説明

電極用ペースト組成物、これを用いたプラズマディスプレイパネルの前面板及びその製造方法

【課題】プラズマディスプレイパネルの前面板において、変色を防止しつつ前面基板に金属電極を直接形成する。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルの前面板200は、前面基板210と、この前面基板210上の所定位置に直接形成された金属電極220と、を備える。金属電極220は、金属粉末を含むペースト組成物に対して所定割合の酸化ホウ素が添加された電極用ペースト組成物をパターニングして形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用ペースト組成物、これを用いたプラズマディスプレイパネルの前面板及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、前面基板に金属電極を直接形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という)は、隔壁で分離された放電セルに放電ガス(例えば、He、Xeなど)を注入し、プラズマ発光時に発生する紫外線が蛍光体を励起させ、基底状態に戻る時のエネルギー差によって発生する可視光線の発光現象を用いた表示素子である。
【0003】
PDPは、単純構造による製作の容易性、高輝度・高発光効率、メモリー機能及び160°以上の広視野角を有するなど、いくつかの長所を持っている。また、大画面を実現できるという長所もある。
【0004】
図3は、従来のPDPの前面板構造を示した断面図である。図3に示すように、PDPの前面板100は、基板110に透明電極120、ブラックマトリクス130、金属(バス電極)140、前面誘電体層150及び保護層160が順に形成される。
【0005】
透明電極120は、放電セルから入力される光を透過させるためにインジウム・スズ酸化物(以下「ITO」という)で作られている。
【0006】
バス電極140は、導電性の高い金属、例えば、銀(Ag)からなる。
【0007】
バス電極140は、導電性の高い物質で形成されるため、導電性の低い透明電極120の駆動電圧を減少させる。
【0008】
ブラックマトリックス130は、透明電極120とバス電極140との間に形成され、バス電極140が他の部分に変色を引き起こすこと等を防止する。また、ブラックマトリックス130は、透明電極120とバス電極140とが通電できるように、非常に薄く形成される。
【0009】
透明電極120の両側面に形成されたブラックマトリックス130aは、放電セル間を区分し、PDPのコントラストを向上させる役割を果たす。
【0010】
透明電極120、バス電極140及びブラックマトリックス130が形成された基板110には、さらに前面誘電体層150と保護膜160とが積層される。
【0011】
前面誘電体層150には、プラズマ放電時に発生された電荷が蓄積される。
【0012】
保護膜160は、プラズマ放電時にスパッタリングによる前面誘電体層150の損傷を防止して2次電子の放電効率を向上させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、PDPの大型化に伴って透明電極120も長くなる。このため、透明電極120は、その抵抗値が高くなり、ITOの特性上、電気伝導度が低くなってしまうことになる。
【0014】
これに対し、透明電極120にバス電極140をさらに追加することが考えられたが、単にバス電極140を追加するだけでは、PDPがより大型化した場合における透明電極の抵抗値の増加を十分に補うことはできなかった。
【0015】
そこで、透明電極120を介さずに、基板110に金属電極(バス電極に相当する)を直接形成することを検討した。
【0016】
図4は、図3に示す前面板において、基板に金属電極が直接形成された場合の変色領域(fading area)を示した断面図である。
【0017】
図4に示すように、基板110に金属電極140′を直接形成すると、この金属電極140′と接触する基板110の周囲に変色領域142が生じることになる。
【0018】
これは、金属電極140′の主要物質である金属、例えば、銀(Ag)が、ガラス基板110に接触すると、銀イオン(Ag)がガラス基板110上のスズ(Sn)と反応して変色を引き起こすからである。
【0019】
このように、基板に金属電極を直接形成する場合には、基板上に変色が生じてしまうという問題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の問題に着目してなされたものであり、その目的は、基板に金属電極を直接形成しても基板の変色現象が生じない電極用ペースト組成物、これを用いたプラズマディスプレイパネルの前面板及びその製造方法を提供することにある。
また、その製造工程を簡略化し、製造コストを節減できるプラズマディスプレイパネルの前面板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に係る電極用ペースト組成物は、5〜20重量部のアクリル系バインダー、2〜15重量部の光重合性モノマー、1〜8重量部の光重合性開始剤、5〜20重量部の溶剤、1〜10重量部のガラス粉末、50〜80重量部の金属粉末、及び、0.1〜5重量部の酸化ホウ素(B)を含んで構成される。
