製造法の適用分野は、燃料電池に限定されるものではなく、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等などにも応用することができる。
【0070】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例において発電評価は下記の方法により行った。
【0071】
(発電性能)
得られた膜―電極接合体を単セルとし、酸素極に空気を供給するとともに燃料極に純水素を供給して発電を行った。発電条件は、温度90℃、燃料極側の相対湿度50%、酸素極側の相対湿度50%とした。発電性能は電流密度0.5A/cm2でのセル電圧を測定
して評価した。また、500時間発電後の接合状態についても観察した。
【0072】
[合成例1]
2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノン131.86g(303mmol)、4,4’−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル84.99g(190mmol)、ヨウ化ナトリウム7. 4g(49mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロライド7.4g(11mmol)、トリフェニルホスフィン29. 8g(113mmol)、亜鉛49. 4g(760mmol)を冷却管、三方コックを取り付けた三口フラスコに入れ、70℃のオイルバスにつけ、窒素置換後、窒素雰囲気下にN−メチル−2−ピロリドン1,000mlを加え、重合反応を開始した。20時間反応後、N−メチル−2−ピロリドン500mlで希釈し、大過剰の1:10塩酸/メタノール溶液に重合反応液を注ぎ、ポリマーを析出させた。洗浄、ろ過を繰り返し精製し、真空乾燥後、白色の粉末を得た。収量は、174.4g、収率93%であった。また、重量平均分子量は、127,000であった。
【0073】
得られた重合体150gに対し、濃硫酸1,500mlを加え攪拌し、室温で24時間、スルホン化反応を行った。反応後、大量の純水中に注ぎ、スルホン化ポリマーを析出させた。中性近くになるまでポリマーの水洗浄を続け、ろ過後、スルホン化ポリマーを回収し、90℃で真空乾燥した。スルホン化ポリマーの収量は、185.0gであった。このポリマーのイオン交換容量は2.1meq/gであり、重量平均分子量は189000であった。
【0074】
〔合成例2〕(1)疎水性ユニットの合成
攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管、冷却管をとりつけた1Lの三口フラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル48.8g(284mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン89.5g(266mmol)、炭酸カリウム47.8g(346mmol)をはかりとった。窒素置換後、スルホラン346mL、トルエン173mLを加えて攪拌した。オイルバスで反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管から系外に除去した。徐々に反応温度を200℃に上げ、3時間攪拌を続けた後、2,6−ジクロロベンゾニトリル9.2g(53mmol)を加え、さらに5時間反応させた。
【0075】
反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。反応液に不溶の無機塩を濾過
し、濾液をメタノール2Lに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過、乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解し、これをメタノール2Lに注いで再沈殿させた。沈殿した白色粉末を濾過、乾燥し、目的物109gを得た。GPCで測定した数平均分子量(Mn)は9,500であった。
得られた化合物は式(I)で表されるオリゴマーであることを確認した。
【0076】
【化6】

【0077】
(2)スルホン化ポリアリーレンの合成
攪拌機、温度計、窒素導入管をとりつけた1Lの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.2g(337mmol)、(1)で得られたMn9,500の疎水性ユニット48.7g(5.1mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3mmol)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3mmol)、トリフェニルホスフィン35.9g(137mmol)、亜鉛53.7g(821mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)430mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc730mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
【0078】
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム44g(506mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。ついで、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体122gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は135,000であった。得られた重合体は式(II)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0079】
【化7】

【0080】
[合成例3](1)疎水性ユニット(III)の合成
撹拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた500mLの3口フラスコに、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン17.8g(50.0mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン15.1g(45.0mmol)、炭酸カリウム8.1g(58.5mol)、スルホラン117g、トルエン40gを入れ、窒素雰囲気下、130℃で撹拌した。トルエンとの共沸により水分を取り除いた後、トルエンを系外に取り除き、195℃で7時間撹拌した。反応溶液を100℃まで冷やしてから、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン5.34g(15.0mmol)を加え、再度195℃で3時間撹拌した。トルエンにより希釈し、セライト濾過により固形
分を取り除いた。濾液をメタノール/濃塩酸溶液(メタノール2.0L/濃塩酸0.2L)に注ぎ、反応物を凝固させた。吸引濾過により固体を濾過し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、風乾した。これをテトラハイドロフランに再溶解し、メタノール3.0Lに注ぎ、反応物を凝固させた。吸引濾過により固体を濾過し、得られた固体を風乾して、さらに真空乾燥することにより目的の疎水性ユニット22.1gを得た(収率75%)。GPC(ポリスチレン換算)で求めた生成物の数平均分子量は8000、重量平均分子量は14000であった。得られた化合物は下記式(III)で表わされるオリゴマーであ
ることを確認した。
【0081】
【化8】

