説明

電極

【課題】 電解効率が高い電極を提供する。
【解決手段】 パンチング孔22b,32bが設けられ、パンチング孔22b,32bの一辺から伸びる爪電極部22a,32aが設けられている。爪電極部22a,32aはパンチングの際にパンチングされる部分を切り抜かずに残すことで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解用の電極に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電解水の生成装置としては、1槽式と2槽(室)式の生成装置がある。1槽式の生成装置は、例えば、食塩水などの電解質水溶液を槽内に注入して陽極板と陰極板とを配設し、これら陽極板と陰極板とに通電して電解工程を経ると塩化ナトリウムを含むアルカリ電解水が生成される。また、電解工程において、有害なトリハロメタンが発生すると共に、塩化ナトリウムがそのまま残存している。
【0003】
また、2槽(室)式の生成装置としては、例えば、特開2005−329375号公報(文献1)に開示された構成のものが公知になっている。この2室式の生成装置は、1つの槽の中間部をイオン透過性隔膜で仕切って対向する2つの電解室を形成し、各電解室に原水供給手段と電解水取出手段とを設けると共に、一方の電解式に陽極用の電極と塩化物水溶液(食塩水)供給手段を配設し他方の電解室に陰極用の電極を配設したものである。そして、各電極に所要の電圧を印加して電解工程を経ることにより、陽極側の電解式では塩素ガスと塩化ナトリウムを含む酸性電解水が得られ、陰極側の電解室では水素ガスとアルカリ電解水が得られる。
【0004】
塩化ナトリウムを含まない電解水を生産する装置としては、例えば、特開2000−246249号公報(文献2)に開示された3槽式の電解装置が公知になっている。この3槽式の電解装置は、中間室の両側にイオン交換膜と電極板とを介して両側に陽極室と陰極室とを備えた構造を有するものである。中間室には高濃度の電解質水溶液、例えば、10%濃度の塩化カリウムや塩化ナトリウム水溶液を充填される。また、陽極室と陰極室には、例えば水道水を通水し、両電極板に通電して電解工程を経ることで、塩化ナトリウムを含まない電解水、即ち陽極室ではpH2.0〜3.0程度の酸性電解水が生成される。一方、陰極室ではpH10.0〜12.0程度のアルカリ性電解水が生成される。
【特許文献1】特開2005−329375号公報
【特許文献2】特開2000−246249号公報
【0005】
しかしながら、前記文献1に開示されている電解水の生成においては、電解の効率を高めるために一方の電解室(陽極側)に食塩水を供給して電解を行うようにしている。その陽極側の電解室で生成された酸性電解水は、次亜塩素酸のみならず、塩化ナトリウム分を含んでいることによって、平衡移動による塩素ガスの気化等が生じてしまう。したがって、次亜塩素酸などは短時間で気化してしまうため、酸性電解水において必要とする殺菌力を長期間担保することがし難く、その用途が制限されてしまうという問題点を有する。
【0006】
また、前記文献2に開示されている電解水の生成方法は、電解室を3槽式にし、中央部の電解室に食塩水などの電解質水溶液を収納し、両側の陽極と陰極の電解室に水道水または浄水器を介した浄水を収容して電解する。中央部の電解室に電解質水溶液を収納して電解工程を行うことで、電圧・電流・時間が少なくても効率よく塩化ナトリウムを含まない酸性電解水およびアルカリ性電解水を生成できる点で優れている。しかしながら、3槽式の電解室はいずれも回分式であることから、量産性に乏しいばかりでなく、酸性電解水とアルカリ性電解水とを混合または配合して、弱酸性、中性または弱アルカリ性にpH調整した次亜塩素酸を含む電解水を製造するという思想は全くないのである。
【0007】
ところで、前記公知技術に係る二室型または三室型電解槽を使用した電解法で酸性とアルカリ性の電解水を生成することが行われているが、その生成された電解水の有効塩素濃度を所定の範囲に保ちつつ、かつ、pH値を弱酸性ないし弱アルカリ性に調整することは困難である。また、二室型または三室型電解槽を使用した電解法では、実質的に次亜塩素酸ナトリウムの製造は行われていなかった。
以上の電気分解において、電解効率が高いことは、次亜塩素酸の濃度を高める上でも重要である。
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電解効率が高い電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電気分解用の電極は、パンチング孔が設けられ、前記パンチング孔の一辺から伸びる爪電極部が設けられている。
