説明

電気エネルギーを遮蔽された医療用撮像装置一式に供給するプロセスおよびシステム

(例えば、MRIシステムのような)撮像システムを収容するルーム内に配置された機器に電気エネルギーを供給するプロセスおよびシステムであって、ルームが外部磁場から遮蔽されている、プロセスおよびシステムが開示されている。本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの発光装置から光スペクトルの波長範囲内の電磁波を放射するシステムおよびプロセスを提供している。本発明の実施形態は、ルーム内に配置された少なくとも1つの変換装置を用いて、電磁波を電気エネルギーに変換し、ルーム内の干渉電磁場を最小限に抑えるように、電気エネルギーを機器に供給するプロセスおよびシステムをさらに提供している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気エネルギーを撮像ルーム内の機器に供給するプロセスおよびシステムを提供している。
【背景技術】
【0002】
医療用撮像装置一式(例えば、MRI撮像装置一式)内に必要とされることがあるように、ルームが干渉性のある電磁場(EM場)から遮蔽されている場合、このようなルーム内に電気を伝達させると、問題が生じることがある。例えば、交流波形のような標準的な電気供給系は、このような電気供給系によって生じる概して大きい干渉場によって、(MRIのような)医療用撮像装置の特に高感度の領域に特別のスクリーンを設けないと、用いることができない。しかし、医療用撮像装置一式内には、この医療用撮像装置一式内に配置された機器に対して、電気エネルギーを確実に供給することが必要とされている。
【0003】
(遮蔽されたMRIルームのような)撮像装置一式内に用いられることが多い機器の一例として、撮像手順の前に、造影流体を患者に施すための可動性注射システムが挙げられる。注射システムの適用および制御は、好ましくは、(例えば、MRI磁石コイル内に位置している)患者の極めて近傍で行われるべきである。従って、(必然的に医療用撮像ルームの外側に配置される)電源と注射システムとの間の電気ケーブルの長さは、(MRIのような)医療用撮像装置と遮蔽されたルームの境界との間に延在していなければならない。このような長さの電源ケーブルによって、医療用撮像システムによって生じた画像の品質に悪影響を与える容認できない干渉場が生じることがある。
【0004】
従って、(可動性注射装置のような)既存の装置は、直流波形の直接的な電気エネルギーを供給するバッテリ源を利用している。このようなバッテリ源は、可動性注射システム内に配置されるかまたはそのごく近傍に配置されている。この手法の1つの欠点は、バッテリが定期的に充電および/または再充電されねばならなく、これによって、医療用撮像システムの操作性に干渉することである。
【0005】
いくつかの他の既存のシステムでは、再充電可能な蓄電器が、バッテリの代わりに用いられている。しかし、再充電可能な蓄電池の場合も、周期的な保守が必要である。例えば、蓄電池は、周期的に再充電されねばならなく、および/またはある回数の再充電サイクルの後、取り換えられねばならない。交換および新しい蓄電池に関連する「ならし運転」を含むこのような保守による遅れは、同じように、医療用撮像システムの標準的な長期の運転に対して、欠点になる。さらに、既存のシステムでは、例えば、撮像装置一式内のバッテリまたは蓄電池のいずれかの誤動作によって、干渉源が生じる可能性があり、これが(MRIシステムのような)撮像システムの操作に悪影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、(遮蔽されたMRIルームのような)撮像装置一式内に配置された(可動性注射ユニットのような)機器に電気エネルギーを供給するシステムおよびプロセスであって、操作性が堅実で、保守を殆どまたは全く必要としない、システムおよびプロセスが必要とされている。さらに、撮像システムの撮像能力に干渉する電磁場(EM場)を生じることなく、(MRI装置を収容するルームのような)医療用撮像ルームに電気エネルギーを供給する、このようなシステムおよびプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の必要性は、本発明によって達成される。本発明は、種々の実施形態において、(例えば、(EM遮蔽されたMRI装置一式のような)遮蔽された撮像設備内に配置された可動性注射ユニット、溢血検出装置、および/または他の装置のような)機器への電気エネルギーの供給に関する前述の技術的な問題および他の技術的な問題の多くを解消するシステムを提供している。具体的には、一実施形態において、撮像ルーム内に配置された機器に電気エネルギーを供給するプロセスであって、撮像ルームがルームの外側に位置するEM場に対するシールドを備える、プロセスが提供されている。一実施形態では、このプロセスは、少なくとも1つの発光装置から光スペクトルの波長範囲内の電磁波を放射するステップと、ルーム内に配置された少なくとも1つの変換装置を用いて、電磁波を電気エネルギーに変換するステップと、ルーム内の干渉磁場を最小限に抑えるように、電気エネルギーを機器に導くステップと、を含んでいる。
