説明

電気光学装置および電子機器

【課題】簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図った電子回路、電子回路の駆動方法、電気光学装置、電気光学装置の駆動方法および電子機器を提供すること。
【解決手段】各単位回路は、トランジスタQsと、これに接続された有機EL素子31および逆バイアス用の保持用キャパシタCpとを備える。保持用キャパシタCpの端子bは対応するトランジスタQsのゲートと同じ走査線(Y1〜Ymの一つ)に接続されている。走査線に順に印加される信号はGND,Vg1および−Vg2の電圧を含み、これら3レベルの電圧により有機EL素子31が交流駆動される。電圧Vg1が走査線に印加される各選択期間にトランジスタQsがオン状態になると、有機EL素子は順方向にバイアスされ発光する。電圧−Vg2が走査線に印加されると有機EL素子が逆方向にバイアスされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路、電子回路の駆動方法、電気光学装置、電気光学装置の駆動方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気光学装置として有機EL素子を用いた表示装置が、低消費電力、高視野角、高コントラスト比で他の装置より優れているとして注目されている。有機EL素子を用いた表示装置では、有機EL素子の寿命が短いという問題があった。このような問題を解決するために、有機EL素子を交流駆動するにした従来技術が知られている(例えば、特許文献1)。この表示装置は、複数の画素の各々に、スイッチング用TFTと、コンデンサと、電流制御用TFTと、整流特性を有する素子と、交流電源とを設け、交流電源から整流特性を有する素子に順方向に電圧をかけることで、有機EL素子に逆バイアスを加えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−358048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、複数の画素の各々に、2つのTFT、コンデンサ、整流特性を有する素子、走査線、データ線、および電源供給線が設ける必要があるとともに、さらに特別な交流電源が必要であった。このような構成であるため、上記従来技術では、1画素に多くの部品(素子や配線等)が詰め込まれることになり、開口率が上がりにくい。そのため、限られた開口部で有機EL素子を発光させるには強い発光強度が必要になる。そのためには、有機EL素子に多くの電流を流す必要が生じる。すると、有機EL素子の発熱等が発生しその寿命を低下させる。また、上記従来技術のように1画素に多くの部品が詰め込まれた複雑な構成だと、製造工程中のゴミ等の影響で歩留まりが悪くなり、安価な表示装置を提供するのが困難であった。
【0005】
さらに、上記交流電源は、各画素における有機EL素子のカソードと電源供給線との間に接続され、表示画面全体を交流駆動するために電源供給能力の大きな特別なものが必要であった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図った電子回路、電子回路の駆動方法、電気光学装置、電気光学装置の駆動方法および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における電気光学装置は、スイッチング素子を具備する電子回路において、前記スイッチング素子は、第1の配線に接続された制御用端子、第2の配線に接続された第1の端子、および電子素子と容量素子とに接続された第2の端子を備え、前記制御用端子に電圧が印加されて前記スイッチング素子がオン状態になると、前記第2の配線から供給されるデータ信号が前記第1および第2の端子を介して前記電子素子に書き込まれ、前記制御用端子に印加された前記電圧と逆極性の電圧が前記容量素子に印加されると前記電子素子が逆方向にバイアスされることを要旨とする。
【0008】
これによれば、(1)スイッチング素子の制御用端子に電圧が印加されてスイッチング素子がオン状態になると、第2の配線から供給されるデータ信号がスイッチング素子の第1の端子および第2の端子を介して電子素子に書き込まれる。このとき、電子素子は順方向にバイアスされる。容量素子の他方の端子に前記電圧と逆極性の電圧が印加されると、電子素子が逆方向にバイアスされる。こうして電子素子が交流駆動されるので、電子素子の長寿命化を図ることができる。(2)トランジスタはスイッチング素子用のトランジスタ一つですむとともに、電子素子を交流駆動するための特別な交流電源や電源供給線が不要になるので、少ない部品点数で構成が簡単な回路を実現できる。これによって製造コストを低減できる。しかも、回路構成が簡単になるので、製造工程中にゴミ等の影響を受けにくくなり、歩留まりが向上する。これによっても製造コストを低減できる。したがって、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
この電子回路において、前記電子素子は、電流駆動型の発光素子である。
これによれば、マトリクス状に配置される複数の画素の各単位回路に有機EL素子などの発光素子を用いるEL表示装置などの電気光学装置に適用する場合、各単位回路をスイッチング素子用のトランジスタ一つを含む簡単な回路で構成できるので、低コストの電気光学装置を実現できる。これとともに、上記従来技術のように、1画素に複数のトランジスタなどの素子や配線など、多くの部品が詰め込まれないので、1画素の有効な発光領域が増え、開口率が増加する。これにより、発光素子に流す電流を減らして単位面積当たりの発光素子の発光強度を小さくすることができ、発光素子の発熱量を少なくして素子温度を低く抑えることが可能になる。これによって、発光素子の寿命をさらに長くすることができる。
【0010】
この電子回路において、前記スイッチング素子がオン状態になると、前記データ信号の電圧に応じた電荷が前記容量素子に蓄積されるとともに、前記データ信号に応じた電流が前記スイッチング素子を通じて前記発光素子に流れて前記発光素子が発光し、前記スイッチング素子がオフ状態になると、前記容量素子に蓄積された電荷が前記発光素子を通じて放電して前記発光素子に電流が流れ、前記発光素子が発光する。
【0011】
これによれば、スイッチング素子がオン状態になると、データ信号に応じた電流がスイッチング素子を通じて発光素子に流れるので、データ信号の電流に応じた明るさで発光素子を発光させることができる。また、スイッチング素子がオン状態からオフ状態になると、容量素子に蓄積された電荷が発光素子を通じて放電して発光素子に電流が流れ、発光素子が発光する。このため、スイッチング素子がオフ状態になってからスイッチング素子が逆方向にバイアスされるまでの間でも、発光素子を発光させることができる。
【0012】
本発明におけるスイッチング素子を具備する電子回路の駆動方法において、前記スイッチング素子は、第1の配線に接続された制御用端子、第2の配線に接続された第1の端子、および電子素子と容量素子とに接続された第2の端子を備え、前記制御用端子に電圧を印加して前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第2の配線から供給されるデータ信号を前記第1および第2の端子を介して前記電子素子に書き込む第1のステップと、前記制御用端子に印加された前記電圧と逆極性の電圧を前記容量素子に印加して前記電子素子を逆方向にバイアスする第2のステップとを備えることを要旨とする。
【0013】
これによれば、電子素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができる。
本発明における電気光学装置において、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを含み、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子と同一の走査線に接続され、前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子が交流駆動されるように構成したことを要旨とする。
【0014】
