説明

電気光学装置用基板の製造方法及び電気光学装置

【課題】光吸収性材料を効率よく硬化することができる電気光学装置用基板の製造方法を
提供すること。
【解決手段】ルーバー14を備える電気光学装置用基板10の製造方法であって、透明基
板11の表面上にルーバー形成領域を除いて透明材料を所定パターンの溝18に形成する
工程と、光硬化性かつ光吸収性材料13を、透明材料12上に塗布してルーバー形成領域
内18aに侵入させる工程と、光硬化性かつ光吸収性材料13を、所定パターンの溝18
と同様のパターンのスリット19aを有するマスク19を用いて露光し、光硬化性かつ光
吸収性材料13の表面13aを硬化させる工程と、透明材料12の表面の光硬化性かつ光
吸収性材料13の未硬化部分13cを除去する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野角制御を備えた電気光学装置の製造方法及び電気光学装置に関し、特に
視野角制御にルーバーを形成しても透過率の低下を抑制し、輝度の低下及びばらつきを抑
制した電気光学装置の製造方法及び電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気光学装置は表示用として多くの電子機器に使用されている。特に、プラズマ
表示装置、有機EL(Electroluminescence)表示装置、液晶表示装置等は広視野角を得
ることができることから、テレビやパソコン等において広く用いられるようになってきて
いる。
【0003】
一方、携帯電話機や銀行のATM(Automated Teller Machine:現金自動預け払い機)
等では、覗かれたくない秘匿情報や個人情報が表示されるため、他人に視認されないよう
にするためには視野角は狭い方が望ましいとされている。そのため、電気光学装置に対す
る視野角の制御を目的とした基板等も広く普及している。
【0004】
例えば、下記非特許文献1には、マイクロルーバーフィルムをPET(polyethylene t
erephthalate)などのフィルムでラミネートした構造で、透過光の方向と可視角度をコン
トロールし、必要な範囲に透過し不要な部分への照射を制限した、視野角調整フィルムが
開示されている。この視野角調整フィルムを各種表示画面の前面に配置すると、透過光の
射出方向や可視範囲を調整することができ、周囲からの覗き見等を防止し、プライバシー
を保護できるとされている。
【0005】
また、下記特許文献1には、光吸収領域が形成された視野角制御素子及びこれを備えた
ディスプレイの発明が開示されている。すなわち、下記特許文献1の光線方向制御素子で
は、透明パターンの膜厚によって光吸収領域の膜厚が定まるので、光吸収領域の膜厚制御
を容易に行うことができ、光吸収領域のアスペクト比(断面における幅に対する高さの割
合)を高くすることが可能であって、光線の広がり角を維持しながら透過率を向上させる
ことができるとされている。そして、下記特許文献1の光線方向制御素子を用いると、透
過光線の広がり角が小さくて高い光透過率を実現できる光源及び表示装置を提供すること
ができるとされている。
【0006】
そして、この光線方向制御素子は、透明領域をなす光透過性材料を透明な第1の基板上
に配置し透明パターンを形成する透明パターン形成工程と、透明パターン間の間隙部分に
、硬化性を有する光吸収性の流動体を充填する流動体充填工程と、流動体を硬化させ光吸
収領域を形成する流動体硬化工程と、を経ることにより作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−334279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されている光線方向制御素子の製造方法よれば、光吸収性の流動
体を硬化させる方法として、紫外線あるいは熱により硬化する方法を使用しており、硬化
が不十分な場合、再度紫外線あるいは熱により硬化させる方法が採用されている。また、
最初から紫外線と熱を併用して硬化させる方法を採用してもよいとされている。
【0009】
しかしながら、視野角調整を行うための光吸収領域の厚さは、通常の遮光層等の厚さと
比すると、はるかに厚く形成しなければならないという課題がある。例えば、一般的に使
用されている樹脂製遮光膜の厚さは約3μm程度であるが、視野角調整用の光吸収領域の
厚さは約40μm程度とする必要がある。このことは、視野角調整を行うための光吸収領
域を製造する際に、光吸収性の材料を全て紫外線照射によって硬化させることが困難であ
ることを意味する。なお、視野角調整を行うための光吸収領域を、単なる熱硬化性樹脂を
使用することによって形成することは、光硬化性樹脂を使用するよりも硬化させるために
時間が必要であるので、工業的には直ちには採用し難い。
【0010】
また、光線方向制御素子の製造に際し、透明パターン(透明材料)の上側表面に光吸収