【0008】
いくつかの実施形態では、放射ステップは、ルームのシールドの外側から電磁波を放射することをさらに含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、放射ステップは、シールドに画定された観察ポートを通して、電磁波をルーム内に放射することをさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、放射ステップは、伝送装置用光ファイバーケーブルを用いて、電磁波をルーム内に放射することを含んでいてもよい。
【0009】
他の実施形態では、プロセスは、発光ステップがルームの内側から制御されるように、応答装置用光ファイバーケーブルを用いて、制御信号を変換装置から発光装置に伝達することをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、制御信号は、伝送装置用光ファイバーケーブル要素の光伝達能力に対応する情報を含むことができる。
【0010】
本発明の種々の実施形態は、撮像システムルーム内に配置された機器に電気エネルギーを供給するシステムであって、ルームがルームの外側に位置するEM場に対するシールドを備える、システムも提供している。一実施形態では、システムは、光スペクトルの波長範囲内の電磁波を放射する発光装置と、ルーム内に配置され、電磁波を電気エネルギーに変換させる変換装置と、を備えている。また、変換装置は、ルーム内の干渉磁場を最小限に抑えるように、電気エネルギーを機器に導くことができるように構成されていてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、発光装置は、ルームのシールドの外側に配置された(レーザダイオードのような)照明要素をさらに備えていてもよい。さらに、システムは、発光装置の出口に接続された第1の端および変換装置に接続された第2の端を有し、電磁波をレーザ装置から変換装置に伝達する伝送装置用光ファイバーケーブルをさらに備えていてもよい。いくつかの実施形態では、伝送装置用光ファイバーケーブルの第2の端は、光学的接続要素を用いて、変換装置と操作可能に係合されていてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、変換装置用光ファイバーは、データ流れを伝達することができるように構成されていてもよい。他の実施形態は、光起電力装置と発光装置との間に操作可能に係合され、発光装置がルームの内側から制御可能になるように、制御信号を光起電力装置から発光装置に伝達する応答装置用光ファイバーケーブルをさらに備えていてもよい。いくつかのこのような実施形態によれば、応答装置用光ファイバーケーブルは、伝送装置用光ファイバーケーブル要素の光伝達能力に対応する情報を発光装置に中継し、伝送装置用光ファイバーケーブルの中継された伝達能力に応じて、発光装置を制御し、発光装置から放射される電磁波の強度を調整することができるように、構成されていてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、変換装置は、電磁波を電気エネルギーに変換させることができるように構成された光起電力要素を備えていてもよい。いくつかのこのような実施形態では、光起電力要素は、熱伝導要素を介して、平面金属要素に操作可能に係合されていてもよい。平面金属要素は、電磁波を電気エネルギーに変換するときに光起電力要素によって生じた熱を分散させることができるように、光起電力要素の領域の境界を超えて延在するように構成されていてもよい。
【0014】
従って、本発明の実施形態に記載されるように、(MRIシステムルームのような)撮像システムルーム内に配置された機器に電気エネルギーを供給するシステムおよびプロセスは、多くの利点をもたらすことになる。これらの利点の例として、制限されないが、光スペクトルの波長内の電磁波の形態にあるエネルギーを機器に伝達させ、これによって、機器と共に配置された(MRIシステムのような)撮像装置の操作に干渉する電磁場の生成を回避することができる利点、撮像ルーム内の電気エネルギー伝達ケーブルの周囲にEMシールドも設ける必要性を排除し、および/または最小限に抑えることができる利点、および遮蔽された撮像ルームの外側に配置された発光装置を用いて、光スペクトルの電磁波を生成し、これによって、発光装置による干渉EM場の生成を回避することができる利点が挙げられる。
【0015】
本発明を一般的な用語で説明したが、以下、添付の図面について説明する。なお、図面は、必ずしも、縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による発光装置から変換装置に電気エネルギーを供給するシステムおよびプロセスの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による変換装置の「サンドイッチ」構造の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の全ての実施形態ではないが、いくつかの実施形態が示される添付の図面を参照して、本発明をさらに十分に説明する。実際、これらの発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに記載される実施形態に制限されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示内容が該当する法的要件を満たすように提供されている。全体を通して、同様の番号は、同様の部品を指すものとする。