これによれば、(1)3レベルの電圧のうち一つの電圧(Vg1)が複数の走査線に順に印加されることで、複数の走査線が順に選択される。各選択期間に、選択する走査線に対応する各スイッチング素子がオン状態になると、データ線から供給されるデータ信号に応じた電流が発光素子に流れて発光素子が発光する。このとき、発光素子は順方向にバイアスされる。また、3レベルの電圧のうち、前記一つの電圧とは逆極性の電圧(−Vg2)が複数の走査線に順に印加されることで、対応する発光素子が逆方向にバイアスされ、発光素子の発光が停止する。こうして各単位回路の発光素子が交流駆動されるので、発光素子の長寿命化を図ることができる。(2)EL表示装置等の電気光学装置に適用する場合、各単位回路のトランジスタはスイッチング素子用のトランジスタ一つですむとともに、発光素子を交流駆動するための特別な交流電源や電源供給線が不要になる。このため、上記従来技術のように1画素に多くの部品が詰め込まれないので、1画素の有効な発光領域が増え、開口率が増加する。これにより、発光素子に流す電流を減らして単位面積当たりの発光素子の発光強度を小さくすることができ、発光素子の発熱量を少なくして素子温度を低く抑えることができるので、発光素子の長寿命化を図ることができる。(3)各単位回路のトランジスタはスイッチング素子用のトランジスタ一つですむとともに、発光素子を交流駆動するための特別な交流電源や電源供給線が不要になるので、製造コストを低減できる。また、各単位回路の構成が簡単になるので、製造工程中にゴミ等の影響を受けにくくなり、歩留まりが向上する。これによっても製造コストを低減できる。したがって、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストの電気光学装置を実現できる。(4)複数の走査線の各々に対応する一行分の単位回路毎に、各単位回路の発光素子を交流駆動することができる。(5)複数の走査線に3レベルの電圧の一つが順に印加される各選択期間に、スイッチング素子がオン状態になると、発光素子が発光するとともに、スイッチング素子を介して供給されるデータ信号の電圧に応じた電荷が容量素子に蓄積される。この後、スイッチング素子がオフ状態になると、容量素子に蓄積された電荷が発光素子を通じて放電して発光素子に電流が流れ、発光素子が発光する。そのため、前記逆極性の電圧を容量素子の他方の端子に印加して発光素子を逆方向にバイアスするタイミングを変えることで、スイッチング素子がオフ状態になった後での発光期間を適宜に調整することができる。
【0015】
なお、ここにいう「3レベルの電圧」は、例えば、基準電圧(GND)と、基準電圧より高い第1の電圧(Vg1)と、基準電圧より低い第2の電圧(−Vg2)との3種類の電圧である。
【0016】
本発明における電気光学装置において、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを含み、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子が接続された前記走査線より前に選択される前段の走査線に接続され、前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子が交流駆動されるように構成したことを要旨とする。
【0017】
これによれば、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストの電気光学装置を実現できる。また、複数の走査線の各々に対応する一行分の単位回路毎に、各単位回路の発光素子を交流駆動することができる。さらに、スイッチング素子がオフ状態になった後での発光期間を適宜に調整することができる。
【0018】
本発明における電気光学装置において、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを含み、前記容量素子の他方の端子は容量線に接続され、前記複数の走査線と前記容量線に順に印加される信号は2レベルの電圧をそれぞれ含み、該信号により前記発光素子が交流駆動されるように構成したことを要旨とする。
【0019】
これによれば、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストの電気光学装置を実現できる。また、前記逆極性の電圧を容量素子の他方の端子に印加して発光素子を逆方向にバイアスするタイミングを変えることで、スイッチング素子がオフ状態になった後での発光期間を適宜に調整することができる。
【0020】
この電気光学装置において、前記容量線は、前記複数の走査線の各々に対応する一行分の前記単位回路毎に独立して設けられている。
これによれば、複数の走査線の各々に対応する一行分の単位回路毎に、各単位回路の発光素子を交流駆動することができる。
【0021】
本発明における電気光学装置の駆動方法において、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを備え、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子と同一の走査線に接続され、前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子を交流駆動することを要旨とする。
【0022】
これによれば、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストの電気光学装置を実現できる。また、複数の走査線の各々に対応する一行分の単位回路毎に、各単位回路の発光素子を交流駆動することができる。さらに、スイッチング素子がオフ状態になった後での発光期間を適宜に調整することができる。
【0023】
本発明における電気光学装置の駆動方法において、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを備え、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子が接続された前記走査線より前に選択される前段の走査線に接続され、前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子を交流駆動することを要旨とする。
【0024】
これによれば、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストの電気光学装置を実現できる。また、複数の走査線の各々に対応する一行分の単位回路毎に、各単位回路の発光素子を交流駆動することができる。さらに、スイッチング素子がオフ状態になった後での発光期間を適宜に調整することができる。
【0025】
本発明における電気光学装置の駆動方法において、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを備え、前記容量素子の他方の端子は容量線に接続され、前記複数の走査線及び前記容量線に順に印加される信号は2レベルの電圧をそれぞれ含み、該信号により前記発光素子を交流駆動することを要旨とする。
【0026】
これによれば、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに素子を交流駆動することができ、素子の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストの電気光学装置を実現できる。また、前記逆極性の電圧を容量素子の他方の端子に印加して発光素子を逆方向にバイアスするタイミングを変えることで、スイッチング素子がオフ状態になった後での発光期間を適宜に調整することができる。
【0027】
この電気光学装置において、前記容量線は、前記複数の走査線の各々に対応する一行分の前記単位回路毎に独立して設けられている。
これによれば、複数の走査線の各々に対応する一行分の単位回路毎に、各単位回路の発光素子を交流駆動することができる。
【0028】
この電気光学装置の駆動方法において、前記複数の走査線の各々を1フレームに1回ずつ選択して、前記複数の単位回路の各発光素子を、前記複数のデータ線に供給されるアナログ電圧信号に応じて1フレームに1回ずつ発光させる。
【0029】
これによれば、複数の単位回路の各発光素子を、1フレームに1回ずつ、アナログ電圧信号に応じた明るさで発光させることができる。
この電気光学装置の駆動方法において、1フレームを複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド駆動による階調制御を行う。
【0030】
これによれば、発光素子を交流駆動する方式にサブフィールド駆動による階調制御を組み合わせることで、1フレーム内に複数回発光するので、通常の駆動方法に比べ明るい画面を容易に得ることができる。
【0031】
なお、ここにいう「サブフィールド駆動による階調制御」とは、1フレームを複数のサブフィールドに分割し、複数のサブフィールド毎に、階調データに基づく2値の電圧のいずれか一方を各発光素子に書き込んで時分割によるデジタル階調制御を行う方法をいう。
【0032】
本発明における電子機器は、請求項5乃至8のいずれか一つに記載の電気光学装置を備える。
これによれば、電子機器の表示品質を向上させることができる。従って、視認性の良い電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係るEL表示装置を示すブロック図。
【図2】図1に示す表示パネル部の等価回路と駆動回路を示すブロック図。
【図3】図2に示す表示パネル部の1画素の等価回路を示す回路図。
【図4】(a)〜(c)は図2に示す表示パネル部における走査線の信号を示す波形図。
