電気光学装置、およびその製造方法
【課題】有機EL表示装置等の電気光学装置の機能層の平坦性を確保して、表示特性を向上させる。
【解決手段】基板20上に規則的に配置された画素電極200と、画素電極200の開口面を囲む2以上の材料層からなる隔壁314と、隔壁314で囲まれた領域内に滴下した液体材料を固化して形成された少なくとも発光層326を含む機能層322と、を備える電気光学装置であって、隔壁314が、第1の材料層311の上面を底部とし、第2の材料層312をパターニングして得られる面を側壁とする段差部302を有する。
【解決手段】基板20上に規則的に配置された画素電極200と、画素電極200の開口面を囲む2以上の材料層からなる隔壁314と、隔壁314で囲まれた領域内に滴下した液体材料を固化して形成された少なくとも発光層326を含む機能層322と、を備える電気光学装置であって、隔壁314が、第1の材料層311の上面を底部とし、第2の材料層312をパターニングして得られる面を側壁とする段差部302を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の電気光学装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と称する。)表示装置の製造工程では、基板上にマトリクス状に配置されている各々の画素電極上に、発光層等の機能層を複数回形成する必要がある。そして当該工程に用いる手法として、上記機能層形成材料を溶質とする液体材料(以下、「液材」と称する。)の液滴を上記画像素電極上に滴下して、溶媒を乾燥除去して固化するインクジェット法が有力とされている。
インクジェット法では、各々の画素電極を区画する隔壁を上記液滴が乗り越えないことと、上記隔壁と上記画素電極の境界近傍における上記液滴のつきまわりの確保と、の両立が必要となる。そこで隔壁を、有機材料からなる上部隔壁と無機材料からなる下部隔壁とを階段状に積層して、2層構造にする手法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−334782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述する構造の隔壁では、滴下された液滴が乾燥する工程において、画素周辺部における液滴の保持力が不足するため、画素電極上に形成される乾燥後の機能層の平坦性が低下し得るという課題があった。本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、機能層の平坦性を確保して、表示特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、基板上に規則的に配置された画素電極と、上記画素電極の開口面を囲む2以上の材料層からなる隔壁と、上記隔壁で囲まれた領域内に滴下した液体材料を固化して形成された少なくとも発光層を含む機能層と、を備える電気光学装置であって、上記隔壁が、第1の材料層の上面を底部とし、第2の材料層をパターニングして得られる面を側壁とする段差部を有することを特徴とする。
隔壁に段差部を設けることで、滴下後の液体材料を隔壁の方向に吸引でき、中央部に凝集しようとする働きを緩和できる。したがって、平坦な機能層が形成でき、表示性能、すなわち電気特性および寿命特性が向上した電気光学装置を得ることができる。
【0006】
好ましくは、上記第1の材料層および上記第2の材料層が無機材料からなることを特徴とする。
無機材料は親液性を有するため、滴下後の液滴を隔壁の方向に一層強く吸引できる。したがって、表示性能が一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0007】
また、好ましくは、上記隔壁が、上記第2の材料層の上層に、有機材料からなる第3の材料層をさらに有することを特徴とする。
有機材料は撥液性を付与できるため、滴下した液滴が隣接する画素電極の開口面に移動することを抑制できる。したがって、表示性能が一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0008】
また、好ましくは、上記段差部の外周の形状が、多角形であることを特徴とする。
かかる構成により、上記段差部の周辺長を増大でき、滴下後の液滴を隔壁の方向に一層強く吸引できる。したがって、表示性能が一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0009】
また、好ましくは、上記段差部の外周の形状に、内角が180度を超えている部分があることを特徴とする。
かかる構成により、上記段差部の周辺長をより一層増大でき、滴下後の液滴を隔壁の方向により一層強く吸引できる。したがって、表示性能がより一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0010】
また、好ましくは、上記段差部の外周の形状が、不規則な直線および/または曲線を連続した部分を有することを特徴とする。
かかる構成により、上記段差部の周辺長をより一層増大でき、滴下後の液滴を隔壁の方向により一層強く吸引できる。したがって、表示性能がより一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0011】
また、本発明にかかる電気光学装置は有機エレクトロルミネッセンス表示装置であることを特徴とする。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は機能層膜厚の均一性により表示性能が左右されるので、上述する構成により表示性能を向上させることができる。
【0012】
本発明にかかる電気光学装置の製造方法は、基板上に画素電極を規則的に配置する工程と、上記基板上に無機材料からなる第1の材料層を形成する工程と、上記第1の材料層の上層に無機材料からなる第2の材料層を形成する工程と、上記第1の材料層と上記第2の材料層を、双方の層の境界面に段差が生じるようにパターニングして、上記画素電極の周辺を囲む隔壁を形成する工程と、上記隔壁で囲まれた上記画素電極上に機能層形成材料を溶質とする液体材料の液滴を滴下する工程と、を含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、上記画像素電極上に滴下した液滴を上記段差部で保持できるので、平坦な機能層を形成でき、表示性能の優れた電気光学装置を得ることができる。
【0013】
好ましくは、上記第1の材料層、および上記第2の材料層をパターニングした後に、上記基板上に有機材料からなる第3の材料層を形成する工程と、上記第3の材料層を、平面形状が上記第2の材料層と略同一となるようにパターニングする工程と、をさらに含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、上記画像素電極上に滴下した液滴が隣接する画素電極上に
流出することを抑制できるので、表示性能がより一層優れた電気光学装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。本発明は隔壁内に液滴を滴下した後に溶媒を乾燥除去することで機能層を形成する工程を有する電気光学装置に対応するものであり、特に有機EL表示装置に対応するものである。そこで、まず図1および図2を用いて、後述する従来例および各実施形態において共通するアクティブマトリクス型の有機EL表示装置の構成について説明する。