【0018】
一実施形態によれば、図1に示されるように、電気エネルギーを供給するシステム1は、光スペクトルの波長範囲内の電磁波を放射する発光装置2と、(MRIまたは他の撮像装置を収容する医療用撮像装置一式内のルームのような)撮像ルーム5内に配置され、電磁波を電気エネルギーに変換し、撮像ルーム5内の干渉電磁場を最小限に抑えるように、電気エネルギーを機器10に導く変換装置3と、を備えている。いくつかの実施形態では、変換装置3は、光起電力要素16を備えているとよい。光起電力要素16の例として、制限されないが、電磁波を電気エネルギーに変換する1つまたは複数の太陽電池が挙げられる。
【0019】
さらに、変換装置3は、電気エネルギーを機器10に導く電気ケーブル8,9も備えているとよい。いくつかの実施形態では、変換装置3は、電気ケーブル8,9によって生じ得る干渉を最小限に抑えるために、変換装置3と機器10との間の物理的な距離を可能な限り小さくするように、機器10と操作可能に係合し、および/または機器10と操作可能に連通しているとよい。さらに、いくつかの実施形態では、電気ケーブル8,9は、電気エネルギーを変換装置3から機器10に導くことによって生じる干渉効果を最小限に抑えるために、さらに遮蔽されていてもよい。
【0020】
付加的な実施形態によれば、図1に示されるように、変換装置3は、光起電力要素16と共に、監視用スイッチング要素18を介して変換装置制御装置19に操作可能に係合された光ダイオード17をさらに備えているとよい。いくつかの実施形態では、変換装置3の光起電力要素16は、数百ミリワットから数ワットに至る電気エネルギーを供給するように構成されているとよい。いくつかの実施形態では、変換装置3の光起電力要素16は、電磁波を電気エネルギーに変換するドープされたシリコン結晶から構成されているとよい。光ダイオード17は、光起電力要素16に達する電磁波の強度および/または特性を検出し、その強度および/または特性に対応するデータを(例えば、応答装置用光ファイバーケーブル23を介して放射源制御装置25と連通する)変換装置制御装置19に伝達するように構成されているとよい。
【0021】
図2に示されるように、変換装置3のいくつかの部品は、電子部品をパッケージする「サンドイッチ」技術を用いて、接続されているとよい。例えば、光学装置22、光起電力要素16、および光ダイオード17を支持する電気接続要素は、例えば、挟み込まれた部品間の距離を最小限にするために、「サンドイッチ」構造40に配置され、第1の金属箔31(例えば、制限されないが、銅、銅−PCB層、銀、金、および/または他の導電金属箔)および第2の金属箔(例えば、制限されないが、銅、銅−PCB層、銀、金、および/または他の導電金属箔)が、サンドイッチ構造40の少なくとも片側に配置されている。金属箔は、(例えば、誘電材料の薄層からなる)隔離層33によって分離されているとよい。従って、第1の金属箔31および第2の金属箔32は、変換装置3のサンドイッチ構造40内への外部EM場の侵入および変換装置3の種々の部品によって生じる内部EM場の漏れに対して、有効なシールドをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、図2に略示されるように、光起電力要素16は、熱伝導要素34を介して、2つの金属箔31,32の少なくとも1つに操作可能に係合されている。いくつかの実施形態では、金属箔31,32は、光起電力要素16の平面の全ての境界から5cmを超える距離だけ外に延在しているとよい。その結果、光起電力要素16を(発光装置2に含まれる照明要素11によって生じるレーザ光のような)電磁波によって照射するときに生じるどのような熱も、金属箔31,32の外側部分(例えば、図2に略示される「ヒートシンク」用の第2の金属箔32)に伝導され、これによって、変換装置3の電子部品に悪影響をもたらすことなく、分散されることになる。
【0022】
図1に関してここに記載されるように、変換装置3は、(MRIルームのような)撮像ルーム5内に配置されている。撮像ルーム5内には、ここには図示されないMRIシステムの磁石管が配置されている。いくつかの実施形態では、発光装置2は、制御ルーム4内に配置されている。MRルームは、外部に生じるEM場の侵入を防ぐ外部シールド6を有して、示されている。いくつかの実施形態によれば、外部シールド6は、撮像ルーム5の外側で放射されるEM場を遮蔽するために、実質的に制御ルーム4とMRルームとの間に配置されている。シールド6は、例えば、ファラディケージから構成されていてもよいし、または当業者に知られている他のシールド装置から構成されていてもよい。発光装置2から放射される電磁波は、(MRIスキャンの生成のような)医療診断プロセスの特性および/または操作性に悪影響を及ぼす干渉電磁場を生じることがないので、EM放射が比較的大量のエネルギーを伝達する場合でも、発光装置2と変換装置3との間に確立される電磁エネルギー経路(例えば、以下にさらに述べる伝送装置用光ファイバーケーブル20を参照)の周囲にEMシールドを設ける必要がない。
