説明

電極支持棒用ガラス粉末、電極支持棒およびそれらの製造方法

【課題】本発明は、電極を挿通するために加熱しても折れや欠けが発生しない電極支持棒を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の電極支持棒用ガラス粉末の製造方法は、ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を備え、ガラス粉末の分級工程において粒径が200μm以下のガラス粉末を選択することを特徴とし、また、本発明の電極支持棒用ガラス粉末は、ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を備え、分級工程において粒径200μm以下のガラス粉末を選択する製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極支持棒用ガラス粉末、電極支持棒およびそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陰極線管は、フェイスパネル、ファンネルおよびネック管が封着され、フェイスパネルの内面に塗布された蛍光体に、ネック管に配設された電子銃から電子を放射することで蛍光体が発光して画像を表示するディスプレイ装置である。
【0003】
電子銃は、次のようにしてネック管に固定される。まず、ネック管の内表面に固定されたガラス製の電極支持棒を加熱軟化して、電極を電極支持棒の内部に挿通し、固定する。その後、電子銃を電極から通電できるようにネック管内に装着し、固定する。
【0004】
電極支持棒は、以下のようにして作製される。
【0005】
まず、所定のガラス組成となるようにガラス原料を溶融炉で溶融した後、溶融ガラスを溶融炉から流し出してガラスを固化させる。
【0006】
次に、固化したガラスを粉砕し、分級してガラス粉末を作製する。
【0007】
最後に、ガラス粉末に有機バインダーや顔料を加えて顆粒状に造粒し、金型に充填してプレス成形した後、焼成して電極支持棒を作製する(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
このような用途には、例えば、質量%表示でSiO2 74〜85%、B23 14〜25%、R2O(R=Li、NaおよびK) 0.05〜5%、MgO 0〜0.5%、Al23 0.2〜0.9%の成分を含有するガラス粉末が使用される(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−180973号公報
【特許文献2】特開2001−180968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電極支持棒には、電極を挿通するために加熱軟化する際に折れたり欠けたりしないことが要求されるが、加熱した際に折れたり欠けたりする場合があった。
【0010】
本発明は、電極を挿通するために加熱しても折れや欠けが発生しない電極支持棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記事情を鑑みて鋭意検討を行なった結果、電極支持棒用ガラス粉末に、ガラス原料の未溶解物や侵食された溶融炉の耐火物が混入している場合があり、これが電極支持棒の折れや欠けの原因となっていることと、混入した未溶解物や耐火物の粒径が200μm以下であると折れや欠けが発生しないことを突き止め、本発明として提案するものである。
【0012】
すなわち、本発明の電極支持棒用ガラス粉末の製造方法は、ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を備え、ガラス粉末の分級工程において粒径が200μm以下のガラス粉末を選択することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電極支持棒用ガラス粉末は、ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を備え、分級工程において粒径200μm以下のガラス粉末を選択する製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電極支持棒の製造方法は、ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を含有し、ガラス粉末の分級工程において粒径200μm以下のガラス粉末を選択する製造方法を用いて製造された電極支持棒用ガラス粉末に有機バインダーを添加して攪拌することによって均一なスラリーを作製する工程、スラリーを噴霧・乾燥してガラス粉末顆粒を作製する工程、金型にガラス粉末顆粒を充填しプレス成形して電極支持棒の前駆体を作製する工程および前駆体を焼成する工程を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電極支持棒は、ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を含有し、ガラス粉末の分級工程において粒径200μm以下のガラス粉末を選択する製造方法を用いて製造された電極支持棒用ガラス粉末に有機バインダーを添加して攪拌することによって均一なスラリーを作製する工程、スラリーを噴霧・乾燥してガラス粉末顆粒を作製する工程、金型にガラス粉末顆粒を充填しプレス成形して電極支持棒の前駆体を作製する工程および前駆体を焼成する工程を備える製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電極支持棒は、粒径が200μm以下のガラス粉末を用いて作製されるため、加熱しても折れや欠けが発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
溶融炉から流し出したガラスにはガラス原料の未溶解物、例えばシリカやアルミナ、または溶融炉から侵食された耐火物が混入していることがある。
【0018】
ガラス中に未溶解物や耐火物が存在した状態でガラス粉末に粉砕すると、ガラスよりも未溶解物や耐火物の方が硬いため粉砕されにくく、大きな粒径のまま残存しやすい。
【0019】