【0022】
また、本発明に係るプラズマディスプレイパネルの前面板は、前面基板と、この前面基板上の所定位置に直接形成された金属電極と、を含んで構成される。ここで、かかる金属電極は、金属粉末(例えば、銀粉末)を含むペースト組成物に対して所定割合の酸化ホウ素(B)が添加された電極用ペースト組成物をパターニングして形成されることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法は、基板上に金属粉末(銀粉末)を含むペースト組成物に酸化ホウ素を添加した電極用ペースト組成物を用いて複数の金属電極を形成する第1段階と、前記金属電極が形成された基板にブラックマトリックスを形成する第2段階と、前記金属電極及びブラックマトリックスが形成された基板に前面誘電体層及び保護層を形成する第3段階と、を含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、金属粉末を含むペースト組成物に所定割合の酸化ホウ素を添加した電極用ペースト組成物を用いることにより、プラズマディスプレイパネルの前面板において、基板に金属電極を直接形成しても基板の変色を抑制できる。このため、基板に金属電極を直接形成することで、PDPの大型化に伴う性能低下(電気伝導度の低下)に容易に対応することができ、さらに、前面板の製造工程を簡略化し(透明電極の形成工程を省略でき)、製造コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明に係るプラズマディスプレイパネルの前面板(構造)及びその製造方法の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの概略を示す分解斜視図である。
【0027】
図1に示すように、プラズマディスプレイパネル(PDP)は、前面板(構造)200と背面板(構造)300とに分けられる。
【0028】
PDPの前面板200は、ガラス基板210(以下「前面基板」という)、該前面基板210上(図では下側)に形成される金属電極220、ブラックマトリックス230、前面誘電体層240及び保護層250を含んで構成される。
【0029】
金属電極220は、前面基板210上に一定の間隔で形成される。
【0030】
金属電極220は、導電性の高い金属粉末、例えば、銀(Ag)粉末に、酸化ホウ素(B)が添加された物質で形成される。酸化ホウ素は、金属電極220が前面基板210に直接形成される際に、金属粉末(ここでは、銀)によって前面基板210が変色することを防止する役割を果たす。
【0031】
より具体的に言うと、本実施形態に係る金属電極220は、5〜20重量部のバインダー、2〜15重量部の光重合性モノマー、1〜8重量部の光重合開始剤、5〜20重量部の溶剤、1〜10重量部のガラス粉末、50〜80重量部の金属粉末及び0.1〜5重量部の酸化ホウ素を含むペースト組成物(電極用ペースト組成物)から形成される。なお、各数値範囲は、本発明者らが行った実験等によって、金属電極220として使用できることが確認できたものを示している。
【0032】
上記ペースト組成物において、バインダーとしては、紫外線硬化樹脂が用いられ、具体的には、メタアクリル系バインダー、アクリル系バインダー及びセルロースバインダーよりなる群から選択される一つ以上を用いることができる。その中でも、アクリル系バインダーが特に好ましいことが確認されている。但し、上記群に限定するものではない。
【0033】
また、上記光重合性モノマーは、上記電極用ペースト組成物の光硬化性を促進し、現像性を向上させるために使用される。
【0034】
上記光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチルオールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトルトリアクリレート、ペンタエリスリトルテトラアクリレート、トリメチルオールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチルオールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトルペンタアクリレート、ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート、及び、上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、トリメリト酸、テレフタル酸などの多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどがある。また、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に、一分子内に二つ以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能単量体が好ましい。
