説明

電気化学エネルギー源、電子装置及び同エネルギー源の製造方法

本発明は、第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とを分離する中間固体電解質からなる少なくとも1つのアセンブリを備える電気化学エネルギー源に関する。本発明はまた、かかる電気化学エネルギー源が設けられる電子モジュールに関する。本発明はさらに、かかる電気化学エネルギー源が設けられる電子装置に関する。さらに本発明は、かかる電気化学エネルギー源を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と第2の電極とを分離する中間固体電解質からなる、少なくとも1つのアセンブリを備える電気化学エネルギー源に関する。本発明はまた、かかる電気化学エネルギー源が設けられた電子装置に関する。本発明はさらに、かかる電気化学エネルギー源を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質に基づく電気化学エネルギー源は、当技術において周知である。これらの(平面)エネルギー源、または「固体電池」は、前文で述べたように構成される。固体電池は、効率的且つクリーンに化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換し、携帯用電子機器のための電源として使用されることが多い。より小さい規模のものでは、例えば超小型電子モジュールへ、より具体的には集積回路(IC)へ電気エネルギーを供給するため、そのような電池を利用することができる。国際特許出願WO00/25378にはその一例が開示されており、同国際特許出願においては、固体薄膜マイクロ電池が特定の基板上で直に製造される。この製造工程ではその後、第1の電極、中間固体電解質、そして第2の電極が基板上に堆積される。公知のマイクロ電池は一般的に、他の個体電池に比べて優れた性能を発揮するが、公知のマイクロ電池にはいくつかの欠点がある。WO00/25378の公知のマイクロ電池の主な欠点は、その製造工程が比較的複雑であり、そのために比較的費用がかかることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、公知の電気化学エネルギー源の利点を保ちつつ、比較的簡素な方式で構成でき且つ製造できる改良型電気化学エネルギー源を提供することである。
【0004】
本発明の目的は、前記第1の電極が、少なくとも部分的には固体電解質と第2の電極とが堆積される伝導基板によって形成されることを特徴とする、前文で述べた電気化学エネルギー源によって達成される。このようにして、電子伝導基板はまた、第1の電極の少なくとも一部として機能する。一般的に、前記基板と前記第1の電極の少なくとも一部とを一体化することで、当技術では公知のものに比べてより簡素な(マイクロ)電池構成がもたらされる。しかも、少なくとも1つの工程段階をなくすことができるため、本発明によるエネルギー源の製造方法はより簡素でもある。さらに、本発明によるこの比較的簡素な固体エネルギー源製造方法により、多大な費用節約がもたらされる。固体電解質と第2の電極は好ましくは、厚みが約0.5ないし5マイクロメートルの薄膜層として基板上に堆積される。エネルギー源におけるイオンの移動は、厚膜層よりも薄膜層を通じての方が容易であると共に速度も速いため、薄膜層を用いることで電流密度及び効率がより高いものとなる。こうして、内部エネルギー損失を最小限にとどめることができる。エネルギー源の内部抵抗が比較的低いため、再充電可能なエネルギー源を適用する場合には、充電速度を上げることができる。
【0005】
好適な実施形態において、電解質と第2の電極とに面する基板の接触面には、少なくとも部分的にパターンが形成される。このように、両電極と固体電解質との間で容積当たりの接触面を拡大できる。一般的に、本発明によってエネルギー源の構成要素間の接触面が拡大することでエネルギー源の率容量が向上するため、(エネルギー源の層の容積の利用が最適となることにより)電池容量が向上する。こうして、エネルギー源の電力密度を最大化することによって、最適化できる。パターンの性質と形状と寸法設定とは任意でよい。
【0006】