【0082】
(2)スルホン化ポリアリーレンの合成
撹拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた500mLの3口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル31.6g(78.7mmol)、(1)で得た疎水性ユニット14.1g(1.76mmol)、トリフェニルホスフィン8.39g(32.0mmol)、亜鉛12.6g(192mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.09g(3.2mmol)、よう化ナトリウム0.36g(2.4mmol)をはかりとった。40℃に加熱したオイルバスにフラスコをつけ、2時間真空乾燥した。内部を数回乾燥窒素置換した後、脱水したジメチルアセトアミド100mLを加え、重合を開始した。反応温度が90℃を超えないように制御しながら、3時間重合を続けた。反応終了後、ジメチルアセトアミドを360g加え希釈し、セライト濾過により不溶分を取り除き、固形分含量が12%となるように濃縮した。
【0083】
得られた濃縮液を撹拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた1Lの3口フラスコに入れ、臭化リチウム15.1g(173mmol)を加え、120℃で7時間撹拌した。反応終了後、アセトン4Lに注ぎ、反応物を凝固させた。ついで、1N塩酸、純水の順に洗浄後、吸引濾過により固体を濾過し、得られた固体を乾燥することによりスルホン化ポリマー(IV)30.0gを得た(収率87%)。GPC(ポリスチレン換算)で求めた生成物の数平均分子量は102,000、重量平均分子量は320,000であった。得られたポリマーは、下記式(IV)で表わされるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.1meq/gであった。
【0084】
【化9】

【0085】
[実施例1]
(プロトン伝導膜の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比67:33)溶液を、厚み0.125mm、幅300mmのPETロール上に塗工幅250mmで、コンマリバースコーターによりキャストして製膜・乾燥し、水浸漬による脱溶媒後、PET上に膜厚40μmのプロトン伝導膜を作製した。
(触媒電極の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)を水とN−メチル−2−ピロリドンの重量比を20:80のとした溶液に溶解して、ポリマー溶液を作製し、該溶液にカーボンブラックと白金の重量比を50:50とした白金担持カーボン粒子(TEC10E50E:田中貴金属工業製)と気相成長炭素繊維(VGCF:昭和電工製)を混合・攪拌することによってペーストを作製した。東レ製カーボンペーパーTGPシリーズをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で表面処理したものに、該触媒ペーストをコンマリバースコーターにて、触媒量が0.5mg/cm2になるように塗工厚を調整した。
(界面層形成用固体高分子電解質溶液の噴霧)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%水、N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比10:70:20)溶液を上記触媒電極にスプレー塗工により30秒噴霧し、上記プロトン伝導膜に対して挟持される状態で加熱プレスにて、電極―電解質接合体を形成した。このようにして作製した電極―電解質接合体を用いて発電評価を実施した。
【0086】
評価結果を表1にまとめた。
[実施例2]
(プロトン伝導膜の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比67:33)溶液を、厚み0.125mm、幅300mmのPETロール上に塗工幅250mmで、コンマリバースコーターによりキャストして製膜・乾燥し、水浸漬による脱溶媒後、PET上に膜厚40μmのプロトン伝導膜を作製した。
(触媒電極の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)を水とN−メチル−2−ピロリドンの重量比を20:80のとした溶液に溶解して、ポリマー溶液を作製し、該溶液にカーボンブラックと白金の重量比を50:50とした白金担持カーボン粒子(TEC10E50E:田中貴金属工業製)と気相成長炭素繊維(VGCF:昭和電工製)を混合・攪拌することによってペーストを作製した。東レ製カーボンペーパーTGPシリーズをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で表面処理したものに、該触媒ペーストをコンマリバースコーターにて、触媒量が0.5mg/cm2になるように塗工厚を調整した。
(界面層形成用固体高分子電解質溶液の噴霧)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%水、N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比10:70:20)溶液を上記プロトン伝導膜にスプレー塗工により30秒噴霧し、上記プロトン伝導膜に対して挟持される状態で加熱プレスにて、電極―電解質接合体を形成した。このようにして作製した電極―電解質接合体を用いて発電評価を実施した。評価結果を表1にまとめた。
[実施例3]
(プロトン伝導膜の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比67:33)溶液を、厚み0.125mm、幅300mmのPETロール上に塗工幅250mmで、コンマリバースコーターによりキャストして製膜・乾燥し、水浸漬による脱溶媒後、PET上に膜厚40μmのプロトン伝導膜を作製した。
(触媒ペーストの作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)を水とN−メチル−2−ピロリドンの重量比を20:80のとした溶液に溶解して、ポリマー溶液を作製し、該溶液にカーボンブラックと白金の重量比を50:50とした白金担持カーボン粒子(TEC10E50E:田中貴金属工業製)と気相成長炭素繊維(VGCF:昭和電工製)を混合・攪拌することによってペーストを作製した。
(膜電極接合体の作製)
上記のようにして得られたPET支持体付プロトン伝導膜のPETに対向する面に、作製した触媒ペーストをスロットダイ間欠塗工により、電極形成・乾燥後にPETを剥離し、その電極と対向する面に再び触媒ペーストをスロットダイ間欠塗工により、電極形成・乾燥後、膜電極接合体(CCM)を作製した。
(界面層形成用固体高分子電解質溶液の噴霧)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%水、N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比10:70:20)溶液を上記膜電極接合体にスプレー塗工により30秒噴霧し、上記プロトン伝導膜に対して挟持される状態で加熱プレスにて、電極―電解質接合体を形成した。このようにして作製した電極―電解質接合体を用いて発電評価を実施した。評価結果を表1にまとめた。
[比較例1]
(プロトン伝導膜の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)の15重量%N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール(溶媒重量比67:33)溶液を、厚み0.125mm、幅300mmのPETロール上に塗工幅250mmで、コンマリバースコーターによりキャストして製膜・乾燥し、水浸漬による脱溶媒後、PET上に膜厚40μmのプロトン伝導膜を作製した。
(触媒電極の作製)
上記合成例(2)で得られたスルホン化ポリアリーレン(II)を水とN−メチル−2−ピロリドンの重量比を20:80のとした溶液に溶解して、ポリマー溶液を作製し、該溶液にカーボンブラックと白金の重量比を50:50とした白金担持カーボン粒子(TEC10E50E:田中貴金属工業製)と気相成長炭素繊維(VGCF:昭和電工製)を混合・攪拌することによってペーストを作製した。東レ製カーボンペーパーTGPシリーズをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で表面処理したものに、該触媒ペーストをコンマリバースコーターにて、触媒量が0.5mg/cm2になるように塗工厚を調整した。
(界面層形成用固体高分子電解質溶液の噴霧)
上記触媒電極を上記プロトン伝導膜に対して挟持される状態で加熱プレスにて、電極―電解質接合体を形成した。このようにして作製した電極―電解質接合体を用いて発電評価を実施した。評価結果を表1にまとめた。
【0087】
【表1】