【0035】
また、上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−[4−モルホリノフェニル]−ブタン−1-オン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートなどのホスフィンオキサイド類;各種ペルオキシド類など挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ガラス粉末を上記ペースト組成物に添加することによって、露光、現像後の被膜は、600℃以下で容易に焼成される。主構成要素として、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化リチウム、又は酸化亜鉛よりなる群から選択される一つ以上からなるガラス粉末を使用することが好ましい。
【0037】
また、上記金属粉末は、銀(Ag)粉末、銅(Cu)粉末及びアルミニウム(Al)粉末よりなる群から選択される一つ以上であり、好ましくは、銀粉末である。
【0038】
また、上記ペースト組成物を塗布する工程で、粘度調整、乾燥による膜の製造、及び/又は接触露光を可能にするために希釈剤として溶剤が配合される。
【0039】
かかる溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフタ、水素添加石油ナフタ、溶媒ナフタなどの石油系溶剤が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
ブラックマトリックス230は、一対の金属電極220の両側に、該金属電極220とほぼ平行に形成されて放電セル間を区分する。また、ブラックマトリックス230は、隣接する放電セル間で外部光及び内部の透過光を吸収することによってコントラストを向上させる。
【0041】
前面誘電体層240は、金属電極220と直接接触する層であり、金属電極220との化学反応を避けるために軟化点の高いPbO系のガラスを使用する。このような前面誘電体層240は放電電流を制限してグロー放電を保持し、プラズマ放電時に発生した電荷を蓄積する。
【0042】
保護膜250は、プラズマ放電時にスパッタリングによる前面誘電体層240の損傷を防止するだけでなく、2次電子の放電効率を増大させる。このような保護膜250は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)で形成される。
【0043】
PDPの背面板300は、ガラス基板310(以下「背面基板」という)、該背面基板310上(図では上側)に形成されるアドレス電極320、背面誘電体層330、隔壁340及び蛍光層350を含んで構成される。
【0044】
アドレス電極320は、各放電セルの中央に位置する。また、アドレス電極320は、70〜80μm程度の線幅を有する。
【0045】
背面誘電体層330は、アドレス電極320及び背面基板310を覆うように配置されて、アドレス電極320を保護する。また、背面誘電体層330は、例えば、銀からなるアドレス電極320との化学反応を避けるために軟化点の高いPbO系のガラスを使用する。
【0046】
隔壁340は、背面誘電体層330上部に配置され、アドレス電極320から所定距離だけ離れ、垂直方向に延びる形態で形成される。
【0047】
隔壁340は、放電距離を保持し、隣接する放電セル間の電気的、光学的干渉を防止するために必要とされる。
【0048】
蛍光層350は、隔壁340の両側面及び背面誘電体層330の上面を覆うように形成される。
【0049】
蛍光層350は、プラズマ放電時に発生する紫外線によって励起され、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかの可視光線を発生する。
【0050】
以下、PDPの発光動作を詳述する。
【0051】
図1において、金属電極220及びアドレス電極320に電圧が印加され、これらの電極間に一定の電圧(電圧マージン範囲にある)がかかれば、この電極間にプラズマが形成される。気体にはある程度の自由電子が存在し、電場がかかれば、その自由電子が力(F=qE)を受ける。
【0052】
この力を受けた電子が不活性気体等の最外郭電子を離すだけのエネルギーが得られれば(第1イオン化エネルギー)、気体をイオン化させ、ここで発生したイオンと電子は電磁場の力を受けて両電極に移動する。特に、イオンが保護層250にぶつかるとき、保護層250では2次電子が生成され、この電子がプラズマの形成を助ける。
【0053】
従って、初期放電を始めるためには高い電圧が求められるが、一端、放電されると、電子密度が増加しながら低い電圧が求められる。
【0054】
PDP中に注入される気体は、主にNe、Xe、He等の不活性気体であり、特にXeが準安定状態で出す147nmと173nmの波長の紫外線が蛍光体に加えられ、赤色(R)、緑色(G)又は青色(B)の可視光線が発生される。
【0055】
ここで、発生される可視光線は、その蛍光層350の種類によって決定され、各放電セルは赤色、緑色、青色をそれぞれ表示するピクセルになる。
【0056】