一般に、接触面には様々な方法で、例えば接触面から外へ突出する拡張部を同接触面へ提供することによって、パターンを形成できる。好ましくは接触面に任意の形状と寸法の複数の空洞を設け、前記空洞の内側表面の少なくとも一部分に前記電解質と前記第2の電極とを設ける。これには、パターン形成される接触面を比較的簡易な方法で製造することができるという利点がある。ある実施形態では、空洞を連結することにより基板上での複数の突出する柱の形成を可能とすることで、電気化学エネルギー源内の接触面を拡大する。別の好適な実施形態においては、少なくとも空洞の一部が細隙または溝を形成し、同細隙または溝の中で固体電解質と第2の電極とが堆積される。伝導表面の接触面上のパターンは、より具体的には空洞は、例えばエッチングによって形成できるであろう。
【0007】
第1の電極と第2の電極の内、少なくとも一方は、好ましくはカレントコレクタに結合される。シリコン基板の場合、第1の電極にはカレントコレクタは不要であり得る。ただし、例えば第2の電極としてLiCoO電極を備えるLiイオン電池の場合には、好ましくはアルミニウムカレントコレクタ(層)が設けられる。代替的に、または追加して、好ましくはドープされた、例えばSi、GaAs、InP等の半導体材料から、又は銅若しくはニッケル等の金属から製造されたカレントコレクタを、本発明による固体エネルギー源のカレントコレクタとして一般に適用できるであろう。
【0008】
基板は主表面を有し、この主表面上又は主表面中には空洞が形成され、主表面は平面を定義する。この平面へのカレントコレクタの垂直の突出は、少なくとも部分的にはこの平面への一空洞の垂直の突出に重なってもよく、好ましくは、この平面への全空洞の垂直の突出に重なってもよい。こうしてカレントコレクタが空洞に比較的接近するため、最大電流が増大する。一実施形態においては、カレントコレクタが一空洞内、好ましくは全空洞内に延在する。これにより、率容量がさらに増加する。比較的深い空洞、すなわち20マイクロメートル以上の深さを有する空洞であれば、とりわけ有利である。
【0009】
一実施形態において、基板は以下の原子、すなわちH、Li、Be、Mg、Na、及びKの内、少なくとも1つのイオンを蓄積するように適応される。よって、本発明による電気化学エネルギー源は様々な挿入機構に依拠してもよいため、例えばLiイオン電池、NiMH電池、等種々の電池を形成するのに適している。
【0010】
別の実施形態において、基板は以下の材料:すなわちC、Si、Sn、Ti、Ge、及びPbの内の少なくとも1つから形成される。基板を形成するため、これらの材料の組み合わせを用いてもよい。好ましくは、n型またはp型にドープされたSi又はドープされたSi関連化合物を基板として使用する。例えば前で段落に記載した原子等のイオンを挿入及び蓄積するように基板の材料が適応されるのであれば、他の適切な材料も基板として適用できる。さらに、これらの材料は好ましくは、基板の接触面にパターン(穴、溝、柱等)を施すエッチング工程を受けるのに適したものとする。
【0011】
本発明によるエネルギー源で適用される固体電解質は、イオン伝導機構または非電子伝導機構の何れか、例えばH、Li、Be、及びMgのためのイオン伝導体に依拠してもよい。リチウムリン酸窒化物(LiPON)は、固体電解質としてのLi伝導体の一例に当る。他の公知の固体電解質、例えばリチウムシリコン酸窒化物(LiSiON)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、オルトタングステン酸リチウム(Li2WO4)、及びリチウムゲルマニウム酸窒化物(LiGeON)もまたリチウム伝導固体電解質として使用できる。プロトン伝導電解質は、例えばTiO(OH)によって形成できる。プロトン伝導電解質に関する詳しい情報は、国際特許出願WO02/42831で開示されている。リチウムイオン主体のエネルギー源のための第1の(正)電極は、例えば正電極としてよく、金属酸化物主体の材料、例えばLiCoO、LiNiO、LiMnOから、あるいはこれらの組み合わせから、例えばLi(NiCoMn)Oから、製造してよい。プロトン主体のエネルギー源の場合における第1の(正)電極の例としてNi(OH)とNiM(OH)とがあり、ここでMは、例えばCd、Co、またはBiのグループから選択された1つまたは複数の元素によって形成される。
【0012】
さらに別の実施形態においては、固体電解質と第2の電極とが基板の複数の側面に堆積される。こうして基板はイオン蓄積のためにより集中的に使用されることとなり、本発明による電気化学エネルギー源の電気容量が増大する。
【0013】
