説明

電気二重層キャパシタの放電制御システム

【課題】電気二重層キャパシタ(EDLC)の蓄電量に合わせて、負荷を予め設定した時間運転する。運転パターンを負荷に合わせて、種々に設定できる。
【解決手段】EDLCと、このEDLCの放電エネルギーによって運転されるLED照明装置などの負荷と、EDLCからこの負荷に供給する放電量を制御する放電制御部13と、EDLCの蓄電量の検出部12と、EDLCによって運転される負荷の運転時間及び運転パターンの入力・設定部14とを備える。放電制御部13は、入力・設定部14に入力された運転時間及び運転パターンと、検出部12から得られたEDLCの蓄電量とに基づいて、運転時間ごとのEDLCからの放電量を決定する。放電制御中において、常時EDLCの蓄電量を監視し、運転パターン(放電スケジュール)を補正することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置、風力発電装置などの自然エネルギー発電装置で発電した電力を、電気二重層キャパシタ(以下、EDLCという)に蓄電し、EDLCからの放電によりLED照明装置など負荷を運転するためのEDLCの放電制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギー発電装置、例えば太陽光発電装置を用いたソーラーシステムにおいては、発電電力を平準化するために、鉛蓄電池やEDLCなどの二次電池が使用される。なかでもEDLCは、鉛蓄電池に比較して内部抵抗が小さいことから、放電電流量などの外因に左右されることなく、正確な蓄電量を静電容量と電圧で監視することができる。そのため、このEDLCを非常灯などの照明の電源として使用し、通常時に蓄電量が少なくなった場合には消灯し、消灯状態で地震などの非常事態が発生した場合には、蓄電量が少なくても点灯するEDLCの放電制御システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−51109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明は、EDLCの蓄電量の一定のレベルを基準として照明の点灯及び消灯を制御するだけのものであり、蓄電量が少ない場合でも予め定めた一定時間は継続して点灯することが要求される照明装置に対応することはできない。例えば、夜間は継続して14時間の点灯が要求される避難灯に対して、太陽光発電装置で充電したEDLCから電流を供給する場合、曇天や雨天などでEDLCの蓄電量が少なくても、決められた14時間の点灯は行わねばならない。
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、蓄電量が基準よりも少ない場合には最初から点灯しないため、この種の用途には不適当である。また、特許文献1では、地震などの緊急時には、蓄電量が少なくても強制的に照明を点灯するが、通常の照明で強制的に点灯を行うとその消費電力が大きいため、少ない蓄電量では要求される点灯時間が得られない。
【0006】
このような問題は、照明に限らず、EDLCによって運転される他の負荷についても同様に生じるものであり、EDLCの蓄電量と負荷の運転時間やパターンに応じて、EDLCからの放電を適切に制御できる技術の提供が望まれていた。
【0007】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、EDLCの蓄電量と要求される負荷の運転時間(照明の場合は点灯時間)やパターンに応じて、最適の放電スケジュールを得ることのできるEDLCの放電制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明のEDLCの放電制御システムは、EDLCと、このEDLCの放電エネルギーによって運転される負荷と、前記EDLCからこの負荷に供給する放電量を制御する放電制御部と、EDLCの蓄電量の検出部と、EDLCによって運転される負荷の運転時間及び運転パターンの入力・設定部とを備え、前記放電制御部は、前記入力・設定部に入力された運転時間及び運転パターンと、検出部から得られたEDLCの蓄電量とに基づいて、運転時間ごとにおけるEDLCからの放電量を決定することを特徴とする。
【0009】
前記負荷が調光機能を有する照明装置であり、前記放電制御部がこの調光装置に供給するEDLCからの放電量を決定するものであること、前記運転パターンが、負荷の運転開始から停止まで、EDLCからの放電量を直線的または非直線的に変化させるものであること、及び前記蓄電量の検出部が前記放電制御部によるEDLCからの放電制御中に蓄電量の検出を行うものであり、前記放電制御部がその放電制御中に新たに得られた蓄電量に基づいて、設定された運転パターンを補正することも本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0010】