性の材料が残存すると表示不良の原因となる。そのため、上記特許文献1に開示されてい
る発明のように、スキージを用いて透明材料の間隙部分に光吸収性の材料を充填すると共
に透明材料の表面上に残った光吸収性の材料を拭き取りしたり、或いは、透明材料の表面
上に残った光吸収性の材料を別途研磨によって除去したりすることは、現実的には採用困
難である。
【0011】
本発明者は、視野角の制御のためのルーバーを備えた電気光学装置用基板の製造に際し
、光吸収領域を形成する光吸収性材料の表面のみを硬化すれば、光吸収性材料の全てを硬
化しなくても視野角制御用のルーバーを形成することができることを見出し、本発明を完
成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、視野角制御用のルーバーを効率よく形成した電気光学装置用基板
の製造方法、及び、この電気光学装置用基板を備えた電気光学装置を提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の電気光学装置用基板の製造方法は、
ルーバーを備える電気光学装置用基板の製造方法であって、
透明基板の表面上にルーバー形成領域を除いて透明材料を所定パターンに形成する工程
と、
光硬化性かつ光吸収性材料を、前記透明材料上に塗布して前記ルーバー形成領域内に侵
入させる工程と、
前記光硬化性かつ光吸収性材料を、前記所定パターンと同様のパターンのスリットを有
するマスクを用いて露光し、前記光硬化性かつ光吸収性材料の表面を硬化させる工程と、
前記透明材料の表面の前記光硬化性かつ光吸収性材料の未硬化部分を除去する工程と、
を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の電気光学装置用基板の製造方法においては、最初に光硬化工程で、ルーバー形
成領域の所定パターンと同様のスリットを形成したマスクを利用して、露光することによ
って光硬化性かつ光吸収性材料の表面を硬化させている。そのため、ルーバー形成領域の
光硬化性かつ光吸収性材料は、表面が硬化するが、内側部分は硬化していない状態となる
。しかしながら、本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、基板、透明材料及び
、表面が硬化した光硬化性かつ光吸収性材料によって光硬化性かつ光吸収性材料の未硬化
部分を閉じ込めてしまうことができるので、この部分の光吸収材料をすべて硬化する必要
がなく短時間で硬化の工程を終えることができる。また、ルーバー形成領域以外の部分の
光硬化性かつ光吸収性材料を、硬化させずにおくことができるため、容易に除去すること
ができる。
【0015】
また、本発明の電気光学装置用基板の製造方法においては、前記光硬化性かつ光吸収性
材料としてさらに熱硬化性を有する材料を用い、前記光硬化性かつ光吸収性材料を除去す
る工程の後、前記光硬化性かつ光吸収性材料の熱硬化工程を設けることが好ましい。
【0016】
本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、基板、透明材料、及び、表面が硬化
した光硬化性かつ光吸収性材料によって閉じ込められている光硬化性かつ光吸収性材料の
未硬化部分を、その後の熱硬化工程で内部の未硬化部分の光硬化性かつ光吸収性材料を確
実に硬化させることができる。
【0017】
また、本発明の電気光学装置用基板の製造方法においては、前記所定パターンを、前記
光硬化性かつ光吸収性材料が前記透明基板に対して平面視で複数の平行な直線状又はマト
リクス状となるようにしたことが好ましい。
【0018】
本発明の電気光学装置用の製造方法によれば、光吸収材料により様々な形状のルーバー
を形成することができるので、所望の視野角制御レベルに応じて設計の幅を広げることが
できる。
【0019】
また、本発明の電気光学装置用基板の製造方法においては、前記所定パターンを等間隔
に形成することが好ましい。
【0020】
本発明の電気光学装置用の製造方法によれば、光硬化性かつ光吸収性材料で形成された
ルーバーが等間隔に形成されるので、規則正しい視野角制御が可能な電気光学装置用基板
を製造することができる。
【0021】
また、本発明の電気光学装置用基板の製造方法においては、前記硬化した光硬化性かつ
光吸収性材料は、前記透明材料の表面より突出していることが好ましい。
【0022】
本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、透明材料の表面より突出している状
態に形成された光硬化性かつ光吸収性材料は、透過光を遮断する遮光層として利用するこ
とができる。これにより、ルーバーを形成した部分では他の材料で遮光層を形成する工程
を省略することができ遮光層の形成する全体の工程を簡略することができ、製造工程数及
び使用材料を減らすことができる。
【0023】