これまで、ガラス中に未溶解物や耐火物が存在していても、ガラス粉末を製造する工程ではmm単位のように粗大な粒子以外は取り除かれることはなかったが、本発明では粉末に粉砕した後に分級することで粒径が200μmよりも大きな未溶解物や耐火物が取り除かれる。未溶解物や耐火物とガラス粉末との熱膨張係数の差が、加熱時に折れや欠けが発生する原因となるため、折れや欠けの発生を防止することができる。
【0020】
なお、粒径が200μm以下の未溶解物や耐火物は、折れや欠けを発生させるほど大きな歪が生じない。
【0021】
ガラス粉末の粒径を200μm以下にするために、篩を用いる。ガラス粉末の粒径は180μm以下であるとより好ましく、150μm以下であるとさらに好ましい。
【0022】
ガラス粉末のD50は、10〜30μmであることが好ましい。10μmよりも小さいと粉砕に時間やコストがかかるとともに取り扱いにくくなるため好ましくない。また、30μmよりも大きいと電極支持棒の前駆体の空隙が大きくなるため前駆体の強度が低く破損しやすい。
【0023】
本発明の電極支持棒用ガラス粉末の製造方法について説明する。
【0024】
まず、ガラス原料を所定の組成となるように調合し、アルミナ耐火物等で内壁が覆われた溶融炉に投入し、1600℃程度で溶融する。
【0025】
次に、溶融ガラスを溶融炉から流し出し、固化した後に粗粉砕して粒径2〜3mm程度のカレットを作製する。
【0026】
続いて、カレットを、ボールミル、ハンマーミル、磨砕器等を用いてD50が10〜30μmとなるように粉砕する。
【0027】
最後に、前記粉砕物を目間隔が例えば150μmの篩を通して、所望の粒径を有するガラス粉末を作製する。
【0028】
次に、電極支持棒の作製方法について説明する。
【0029】
上述したガラス粉末に有機バインダーや顔料を添加して均一に攪拌してスラリーを作製し、スラリーを噴霧・乾燥してD50が110〜180μmのガラス粉末顆粒を作製する。
【0030】
続いて、金型にガラス粉末顆粒を充填し、プレス成形して電極支持棒の前駆体を作製する。
【0031】
最後に、前駆体を900〜1000℃で焼成し、脱バインダーして電極支持棒を作製する。
【0032】
なお、ガラス粉末の組成は、質量%表示でSiO2 74〜85%、B23 14〜25%、R2O(R=Li、NaおよびK) 0.05〜5%、MgO 0〜0.5%、Al23 0.2〜0.9%の成分を含有すると熱膨張係数や軟化点等の点から好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて詳細に説明する。
【0034】
[実施例]
まず、質量%表示でAl23 0.3%、SiO2 75%、B23 20%、Na2O 4.0%、K2O 0.7%の組成となるようにガラス原料を調合し、白金ルツボに投入し、電気炉において1600℃で3時間放置し、溶融ガラスとした。
【0035】
次に、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出し、固化した後に粒径が2〜3mm程度となるように粗粉砕してカレットを作製した。
【0036】
続いて、前記カレットをボールミルを用いて平均粒径10μm程度まで粉砕してガラス粉末を作製し、目開きが150μmの篩を用いて篩を通過したガラス粉末を収集した。
【0037】
前記ガラス粉末を600g、純水を700gおよびポリエチレングリコールを30g添加して攪拌混合してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて前記スラリーを噴霧乾燥し、平均粒径が150μm程度の顆粒を作製した。
【0038】
最後に、前記顆粒を金型に充填してからプレス成形し、その成形体を970℃において焼成することによって電極支持棒(4×4×40mm)を10本作製した。
【0039】
[比較例1]
実施例で作製したガラス粉末に平均粒径250μmのシリカを3g添加した以外は実施例と同様の手順で電極支持棒を10本作製した。なお、シリカ粉末の添加は、未溶解物の混入を再現したものである。
【0040】
[比較例2]
目開きが500μmの篩を用いた以外は実施例と同様の手順で電極支持棒を10本作製した。
【0041】
各電極支持棒をバーナーで970℃まで加熱した後、水中に投入して折れや欠けを評価した。
【0042】
実施例は、10本の電極支持棒において全く「折れ」や「欠け」が見られなかったのに対して、比較例1は6本の電極支持棒において、比較例2では2本の電極支持棒において「折れ」または「欠け」が発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を溶融する工程、溶融ガラスを固化する工程、ガラスを粉砕して粉末にする工程およびガラス粉末を分級する工程を備え、分級工程において粒径が200μm以下のガラス粉末を選択することを特徴とする電極支持棒用ガラス粉末の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極支持棒用ガラス粉末の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電極支持棒用ガラス粉末。
【請求項3】
請求項2に記載の電極支持棒用ガラス粉末に有機バインダーを添加して攪拌することによって均一なスラリーを作製する工程、スラリーを噴霧・乾燥してガラス粉末顆粒を作製する工程、金型にガラス粉末顆粒を充填しプレス成形して電極支持棒の前駆体を作製する工程および前駆体を焼成する工程を備えることを特徴とする電極支持棒の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電極支持棒の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電極支持棒。

【公開番号】特開2007−45683(P2007−45683A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234168(P2005−234168)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】