説明

電気パルスを発生するための装置および該装置を使用する方法

ナノ秒パルス電場(「nsPEF」)の適用を通して細胞に薬剤を送達するための方法および装置が提供される。この方法は、既知の方法によって細胞内へ薬剤を送達した後、細胞の核内への薬剤の侵入を促進するために細胞にナノ秒パルス電場を適用するための回路を含む。好ましい態様において本発明は、細胞へのナノ秒パルス電場の適用を含む、細胞の遺伝子発現を増強する方法を対象とする。本発明の長パルスおよび短パルスを発生するための装置も提供される。この装置は、長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスと、短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスとを生成できるパルス発生器を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2003年7月18日に出願された米国仮出願第60/487,932号、2003年9月4日に出願された米国仮出願第60/499,921号、および2003年12月4日に出願された米国仮出願第60/526,585号の恩典を主張し、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府が後援する研究および開発の下で為された発明に係る権利に関する声明
本発明は、米国空軍科学研究局により授与されたAFOSR MURI助成第F49620-02-1-0320号の下、政府支援を受けて為された。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
医学および生物学における電気/電場の検出および使用は、双方ともに広範囲に及び、よく受け入れられている。心電図記録(EKG)および脳波記録(EEG)はそれぞれ心臓および脳における電気活性を検出するために用いられる。パルス電場の心筋への適用である電気的除細動は、心臓の鼓動を停止、変更、または再開するために日常的に用いられる。低出力電場を骨折に適用して、治癒を促進することもできる。筋電図記録は、筋またはそれらの関連する神経への測定電気パルスの適用であり、筋機能を測定するため、および/または筋損傷の程度を判断するために用いられ得る。生物学では、電場は様々な用途を有し、例えば異なる大きさ(電気泳動)または異なる電荷(等電点電気泳動)の分子を分離するために、および異なる特性を有する細胞を分離する(フローサイトメトリーの間の細胞選別)ために用いられ得る。電場は、電気穿孔と呼ばれる過程を経て、新規なタンパク質または遺伝子を生細胞へ導入するためにも用いられ得る。
【0004】
電気穿孔において、短時間(1秒の1000分の1から100万分の1のスケールで)で中程度の出力(キロボルト/メーター)の電場の適用は、細胞表面の膜の透過化(漏出)を惹起し、細胞内部に通常はアクセスできない物質/分子が細胞に侵入できる。細胞膜の初期透過化後、細胞は最終的にその正常な「非漏出」状態に戻る。しかし、細胞はこのとき、電気穿孔により細胞内に導入された物質を含み、および/または活用できる。この過程は、例えば経皮的薬物送達(Neumann, E., Kakorin, S., and Toensing, K. (1999), Fundamentals of electroporative delivery of drugs and genes. Bioelectrochem. Bioenerg. 48, 3-16. 1999; Weaver, J.C., Vaughan, T.E., and Chizmadzhev, Y. (1999), Theory of electrical creation of aqueous pathways across skin transport barriers. Adv. Drug Deliv. Rev. 35, 21-39)のために、および電気化学療法を用いた癌治療の治療手段(Belehradek, M., Domenge, C., Luboinski, B., Orlowski, S., Belehradek, J. Jr., and Mir, L.M. (1993), Electrochemotherapy, a new antitumor treatment. First clinical phase I-II trial. Cancer 72, 3694-700. 1993; Heller, R., Jaroszeski, M.J., Glass, L.F., Messina, J.L., Rapaport, D.P., DeConti, R.C., Fenske, N.A., Gilbert, R.A., Mir, L.M., Reintgen, D.S. (1996), Phase I/II trial for the treatment of cutaneous and subcutaneous tumors using electrochemotherapy. Cancer 77, 964-71. 1996; Hofmann, F., Ohnimus, H., Scheller, C., Strupp, W., Zimmermann U., and Jassoy, C. (1999), Electric field pulses can induce apoptosis. J. Membr. Biol. 169, 103-109)として、遺伝子または薬物を細胞に導入するために用いられ得る。電気化学療法または電気穿孔治療(EPT)は、ブレオマイシンなどの透過しにくい化学治療剤を、二つの電極間に適切に配向され得る腫瘍細胞にインビボ送達する方法である(Dev S.B., Hofmann, G.A., Electrochemotherapy - a novel method of cancer treatment. Cancer Treat Rev 20:105-15, 1994; Hofmann et al., Electroporation therapy: a new approach for the treatment of head and neck cancer. IEE Trans Biomed Eng 46:752-9, 1999; Mir, L.M., Orlowski, S. Mechanisms of electrochemotherapy. Adv Drug Deliv Rev., 35:107-118, 1999)。電気穿孔およびEPTはともに、細胞または組織の原形質膜に及ぼす電気的効果に依存する。
【0005】
電気穿孔は、0.1ミリ秒から20ミリ秒(「ms」)のオーダーのパルス持続時間で(Dev, S.B., Rabussay, D.A., Widera, G., and Hofmann, G.A. (2000) IEEE Trans. Plasma Sci. 28, 206-223)、ボルトから低キロボルト/センチメーターのオーダーの電場で起こるが、具体的な条件は特定の細胞の種類および細胞懸濁培地に依存する。これらのミリ秒パルスは一過性の膜穿孔(membrane poration)および細胞の生存を促進する。または、電気穿孔は、異なる電気または細胞の条件を用いて細胞の破壊/死を惹起し得る。孔の物理的性質はあまり特徴付けられていないが、良好な細胞生存性で膜非透過性分子を細胞内送達できる実験条件は周知である。最適な電気穿孔の条件は、波形、細胞が懸濁される培地の成分、および細胞の種類に依存する(Weaver, J.C., Electroporation of cells and tissues, in: J.D. Bronzino (Ed.), The Biomedical Engineering Handbook, CRC and IEEE press, Boca Raton, FL, 1995, pp.1431-1440; Djuzenova et al., Effect of medium conductivity and composition on the uptake of propidium iodide into electropermeabilized myeloma cells. Biochim Biophys Acta, 1284:143-52, 1996)。いずれの場合においても、これらのミリ秒低出力適用電場の電気穿孔効果は細胞表面の膜のみで起こる。
【0006】
上記のように、電場および電気穿孔の工程はまた、細胞への遺伝子導入に用いられている。DNAを用いた生細胞のトランスフェクションは、転写研究または一部の疾患の治療における治療目的のため、外来遺伝子を細胞で発現するために用いられる一般的な分子技術である。既知のトランスフェクション方法は、原形質膜と融合するために脂質小胞にDNAを取り込むこと、リン酸カルシウムまたはデキストランで沈殿させたDNAのエンドサイトーシス、関心対象の遺伝子で細胞を感染させるウイルスベクターの使用、および原形質膜に「孔」を形成するパルス電場を用いた電気透過化(electropermeabilization)または電気穿孔を含む。一部の細胞型、特に懸濁液で増殖する型は、電気透過化によってのみ効果的にトランスフェクトされ得る。遺伝子発現の増強または最適化は、長いパルス電場のパルス持続時間を(例えば、1マイクロ秒〜20ミリ秒の範囲内で)変更することにより、古典的な電気穿孔の範囲内(0.1〜5 kV/cm)で電場の強度を変更することにより、および/または緩衝液もしくは培地の伝導性を改変することにより、古典的な電気穿孔パルスを用いて既に達成されている。他のトランスフェクション手法において、遺伝子発現の増強は、トランスフェクション手法で用いられるDNA濃度を変更することにより、トランスフェクション中の物理的/化学的性質(pH、イオン強度など)を変更することにより、異なる性質を有する様々な脂質の組み合わせを用いて、またはトランスフェクション効率を補助するために細胞培養培地もしくは緩衝液に他の成分を添加することにより、達成されてきた。
【0007】
これらの既知の技術でもってさえ、細胞に薬剤を導入する更に効率的な方法および遺伝子発現を増強する新規な方法が依然必要とされている。これらの必要性および様々な他の必要性が、本発明の一つまたは複数の態様により少なくとも部分的に対応される。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は、ナノ秒パルス電場(「nsPEF」)の適用を含む、細胞に薬剤を導入する方法に関する。
【0009】
本発明の一つまたは複数の態様では、細胞に薬剤を導入する方法は、細胞および薬剤を含む調製物を提供する工程、ならびにナノ秒パルス電場を調製物に適用する工程を含み、核への薬剤の侵入を促進する。nsPEFは、1から1000ナノ秒、好ましくは1から300ナノ秒の時間の範囲であり得る。nsPEFはまた、1から1000 kV/cm、好ましくは10から350 kV/cmの電場強度の範囲であり得る。薬剤は、例えば、薬物、核酸、タンパク質、ペプチド、およびポリペプチドを含む群から選択され得る。
【0010】
本発明の様々な態様は、薬物が、ブレオマイシン、ダウノマイシン、5-FU、シトシンアラビノシド、コルヒチン、サイトカラシンB、ダウノルビシン、ネオカルシノスタチン、スラミン、ドキソルビシン、カルボプラチン、タキソール、マイトマイシンC、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサート、およびシスプラチン、ならびにこれらの適切な組み合わせからなる群より選択される抗生剤または化学療法剤であることを許容する。さらに、薬剤は核酸であり得、核酸は、DNA、cDNA、およびRNAを含む群から選択される。本発明に従うと、これらの核酸は相同または非相同な遺伝子産物をコードしてもよく、細胞はこの遺伝子産物が細胞内で発現するようにトランスフェクトされ得る。核酸はまた、発現ベクターであってもよく、発現ベクターは、適切なプロモーター配列に機能的に連結された遺伝子産物をコードする相同または非相同な核酸を含む。核酸はまた、例えば遺伝子の発現を調節し、遺伝子治療を提供し得る。細胞に導入される核酸はまた、細胞増殖を調節し得る、または免疫応答を誘発し得る。本発明の更なる態様は、ポリペプチドの形態であり得る薬剤を提供し、このポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子、またはこれらの組み合わせを含む群より選択される。ポリペプチドはまた、抗原または抗体であってもよい。
【0011】
本発明の更なる態様では、薬剤は、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、およびサポリンを含む群から選択される細胞毒性剤であり得る。真核細胞、原核細胞、脂肪細胞、骨細胞、血管細胞、筋細胞、軟骨細胞、幹細胞、造血細胞、肺細胞、気道細胞、肝細胞、腸細胞、皮膚細胞、神経細胞、癌細胞、細菌細胞、およびこれらの組み合わせを含む、任意の種類の細胞が本発明において用いられ得る。
【0012】
本発明の少なくとも一つの態様では、遺伝子発現を増強する方法は、細胞および細胞に送達されるヌクレオチド配列を含む調製物を提供する工程、ならびにナノ秒パルス電場を調製物に適用する工程を含み、この適用は薬剤の核への侵入を促進する。
【0013】
本発明の他の形式において、細胞の遺伝子発現を増強する方法は、所望の遺伝子で細胞をトランスフェクトする工程、およびナノ秒パルス電場を細胞に適用する工程を含む。細胞は、電気穿孔、脂質小胞の使用、ウイルスベクターの使用、および/またはリン酸カルシウムもしくはデキストランとの共沈殿を含むが、これらに限定されない任意の公知の方法によりトランスフェクトされ得る。
【0014】
本発明の種々の態様において、細胞の遺伝子発現を増強する方法は、一つまたは複数の長パルスを細胞に適用する工程、および一つまたは複数のナノ秒パルス電場パルスをこの細胞に適用する工程を含む。これらの長パルスは、約0.001ミリ秒から30ミリ秒、好ましくは約0.1ミリ秒から20ミリ秒の持続時間の範囲であり得、約0.1 kV/cmから5 kV/cm、好ましくは0.1 kV/cmから1 kV/cmの範囲の電場強度を有し得る。nsPEFは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の時間の範囲であり得る。nsPEFはまた、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの電場強度の範囲であり得る。
【0015】