この発明によれば、パンチング孔のために失った電極面積を爪電極部で補うことができるため、電解効率を落とすことなく、パンチング孔を有する電極を形成することができる。
【0011】
本発明において、前記爪電極部はパンチングの際にパンチングされる部分を切り抜かずに残すことで形成されていることができる。これによれば、容易に爪電極部を形成することができる。
【0012】
本発明において、前記電極は、陽極および陰極の少なくとも一方に適用することができる。
【0013】
前記電極は、電解水の製造装置用の電極であることが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.電解装置
本実施の形態では、本発明に係る電解装置を次亜塩素酸水の製造の場合に適用した例を示す。
【0015】
図1は、電解水の製造装置(以下、「電解装置」という)に係る模式図を示す。図2は、陽極室と陰極室との隔壁および電極を示す図である。
【0016】
電解装置10は、陽極室20と陰極室30と中間室40とを含む。中間室40は、陽極室20と陰極室30の間の一部に設けられている。陽極室20と陰極室30とを隔てる隔壁50には、連通孔52が設けられている。
【0017】
中間室40には電解質水溶液が充填されている。中間室40に供給された電解室水溶液は、陽イオン(たとえばナトリウムイオン)が陰極室30に供給され、陰イオン(たとえば塩化物イオン)が陽極室20に供給される。中間室40を通過した水溶液を電解質水溶液の供給源80に戻して、電解質水溶液を再利用し循環させてもよいし、または、消費した分だけの電解質を中間室40に追加してもよい。電解質水溶液は、たとえば、塩化物塩水溶液(塩化ナトリウム水溶液や塩化カリウム水溶液)を挙げることができる。電解質水溶液の濃度としては、たとえば、電解質の飽和濃度とすることができる。
【0018】
中間室40と陽極室20とは、陰イオン交換膜からなる第1の隔膜24により隔てられている。第1の隔膜24が陰イオン交換膜からなることで、中間室40の陽イオンが第1の隔膜24を通過せず、陰イオンのみが選択的に第1の隔膜24を通過することとなる。第1の隔膜24に適用される陰イオン交換膜は、公知のものを適用することができる。
【0019】
中間室40と陰極室30とは、陽イオン交換膜からなる第2の隔膜34により隔てられている。第2の隔膜34が陽イオン交換膜からなることで、中間室40の陰イオンが第2の隔膜34を通過せず、陽イオンのみが選択的に第2の隔膜34を通過することとなる。第2の隔膜34に適用される陽イオン交換膜は、公知のものを適用することができる。
第1の隔膜24と第2の隔膜34との間に、隔膜固定枠(図示せず)を設けてもよい。
【0020】
陰極32は直流電源70の−側に接続され、陽極22は直流電源70の+側に接続されている。直流電源70は、その電圧や電流を任意に設定できる構成になっている。直流電源70は、たとえば、電圧は5〜20ボルト程度の範囲で任意に選択でき、電流についても3〜26アンペアの範囲で適宜選択して設定することができるものを挙げることができる。
【0021】
陽極22は、図13に示すように、爪電極部22aを有する電極とすることができる。また、陰極32も同様に爪電極部32aを設けてもよい。爪電極部22a,32aは、パンチングにより形成された穴の一辺から伸びるように形成されている。電極22,32をパンチングにより穴を開ける際に、切り抜かずに残すようにパンチングを行うことで、この爪電極部22a,32aを形成することができる。従来、パンチング電極では、パンチングにより開口した部分は廃棄され、その残った電極の面積部分を使うが、この方法では電解に使う面積はパンチングにより開口する前の約50%位となり、電極面に接触する水の量が半減するため、電解効率が落ちてしまう。しかし、このようにパンチング部分の電極を切り抜かずに残すことで、パンチング前の電極をすべて残すことができ(面積をすべて維持することができ)、電解効率が落ちない。また、パンチングで残した羽根部分があることで、電極表裏の水の移動がスムーズとなり、この点からも電解効率の向上につながる。さらに、羽根部分の付け根の切片角では、電極の平面部分よりも気泡が多く発生し、盛んな電解反応が生じていることが確認された。これは、ハーフパンチングにより電極22,32の表裏の水の移動が乱流を起し、電解効率の向上につながったと思われる。つまり、中間室40から各電極22,32側に移動してきたイオン水は、パンチングされた通過口22b,32bから電極22,32の外側の電解槽に移動するが、その時、電極22,32の外側を通過する原水は、電極22,32の爪電極部22a,32aに当たりながら乱流を起し、中間室40から移動してくるイオン水と混合され更には乱流として電極板表面に接触し、電解効率の向上が図られる。なお、パンチングの方法は、公知の方法を適用することができる。