電気化学エネルギー源は好ましくは、ともに電気結合された複数のアセンブリを備える。これらのアセンブリは、電気化学エネルギー源の用途の要求に応じて、直列及び並列の少なくとも一方で結合されてよい。比較的高い電流が必要な場合には、数個のアセンブリの第1の電極と第2の電極とを並列に電気的に結合させる。比較的高い電圧が必要な場合には、第1のアセンブリの第1の電極を第2のアセンブリの第2の電極に電気的に結合させることができる。第2のアセンブリの第1の電極を第3のアセンブリの第2の電極に電気的に結合させる等もある。
【0014】
基板は、第1の電極を構成する第1の部分と、第1の部分に接触しない第2の部分とを備えてもよい。第2の部分には、同第2の部分に一体化された電気装置を備えてもよい。基板は好ましくは、第1の部分から第2の部分へのイオンの拡散を減じるため、そして好ましくはこれを実質的に防止するため、障壁層を備える。例えばシリコンウェハを適用することによってLiイオン蓄積のため基板が適応される場合には、Liイオンが第1の電極(ウェハ)から出るのを防止するため、そのような障壁層をSiまたはSiOから形成することができる。
【0015】
電気化学エネルギー源を強化するため、基板を支持構造により支持するのが好ましい。このように支持構造を適用することが、特定の事例では望ましいこともあり得る。例えば、本発明による構造を有する電池での水素蓄積のために、チタンまたは基板を備えるチタンを使用する場合には、支持構造を使用してエネルギー源の構成を強化することができる。なお、チタン基板は(一時的)誘電層によって製造してもよく、同誘電層上に基板が堆積される。誘電層は、この堆積工程の後に取り除いてもよい。チタン基板をさらに支持するため、非導電性の支持構造を使用してもよい。厚みを減らすことによって基板を部分的に除去し、これによりエネルギー源のエネルギー密度を向上させることが有利であり得る。例えば、厚みが約500マイクロメートルの基板から、厚みが約10ないし200マイクロメートルの基板へとエネルギー源を移すことができる。このように基板の適応を行うためには、(公知の)「基板移動技術」を応用できる。
【0016】
好適な実施形態において、第1の電極は前記基板の中への挿入イオンの拡散を、少なくともかなりの部分阻止するように適応された電子伝導障壁層を備え、前記障壁層は前記基板上に設けられる。本発明による電気化学源の(再)充電サイクルに関与する挿入イオンはしばしば基板内に拡散し、その結果、これらのイオンは最早(再)充電サイクルに関与しなくなり、電気化学源の蓄積容量を減少させるため、この好適な実施形態は一般的に特に有利である。一般的に、集積回路、チップ、ディスプレイ等の電子構成要素を担持するために、単結晶シリコン導電性基板が適用される。この結晶シリコン基板は、挿入イオンが比較的容易に前記基板内へ拡散するというこの欠点があり、前記エネルギー源の容量が減少する。この理由から、基板内への前記好ましくない拡散を阻止するために前記基板の上に障壁層を設けることは、非常に有利である。前記障壁層によって挿入イオンの移動は少なくともかなりの部分が遮断され、その結果、基板内でこれらのイオンの移動は最早起こらなくなる。その一方で、前記基板内での電子の移動は依然可能である。この実施形態によれば、挿入イオンの蓄積に対して(のために?)基板を適応することは最早必要でない。したがって、金属、導電性ポリマー等で形成された基板等、シリコン基板以外の電子伝導性基板を適用することも可能である。前記障壁層は、以下の化合物:すなわちタンタル、窒化タンタル、及び窒化チタンの内少なくとも1つから、少なくとも実質的に形成される。ただし障壁層の材料はこれらの化合物に限定されない。これらの化合物は一般的な性質としては、リチウムイオンを含む挿入イオンに対し非透過の比較的稠密な構造を有する。ある特定の好適な実施形態において、第1の電極はさらに、基板に向かい合う前記障壁層の側面の上に堆積された挿入層を備える。これにより前記挿入層は、挿入イオンを(一時的に)蓄積するべく(かつ解放するべく)適応される。この実施形態によれば、第1の電極はこのように前記基板、前記障壁層、及び前記挿入層からなる積層物によって形成される。この積層物は一般的に、障壁層と挿入層とを前記基板の上に積み重ねる(堆積させる)ことによって形成されるであろう。ただしある特定の実施形態においては、積層物を注入技術によって形成することもでき、この場合には、例えば結晶シリコン基板に、例えばタンタルイオン及び窒素イオンをボンバードし、その後、注入された基板の温度は、前記元の基板内に埋め込まれた物理的障壁層を形成するべく十分に上昇される。イオンによるシリコン基板のボンバードの結果、一般的には、元の基板の結晶最上位層の格子は破壊され、前記挿入層を形成するアモルフォス最上位層が得られる。ある好適な実施形態において、前記挿入層はシリコンから、好ましくはアモルフォスシリコンから少なくとも実質的に形成される。アモルフォスシリコン層は、単位容積当たりの比較的大量の挿入イオンを蓄積する(且つ解放する)傑出した性質を有し、これが本発明による電気化学源の蓄積容量の向上をもたらす。好ましくは、前記障壁層は前記基板上に堆積される。前記障壁層と前記挿入層は何れも低圧化学気相堆積法(LPCVD)によって前記基板の上に堆積されることが好ましい。