各放電セルのカラーは、RGBの組合せで制御される。PDPの場合は、プラズマが生成される時間を調節してこれを制御する。
【0057】
以上のようにして発生された可視光線は、背面基板210を介して外部に放射される。
【0058】
図2は、図1に示すプラズマディスプレイパネルの前面板の製造工程を示している。
【0059】
図2(a)に示すように、まず、前面基板210にペースト組成物222を塗布する。かかるペースト組成物222は、銀(Ag)粉末及び酸化ホウ素(B)を含んで構成される。さらに言うと、少なくとも銀粉末を含んで構成されるペースト組成物に対して所定割合の酸化ホウ素を添加したものである。
【0060】
次に、ペースト組成物222が塗布された前面基板210上に、一定のパターンが形成された第1マスク400を配置する。この第1マスク400は、図2(b)に示すように、金属電極220が形成される位置と対応する位置に開口部410が形成される。
【0061】
その後、第1マスク400を配置した状態で所定時間の露光を行う。
【0062】
露光工程には、フォトマスクを用いて露光するフォトリソグラフィーが使われることが一般的である。フォトマスクは感光性有機成分の種類によってネガティブタイプ(negative type)又はポジティブタイプ(positive type)が使われる。
【0063】
また、フォトマスクを使用せずに、赤色又は青色の可視光線レーザー、Arイオンレーザーなどを利用して直接パターンを形成する方法を使用してよい。
【0064】
露光装置としては、ステップ露光機や近接露光機などが用いられる。なお、基板に感光性ペーストを塗布した後、搬送工程と共に露光を行うことによって、小さい露光面積の露光装置でも大きな面積を露光することができる。
【0065】
活性光源としては、可視光線、近赤外線、紫外線、電子線、X線又はレーザービームを使用することができるが、紫外線を使用するのが好ましい。なお、紫外線光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ及び殺菌灯などを使用することができ、より好ましくは超高圧水銀灯を使用する。
【0066】
以下、光源としてUVランプを使用して露光する場合を例に説明する。もちろん、他の光源を使用して露光することも可能である。
【0067】
露光工程においてUVランプを照射する場合、ペースト組成物222はUVランプからの光(紫外線)に感応して硬化する。このとき、ペースト組成物222上に置かれた第1マスク400によって、ペースト組成物222は一定部分だけが硬化される。即ち、開口部410に位置するペースト組成物222はUVランプから照射される紫外線によって硬化し、開口部410が形成されない部分に位置するペースト組成物222は硬化しない。
【0068】
次に、第1マスク400を除去し、その後、前面基板210を現像液で現像する(現像工程)。
【0069】
その結果、図2(c)に示すように、UVランプ(紫外線)に感応して硬化した部分だけを残し、他の部分のペースト組成物222は除去される。そして、焼成工程を行って金属電極220の形成を完了する。
【0070】
続いて、図2(d)に示すように、金属電極220が形成された前面基板210にブラックマトリックス用物質232を塗布し、このブラックマトリックス用物質232が塗布された前面基板210上に、所定のパターン510が形成された第2マスク500を配置する。なお、ブラックマトリックス用物質232も紫外線硬化樹脂等を含んでいる。
【0071】
第2マスク500は、図2(d)に示すように、ブラックマトリックス230が形成される位置と対応する位置に開口部510が形成されている。
【0072】
続いて、第2マスク500を配置した状態でUVランプをONし、紫外線を所定時間だけ照射する。
【0073】
これにより、ブラックマトリックス用物質232はUVランプ(紫外線)に感応して硬化される。このとき、ブラックマトリックス用物質232上に配置された第2マスク500によって、ブラックマトリクス用物質は一定部分だけが硬化される。即ち、開口部510に位置するブラックマトリックス用物質232はUVランプから紫外線が照射されて硬化し、開口部510が形成されていない部分に位置するブラックマトリックス用物質232は硬化しない。
【0074】
次に、第2マスク500を除去し、その後、現像工程を行う。その結果、UVランプ(紫外線)に感応して硬化した部分だけを残し、他の部分のブラックマトリックス用物質232は除去される。そして、焼成工程を行ってブラックマトリックス230の形成を完了する。
【0075】
次に、金属電極220及びブラックマトリックス230が形成された前面基板210上に誘電体層物質を塗布し、図2(f)に示すように、前面誘電体層240を形成する。
【0076】
そして、前面誘電体層240に保護層物質である酸化マグネシウムを塗布して保護層250を形成する。
【0077】
このようにして、銀粉末に酸化ホウ素が添加されたペースト組成物222で金属電極220を構成し、前面基板210上に金属電極220を直接的に形成する。
【0078】
