説明

電気コネクタ

【課題】相手側コネクタを電気コネクタに繰り返し抜き差ししても、内側シェルが外側シェルに対してがたつくことがない技術を提供する。
【解決手段】電気コネクタ1は、複数のコンタクト2と、複数のコンタクト2を保持するハウジング3と、ハウジング3を覆いつつ、相手側コネクタ7が挿入される相手側コネクタ挿入空間8を有する筒状の内側シェル5と、内側シェル5の周壁5aの天板5b(一部)を覆う天板6aと、内側シェル5を包み込むように天板6aから離れる方向へ延びて形成される複数の第1保持脚6bと、を含んで構成される外側シェル6と、を備える。電気コネクタ1は、複数の第1保持脚6bをコネクタ搭載基板9の複数の保持孔10に挿入することで、コネクタ搭載基板9に搭載されて用いられる。内側シェル5と外側シェル6は、一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、異なる厚みのプリント配線板に電気コネクタを問題なく取り付けるための技術を開示している。即ち、特許文献1の電気コネクタは、端子ホルダ300を収容する第1外殻301と、電気コネクタ自身をプリント配線板にハンダ付けするためのピン足302を有した第2外殻303と、を備えている。第1外殻301と第2外殻303は、別体に構成されている。使用時は、第2外殻303の突起304と、第1外殻301の凹部305と、を用いて第2外殻303を第1外殻301に対して嵌め合わせている。このように、第1外殻301と第2外殻303を別体に構成しておくことで、プリント配線板の厚みに応じてピン足302の長さをその都度選択できるようになっている。必要であれば、別体構成について言及している特許文献1の請求項1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3117155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今の電子機器のモバイラビリティの発展に伴い、コネクタの抜き差し回数が飛躍的に増加している。
【0005】
従って、上述した特許文献1の電気コネクタでは、相手のコネクタを抜き差ししていくうちに突起304と凹部305の間に緩みが生じ、この結果、第1外殻301が第2外殻303に対して抜き差し方向においてがたついてしまう場合があった。
【0006】
本願発明の目的は、相手のコネクタを繰り返し抜き差ししてもがたつき難くする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の観点によれば、電気コネクタは、コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、前記ハウジングを覆いつつ、相手側コネクタが挿入される相手側コネクタ挿入空間を有する筒状の内側シェルと、前記内側シェルの周壁の一部を覆う天板と、前記内側シェルを包み込むように前記天板から離れる方向へ延びて形成される保持脚と、を含んで構成される外側シェルと、を備える。この電気コネクタは、前記保持脚をコネクタ搭載基板の保持孔に挿入することで、前記コネクタ搭載基板に搭載されて用いられる。前記内側シェルと前記外側シェルは、一体的に形成されている。
好ましくは、前記外側シェルの前記天板は、前記内側シェルの前記周壁に対して略180度折り返されて形成されている。
好ましくは、前記外側シェルの前記天板は、前記相手側コネクタの抜き差しが行われる前記内側シェルの前記周壁の開口端において、前記内側シェルの前記周壁に接続している。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、前記相手側コネクタを前記電気コネクタに繰り返し抜き差ししても、前記内側シェルが前記外側シェルに対してがたつくことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、電気コネクタの使用状態を示す斜視図である。(第1実施形態)
【図2】図2は、電気コネクタの使用前の斜視図である。(第1実施形態)
【図3】図3は、電気コネクタの分解斜視図である。(第1実施形態)
【図4】図4は、電気コネクタの他の角度から見た分解斜視図である。(第1実施形態)
【図5】図5は、外側シェルを展開した状態を示す斜視図である。(第1実施形態)
【図6】図6は、図2のVI-VI線断面図である。(第1実施形態)
【図7】図7は、外側シェルを展開した状態を示す斜視図である。(第2実施形態)
【図8】図8は、図2のVI-VI線断面図である。(第3実施形態)
【図9】図9は、特許文献1の図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図1〜6を参照しつつ、本願発明の第1実施形態を説明する。本願明細書において電気コネクタ1は、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)用レセプタクルコネクタである。
【0011】
図1〜6に示すように、電気コネクタ1は、複数のコンタクト2と、複数のコンタクト2を保持するハウジング3と、シェル4と、を備えて構成されている。シェル4は、内側シェル5と外側シェル6を有する。内側シェル5は、ハウジング3を覆いつつ、相手側コネクタ7が挿入される相手側コネクタ挿入空間8を有するように、筒状に形成されている。外側シェル6は、内側シェル5の周壁5aの一部を覆う天板6aと、内側シェル5を包み込むように天板6aから離れる方向へ延びて形成される4つの第1保持脚6b(保持脚)と、を含んで構成されている。そして、電気コネクタ1は、4つの第1保持脚6bをコネクタ搭載基板9の複数の保持孔10に夫々挿入することで、コネクタ搭載基板9に搭載されて用いられる。本実施形態において内側シェル5と外側シェル6は、一体的に形成されている。以下、この電気コネクタ1の各構成要素を詳細に説明する。