他の態様において、腫瘍または他の組織への薬物の送達を増強する方法は、腫瘍または他の組織にナノ秒パルス電場を適用する工程を含む。nsPEFは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の時間の範囲であり得る。nsPEFはまた、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの電場強度の範囲であり得る。
【0016】
他の態様において、細胞にワクチンを送達する方法は、細胞にナノ秒パルス電場を適用する工程を含む。nsPEFは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の時間の範囲であり得る。nsPEFはまた、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの電場強度の範囲であり得る。
【0017】
他の態様において、ナノ秒パルス電場を適用する方法が提供され、nsPEFはその治療の必要性がある患者に適用される。nsPEFは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の時間の範囲であり得る。nsPEFはまた、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの電場強度の範囲であり得る。必要性のある患者は、例えば癌を有し得る。
【0018】
他の態様において、ナノ秒パルス電場を細胞に適用する工程を含む、細胞の遺伝子発現を増強する方法が提供される。nsPEFは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の時間の範囲であり得る。nsPEFはまた、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの電場強度の範囲であり得る。
【0019】
本発明の一つまたは複数の態様に従って、電気パルスを発生するためにパルス発生器が提供される。パルス発生器は、第一回路、第二回路、および制御回路を含む。第一回路は、長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを発生するために用いられる。第二回路は、短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを発生するために用いられる。制御回路は、第一パルスおよび第二パルスがそれぞれ発生するように、第一回路および第二回路のタイミングを制御するために提供される。
【0020】
本発明の種々の態様により、第一パルスの長さは0.001ミリ秒から30ミリ秒まで変動できる。第一パルスの電場も0.1 kV/cmから5 kV/cmまで変動し得る。第二パルスの長さは1ナノ秒から1000ナノ秒まで変動し得る一方、その電場強度は1 kV/cmから1000 kV/cmまで変動し得る。さらに、制御回路は第一パルスと第二パルスの間隔を変更できる。
【0021】
本発明の他の態様は、高圧電源およびこの高圧電源に連結した充電レジスタを含む第一回路を提供する。コンデンサは、第一末端で充電レジスタと連結され、第二末端でロードと連結される。コンデンサのロードへの放電を制御するためにトランジスタが提供される。第二回路は、高圧電源、この高圧電源と連結した充電レジスタ;および第一末端で充電レジスタと連結し、第二末端でロードと連結した伝送線を含むように構成され得る。伝送線はロードに放電するよう機能する。
【0022】
本発明の少なくとも一つの態様では、パルス発生器を用いて遺伝子発現を増強する方法が提供される。本方法は次の段階を含む:パルス発生器の第一回路から長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを誘発する工程;第一パルスを少なくとも一つの細胞に伝送し、この少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起する工程;パルス発生器の第二回路から長い持続時間および低い電圧振幅を有する第二パルスを誘発する工程;ならびに、第二パルスを前記少なくとも一つの細胞に伝送し、この少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起する工程。
【0023】
本発明の一つまたは複数の態様に従って、多パルス発生器を用いて細胞の遺伝子発現を増強する方法が提供される。本方法は次の段階を含む:コンデンサを充電する工程;コンデンサに蓄積された電荷を少なくとも一つの細胞へ放電し始めるよう高圧大電流トランジスタを作動させ、この少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起する工程;所定の長い持続時間の後にコンデンサの放電を停止するよう高圧大電流トランジスタを作動させる工程;スイッチを作動させて、前記少なくとも一つの細胞からコンデンサを分離する工程;伝送線を充電する工程;伝送線に蓄積された電荷を前記少なくとも一つの細胞へ放電し始めるよう高圧スイッチを作動させ、この少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起する工程;および、所定の短い持続時間の後に伝送線の放電を停止するよう高圧スイッチを作動させる工程。
【0024】
本発明の他の態様で、細胞の遺伝子発現を増強するために二元パルス発生器を提供する。この二元パルス発生器は、第一パルス発生器、第二パルス発生器、および制御回路を含む。第一パルス発生器は、長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを発生するために用いられる。第二パルス発生器は、短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを発生するために用いられる。第一パルスは細胞の細胞原形質膜の電気穿孔を惹起し、一方、第二パルスは細胞の核膜の電気穿孔を惹起する。制御回路は、第一パルス発生器および第二パルス発生器により発生するパルスのタイミングを制御するために用いられる。
【0025】
本発明は、構成の詳細、および以下に示される、または図面で説明される構成要素の配置の適用において限定されないことが理解されるはずである。本発明はむしろ、他の態様が可能であり、種々の方法で実践および実施できる。また、本明細書で用いられる語法および用語は、説明目的のものであり、限定するものとしてみなされるべきでないことが理解されるはずである。
【0026】
このように、当業者は、この開示が基づく概念が、本発明の幾つかの目的を実施するための他の構造、方法およびシステムの設計の基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。従って、特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、このような等価の構成を含むものとしてみなされることが重要である。
【0027】
本発明を特徴付ける新規性のこれらの特性および種々の特性は、特に本開示の一部を形成する添付の特許請求の範囲において示される。本発明、その動作利点およびその使用により得られる具体的な利益のより良い理解のために、本発明を実施するために意図される最良の様態を説明する添付の図面および本発明の好ましい態様を参照するべきである。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の原理の理解を促すため、ここで好ましい態様を参照し、これらを説明するために特定の用語を用いるが、本発明の範囲の制限がそれにより意図されないことは理解されるであろう。本発明の当業者が通常思いつくような、本発明の変更および更なる修飾、ならびに本明細書で説明される本発明の原理のこのような更なる適用は、本明細書においてさらに想定されている。
【0029】
例えば、一つの態様の一部として説明または記載される特性は、他の態様に用いられ更なる態様をもたらし得る。その上、ある種の特性は、言及されていないが同一または同様な機能を果たす同様な装置または特性と交換され得る。従って、このような修飾および変化は本発明の全体内に含まれることが意図される。
【0030】
本発明の一局面は、細胞へのナノ秒パルス電場(「nsPEF」)の適用を含む、細胞に薬剤を導入する方法を対象にする。本明細書で用いられるように、「薬剤」という用語は、薬物(例えば、化学療法剤)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド、遺伝子)、ペプチドおよびポリペプチド(抗体を含む)、ならびに細胞に送達するための他の分子を含む。本明細書で用いられる「nsPEF」は、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの高電場強度を有する、1 nsから1000 ns、好ましくは1 nsから300 nsのナノ秒(「ns」)範囲の電気パルスとして定義される。本明細書で定義されるnsPEF条件は、それらの時間的および電気的な特徴においてだけでなく、特に無傷の細胞および組織に及ぼすそれらの影響において、電気穿孔パルスと明らかに異なる。比較すると、古典的な電気穿孔は、異なるパルス形状(台形の指数関数的減衰)および約0.1 kV/cmから5 kV/cmの強度の電場を有する、マイクロ秒からミリ秒の範囲のパルスを利用する。古典的な電気穿孔パルスの立ち上がり時間は一般的に細胞膜の帯電時間より長いため、電場は細胞内に到達できない。対照的に、nsPEFパルスは、ナノ秒範囲、好ましくは10 nsから300 nsのほぼ方形のパルスであり、外側の細胞膜の帯電時間と比べて短い1 nsから30 nsの範囲の急速な立ち上がり時間、および約1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは約10 kV/cmから350 kV/cmの範囲の高電場を有する。パルスの速い立ち上がり時間および下降時間を除いて、パルス中の電界強度はほぼ一定レベルのままである。周波数領域において、nsPEFは、1000 ns持続時間のパルスの1 MHzから1 nsパルスの1 GHzの範囲のパルス長の逆数により定義されるカットオフ周波数を有する広帯域放射として記載することができる。しかし、低いカットオフ周波数でさえ、スペクトルは、GHz範囲までの主としてパルス立ち上がり時間により決定される高調波の寄与を示す。さらに、古典的な電気穿孔パルスは、ジュール/cc範囲のエネルギー密度および約500 Wの電力を示す。対照的に、nsPEFパルスはミリジュール/cc範囲のエネルギー密度を示し、全エネルギーは10 J(好ましくは1 J未満)および約180 MWの電力を超えない。nsPEFパルスに含まれるエネルギーの約90%は、カットオフ周波数の60%までの周波数範囲で適用される。nsPEFは、ユニークな短い持続時間および迅速な立ち上がり時間に加えて、非常に低いエネルギーで極めて高い電力であるため、格別である。従って、nsPEFパルスは、電気穿孔パルスより数桁高い電場および電力、ならびにかなり低いエネルギー密度で、5から6桁短くしうる。たとえnsPEFパルスが極めて高い電力を示すとしても、それらの持続時間は非常に短いため、エネルギー密度は有意な熱的効果を惹起しない。
【0031】
さらに、nsPEFパルスおよび古典的な電気穿孔パルスは、全く異なる影響を細胞に及ぼす。これらの差異を理解するためには、細胞に及ぼす電場の基本的影響を理解することが必要である。細胞質は導電体であり、包囲する原形質膜は誘電体層である。細胞が2電極間の導電媒質中に置かれ、単極電圧パルスがこれら電極に適用されると、生じる電流は細胞膜で電荷の蓄積を惹起し、その結果として膜をはさんだ電圧を惹起する。膜電圧が臨界値を超えると、電気穿孔として知られる過程である膜貫通孔形成とともに、表面膜の構造変化が起きる(Weaver, J.C., Electroporation of cells and tissues, in: J.D. Bronzino (Ed.), The Biomedical Engineering Handbook, CRC and IEEE press, Boca Raton, FL, 1995, pp.1431-1440)。膜電圧が過剰でなく、パルスの持続時間が限定される場合、膜穿孔(membrane poration)は可逆であり、細胞は生き残る。表面膜を帯電するために必要な時間は、細胞の直径(D)、細胞質(p)および懸濁培地(pc)の抵抗率、ならびに単位面積当たりの表面膜の静電容量(eR)などのパラメータに依存する。理想的な誘電体である表面膜(漏れ電流なし)、10μmの直径、100 ohm/cmの細胞質および培地の抵抗率、ならびに1μFarad/cm2の膜静電容量を備えた球状細胞には、充電時間定数(τc)は75 nsであろう(Cole, K.S. Electric Impedance of Marine Egg Membranes. Trans Farady Soc 23:966, 1937)[τcca/2)cmD/2]。充電時間定数は、適用されたパルス電場強度に細胞内部が暴露される時間の尺度である。生細胞の単純な電気モデルにより、電気パルス持続時間がマイクロ秒未満の範囲(時間領域)に減少すると、電場の相互作用が細胞の部分構造のレベルで起きる可能性が増加し、原形質膜が変化する可能性が減少することが予測される。換言すれば、外膜は、振動の角周波数が充電時間の逆数により定められる値を超過する場合、振動する電場について次第に透過性になる。従って、nsPEFパルスの形態における高い周波数および短い持続時間の使用は、細胞内膜の電気穿孔などの細胞内効果に達成する可能性がより高い。
【0032】
このように、パルス持続時間が減少するにつれ、nsPEFパルスは原形質膜を迂回してミトコンドリアおよび核などの細胞内構造を標的にし、原形質膜は損なわれない。従って、パルス持続時間が十分に短く、電場強度が十分に高い場合、細胞内構造が標的にされるため、nsPEFパルスは電気穿孔パルスの影響と異なる影響を有する(Deng et al., Biophys. J. 84, 2709-2714 (2003); Beebe et al., IEEE Trans. Plasma Sci. 30:1 Part 2, 286-292 (2002); Beebe et al., FASEB J (2003); Vernier et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 310, 286-295 (2003); White et. al., J Biol Chem. 279 (22):22964-72 (2004); Chen et al., Biochem Biophys Res Commun. 317 (2):421-7 (2004))。細胞に及ぼすnsPEFの影響は、細胞の種類、パルスの持続時間および立ち上がり時間、電場強度、ならびにパルス数などの因子に応じて異なる。