【0015】
図1は、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置の全体構成を示す回路構成図である。画像表示領域10には、複数の走査線102と、走査線102と直交する複数の信号線104と、信号線104と平行に延びる複数の電源供給線106とが形成され、走査線102と信号線104との各々の交点近傍には、画素領域100が形成されている。
【0016】
さらに、各々の画素領域100には、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106から駆動電流が流れ込む発光素子114が形成されている。後述するように、発光素子114は画素電極である陽極と、画像表示領域10の全範囲にわたって共通電位となる陰極とでEL層を含む機能層を狭持しており、上記駆動電流は陽極に供給される。
【0017】
画像表示領域10の周辺には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路120から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、信号線104には信号線駆動回路130から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。なお、走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0018】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から陽極に駆動電流が流れ、さらに機能層を介して陰極に駆動電流が流れる。その結果、機能層は駆動電流の大きさに応じて発光する。
【0019】
次に、図2を用いて、画素領域100の構成について説明する。図2は、基板上における、画素領域100を構成する各要素を示す平面構成図である。
スイッチング用TFT108は、走査線102から突き出した第1のゲート電極202と、方形にパターニングされた第1の半導体層221と、からなる。第1の半導体層221は、第1のチャネル領域204と、その両側の第1のソース領域206および第1のドレイン領域208と、からなる。そして第1のチャネル領域204は、第1のゲート電極202と対向している。
【0020】
駆動用TFT112は、容量電極から突き出した第2のゲート電極212と、方形にパターニングされた第2の半導体層222と、からなる。第2の半導体層222は、第2のチャネル領域214と、その両側の第2のソース領域216および第2のドレイン領域218と、からなる。そして第2のチャネル領域214は、第2のゲート電極212と対向している。
【0021】
スイッチング用TFT108の、第1のドレイン領域208は第1のコンタクトホール21を介して信号線104と導通し、第1のソース領域206は第2のコンタクトホール22を介してソース電極232と導通している。そして、ソース電極232は、第3のコンタクトホール23を介して第2のゲート電極212と導通するとともに、第4のコンタクトホール24を介して保持容量110の一方の電極層と導通している。
【0022】
保持容量110のもう一方の電極層は、第1の半導体層221と同一の層をパターニングして形成され、第5のコンタクトホール25を介して電源供給線106と導通している。
【0023】
第2のソース領域216は第6のコンタクトホール26を介して電源供給線106の突出部分と導通している。第2のドレイン領域218は第7のコンタクトホール27を介してドレイン電極234と導通し、ドレイン電極234と画素電極200は第8のコンタクトホール28を介して導通している。
【0024】
本実施形態の有機EL装置はボトムエミッション方式である。基板は透光性材料からなり、画素電極200はITO(酸化インジウム・スズ)等の導電性透光材料で形成される。そして図3以降で示すように、後述する隔壁314で画素の開口部300が形成されている。そして隔壁314で囲まれる凹部内には、発光層としての有機EL材料を含む機能層がインクジェット法により形成され、画素の開口部300を介して光を出射してる。
【0025】
上述したように隔壁の断面形状は上記機能層の形成時に大きく影響する。本発明は隔壁の断面形状を工夫して機能層の均一化を目指すものである。具体的には、隔壁314を2層以上の材料層で形成し、画素電極上に形成される第1の材料層と、その上層に形成される第2の材料層とを別個にパターニングすることで、段差部302を形成している。以下、従来の有機EL表示装置の機能層の形成、及び本発明の実施形態における機能層の形成について、図2に示すA―A´線における断面図を用いて述べる。
【0026】
図3は、従来の有機EL表示装置の隔壁の構成と機能層の形成手順等を示す模式断面図である。まず図3(a)に示すように、基板20上に第1の層間膜315、および第2の層間膜316を介して画素電極200を形成し、当該画素電極の周囲を囲む隔壁314を形成する。従来の有機EL表示装置の隔壁314は、下層の酸化シリコン等の無機材料層310と、上層のポリイミド層313の2層構造となっている。隔壁形成後、CF4等のフッ素原子を含んだガスによるプラズマでプラズマ処理を行い、上層のポリイミド層313に撥液性を付与する。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、隔壁314で囲まれている画素電極200上にインクジェット装置の液滴ノズル(以下、「ノズル」と称する。)320から機能層形成材料を溶質とする液滴321を滴下する。滴下された液滴321は、ポリイミド層313の側壁部に達する。
【0028】
次に図3(c)に示すように、滴下された機能液321から溶媒を乾燥除去して機能層322を形成する。当該機能層は膜厚が均一であることが好ましい。しかし、隔壁314の上層であるポリイミド層313は撥液性が付与されているため、滴下された機能液321を保持する力が不足している。その結果、画素電極200上に形成される機能層322は中央が盛り上がるような形状となり、膜厚の均一性が劣化し得る。そこで本発明の実施形態にかかる有機EL表示装置およびその製造方法は、隔壁314に段差部302(図4等参照)を形成することで、機能層の膜厚の均一性を向上させている。
(第1の実施形態)
【0029】
本発明の第1の実施形態にかかる有機EL表示装置の隔壁の構成、および機能層の形成過程を、図4〜7により説明する。図4〜6は本実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図であり、図2のA―A´線における断面を示すものである。そして図7は、隔壁314形成後の画素電極200およびその周辺の上面図である。
【0030】
まず図4(a)に示すように、基板20上に、第1の層間膜315および第2の層間膜316を介して画素電極200を形成する。そして、画素電極200を形成後の基板20上に、第1の無機材料層としての酸化シリコン層311および第2の無機材料層としての窒化シリコン層312を形成する。