【0023】
図1に示されるように、発光装置2は、光スペクトルの波長範囲内の電磁波を生成する照明要素11を備えているとよい。さらに、照明要素11は、種々の照明装置、例えば、制限されないが、ランプ(例えば、ハロゲンランプおよび/またはキセノンランプ)、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、拡散照明要素、およびこのような装置の組合せを含むことができる。照明要素11を制御し、および/または照明装置1に通電するために、発光装置2は、照明要素11と連通するドライバ12をさらに備えているとよい。ここでさらに詳細に述べるように、発光装置2は、いくつかの実施形態では、スイッチングモジュール回路13および放射源制御装置25も備えているとよい(これらの両者は、ドライバ12および/または照明要素11と連通しているとよい)。スイッチングモジュール回路13は、発光装置2と変換装置3との間に操作可能に係合された応答装置用光ファイバーケーブル23に沿って伝達されたフィードバック信号に応じて、ドライバ12(従って、照明要素11)のスイッチを切り換えることができるように、構成されているとよい。
【0024】
発光装置2は、1つまたは複数のケーブル7を介して、エネルギー源(図示せず)に連通していてもよい。種々の実施形態によれば、発光装置2用のエネルギー源の例として、制限されないが、交流電源、直流電源、および/またはバッテリが挙げられる。
【0025】
発光装置2(およびそこに含まれる照明要素11)は、光スペクトルの波長範囲内の電磁波を放射するように構成されているとよい。発光装置2によって放射される電磁波の例として、制限されないが、可視光スペクトルの電磁線(すなわち、実質的に約400nmから約700nmの間の波長を有する電磁線)、近赤外線スペクトルの電磁線、遠赤外線スペクトルの電磁線、紫外線(UV)スペクトルの電磁線、およびこのような電磁線の組合せが挙げられる。発光装置2によって放射される電磁波の有効な波長スペクトルの制限は、電磁波を電気エネルギーに変換する変換装置3の能力によって、定められるとよい。例えば、いくつかの実施形態では、電磁波のスペクトルは、いくつかの実施形態においてドープされたシリコン結晶から構成される光起電力要素16の必要とされる光効果が生じるかどうかによって、制限されるとよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、発光装置2は、撮像ルーム5の外側に、(例えば、図1に略示されるように、制御ルーム4内に)、配置されているとよい。しかし、いくつかの付加的な実施形態では、発光装置2は、撮像ルーム5内に配置されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、発光装置2は、既存の撮像ルーム5内に存在する照明要素(例えば、撮像ルーム内に設置および/または配置された標準的なハロゲン電灯またはフィラメント電灯)を含むこともできる。いくつかのこのような実施形態によれば、対応する変換装置3は、撮像ルーム5内の拡散可視光を撮像ルーム5内に存在する機器10の電流要求に十分な光電流に変換することができるように構成された1つまたは複数の太陽電池から構成されているとよい。
【0027】
しかし、図1に示されるように、発光装置2は、撮像ルーム5の外側に配置され、発光装置2によって放射された電磁波が、干渉性のあるEM場を撮像ルーム5内に導くことなく、シールド6を通して撮像ルーム5内に入射されると、好ましい。発光装置2を撮像ルーム5の外側に(例えば、適切なEMシールド6によって撮像ルーム5から分離された隣接または非隣接制御ルーム4内に)配置することによって、発光装置2(および/または発光装置2と操作可能に係合されたケーブル7)によって生じるEM場は、(MRIシステムのような)撮像装置によって生じる画像の特性に悪影響を及ぼすことがない。さらに、発光装置2が撮像ルーム5のシールド6の外側に配置される実施形態では、発光装置2の発光強度(およびそれによって生じるEM場の強度)を増大させることによって、変換装置3が対応する電気エネルギーを撮像ルーム5内の1つまたは複数の機器10に供給するのに必要な放射強度を生じるのに十分な電磁波を放射することができる。
【0028】
発光装置2が撮像ルーム5の外側に配置されるいくつかの実施形態では、発光装置2によって放射された電磁波は、(例えば、撮像ルーム5に隣接する制御ルーム4から)、撮像ルーム5を包囲するシールド6に画定された観察ガラスまたは他の観察ポートを介して、撮像ルーム5内に入射されるとよい。例えば、発光装置2は、制御ルーム4の壁に画定された観察ガラスおよび/または窓枠に操作可能に係合されているとよく、これによって、(以下に述べるような伝送装置用光ファイバーケーブル20のような光伝達要素の使用の有無に関わらず)、発光装置2によって生じた電磁波は、この窓を通して撮像ルーム5内に伝達され、(ここに述べるように、太陽電池または他の光起電力要素16を備える)変換装置3に供給されることになる。