【0022】
なお、陽極22および陰極32は、たとえば1.5mm前後でパンチング穴加工した電極などからなることができる。電極の材質は公知のものを適用することができる。パンチングの穴の形状は、円形であっても角形であってもよい。
【0023】
陽極22と陰極32との大きさを非対称にしてもよい。これにより、陽極22の電解量と陰極32の電解量とを変えることができる。また、陽極電極の電極面積と陰極電極の電極面積とを異ならせることで、混合された電解水の酸性度を適宜調整することができる。つまり、陽極22の電極面積は、陰極32の電極面積より大きいことで、酸性電解水の発生量がアルカリ性電解水の発生量よりも多くなるため、酸性度を高めることができる。一方で、陰極32の電極面積を陽極22の電極面積より大きくすることで、アルカリ性電解水の発生量が酸性電解水の発生量よりも多くなるため、アルカリ性の度合いを高めることができる。
【0024】
電解装置10は、陽極室20に水を給水するための第1の給水口26と、陰極室30に水を供給するための第2の給水口36とが設けられている。第1の給水口26および第2の給水口36に繋がる流路は、一つの流路が分岐されて構成されている。その流路の分岐したところには、陽極室20および陰極室30へ分配する水量を調整するための分配割合調整バルブ60が設けられている。分配割合調整バルブ60は、電解装置10に水を供給する量を調整する供給量調整機能ももたせてもよい。
【0025】
また、電解装置10は、陽極室20の液を吐出する第1の吐出口28aと、陰極室30の液を吐出する第2の吐出口38aとが設けられている。さらに、電解装置10は、第1の吐出口28aから吐出される液の量を調整する第1の吐出バルブ28bと、第2の吐出口28aから吐出される液の量を調整する第2の吐出バルブ28bとを有する。
【0026】
第1の吐出口28aは、陽極室20の下部に設け、第1の給水口26は、陽極室20の上部に設けるとよい。これにより、第1の給水口26から給水された水は、上から下に向かって流れようとする。したがって、陽極22にて発生する気体(電解質水溶液が塩化ナトリウムや塩化カリウムの場合は塩素)からなる気泡が水に押されて上に上がり難くなり、その分だけ、その気体(塩素)が水と気液接触する時間が長くなり、次亜塩素酸への反応をより確実に行うことができる。
【0027】
陽極室20は、縦長であるとよい。具体的には、陽極22と直交する方向の陽極室20の幅よりも陽極室20の高さの方が大きいとよい。その陽極室の幅に対する陽極室の高さの比(高さ/幅)は、たとえば、1.5以上、好ましくは1.5〜5.0とすることができる。このような縦長であることにより、陽極室20で発生した気体(塩素)が水と接触する時間を長くすることができ、塩素と水との反応を確実に行うことができる。また、陰極30も同様とするとよい。
【0028】
2.動作
次に、電解装置10の動作を説明する。
【0029】
まず、分配割合調整バルブ60を調整すると共に、水を陽極室20および陰極室30に供給する。水の水量は、たとえば0.5〜1.5l/mlとする。
【0030】
この水の供給と併せて、陽極22と陰極32の間に電位を印加し、電気分解を行う。たとえば、電気分解時の電圧は、5〜10Vとし、電流を3〜10アンペアとする。特に、陰極室30に供給される水溶液1リットル当たり1500クーロン、好ましくは2000クーロンとなるようにすると、スケールが付き難くなる。陽極22と陰極32との間に電位を印加すると、中間室40の陽イオン(たとえば電解質が塩化ナトリウムの場合にはナトリウムイオン)が第2の隔膜34を通過し陰極室30に移動する一方で、中間室40の陰イオン(たとえば電解質が塩化ナトリウムの場合には塩化物イオン)が第1の隔膜24を通過し陽極室20に移動する。
【0031】
陽極室20では、陽極22にて塩化物イオンが次式の反応を起こし、塩素が発生する。
2Cl→Cl+2e
【0032】
この塩素は、さらに、水と反応して次亜塩素酸が生成される。
Cl+HO→HClO+HCl
【0033】
一方で、陰極室30では、陰極にて次式の反応が起こる。