【図5】(a),(b)は図2に示す表示パネル部におけるデータ信号を示す波形図。
【図6】第2実施形態における表示パネル部の等価回路と駆動回路を示すブロック図。
【図7】(a)〜(c)は図6に示す表示パネル部における走査線の信号を示す波形図。
【図8】第3実施形態における表示パネル部の等価回路と駆動回路を示すブロック図。
【図9】(a)〜(c)は図8に示す表示パネル部における走査線と容量線の信号を示す波形図。
【図10】(a)〜(c)は第4実施形態における走査線の信号を示す波形図。
【図11】第4実施形態による駆動方法の一例を示す波形図。
【図12】(a)〜(c)は第5実施形態における走査線の信号を示す波形図。
【図13】(a)〜(c)は第6施形態における走査線の信号を示す波形図。
【図14】EL表示装置を用いたパーソナルコンピュータを示す斜視図。
【図15】第1実施形態の変形例における走査線の信号を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明を電気光学装置としてのEL表示装置に適用した第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。
【0035】
図1はEL表示装置の回路構成を示し、図2は表示パネル部の等価回路と駆動回路を示し、また、図3は1画素の等価回路を示している。
図1において、EL表示装置20は、表示パネル部21、走査線駆動回路22、データ線駆動回路23及び制御回路24を備えている。走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路23はそれぞれ、制御回路24により制御されて複数の走査線Y1〜Ym及び複数のデータ線X1〜Xnを駆動する。制御回路24には、データ信号と、同期信号と、クロック信号とが外部回路から入力される。また、制御回路24から走査線駆動回路22には、垂直同期信号、クロック信号などが信号線を介して供給される。そして、制御回路24からデータ線駆動回路23には、データ信号、水平同期信号などが信号線を介して供給されるようになっている。
【0036】
EL表示装置20の各要素21〜24は、それぞれが独立した電子部品によって構成されていてもよい。例えば、各要素21〜24が1チップの半導体集積回路装置によって構成されていてもよい。また、各要素21〜24の全部若しくは一部が一体となった電子部品として構成されていてもよい。例えば、表示パネル部21に、走査線駆動回路22とデータ線駆動回路23とが一体的に形成されていてもよい。各要素21〜24の全部若しくは一部がプログラマブルなICチップで構成され、その機能がICチップに書き込まれたプログラムによりソフトウェア的に実現されてもよい。
【0037】
表示パネル部21は、図2に示すように、列方向に沿って延びるn列のデータ線X1〜Xn(nは整数)と、行方向に沿って延びるm行の走査線Y1〜Ym(mは整数)との交差部にマトリクス配置された複数の(m×n個の)画素30を備えている。
【0038】
各画素30の単位回路30A(図3に示す1画素の等価回路)は、図2及び図3に示すように、スイッチング素子としての一つのスイッチング用トランジスタQsと、電子素子或いは発光素子としての有機EL素子31と、容量素子としての保持用キャパシタCpとを備えている。各画素30の単位回路30Aが本発明の電子回路に相当する。
【0039】
スイッチング用トランジスタ(以下、「トランジスタ」という。)Qsは、薄膜トランジスタ(TFT)である。本例では、トランジスタQsはnチャンネル型FETにより構成されている。トランジスタQsは、制御用端子であるゲート、第1の端子であるソース、および第2の端子であるドレインを有する。トランジスタQsのゲートは走査線Y1〜Ymの一つに接続され、そのソースはデータ線X1〜Xnの一つに接続され、そして、そのドレインに有機EL素子31と保持用キャパシタCpとが並列に接続されている。
【0040】
有機EL素子31は、発光層が有機ELで構成され、電流が供給されることによって発光する電流駆動型の発光素子である。各画素30の保持用キャパシタCpの端子a(一方の端子)は対応する一つのトランジスタQsのドレインに接続され、保持用キャパシタCpのもう一つの端子b(他方の端子)は、対応する一つのトランジスタQsのゲートと同じ走査線に接続されている。例えば、走査線Y1に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタCpの端子bは、対応するトランジスタQsのゲートと同じ走査線Y1に接続されている。また、各画素30の有機EL素子31の陽極(一方の端子)はトランジスタQsのドレインに接続され、その陰極(他方の端子)は共通電極(カソード電極)に接続されている。このカソード電極の電位は、本例では一般的な電位0(V)であるが、データ信号の電圧値であるVd(V)よりも低い電圧値であれば使用可能である。
【0041】
この第1実施形態のEL表示装置20では、複数の走査線Y1〜Ymの各々を1フレームに1回ずつ選択して、複数の画素30の各有機EL素子31を、複数のデータ線X1〜Xnの各々に供給されるアナログ電圧信号(データ信号)に応じて1フレームに1回発光させるようになっている。
【0042】
また、このEL表示装置20では、複数の走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号は、図4(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1(走査信号)と、電圧Vg1とは逆極性である電圧−Vg2との3レベルの電圧を含んでいる。これら3レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31が交流駆動されるようになっている。
【0043】
つまり、複数の走査線Y1〜Ymの各々には、走査線Y1〜Ymの一つを順に選択する各選択期間h1(1水平走査期間)に電圧Vg1が印加され、次段の走査線の選択期間h1と一致する逆バイアス期間h2に電圧−Vg2が印加され、その他の期間では基準電圧GNDが印加されるようになっている。例えば、走査線Y1には、図4(a)に示すように、選択期間h1に電圧Vg1が印加され、走査線Y1の次に選択される次段の走査線Y2の選択期間h1と一致する逆バイアス期間h2に電圧−Vg2が印加される。同様に、走査線Y2には、図4(b)に示すように、選択期間h1に電圧Vg1が印加され、逆バイアス期間h2に電圧−Vg2が印加される。そして、走査線Ymには、図4(c)に示すように、選択期間h1に電圧Vg1が印加され、逆バイアス期間h2に電圧−Vg2が印加される。
【0044】
次に、本例のEL表示装置20の動作を図4および図5に基づいて説明する。図5(a),(b)は複数のデータ線X1〜Xnの各々に印加するデータ信号の電圧波形をそれぞれ示している。
【0045】
複数の走査線Y1〜Ymを順に選択する各選択期間h1に、選択する一つの走査線に対応する複数の画素30の各トランジスタQsのゲートに電圧Vg1が印加されて、各トランジスタQsがオン状態になる。これにより、複数のデータ線X1〜Xnから一斉に供給されるデータ信号(アナログ電圧信号)の電圧Vd(図5(a),(b)参照)が、各トランジスタQsを介して対応する各有機EL素子31と各保持用キャパシタCpに印加される。
【0046】
これにより、各選択期間h1に、データ信号の電圧Vdに応じた電荷Qが各保持用キャパシタCpに蓄積されるとともに、データ信号に応じた電流が各トランジスタQsを通じて有機EL素子31に流れ、その電流に応じた明るさで有機EL素子31が発光する。このとき、各有機EL素子31は順方向にバイアスされる。すなわち、図2において、A点がB点より高電位に保たれる。
【0047】
選択期間h1が終了すると、選択が終了した走査線には、その選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、電圧−Vg2が印加される。例えば、走査線Y1の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、走査線Y1に電圧−Vg2が印加される。これにより、選択期間h1が終了した走査線、例えば走査線Y1に対応する複数の画素30の各単位回路30Aにあっては、電圧−Vg2が印加されている逆バイアス期間h2の間、各保持用キャパシタCpの容量Csと有機EL素子31の容量C0とで電圧−Vg2が分割された電圧がA点に印加される。このときのA点の電位Vaは、次式で表される。(一般に、Cgs<<C0、Csのため、Cgsは無視する)
Va=−C0/(C0+Cs)×Vg2