【0029】
図1に示されるように、発光装置2(およびそこに含まれる照明要素11)によって生じた電磁波は、伝送装置用光ファイバーケーブル20のようなケーブルの形態にある光伝達要素を介して、シールド6を通して撮像ルーム5内に伝達されてもよい。伝送装置用光ファイバーケーブルは、低損失で、日常的に十分に検証かつ試験され、実質的に連続的に使用される市販の光ファイバーケーブルまたは「光パイプ」からなるとよい。従って、本発明のシステム1のいくつかの実施形態では、電磁波を(例えば、撮像ルーム5の外側に配置された)1つまたは複数の発光装置2から撮像ルーム5に、次いで、撮像ルーム5の至るところに配置された種々の機器10に伝達させるのに、多数の伝送装置用光ファイバーケーブル20が用いられてもよい。いくつかのこのような実施形態では、各機器10に対して、伝送装置用光ファイバーケーブル20によって伝達された電磁波を機器10によって使用される電気エネルギーに変換するための対応する変換装置3が設けられているとよい。
【0030】
さらに具体的には、いくつかの実施形態では、発光装置2は、撮像ルーム5のシールド6の外側に配置された(レーザ装置のような)照明要素11を備えていてもよい。ここに述べるように、システム1は、(例えば、接続要素21を介して)照明要素11の出口に操作可能に係合された第1の端および光学的接続要素22を介して変換装置3と操作可能に係合された第2の端を備える伝送装置用光ファイバーケーブル20をさらに備えているとよい。
【0031】
照明要素11として(レーザダイオードのような)レーザ装置を用いることは、光子の高エネルギー伝達に適している。しかし、当業者に知られているように、光子流れ(すなわち、可視光スペクトルの電磁波)の全般的な特性は、変換装置3における電気エネルギーの効果的な生成にとって重大なものではない。従って、いくつかの実施形態では、発光装置2の照明要素11は、電磁波の源として、信頼性のある高性能レーザ装置を含むことができる。レーザ装置の出力特性は、一般的に、下流側の電磁波の光学的特性に及ぼす影響よりもシステム1の作動に及ぼす影響の方が重要なので、本発明のシステム1は、高品位の光学特性を必要とするレーザシステムの光学要素と比べて、比較的低コストの光学要素(21,22)と組合されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、光伝達の高信頼性および高効率は、伝送装置用光ファイバーケーブル20を介して伝達された電磁波を収集するように、光学結合要素22を形作ることによって、達成される。例えば、ここに示されるように、光学結合要素22は、伝送装置用光ファイバーケーブル20と光起電力要素16の光入射領域との間に操作可能に係合されているとよい。さらに、光学結合要素22は、光起電力要素16の光入射領域の輪郭に合わせて、形成されているとよい。いくつかの実施形態では、光起電力要素16の種々の電池が、伝送用光ファイバーケーブル20を介して伝達された電磁波によって、均一に照明されることを確実にするために、光学結合要素22は、電磁波を光起電力要素16の光入射領域の全体にわたって分散させるピラミッド形状またはベル形状に形成されているとよい。
【0033】
本発明の一実施形態によるシステム1の例が、図1に示されている。この例では、発光装置2および変換装置3は、伝送装置用光ファイバーケーブル20の一端を接続装置21を介して(レーザダイオードのような)照明要素11に接続させて、伝送装置用光ファイバーケーブル20によって、光ファイバー接続されている。伝送装置用光ファイバーケーブル20の他端は、(レーザドームのような)光学結合要素22を介して、光起電力要素16にさらに接続されている。
【0034】
いくつかの実施形態は、発光装置2と変換装置3との間に操作可能に係合された応答装置用光ファイバーケーブル23をさらに備えているとよい。応答装置用光ファイバーケーブル23は、監視用スイッチング回路18に関するデータをスイッチングモジュール回路13に伝達することができるように構成されているとよい。例えば、変換装置3は、いくつかの実施形態では、光ダイオード17を備えているとよく、この光ダイオード17は、発光装置2から伝送装置用光ファイバーケーブル20を介して変換装置3に伝達されるエネルギーを監視するために、監視用スイッチング回路18に連通している。光ダイオード17および監視用スイッチング回路18によってそれぞれ検出かつ監視されたエネルギーレベルは、伝送装置用光ファイバーケーブル20の完全性および/または効率を示すものであるとよい。例えば、応答装置用光ファイバーケーブル23によって確立されたフィードバック経路を用いて、発光装置2に対するファイバー破断の可能性を検出かつ報告することができ、これによって、もしこのような破断が検出された場合、伝送装置用光ファイバーケーブル20内の破断したファイバーによる損なわれた可能性のある光放射の漏れを阻止するために、発光装置2を停止および/または減衰させることができる。従って、いくつかのこのような実施形態では、監視用スイッチング回路18は、応答信号を(例えば、応答装置用光ファイバーケーブル23を介して)実時間で発光装置2のスイッチングモジュール回路13に送信することができる。これに対応して、発光装置2のスイッチング回路13は、変換装置3の光ダイオード17から受信したデータに従って、照明要素11によって生じた電磁波の強度、出力、または他の特性を調整するように、ドライバ12を制御することができる。