また、本発明の電気光学装置用基板の製造方法においては、さらに、前記硬化した光硬
化性かつ光吸収性材料の少なくとも表面を覆うように遮光層を形成する工程と、前記透明
材料及び前記光硬化性かつ光吸収性材料の表面にカラーフィルター層を形成する工程と、
前記カラーフィルター層の表面に保護膜を形成する工程と、
を備えることが好ましい。
【0024】
本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、上記製造方法で製造される効果を奏
するカラー表示可能な電気光学装置用基板を製造することができる。
【0025】
また、本発明の電気光学装置によれば、上記いずれかに記載の電気光学装置用基板の製
造方法で製造された電気光学装置用基板を備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明の電気光学装置によれば、上記製造方法の発明の効果を奏する電気光学装置を得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1Aは本発明の実施形態1の電気光学装置用基板の製造方法で製造される電気光学装置用基板の拡大平面図であり、図1Bは図1AのIB−IB線での断面図であり、図1Cは図1AのIC−IC線での断面図である。
【図2】実施形態1の電気光学装置用基板の製造方法のフローチャートである。
【図3】図3A〜図3Dは実施形態1の電気光学装置用基板の製造過程を示す図である。
【図4】図4A〜図4Cは図3Dに引き続く製造過程を示す図である。
【図5】図5A〜図5Cは図4Cに引き続く製造過程を示す図である。
【図6】図6Aは変形例1の電気光学装置用基板の製造方法で製造される電気光学装置用基板の拡大平面図であり、図6Bは図6AのVIB−VIB線での断面図であり、図6Cは図6AのVIC−VIC線での断面図である。
【図7】図7Aは実施形態2の電気光学装置用基板の製造方法で製造される電気光学装置用基板の拡大平面図であり、図7Bは図7AのVIIB−VIIB線での断面図であり、図7Cは図7AのVIIC−VIIC線での断面図である。
【図8】実施形態2の電気光学装置用基板の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための実施形態を説明するが、
以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものでは
なく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行った
ものにも均しく適用し得るものである。また、この明細書における説明のために用いられ
た各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層
や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されて
いるものではない。
【0029】
[実施形態1]
まず、図1を参照して、実施形態1の電気光学装置用基板の製造方法で製造される電気
光学装置用基板10の構成について説明する。図1に示すように、実施形態1の電気光学
装置用基板10は、ガラス基板等からなる透明基板11の表面に透明材料12が所定の厚
さに形成され、この透明材料12には、光吸収性材料からなるルーバー14がルーバー形
成領域の所定パターンの溝18(図3B参照)に透明材料12より少し突出した厚さで形
成されている。この突出した部分のルーバー14の厚さは後述する遮光層15と略同じ厚
さである。
【0030】
なお、実施形態1の電気光学装置用基板10では、ルーバー形成領域の所定パターンの
溝18として複数本のルーバー14が列方向に延伸されて等間隔に形成されているため、
透過光の左右方向への透過が遮られることとなるので、左右方向の視野角を制御すること
ができるものとなる。そして、ルーバー14と直交するように遮光層15が形成されてい
る。なお、透明材料12及びルーバー14の所定厚さは、この遮光層15の厚さの10倍
〜15倍程度である。具体的には、遮光層の厚さは約3μmであるに対してルーバーの厚
さは約40μmである。
【0031】
そして、ルーバー14及び遮光層15がそれぞれ直交するようにマトリクス状に形成さ
れた透明材料12の表面には、複数色、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色から
なるカラーフィルター層16が形成されている。さらに、カラーフィルター層16の表面
を被覆するように樹脂等からなる保護膜17が形成されている。
【0032】
次に、図2〜図5を参照して、実施形態1の電気光学装置用基板10の製造工程につい
て説明する。なお、以下の製造方法は図2のフローチャートに沿って説明する。
【0033】
まず、図3Aに示すように、電気光学装置用基板10に用いられるガラスないしプラス