これにより、選択期間h1が終了した走査線に対応する複数の画素30の各有機EL素子31は、逆方向にバイアスされる。また、選択期間h1が終了した走査線に印加される電圧が選択期間h1の終了と同時にVg1から−Vg2に変化するので、各有機EL素子31の発光は停止する。こうした動作が、複数の走査線Y1〜Ymを順に選択して1フレームの画面を構成する間、選択する走査線毎に繰り返され、各走査線に対応する複数の画素30の各有機EL素子31が交流駆動される。
【0048】
本実施形態のEL表示装置20において、一つの具体例として、有機EL素子31の容量C0の1/3の容量CsをTFT基板に作りこんだ。また、各有機EL素子31を60Hzに1回の発光で十分な明るさを得るには、上記A点にVa=7Vの電圧を選択期間h1に印加する必要がある。これから逆算すると、Vg2は9.3Vとなる。トランジスタQsをオンするには、15VのVg1が必要であった。したがって、各走査線には、合計振幅が24.3Vの信号を印加する必要がある。
【0049】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
・複数の走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号は、基準電圧GNDと、電圧Vg1と、電圧Vg1とは逆極性である電圧−Vg2との3レベルの電圧を含み、これら3レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31を交流駆動することができる。
【0050】
・3レベルの電圧のうち一つの電圧Vg1が図4(a)〜(c)に示すように複数の走査線Y1〜Ymに順に印加されることで、複数の走査線が順に選択される。こうして複数の走査線が順に選択される各選択期間h1に、選択する走査線に対応する複数の画素30の各トランジスタQsがオン状態になると、データ線X1〜Xnから供給されるデータ信号に応じた電流が各有機EL素子31に流れて各有機EL素子31が発光する。このとき、有機EL素子31は順方向にバイアスされる。選択期間h1が終了した各走査線に、電圧Vg1とは逆極性の電圧−Vg2が印加されることで、その走査線に対応する複数の画素30の各有機EL素子31が逆方向にバイアスされる。こうして複数の画素30の各単位回路30Aの有機EL素子31が交流駆動されるので、有機EL素子31の長寿命化を図ることができる。
【0051】
・複数の画素30の各単位回路30Aにおいて、トランジスタはスイッチング素子用のトランジスタQs一つですむとともに、有機EL素子31を交流駆動するための特別な交流電源や電源供給線が不要になる。このため、上記従来技術のように、1画素に多くの部品が詰め込まれないので、各画素30の有効な発光領域が増え、開口率が増加する。これにより、有機EL素子31に流す電流を減らして単位面積当たりの有機EL素子31の発光強度を小さくすることができ、有機EL素子31の発熱量を少なくして素子温度を低く抑えることが可能になる。これによっても、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0052】
・複数の画素30の各単位回路30Aにおいて、トランジスタはスイッチング素子用のトランジスタQs一つですむとともに、有機EL素子31を交流駆動するための特別な交流電源や電源供給線が不要になるので、少ない部品点数で構成が簡単な単位回路30Aが得られる。しかも、各単位回路30Aの構成が簡単になるので、製造工程中にゴミ等の影響を受けにくくなり、歩留まりが向上する。これによって、製造コストが低減される。
【0053】
したがって、以上の作用効果により、簡単な回路で構成でき、特別な交流電源を用いずに有機EL素子31を交流駆動することができ、有機EL素子31の長寿命化と製造コストの低減を図ることができ、低コストのEL表示装置20を実現できる。
【0054】
・複数の走査線Y1〜Ymの各々に対応する一行分の単位回路30A毎に、各単位回路30Aの有機EL素子31を交流駆動することができる。これにより、上記従来技術のように表示画面全体を一度に交流駆動するために電流供給能力の大きい特別な交流電源が不要になるので、低消費電力のEL表示装置20を実現できる。
【0055】
・本実施形態では、逆バイアス期間h2を選択期間h1(1水平走査期間)と同じにしているが、逆バイアス期間を適宜に設定することで、逆バイアスの実効値や駆動電圧を任意に調整することができる。ここにいう「駆動電圧」は、各画素30のトランジスタQsをオン状態にするための電圧をいい、上記電圧Vg1に相当する。例えば、逆バイアス期間を選択期間h1の整数倍としてもよい。逆バイアス期間h2を、図15に示すように、選択期間h1の2倍(2h1)とすることにより、各有機EL素子31を逆バイアスするための電圧を−Vg2の1/2にすることができる。結果的に交流駆動が行われればよい。
【0056】
[第2実施形態]
図6は、本発明を電気光学装置としてのEL表示装置20に適用した第2実施形態を示している。この実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部材及び信号には、同じ符号を使って重複した説明を省略する。
【0057】
この第2実施形態は、走査線Y1〜Ymとデータ線X1〜Xnの交差部にマトリクス配置された複数の画素30の各保持用キャパシタCpの端子bが上記第1実施形態とは異なる配線に接続されている点で第1実施形態とは異なる。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0058】
各保持用キャパシタCpの端子bは、ゲート線40を介して、走査線Y1〜Ymのうち1つ前に選択される前段の走査線に接続されている。例えば、走査線Ymとデータ線X1〜Xnの各交差部にある複数の画素30の各保持用キャパシタCpの端子bは、ゲート線40を介して、前段の走査線である走査線Ym−1に接続されている。なお、第1行目の走査線Y1に対する前段の走査線はないので、その前段の走査線としてダミーの走査線Y0を設け、走査線Y1に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタCpの端子bをゲート線40を介してダミーの走査線Y0に接続してある。
【0059】
また、この第2実施形態のEL表示装置20でも、複数の走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号は、図7(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1(走査信号)と、電圧Vg1とは逆極性である電圧−Vg2との3レベルの電圧を含んでいる。これら3レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31が交流駆動されるようになっている。
【0060】
そのために、複数の走査線Y1〜Ymの各々には、走査線Y1〜Ymの一つを順に選択する各選択期間h1に電圧Vg1が印加され、次段の走査線の選択期間h1の間に基準電圧GNDが印加される。そして、次段の走査線の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間に電圧−Vg2が印加され、その後、基準電圧GNDに戻るようになっている。例えば、走査線Y1には、図7(a)に示すように、選択期間h1に電圧Vg1が印加され、次段の走査線の選択期間h1に基準電圧GNDが印加される。そして、次段の走査線の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間に電圧−Vg2が印加され、その後、基準電圧に戻る。走査線Y2〜Ymについても、図7(b)および図7(c)に示すように、走査線Y1と同様のタイミングで3レベルの電圧が順に印加される。そして、ダミーの走査線Y0には、例えば、走査線Y1の選択期間h1に基準電圧GNDが印加され、走査線Y1の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間に電圧−Vg2が印加され、その後、基準電圧GNDが印加されるようになっている。
【0061】
次に、本例のEL表示装置20の動作を図7に基づいて説明する。
複数の走査線Y1〜Ymを順に選択する各選択期間h1の間、選択する一つの走査線に対応する複数の画素30の各トランジスタQsのゲートに電圧Vg1が印加されて、各トランジスタQsがオン状態になる。これにより、各選択期間h1の間に、データ信号の電圧Vdに応じた電荷Qが各保持用キャパシタCpに蓄積されるとともに、データ信号に応じた電流が各トランジスタQsを通じて有機EL素子31に流れ、その電流に応じた明るさで有機EL素子31が発光する。このとき、各有機EL素子31は順方向にバイアスされる。すなわち、図6において、A点がB点より高電位に保たれる。
【0062】