従って、ITOパターニング工程を通して透明電極を形成する工程を省略することができ、製造コストの高いITOを使用しなくて済むので製造コストを節減できるという効果がある。
【0079】
以下、上記工程によって製造された前面基板を備えるPDPに対する模擬実験結果を説明する。
【0080】
表1は、金属電極を形成する電極用ペースト組成物の組成と、前面基板の変色程度とを確認した模擬実験結果を示している。
【0081】
【表1】

【0082】
表1において、比較例1及び比較例2のペースト組成物は、略10重量部のアクリル系バインダー、略8重量部の光重合性モノマー、略2重量部の光重合性開始剤、略10重量部の溶剤、略3重量部のガラス粉末及び略67重量部の銀粉末を含むものとした。なお、溶剤としては、n−ブチルカルビトールを用いた。
【0083】
比較例1は、上記ペースト組成物をソーダ石灰ガラス基板に直接印刷して乾燥・焼成した後に、変色程度を評価した。
【0084】
比較例2は、上記ペースト組成物を透明電極が形成された有機基板に印刷して乾燥・焼成した後に、変色程度を評価した。
【0085】
一方、実施例1〜実施例5のペースト組成物は、比較例1及び比較例2のペースト組成物(第1ペースト組成物)に酸化ホウ素をさらに添加した。
【0086】
なお、酸化ホウ素の添加割合としては、実施例1では第1ペースト組成物に対して0.2%の酸化ホウ素を添加し、実施例2では第1ペースト組成物に対して0.4%の酸化ホウ素を添加し、実施例3では第1ペースト組成物に対して0.6%の酸化ホウ素を添加し、実施例4では第1ペースト組成物に対して0.8%の酸化ホウ素を添加し、実施例5では第1ペースト組成物に対して1%の酸化ホウ素を添加した。
【0087】
実施例1〜実施例5は、上記組成の(酸化ホウ素を添加した)ペースト組成物をソーダ石灰有機基板に直接印刷して乾燥・焼成した後に、変色程度を評価した。
【0088】
ここで、変色程度は黄色指数を測定して評価することとし、測定した黄色指数が低いほど変色が少ない(変色程度が低い)ものとして判断した。
【0089】
その結果、表1に示すように、酸化ホウ素を含有しない(添加しない)従来の第1ペースト組成物を用いて基板に金属電極を直接形成した(透明電極のない)比較例1は、黄色指数が19と最も大きくなった。また、従来の第1ペースト組成物を透明電極上に形成した比較例2は、黄色指数が13と比較例1に比べて変色程度がより少ないことを確認することができた。
【0090】
即ち、酸化ホウ素が添加されていない、従来の第1ペースト組成物で金属電極を形成する場合には、基板に直接形成するよりも、透明電極を形成した後に金属電極を形成した方が変色の発生が少ないことが確認できる。
【0091】
一方、上記従来の第1ペースト組成物に対して酸化ホウ素を添加したペースト組成物(第2ペースト組成物)を用いて基板に金属電極を直接形成した実施例2〜実施例4では、黄色指数が11と比較例2に比べても変色程度がさらに少ないことが確認できた。なお、実施例1及び実施例5では、比較例2に比べて黄色指数が高くなっているが、比較例1に比べると黄色指数は低い。これは、酸化ホウ素の添加量には最適範囲があること、及び酸化ホウ素の添加量を調節することにより、変色程度を制御できることを意味する。
【0092】
このように、酸化ホウ素を添加したペースト組成物(第2ペースト組成物)で金属電極を形成する場合には、基板に金属電極を直接形成しても、透明基板上に形成する従来と比較して、基板の変色程度をほぼ同じとすることができるか、あるいは、それよりも向上させることができることが確認された。なお、酸化ホウ素の添加割合としては、上記第1ペースト組成物(10重量部のアクリル系バインダー、8重量部の光重合性モノマー、2重量部の光重合性開始剤、10重量部の溶剤、3重量部のガラス粉末及び67重量部の銀粉末を含む)に対して、0.2〜1.0(%)とするのが好ましく、さらに好ましくは、0.4〜0.8%である。
【0093】
上記実施形態は、本発明を例示的に説明する目的のために開示されたものであり、当業者であれば、本発明の思想及び範囲内で様々な修正、変更、付加が可能である。従って、このような修正、変更及び付加は本発明の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイパネルを示す図である。
【図2】上記実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの前面板の製造工程を示す図である。
【図3】従来のプラズマディスプレイパネルの前面板構造を示す図である。
【図4】従来の前面板において基板に金属電極を直接形成したときの変色領域を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
200 前面板構造
210 前面基板
220 金属電極
230 ブラックマトリックス
240 前面誘電体層
250 保護層
300 平面板構造
310 背面基板
320 アドレス電極
330 背面誘電体層
340 隔壁
350 蛍光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜20重量部のバインダーと、
2〜15重量部の光重合性モノマーと、