前記のような構成を有する本発明のEDLCの放電制御システムでは、EDLCに残された蓄電量が少ない場合でも、その蓄電量に応じた放電制御を行うことで、予め決められた時間については負荷を継続して運転することができる。また、負荷に要求される運転パターンを表す式と、その式を決定づける負荷の運転時間、EDLCの蓄電量などの変数値に基づいて、経過時間ごとの放電量が容易に決定でき、種々の運転パターンに対応できる。
【0011】
放電中に常に蓄電量を監視し、これに基づいて設定された運転パターンを補正する場合には、より正確な放電スケジュールを得ることができると共に、EDLCに接続している他の負荷が突然運転されるなどして、運転開始時に計算した蓄電量が急激に変化した場合でも、新たな放電スケジュールに従って、必要とする運転時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のEDLCの放電制御システムの実施例を示すブロック図。
【図2】図1の実施例の動作を説明するフローチャート。
【図3】図2のフローチャートにおけるEDLC放電制御処理を説明するフローチャート。
【図4】本発明において設定する放電パターンの例を示すグラフ。
【図5】本発明の他の実施例における放電パターンを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
(1)実施例の構成
以下、本発明の実施例の構成を図1のブロック図に従って具体的に説明する。
図中、符号CUは本実施例の放電制御システムを構成するコントローラであって、本実施例では、このコントローラCUに接続された太陽光発電装置PVからの電力をキャパシタEDLCに充電し、このEDLCの蓄電量(残電力量)に従ってコントローラCUに接続された照明装置LEDに対する放電量を制御する。
【0014】
コントローラCUは、太陽光発電装置PVからEDLCに対する充電を制御する充電制御部10を備える。この充電制御部10は、昼夜判定部11に接続され、昼夜判定部11が光センサやタイマなどによって判定した昼夜の別に従い、昼間は太陽光発電装置PVからEDLCに充電を行い、夜間はEDLCに対する充電を停止する。この充電制御部10は、太陽光発電装置PVの出力電圧の検出部、EDLCへの充電電流の検出部、及びEDLCの端子電圧の検出部を備え、発電状態やEDLCの充電度、あるいはEDLCへの充電許容電流量などに応じて、充電電流の制御を行う。
【0015】
この充電制御部10の制御に従いEDLCの蓄電量は、EDLCに蓄えられた電荷量Qに基づいて、コントローラCUに設けられた蓄電量検出部12が検出する。この蓄電量検出部12は、予めEDLCの容量CをコントローラCUに設定しておき、この容量CとEDLCの端子電圧VとからQ=C・Vにより算出する。また、前記昼夜判定部11によって夜から昼への切り替わり時(充電制御部10による充電開始時点)から1秒ごとに充電電流Iを検出し、Q=I・sにより算出する。これにより、蓄えられた電荷Q、EDLC容量C、端子電圧Vのうち2点が求められれば、放電量はエネルギーEになるので、E=1/2・C・V2より放電エネルギーEを求めることができ、このエネルギーEが負荷を駆動するために用いられるEDLCの蓄電量となる。
【0016】
コントローラCUは放電制御部13を備える。この放電制御部13は、前記蓄電量検出部12によって検出したEDLCの蓄電量に応じて、負荷である照明装置LEDに供給するEDLCからの放電エネルギーを制御する。この放電制御部13にはデータ入力・設定部14が接続され、このデータ入力・設定部14に入力された照明装置LEDの連続点灯時間(負荷の運転時間)と運転パターンに基づいて、放電制御部13は時間ごとの放電量(放電電流)を制御する。
【0017】
データ入力・設定部14に設定する運転時間と運転パターンの例を、図4の(A)〜(C)に示す。図4(A)は、放電パターンとして負荷である照明装置LEDを直線的に調光する場合を示す。データ入力・設定部14に、LED放電電流のMAX、MIN値及び点灯時間を設定しておく。ここではMAX400mA、MIN50mA、14時間点灯とする。また、放電パターンとしては、(A)のグラフにおいて、放電開始時(時間t=0、400mA)と放電継続時間(時間t=14、0mA)の2点を結ぶ直線とする。すなわち、図の座標において、x軸が時間tで、y軸が放電電流(mA)となり、前記直線及びx軸、y軸で囲まれた三角形の面積部がEDLCの残エネルギーEとなる。
【0018】
このとき、データ入力・設定部14に設定する直線状の放電パターンは、次の式で表される。
(a) y=ax+b
(b) x=0のとき、E/14/2=b
(c) t=14のとき、0mA=a
【0019】
また、設定する放電パターンを直線状でしかもEDLCの容量が大きい場合に、蓄電量を基準とすると、計算上は放電開始時の放電電流が設定した最大値MAX400mA以上になる。しかし、本実施例では、放電制御部13は、設定した最大値を上限とした放電電流を負荷に供給するので、図中斜線を付した余り残量部分は、400mAで放電する。