【0017】
本発明はさらに、少なくとも1つのかかる電気化学エネルギー源が設けられる電子モジュールに関する。この電子モジュールは、集積回路(IC)、マイクロチップ、ディスプレイ等によって形成してもよい。電子モジュールと電気化学エネルギー源との組み合わせは、モノリシックまたは非モノリシック形式で構成してもよい。モノリシック構成の前記組み合わせの場合には、好ましくは電子モジュールとエネルギー源との間にイオンの障壁層が適用される。一実施形態においては、電子モジュールと電気化学エネルギー源とがパッケージ内システム(SiP)を形成する。このパッケージは好ましくは非伝導とし、前述の組み合わせのための容器を形成する。こうして自律的で即使用可能なSiPが提供されることができ、同SiPには電子モジュールのほかに、本発明によるエネルギー源が設けられる。
【0018】
本発明はさらに、少なくとも1つのかかる電気化学エネルギー源が、あるいは好ましくは1つのかかる電子モジュールが設けられる電子装置に関する。シェイバーはそのような電子装置の一例に当り、そこでは電気化学エネルギー源が、例えば予備(または主)電源として機能できるであろう。本発明によるエネルギー源を組み入れてよい電子装置のもうひとつの例として、マイクロプロセッサチップを内蔵する所謂「スマートカード」がある。現在のスマートカードは、カードのチップに蓄積された情報を表示するため、別個の嵩張るカードリーダーが必要である。しかし、好ましくは可撓性のマイクロ電池により、スマートカードは、例えば、同スマートカードに蓄積されたデータをユーザが容易にアクセスできる比較的小さいディスプレイ画面を、同カードそのものに備えることができる。
【0019】
さらに本発明は、かかる電気化学エネルギー源を製造する方法に関し、同方法は:A)固体電解質を基板に堆積させるステップと、B)その後第2の電極を基板に堆積させるステップとを含む。ステップA)とB)との適用中には、好ましくは以下の堆積技術:すなわち物理的気相堆積法(PVD)、化学的気相堆積法(CVD)、及び原子気相成長法(AVD)の内1つが使用される。PVDの例としては、スパッタリングと、一般的に≧20マイクロメートル程度のトレンチ幅を要する、レーザー切断とがある。CVDの例としては、LP−CVDと原子層成長法(ALD)とがある。ALDは好ましくは、比較的低い圧力(約150mbar以下)で実行される。これらの技術は当業者にとって周知であり、基板において0.5マイクロメートル未満程度の孔径を可能にする。
【0020】
ある好適な実施形態において、この方法には、基板の少なくとも1つの接触面のパターン形成を含むステップC)が設けられ、同ステップC)はステップA)よりも先に実行される。上で説明したように、基板表面のパターン形成はエネルギー源の各種構成要素の容積単位当たりの接触面を拡大し、その結果率性能が向上する。一実施形態においては、ウエットケミカルエッチングやドライエッチング等のエッチング技術がパターン形成に使用されてよい。これらの技術の周知の例として、RIEと集束イオンビーム(FIB)とがある。
【0021】
この方法の一実施形態において、同方法は、電子伝導障壁層と挿入層とをその後基板に堆積させることを含むステップD)を含む。ステップD)はA)よりも先に実行され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の非制限的な例示により、本発明を説明する。
【0023】