チック等からなる透明基板11を用意し(ステップS1)、この透明基板11上にスピン
コート法等により感光性の透明材料からなる層12aを塗布する(ステップS2)。
【0034】
その後、図3Bに示すように、感光性の透明材料からなる層12aにフォトリソグラフ
ィ法を用いて露光及び現像することによって、所定パターンの溝18を有する透明材料1
2を形成する(ステップS3)。なお、実施形態1の電気光学装置用基板10では、ルー
バー形成領域の所定パターンの溝18として、透明基板11に対して列方向に複数本、直
線状に形成した例について説明する(図1A参照)。
【0035】
そして、図3Cに示すように、所定パターンの溝18を形成した透明材料12上に光硬
化性及び熱硬化性の光吸収性材料13を、所定パターンの溝18内にも侵入するように、
塗布する(ステップS4)。
【0036】
その後、図3Dに示すように、光吸収性材料13を覆うようにマスク19を配置する(
ステップS5)。このマスク19には所定パターンの溝18と対応するスリット19aが
形成してある。
【0037】
そして、図4Aに示すように、このマスク19上から露光装置20を用いて露光し、光
吸収性材料13を硬化させる(ステップS6)。このとき、光吸収性材料13はマスク1
9に形成した所定パターンのスリット19aから照射された表面部分のみが露光されて硬
化される。この硬化した光吸収性材料13aは所定パターンの溝18を塞ぐように形成さ
れ、所定パターンの溝18内に位置する光吸収性材料13b及び透明材料12の表面に存
在している光吸収性材料13cは未硬化状態のままとなる。なお、露光時間は、長すぎる
と所定パターンの周囲の光吸収性材料も硬化してしまうので、適宜調整する。
【0038】
その後、現像することによって、図4Bに示すように、透明材料12上の光吸収性材料
13の未硬化部分13cを除去する(ステップS7)。このとき、光吸収性材料13の所
定パターンの硬化部分13aは、透明材料12に形成した所定パターンの溝18内に一部
分が埋まっているので、光吸収性材料13の未硬化部分13cの除去は容易に行うことが
できる。なお、光吸収性材料13の未硬化部分13cが除去された部分13dは、透明材
料が露出することとなる。
【0039】
次いで、図4Cに示すように、透明基板11の透明材料12等を形成していない面側か
ら、ヒーター等の加熱装置21を用いて加熱し、所定パターンの溝18内に位置する光吸
収性材料13bを硬化させる(ステップS8)。この硬化した所定パターンの光吸収性材
料13a及び硬化された所定パターンの溝18内に位置する光吸収性材料13bが視野角
制御を行うためのルーバー14となる(図5A参照)。
【0040】
その後、図1Aに示すように、透明材料12上にルーバー14と直交するように例えば
金属材料等からなる遮光層15を形成する(ステップS9)。なお、遮光層15はルーバ
ー14を形成した後に形成しているが、ルーバー14よりも先に形成しても構わない。し
かしながらルーバー14よりも先に形成してしまうと、遮光層15と後述するカラーフィ
ルター層16との距離が離れてしまう。この場合、ルーバー14が延在する方向と直交す
る方向では、ルーバー14自体が遮光層としても機能するため、隣接する画素での混色が
生じないが、ルーバー14が延在する方向と平行な方向では、遮光層15がカラーフィル
ター層16から離れてしまって存在しているので、遮光層15に到達するまでの間に光が
隣接する画素間で混色してしまうことになる。したがって、遮光層15を形成するのであ
れば、本実施形態のように、ルーバー14を形成した後に遮光層15を形成するほうが、
画素間での混色の問題を防ぐ上では好ましい。
【0041】
またルーバー14を形成する光吸収性材料13を硬化させた際に、透明材料12の表面
よりも高い位置に硬化部分13aが存在しているが、硬化部分13aの高さを透明材料1
2の表面と同じ高さになるように形成してもよい。そして遮光層15をルーバー14と直
交する方向のみ設けたが、ルーバー14と平行な方向にも設けてもよい(遮光層15を格
子状に形成)。
【0042】
そして、図1A及び図5Bに示すように、ルーバー14及び遮光層15で囲まれた透明
材料12上にカラーフィルター層16を形成する(ステップS10)。
【0043】
次に、図5Cに示すように、カラーフィルター層16を覆うようにしてフォトレジスト
等の透明樹脂材料からなる保護膜17を形成する(ステップS11)。その後、必要に応
じて配向膜や偏光板(共に図示省略)を形成し、実施形態1の電気光学装置用基板が完成
する(ステップS12)。
【0044】
以上より、実施形態1の電気光学装置用基板10の製造方法では、最初に光硬化工程で
、ルーバー形成領域の所定パターンの溝18と同様のスリット19aを形成したマスク1
9を利用して露光することによって、光硬化性を有する光吸収性材料13の表面を硬化さ