【0033】
本発明の一形態において、所望の薬剤は、既知の技法(すなわち、電気穿孔、脂質小胞、ウイルスベクター、リン酸カルシウムまたはデキストランとの共沈殿)を用いて細胞内に導入される。次いで、細胞は、所望する薬剤の細胞核への移行を促進するために、一つまたは複数のnsPEFパルスに暴露される。本発明によると、nsPEFパルスは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の持続時間の範囲であり得る。nsPEFパルスの場の振幅は、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの範囲であり得る。原形質膜に及ぼすnsPEFの影響についての実験により、nsPEFが、細胞を永続的に損傷することなく、原形質膜の孔の一過的な開口を引き起こすことが証明された(Schoenbach, K.H., Beebe, S.J., Buescher, E.S., Intracellular effect of ultrashort electrical pulses, Bioelectromagnetics 22:440-448, 2001)。nsPEFを用いた他の実験により、細胞の膜に結合した細胞小器官が同じ種類のパルスにより開口し得ることが示された(Schoenbach, K.H., Beebe, S.J., Buescher, E.S., Intracellular effect of ultrashort electrical pulses, Bioelectromagnetics 22:440-448, 2001)。理論的に、nsPEFは極めて十分短いため、これらnsPEFでパルスされた細胞の原形質膜は十分に帯電せず、それにより、(古典的な電気穿孔パルスと違って)有意な原形質膜の影響を回避する。代わりに、nsPEFの細胞への適用は、より大きな影響を細胞内膜にもたらす。従って、特定の理論に束縛されることを意図しないが、nsPEFは細胞を損なうことなく核膜孔を一時的に開口することが推論される。従って、所望する薬剤が細胞の原形質膜を既に通過した後、薬剤が核内に拡散できるほど十分な時間が与えられ、nsPEFパルスが適用される場合、nsPEFパルスは核膜の孔を開口することにより核内への薬剤の流動増進を促す。
【0034】
先に記載したように、本明細書で用いられる「薬剤」という用語は、薬物(例えば、化学療法剤)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド)、ならびにペプチドおよびポリペプチド(抗体を含む)を指す。例えば、本発明の方法で使用されるペプチドまたはポリペプチドは、被験体に免疫応答を惹起する目的で、その細胞内に導入される抗原であり得る。または、ポリペプチドは、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、サイトカイン、リンホカイン、成長ホルモン、増殖因子、またはこれらの任意の二つ以上の組み合わせ等のホルモンであり得る。本発明の方法を用いて細胞内に導入され得る更なる例示的ポリペプチドとしては、腫瘍壊死因子、インターロイキン1、2および3、リンホトキシン、マクロファージ活性化因子、遊走阻止因子、コロニー刺激因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン(およびこれらの亜型)などの血液凝固因子およびリンホカインが挙げられる。
【0035】
本明細書で用いられるように、本発明の「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」には、全ての型のDNA、cDNA、およびRNA配列が含まれる。例えば、ポリヌクレオチドは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合DNA、カプセル化DNA、ゲノムDNA、裸のDNA、カプセル化RNA、DNA-RNAハイブリッド、ヌクレオチドポリマー、およびこれらの組み合わせであり得る。このような薬剤は任意の目的で細胞内に導入され得る。例えば、薬剤は、細胞増殖を調節する量、または核酸もしくは核酸によりコードされるタンパク質産物のいずれかに対して免疫応答を誘発する量で使用され得る。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドは発現ベクターなどのDNA構築物でもあり得る。このような発現ベクターは所望の遺伝子産物(例えば、導入される被験体に相同または非相同な遺伝子産物)をコードし得る。治療用ポリペプチド(治療用遺伝子産物をコードするもの)は、被験体の細胞が治療用ポリペプチドでトランスフェクトされるように、調節配列と機能的に連結され得る。そしてこのポリペプチドは、本発明の方法の一局面に従って導入される細胞で発現する。ポリヌクレオチドは、当技術分野において知られるような、本発明の方法に従う薬剤による細胞の形質転換を検出する際に役立つ選択マーカーポリペプチドを、さらにコードし得る。
【0037】
本発明の方法の種々の態様において、薬剤は、細胞の増殖能を改変する「増殖調節剤」であり得る。増殖調節剤は、細胞毒性剤、タンパク質の存在下で毒性である薬剤または毒性になる薬剤、および化学治療剤を含むが、これらに限定されない。「細胞毒性剤」という用語は、特定の細胞を阻害、殺傷、または溶解する能力を有するタンパク質、ペプチドまたは他の分子を指す。細胞毒性剤は、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、サポリンなどのタンパク質を含む。
【0038】
他の態様において、本発明は腫瘍および/または他の組織への薬物送達の増進を促すために用いられ得る。この点において、本発明の方法での使用を意図する薬物は、当技術分野において知られるような抗生剤、および抗腫瘍効果または細胞毒性効果を有する化学治療剤を含む。このような薬物または薬剤は、ブレオマイシン、ダウノマイシン、5-FU、シトシンアラビノシド、コルヒチン、サイトカラシンB、ダウノルビシン、ネオカルシノスタチン、スラミン、ドキソルビシン、カルボプラチン、タキソール、マイトマイシンC、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサート、およびシスプラチンを含む。他の薬物および化学治療剤は当業者には理解されるであろう(例えば、The Merck Indexを参照のこと)。このような薬剤は、被験体に通常は見出されない「外因性」薬剤(例えば、化学的化合物)であってもよく、または被験体に由来する「内因性」薬剤であってもよく、生物学的反応修飾物質(すなわち、サイトカイン、ホルモン)などの天然に生じる適切な薬剤が含まれる。さらなる化学治療剤としては、微生物または植物起源に由来する細胞毒性剤が挙げられる。
【0039】
また、「膜に作用する」薬剤も本発明の方法に従って細胞内に導入され得る。膜に作用する薬剤は、N-アルキルメラミド(alkylmelamide)、およびパラ-クロロ安息香酸水銀など、主に細胞膜を損傷することにより作用する化学治療剤の一部である。または、この組成物は、アジドデオキシチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、ガンシクロビル、アシクロビル、ビダラビン、リバビリンなどのデオキシリボヌクレオチド類似体、または当技術分野における平均的な技量を有する当業者に知られている任意の化学治療剤を含み得る。
【0040】
更に、他の態様において、本発明の方法および装置は、ワクチンを投与し、その効能を増強するために用いられ得る。従って、本発明の態様において、薬剤はワクチンであり得る。このようなワクチンは、不活性化病原菌、組換えまたは天然のサブユニット、および生弱毒化微生物または生組換え微生物からなり得る。このワクチンはポリヌクレオチドまたはタンパク質成分も含み得る。
【0041】
「裸の」DNA、複合DNA、またはカプセル化DNAを用いて防御免疫応答を誘導する方法であるDNA免疫が、米国特許第5,589,466号に示されている。DNA免疫は、例えば規定された微生物または細胞の抗原、および例えばサイトカイン(例えば、ILおよびIFN)の産生をコードするベクターベースのDNAまたは非ベクターDNAの直接的なインビボ投与を伴う。宿主自体の細胞におけるこれら抗原のデノボ産生が抗体の誘発および細胞性免疫応答をもたらし、この応答は攻撃に対する防御を提供し、さらに免疫することなく長期間持続する。この技法のユニークの利点は、生きた感染物質の非経口投与に伴う安全性および安定性の懸念なしに生弱毒化ワクチンの効果を模倣できることである。これらの利点のため、例えば、最大の抗原産生、および結果として最大の免疫応答をもたらす裸のDNAのインビボ送達系を精緻化することに、かなりの研究努力が注力されてきた。このような系はリポソームおよびDNA送達用の他のカプセル化手段も含む。
【0042】
このように、本発明に従って、DNAまたはRNA分子が防御免疫応答を誘起するためにワクチンとして導入され得る。発現される遺伝子産物(すなわち活性剤)をコードすることに加えて、前記分子は、ワクチン接種された被験体の細胞で発現を誘導できるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む制御要素と機能的に連結された開始シグナルおよび終止シグナルも含み得る。ワクチンポリヌクレオチドは任意で、本明細書に記載の薬学的に許容される担体に含まれ得る。
【0043】
本明細書で用いられるように、「遺伝子産物」という用語は、処理細胞内でのポリヌクレオチドの発現に起因するタンパク質またはペプチドを指す。遺伝子産物は、例えば、病原菌、または癌細胞もしくは免疫が必要な自己免疫疾患に関与する細胞などの望ましくない細胞型に由来するタンパク質と少なくとも一つのエピトープを共有する免疫原性のタンパク質またはペプチドであり得る。このようなタンパク質およびペプチドは抗原であって、使用する遺伝子ワクチンの型に応じて、病原菌に関連するタンパク質、過剰増殖細胞に関連するタンパク質、または自己免疫疾患に関連するタンパク質のいずれかとエピトープを共有する。抗原エピトープに対する免疫応答は、抗原エピトープが関連する特定の感染または疾患から被験体を保護する。例えば、病原菌に関連する遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、病原菌による感染から被験体を保護する免疫応答を誘発するために使用できる。
【0044】
同様に、例えば腫瘍関連タンパク質などの過剰増殖疾患に関連する抗原エピトープを含む遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、過剰増殖する細胞に対して免疫応答を誘発するために用いられ得る。自己免疫疾患に関与するT細胞受容体または抗体に関連する遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質の天然形態が産生されている細胞を除去することにより、自己免疫疾患を抑えようとする免疫応答を誘発するために用いられ得る。本発明に従って活性剤として細胞内に導入される抗原性遺伝子産物は、病原菌に関連するタンパク質、過剰増殖する細胞に関連するタンパク質、自己免疫疾患に関連するタンパク質、または当技術分野における平均的な技量を有する当業者に知られる任意の他のタンパク質もしくはペプチドのいずれかであり得る。
【0045】
従って、本発明の一形態において、所望のワクチンはまず既知の技法を用いて細胞内に導入される。例えば、ワクチンは、まず細胞内に導入された後、核内へのワクチン分子の侵入を促すために一つまたは複数のnsPEFパルスに暴露され、それによりワクチン分子により産生される抗原の分泌を刺激する。
【0046】
さらに、細胞における内因性遺伝子などの遺伝子の発現を調節するポリヌクレオチドを被験体の細胞内に導入することが望ましいかもしれない。「調節」という用語は、遺伝子の発現の抑制または増加を想定する。細胞増殖疾患が遺伝子の発現と関連する場合、翻訳レベルで遺伝子発現を妨げる核酸配列が遺伝子発現を調節するために用いられ得る。このアプローチは、mRNAをアンチセンス核酸もしくは三重鎖形成剤(triplex agent)で遮蔽することにより、あるいはmRNAをリボザイムで切断することにより、特定のmRNAの転写もしくは翻訳を遮断するために、アンチセンス核酸配列、リボザイム、または三重鎖形成剤など、発現を妨害できる活性剤を被験体の細胞内に導入する。
【0047】
アンチセンス核酸配列は、特定のmRNA分子の少なくとも一部に相補的なDNAまたはRNAの分子である。細胞において、アンチセンス核酸は、対応するmRNAにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖mRNAを翻訳しないため、アンチセンス核酸はmRNAの翻訳を妨げる。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが、容易に合成され、標的細胞に導入された際に問題を引き起こす可能性が高分子より低いため、好ましい。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するためのアンチセンス方法の使用は当技術分野において周知である。
【0048】
転写を停頓させるための短いオリゴヌクレオチド配列(すなわち、「三重鎖形成剤」)の使用は、オリゴマーが二重らせんDNAに巻きつき三重鎖らせんを形成するため、三重鎖戦略として知られる。従って、このような三重鎖形成剤は選択遺伝子の特異部位を認識するよう設計され得る(Maher, et al., Antisense Res. and Dev., 1(3):227, 1991; Helene, C., Anticancer Drug Design, 6(6):569, 1991)。