各選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、選択が終了した走査線に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタの端子bが接続されている前段の走査線に電圧−Vg2が印加される。例えば、走査線Y2の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、走査線Y2に対応する複数の画素の各保持用キャパシタの端子bが接続されている前段の走査線Y1には電圧−Vg2が印加される。これにより、選択期間h1が終了した走査線、例えば走査線Y1に対応する複数の画素30の各単位回路30Aでは、電圧−Vg2が印加されている逆バイアス期間h2の間、上記A点の電位Vaが印加される。
【0063】
これにより、選択期間h1が終了した走査線に対応する複数の画素30の各有機EL素子31は、その走査線に印加される電圧が選択期間h1の終了と同時にVg1から−Vg2に変化するので、逆方向にバイアスされ、発光を停止する。
【0064】
こうした動作が、複数の走査線Y1〜Ymを順に選択して1フレームの画面を構成する間、選択する走査線毎に繰り返され、各た複数の画素30の各有機EL素子31が交流駆動される。
【0065】
このように構成された第2実施形態により、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
[第3実施形態]
図8は、本発明を電気光学装置としてのEL表示装置20に適用した第3実施形態を示している。この実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部材及び信号には、同じ符号を使って重複した説明を省略する。
【0066】
この第3実施形態は、走査線Y1〜Ymとデータ線X1〜Xnの交差部にマトリクス配置された複数の画素30の各保持用キャパシタCpの端子bが上記第1実施形態とは異なる配線に接続されている点で第1実施形態とは異なる。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0067】
走査線Y1〜Ymの各々に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタの端子bは、複数の走査線Y1〜Ymにそれぞれ対応する容量線411〜41mに接続されている。
【0068】
容量線411〜41mは、複数の走査線Y1〜Ymにそれぞれ対応する一行分の単位回路30A毎に独立して設けられている。例えば、図8に示すように、第1行目の走査線Y1に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタの端子bは、走査線Y1に対応する第1行目の容量線411に接続されている。同様に、第2行目の走査線Y2〜第m行目の走査線Ymにそれぞれ対応する複数の画素30の各保持用キャパシタの端子bは、走査線Y2〜Ymに対応する第2行目〜第m行目の容量線412〜41mに接続されている。
【0069】
また、この第3実施形態のEL表示装置20では、複数の走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号は、図9(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1(走査信号)との2レベルの電圧を含んでいる。また、複数の容量線411〜41mの各々に印加される信号は、図9(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1と逆極性の電圧−Vg2との2レベルの電圧を含んでいる。複数の走査線Y1〜Ymおよび複数の容量線411〜41mにそれぞれ印加される2レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31が交流駆動されるようになっている。
【0070】
つまり、複数の走査線Y1〜Ymの各々には、走査線Y1〜Ymの一つを順に選択する各選択期間h1に電圧Vg1が印加され、その他の期間に基準電圧GNDが印加される。また、複数の容量線411〜41mの各々には、対応する走査線の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間に電圧−Vg2が印加され、その他の期間に基準電圧GNDが印加されるようになっている。
【0071】
次に、本例のEL表示装置20の動作を図9に基づいて説明する。
複数の走査線Y1〜Ymを順に選択する各選択期間h1の間、選択する一つの走査線に対応する複数の画素30の各トランジスタQsのゲートに電圧Vg1が印加されて、各トランジスタQsがオン状態になる。これにより、各選択期間h1の間に、データ信号の電圧Vdに応じた電荷Qが各保持用キャパシタCpに蓄積されるとともに、データ信号に応じた電流が各トランジスタQsを通じて有機EL素子31に流れ、その電流に応じた明るさで有機EL素子31が発光する。このとき、各有機EL素子31は順方向にバイアスされる。すなわち、図8において、A点がB点より高電位に保たれる。
【0072】
各選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、選択が終了した走査線に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタの端子bが接続されている容量線411〜41mの一つに電圧−Vg2が印加される。例えば、走査線Y1の選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、容量線411に電圧−Vg2が印加される(図9(a)参照)。これにより、選択期間h1が終了した走査線、例えば走査線Y1に対応する複数の画素30の各単位回路30Aでは、電圧−Vg2が印加されている間、上記A点の電位Vaが印加される。
【0073】
これにより、選択期間h1が終了した走査線に対応する複数の画素30の各有機EL素子31は、その走査線に対応する容量線411〜41mの一つに印加される電圧が選択期間h1の終了と同時にVg1から−Vg2に変化するので、逆方向にバイアスされ、発光を停止する。
【0074】
こうした動作が、複数の走査線Y1〜Ymを順に選択して1フレームの画面を構成する間、選択する走査線毎に繰り返され、複数の画素30の各有機EL素子31が交流駆動される。
【0075】
このように構成された第3実施形態により、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るEL表示装置20を図10に基づいて説明する。図10は、上記走査線Y1〜Ymに印加される信号の波形を示している。
【0076】
この第4実施形態のEL表示装置20では、上記第1実施形態で説明した各画素30の有機EL素子31を交流駆動する方式に、サブフィールド駆動(時分割駆動)による階調制御(デジタル階調制御)を組み合わせている。
【0077】
<サブフィールド駆動による階調制御>
EL表示装置20の制御回路24は、サブフィールド駆動により2N階調の表示を行うように、走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路23を制御する。その「サブフィールド駆動」では、1フレームをNビットの階調データの各ビットに応じた長さの期間を有するN個のサブフィールドに分割する。ここにいう「1フレーム」は、走査線Y1〜Ymの一つを順に選択して全ての画素30にデータ信号を書き込むことで1画面の表示を構成する期間をいう。N個のサブフィードの期間は、各ビットに応じた長さに、即ち1(20):2(21):4(22)・・・2N−1の比率に設定される。こうして設定されたN個のサブフィールドのうち最短のサブフィールドの周期Tで、下記の表1に示す階調データに基づき各画素30に2値の電圧のいずれか一方を書き込み2N階調の表示を行う。
【0078】
具体的には、本例の制御回路24は、23階調(2NのN=3で、8階調)の階調表示、即ち階調度0〜階調度7の階調表示を行うので、図10に示すように、1フレームが3つのサブフィールドSF1、SF2及びSF3にそれぞれ分割される。3つのサブフィールドSF1、SF2及びSF3の各期間(時間長)は、3ビットの階調データの各ビットに応じた長さに(2進法に従うように)、即ち1(20):2(21):4(22)の比率に設定される。従って、サブフィールドSF2,SF3の各期間は、サブフィールドSF1の2倍,4倍になる。この場合、3つのサブフィールドSF1、SF2及びSF3のうち期間が最短のサブフィールドはSF1であり、そのサブフィールドSF1の周期T(図10参照)で、各画素30にデータ信号として2値の電圧のいずれか一方を書き込む。ここにいう「2値の電圧」は、Lレベルの電圧0(V)とHレベルの電圧V1(V)である。
【0079】