【0031】
次に図4(b)に示すように、画素電極200を囲む領域に第1のレジスト層346を形成し、当該レジストで覆われていない領域の窒化シリコン層312を選択的にエッチングして除去する。
【0032】
次に図4(c)に示すように、第1のレジスト層346をそのままの状態に保ちつつ窒化シリコン層312をエッチングした後、連続して酸化シリコン層311もエッチングする。窒化シリコン層312の方がエッチングレートが速いため、エッチングが横方向にも進み、底部と側壁とが共に親液性の無機材料である段差部302が形成される。
【0033】
次に図4(d)に示すように、第1のレジスト346を除去した後、基板20上全面に有機材料としてのポリイミド層313を形成し、当該ポリイミド層の画素電極200を囲む領域に第2のレジスト層348を形成する。
【0034】
次に図5(a)に示すように、第2のレジスト層348で覆われていない領域のポリイミド層313をエッチングにより除去し、その後第2のレジスト層348も除去する。2層の無機材料層(311および312)とポリイミド層313との計3層からなり、双方の無機材料層の境界面に段差部302を有する隔壁314が形成される。
【0035】
図7は、本実施形態における第2のレジスト348を除去した後の画素電極200、および段差部302の平面形状を示すものである。画素電極200の周囲を囲む環状の段差部302が形成されている。酸化シリコン層311と窒化シリコン層312とを積層して連続的にエッチングすると、エッチングレートの差により窒化シリコン層312が水平方向にエッチングされ、上述の段差部302が形成される。
当該段差部は底面および側壁部が親液性を有する無機材料で形成されている。したがって、従来の有機EL表示装置の形成過程における、底面が無機材料で側壁部が有機材料の隔壁とは異なり、側壁部に液材を引き付けて保持することができる。
【0036】
次に図5(b)に示すように、基板20全面に、CF4プラズマ40でプラズマ処理する。隔壁314の最上部を形成するポリイミド層313の表面にフッ素原子が入り込み、ポリイミドに含有されている炭素原子と反応し、表面が撥液性となる。なお、上記CF4によるプラズマ処理後、酸素プラズマによる処理を行なうことが好ましい。酸化シリコン層311、窒化シリコン層312、および画素電極200表面の有機系の残渣を除去することで親液性を向上できる。ここで、ポリイミド層313は、上記CF4プラズマ処理によりテフロン(登録商標)等の安定した物質となっているため、処理条件を最適化することにより上記酸素プラズマ処理を経ても撥液性を保つことができる。
【0037】
次に図5(c)に示すように、画素電極200上に、正孔輸送層形成材料を溶質とする液材323をノズル320から滴下する。正孔輸送層形成材料は例えば、ポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いる。段差部302は親液性のため、滴下後の液材323は周縁部すなわち隔壁314の方に引き付けられる態様となる。
【0038】
次に図5(d)に示すように、液材323から溶媒を乾燥除去して正孔輸送層324を形成する。滴下後の液材323は隔壁314の方に引き付けられた状態を保ちつつ乾燥するので、形成された正孔輸送層324は中央部が盛り上がることはない。したがって図示するように、平坦な断面形状を有する正孔輸送層324が形成される。
【0039】
次に図6(a)に示すように、正孔輸送層324上に、有機EL材料すなわち発光層形成材料を溶質とする液材325をノズル320より滴下する。上述の液材323と同様に、滴下後の液材325は、段差部302の働きにより周縁部すなわち隔壁314の方に引き付けられる。
【0040】
次に図6(b)に示すように、液材325から溶媒を乾燥除去して発光層326を形成する。上述の正孔輸送層324と同様に、平坦な断面形状を有する発光層326が形成される。その結果、正孔輸送層324と発光層326とからなる機能層322も平坦な断面形状を有することとなる。
【0041】
最後に図6(c)に示すように、基板20上全面にアルミニウム等の導電材料からなる陰極層328を形成する。そして、その後の若干の周知工程を経て、有機EL表示装置を形成する。上述したように、機能層322の形成過程において、画素電極200上に滴下された液材を隔壁314の方向に引き付けつつ乾燥させるため、中央部が盛り上がり凸状になる現象を抑制できる。その結果、平坦な機能層322を形成でき、有機EL表示装置の表示特性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
【0042】
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる有機EL表示装置の、段差部302の平面形状を示すものである。各構成要素の断面形状、および形成過程は上記第1の実施形態と同様である。本実施形態の有機EL表示装置は、段差部302の平面形状(外周の形状)が多角形(本実施形態では8角形)であることが特徴である。
【0043】
上述したように、画素電極200の開口部300に滴下された液材は段差部302に引き付けられるが、その際、特に側壁部に強く引き付けられ保持される。そのため、側壁部の面積を増大させることで、より一層強く保持できる。そして、上記側壁部の面積を広くするためには、第2の無機材料層を円形以外の形状にパターニングすることが好ましい。かかる態様により、第2の無機材料層としての窒化シリコン層の膜厚を増加させることなく側壁部の面積を増大できる。したがって本実施形態の有機EL表示装置は、窒化シリコン層312およびその上層のポリイミド層313とをエッチングする領域を多角形とすることで、開口部300に対する隔壁314の形成面積を増加させることなく、すなわち画素間のピッチを変化させることなしに、より一層平坦な機能層の形成を可能にし、より一層表示性能を向上させている。
【0044】
なお本実施形態のように、画素電極200の開口部300の形状、すなわち第1の無機材料層である酸化シリコン層311をパターニングする形状と、第2の無機材料層である窒化シリコン層312をパターニングする形状に差異がある場合は、エッチングレートの差を利用して同一のレジストパターンにより形成することは困難である。したがって、酸化シリコン層311をパターニングした後に窒化シリコン層312を基板上全面に形成し、別のフォトマスクを用いて別途パターニングすることが好ましい。
また、酸化シリコン層311および窒化シリコン層312を基板上全面に積層した後に、窒化シリコン層312を上記多角形にパターニングし、その後、再度フォトリソグラフィー工程により酸化シリコン層311をパターニングしてもよい。
(第3の実施形態)
【0045】
図9は、本発明の第3の実施形態にかかる有機EL表示装置の、段差部302の平面形状を示すものである。本実施形態の有機EL表示装置は、段差部302の平面形状(外周の形状)が星型となっていることが特徴である。上記第2の実施形態と同様に段差部302を直線を組み合わせて構成し、さらに内角が180度を超える部分を設けることによって、段差部302の外周の長さ、そして当該長さに基づく側壁部の面積をより一層増加させることができる。その結果、段差部302の形状を多角形とする場合に比べてより一層平坦な機能層の形成を可能にし、より一層表示性能を向上させることができる。