【0088】
表1から明らかなように、実施例1〜3では比較例1より優れた発電性能(高いセル電圧)を示しており、高い発電効率を得られることが確認された。また、界面に固体高分子電解質溶液を噴霧することで接合強度が増し、構成材の剥離も見られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒付電極を備えた電極・電解質接合体を製造する際、
該固体高分子電解質膜を構成する固体高分子電解質の溶液、または触媒付電極に含有される固体高分子電解質の溶液を、固体高分子電解質膜または触媒付電極に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後に固体高分子電解質膜と、触媒付電極とを加熱圧着させる圧着工程とを
備えることを特徴とする電極・電解質膜接合体の製造方法。
【請求項2】
非パーフルオロ固体高分子電解質膜の両面に該固体高分子電解質を含む触媒層を備え、触媒層のうち固体高分子電解質膜に対面する面と反対の面に、ガス拡散電極を備えた電極・電解質膜接合体を作製する際に、
該固体高分子電解質膜を構成する固体高分子電解質の溶液、または触媒層に含有される固体高分子電解質の溶液を、ガス拡散電極または触媒層に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後にガス拡散電極と、触媒層とを加熱圧着させる圧着工程とを
備えることを特徴とする電極・電解質膜接合体の製造方法。
【請求項3】
非パーフルオロ固体高分子電解質膜の固体高分子電解質が下記一般式(A)で表される構造単位、および下記一般式(B)で表される構造単位を含むことを特徴とする、スルホン酸基を有するポリアリーレンであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の製造方法。
【化1】

(式中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l
−(lは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Arは−SO3Hまたは−O(CH2)pSO3Hまたは−O(CF2)pSO3Hで表される置換基
を有する芳香族基を示す。pは1〜12の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。)
【化2】

(式中、A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH
−、−COO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および
ハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素
原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。s、tは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。)
【請求項4】
固体高分子電解質溶液が、該固体高分子電解質を可溶性溶媒に溶解したものであって、濃度が0.1〜30重量%の溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極
・電解質膜接合体の製造方法。
【請求項5】
固体高分子電解質溶液の塗布方法が、スプレー塗工法であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに電極・電解質膜接合体の製造方法。




【公開番号】特開2007−87888(P2007−87888A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278194(P2005−278194)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】