このように、本例のサブフィールド駆動による階調制御では、各画素30へのデータ信号の書き込みを60Hzのフレーム周波数(フレーム周期が1/60sec)で行うとともに、各画素30に、1フレームにおいて周期T毎に、2値の電圧のいずれか一方を書き込む。つまり、図10に示すように、1/60秒(sec)の1フレームに、各画素30へのデータ信号の書き込みを周期T毎に7回(23−1回)行う。そのために、制御回路24は、同期信号及びクロック信号に基づき、1フレームにおいて、周期Tの間隔で垂直走査開始信号DY(図示省略)を走査線駆動回路22に7回出力するようになっている。
【0080】
走査線駆動回路22は、制御回路24から垂直走査開始信号DY(以下、単に開始信号DYという。)が入力される毎に、走査信号G1〜Gmを順に生成して出力することで、走査線Y1〜Ymの一つを順に選択するようになっている。つまり、走査線駆動回路22は、1フレームの最初に1番目の開始信号DYが入力されると、図10(a),(b)および(c)に示すように1回目の走査信号G11〜Gm1を順に出力し、走査線Y1〜Ymを順に選択する。この選択期間が1フレームにおける1回目の選択期間t1である。また、走査線駆動回路22は、1番目の開始信号DYの入力時から周期Tが経過する毎に2番目〜7番目の開始信号DYがそれぞれ入力されると、2回目の走査信号G12〜Gm2・・・7回目の走査信号G17〜Gm7を順に出力し、走査線Y1〜Ymを順に選択する。これらの選択期間が、1フレームにおける2回目〜7回目の選択期間t1である。このように走査線Y1〜Ymを順に選択する動作が1フレームに7回繰り返される。
【0081】
また、制御回路24には、同期信号及びクロック信号のほかに、フィールド駆動を行うのに、画像信号である2値のデータ信号として3ビットの階調データが入力される。その階調データは、下記の表1に示すように、(000)から(111)までの8種類の2値のデータ信号である。
【0082】
【表1】

階調データ(000)は一つの画素30に階調度0の表示(黒表示:有機EL素子31の発光強度が0の表示)をするためのデータであり、階調データ(111)は一つの画素30に階調度7の表示(白表示:有機EL素子31の発光強度が7の表示)をするためのデータである。また、階調データ(001)〜(110)はそれぞれ、一つの画素30に中間の階調度1〜6の表示(有機EL素子31の発光強度1〜6の表示)をするためのデータである。
【0083】
データ線駆動回路23は、走査線Y1〜Ymの一つが順に選択される各選択期間t1に、選択された一つの走査線に対応する各画素30にデータ信号として、表1に示すようにL(電圧0)又はH(電圧V1)のいずれか一方を一斉に出力するようになっている。
【0084】
また、上記の表1は、上述した8種類の階調度に応じた階調データと、1フレームにおけるサブフィールドSF1(1回目の選択期間t1)、SF2(2回目と3回目の各選択期間t1)及びSF3(4回目〜7回目の各選択期間t1)で一つの画素30に書き込まれるデータ信号との関係を示してある。
【0085】
例えば、表1の階調データ(000)で各画素30に階調度0の表示をする場合、サブフィールドSF1(1回目の選択期間t1)、SF2(2回目と3回目の各選択期間t1)及びSF3(4回目〜7回目の各選択期間t1)の7回の選択期間t1でLのデータ信号が各画素30に書き込まれる。また、階調データ(001)で各画素30に階調度1の表示をする場合、表1に示すように、1回目の選択期間t1にのみHのデータ信号が書き込まれ、2回目〜7回目までの各選択期間t1にはLのデータ信号が書き込まれる。以下同様に、表1の階調データ(010)〜(111)で各画素30に階調度2〜7の表示をする場合、1フレームにおいて7回の各選択期間t1でL又はHのデータ信号が書き込まれるようになっている。
【0086】
このように、1フレームにおいて7回の各選択期間t1で、L又はHのデータ信号が書き込まれることにより、各画素30の有機EL素子31は表1の階調データ(000)〜(111)に応じた発光強度で発光し、各画素30で8階調の階調表示を行うようになっている。
【0087】
そして、このEL表示装置20では、複数の走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号(走査信号)は、図10(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1(走査信号)と、電圧Vg1とは逆極性である電圧−Vg2との3レベルの電圧を含んでいる。これら3レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31が交流駆動されるようになっている。
【0088】
つまり、走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号(走査信号)は、図10(a)〜(c)に示すように、選択期間t1に電圧Vg1(走査信号)になり、選択期間t1の終了時から逆バイアス期間(t1+τ)に電圧−Vg2になり、そして、次の選択期間までの残りの期間に基準電圧GNDになる。
【0089】
図11は、第4実施形態による駆動の一例を示しており、1フレームにおいて、走査線Y1〜Ykに対応する各画素30に階調度0の表示(黒表示)をさせるとともに、走査線Yk+1〜Ymに対応する各画素30に階調度7の表示(白表示)をさせる際に、各画素30に書き込むデータ信号の波形を示している。この場合、1フレームに各画素30へのデータ信号の書き込みを周期T毎に7回行う際に、各周期Tにおいて、走査線Y1〜Ykに対応する各画素30には0(V)のデータ信号を書き込み、走査線Yk+1〜Ymに対応する各画素30にはV1(V)のデータ信号を書き込む。
【0090】
以上のように構成された第4実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、以下の作用効果を奏する。
・第1実施形態で説明した各画素30の有機EL素子31を交流駆動する方式にサブフィールド駆動による階調制御を組み合わせることで、各画素30の有機EL素子31は1フレーム内に複数回(本例では7回)発光するので、通常の駆動方法に比べ明るい画面を容易に得ることができる。
【0091】
・各画素30の有機EL素子31を発光させるのに、上記サブフィールド駆動による階調制御を行なっている。つまり、1フレームにおいて7回の各選択期間t1で、L又はHのデータ信号が書き込まれることにより、各画素30の有機EL素子31は表1の階調データ(000)〜(111)に応じた発光強度で発光し、各画素30で23階調の階調表示を行なっている。これにより、データ信号の書き込み周期が短くなるので、各選択期間t1に各保持用キャパシタCpに蓄積させる電荷Qが小さくてすむ。したがって、高精細でも、低消費電力でかつ明るい表示を実現することができる。
【0092】
・本実施形態では、逆バイアス期間(t1+τ)を適宜に設定することで、逆バイアスの実効値や駆動電圧を任意に調整することができる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係るEL表示装置20を図12に基づいて説明する。図12は、上記走査線Y1〜Ymに印加される信号の波形を示している。
【0093】
この第5実施形態のEL表示装置20では、上記第2実施形態で説明した各画素30の有機EL素子31を交流駆動する方式に、上述したサブフィールド駆動による階調制御を組み合わせている。
【0094】
このEL表示装置20では、複数の走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号(走査信号)は、図12(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1(走査信号)と、電圧Vg1とは逆極性である電圧−Vg2との3レベルの電圧を含んでいる。これら3レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31が交流駆動されるようになっている。
【0095】
走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号は、図12(a)〜(c)に示すように、選択期間t1に電圧Vg1(走査信号)になり、選択期間t1の終了時から期間τ1に基準電圧GNDになる。その後、逆バイアス期間τ2に電圧−Vg2になり、そして、次の選択期間までの残りの期間に基準電圧GNDになる。ここで、期間τ1と逆バイアス期間τ2を、それぞれ選択期間t1と同じにしてある。
【0096】
以上のように構成された第5実施形態によれば、上記第4実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、以下の作用効果を奏する。
・本実施形態では、逆バイアス期間τ2を適宜に設定することで、逆バイアスの実効値や駆動電圧を任意に調整することができる。
【0097】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態に係るEL表示装置20を図13に基づいて説明する。図13は、上記走査線Y1〜Ymに印加される信号の波形を示している。