なお、段差部302と開口部300は異なるフォトマスクを用いてパターニングすることが好ましい点は、上記第2の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
【0046】
図10は、本発明の第4の実施形態にかかる有機EL表示装置の開口部300、および段差部302の平面形状(外周の形状)を示すものである。実施形態の有機EL表示装置は、開口部300、および段差部302の形状が方形であることが特徴である。
画素電極200の形状に合せて開口部300も方形とし、当該開口部の周辺に段差部302を形成することで、開口部300の面積を増加させると共に、当該開口部内に形成される機能層の平坦性を向上させ、表示性能を向上させることができる。
(第5の実施形態)
【0047】
図11は、本発明の第5の実施形態にかかる有機EL表示装置の開口部300、および段差部302の平面形状を示すものである。本実施形態の有機EL表示装置は、方形の開口部300と、複数の直線を組み合わせた平面形状(外周の形状)を持つ段差部302を有することが特徴である。開口部300の面積を増加させると共にその周辺の段差部302の側壁部の面積も増加させることができるので、当該開口部内に形成される機能層の平坦性をより一層向上させ、表示性能をより一層向上させることができる。
(変形例1)
【0048】
上述する各実施形態では段差部302の平面形状(外周の形状)を規則的なものとしている。しかし、本発明の電気光学装置における段差部302の形状は規則的なものに限定されるものではない。直線および/または曲線を不規則に組み合わせた形状や、フラクタクル図形のような形状を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】アクティブマトリクス型の有機EL表示装置の全体構成を示す回路構成図。
【図2】画素領域100を構成する各要素を示す平面構成図。
【図3】従来の有機EL表示装置の、隔壁の構成と機能層の形成手順等を示す模式断面図。
【図4】第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図。
【図5】第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図。
【図6】第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図。
【図7】第1の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図8】第2の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図9】第3実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図10】第4の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図11】第5の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【符号の説明】
【0050】
10…画像表示領域、20…基板、40…CF4プラズマ、第1のコンタクトホール21…、第2のコンタクトホール22…、第3のコンタクトホール23…、第4のコンタクトホール24…、第5のコンタクトホール25…、第6のコンタクトホール26…、第7のコンタクトホール27…、第8のコンタクトホール28…、100…画素領域、102…走査線、104…信号線、106…電源供給線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、114…発光素子、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、140…同期信号線、200…画素電極、202…第1のゲート電極、204…第1のチャネル領域、206…第1のソース領域、208…第1のドレイン領域、212…第2のゲート電極、214…第2のチャネル領域、216…第2のソース領域、218…第2のドレイン領域、221…第1の半導体層、222…第2の半導体層、232…ソース電極、234…ドレイン電極、300…開口部、302…段差部、310…無機材料層、311…第1の無機材料層としての酸化シリコン層、312…第2の無機材料層としての窒化シリコン層、313…有機材料層としてのポリイミド膜、314…隔壁、315…第1の層間膜、316…第2の層間膜、320…ノズル、321…機能層形成材料を溶質とする液材、322…機能層、323…正孔輸送層形成材料を溶質とする液材、324…正孔輸送層、325…発光層形成材料を溶質とする液材、326…発光層、328…陰極層、346…第1のレジスト層、348…第2のレジスト層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の電気光学装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と称する。)表示装置の製造工程では、基板上にマトリクス状に配置されている各々の画素電極上に、発光層等の機能層を複数回形成する必要がある。そして当該工程に用いる手法として、上記機能層形成材料を溶質とする液体材料(以下、「液材」と称する。)の液滴を上記画像素電極上に滴下して、溶媒を乾燥除去して固化するインクジェット法が有力とされている。
インクジェット法では、各々の画素電極を区画する隔壁を上記液滴が乗り越えないことと、上記隔壁と上記画素電極の境界近傍における上記液滴のつきまわりの確保と、の両立が必要となる。そこで隔壁を、有機材料からなる上部隔壁と無機材料からなる下部隔壁とを階段状に積層して、2層構造にする手法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−334782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述する構造の隔壁では、滴下された液滴が乾燥する工程において、画素周辺部における液滴の保持力が不足するため、画素電極上に形成される乾燥後の機能層の平坦性が低下し得るという課題があった。本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、機能層の平坦性を確保して、表示特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、基板上に規則的に配置された画素電極と、上記画素電極の開口面を囲む2以上の材料層からなる隔壁と、上記隔壁で囲まれた領域内に滴下した液体材料を固化して形成された少なくとも発光層を含む機能層と、を備える電気光学装置であって、上記隔壁が、第1の材料層の上面を底部とし、第2の材料層をパターニングして得られる面を側壁とする段差部を有することを特徴とする。