図1は、本発明による電気化学エネルギー源1、より具体的には本発明によるLiイオンマイクロ電池の斜視図を示す。このエネルギー源1は、同エネルギー源1の負電極として機能するシリコン基板2を備える。このシリコン基板2は例えば、ICに使用されることの多いシリコンウェハによって形成してもよい。基板2は、20マイクロメートルより大きい、又は100マイクロメートルより大きい、又は500マイクロメートルより大きい厚みを有してもよい。シリコン基板2の上位表面3では、既存のエッチング技術によって数本の細隙4がエッチングされる。これらの細隙4の寸法設定は、任意でよい。好ましくは、細隙4の幅は約2ないし10マイクロメートルとし、細隙4の深さは約10ないし100マイクロメートルとする。パターン形成された上位表面4の上には、固体電解質層5が堆積される。電解質層5は約1マイクロメートルの厚みを有し、好ましくはリチウムリン酸窒化物(LiPON)から形成される。LiPON層5の上には、正電極層6が約1マイクロメートルの厚みで堆積される。この正電極6は好ましくは、炭素繊維と混合されることもあるLiCoOで形成される。基板2の上位表面4への電解質5と正電極6との堆積は、化学的または物理的気相堆積法または原子層堆積法等、従来の堆積技術によって行う。基板2をエッチングすることにより、両電極2,6と電解質5との間の接触面は、容積単位当りで(大幅に)拡大され、エネルギー源1においてレート性能と電力密度の向上(最大化)をもたらすであろう。任意に、正電極6にはアルミニウムカレントコレクタ(図示せず)を結合できる。図示されたエネルギー源1の構成は、かなり効率的で簡素な構成であり、さらにその製造は比較的簡易である。さらに、電解質の層厚みを最小化することにより、そしてエネルギー源1の構成要素2,5,6間の相互接触面を最大化することにより、図示されたエネルギー源1の性能は最適化される。
【0024】
図2は、本発明による別の電気化学エネルギー源7の断面を示す。このエネルギー源7は、同エネルギー源7の負電極として機能する基板8を備える。基板8の上位表面9と下位表面10には、何れもパターンが形成される。これらのパターンは、基板8でエッチングされる空洞11,12によって形成される。上位表面9上と下位表面10上には何れも、電界層13,14が堆積される。各電界層13,14の上にはその後、正電極15,16が堆積される。正電極15,16はそれぞれ、(少なくとも)部分的にはカレントコレクタ17,18によって覆われる。両カレントコレクタ17,18は相互に結合される(図示せず)。基板8にはまた、単独のカレントコレクタ19が設けられる。このエネルギー源7で適用される挿入機構と使用される材料とは、異なる場合がある。図示されるエネルギー源7は、例えばLiイオン(マイクロ)電池またはNiMH電池を形成できる。上記で述べたとおり、エネルギー源7のエネルギー密度を向上させるため、基板8の表面9,10にはパターンが形成される。例えばチップ支持体として同時に使用できる基板8は、イオンを蓄積するために使用されるため、エネルギー源7のための比較的に効果的な構成を得ることができる。
【0025】
図3は、本発明によるパッケージ(SiP)20内モノリシックシステムの概略図を示す。このSiPは、電子モジュールまたは装置21と、それに結合された本発明による電気化学エネルギー源22とを備える。電子モジュールまたは装置21とエネルギー源22とは、障壁層23によって分離される。電子モジュールまたは装置21とエネルギー源22とは何れも、同じモノリシック基板(図示せず)の上に搭載されるか、又は同じモノリシック基板に基づくかの少なくとも一方である。基板がイオンの(一時的)蓄積媒体として使用されることにより、電極として機能することを前提とし、エネルギー源22の構成は任意でよい。電子モジュールまたは装置21は、例えばディスプレイ、チップ、コントロールユニット等によって形成できる。このように、多数の自律的(即使用可能)装置を比較的簡素な方式で形成できる。
【0026】
図4は、本発明による代替のマイクロ電池24、具体的にはLiイオン電池の斜視図を示す。このマイクロ電池24は、第1の電極25、第2の電極26、及び両電極25,26の間に配置された固体電解質27を備える。この例における第1の電極25は、電子伝導性基板28と電子伝導性障壁層29と挿入層30とからなる積層物によって形成された負電極25である。前記マイクロ電池24の前記層25,26,27の間(及び中)の接触面を拡大するように、従来のエッチング技術によって基板28にパターンを形成することにより、バッテリ容量が向上する。障壁層29と挿入層30とは何れも、従来の堆積技術によって、一般的には低圧化学気相堆積法(LPCVD)によって、前記基板28の上に堆積される。前記基板28は、例えば金属又は導電性ポリマー等、任意の電子伝導性材料から形成することができるが、ただし一般的には単結晶シリコンから形成される。