【0049】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに類似する様式で他の一本鎖RNAを特異的に切断する能力を所有するRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の修飾を通して、RNA分子中の特異的なヌクレオチド配列を認識し、それを切断する分子を設計することが可能である(Cech, J. Amer. Med. Assn., 260:3030, 1988)。このアプローチの主な利点は、それらが配列特異的であるため、特定配列を有するmRNAのみが不活性化されることである。二つの基本的な型のリボザイム、すなわちテトラヒメナ型(Hasselhoff, Nature, 334:585, 1988)および「ハンマーヘッド」型が存在する。テトラヒメナ型リボザイムは長さ4塩基の配列を認識する一方、「ハンマーヘッド」型リボザイムは長さ11〜18塩基の塩基配列を認識する。認識配列が長くなるほど、この配列が標的mRNA種のみに現れる可能性が高くなる。よって、特定のmRNA種を不活性化するためにはテトラヒメナ型リボザイムよりハンマーヘッド型リボザイムを使用することが好ましく、本発明の一局面の活性剤として、18塩基の認識配列が、それよりも短い認識配列よりも好ましい。
【0050】
本発明の方法に従って導入される薬剤はまた、治療用のペプチドまたはポリペプチドであり得る。例えば、免疫調節剤および他の生物学的反応修飾物質が、細胞に取り込まれるように投与され得る。「生物学的反応修飾物質」という用語は、免疫応答を改変する際に関与する物質を包含することを意味する。免疫応答修飾物質の例はリンホカインなどの化合物を含む。リンホカインは、腫瘍壊死因子、インターロイキン1、2および3、リンホトキシン、マクロファージ活性化因子、遊走阻止因子、コロニー刺激因子、αインターフェロン、βインターフェロン、およびγインターフェロン、それらの亜型などを含む。
【0051】
抗血管新生化合物、例えば因子VIIIまたは因子IXを含む代謝酵素およびタンパク質をコードするポリヌクレオチドも含まれる。本発明の薬剤はまた、抗体であり得る。本明細書で用いられる「抗体」という用語は、無傷の分子、ならびにFabおよびF(ab’)2などのそれらの断片を含むことを意味する。
【0052】
本発明はまた、特定遺伝子またはその欠如により媒介される細胞増殖障害または免疫障害の治療のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、障害を有する細胞内に特定のセンスポリヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチドを導入することにより、その治療効果を達成する。細胞内へのポリヌクレオチドの導入は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクターを用いて達成され得る。または、ポリヌクレオチドは、例えば「裸の」DNAとして送達され得る。細胞内へポリヌクレオチドを「導入する」ことは、細胞内に外因性核酸分子を挿入する任意の方法を包含し、標的細胞の形質導入、トランスフェクション、マイクロインジェクション、およびウイルス感染を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で教示される遺伝子治療に利用できる種々のウイルスベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスを含む。好ましくは、レトロウイルスベクターはマウスまたは鳥類のレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれるが、これらに限定されない。被験体がヒトである場合、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)などのベクターが利用できる。更なる多くのレトロウイルスベクターが複数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターは全て、選択マーカー遺伝子を移入または組み込むことができ、形質導入細胞を同定し、作製することができる。
【0054】
本発明の他の局面において、ポリヌクレオチドは、リン酸カルシウムおよびデキストランの共沈殿、原形質膜と融合するための脂質小胞へのポリヌクレオチドの取り込み、ならびに原形質膜に「孔」を形成するためにパルス電場を用いる電気透過化または電気穿孔により、細胞内に導入され得る。理想としては、遺伝子送達系の選択は、効率的な遺伝子導入の方針を留意して、細胞特異的な様式で副作用なしに適切な遺伝子発現のレベルで当業者により為される。
【0055】
細胞内に導入される薬剤は、放射性標識または蛍光マーカーなどの検出可能なマーカーも含み得る。または、この組成物はPsoralin C2などの光活性修飾を含み得る。さらにこの組成物は、ブチルアミデート、ピペラジデート、およびモルホリデートなどのホスホラミデート結合を含み得る。またはこの組成物は、ホスホチオレート結合またはリボ核酸を含み得る。これらの結合は、インビボ分解に対するオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの脆弱性を低減する。
【0056】
他の局面において、本発明の薬剤は、薬学的薬剤または薬学的に活性な薬剤であり得る。本明細書で用いられる「薬学的薬剤」または「薬学的に活性な薬剤」という用語は、ヒトおよび動物の両方を含む被験体に投与された場合に、治療に有益な薬理反応を生じる任意の物質を包含する。所望であれば、一つよりも多くの薬学的に活性な物質を、本発明の方法で用いられる薬学的組成物に含め得る。
【0057】
薬学的に活性な薬剤は、分子錯体または薬学的に許容される塩などの様々な形態で利用され得る。このような塩の代表例は、コハク酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、金属塩(例えば、アルカリまたはアルカリ土類)、アンモニウム塩またはアミン塩(例えば、第四級アンモニウム)等である。さらに、所望の保持および放出特性を有するが、生理学的pHまたは酵素によりインビボで容易に加水分解されるエステル、アミド、およびエーテルなどの活性物質の誘導体も利用できる。
【0058】
本明細書で用いられるように、「治療に有効な量」または「有効量」という用語は、生物学的に活性なまたは薬学的に活性な物質の量が、所望の薬理効果を誘導するのに十分な量および活性であることを意味する。この物質の量は、特定の活性物質の効力、各被験体の年齢、体重、および反応、ならびに被験体の状態または症状の性質および重症度によってかなり変動し得る。従って、被験体の細胞に導入される活性剤の量に上下の臨界値は存在しないが、細胞毒性または組織損傷など、前記細胞またはこのような細胞を含む組織に過度の副作用を惹起するほど大量であるべきではない。細胞の形質転換に必要な量は細胞の種類および組織によって変動し、本明細書の教示を用いて当技術分野の通常の技量を有する当業者により容易に決定できる。本発明の方法の実施において使用されるべき必要量は、当業者により容易に決定され得る。
【0059】
本発明の方法の一態様において、細胞内に導入される遺伝子産物をコードする核酸配列などの活性剤の量は、「形質転換量」である。形質転換量は、有糸分裂もしくは遺伝子発現などの細胞機能を改変するため、または核酸配列によりコードされる遺伝子産物の少なくとも何らかの発現を惹起するために有効な活性剤の量である。他の態様において、薬剤は、「免疫原性」量、「免疫調節」量、または「治療量」で存在し得る。免疫原性量は、免疫応答を誘発するために有効な活性剤の量である。免疫調節量は、何らかの意味で免疫応答を改変するために有効な活性剤の量である。治療量は、例えば特定の障害を治療するために望ましい免疫応答または生体反応を誘起するのに有効な活性剤の量である。
【0060】
皮膚の天然の障壁層を横切る活性剤の導入は、活性剤を放出制御媒体で、または脂質と混合して封入することにより増強され得る。活性剤の調製物または製剤に関して本明細書で用いられるように、「放出制御」という用語は、調製物または製剤が、大部分の活性物質を周囲の媒体に放出するために少なくとも1時間、例えば約1〜24時間、または更に長時間を要することを意味する。
【0061】
電気的移入に適する好ましい放出制御媒体はコロイド分散系であり、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および水中油乳剤、ミセル、混合ミセル、リポソーム等を含む脂質系システムが含まれる。例えば一態様において、マイクロインジェクションのために活性剤を含めるために用いられる放出制御媒体は、生分解性マイクロスフェアである。薬学的に活性な薬剤がコアセルベートの被覆により封入されるマイクロスフェアは、「マイクロカプセル」と呼ばれる。
【0062】
通常、陽イオン電荷をもち得るリポソームは、インビトロおよびインビボの送達媒体として有用な人工膜小胞である。サイズが約0.2μmから4.0μmに及ぶ大きな単層小胞(LUV)は、DNAなどの巨大な高分子を含む水性緩衝液の実質的な割合を封入できることが示されている。
【0063】
リポソームの組成は通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、通常リン脂質、特に高相転移温度のリン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存し、本発明の方法の電気的移入に供される活性剤を封入するための適切な小胞になる。
【0064】
リポソーム産生に役立つ脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシドなどが挙げられる。脂質部分が14〜18の炭素原子、特に16〜18の炭素原子を含み、且つ飽和しているジアシルホスファチジルグリセロールが特に有用である。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイル-ホス-ファチジルコリンが挙げられる。
【0065】
電気的移入に適する調製物は、薬剤を「薬学的に許容される担体」とともに含み得る。このような担体は当技術分野において公知であり、水性または非水性の滅菌溶液、懸濁液および乳濁液を含む。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液、または懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝媒体が含まれる。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー、不揮発性油などが挙げられる。細胞間または細胞内の注射に適する媒体としては、例えばリンガーデキストロースに基づくもの等の液体および栄養補給剤、電解質補給剤も挙げられる。保存剤および他の添加剤も存在し得る。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスを使用することもできる。
【0066】
当業者には、薬剤が、真核細胞および原核細胞を含む任意の望ましい細胞または細胞型に導入され得ることが理解されるであろう。非限定的な例として、脂肪細胞、骨細胞、血管細胞、筋細胞、軟骨細胞、成体、胎児および胚の幹細胞、造血細胞、肺細胞、気道細胞、肝細胞、腸細胞、皮膚細胞、神経細胞、および細菌細胞が挙げられる。本方法は、腺癌、扁平上皮癌、胸、膀胱、結腸、頭、頸、前立腺などを含む器官の癌腫を含む癌腫などの癌;軟骨肉腫、メラノ肉腫(melanosarcoma)などを含む肉腫;および急性リンパ腫白血病(acute lymphomatic leukemia)、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫などを含む白血病およびリンパ腫を含む、癌細胞に薬剤を導入するためにも用いられ得る。本方法は、自己免疫疾患、嚢胞性線維症、宿主防御の遺伝病、炭水化物代謝の遺伝障害、および脂質代謝の遺伝障害を治療するために、細胞内に薬剤を導入するためにも用いられ得る。
【0067】
一つの態様において、本発明は、nsPEFを用いて細胞の遺伝子発現を増強する方法を対象とする。本明細書で用いられる「遺伝子発現」は、遺伝子にコードされる情報が、タンパク質、ペプチド、またはRNAの何らかの形態に変換される過程として定義される。本発明の一形態において、細胞は、細胞内に導入されるポリヌクレオチドの存在下に置かれる。ポリヌクレオチドは、プラスミドDNAなど、細胞内への導入に適する形態にある。細胞およびポリヌクレオチドは、ミリ秒範囲の比較的長いパルスに暴露される。これらの長いパルスは細胞の外膜の開口を惹起することにより、細胞質内へのポリヌクレオチドの移行を促進する。次いで、細胞はnsPEFパルスに暴露され、核内へのポリヌクレオチドの移行が促進される。長パルスでは、場の振幅は低く、何百/数千のV/cmのオーダーである。本発明に従って、これらの長パルスは、0.001ミリ秒から30ミリ秒、好ましくは0.1ミリ秒から20ミリ秒の持続時間の範囲であり得る。長パルスの場の振幅は、0.1 kV/cmから5 kV/cm、好ましくは0.1 kV/cmから1 kV/cmの範囲であり得る。長パルスの適用中、遊離のポリヌクレオチドは原形質膜に可逆的に結合し、電気透過化された膜への可逆的な挿入を開始する。ポリヌクレオチドは、パルス中のみでなく、その後のかなりの時間でも細胞に移行する(Karl H. Schoenbach, Sunao Katsuki, Robert H. Stark, Stephen Beebe, and Stephen Buescher, 「Bioelectrics - New Applications for Pulsed Power Technology」 IEEE Trans. Plasma Science 30, 293 (2002))。本発明に従って、nsPEFパルスは、1ナノ秒から1000ナノ秒、好ましくは1ナノ秒から300ナノ秒の持続時間の範囲であり得る。nsPEFパルスの場の振幅は、1 kV/cmから1000 kV/cm、好ましくは10 kV/cmから350 kV/cmの範囲であり得る。nsPEFパルスの適用は遺伝子発現の増強をもたらす。
【0068】
遺伝子発現が起きるためには、遺伝子が核に侵入することが必要である。長パルスでは、この過程は核膜を通過した拡散により決定されるようである。従って、核膜の孔サイズの増加はいずれも、核内への遺伝子の移行速度の増加をもたらす。これらのパルスが原形質膜の電気透過化後に適用され、遺伝子が核内へ拡散するのに十分な時間が与えられると、nsPEFパルスは核膜を開口することにより核内への遺伝子の流動を増強できる。または、nsPEFが、増強した転写効率および/もしくは増強したRNA転写などの他の不明確な機構、ならびに/またはカルシウム動員に関するもしくは関しない機構による増強したタンパク質の翻訳を通して遺伝子の発現を促進することが可能である。機構にかかわらず、外原形質膜を開口するために電気透過化を用い、続いてnsPEFを用いた初期研究は、HL-60細胞において緑色蛍光タンパク質(「GFP」)レポーター遺伝子の発現の増加をもたらした。これらの実験の方法および結果を以下に述べる。