隔壁に段差部を設けることで、滴下後の液体材料を隔壁の方向に吸引でき、中央部に凝集しようとする働きを緩和できる。したがって、平坦な機能層が形成でき、表示性能、すなわち電気特性および寿命特性が向上した電気光学装置を得ることができる。
【0006】
好ましくは、上記第1の材料層および上記第2の材料層が無機材料からなることを特徴とする。
無機材料は親液性を有するため、滴下後の液滴を隔壁の方向に一層強く吸引できる。したがって、表示性能が一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0007】
また、好ましくは、上記隔壁が、上記第2の材料層の上層に、有機材料からなる第3の材料層をさらに有することを特徴とする。
有機材料は撥液性を付与できるため、滴下した液滴が隣接する画素電極の開口面に移動することを抑制できる。したがって、表示性能が一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0008】
また、好ましくは、上記段差部の外周の形状が、多角形であることを特徴とする。
かかる構成により、上記段差部の周辺長を増大でき、滴下後の液滴を隔壁の方向に一層強く吸引できる。したがって、表示性能が一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0009】
また、好ましくは、上記段差部の外周の形状に、内角が180度を超えている部分があることを特徴とする。
かかる構成により、上記段差部の周辺長をより一層増大でき、滴下後の液滴を隔壁の方向により一層強く吸引できる。したがって、表示性能がより一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0010】
また、好ましくは、上記段差部の外周の形状が、不規則な直線および/または曲線を連続した部分を有することを特徴とする。
かかる構成により、上記段差部の周辺長をより一層増大でき、滴下後の液滴を隔壁の方向により一層強く吸引できる。したがって、表示性能がより一層向上した電気光学装置を得ることができる。
【0011】
また、本発明にかかる電気光学装置は有機エレクトロルミネッセンス表示装置であることを特徴とする。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は機能層膜厚の均一性により表示性能が左右されるので、上述する構成により表示性能を向上させることができる。
【0012】
本発明にかかる電気光学装置の製造方法は、基板上に画素電極を規則的に配置する工程と、上記基板上に無機材料からなる第1の材料層を形成する工程と、上記第1の材料層の上層に無機材料からなる第2の材料層を形成する工程と、上記第1の材料層と上記第2の材料層を、双方の層の境界面に段差が生じるようにパターニングして、上記画素電極の周辺を囲む隔壁を形成する工程と、上記隔壁で囲まれた上記画素電極上に機能層形成材料を溶質とする液体材料の液滴を滴下する工程と、を含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、上記画像素電極上に滴下した液滴を上記段差部で保持できるので、平坦な機能層を形成でき、表示性能の優れた電気光学装置を得ることができる。
【0013】
好ましくは、上記第1の材料層、および上記第2の材料層をパターニングした後に、上記基板上に有機材料からなる第3の材料層を形成する工程と、上記第3の材料層を、平面形状が上記第2の材料層と略同一となるようにパターニングする工程と、をさらに含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、上記画像素電極上に滴下した液滴が隣接する画素電極上に
流出することを抑制できるので、表示性能がより一層優れた電気光学装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。本発明は隔壁内に液滴を滴下した後に溶媒を乾燥除去することで機能層を形成する工程を有する電気光学装置に対応するものであり、特に有機EL表示装置に対応するものである。そこで、まず図1および図2を用いて、後述する従来例および各実施形態において共通するアクティブマトリクス型の有機EL表示装置の構成について説明する。
【0015】
図1は、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置の全体構成を示す回路構成図である。画像表示領域10には、複数の走査線102と、走査線102と直交する複数の信号線104と、信号線104と平行に延びる複数の電源供給線106とが形成され、走査線102と信号線104との各々の交点近傍には、画素領域100が形成されている。
【0016】
さらに、各々の画素領域100には、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106から駆動電流が流れ込む発光素子114が形成されている。後述するように、発光素子114は画素電極である陽極と、画像表示領域10の全範囲にわたって共通電位となる陰極とでEL層を含む機能層を狭持しており、上記駆動電流は陽極に供給される。
【0017】
画像表示領域10の周辺には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路120から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、信号線104には信号線駆動回路130から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。なお、走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0018】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から陽極に駆動電流が流れ、さらに機能層を介して陰極に駆動電流が流れる。その結果、機能層は駆動電流の大きさに応じて発光する。
【0019】
次に、図2を用いて、画素領域100の構成について説明する。図2は、基板上における、画素領域100を構成する各要素を示す平面構成図である。
スイッチング用TFT108は、走査線102から突き出した第1のゲート電極202と、方形にパターニングされた第1の半導体層221と、からなる。第1の半導体層221は、第1のチャネル領域204と、その両側の第1のソース領域206および第1のドレイン領域208と、からなる。そして第1のチャネル領域204は、第1のゲート電極202と対向している。
【0020】
駆動用TFT112は、容量電極から突き出した第2のゲート電極212と、方形にパターニングされた第2の半導体層222と、からなる。第2の半導体層222は、第2のチャネル領域214と、その両側の第2のソース領域216および第2のドレイン領域218と、からなる。そして第2のチャネル領域214は、第2のゲート電極212と対向している。
【0021】
スイッチング用TFT108の、第1のドレイン領域208は第1のコンタクトホール21を介して信号線104と導通し、第1のソース領域206は第2のコンタクトホール22を介してソース電極232と導通している。そして、ソース電極232は、第3のコンタクトホール23を介して第2のゲート電極212と導通するとともに、第4のコンタクトホール24を介して保持容量110の一方の電極層と導通している。