【0035】
他の実施形態では、発光装置2と変換装置3との間に、制御装置用光ファイバーケーブル24が操作可能に係合されていてもよい。制御装置用光ファイバーケーブル24は、いくつかの実施形態では、変換装置3の制御ユニット19と発光装置2の制御ユニット25とを連通させ、発光装置2から変換装置3にデータを伝達することができる。これらのデータの例として、制限されないが、スイッチモジュール回路13の位置の指示、伝送装置用光ファイバーケーブル20の状況、撮像ルーム5内の1つまたは複数の機器10によって必要とされる電気エネルギーのレベルの選択、(例えば、電気ケーブル8,9を介して)変換装置3と連通する機器10の数の選択、およびこのようなデータの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、制御装置用光ファイバーケーブル24は、制御要素19,25およびスイッチモジュール回路13の少なくとも1つと双方向連通しているとよく、これによって、制御要素は、発光装置2が照明要素11の電源が切られた「スイッチオフ」の状態にあるかどうかを監視することができる。もしこのスイッチオフが監視されていないと、電磁波の十分な流れを変換装置3に供給することができないことがある。いくつかの実施形態では、図1に示されるように、制御装置用光ファイバーケーブル24は、発光装置2の制御要素25、変換装置3の制御要素19、および機器10の間にも延在しているとよい。これによって、本発明のシステム1の発光装置2および変換装置3の少なくとも1つを制御するとき、機器10の状況、電力消耗レベル、電圧要求、または他の操作特性を考慮することができる。
【0036】
伝送装置用光ファイバー20は、発光装置2によって生じた電磁波に加えて、データ流れを伝達することができるように構成されていてもよい。これによって、応答装置用光ファイバーケーブル23および制御装置用光ファイバーケーブル24を単一の伝送装置用光ファイバーケーブル20によって置き換えることができる。いくつかの実施形態によれば、伝送装置用光ファイバーケーブル20、応答装置用光ファイバーケーブル23、および/または制御装置用光ファイバーケーブル24は、発光装置2と変換装置3との間に確立された双方向結線を介して情報を伝達することができるように構成されているとよい。ここに述べたように、データ流れおよび電磁波は、光ファイバーケーブルを介して伝達されるので、発光装置2と変換装置3との間に(光ファイバーケーブル20,23,24によって確立された)結線は、撮像ルーム5内のどのような電場またはEM場にも影響を及ぼすことがない。さらに、このような光ファイバーケーブル20,23,24は、撮像ルーム5内の電場またはEM場(例えば、MRI撮像システムによって生じる極めて強力なEM場)からの干渉に対して、大きな耐性を有している。
【0037】
発光装置2と変換装置3との間に確立された連通経路に関わらず、本発明の種々の実施形態は、発光装置2の(レーザダイオードのような)照明要素11の制御、管理、および/または性能の調節を可能にする。例えば、伝送装置用光ファイバーケーブル20、応答装置用光ファイバーケーブル23、および/または制御装置用光ファイバーケーブル24の少なくとも1つを介して伝達されたデータは、発光装置2の制御要素25、スイッチングモジュール回路13、およびドライバ12の少なくとも1つに制御入力をもたらし、これによって、発光装置2内の照明装置11は、変換装置3と連通している1つまたは複数の機器10に電気エネルギーを供給するのに必要とされる適切な量のエネルギーを生成することになる。従って、システム1の種々の制御要素およびフィードバック要素は、エネルギー損失を低減させ、(伝送装置用光ファイバーケーブル20、光学結合要素22、接続装置21のような)光学要素の作動寿命を高め、かつ照明要素11の作動寿命を高めることができる。例えば、発光装置2の照明要素11がレーザダイオードである実施形態では、変換装置3の監視用スイッチング回路18から発光装置2のスイッチングモジュール回路13に伝達されるフィードバックデータ(図1参照)は、寿命を延長させるための部分操作モードで照明要素11を操作する指示を含むことができる。
【0038】