O+2e→1/2H+OH
【0034】
この電気分解時において、陽極室20と陰極室30とを隔てる隔壁50に設けられた連通孔52から陽極室20で生成された酸性の電解水が陰極室30に移動すると共に陰極室30で生成されたアルカリ性の電解水は陽極室20に移動する。これにより、陽極室20で生成された酸性水と陰極室30で生成されたアルカリ電解水が混合する。また、陽極室20で生成された酸性水が陰極室30に移動することで、陰極32で発生するスケールが付着するのを防ぐことができる。
【0035】
また、この電気分解時に、第1の吐出バルブ28bと第2の吐出バルブ38bとを調整し、陽極室20および陰極室30から吐出される電解水の量を制御する。
【0036】
第1の吐出口28aから吐出された電解水と、第2の吐出口38aから吐出された電解水とを混合することで、本実施の形態に係る弱アルカリ性、中性または弱酸性の次亜塩素酸を含む電解水が生成される。
【0037】
なお、第1の吐出バルブ28bまたは第2の吐出バルブ38bの一方を完全に閉め、第1の吐出口28aまたは第2の吐出口28bのいずれかのみから吐出してもよい。この場合には、陽極室20または陰極室30の内部で混合水が生成されることになる。
【0038】
3.作用効果
この実施の形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
【0039】
(1)陰極室20には、一般的に、中間室40から供給された陽イオンが陰極32に付着し、スケールがつく。しかし、本願発明者は、本実施の形態に係る電解装置10によると、陽極室20で生成された酸性水を陰極室30に誘導混合させることで、陰極32にスケールが付着しないことを見出した。このように陰極32にスケールがつかないことで、陰極32に付着したスケールを取り去る工程(逆洗浄)が不要または減らすことができるため、連続運転が可能となる。
【0040】
また、第2の吐出バルブ38bのみを開き、陰極室30の第2の吐出口38aのみから電解水を吐出すると、陽極室20で生成された酸性水は、陰極室30側に流れ高濃度の次亜塩素酸を含有したアルカリ性の電解水を生成することが可能となると共に、一層陰極32にはスケールの付着は起こらなくなる。
【0041】
(2)従来は、陽極室20で生成された電解水と陰極室30で生成された電解水とを混合するという発想はなかった。しかし、陽極室20で生成された電解水と陰極室30で生成された電解水とを混合することで、その混合水が弱アルカリ性、中性または弱酸性を示すことを本願発明者は見出した。また、それらの電解水を混合することで、従来は一方の電解水のみを使用し、他方の電解水は廃棄していたが、双方の電解水を使用することができるため、水資源を有効に使用することができる。
【0042】
(3)分配割合調整バルブ60を調整することで、陰極32に流れる単位水量当たりの水へ流れる電流量を調整することができる。つまり、同じ電流量であれば、水が少なければ単位水量当たりの水へ流れる電流量を大きくすることができる。陰極32に流れる単位水量当たりの電流量が大きければ大きいほど陰極32にスケールが付着し難いという性質がある。したがって、陰極室30への水の供給量を少なくすることで、陰極32にスケールがつくのをより確実に少なくすることができる。
【0043】
(3)第1および第2の給水口26,36を陽極室20および陰極室30の上部に設け、第1および第2の吐出口28a,28bを陽極室20および陰極室30の下部に設け、水を上から下に流すことで、陽極22で発生した塩素が上に上がり難くなり、塩素が水と接触する時間を長くすることができる。したがって、より確実に次亜塩素酸への反応を実現することができる。
【0044】
(4)通常であれば、陽極室20側への分配量が低いと、陽極室20で生成した電解水と陰極室30で生成した電解水とを混合した場合には、次亜塩素酸の濃度が大きく低下すると思われる。しかし、本発明者は、本実施の形態により得られた電解水は、次亜塩素酸の濃度(有効塩素濃度)が大きく低下しないことを見出した。したがって、本実施の形態によれば、得られる電解水が高濃度の次亜塩素酸を含有するため、殺菌力が低下しない。
【0045】
なお、次亜塩素酸は陽極側で生成された酸性電解水中に含まれるものであることが一般的に知られているが、pH値が微酸性、中性もしくは微アルカリ性に調整された次亜塩素酸水を製造しようとする場合は、工業的に製造された次亜塩素酸ナトリウム(ソーダ)に塩酸を加えてpH値を調整するか、または前記文献1により生成された塩化ナトリウムを含む酸性電解水とアルカリ性電解水とを適当量混合して製造することが考えられるが、いずれの場合も有効塩素濃度をあまり変化させずにpH値を単独に調整することは行われていない。