【0022】
保持容量110のもう一方の電極層は、第1の半導体層221と同一の層をパターニングして形成され、第5のコンタクトホール25を介して電源供給線106と導通している。
【0023】
第2のソース領域216は第6のコンタクトホール26を介して電源供給線106の突出部分と導通している。第2のドレイン領域218は第7のコンタクトホール27を介してドレイン電極234と導通し、ドレイン電極234と画素電極200は第8のコンタクトホール28を介して導通している。
【0024】
本実施形態の有機EL装置はボトムエミッション方式である。基板は透光性材料からなり、画素電極200はITO(酸化インジウム・スズ)等の導電性透光材料で形成される。そして図3以降で示すように、後述する隔壁314で画素の開口部300が形成されている。そして隔壁314で囲まれる凹部内には、発光層としての有機EL材料を含む機能層がインクジェット法により形成され、画素の開口部300を介して光を出射してる。
【0025】
上述したように隔壁の断面形状は上記機能層の形成時に大きく影響する。本発明は隔壁の断面形状を工夫して機能層の均一化を目指すものである。具体的には、隔壁314を2層以上の材料層で形成し、画素電極上に形成される第1の材料層と、その上層に形成される第2の材料層とを別個にパターニングすることで、段差部302を形成している。以下、従来の有機EL表示装置の機能層の形成、及び本発明の実施形態における機能層の形成について、図2に示すA―A´線における断面図を用いて述べる。
【0026】
図3は、従来の有機EL表示装置の隔壁の構成と機能層の形成手順等を示す模式断面図である。まず図3(a)に示すように、基板20上に第1の層間膜315、および第2の層間膜316を介して画素電極200を形成し、当該画素電極の周囲を囲む隔壁314を形成する。従来の有機EL表示装置の隔壁314は、下層の酸化シリコン等の無機材料層310と、上層のポリイミド層313の2層構造となっている。隔壁形成後、CF4等のフッ素原子を含んだガスによるプラズマでプラズマ処理を行い、上層のポリイミド層313に撥液性を付与する。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、隔壁314で囲まれている画素電極200上にインクジェット装置の液滴ノズル(以下、「ノズル」と称する。)320から機能層形成材料を溶質とする液滴321を滴下する。滴下された液滴321は、ポリイミド層313の側壁部に達する。
【0028】
次に図3(c)に示すように、滴下された機能液321から溶媒を乾燥除去して機能層322を形成する。当該機能層は膜厚が均一であることが好ましい。しかし、隔壁314の上層であるポリイミド層313は撥液性が付与されているため、滴下された機能液321を保持する力が不足している。その結果、画素電極200上に形成される機能層322は中央が盛り上がるような形状となり、膜厚の均一性が劣化し得る。そこで本発明の実施形態にかかる有機EL表示装置およびその製造方法は、隔壁314に段差部302(図4等参照)を形成することで、機能層の膜厚の均一性を向上させている。
(第1の実施形態)
【0029】
本発明の第1の実施形態にかかる有機EL表示装置の隔壁の構成、および機能層の形成過程を、図4〜7により説明する。図4〜6は本実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図であり、図2のA―A´線における断面を示すものである。そして図7は、隔壁314形成後の画素電極200およびその周辺の上面図である。
【0030】
まず図4(a)に示すように、基板20上に、第1の層間膜315および第2の層間膜316を介して画素電極200を形成する。そして、画素電極200を形成後の基板20上に、第1の無機材料層としての酸化シリコン層311および第2の無機材料層としての窒化シリコン層312を形成する。
【0031】
次に図4(b)に示すように、画素電極200を囲む領域に第1のレジスト層346を形成し、当該レジストで覆われていない領域の窒化シリコン層312を選択的にエッチングして除去する。
【0032】
次に図4(c)に示すように、第1のレジスト層346をそのままの状態に保ちつつ窒化シリコン層312をエッチングした後、連続して酸化シリコン層311もエッチングする。窒化シリコン層312の方がエッチングレートが速いため、エッチングが横方向にも進み、底部と側壁とが共に親液性の無機材料である段差部302が形成される。
【0033】
次に図4(d)に示すように、第1のレジスト346を除去した後、基板20上全面に有機材料としてのポリイミド層313を形成し、当該ポリイミド層の画素電極200を囲む領域に第2のレジスト層348を形成する。
【0034】
次に図5(a)に示すように、第2のレジスト層348で覆われていない領域のポリイミド層313をエッチングにより除去し、その後第2のレジスト層348も除去する。2層の無機材料層(311および312)とポリイミド層313との計3層からなり、双方の無機材料層の境界面に段差部302を有する隔壁314が形成される。
【0035】
図7は、本実施形態における第2のレジスト348を除去した後の画素電極200、および段差部302の平面形状を示すものである。画素電極200の周囲を囲む環状の段差部302が形成されている。酸化シリコン層311と窒化シリコン層312とを積層して連続的にエッチングすると、エッチングレートの差により窒化シリコン層312が水平方向にエッチングされ、上述の段差部302が形成される。
当該段差部は底面および側壁部が親液性を有する無機材料で形成されている。したがって、従来の有機EL表示装置の形成過程における、底面が無機材料で側壁部が有機材料の隔壁とは異なり、側壁部に液材を引き付けて保持することができる。
【0036】
次に図5(b)に示すように、基板20全面に、CF4プラズマ40でプラズマ処理する。隔壁314の最上部を形成するポリイミド層313の表面にフッ素原子が入り込み、ポリイミドに含有されている炭素原子と反応し、表面が撥液性となる。なお、上記CF4によるプラズマ処理後、酸素プラズマによる処理を行なうことが好ましい。酸化シリコン層311、窒化シリコン層312、および画素電極200表面の有機系の残渣を除去することで親液性を向上できる。ここで、ポリイミド層313は、上記CF4プラズマ処理によりテフロン(登録商標)等の安定した物質となっているため、処理条件を最適化することにより上記酸素プラズマ処理を経ても撥液性を保つことができる。
【0037】
次に図5(c)に示すように、画素電極200上に、正孔輸送層形成材料を溶質とする液材323をノズル320から滴下する。正孔輸送層形成材料は例えば、ポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いる。段差部302は親液性のため、滴下後の液材323は周縁部すなわち隔壁314の方に引き付けられる態様となる。
【0038】