せている。そのため、所定パターンの溝18に形成された光吸収性材料13は、表面の部
分の光吸収性材料13aは硬化するが、内側の部分の光吸収性材料13bは未硬化状態と
なる。しかし、本発明の電気光学装置用基板10の製造方法によれば、透明基板11、透
明材料12及び、表面が硬化した光吸収性材料13aによって光吸収性材料13の未硬化
部分13bを閉じ込めてしまうことができるので、この部分の光吸収性材料13bをすべ
て硬化する必要がなく短時間で硬化の工程を終えることができる。さらに、ルーバー形成
領域の所定パターンの溝18以外の部分の光吸収性材料13cは、硬化しないため、容易
に除去することができる。
【0045】
また、実施形態1の電気光学装置用基板10の製造方法では、熱硬化性を有する光吸収
性材料13を使用することにより、透明基板11、透明材料12及び、表面が硬化した光
吸収性材料13aによって閉じ込められている光吸収性材料の未硬化部分13bを、その
後の熱硬化工程で内部の光吸収性材料の未硬化部分13bを確実に硬化させることができ
る。
【0046】
さらに、透明材料12の表面より突出している状態に形成された光吸収性材料13aは
、透過光を遮断する遮光層として利用することができる。これにより、ルーバーを形成し
た部分では他の材料で遮光層を形成することを省略し遮光層を形成する工程を簡略化する
ことができ、製造工程数及び使用材料を減らすことができる。
【0047】
[変形例1]
次に、実施形態1の電気光学装置用基板10の製造方法の変形例1を図6A〜図6Cを
参照して説明する。なお、変形例1の電気光学装置用基板10Aの製造方法は、実施形態
1の電気光学装置用基板10の製造方法に対し、光吸収性材料のルーバーを形成する方向
が異なるのみなので、共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
図6A〜図6Cに示すように、変形例1の電気光学装置用基板10Aの製造方法で製造
される電気光学装置用基板10では、光吸収性材料13からなるルーバー14Aは透明基
板11に対して直線状に行方向に複数本形成されている。このようにすることで、透過光
の上下方向への透過が遮られることとなるので、上下方向の視野角を制御することができ
るものとなる。なお、製造方法としては、ルーバー14Aを形成する方向及び遮光層15
Aを形成する方向を変えるのみなので省略する。
【0049】
[実施形態2]
次に、実施形態2の電気光学装置用基板10Bの製造方法を図7及び図8を参照して説
明する。なお、実施形態2の電気光学装置用基板10Bの製造方法は、実施形態1の電気
光学装置用基板10の製造方法に対し、光吸収性材料のルーバーの形成パターンが異なる
のみなので、共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、以下の
製造方法は図8のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
図7A〜図7Cに示すように、実施形態2の電気光学装置用基板の製造方法で製造され
る電気光学装置用基板10Bでは、光吸収性材料13からなるルーバー14Bはマトリク
ス状に形成されている。そのため、ルーバー14Bは基板に対して縦方向及び横方向に形
成されていることにより、透過光は左右方向及び上下方向への透過光が遮られることとな
るので、左右方向及び上下方向の視野角を制御することができるものとなる。
【0051】
この実施形態2の電気光学装置用基板10Bの製造方法では、ステップS1a及びステ
ップS2aは、実施形態1の電気光学装置用基板10の製造方法におけるステップS1及
びステップS2と同様である。その後、透明材料12に形成する所定パターンの溝18を
、図7Aに示すように、マトリクス状に形成する(ステップS3a)。
【0052】
そして、光硬化性及び熱硬化性の光吸収性材料13を塗布し(ステップS4a)、この
光吸収性材料13を覆うように所定パターンのスリットを形成したマスク19を設置して
光吸収性材料13を露光する(ステップS5a、ステップS6a)。その後、光吸収性材
料の未硬化部分13cを除去し(ステップS7a)、熱硬化工程を行い未硬化状態の光吸
収性材料を硬化させる(ステップS8a)。この硬化した光吸収性材料が実施形態2のル
ーバー14Bとなる。
【0053】
なお、実施形態2の電気光学装置用基板10Bの製造方法では、光吸収性材料によるル
ーバー14Bがマトリクス状に形成されているため、このルーバー14Bに遮光層の役割
を果たさせることができる。それにより、別途遮光層を形成する工程を設ける必要がなく
なり、材料費を減らし、製造工程数を減少させることができる。
【0054】
その後、ルーバー14Bで囲まれた透明材料12上にカラーフィルター層16を形成し
(ステップS9a)、このカラーフィルター層16を覆うようにしてフォトレジスト等の
透明樹脂材料からなる保護膜17を形成する(ステップS10a)。