【0046】
(5)本実施の形態では、陽極室20に供給される水の量と陰極室30に供給される水の量との大小関係、および、第1の吐き出しバルブ28bと第2の吐き出しバルブ38bとの開閉量(絞り量)の大小関係を組み合わせることで、表1に示すように弱酸性から弱アルカリ性の範囲で様々なpH調整が可能となる。
【表1】


なお、第1の吐出バルブ28bと第2の吐出バルブ38bとを同じ程度開放することで、陽極室20で生成された電解水と陰極室30で生成された電解水との混合比率は下がることになるため、混合比率は特に第1および第2の吐き出しバルブ28b,38bで調整することができる。
【0047】
(6)従来は、どちらか一方を使用している時は一方を廃棄していたが、この製法により大切な水資源を無駄に捨てないで済むようになった。
【0048】
(7)従来、三室型電解装置では、次亜塩素酸ナトリウムを生成することはできなかった。つまり、ナトリウムイオンが陽極室に移動することがないこと、および、次亜塩素酸が陰極室に移動することがないことにより、ナトリウムイオンと次亜塩素酸とが反応することがないため、次亜塩素酸ナトリウムが生成されることはなかった。しかし、本実施の形態によれば、連通孔42があるため、次亜塩素酸とナトリウムイオンとが反応することになるため、次亜塩素酸ナトリウムも生成することになり、次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸との混合水を生成することができる。これにより、洗浄作用と殺菌作用とを有する混合電解水を実現できる。なお、次亜塩素酸ナトリウムは、本出願時点において厚生労働省指定の食品添加物に指定されている。
【0049】
比較例として、二室型電解装置で次亜塩素酸ナトリウムを生成することも考えられる。この二室型電解装置とは、陽極室と陰極室とが隔膜で隔てられ、水に塩化ナトリウムなどの電解質を溶解させて電気分解を行う装置である。二室型電解装置により次亜塩素酸ナトリウムを生成する場合には、水に塩化ナトリウムが溶解されているため、塩化ナトリウムの濃度が高くなってしまうという制約がある。
【0050】
また、電気分解により、アルカリ環境下で塩化物イオンを反応させて次亜塩素酸ナトリウムを生成する方法が考えられるが、この場合には、トリハロメタンが生成してしまうという問題がある。しかし、本実施の形態によれば、酸性下の陽極室で次亜塩素酸を生成させ、その次亜塩素酸とナトリウムイオンとを反応させて次亜塩素酸を生成しているため、トリハロメタンの発生が生じない。
【0051】
(8)中性付近電解水の生成により排水基準などの適合も未処理で実現するため、環境汚染など環境に負荷を与えないという利点がある。
【0052】
(9)電解次亜塩素酸は有機物と接触する事で簡単に中和する特長も持ち合わせている。
【0053】
4.変形例
(1)第1の変形例
陰イオン交換膜からなる第1の隔膜24は、微細孔が設けられることができる。その微細孔の径としては、たとえば、30〜80μmとすることができる。この場合に、第1の隔膜24は不織布で構成してもよい。
【0054】
これによれば、電解質水溶液のナトリウムイオンなどが陽極室20に移動しやすくなり、次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸との混合水がより生成されやすくなる。
【0055】
(2)第2の変形例
図5〜図9に示すように、陰極32は、水に対して透過性のあるシート体90で覆われていることができる。シート体90としては、たとえば不織布、多層の網状シートを挙げることができる。このように陰極32をシート体で覆うと次の効果が奏される。
【0056】
陰極32をシート体90で覆うことで、電解される水を陰極32の付近に滞留することとなる。このため、陰極32の付近に滞留する水に対するチャージ量が増すことになる。水に対するチャージ量が増した分だけ、陽イオンに基づくスケールが付着することがさらに減ることになる。その結果、連続運転をよりし易くなると共に、陰極32を逆洗浄が不要になるか又は頻度を減らすことができるため、産業的な用途においてより有利な電解装置を実現することができる。併せて、陰極32にスケールが成長してイオン交換膜54を破損するのを防ぐことができるため、イオン交換膜を保護する役割も果たすことができる。なお、陽極22も陰極32と同様にシート体で覆ってもよい。
【0057】