【0020】
図4の(B)は、放電パターンとして、非直線状の放電特性に従って、照明装置LEDを点灯させる場合を示す。この場合も前記(A)と同様に、図の座標でx軸が時間で、y軸が放電電流となる。また、放電パターンを示すグラフによって囲まれた略三角形の面積部がEDLCの残量エネルギーEとなる。
【0021】
この放電パターンは、任意の関数y=F(x)、例えば、y=ax+by+cの二次関数を時間tで積分した値と、前記(A)で求めた残量エネルギーEが等しくなる式から算出する。
(a) E=(y=ax+by+c)の0から14時間の積分値
(b) (x,y)=(400,0)のときのy=ax+by+c
(c) (x,y)=(50,t)、t=14hのときのy=ax+by+c
【0022】
この非直線状の放電パターンでは、式に種々の定数を付加することにより、様々な放電パターンを得ることができる。例えば、放電の初期には放電電流を大きくして照明装置LEDを明るく点灯し、消灯の時間(t=14)に近付いた場合には、放電電流を小さくして照明装置LEDを暗く点灯することができる。これは、常夜灯のように人通りの多い点灯開始時には照明装置を明るく点灯する場合に適している。
【0023】
前記の非直線状の放電パターンの他の例として、図4(C)に示すように、継続する点灯時間の一部のみの放電電流を大きくして、警備員の巡回時間などに合わせて一定時間だけ照明装置LEDを明るく点灯することも可能である。
【0024】
(2)実施例の作用
前記のような構成を有する本実施例の作用を図2及び図3のフローチャートによって説明する。放電制御システムがスタートすると、まず、コントローラCUは、それに接続された太陽発電装置PV、EDLC、照明装置LEDなどの接続状態、運転状態、故障の有無などのシステムの状態のチェックを行う(ステップ1)。この場合、コントローラCUの各部に対して、制御に必要な太陽光発電装置PVやEDLCの電圧値、電流値となどが入力されているかについても、チェックを行う。
【0025】
次に、データ入力・設定部14に対して、運転時間(例えばt=14)と運転パターンを設定し、放電制御部13はこれを読み込む(ステップ2)。運転パターンは、前記図4の(A)から(C)に示したような直線状あるいは非直線状のパターンを描くことのできる数式を直接入力したり、予め用意した複数の数式の中から希望する式を選択することで行う。更に、放電電流の最大値と最小値も設定する。
【0026】
設定値の読み込みが終了したら、昼夜判定部11に入力された光センサなどの情報に基づいて、現在が昼夜いずれであるかの判断を行う(ステップ3)。昼夜の判断結果が昼の場合には昼モードが選択され(ステップ4)、コントローラCUによる放電制御は行わず、充電制御部10により太陽光発電装置PVで発電した電力をEDLCに供給し、蓄電する(ステップ5)。判断結果が夜の場合には夜モードが選択され(ステップ6)、放電制御部13による放電制御、すなわち、EDLCの放電電流により照明装置LEDの調光運転が行われる(ステップ7)。
【0027】
図3は、ステップ7のEDLCの放電制御処理を示すフローチャートである。図3に示す放電制御処理では、蓄電量検出部12により、EDLCの蓄電量(残エネルギー量E)が検出される(ステップ11)。この検出方法は、前記のQ=C・VまたはQ=I・sによる。この蓄電量と、データ入力・設定部14に設定された負荷運転時間(例えばt=14)を、運転パターンを示す式に代入することにより、時間ごとの放電電流を定めた放電スケジュールが決定される(ステップ12)。EDLCはこの放電スケジュールに従い、照明装置LEDに対する放電電流の供給を開始する(ステップ13)。
【0028】
この場合、本発明における負荷は、調光可能な照明装置LEDのように、放電電流量に応じて100%の最大運転から20−30%の最小運転を行うものであり、放電電流が少なくなっても運転が停止しないものを用いる。もちろん、本発明に使用するこの種の負荷においても、あまりにも放電電流が少なくなると運転が不可能になるが、特許文献1の照明のように、オン・オフによって100%運転と運転停止(点灯と消灯)のいずれかを選択するものではなく、電流量に応じて運転能力が変化するものを用いる。
【0029】
このようにして、設定された運転パターンと運転時間、及び蓄電量によって定まる運転スケジュールに従ってEDLCの放電が制御され、その状態で、昼夜判定部11からの昼検出信号が入力されるか、設定した運転時間tが経過しEDLC蓄電量が0になると、EDLC放電制御は終了する(ステップ14)。その後は、昼モード(ステップ4)に戻り、太陽光発電装置PVからEDLCに対する充電制御(ステップ5)を行うか、システムの状態チェック(ステップ8)を経て、新たな設定値や運転パターンの読み込みを行う(ステップ2)。なお、図2のフローチャートは、新たな設定値の読み込みを行う場合を示している。