【0069】
他の態様において、nsPEFパルスが遺伝子発現を増強するために単独で用いられ得る。nsPEFは、転写効率の増強、および/またはRNA転写の増強、および/またはタンパク質翻訳の増強をもたらし得るため、細胞の遺伝子発現を増強するためにnsPEFのみを細胞に適用し得る。本発明により増強される単数または複数の遺伝子は細胞自身のものであってもよく、必ずしも細胞にトランスフェクトされる必要はない。他の態様において、nsPEFパルスは、脂質移入、リン酸カルシウムまたはデキストランとのDNA沈殿、およびウイルスベクターを含む、上述の一般に知られる任意の方法を用いてDNAで既にトランスフェクトされた細胞における遺伝子発現を増強するために用いられ得る。トランスフェクション後、nsPEFパルスは細胞の核内へのDNAの輸送をさらに促進する。または、nsPEFは転写および/または翻訳の機構を活性化することにより遺伝子発現を増強し得る。
【0070】
nsPEFパルス発生器
高周波細胞内効果の適用は、表面膜の帯電時間に匹敵するまたは更に低い時間尺度で大きな細胞内電場を生成するという問題により制限されていた。細胞内膜の電気穿孔(細胞内電気操作、「IEM」)が1 Vのオーダーでこのような膜をわたる電位差を要すると仮定する場合、1μmの特有な寸法を有する細胞内構造の穿孔にkV/cmのオーダーの電場が必要であろう。生体電気実験で用いられてきた単極パルス発生器の大半はマイクロ秒からミリ秒の持続時間のパルスを生じ、立ち上がり時間が非常に遅いため、測定可能な細胞内効果を生成できない。しかしながら、米国特許第6,326,177号に記載されているように、本発明者らは、細胞の懸濁液または組織内でMV/cm近い電場を生成するのに適した電圧振幅を有するナノ秒範囲の電気パルスを発生できる高電圧短持続時間の電気パルスを生成するための技術を開発した(Mankowski, J., Kristiansen, M. A review of Short Pulse Generator Technology. IEEE Trans Plasma Science 28:102-108, 2000)。ナノ秒持続時間のため、これらのパルスにより細胞/組織に転移する平均エネルギーは理論的に無視できる程度であり、熱的効果を伴わずに電気効果をもたらす。
【0071】
さらに、上述した遺伝子送達の好ましい態様は、古典的な電気穿孔パルス(原形質膜を開口するため)およびnsPEFパルス(核を開口するため)の両方を提供できるパルス発生器を利用する。従って、一つの態様において本発明は、同じ装置で連続して二つの異なるパルス型を伝送できるパルス発生器を対象とする。このパルス発生器はまた、パルスの持続時間、電場、パルス間の間隔、およびパルスのオーダーを変更でき得る。一つのパルス型は、マイクロ秒またはミリ秒の範囲(1マイクロ秒から20ミリ秒)で古典的な電気穿孔パルスの範囲の持続時間を有する。このようなパルス型は本明細書において長パルスとして定義される。第二の型のパルスはナノ秒範囲(1から300ナノ秒)で、本明細書において短パルスとして定義される持続時間を有する。各セットにおける長パルスと短パルスの時間は0.1秒から数分または数時間で変動し得る。長パルスまたは短パルスのいずれかは他方に先行し得る。セット中の長パルスおよび/または短パルスの電場強度(kV/cm)は変動し得る。
【0072】
従って本発明の装置は、一つの装置でこれらの大きさの異なる二つのパルスを伝送できる。パルス間の最適時間は、外膜から核への薬剤の拡散により決定され、ms範囲またはより長いことが予期される。拡散時間の決定は当業者の能力内にある。二元パルス発生器は、種々の細胞または組織への薬剤の移行システムを最適化するため、振幅および持続時間、ならびにパルス伝送間の時間差が異なり得るパルスを伝送し得る。伝送は、例えば組織治療用のキュベット(懸濁細胞用)または二つ以上の金属電極であり得る。他の伝送方法、例えばパルスのインビボ伝送も、本発明により想定される。伝送の他の代替方法は、電極もしくはキュベットの代わりにまたはそれらに加えて、パルスを伝送するために一つまたは複数のアンテナを使用することである。一つまたは複数のアンテナは、パルスを伝送するために独立してまたは電極もしくはキュベットと併せて使用され得る。アンテナは例えば、望ましい持続時間の単一パルス、例えば超短波パルスを創出するために複数の非対称単極パルスを重ね合わせて用いられる広帯域アンテナであり得る。
【0073】
図7は、本発明の一つまたは複数の態様に従うパルス発生器100の配置を図解する回路図である。図7のパルス発生器100は、同一装置内で連続して一連の複数のパルス型を伝送するよう設計されている。本発明の一つまたは複数の態様に従って、パルス発生器100は二つの異なるパルス型を伝送するよう構成され得る。従って、このような態様のパルス発生器100は二元パルス発生器100とみなされ得る。本発明の他の態様により、パルス発生器100は必要であれば、二つより多くのパルス型を伝送し得る。パルス発生器100は、以下でより詳細に論じられるように、マイクロ秒またはミリ秒の範囲の持続時間を有し且つ低電圧を有する第一パルス型を伝送する。これは長パルスとみなされる。例えば、第一パルス型は1マイクロ秒から20ミリ秒に及ぶ持続時間を有し得る。この範囲は特定の適用に応じて30パーセント(30%)まで任意に増減し得る。第一パルス型は一般に、古典的な電気穿孔パルスと同じ範囲にある。第二パルス型は短パルスとみなされ、第一パルス型より短い持続時間を有する。第二パルスはまた、第一パルスよりも高い電圧を有する。例えば、第一パルスは0.1 kVから4 kVの範囲の低い電圧値を有し得る一方、第二パルスは10 kVから40 kVの範囲の高い電圧値を有し得るが、本発明の一つまたは複数の態様は50 kVまでの範囲に及ぶ値を有し得る。例えば、第二パルス型はナノ秒範囲(例えば、1ナノ秒から1000ナノ秒)の持続時間を有し得る。任意で、第二パルス型の長さ(またはパルス)も、例えば30パーセント(30%)まで増減し得る。一時停止(すなわち、パルス型間の時間)が長パルスおよび短パルスを分離するために与えられる。本発明の一つまたは複数の態様に従って、各セットのパルス間の一時停止は0.1秒から数分または数時間で変動し得る。長パルスまたは短パルスのいずれかは他方に先行できる。更に、任意の数の長パルスまたは短パルスのいずれかが適用できる。その上、セット中の長パルスおよび/または短パルスの電場強度(kV/cm)は、種々の適用の必要に応じて変動し得る。
【0074】
本発明の少なくとも一つの態様に従うと、パルス間の時間は、外膜から核への薬剤の拡散により決定され得る。通常、この時間間隔はミリ秒範囲またはより長いことが予期されるが、拡散の物理的測定が一時停止の長さを決定する際により良い指針を与えるだろう。二元パルス発生器100は変わり得る振幅および持続時間を有するパルスを伝送し得る。パルスの伝送間の時間差も、異なる細胞または組織への遺伝子移入用システムを構成するために変動し得る。パルスは、例えば懸濁細胞用のキュベット、組織処置用の二つ以上の金属電極などを含む種々の方法で伝送され得る。他の伝送方法、例えばパルスのインビボ伝送等も、本発明に想定され得る。伝送の他の代替方法は、電極もしくはキュベットの代わりにまたはそれに加えて、パルスを伝送するために一つまたは複数のアンテナ(示していない)を使用することである。アンテナはパルスを伝送するために独立して、または電極もしくはキュベットと併せて使用され得る。本発明の一つまたは複数の態様に従って、アンテナは例えば、望ましい持続時間の単一パルスを創出するために複数の非対称単極パルスを重ね合わせて用いられる広帯域アンテナであり得る。この種類のアンテナ配置は短パルスを伝送するために用いられ得る。
【0075】
図7に言及すると、長パルスは、図の左上部に示された、全体に渡って110という数字で示される第一低電圧回路で生成される。例えば1 mFのオーダーの静電容量を有するコンデンサ112は、高圧電源116(HV)を用いて充電レジスタ114により充電される。図7は1 mFの静電容量を示すが、本発明の他の態様は、.1 mFから10 mFまでの範囲に及ぶ静電容量を有するコンデンサを利用できる。様々な他の静電容量の定格(rating)が、特定の適用に応じてコンデンサ112に用いられ得る。レジスタ114は、コンデンサの選択に応じて、例えば10 kOhmから10 MOhmの抵抗を有し得る。好ましくはレジスタ114は、1 MOhmから300 kOhmに定格化される。コンデンサ112は続いて、その抵抗(RL)により図示されるロード118に放電される。ロード118は、例えば懸濁細胞を充填したキュベット、電極間の組織、またはパルスのインビトロ伝送を可能にする装置であり得る。ロード抵抗RLは全般的に、Z=10 Ohmのオーダーであると考えられ、5 Ohmから100 Ohmの範囲であり得る。これはこのような市販のキュベットの増殖培地または緩衝液における細胞の典型的な値を表す。しかしながら、ロード抵抗は、処理される生体試料がどのように提示されるかによって、またロードを伝送するために用いられる装置によって変動し得る。
【0076】
放電は、例えば絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(「IGBT」)などのトランジスタ120、または低順電圧定格を有する同様な構成要素により制御できる。このようなトランジスタ120は一般に、熱損傷なしに比較的長い時間電流を許容できる。コンデンサ112から放電される電圧および電流をトランジスタ120が操作できる限り、他の型のトランジスタ120(例えば、MOSFET)も使用できる。このようなトランジスタ120の立ち上がり時間および下降時間は、50 nsから100 nsの範囲であり得る。図に示す特定のトランジスタ120モジュールのホールドオフ電圧は、V=1.7 kVである。1 cmの電極間隙を有するキュベットでは、E=1.7 kV/cmの電場を生成することが可能である。間隙距離dが減少する場合、電場は高くなり得る(E=V/d)。スイッチとして作用するトランジスタ120の開閉は、制御システム122(または制御回路)により中央制御される。制御回路は、例えば、遅延発生器、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、コンピュータ制御回路などであり得る。
【0077】
第二パルス型は、図の左下部に示された、全体に渡って124という数字で示される第二高電圧回路で生成される。第二回路124は、例えば、図7に示されるようなブルムレイン(Blumlein)機器構成で設計され得る。二つの伝送線126または二つの平行平板は、コンデンサと同様のエネルギー貯蔵庫として用いられ得る。伝送線126は、dc電源130(HV)により、例えば50 kVの高電圧に充電レジスタ128を通じて充電される。レジスタ128は、例えば10 MOhmから400 MOhmの抵抗を有し得る。本発明の一つまたは複数の態様に従って、伝送線126の長さは短パルスの持続時間を決定する。持続時間は、伝送線126の長さを伝送線126の誘電体中の光速で割ったものとして算出できる。伝送線126のインピーダンスは、例えばロード抵抗の半分であり得る。例えば10 Ohmのロードの場合、インピーダンスは5 Ohmである。ブルムレイン機器構成の二重線(dual-line)構造は、ロードへのフル充電の伝送を可能にする。例えば、一本のケーブルのみが伝送線126として使用される場合、電源から得る電圧の半分のみが適用される。従って、ロード抵抗を超えて50 kVを伝送するために、伝送線126は100 kVまで充電されることが必要であり、技術的に困難であり得る。二重線伝送線126の使用は、ロードへの最大の充電伝送を可能にする。他のどの二重線型伝送線126もブルムレイン機器構成の代わりに使用され得る。
【0078】
第二回路124は、例えばスパークギャップ:約1ナノ秒で閉鎖するよう設計された高速閉鎖スイッチであり得る閉鎖スイッチ132を含み、I=V/Zの高電流を送電できる。例えば、50 kVの電圧および10 Ohmのロード抵抗では、電流は5000 Aである。閉鎖スイッチ132は、第一回路110と同じロード118に短い高電圧パルスを伝送する。先に論じたように、このようなロード118は、例えばキュベット、組織などであり得る。閉鎖スイッチ132はトリガーユニット134により制御され、次にこのユニットが制御回路122により制御される。先に論じたように、制御回路122は、例えば遅延発生器、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、コンピュータ制御回路などであり得る。また、高電圧のパルスに耐えられる任意のスイッチを、閉鎖スイッチ132の代わりに使用できる。
【0079】
高電圧パルスが第一回路のトランジスタを損傷および/または破損するのを防ぐために、本発明の少なくとも一つの態様は、長パルスが適用された際の二つの回路(110、124)の分離を提供する。これは、1〜50ミリ秒の範囲の時間内で開口でき、約50 kVを維持できる磁気スイッチ136を用いて為され得る。この開口時間は、長パルスと短パルスの間の最短時間である。トリガーユニット138は磁気スイッチ136を作動するために提供される。トリガーユニット138は、例えば制御回路122により制御できる。本発明の一つまたは複数の態様に従って、高電圧を確実に維持できる任意のスイッチが磁気スイッチの代わりに使用できる(例えば、真空スイッチ)。さらに、パルスの高電圧に耐えられる任意の電気スイッチが機械型スイッチの代わりに使用できる。
【0080】
図7で図解されるシステムは、可変の持続時間および振幅を有する二つのパルスの生成を可能にする。長パルスと短パルスの間の時間も変動し得る。それぞれの種類のパルスを一つ提供する代わりに、本発明のパルス発生器はまた、複数のパルス、例えば長パルスと短パルスを両方とも提供できる。本発明の少なくとも一つの態様に従って、パルスは、制御回路122により受信されるプログラミング指示に基づいて制御され得る。本発明の他の態様は、パルス伝送を制御する異なる方法を提供できる。
【0081】
パルス発生器100は、図7に示される制御回路122からの一連の指示により制御され得る。コンデンサ112は、最初にその静電容量定格により決定される電圧まで充電できる。この電圧は高圧電源116を通して1.7 kVまで変動し得る。時点t1で、トランジスタ120は閉鎖するよう作動される。この時間中、コンデンサ112は放電される。磁気スイッチ136も閉鎖される場合、電流はロード118(RL)を通じて流れる。長パルスはコンデンサ112の値に応じて指数関数的に下降するか、または方形波であり得る。例えば、方形波はより高い静電容量値に使用され得る。