【0012】
(コネクタ挿入方向D)
図1に示すように、相手側コネクタ7が相手側コネクタ挿入空間8に挿入される方向をコネクタ挿入方向Dと定義する。
【0013】
(コネクタ搭載基板9)
図1に示すように、コネクタ搭載基板9には、4つの保持孔10が形成されている。4つの保持孔10のうち2つの保持孔10は、挿入前の相手側コネクタ7から電気コネクタ1を見て、電気コネクタ1の右側に配置されると共に、コネクタ挿入方向Dに沿って並んでいる。同様に、4つの保持孔10のうち残りの2つの保持孔(不図示)は、挿入前の相手側コネクタ7から電気コネクタ1を見て、電気コネクタ1の左側に配置されると共に、コネクタ挿入方向Dに沿って並んでいる。
【0014】
(シェル4:内側シェル5)
図1に示すように、内側シェル5は、金属板を折り曲げて、一方の端に形成された凸部11を他方に形成された凹部12に嵌め込むことで形成した若干扁平状の筒体である。内側シェル5の継ぎ目13は、コネクタ搭載基板9に対して対向するように位置している。継ぎ目13は、コネクタ挿入方向Dに対して略平行に延びている。
【0015】
内側シェル5の周壁5aは、図5に示すように、天板5bと一対の側板5c、底板5dによって構成されている。
【0016】
天板5bには、相手側コネクタ7を弾性力で保持するために、片持ち梁状に形成された保持板14が2つ、形成されている。側板5c及び底板5dには、半田付けの際にフラックス等が内側シェル5内に侵入しないよう、いかなる孔も形成されていない。
【0017】
そして、図1に示すように、相手側コネクタ7の抜き差しが行われる内側シェル5の周壁5aの開口端15には、相手側コネクタ7を相手側コネクタ挿入空間8内へスムーズに挿入するためのガイドgが複数形成されている。また、コネクタ挿入方向Dにおける、内側シェル5の周壁5aの開口端15と反対側の後端16には、図4及び図5に示すように、一対の第2保持脚17が形成されている。
【0018】
また、図6に示すように、内側シェル5の天板5bの後端16には、折り曲げられることで、シェル4からのハウジング3の抜け止めとなる抜け止め部5eが形成されている。
【0019】
(シェル4:外側シェル6)
図5及び図6に示す通り、外側シェル6は、内側シェル5の周壁5aの天板5bを覆う天板6aと、内側シェル5の周壁5aの一対の側板5cを覆う一対の側板6cと、4つの第1保持脚6bと、によって構成されている。外側シェル6の天板6aは、内側シェル5の周壁5aの天板5bの開口端15に接続している。そして、図6に示すように、外側シェル6の天板6aは、内側シェル5の周壁5aの天板5bに対して略180度折り返されて形成されている。この折り返しに伴って、内側シェル5の周壁5aの天板5bの開口端15には、断面略半円状の折り返し部Rが形成されている。また、外側シェル6の天板6aには、保持板14の弾性変形を許容するための逃げ孔6dが形成されている。図1に示すように、各側板6cは、天板6aに対して接続すると共に、天板6aに対して直交する関係にある。1つの側板6cに、2つの第1保持脚6bが接続している。1つの側板6cに接続された2つの第1保持脚6bは、コネクタ挿入方向Dにおいて若干離れて形成されている。各第1保持脚6bは、図1に示すように、コネクタ搭載基板9のコネクタ搭載面9aに対して直交する方向に延びてコネクタ搭載基板9の各保持孔10に挿入されている。
【0020】
図1に示す状態で、外側シェル6は、内側シェル5に覆い被さっている。内側シェル5は、外側シェル6とコネクタ搭載基板9によって挟まれ、外側シェル6とコネクタ搭載基板9によって包囲されている。
【0021】
(使用方法)
次に、電気コネクタ1の使用方法を説明する。先ず、図2に示す外側シェル6の各第1保持脚6bを、図1に示すように、コネクタ搭載基板9の各保持孔10に夫々挿入する。次に、電気コネクタ1のシェル4の外側シェル6の各第1保持脚6bを、コネクタ搭載基板9の各保持孔10に対して夫々半田付けする。また、図4に示す電気コネクタ1の内側シェル5の底板5dを、図1に示すコネクタ搭載基板9のコネクタ搭載面9aに形成された図示しない第1半田付けパッドに半田付けする。また、図4に示す電気コネクタ1の内側シェル5の第2保持脚17を、図1に示すコネクタ搭載基板9のコネクタ搭載面9aに搭載された図示しない第2半田付けパッドに半田付けする。こうして、電気コネクタ1はコネクタ搭載基板9に対してしっかりと固定される。
【0022】
以上に、本願発明の好適な第1実施形態を説明したが、上記第1実施形態は、要するに、以下の特長を有している。
【0023】
(1)電気コネクタ1は、複数のコンタクト2と、複数のコンタクト2を保持するハウジング3と、ハウジング3を覆いつつ、相手側コネクタ7が挿入される相手側コネクタ挿入空間8を有する筒状の内側シェル5と、内側シェル5の周壁5aの天板5b(一部)を覆う天板6aと、内側シェル5を包み込むように天板6aから離れる方向へ延びて形成される複数の第1保持脚6bと、を含んで構成される外側シェル6と、を備える。電気コネクタ1は、複数の第1保持脚6bをコネクタ搭載基板9の複数の保持孔10に挿入することで、コネクタ搭載基板9に搭載されて用いられる。内側シェル5と外側シェル6は、一体的に形成されている。以上の構成によれば、相手側コネクタ7を電気コネクタ1に繰り返し抜き差ししても、内側シェル5が外側シェル6に対してがたつくことがない。