さらに、いくつかの実施形態では、変換装置3は、機器10に必要な電気エネルギーが光起電力要素11によって生じた電気エネルギーのレベルに至らない操作サイクル中に、変換装置3の光起電力要素16によって生じた電気エネルギーを貯蔵する(例えば、バッテリまたはコンデンサのような)エネルギー貯蔵装置26をさらに備えていてもよい。従って、(機器10が、光起電力要素16によって即時利用可能となる電気エネルギーよりも多くの電気エネルギーを必要とする)負荷ピークまたは「スパイク(瞬時過渡現象)」中に、変換装置の制御要素19は、エネルギー貯蔵装置26をオンライン化し、電気エネルギーを供給し、光起電力要素16によって供給される電気エネルギーを補充することができる。
【0039】
上記の説明および関連する図面に現れる示唆の利得を得るこれらの発明が属する技術分野における当業者であれば、ここに述べた本発明の多くの修正形態および他の実施形態を思い浮かべることだろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、修正形態および他の実施形態は、特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。ここでは特定の用語が用いられているが、これらの用語は、総称的かつ叙述的な意味でのみ用いられ、制限するためのものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像ルームに関連して用いられる機器に電気エネルギーを供給するプロセスであって、前記ルームが電磁場に対するシールドを有する、プロセスにおいて、
少なくとも1つの発光装置から電磁波を放射させるステップと、
前記ルーム内に配置された少なくとも1つの変換装置を用いて、前記電磁波を電気エネルギーに変換するステップと、
前記ルーム内の干渉磁場を最小限に抑えるように、前記電気エネルギーを前記機器に導くステップと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記放射ステップは、前記ルームの前記シールドの外側から電磁波を放射することを含み、前記変換ステップは、前記シールドの内側において行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記放射ステップは、前記シールドに画定された観察ポートを介して、電磁波を前記ルーム内に放射することをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記放射ステップは、伝送装置用光ファイバーケーブルを介して、電磁波を前記ルーム内に放射することを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記放射ステップが前記ルームの内側から少なくとも部分的に制御されるように、制御信号を前記変換装置から応答装置用光ファイバーケーブルを介して前記発光装置に伝達させることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記伝達ステップは、前記伝送装置用光ファイバーケーブルの光伝達能力に対応する情報を前記発光装置に中継することを含むことを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記変換装置から前記発光装置に伝達される前記制御信号は、前記伝送装置用光ファイバーケーブルの光伝達能力に対応する前記中継された情報が、前記伝送装置用光ファイバーケーブルの前記光伝達能力が損なわれていることを示したとき、放射される電磁波の強度を低減させる指令を含むことを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記放射ステップは、実質的に可視光スペクトル内の電磁波を放射することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記放射ステップは、実質的に近赤外線スペクトル内の電磁波を放射することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記放射ステップは、実質的に遠赤外線スペクトル内の電磁波を放射することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記放射ステップは、実質的に紫外線スプクトル内の電磁波を放射することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記撮像ルームは、磁気共鳴撮像(MRI)装置一式を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
撮像ルームに関連して用いられる機器に電気エネルギーを供給するシステムであって、前記ルームが電磁場に対するシールドを有する、システムにおいて、
電磁波を放射する発光装置と、