【0030】
(3)実施例の効果
本実施例によれば、EDLCの充電量(残エネルギー量)が少なくなった場合でも、照明装置LEDに供給する電流を絞ることで、予め設定した時間継続して照明を点灯させることができる。そのため、曇天時や雨天時に太陽光発電装置からの充電が不十分な場合であっても、設定した点灯時間を確保できるので、避難灯や常夜灯のように常時点灯が要求される照明装置をEDLCによって点灯することができる。
【0031】
また、本発明では、複数の運転パターンを式として設定しておき、EDLCの蓄電量や負荷の運転継続時間を式中の変数として与えることで、設定する式自体は代えることなく、蓄電量や運転時間に応じた運転スケジュールを得ることができる。そのため、従来の二次電池の放電制御で行われているような、複数の運転パターンを用意しておき、蓄電量に応じてその中から必要とする運転パターンを選択する制御システムに比較し、蓄電量に応じたきめ細かな制御が可能となる。特に、EDLCは、鉛蓄電池などの二次電池に比較して、内部抵抗が少なく端子電圧や出力電流に基づいて蓄電量を正確に求めることができるので、このようなきめ細かな放電制御が適している。
【0032】
(4)他の実施例
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、いったん開始した運転スケジュールをEDLCの蓄電量の変化に伴い補正して、新たな運転パターンを作製することも可能である。すなわち、図5の実施例では、常にEDLCの蓄電量(残量)を確認し、点灯可能な電流を調整する。すなわち、放電開始時の残量エネルギーEから放電した電流Iを1s毎に引いていき、引かれた残量エネルギーE’と、残り点灯予定時間(t’)を常に計算し、前記(A)(B)で求めた放電スケジュールをより正確に求めることが可能である。
【0033】
この場合の計算は次のように行う。
(a) 放電パターンを直線状としたときの補正
E=(y=ax+b)において、
E’=(y=ax+b)、x=14−t
(b) 放電パターンを非直線状としたときの補正
E=(y=ax+by+c)において、
E’=(y=ax+by+c)の0から14−t時間の積分値
【0034】
この実施例によれば、継続運転が必要な照明装置以外の他の負荷がEDLCに接続され、他の負荷の運転により急速にEDLCの蓄電量が変化した場合などでも、設定した運転パターンを示す式は代えることなく、刻々と変化する蓄電量を設定した式に代入することで新たな運転スケジュールを得ることができ、当初のスケジュールに従った結果必要とする継続時間が確保できなくなるという不都合が解消される。
【符号の説明】
【0035】
10…充電制御部
11…昼夜判定部
12…蓄電量検出部
13…放電制御部
14…入力・設定部
PV…太陽光発電装置
EDLC…電気二重層キャパシタ
LED…LED照明装置
C…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気二重層キャパシタと、
この電気二重層キャパシタの放電エネルギーによって運転されるLED照明装置などの負荷と、
前記電気二重層キャパシタからこの負荷に供給する放電量を制御する放電制御部と、
前記電気二重層キャパシタの蓄電量の検出部と、
前記電気二重層キャパシタによって運転される負荷の運転時間及び運転パターンの入力・設定部とを備え、
前記放電制御部は、前記入力・設定部に入力された運転時間及び運転パターンと、検出部から得られた電気二重層キャパシタの蓄電量とに基づいて、運転時間ごとにおける電気二重層キャパシタからの放電量を決定することを特徴とする電気二重層キャパシタの放電制御システム。
【請求項2】
前記負荷が調光機能を有する照明装置であり、前記放電制御部がこの調光装置に供給する電気二重層キャパシタからの放電量を決定するものであることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタの放電制御システム。
【請求項3】
前記運転パターンが、負荷の運転開始から停止まで、電気二重層キャパシタからの放電量を直線的または非直線的に変化させるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気二重層キャパシタの放電制御システム。
【請求項4】
前記蓄電量の検出部が前記放電制御部による電気二重層キャパシタからの放電制御中に蓄電量の検出を行うものであり、前記放電制御部がその放電制御中に新たに得られた蓄電量に基づいて、設定された運転パターンを補正することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の電気二重層キャパシタの放電制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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