【0098】
この第6実施形態のEL表示装置20では、上記第3実施形態で説明した各画素30の有機EL素子31を交流駆動する方式に、上述したサブフィールド駆動による階調制御を組み合わせている。
【0099】
このEL表示装置20では、走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号は、図13(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1(走査信号)との2レベルの電圧を含んでいる。また、容量線411〜41mの各々に印加される信号は、図13(a)〜(c)に示すように、基準電圧GNDと、電圧Vg1と逆極性の電圧−Vg2との2レベルの電圧を含んでいる。複数の走査線Y1〜Ymおよび複数の容量線411〜41mにそれぞれ印加される2レベルの電圧により、各画素30の有機EL素子31が交流駆動されるようになっている。
【0100】
走査線Y1〜Ymの各々に印加される信号(走査信号)は、図10(a)〜(c)に示すように、選択期間t1に電圧Vg1(走査信号)になり、次の選択期間までの残りの期間に基準電圧GNDになる。一方、各容量線411〜41mに印加される信号は、各走査線Y1〜Ymに印加される信号の電圧がGNDからVg1に変化するタイミングで、GNDから−Vg2に変化し、選択期間t1の終了時から逆バイアス期間τ2の経過時に−Vg2からGNDに変化するようになっている。
【0101】
以上のように構成された第5実施形態によれば、上記第4実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、以下の作用効果を奏する。
・本実施形態では、逆バイアス期間τを適宜に設定することで、逆バイアスの実効値や駆動電圧を任意に調整することができる。
【0102】
[電子機器]
次に、上記各実施形態で説明したEL表示装置20の表示パネル部21を用いた電子機器について説明する。表示パネル部21は、図14に示すようなモバイル型のパーソナルコンピュータに適用できる。図14に示すパーソナルコンピュータ70は、キーボード71を備えた本体部72と、表示パネル部21を用いた表示ユニット73とを備えている。この表示ユニット73に用いた表示パネル部21では、高精細でも、低消費電力でかつ明るい表示を実現することができる。
【0103】
[変形例]
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、スイッチング用トランジスタQsとしてnチャンネル型FETを用いているが、同トランジスタQsとしてpチャンネル型FETを用いてもよい。その場合、複数の走査線Y1〜Ymを順に選択する各選択期間h1に、選択する走査線に−Vg1の電圧を印加することで、その走査線に対応する各画素30のスイッチング用トランジスタQsがオン状態になる。また、各選択期間h1の終了時に、選択期間が終了した走査線に−Vg2の電圧を印加することで、その走査線に対応する各画素の有機EL素子31が逆方向にバイアスされる。
【0104】
・上記第1実施形態では、各選択期間h1の終了時から逆バイアス期間h2の間、選択が終了した走査線に電圧−Vg2を印加するようにしているが、この電圧−Vg2を印加するタイミングは、各選択期間h1の終了時から次に選択されるまでの非選択期間内であればいつでもよい。例えば、選択期間h1の終了時から一定時間後に逆バイアス期間h2を設けるようにする。この場合、各選択期間h1の間、選択する走査線に対応する複数の画素30の各保持用キャパシタCpには、データ信号が書き込まれてQ=Cs×Vg1で表される電荷Qが蓄積される。そのため、各選択期間h1が終了して各トランジスタQsがオフ状態になる非選択期間において、電圧−Vg2が印加されるまでの間は、電荷Qが有機EL素子31を通じて放電して有機EL素子31に電流が流れ、有機EL素子31が発光する。このようにして、トランジスタQsがオンしている各選択期間h1だけでなく、各選択期間h1に蓄積された保持用キャパシタCpの電荷Qを電流源として使用して、有機EL素子31を発光させることができる。したがって、非選択期間において電圧−Vg2を印加するタイミングを変えることで、トランジスタQsがオフ状態になった後での有機EL素子31の発光期間を適宜に調整することができる。同様に、実施形態2乃至6においても、選択期間終了後に非選択期間を設けて電荷Qの少なくとも一部を放電させた後に−Vg2を印加しても良い。
【0105】
・上記第1実施形態では、逆バイアス期間を必ずしも選択期間と同一期間とする必要はなく、逆バイアス期間の長短により−Vg2の値を変化させて結果的に交流駆動が行われればよいことを記したが、これはその他の実施形態においても同様である。
【0106】
・上記第3実施形態では、各走査線Y1〜Ymに印加される信号の電圧がVg1からGNDに変化するタイミングで、各容量線411〜41mに印加される信号の電圧がGNDから−Vg2に変化しているが、本発明はこれに限定されない。各走査線に印加される信号の電圧がGNDからVg1に変化するタイミングで或いは他のタイミングで、各容量線411〜41mに印加される信号の電圧がGNDから−Vg2に変化するようにしてもよい。
【0107】
・上記各実施形態では、電子回路として単位回路30Aに具体化して好適な効果を得たが、有機EL素子23以外の例えばLEDやFED、電子放出素子、プラズマ素子等の発光素子のような電流駆動素子を駆動する電子回路に具体化してもよい。或いは、RAM等の記憶装置に具体化してもよい。
【0108】
・上記各実施形態では、各単位回路30Aの電流駆動素子として有機EL素子31について具体化したが、無機EL素子に具体化してもよい。つまり、本発明を無機EL素子からなる無機ELディスプレイに応用しても良い。
【0109】
・上記各実施形態では、1色からなる有機EL素子31をそれぞれ有する複数の単位回路30Aを備えたELディスプレイに応用した例を示したが、各画素30に赤用単位回路、緑用単位回路、および青用単位回路を設けてカラー表示する有機EL表示装置にも本発明は適用可能である。
【0110】
・上記第4〜第6実施形態において、上述したサブフィールド駆動による階調制御に代えて、サブフィールド駆動による階調制御を次のように行う構成にも本発明は適用可能である。制御回路24は、1フレームを同じ長さの期間(周期T)を有する2N−1個のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に、上記階調データに基づき各画素に2値の電圧のいずれか一方を書き込み2N階調の表示を行うように、走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路23を制御する。このようなサブフィールド駆動による階調制御によって、上記第4〜第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0111】
・上記第4〜第6実施形態では、23階調(2NのN=3で、8階調)の階調表示、即ち階調度0〜階調度7の階調表示を行う構成であるが、Nの値を適宜に設定して2N階調の表示、即ち階調度0〜階調度2N−1の階調表示を行う構成にも本発明は適用される。
【0112】
・上記第4〜第6実施形態では、フレーム周波数を60Hzとしているが、フレーム周波数をその2倍(120Hz)以上とするEL表示装置にも本発明は適用可能である。
【0113】
・上記各実施形態では、複数の走査線Y1〜Ymを順に一つずつ選択する構成であるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、複数の走査線Y1〜Ymの2つ以上を順に選択する方式、飛び越し走査方式で複数の走査線Y1〜Ymを順に選択する構成にも本発明は適用される。
【0114】
・上記各実施形態では、走査線駆動回路22、データ線駆動回路23、制御回路24はスイッチング用トランジスタQsが形成される基板上に内蔵される必要はなく、外部回路として形成してもよい。また、それらのうち少なくとも1つを内蔵してもよい。ここで、「内蔵」とは、基板上にトランジスタを用いて直接形成した状態を指す。
【0115】
・上記各実施形態では、電気光学装置をEL表示装置20として説明したが、本発明はこれに限るものではなく、有機EL素子以外の発光素子を用いた電気光学装置及び該電気光学装置を備えた電子機器に対しても適用可能である。
【0116】
・本発明に用いられるスイッチング用トランジスタQsはポリシリコンTFT、アモルファスシリコンTFT、単結晶シリコンTFT等のシリコン薄膜をチャンネル層に用いたTFTやシリコンゲルマニウム等の半導体薄膜をチャンネル層に用いたTFTが用いられる。
【0117】
・EL表示装置20は、図14に示すようなパーソナルコンピュータに限らず、携帯電話、デジタルカメラ等の各種の電子機器に適用できる。
【符号の説明】
【0118】