この前記基板28に多様な材料を適用できることにより、基板は、シリコン等の剛性材料か、或いはポリアセチレン及びポリ(パラフェニレンビニレン)(PPV)等の何らかの電子伝導性ポリマー等の可撓性材料か、の何れかで形成できる。マイクロ電池の用途次第で、前記基板28にとって相応しい材料を選択することができる。電池の効率性と電池の寿命の著しい減少を招くであろう、前記シリコン基板28の中への挿入リチウムイオンの過剰な拡散を避けるため、前記障壁層29が設けられる。この障壁層29は好ましくは、タンタルか、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン等のチタン含有化合物か、の少なくとも一方によって形成される。これらの化合物はどれも、比較的低い比電気抵抗を有する。この電子伝導層29は、挿入リチウムイオンに対する透過性の低い比較的に稠密な構造を有するため、同イオンが前記基板28の中へ拡散することはまずない。したがって、第1の電極の挿入機構は、挿入リチウムイオンの一時的蓄積・解放のために特別に適応される前記挿入層30によって概ね決定づけられる。障壁層29は、好ましくは20から100ナノメートルの、より好ましくは50から100ナノメートルの層厚みを有する。挿入層30は、一般的にはシリコンから、好ましくはアモルフォスシリコンから形成される。この挿入層30の層厚みは、好ましくは30から100ナノメートルとし、より好ましくは約50ナノメートルとする。前記固体電解質27は、好ましくはLiPON、LiNbO、LiTaO、LiWO等によって形成される。前記第2の正電極26は、LiCoO化合物によって形成される。第1の負電極25は、前記マイクロ電池24の上位表面に位置付けられたコネクタ31へ接続される。任意の選択として、前記マイクロ電池24へ保護を提供するため、図示されたマイクロ電池24のスタックの上には、追加の層(図示せず)を設けることができる。この特定の実施形態においては、前記マイクロ電池24内に挿入リチウムイオンを閉じ込めるため、最上位層は好ましくは、第1の電極25の障壁層29に等しい追加的な障壁層によって形成され、ここで挿入イオンの移動の自由は制限され、その結果、マイクロ電池24の容量を保つことができる。これにより、電池効率の向上と寿命の向上の両方がもたらされる。本発明が、前述の実施形態に決して限定されないことは自明である。添付特許請求の範囲内で様々な実施形態が可能であり、他の様々な実施形態が当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による電気化学エネルギー源の斜視図。
【図2】本発明による別の電気化学エネルギー源の断面図。
【図3】本発明によるパッケージ内モノリシックシステムの概略図。
【図4】本発明による代替のマイクロ電池の斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1、7、22 電気化学エネルギー源
2、8 基板
5、13、14 中間固体電解質
6、15、16 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアセンブリを備える電気化学エネルギー源であって:
− 第1の電極と、
− 第2の電極と、
− 前記第1の電極と前記第2の電極とを分離する中間固体電解質と、
を含み、前記第1の電極が、少なくとも部分的には前記固体電解質と前記第2の電極とが堆積された伝導基板によって形成されることを特徴とする、電気化学エネルギー源。
【請求項2】
前記電解質と前記第2の電極とが、少なくとも部分的にパターン形成された前記基板の接触面へ適用されることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項3】
前記接触面に任意の形状の複数の空洞が設けられ、前記電解質と前記第2の電極とは、前記空洞の内側表面の少なくとも一部分へ適用されることを特徴とする、請求項2に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項4】
前記空洞の少なくとも一部分が細隙を形成することを特徴とする、請求項3に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極の内、少なくとも一方がカレントコレクタへ結合されることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項6】
前記基板が、以下の原子:すなわちH、Li、Be、Mg、Na、及びKの内、少なくとも1つのイオンの蓄積のために適応されることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項7】
