説明

電気化学反応による化学物質の製造方法

【課題】
電気化学反応の収率を向上させることを課題とする。
【解決手段】
作用極と対極の一対以上の電極を具えた流路があり、作用極と対極間の電極間距離が200μm以下であり、作用極と対極の間に隔壁が設けられていることを特徴とするマイクロリアクターを用いて電気化学反応を実施することによる化学物質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材中に電極を具備するマイクロリアクターを用いた化学物質の製造方法に関する。さらに詳しくは、化学、生化学、農業、林業、医療、食品工業、製薬工業、環境保全、などの分野、とりわけ、化学合成、化学分析および生化学用反応装置として有用な流通式反応器を用いた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学反応器は、バッチ式と流通式に大きく分類される。バッチ式電気化学反応器は電解液を満たした容器に少なくとも一対の電極を差し込み、電極に電圧を印加することにより、電極表面で電気化学的酸化還元反応を行なうものである。流通式電気化学反応器は、少なくとも一対の電極を設けた流路に電解液を流通させ、電極に電圧を印加し連続的に電気化学的酸化還元反応を行なうものである。従来の電気化学反応器は、バッチ式と流通式のいずれも工業的に実用化されているが、電極間の距離が数十cmから数cm離れているため、必要電流量を流すためには、電圧を上げたり、支持電解質濃度を高めたりする必要があった。消費電力量は電流値と電圧値の積であるため、電圧を上げると消費電力量が増加したり、発熱量が増加し副生成物量が増加したりするなど問題がある。一方、電解液の電気抵抗を下げるため、支持電解質濃度を高める方法が取られる場合がある。しかし、支持電解質には高価なものが多かったり、支持電解質由来の副生成物量が増加したりするなど問題がある。また、従来の電気化学反応器は、生産量を多くするため、内容積が1mから数十mのものが一般的に使用されている。このように内容積が大きいと、電解反応の際に生じる熱の除去が難しくなり、不用な副反応が生じやすいなどの問題がある。
【0003】
マイクロリアクターは、微小な流路を有する装置であり、化学反応、微小分析、薬品の開発、ゲノム・DNA解析ツールなどに利用されている。マイクロリアクターは、従来の反応器に比べ装置全体が小さいため熱交換効率が極めて高く、温度制御が精密に行なえるという特徴がある。従って、発熱が大きく暴走や爆発の危険性のある反応や、精密な温度制御を必要とする反応や、急激な加熱や冷却を必要とする反応でも、マイクロリアクターを利用すれば容易に精密制御が可能という利点がある。また、微小な流路に分岐を設け複数の相溶する液体あるいは気体を混合した場合、拡散距離が短いため瞬時に混合させることが可能である。そのため、より理想に近い混合比率での混合が可能で、好ましくない副反応を抑制することができる。また、微小空間の中で反応を行なうため、流体の単位体積あたりの界面、例えば、非水溶性溶剤と水との液・液界面や、液体と器壁との固・液界面の面積が、非常に大きくなる。それ故、界面を介した物質移動や、不均一触媒との接触面積が大きくなるため、反応を効率よく行なうことが出来る。さらに、リアクターの容積が微小であるので、反応に用いる試料(反応試薬、サンプルなど)の量およびコストを抑えることができ、生成物の分析能力の限界まで反応スケールを小さくすることができるため、廃棄物を抑制し、環境への負荷を低減させることができる。
【0004】
マイクロリアクターを用いた物質生産では、従来までのように反応器の大きさを大きくするスケールアップではなく、マイクロリアクターを多数並列させて生産する、いわゆるナンバリングアップを行なうことが検討されている。従来のスケールアップでは、実験室のフラスコで開発された物質を大量生産するためには、数リットルの小試験、数百リットルの中試験を行なった後、数立米規模の実機プラントの設計が行なわれる手順を踏んでおり、多大のコスト・労力・時間を労しており、また、スケールアップにより収率が悪化することも珍しくない。一方、マイクロリアクターにおけるナンバリングアップでは、同一のマイクロリアクターを多数並列して生産するため、増産が容易であり、同様の品質の製品を作ることができると考えられている。
【0005】
電気化学反応用マイクロリアクターは、分析用途には数多くの報告がある(例えば、特許文献1〜2参照)。ところが、マイクロリアクターを化学物質生産用途に用いた例は非常に少ない(例えば、特許文献3〜6参照)。しかも、特開2003−172736号公報は、実質的にはDNAのPCR反応や電気泳動を目的にしており、化学物質生産を目的にしたものではない。また、特開2003−117409号公報は、リアクターの素材にプラスチックスを用いることを特徴としているため、化学物質生産には不向きである。また、米国特許6607655号公報では、マイクロリアクターを使って化学物質生産の例が示されているが、電極間にスリットの開いた絶縁性フィルムを挟み込んで、二つの電極とスリットで形成された空間に反応液を注入し、電気化学反応を実施する仕組みとなっている。当該特許の実施例には、絶縁性フィルムとして、ポリイミドなどの耐薬品性の高い材料を使用しているが、電気化学反応に対する耐久性は充分でなく、また、本目的に充分に耐久性のある材料は知られていない。また、特開2004−66169号公報では、熱硬化樹脂成型品を炭化焼成した炭素材料からなる微小空間内で電気化学反応を実施するマイクロ化学デバイスが報告されているが、熱硬化樹脂成型品を炭化焼成した炭素材料は、寸法安定性が乏しく異常収縮や反りの発生が生じやすいため、量産には適さない。また、陽極と陰極の間にイオン伝導膜を挟みこむことで、両極間の反応液を混合させずにイオンの伝導を可能とするとされているが、イオン伝導膜は溶媒を吸収し膨潤することが知られており、膜の膨潤により微小空間を圧迫し、場合によっては閉塞させ反応液を流すことが出来ない事態に陥るなど、問題点が多い。