【0082】
時点t2で、長パルスは、コンデンサ112の放電を停止するようトランジスタ120を作動することにより終結される。従って、時間間隔(t2〜t1)は長パルスの持続時間を決定する。パルスの振幅は、充電回路、電源、コンデンサ、および充電レジスタを介するものを含む、種々の手段により制御され得る。時点t3で、磁気スイッチ136に連結されたトリガーユニット138が作動され、磁気スイッチ136を開口する。この作用は、第一回路110(低電圧)を第二回路124(高電圧)から分離する。時点t4で、トリガーユニット134が閉鎖(またはスパークギャップ)スイッチ132を作動する。閉鎖スイッチ132はブルムレイン伝送線126のロード118への放電を惹起する。なお、伝送線126は放電前に、電源130および充電レジスタ128により充電される。この過程は、上述の第一回路110のコンデンサ112の充電と同様である。閉鎖スイッチ132の超短波閉鎖時間はロード118への短い高電圧パルスの伝送を可能にする。
【0083】
パルス伝送のサイクルは所望の回数繰り返すことができる。更に、放電されるパルスの順序は、例えば短パルスが最初に伝送されるように変更することができる。パルス伝送のこの代替オーダーは、磁気スイッチ136が最初に開口位置にあることが必要なだけである。いずれにせよ、先に述べたように、本発明の種々の態様により、任意の数のパルスを本発明のパルス発生器を用いて任意の順序で伝送できる(すなわち、二短、一長;二長、一短;三短、一長;二長、二短など)。
【0084】
多くの適用の一つに従って、本発明の様々な態様が細胞内への薬剤の導入方法に適用され得る。本発明のパルス発生器100は、パルスセット内の長パルス型および短パルス型のいずれかまたは両方を用いて、十分に調節可能なパルス条件を提供するために用いられ得る。これらの条件の一部としては、例えば、順序(すなわち、最初または次に短パルス)、持続時間、電場強度、反復数、および/またはセット内のパルス型間の時間が挙げられる。本発明の一つまたは複数の態様では、古典的な電気穿孔因子に基づいて、パルス発生器100のトランスフェクション/発現効率を増強するために、これらの因子(または条件)の少なくとも幾つかを変更することが可能である。最適なトランスフェクション/発現効率の条件は、細胞型によって異なり、過度の実験をすることなく本発明の分野の当業者により容易に決定できる。
【0085】
前記の詳細な記載は、多数の具体的な詳細を含む。このような詳細は例示目的のために含まれているだけであり、本発明を限定すると理解されるべきではない。加えて、一つの態様の特性は、本発明の他の態様の特性と組み合わされ得る。特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が為され得る。
【0086】
一例として、本発明のシステムは、汎用コンピュータ、特別にプログラムされた(特殊用途)コンピュータ、制御回路、制御器などを含み得る。利用者は、種々のシステム、例えばパソコンもしくはPDAを用いて、および/またはインターネット、イントラネット、広域ネットワーク(WAN)などのネットワークでデータ(date)を送信するための種々のプロトコルを遠隔で用いて、パルス発生器と交信し、発生器への入力を提供し得る。さらに、プロセシングは一つまたは複数のコンピュータシステムもしくはプロセッサでソフトウェアプログラムにより制御でき、またはハードウェアで部分的にまたは完全に実行され得る。
【0087】
ユーザーインターフェースはHTML表示形式で開発され得る。HTMLは例示目的に用いるが、情報を表示するため、取扱説明書を得るため、およびユーザーインターフェースを提供するために、代替技術(例えば、XML)を利用することが可能である。本発明とともに用いられるシステムは、適切におよび/または必要に応じて、ハードウェアおよびソフトウェアのサーバー、データベースエンジン、および/または他のコンテンツプロバイダーを含む種々の構成要素の統合に依存し得る。この機器構成は好ましくはネットワークに基づくものであり得、少なくとも1ユーザーとの主要インターフェースとしてインターネットを使用する。
【0088】
本発明の一つまたは複数の態様に従うシステムは、一つまたは複数のデータベースに収集された情報および/または情報の索引を保存し得る。適切なデータベースは、標準サーバー、例えばsmall Sun(商標)Sparc(商標)または他の遠隔地で保持され得る。現在利用できる、もしくは将来開発される任意のコンピュータソフトウェア言語、および/またはハードウェア構成要素が、本発明の種々の態様で利用できる。例えば、上述した機能性の少なくとも幾つかは、用いられるプロセッサの観点から適切なVisual Basic、C、C++、C#、または任意のアセンブリ言語を用いて実行され得る。これはJavaなどの解釈環境で書かれてもよく、様々なユーザーへ複数の送信先に送信され得る。
【0089】
本発明の多数の特性および利点は詳細な説明から明白であり、従って、添付の特許請求の範囲により、このような全ての本発明の特性および利点を網羅することを意図し、これは本発明の真意および範囲内である。さらに、当業者には多数の変更および変形が容易に思いつくため、図解および記載されたそのままの構成に本発明を限定することは望ましくなく、従って、全ての適切な変更および等価物が本発明の範囲に復され、収まり得る。
【0090】
ここで、細胞の遺伝子発現を増強する際のnsPEFの使用を説明する具体例に言及する。これら実施例は好ましい態様を説明するために提供され、それにより本発明の範囲の限定は意図されないことが理解されるべきである。
【0091】
実施例1
上記のように、細胞を電気透過化した後に、これら細胞をnsPEFへ暴露する実験を実施した。これらの実験は、HL-60細胞において緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子の発現の増強をもたらした。図1〜6は、HL-60細胞に及ぼす異なるパルスの影響を示す。
【0092】
材料および方法
HL-60細胞を増殖培地から取り出し、洗浄し、0.85 mM K2HPO4、0.3 mM K2HPO4(pH 7.2)、および10 mM KCl(22℃で伝導率1.5 mS/cm)を含む低伝導率緩衝液(LCB)に再懸濁した。浸透圧はイノシトールの添加により290 mOsmに調整した。細胞懸濁液(106細胞/ml)を、nsPEFパルス前に、BioRad gene Pulser(登録商標)キュベット(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に充填した。nsPEFパルスを伝送するためにケーブルパルス発生器を使用した。nsPEFは、ケーブルパルス発生器により、0.1、0.2、または0.4 cm離れた平行平板電極を備えたキュベットに懸濁された細胞に伝送された。簡単に述べると、発生器は10Ωのパルス形成ネットワーク(並列接続で5つの50Ωケーブル)およびナノ秒閉鎖スイッチとしての大気中のスパークギャップからなる。パルス後、細胞懸濁液をパルスキュベットから取り出して検定した。
【0093】
HL-60細胞は、5μgのpEGFP、すなわちサイトメガロウイルス(「CMV」)プロモーターの下流に緑色蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドの存在下で、種々のパルスに暴露された。下記の種類のパルスを使用した:BioRad Gene Pulserにより投与される古典的な原形質膜電気穿孔(長)パルス、短nsPEFパルス、長パルスの30分後に短nsPEFパルスの組み合わせ、またはパルスなし。例えば、図1に示される実験において、HL-60細胞を、3.5 msec、0.3 kV/cmでの古典的な原形質膜電気穿孔(長)パルス、10 nsec、150 kV/cmでのnsPEFパルス、または長パルスの30分後にnsPEFを適用する両パルス型の組み合わせのいずれかに暴露した。次いで細胞を洗浄し、増殖培地に再懸濁してインキュベートした。24時間後、実験から得た15,000細胞をGFP蛍光についてフローサイトメトリーにより分析した。蛍光は図に示されるように幾何平均蛍光として表した。図1〜6のパルス条件の隣の数は、観察された幾何平均GFP蛍光を示す。例えば、図1に示す実験において、対照細胞は3.73の平均GFP蛍光を有し、短パルスに暴露された細胞は3.58の平均GFP蛍光を有し、長パルスに暴露された細胞は9.67の平均GFP蛍光を有し、パルスの組み合わせに暴露された細胞は33.58の平均GFP蛍光を有した。
【0094】
遺伝子発現実験の結果
図1に見られるように、nsPEFパルス単独ではGFP蛍光に影響はなかったが、古典的な電気穿孔パルスは幾何平均蛍光で測定して約2.6倍まで単独で蛍光を増加させた。しかしながら、細胞の約3分の1のみがGFPを発現した。連続した両パルスの存在下では、GFP蛍光は33.58であった。これは対照(3.73)より約9倍大きく、古典的な電気穿孔パルス単独(9.67)で観察されるものより約3.5倍大きかった。さらに、長パルスおよび短パルスの組み合わせに暴露された基本的に全ての細胞は、古典的な電気穿孔条件に暴露された細胞より高い蛍光強度を有するGFPを発現した。
【0095】
図2〜6は、HL-60細胞が(変動する時間範囲の)短パルスおよび(変動する電圧の)長パルスの様々な組み合わせに暴露された同様な実験の結果を示す。短パルスは60 kV/cmおよび150 kV/cmで10ナノ秒から60ナノ秒まで変動した。長パルスは130 V/cmから450 V/cmの範囲で3.5ミリ秒間続いた。これらの図に示される実験は、長パルスおよび短パルスの組み合わせに暴露された細胞は平均GFP蛍光の増加を示したことを同様に証明した。これらの実験において、パルスの組み合わせは電気穿孔パルス単独より約3.2倍GFP蛍光を増した。nsPEFとして60 nsおよび60 kV/cmを含む条件では、GFP蛍光は約3.6倍増加した。図1に示す実験と同様に、図2から図6における長パルスおよび短パルスの組み合わせに暴露された細胞は基本的に全て、古典的な電気穿孔条件に暴露された細胞より高い蛍光強度を有するGFPを発現した。これらの結果は、古典的な電気穿孔パルスとnsPEFとを組み合わせることにより遺伝子発現を増強する可能性を示唆する。
【0096】
本発明の多数の特性および利点は詳細な説明から明白であり、従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真意および範囲内に収まるこのような全ての特性および利点を網羅することを意図する。さらに、当業者には多数の変更および変形が容易に明らかになるため、本発明は図解および記載されたそのままの構成および操作に限定すべきでない。むしろ、全ての適切な変更および等価物が特許請求された本発明の範囲内に収まるものとみなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】恒常的サイトメガロウイルス(「CMV」)プロモーターにより駆動する緑色蛍光タンパク質(「GFP」)レポーター遺伝子の存在下で、古典的な原形質膜電気穿孔(長)パルス、短nsPEFパルス、長パルスの30分後に短nsPEFパルスの組み合わせ、または無パルスに暴露したHL-60細胞を用いた典型的な実験を示す。図1に示される細胞は、3.5ミリ秒(「ms」)および0.3 kV/cmの長パルス、10ナノ秒(「ns」)および150 kV/cmの短nsPEFパルス、またはこれら長パルスおよび短パルスの組み合わせに暴露した。GFP蛍光をx軸に示し、蛍光を発する細胞の数をy軸に示す。観察された幾何平均GFP蛍光を各パルス条件の隣に列挙する。
【図2】450 Vおよび960 uFの長パルス、60 nsおよび60 kV/cmの短nsPEFパルス、またはこれら長パルスおよび短パルスの組み合わせにHL-60細胞を暴露した、同様な実験を示す。観察された幾何平均GFP蛍光を、図面の挿し込みのパルス条件の隣に列挙する。
【図3】260 Vおよび960 uFの長パルス、60 nsおよび60 kV/cmの短nsPEFパルス、またはこれら長パルスおよび短パルスの組み合わせにHL-60細胞を暴露した、同様な実験を示す。観察された幾何平均GFP蛍光を図面の挿し込みのパルス条件の隣に列挙する。
【図4】130 Vおよび960 uFの長パルス、60 nsおよび60 kV/cmの短nsPEFパルス、またはこれら長パルスおよび短パルスの組み合わせにHL-60細胞を暴露した、同様な実験を示す。観察された幾何平均GFP蛍光を図面の挿し込みのパルス条件の隣に列挙する。
【図5】450 Vおよび960 uFの長パルス、10 nsおよび150 kV/cmの短nsPEFパルス、またはこれら長パルスおよび短パルスの組み合わせにHL-60細胞を暴露した、同様な実験を示す。観察された幾何平均GFP蛍光を図面の挿し込みのパルス条件の隣に列挙する。
【図6】130 Vおよび960 uFの長パルス、10 nsおよび150 kV/cmの短nsPEFパルス、またはこれら長パルスおよび短パルスの組み合わせにHL-60細胞を暴露した、同様な実験を示す。観察された幾何平均GFP蛍光を図面の挿し込みのパルス条件の隣に列挙する。
【図7】本発明の一つまたは複数の態様による多パルス発生器の回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞および薬剤を含む調製物を提供する工程と、該調製物にナノ秒パルス電場を適用する工程とを含み、該適用が薬剤の核への侵入を促進する、細胞に薬剤を導入する方法。
【請求項2】
薬剤が、薬物、核酸、タンパク質、ペプチド、およびポリペプチドを含む群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
薬物が抗生剤である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
薬物が化学療法剤である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
化学療法剤が、ブレオマイシン、ダウノマイシン、5-FU、シトシンアラビノシド、コルヒチン、サイトカラシンB、ダウノルビシン、ネオカルシノスタチン、スラミン、ドキソルビシン、カルボプラチン、タキソール、マイトマイシンC、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサート、およびシスプラチン、ならびにこれらの適切な組み合わせを含む群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