前記基板が、以下の材料:すなわちC、Sn、Ge、Pb、及び、好ましくはドープされたSiの内の少なくとも1つで形成されることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項8】
前記固体電解質と前記第2の電極とが、前記基板の複数の側面に堆積されることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項9】
前記基板が、イオンの障壁層によって少なくとも部分的に覆われることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項10】
前記基板が支持構造によって支持されることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項11】
前記第1の電極が、前記基板内への挿入イオンの拡散を少なくとも実質的に阻止するように適応された電子伝導障壁層を備え、前記障壁層は前記基板上に適用されることを特徴とする、先行する請求項の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項12】
前記第1の電極がさらに、前記基板に向かい合う前記障壁層の側面の上に堆積された挿入層を備えることを特徴とする、請求項11に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項13】
前記挿入層が、シリコン、好ましくはアモルフォスシリコンから少なくとも実質的に形成されることを特徴とする、請求項12に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項14】
前記障壁層が前記基板の上に堆積されることを特徴とする、請求項11から13の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項15】
前記障壁層が、以下の化合物:すなわちタンタル、窒化タンタル、チタン、及び窒化チタンの内の少なくとも1つから、少なくともかなりの部分が形成されることを特徴とする、請求項11から14の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項16】
請求項1から15の何れか一項に記載の少なくとも1つの電気化学エネルギー源が設けられる電子装置。
【請求項17】
前記電子装置が集積回路(IC)によって形成されることを特徴とする、請求項16に記載の電子装置。
【請求項18】
前記電子装置と前記電気化学エネルギー源とがパッケージ内システム(SiP)を形成することを特徴とする、請求項16(?)または17(?)に記載の電子装置。
【請求項19】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の電気化学エネルギー源を製造する方法であって:
A)前記基板に前記固体電解質を堆積させるステップと、
B)前記基板に前記第2の電極をその後堆積させるステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記基板の少なくとも1つの接触面のパターン形成を含むステップC)を前記方法に設け、ステップC)はステップA)よりも先に実行されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基板に電子伝導障壁層と挿入層とをその後堆積させることを含むステップD)を前記方法に設け、ステップD)はステップA)よりも先に実行されることを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506226(P2007−506226A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525931(P2006−525931)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051483
【国際公開番号】WO2005/027245
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(501344315)コニンクリユケ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ブイ. (174)
【Fターム(参考)】