次に図5(d)に示すように、液材323から溶媒を乾燥除去して正孔輸送層324を形成する。滴下後の液材323は隔壁314の方に引き付けられた状態を保ちつつ乾燥するので、形成された正孔輸送層324は中央部が盛り上がることはない。したがって図示するように、平坦な断面形状を有する正孔輸送層324が形成される。
【0039】
次に図6(a)に示すように、正孔輸送層324上に、有機EL材料すなわち発光層形成材料を溶質とする液材325をノズル320より滴下する。上述の液材323と同様に、滴下後の液材325は、段差部302の働きにより周縁部すなわち隔壁314の方に引き付けられる。
【0040】
次に図6(b)に示すように、液材325から溶媒を乾燥除去して発光層326を形成する。上述の正孔輸送層324と同様に、平坦な断面形状を有する発光層326が形成される。その結果、正孔輸送層324と発光層326とからなる機能層322も平坦な断面形状を有することとなる。
【0041】
最後に図6(c)に示すように、基板20上全面にアルミニウム等の導電材料からなる陰極層328を形成する。そして、その後の若干の周知工程を経て、有機EL表示装置を形成する。上述したように、機能層322の形成過程において、画素電極200上に滴下された液材を隔壁314の方向に引き付けつつ乾燥させるため、中央部が盛り上がり凸状になる現象を抑制できる。その結果、平坦な機能層322を形成でき、有機EL表示装置の表示特性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
【0042】
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる有機EL表示装置の、段差部302の平面形状を示すものである。各構成要素の断面形状、および形成過程は上記第1の実施形態と同様である。本実施形態の有機EL表示装置は、段差部302の平面形状(外周の形状)が多角形(本実施形態では8角形)であることが特徴である。
【0043】
上述したように、画素電極200の開口部300に滴下された液材は段差部302に引き付けられるが、その際、特に側壁部に強く引き付けられ保持される。そのため、側壁部の面積を増大させることで、より一層強く保持できる。そして、上記側壁部の面積を広くするためには、第2の無機材料層を円形以外の形状にパターニングすることが好ましい。かかる態様により、第2の無機材料層としての窒化シリコン層の膜厚を増加させることなく側壁部の面積を増大できる。したがって本実施形態の有機EL表示装置は、窒化シリコン層312およびその上層のポリイミド層313とをエッチングする領域を多角形とすることで、開口部300に対する隔壁314の形成面積を増加させることなく、すなわち画素間のピッチを変化させることなしに、より一層平坦な機能層の形成を可能にし、より一層表示性能を向上させている。
【0044】
なお本実施形態のように、画素電極200の開口部300の形状、すなわち第1の無機材料層である酸化シリコン層311をパターニングする形状と、第2の無機材料層である窒化シリコン層312をパターニングする形状に差異がある場合は、エッチングレートの差を利用して同一のレジストパターンにより形成することは困難である。したがって、酸化シリコン層311をパターニングした後に窒化シリコン層312を基板上全面に形成し、別のフォトマスクを用いて別途パターニングすることが好ましい。
また、酸化シリコン層311および窒化シリコン層312を基板上全面に積層した後に、窒化シリコン層312を上記多角形にパターニングし、その後、再度フォトリソグラフィー工程により酸化シリコン層311をパターニングしてもよい。
(第3の実施形態)
【0045】
図9は、本発明の第3の実施形態にかかる有機EL表示装置の、段差部302の平面形状を示すものである。本実施形態の有機EL表示装置は、段差部302の平面形状(外周の形状)が星型となっていることが特徴である。上記第2の実施形態と同様に段差部302を直線を組み合わせて構成し、さらに内角が180度を超える部分を設けることによって、段差部302の外周の長さ、そして当該長さに基づく側壁部の面積をより一層増加させることができる。その結果、段差部302の形状を多角形とする場合に比べてより一層平坦な機能層の形成を可能にし、より一層表示性能を向上させることができる。
なお、段差部302と開口部300は異なるフォトマスクを用いてパターニングすることが好ましい点は、上記第2の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
【0046】
図10は、本発明の第4の実施形態にかかる有機EL表示装置の開口部300、および段差部302の平面形状(外周の形状)を示すものである。実施形態の有機EL表示装置は、開口部300、および段差部302の形状が方形であることが特徴である。
画素電極200の形状に合せて開口部300も方形とし、当該開口部の周辺に段差部302を形成することで、開口部300の面積を増加させると共に、当該開口部内に形成される機能層の平坦性を向上させ、表示性能を向上させることができる。
(第5の実施形態)
【0047】
図11は、本発明の第5の実施形態にかかる有機EL表示装置の開口部300、および段差部302の平面形状を示すものである。本実施形態の有機EL表示装置は、方形の開口部300と、複数の直線を組み合わせた平面形状(外周の形状)を持つ段差部302を有することが特徴である。開口部300の面積を増加させると共にその周辺の段差部302の側壁部の面積も増加させることができるので、当該開口部内に形成される機能層の平坦性をより一層向上させ、表示性能をより一層向上させることができる。
(変形例1)
【0048】
上述する各実施形態では段差部302の平面形状(外周の形状)を規則的なものとしている。しかし、本発明の電気光学装置における段差部302の形状は規則的なものに限定されるものではない。直線および/または曲線を不規則に組み合わせた形状や、フラクタクル図形のような形状を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】アクティブマトリクス型の有機EL表示装置の全体構成を示す回路構成図。
【図2】画素領域100を構成する各要素を示す平面構成図。
【図3】従来の有機EL表示装置の、隔壁の構成と機能層の形成手順等を示す模式断面図。
【図4】第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図。
【図5】第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図。
【図6】第1の実施形態の有機EL表示装置の製造方法を示す模式断面図。
【図7】第1の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図8】第2の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図9】第3実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図10】第4の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【図11】第5の実施形態にかかる有機EL表示装置の段差部の平面形状を示す図。