図10を用いてより具体的に作用効果を説明する。電解槽に供給された原水は電極板表面を高速で流れて行く。この時、特に陰極側では電極表面にスケール付着するが電極板表面に網状シートを被う事で原水は高速流帯と低速流帯の二流帯になる。伝電極表面の網状覆いをした低速流体には十二分な電流を与える事が出来る。この多くの電流を与える事は簡単な網状シートで被う事により、簡便な方法で陰極側電極板表面に付着するスケールの付着が防止できる。
【0058】
(3)第3の変形例
上記の実施の形態において、陽極室20と陰極室30とは、隔壁50の連通孔52により連通させているが、図11に示すように、別途設けた連通路54により連通させてもよい。連通路54によると、陽極室20と陰極室30との間を行き来する水の量を把握しやすいという利点がある。その連通路54に開閉量調整バルブ56を設けることができる。この開閉量調整バルブ56により、陽極室20と陰極室30との間を行き来する水の量を調整することができる。
【0059】
(4)第4の変形例
図12に示すように、陽極室20にて発生したガスを抜くための第1のガス抜き口28cを設けてもよい。これにより、陽極室20にて発生したガスを排出することができ、ガスによる流量の不安定化を防ぐことができる。また、陰極室30にて発生したガスを抜くための第2のガス抜き口38cを設けてもよい。これにより、陰極室30にて発生したガスを排出することができ、ガスによる流量の不安定化を防ぐことができる。第1および第2のガス抜き口28c,38cは、必要に応じて栓をしておくことができる。
【0060】
上記の実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】電解水の製造装置を模式的に示す図である。
【図2】連通孔を説明するための図である。
【図3】第1の変形例に係る陰イオン交換膜の模式図を示す。
【図4】第1の変形例に係る原理を示す説明図である。
【図5】第2の変形例に係る電解水の製造装置を模式的に示す図である。
【図6】第2の変形例に係る陰極およびシート体の側面を模式的に示す図である。
【図7】第2の変形例に係る陰極およびシート体の平面を模式的に示す図である。
【図8】第2の変形例に係るシート体の平面を模式的に示すである。
【図9】第2の変形例に係る陰極の平面を模式的に示す図である。
【図10】第2の変形例に電解装置の作用効果を説明するための説明図である。
【図11】第3の変形例に係る電解装置を模式的に示す図である。
【図12】第4の変形例に係る電解装置を模式的に示す図である。
【図13】電極を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 電解装置
20 陽極室
22 陽極
22a 爪電極部
22b パンチング孔
24 第1の隔膜
26 第1の給水口
28a 第1の吐出口
28b 第1の吐出バルブ
28c 第1のガス抜き口
30 陰極室
32 陰極
32a 爪電極部
32b パンチング孔
34 第2の隔膜
36 第2の給水口
38a 第2の吐出口
38b 第2の吐出バルブ
38c 第2のガス抜き口
40 中間室
50 隔壁
52 連通孔
54 連通路
56 開閉量調整バルブ
60 分配割合調整バルブ
70 直流電源
80 電解質水溶液の供給源
90 シート体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチング孔が設けられ、前記パンチング孔の一辺から伸びる爪電極部が設けられていることを特徴とする電気分解用の電極。
【請求項2】
請求項1において、
前記爪電極部はパンチングの際にパンチングされる部分を切り抜かずに残すことで形成されていることを特徴とする電気分解用の電極。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電極は、陽極および陰極の少なくとも一方に適用されることを特徴とする電気分解用の電極。
【請求項4】
前記電極は、電解水の製造装置用の電極であることを特徴とする電気分解用の電極。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−35767(P2009−35767A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200160(P2007−200160)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(500111806)
【Fターム(参考)】