1〜8重量部の光重合性開始剤と、
5〜20重量部の溶剤と、
1〜10重量部のガラス粉末と、
50〜80重量部の金属粉末と、
0.1〜5重量部の酸化ホウ素(B)と、
を含んで構成されることを特徴とする電極用ペースト組成物。
【請求項2】
前記バインダーは、メタアクリル系バインダー、アクリル系バインダー及びセルロースバインダーよりなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1記載の電極用ペースト組成物。
【請求項3】
前記金属粉末は、銀粉末、銅粉末及びアルミニウム粉末よりなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1記載の電極用ペースト組成物。
【請求項4】
前面基板と、
前記前面基板上の所定位置に直接形成された金属電極と、
を含んで構成されることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板。
【請求項5】
前記金属電極は、金属粉末を含むペースト組成物に対して所定割合の酸化ホウ素が添加された電極用ペースト組成物をパターニングして形成されることを特徴とする請求項4記載のプラズマディスプレイパネルの前面板。
【請求項6】
前記金属粉末は、銀粉末、銅粉末及びアルミニウム粉末よりなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項5記載のプラズマディスプレイパネルの前面板。
【請求項7】
前記基板上に形成されて放電セル間を区分するブラックマトリックスをさらに含むことを特徴とする請求項4記載のプラズマディスプレイパネルの前面板。
【請求項8】
前記金属電極及びブラックマトリックス上に形成され、プラズマ放電時に発生する電荷が蓄積される誘電体層と、
前記誘電体層上に形成され、該誘電体層を保護する保護層と、
をさらに含むことを特徴とする請求項7記載のプラズマディスプレイパネルの前面板。
【請求項9】
基板に複数の金属電極を直接形成する第1段階と、
前記金属電極が形成された基板にブラックマトリックスを形成する第2段階と、
前記金属電極及び前記ブラックマトリックスが形成された基板に誘電体層と保護層とを形成する第3段階と、
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法。
【請求項10】
前記第1段階は、
前記基板に電極用ペースト組成物を塗布する段階と、
前記金属電極が形成される位置に開口部が形成されたマスクを配置する段階と、
前記マスクを配置した状態で所定時間の露光を行う段階と、
前記マスクを除去した後に、現像液で現像する段階と、
前記基板にパターニングされた前記電極用ペースト組成物を焼成する段階と、
を含むことを特徴とする請求項9記載のプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法。
【請求項11】
前記電極用ペースト組成物は、
5〜20重量部のバインダーと、
2〜15重量部の光重合性モノマーと、
1〜8重量部の光重合性開始剤と、
5〜20重量部の溶剤と、
1〜10重量部のガラス粉末と、
50〜80重量部の金属粉末と、
0.1〜5重量部の酸化ホウ素(B)と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項10記載のプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法。
【請求項12】
前記バインダーは、メタアクリル系バインダー、アクリル系バインダー及びセルロースバインダーよりなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項11記載のプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法。
【請求項13】
前記金属粉末は、銀粉末、銅粉末及びアルミニウム粉末よりなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項11記載のプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法。
【請求項14】
前記第2段階は、
前記基板にブラックマトリックス用物質を塗布する段階と、
前記ブラックマトリックスが形成される位置に開口部が形成されたマスクを配置する段階と、
前記マスクを配置した状態で所定時間の露光を行う段階と、
前記マスクを除去した後に、現像液により現像する段階と、
前記基板にパターニングされた前記ブラックマトリックス用物質を焼成する段階と、
を含むことを特徴とする請求項9記載のプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−66268(P2008−66268A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339250(P2006−339250)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】