薬剤が核酸である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
核酸が、DNA、cDNA、およびRNAを含む群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
核酸が相同または非相同の遺伝子産物をコードする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
遺伝子産物が細胞で発現するように、細胞が核酸でトランスフェクトされる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
核酸が発現ベクターである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
発現ベクターが、適切なプロモーター配列と機能的に連結された遺伝子産物をコードする相同または非相同の核酸を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
遺伝子産物が細胞で発現する、請求項8記載の方法。
【請求項13】
核酸が遺伝子の発現を調節する、請求項6記載の方法。
【請求項14】
核酸が遺伝子治療を提供する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
核酸が細胞増殖を調節する、請求項6記載の方法。
【請求項16】
核酸が免疫応答を誘発する、請求項6記載の方法。
【請求項17】
薬剤がワクチンである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子、またはこれらの組み合わせである、請求項2記載の方法。
【請求項19】
ポリペプチドが抗原である、請求項2記載の方法。
【請求項20】
ポリペプチドが抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項21】
薬剤が細胞毒性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
細胞毒性剤が、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、およびサポリンを含む群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
細胞が、真核細胞、原核細胞、脂肪細胞、骨細胞、血管細胞、筋細胞、軟骨細胞、細菌細胞、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
細胞が癌細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
癌細胞が、腺癌、扁平上皮癌、器官の癌腫、肉腫、軟骨肉腫、メラノ肉腫、白血病、リンパ腫、急性リンパ腫白血病、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、B細胞リンパ腫、およびT細胞リンパ腫を含む癌の群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
癌細胞が白血病または線維肉腫細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約1000ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約500ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約300ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ナノ秒パルス電場が約10ナノ秒から約60ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ナノ秒パルス電場が約1 kV/cmから約1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項32】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約350 kV/cmの電場強度を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約250 kV/cmの電場強度を有する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
細胞および該細胞に送達されるべきヌクレオチド配列を含む調製物を提供する工程と、該調製物にナノ秒パルス電場を適用する工程とを含み、該適用が薬剤の核への侵入を促進する、細胞の遺伝子発現を増強する方法。
【請求項35】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約1000ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約500ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約300ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ナノ秒パルス電場が約10ナノ秒から約60ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
ナノ秒パルス電場が約1 kV/cmから約1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項34記載の方法。
【請求項40】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約350 kV/cmの電場強度を有する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約250 kV/cmの電場強度を有する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
細胞を所望の遺伝子でトランスフェクトする工程と、ナノ秒パルス電場を該細胞に適用する工程とを含む、細胞の遺伝子発現を増強する方法。
【請求項43】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約1000ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約500ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約300ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ナノ秒パルス電場が約10ナノ秒から約60ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
ナノ秒パルス電場が約1 kV/cmから約1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項42記載の方法。
【請求項48】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約350 kV/cmの電場強度を有する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約250 kV/cmの電場強度を有する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
細胞が電気穿孔によりトランスフェクトされる、請求項42記載の方法。
【請求項51】
細胞が脂質小胞の使用によりトランスフェクトされる、請求項42記載の方法。
【請求項52】
細胞がウイルスベクターの使用によりトランスフェクトされる、請求項42記載の方法。
【請求項53】
ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアベクター、およびレトロウイルスベクターを含む群から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
細胞がリン酸カルシウムと遺伝子との共沈殿によりトランスフェクトされる、請求項42記載の方法。
【請求項55】
細胞がデキストランと遺伝子との共沈殿によりトランスフェクトされる、請求項42記載の方法。
【請求項56】
一つまたは複数の長パルスを細胞に適用する工程と、一つまたは複数のナノ秒パルス電場パルスを該細胞に適用する工程とを含む、細胞の遺伝子発現を増強する方法。
【請求項57】
長パルスが約1マイクロ秒から約20ミリ秒の持続時間を有する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
ナノ秒電場パルスが約1ナノ秒から約300ナノ秒の持続時間を有する、請求項56記載の方法。
【請求項59】
ナノ秒パルス電場を腫瘍または他の組織に適用する工程を含む、腫瘍または他の組織への薬物の送達を増強する方法。
【請求項60】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約1000ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約500ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項60記載の方法。
【請求項62】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約300ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項61記載の方法。
【請求項63】
ナノ秒パルス電場が約10ナノ秒から約60ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項62記載の方法。
【請求項64】
ナノ秒パルス電場が約1 kV/cmから約1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項59記載の方法。
【請求項65】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約350 kV/cmの電場強度を有する、請求項64記載の方法。
【請求項66】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約250 kV/cmの電場強度を有する、請求項65記載の方法。
【請求項67】
長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを発生するための第一回路;
短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを発生するための第二回路;および
該第一パルスおよび該第二パルスをそれぞれ発生するために該第一回路および該第二回路のタイミングを制御するための制御回路
を含む、電気パルスを発生するためのパルス発生器。
【請求項68】
第一パルスが0.1ミリ秒から20ミリ秒の持続時間を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項69】
第一パルスが0.001ミリ秒から30ミリ秒の持続時間を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項70】
第二パルスが1ナノ秒から300ナノ秒の持続時間を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項71】
第二パルスが1ナノ秒から1000ナノ秒の持続時間を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項72】
第一パルスが0.1 kV/cmから5 kV/cmの電場強度を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項73】
第一パルスが0.1 kV/cmから1 kV/cmの電場強度を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項74】
第二パルスが10 kV/cmから350 kV/cmの電場強度を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項75】
第二パルスが1 kV/cmから1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項76】
制御回路が第一パルスと第二パルスとの間に1ミリ秒から5時間の間隔を許容する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項77】
制御回路が第一パルスと第二パルスとの間に1ミリ秒から24時間の間隔を許容する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項78】
第一パルスおよび第二パルスをロードに伝送するための伝送装置をさらに含む、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項79】
伝送装置が一対の電極を含む、請求項78記載のパルス発生器。
【請求項80】
ロードが懸濁細胞および生体組織の少なくとも一つを含む、請求項78記載のパルス発生器。
【請求項81】
第一回路が、
高圧電源;
該高圧電源と連結した充電レジスタ;
第一末端で該充電レジスタと連結され第二末端でロードと連結されたコンデンサ;および
該コンデンサの該ロードへの放電を制御するためのトランジスタ
を含む、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項82】
トランジスタが、コンデンサの放電を制御するために制御回路からの少なくとも一つのコマンドに応答する、請求項81記載のパルス発生器。
【請求項83】
トランジスタが、熱損傷を被ることなく持続大電流に対処するために低い順電圧を有する、請求項81記載のパルス発生器。
【請求項84】
トランジスタが絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタである、請求項81記載のパルス発生器。
【請求項85】
制御回路に連結され制御される第一スイッチをさらに含み、該第一スイッチがロードから第一回路を連結および分離するよう機能可能である、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項86】