前記ルーム内に配置され、前記電磁波を電気エネルギーに変換し、前記ルーム内の干渉磁場を最小限に抑えるように、前記電気エネルギーを前記機器に導く変換装置と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記発光装置は、レーザダイオードを含むことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記発光装置は、実質的に約400ナノメートルから約700ナノメートルの間の波長を有する電磁波を放射することができるように構成されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記発光装置は、実質的に近赤外線スペクトル内の波長を有する電磁波を放射することができるように構成されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記発光装置は、実質的に遠赤外線スペクトル内の波長を有する電磁波を放射することができるように構成されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記発光装置は、実質的に紫外線スペクトル内の波長を有する電磁波を放射することができるように構成されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記撮像ルームは、磁気共鳴撮像(MRI)装置一式を含むことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記発光装置の出口と操作可能に係合された第1の端および前記変換装置と操作可能に係合された第2の端を有し、電磁波を前記変換装置に伝達する伝送装置用光ファイバーケーブルをさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記伝送装置用光ファイバーケーブルの前記第2の端が、光学結合要素を介して、前記変換装置に操作可能に係合されることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記伝送装置用光ファイバーは、データ流れを伝達させることができるように構成されることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記変換装置は、電磁波を電気エネルギーに変換する光起電力要素を備えることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
前記光起電力要素は、
ドープされたシリコン結晶のアレイ、
少なくとも1つの太陽電池、および
これらの組合せ
からなる群から選択されることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記変換装置は、電磁波の特性を監視するために、前記光起電力要素に操作可能に係合された光ダイオードをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記光起電力要素は、熱伝導要素を介して、平面金属要素に操作可能に係合され、前記平面金属要素は、電磁波を電気エネルギーに変換するときに前記光起電力要素によって生じた熱を分散させるために、前記光起電力要素の平面領域を超えて延在していることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記平面金属要素は、銅箔を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記平面金属要素は、銀箔を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。

【請求項29】
前記平面金属要素は、金箔を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記変換装置と前記発光装置との間に操作可能に係合され、前記発光装置が前記ルームの内側から少なくとも部分的に制御可能になるように、第1の制御信号を前記変換装置から前記発光装置に伝達する制御装置用光ファイバーケーブルをさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項31】
前記光ダイオードと前記発光装置との間に操作可能に係合され、第2の制御信号を前記変換装置から前記発光装置に伝達する応答装置用光ファイバーケーブルをさらに備え、前記制御信号は、電磁波の特性に対応する伝達信号を含むことを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記変換装置から前記発光装置に伝達される前記第2の制御信号は、前記伝達情報が、前記伝送装置用光ファイバーケーブルが損なわれていることを示したとき、放射される電磁波の強度を低減させる指令を含むことを特徴とする請求項31に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−539564(P2009−539564A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515569(P2009−515569)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/070479
【国際公開番号】WO2007/146694
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500165186)アシスト・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】