0,V1,Vd,Vg1,−Vg2,GND…電圧、Q…電荷、h1,t1…選択期間、X1,−Xn…データ線、Y0,Y1〜Ym…走査線、SF1〜SF3…サブフィールド、20…電気光学装置としてのEL表示装置、22…走査線駆動回路、23…データ線駆動回路、24…制御回路、Qs…スイッチング素子としてのスイッチング用トランジスタ、Cp…容量素子としての保持用キャパシタ、30…画素、30A…単位回路、31…電子素子或いは発光素子としての有機EL素子、411〜41m…容量線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を具備する電子回路において、
前記スイッチング素子は、第1の配線に接続された制御用端子、第2の配線に接続された第1の端子、および電子素子と容量素子とに接続された第2の端子を備え、
前記制御用端子に電圧が印加されて前記スイッチング素子がオン状態になると、前記第2の配線から供給されるデータ信号が前記第1および第2の端子を介して前記電子素子に書き込まれ、
前記制御用端子に印加された前記電圧と逆極性の電圧が前記容量素子に印加されると前記電子素子が逆方向にバイアスされることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路において、前記電子素子は、電流駆動型の発光素子であることを特徴とする電子回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電子回路において、前記スイッチング素子がオン状態になると、前記データ信号の電圧に応じた電荷が前記容量素子に蓄積されるとともに、前記データ信号に応じた電流が前記スイッチング素子を通じて前記発光素子に流れて前記発光素子が発光し、前記スイッチング素子がオフ状態になると、前記容量素子に蓄積された電荷が前記発光素子を通じて放電して前記発光素子に電流が流れ、前記発光素子が発光することを特徴とする電子回路。
【請求項4】
スイッチング素子を具備する電子回路の駆動方法において、
前記スイッチング素子は、第1の配線に接続された制御用端子、第2の配線に接続された第1の端子、および電子素子と容量素子とに接続された第2の端子を備え、
前記制御用端子に電圧を印加して前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第2の配線から供給されるデータ信号を前記第1および第2の端子を介して前記電子素子に書き込む第1のステップと、
前記制御用端子に印加された前記電圧と逆極性の電圧を前記容量素子に印加して前記電子素子を逆方向にバイアスする第2のステップとを備えることを特徴とする電子回路の駆動方法。
【請求項5】
電気光学装置において、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、
前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを含み、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子と同一の走査線に接続され、
前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子が交流駆動されるように構成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
電気光学装置において、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、
前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを含み、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子が接続された前記走査線より前に選択される前段の走査線に接続され、
前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子が交流駆動されるように構成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
電気光学装置において、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、
前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを含み、前記容量素子の他方の端子は容量線に接続され、
前記複数の走査線と前記容量線に順に印加される信号は2レベルの電圧をそれぞれ含み、該信号により前記発光素子が交流駆動されるように構成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置において、前記容量線は、前記複数の走査線の各々に対応する一行分の前記単位回路毎に独立して設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
電気光学装置の駆動方法において、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、
前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを備え、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子と同一の走査線に接続され、
前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子を交流駆動することを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項10】
電気光学装置の駆動方法において、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、
前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを備え、前記容量素子の他方の端子は対応する前記スイッチング素子の制御用端子が接続された前記走査線より前に選択される前段の走査線に接続され、
前記複数の走査線に順に印加される信号は3レベルの電圧を含み、該信号により前記発光素子を交流駆動することを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項11】
電気光学装置の駆動方法において、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して配置された複数の単位回路とを備え、
前記複数の単位回路の各々は、前記複数の走査線のうち対応する走査線に接続された制御用端子、前記複数のデータ線のうち対応するデータ線に接続された第1の端子、および第2の端子を有するスイッチング素子と、前記第2の端子に接続された発光素子と、前記第2の端子に一方の端子が接続された容量素子とを備え、前記容量素子の他方の端子は容量線に接続され、
前記複数の走査線及び前記容量線に順に印加される信号は2レベルの電圧をそれぞれ含み、該信号により前記発光素子を交流駆動することを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置の駆動方法において、前記容量線は、前記複数の走査線の各々に対応する一行分の前記単位回路毎に独立して設けられていることを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一つに記載の電気光学装置の駆動方法において、前記複数の走査線の各々を1フレームに1回ずつ選択して、前記複数の単位回路の各発光素子を、前記複数のデータ線に供給されるアナログ電圧信号に応じて1フレームに1回ずつ発光させることを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項14】
請求項9乃至12のいずれか一つに記載の電気光学装置の駆動方法において、1フレームを複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド駆動による階調制御を行うことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項15】
請求項5乃至8のいずれか一つに記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−92062(P2010−92062A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259644(P2009−259644)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【分割の表示】特願2003−155880(P2003−155880)の分割
【原出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】