第一スイッチが機械スイッチおよび真空スイッチの少なくとも一つである、請求項85記載のパルス発生器。
【請求項87】
第一スイッチが磁気スイッチである、請求項85記載のパルス発生器。
【請求項88】
制御回路からの第一コマンドに応答する第一スイッチを作動するために該制御回路に連結された第一トリガーユニットをさらに含む、請求項85記載のパルス発生器。
【請求項89】
第二回路が、
高圧電源;
該高圧電源と連結した充電レジスタ;および
第一末端で該充電レジスタと連結され第二末端でロードと連結された伝送線を含み、該伝送線がロードへ放電する、請求項67記載のパルス発生器。
【請求項90】
伝送線がブルムレイン機器構成の伝送線である、請求項89記載のパルス発生器。
【請求項91】
制御回路に連結され制御される第二スイッチをさらに含み、該第二スイッチが伝送線を放電するよう機能可能である、請求項89記載のパルス発生器。
【請求項92】
第二スイッチがスパーク・ギャップ・スイッチである、請求項91記載のパルス発生器。
【請求項93】
制御回路からの第二コマンドに応答する第二スイッチを作動するために該制御回路に連結された第二トリガーユニットをさらに含む、請求項91記載のパルス発生器。
【請求項94】
長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを発生するための第一発生器手段;
短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを発生するための第二発生器手段;および
該第一発生器手段および該第二発生器手段により発生するパルスのタイミングを制御するための制御手段
を含む、電気パルスを発生するためのパルス発生器。
【請求項95】
第一発生器手段が0.1ミリ秒から20ミリ秒の持続時間の第一パルスを発生する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項96】
第一発生器手段が0.001ミリ秒から30ミリ秒の持続時間の第一パルスを発生する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項97】
第二発生器手段が1ナノ秒から300ナノ秒の持続時間の第二パルスを発生する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項98】
第二発生器手段が1ナノ秒から1000ナノ秒の持続時間の第二パルスを発生する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項99】
第一パルスが0.1 kV/cmから5 kV/cmの範囲の電場強度を有する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項100】
第一パルスが0.1 kV/cmから1 kV/cmの範囲の電場強度を有する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項101】
第二パルスが10 kV/cmから350 kV/cmの範囲の電場強度を有する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項102】
第二パルスが1 kV/cmから1000 kV/cmの範囲の電場強度を有する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項103】
制御回路が第一パルスと第二パルスとの間に1ミリ秒から5時間の間隔を許容する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項104】
制御回路が第一パルスと第二パルスとの間に1ミリ秒から24時間の間隔を許容する、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項105】
第一パルスおよび第二パルスをロードに伝送するための伝送手段をさらに含む、請求項94記載のパルス発生器。
【請求項106】
ロードが懸濁細胞および生体組織の少なくとも一つを含む、請求項105記載のパルス発生器。
【請求項107】
パルス発生器の第一回路から長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを誘発する工程;
第一パルスを少なくとも一つの細胞に伝送して、該少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起する工程;
パルス発生器の第二回路から長い持続時間および低い電圧振幅を有する第二パルスを誘発する工程;および
第二パルスを該少なくとも一つの細胞に伝送して、該少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起する工程
の連続工程、不連続工程、および順序に依存しない工程を含む、パルス発生器を用いて遺伝子発現を増強する方法。
【請求項108】
第一パルスを誘発する工程が、
コンデンサを充電する工程;および
コンデンサに蓄積された電荷の放電を開始するよう高圧大電流トランジスタを作動させる工程をさらに含み、
該電荷は少なくとも一つの細胞に伝送される第一パルスである、
請求項107記載の方法。
【請求項109】
コンデンサの放電を停止するようトランジスタを作動させる工程をさらに含む、請求項108記載の方法。
【請求項110】
第二パルスを誘発する工程が、
伝送線を充電する工程;および
伝送線に蓄積された電荷の放電を開始するよう高圧スイッチを作動させる工程をさらに含み、
該電荷は少なくとも一つの細胞に伝送される第二パルスである、
請求項107記載の方法。
【請求項111】
伝送線の放電を停止するよう高圧スイッチを作動させる工程をさらに含む、請求項110記載の方法。
【請求項112】
第二パルスを伝送する前に所定の間隔を待機する工程をさらに含む、請求項107記載の方法。
【請求項113】
所定の間隔が少なくとも一つの細胞の原形質膜から核膜へのポリヌクレオチドの拡散に基づくものである、請求項112記載の方法。
【請求項114】
所定の間隔が1ミリ秒から24時間の範囲である、請求項112記載の方法。
【請求項115】
コンデンサを充電する工程;
コンデンサに蓄積された電荷を少なくとも一つの細胞へ放電し始めるよう高圧大電流トランジスタを作動させ、該少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起する工程;
所定の長い持続時間後にコンデンサの放電を停止するよう高圧大電流トランジスタを作動させる工程;
該少なくとも一つの細胞からコンデンサを分離するためのスイッチを作動する工程;
伝送線を充電する工程;
伝送線に蓄積された電荷を該少なくとも一つの細胞へ放電し始めるよう高圧スイッチを作動させ、該少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起する工程;および
所定の短い持続時間後に伝送線の放電を停止するよう高圧スイッチを作動させる工程
の連続工程、不連続工程、および順序に依存しない工程を含む、多パルス発生器を用いて細胞の遺伝子発現を増強する方法。
【請求項116】
長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを誘発するための手段;
第一パルスを少なくとも一つの細胞に伝送するための手段であって、第一パルスが該少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起する手段;
短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを誘発するための手段;および
第二パルスを該少なくとも一つの細胞に伝送するための手段であって、第二パルスが該少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起する手段
を含む、細胞の原形質膜および核膜の両方で電気穿孔を惹起するための多パルス発生器。
【請求項117】
電荷を蓄積するための手段;
少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起するために、蓄積された電荷を該少なくとも一つの細胞へ選択的に放電し、蓄積された電荷の放電を終結するための手段;
伝送線を充電するための手段;および
該少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起するために、伝送線を該少なくとも一つの細胞へ選択的に放電し、伝送線の放電を終結するための手段
を含む、細胞の遺伝子発現を増強するための多パルス発生器。
【請求項118】
長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを発生するための第一パルス発生器であって、該第一パルスが細胞の細胞原形質膜の電気穿孔を惹起する発生器;
短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを発生するための第二パルス発生器であって、該第二パルスが細胞の核膜の電気穿孔を惹起する発生器;および
該第一パルス発生器および該第二パルス発生器により発生するパルスのタイミングを制御するための制御回路
を含む、細胞の遺伝子発現を増強するための二元パルス発生器。
【請求項119】
長い持続時間および低い電圧振幅を有する第一パルスを発生するための第一発生器手段であって、該第一パルスが細胞の細胞原形質膜の電気穿孔を惹起する手段;
短い持続時間および高い電圧振幅を有する第二パルスを発生するための第二発生器手段であって、該第二パルスが細胞の核膜の電気穿孔を惹起する手段;および
該第一発生器手段および該第二発生器手段により発生するパルスのタイミングを制御するための制御手段
を含む、細胞の遺伝子発現を増強するための二元パルス発生器。
【請求項120】
第一高圧電源;
該第一高圧電源と連結した第一充電レジスタ;
第一末端で該第一充電レジスタと連結され第二末端でロードと連結されたコンデンサ;
第一充電レジスタの第二末端およびコンデンサの第一末端と連結されたトランジスタであって、コンデンサの該ロードへの放電を制御するトランジスタ;
第二高圧電源;
該第二高圧電源と連結した第二充電レジスタ;
第一末端で該第二充電レジスタと連結され第二末端でロードと連結された伝送線;
該コンデンサおよび該伝送線の放電を制御するための制御回路;
ロードから該コンデンサを選択的に連結および分離するための第一スイッチ;
該制御回路および該第一スイッチに連結された第一トリガーユニットであって、該制御回路から受信する一つまたは複数のコマンドに応答する該第一スイッチを作動する第一トリガーユニット;
該伝送線を選択的に放電するための第二スイッチ;
該制御回路および該第二スイッチに連結された第二トリガーユニットであって、該制御回路から受信する一つまたは複数のコマンドに応答する該第一スイッチを作動する第二トリガーユニット;および
該コンデンサおよび該伝送線からロードへの放電を伝送するための伝送装置
を含む、細胞の遺伝子発現を増強するための二元パルス発生器。
【請求項121】
二元パルス発生器から第一パルス型を誘発する工程であって、第一パルス型が長い持続時間および低い電圧振幅を有する工程;
第一パルス型を少なくとも一つの細胞に伝送して、該少なくとも一つの細胞の原形質膜で電気穿孔を惹起する工程;
所定の時間間隔を待機する工程;
二元パルス発生器から第二パルス型を誘発する工程であって、第二パルス型が短い持続時間および高い電圧振幅を有する工程;および
第二パルス型を該少なくとも一つの細胞に伝送して、該少なくとも一つの細胞の核膜で電気穿孔を惹起する工程
の連続工程、不連続工程、および順序に依存しない工程を含む、二元パルス発生器を用いて遺伝子発現を増強する方法。
【請求項122】
ナノ秒パルス電場を、その必要性のある患者に適用する方法。
【請求項123】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約1000ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項122記載の方法。
【請求項124】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約300ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項123記載の方法。
【請求項125】
ナノ秒パルス電場が約1 kV/cmから約1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項122記載の方法。
【請求項126】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約350 kV/cmの電場強度を有する、請求項125記載の方法。
【請求項127】
患者が癌を有する、請求項122記載の方法。
【請求項128】
ナノ秒パルス電場を細胞に適用する工程を含む、細胞の遺伝子発現を増強する方法。
【請求項129】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約1000ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項128記載の方法。
【請求項130】
ナノ秒パルス電場が約1ナノ秒から約300ナノ秒のパルス持続時間を有する、請求項129記載の方法。
【請求項131】
ナノ秒パルス電場が約1 kV/cmから約1000 kV/cmの電場強度を有する、請求項128記載の方法。
【請求項132】
ナノ秒パルス電場が約10 kV/cmから約350 kV/cmの電場強度を有する、請求項131記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−500501(P2007−500501A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521152(P2006−521152)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023078
【国際公開番号】WO2005/032646
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(505386454)イースタン バージニア メディカル スクール (3)
【出願人】(506020104)オールド ドミニオン ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】