【0024】
ここで、特許文献1について言及する。特許文献1の技術の根幹は、異なる厚みのプリント配線板に問題なく電気コネクタを取り付けるために、ピン足を有する第2外殻を第1外殻とは別体に構成した、という部分である。従って、特許文献1の技術において仮に第1外殻と第2外殻を一体化させるとすると、特許文献1の技術が根底から崩れてしまう点に留意されたい。
【0025】
(2)また、外側シェル6の天板6aは、内側シェル5の周壁5aに対して略180度折り返されて形成されている。以上の構成によれば、外側シェル6の天板6aを、折り曲げ加工により安価に形成することができる。
【0026】
(3)また、外側シェル6の天板6aは、相手側コネクタ7の抜き差しが行われる内側シェル5の周壁5aの開口端15において、内側シェル5の周壁5aに接続している。以上の構成によれば、相手側コネクタ7の抜き差しが行われる内側シェル5の周壁5aの開口端15には、断面略半円状の折り返し部Rが形成されることになる。この折り返し部Rは、相手側コネクタ7を内側シェル5の相手側コネクタ挿入空間8に挿入する際のガイドとしての機能を発揮する。
【0027】
なお、本実施形態において保持板14は、図6に示すように、外側シェル6ではなく内側シェル5に形成している。従って、図2に示すように、外側シェル6の天板6aには、切れ目のない広大な吸着領域を確保することができる。この吸着領域は、電気コネクタ1を吸引力によりピックアップする際に使用される領域である。
【0028】
(第2実施形態)
次に、図7を参照しつつ、本願発明の第2実施形態を説明する。ここでは、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、重複する説明は適宜省略する。また、上記第1実施形態の各構成要素に対応する構成要素には原則として同一の符号を付すこととする。
【0029】
上記第1実施形態において、外側シェル6の天板6aは、図5に示すように、内側シェル5の周壁5aの天板5bの開口端15において、内側シェル5の周壁5aに接続している。しかし、これに代えて、本実施形態において、外側シェル6の天板6aは、図7に示すように、内側シェル5の周壁5aの天板5bの後端16において、内側シェル5の周壁5aに接続している。
【0030】
(第3実施形態)
次に、図8を参照しつつ、本願発明の第3実施形態を説明する。ここでは、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、重複する説明は適宜省略する。また、上記第1実施形態の各構成要素に対応する構成要素には原則として同一の符号を付すこととする。
【0031】
本実施形態において外側シェル6は、図8に示すように、重複部6eを有している。重複部6eは、天板6aに接続すると共に、抜け止め部5eに対して外側から部分的に重複している。以上の重複部6eによれば、抜け止め部5eによる抜け止め効果が強化されることになる。
【符号の説明】
【0032】
1 電気コネクタ
2 複数のコンタクト
3 ハウジング
4 シェル
5 内側シェル
5a 周壁
5b 天板
5c 側板
5d 底板
5e 抜け止め部
6 外側シェル
6a 天板
6b 第1保持脚
6c 側板
6d 逃げ孔
6e 重複部
7 相手側コネクタ
8 相手側コネクタ挿入空間
9 コネクタ搭載基板
9a コネクタ搭載面
10 保持孔
11 凸部
12 凹部
13 継ぎ目
14 保持板
15 開口端
16 後端
17 第2保持脚
D コネクタ挿入方向
R 折り返し部
g ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトと、
前記コンタクトを保持するハウジングと、
前記ハウジングを覆いつつ、相手側コネクタが挿入される相手側コネクタ挿入空間を有する筒状の内側シェルと、
前記内側シェルの周壁の一部を覆う天板と、前記内側シェルを包み込むように前記天板から離れる方向へ延びて形成される保持脚と、を含んで構成される外側シェルと、
を備え、
前記保持脚をコネクタ搭載基板の保持孔に挿入することで、前記コネクタ搭載基板に搭載されて用いられる電気コネクタであって、
前記内側シェルと前記外側シェルは、一体的に形成されている、
電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気コネクタであって、
前記外側シェルの前記天板は、前記内側シェルの前記周壁に対して略180度折り返されて形成されている、
電気コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の電気コネクタであって、
前記外側シェルの前記天板は、前記相手側コネクタの抜き差しが行われる前記内側シェルの前記周壁の開口端において、前記内側シェルの前記周壁に接続している、
電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−182099(P2012−182099A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46037(P2011−46037)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】