【符号の説明】
【0050】
10…画像表示領域、20…基板、40…CF4プラズマ、第1のコンタクトホール21…、第2のコンタクトホール22…、第3のコンタクトホール23…、第4のコンタクトホール24…、第5のコンタクトホール25…、第6のコンタクトホール26…、第7のコンタクトホール27…、第8のコンタクトホール28…、100…画素領域、102…走査線、104…信号線、106…電源供給線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、114…発光素子、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、140…同期信号線、200…画素電極、202…第1のゲート電極、204…第1のチャネル領域、206…第1のソース領域、208…第1のドレイン領域、212…第2のゲート電極、214…第2のチャネル領域、216…第2のソース領域、218…第2のドレイン領域、221…第1の半導体層、222…第2の半導体層、232…ソース電極、234…ドレイン電極、300…開口部、302…段差部、310…無機材料層、311…第1の無機材料層としての酸化シリコン層、312…第2の無機材料層としての窒化シリコン層、313…有機材料層としてのポリイミド膜、314…隔壁、315…第1の層間膜、316…第2の層間膜、320…ノズル、321…機能層形成材料を溶質とする液材、322…機能層、323…正孔輸送層形成材料を溶質とする液材、324…正孔輸送層、325…発光層形成材料を溶質とする液材、326…発光層、328…陰極層、346…第1のレジスト層、348…第2のレジスト層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に規則的に配置された画素電極と、前記画素電極の開口面を囲む2以上の材料層からなる隔壁と、前記隔壁で囲まれた領域内に滴下した液体材料を固化して形成された少なくとも発光層を含む機能層と、を備える電気光学装置であって、
前記隔壁が、第1の材料層の上面を底部とし、第2の材料層をパターニングして得られる面を側壁とする段差部を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1の材料層および前記第2の材料層が無機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記隔壁が、前記第2の材料層の上層に、有機材料からなる第3の材料層をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記段差部の外周の形状が、多角形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記段差部の外周の形状に、内角が180度を超えている部分があることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記段差部の外周の形状が、不規則な直線および/または曲線を連続した部分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記電気光学装置が有機エレクトロルミネッセンス表示装置であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
基板上に画素電極を規則的に配置する工程と、
前記基板上に無機材料からなる第1の材料層を形成する工程と、
前記第1の材料層の上層に無機材料からなる第2の材料層を形成する工程と、
前記第1の材料層と前記第2の材料層を、双方の層の境界面に段差が生じるようにパターニングして、前記画素電極の周辺を囲む隔壁を形成する工程と、
前記隔壁で囲まれた前記画素電極上に機能層形成材料を溶質とする液体材料の液滴を滴下する工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の材料層、および前記第2の材料層をパターニングした後に、前記基板上に有機材料からなる第3の材料層を形成する工程と、
前記第3の材料層を、平面形状が前記第2の材料層と略同一となるようにパターニングする工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に規則的に配置された画素電極と、前記画素電極の開口面を囲む2以上の材料層からなる隔壁と、前記隔壁で囲まれた領域内に滴下した液体材料を固化して形成された少なくとも発光層を含む機能層と、を備える電気光学装置であって、
前記隔壁が、第1の材料層の上面を底部とし、第2の材料層をパターニングして得られる面を側壁とする段差部を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1の材料層および前記第2の材料層が無機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記隔壁が、前記第2の材料層の上層に、有機材料からなる第3の材料層をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記段差部の外周の形状が、多角形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記段差部の外周の形状に、内角が180度を超えている部分があることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記段差部の外周の形状が、不規則な直線および/または曲線を連続した部分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記電気光学装置が有機エレクトロルミネッセンス表示装置であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
基板上に画素電極を規則的に配置する工程と、
前記基板上に無機材料からなる第1の材料層を形成する工程と、
前記第1の材料層の上層に無機材料からなる第2の材料層を形成する工程と、
前記第1の材料層と前記第2の材料層を、双方の層の境界面に段差が生じるようにパターニングして、前記画素電極の周辺を囲む隔壁を形成する工程と、
前記隔壁で囲まれた前記画素電極上に機能層形成材料を溶質とする液体材料の液滴を滴下する工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の材料層、および前記第2の材料層をパターニングした後に、前記基板上に有機材料からなる第3の材料層を形成する工程と、
前記第3の材料層を、平面形状が前記第2の材料層と略同一となるようにパターニングする工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−91072(P2008−91072A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267863(P2006−267863)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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