【0055】
その後、必要に応じて配向膜や偏光板(共に図示省略)を形成し、実施形態2の電気光
学装置用基板10Bの製造が完成する(ステップS11a)。
【0056】
以上より、実施形態2の電気光学装置用基板の製造方法によれば、上下左右方向の視野
角を制御することができる電気光学装置用基板を安価に製造することができる。なお、こ
のような電気光学装置用基板を用いて、例えば液晶表示装置のおけるカラーフィルター基
板として用いることもできる。また液晶表示装置だけでなく、他の電気光学装置である有
機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機EL表示装置、発光ダイオード(L
ED)表示装置、電界放出型表示装置等の一部として適用することもできる。更には上述
の表示体に、この電気光学装置用基板を別体として配置することにより電気光学装置を形
成することもできる。
【0057】
なお、上記実施形態及び変形例の電気光学装置用基板の製造方法では、加熱装置による
熱硬化工程を行っているが、この熱硬化工程を省略してもよい。この際、未硬化状態の光
吸収性材料は、透明基板、透明材料及び硬化した光吸収性材料に囲まれていることで漏れ
出すことがない。さらに、上記実施形態及び変形例の電気光学装置用基板の製造方法では
、カラーフィルター層を形成してカラー表示に対応した場合を説明したが、これに限らず
、カラーフィルター層を形成せずにモノクロ表示にも対応することができる。
【符号の説明】
【0058】
10、10A、10B:電気光学装置用基板 11:透明基板 12:透明材料 13:
光吸収性材料 13a:光吸収性材料硬化部分 13b:光吸収性材料未硬化部分 13
c:光吸収性材料未硬化部分 13d:光吸収材料除去部分 14、14A、14B:ル
ーバー 15、15A:遮光層 16:カラーフィルター層 17:保護膜 18:所定
パターンの溝 19:マスク 19a:スリット 20:発光装置 21:加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーバーを備える電気光学装置用基板の製造方法であって、
透明基板の表面上にルーバー形成領域を除いて透明材料を所定パターンに形成する工程
と、
光硬化性かつ光吸収性材料を、前記透明材料上に塗布して前記ルーバー形成領域内に侵
入させる工程と、
前記光硬化性かつ光吸収性材料を、前記所定パターンと同様のパターンのスリットを有
するマスクを用いて露光し、前記光硬化性かつ光吸収性材料の表面を硬化させる工程と、
前記透明材料の表面の前記光硬化性かつ光吸収性材料の未硬化部分を除去する工程と、
を備えていることを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項2】
前記光硬化性かつ光吸収性材料としてさらに熱硬化性を有する材料を用い、
前記光硬化性かつ光吸収性材料を除去する工程の後、前記光硬化性かつ光吸収性材料の
熱硬化工程を設けることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項3】
前記所定パターンを、前記光硬化性かつ光吸収性材料が前記透明基板に対して平面視で
複数の平行な直線状又はマトリクス状となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載
の電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項4】
前記所定パターンを等間隔に形成することを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置
用基板の製造方法。
【請求項5】
前記硬化した光硬化性かつ光吸収性材料は、前記透明材料の表面より突出していること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項6】
さらに、
前記硬化した光硬化性かつ光吸収性材料の少なくとも表面を覆うように遮光層を形成す
る工程と、
前記透明材料及び前記光硬化性かつ光吸収性材料の表面にカラーフィルター層を形成す
る工程と、
前記カラーフィルター層の表面に保護膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6の電気光学装置用基板の製造方法で製造された電気光学装置用基板を
備えた電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−141499(P2011−141499A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3442(P2010−3442)
【出願日】平成22年1月9日(2010.1.9)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】