【特許文献1】特開2004−239781号
【特許文献2】特開2003−4752号
【特許文献3】特開2003−172736号
【特許文献4】特開2003−117409号
【特許文献5】米国特許第6607655号
【特許文献6】特開2004−66169号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気化学反応の収率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、以下の発明を完成した。即ち、本発明は、作用極と対極の一対以上の電極を具えた流路があり、作用極と対極間の電極間距離が200μm以下であり、作用極と対極の間に隔壁が設けられていることを特徴とするマイクロリアクターを用いて電気化学反応を実施することによる化学物質の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気化学反応の収率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明においてマイクロリアクターとは、マイクロ加工技術などを用いて作製された幅数μmから数百μmを中心とするマイクロ空間内の現象を利用した化学反応・物質生産のための装置である。装置全体の大きさについては、必ずしも微小である必要はない。
【0011】
本発明において用いられるマイクロリアクターは、作用極と対極間の電極間距離が200μm以下である。電極間距離は、100μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下がとりわけ好ましい。電極間距離が大きくなりすぎると、反応液の電気抵抗が高まり、消費電力が大きくなる問題が生じる場合がある。更に、電気抵抗を下げる目的で支持電解質を加えたり増加させたりすると、反応後に支持電解質を分離する工程が必要になったり、高価な支持電解質を用いることにより製造コストが上昇する場合がある。
【0012】
本発明において用いられるマイクロリアクターの電極間には、隔壁が設けられる。隔壁は、作用極および対極で生じた化合物が反対の極に拡散し、再度、酸化反応や還元反応を受けないように、拡散を抑制する目的で設けられる。隔壁の材料は、電極間に隔壁を加工できる素材であれば、特に限定されない。例えば、基板をシリコンで加工する場合は、溝を形成する時に同時に隔壁を加工しても良いし、シリコンのように加工性の優れた基板でない場合は、基板の上に厚膜レジスト(例えば、SU-8 MicroChem社製)を使って、溝と隔壁を加工してもよい。隔壁には、通電のためのイオンが透過する空隙が無ければならない。この空隙の形状は特に限定されないが、例えば、壁に貫通孔が開いた形状にしても良いし、壁が多孔質のように微細な穴の開いたものにしても良いし、特に、加工技術上の観点から壁にスリットが開いた形状が好ましい。壁に設けられた空隙の空隙率は、1%以上80%以下が好ましく、さらには、10%以上60%以下が好ましい。空隙率は、電極間に設けられた隔壁全体の空隙の断面積と隔壁全体の断面積の比から求めることが出来る。
【0013】
本発明で用いるマイクロリアクターは、電極間距離が200μm以下である作用極と対極の一対以上の電極を具えた流路があり、この流路の一方の末端に作用極側と対極側に反応液を供給するための二つ以上に分岐した流路が接続し、もう一方の末端に作用極側と対極側の反応液をそれぞれ分取するための二つ以上に分岐した流路が接続していれば特に限定されない。例えば、ガラスなどの絶縁性基板上に厚膜レジスト(例えば、SU-8 MicroChem社製)を使って溝を形成し、その溝の中に蒸着やスパッタ技術を使って一対以上の電極を設けた後、ガラスなどの絶縁性基板で蓋をして、この流路に反応液を注入し電気化学反応を行なえるようにしたものでも良い。ここで、流路の形状は特に限定されず、直線状でも曲線状でも構わない。
【0014】
また、表面を酸化させて絶縁性を高めたシリコン基板にエッチング技術を用いて溝を形成し、その溝の中に蒸着やスパッタ技術を使って一対以上の電極を設けた後、ガラスなどの絶縁性基板で蓋をして、この流路に反応液を注入し電気化学反応を行なえるようにしたものでも良い。ここで、流路の形状は特に限定されず、直線状でも曲線状でも構わない。上記のシリコン基板をガラスで蓋をする方法は、陽極接合が簡便でかつ密着性に優れているので好ましい。
【0015】
本発明で用いるマイクロリアクターの流路は、フォトリソグラフィー技術を用いて形成するのが好ましい。フォトリソグラフィー技術は、容易に微細な加工が可能である上に、二次元的には自由に設計が可能であり、また、量産化技術も確立されているので、安価にマイクロリアクターを供給することが可能であるなどメリットが多い。
【0016】
本発明で用いるマイクロリアクターの電極を具える流路の一方の末端には、作用極側と対極側に反応液を供給するための二つ以上に分岐した流路が接続し、もう一方の末端に作用極側と対極側の反応液をそれぞれ分取するための二つ以上に分岐した流路が接続してなければならない。二つ以上に分岐した供給側の流路は、作用極側と対極側とに異なった成分の反応液を、異なった流量で供給を可能にする。また、二つ以上に分岐した排出側の流路は、作用極側と対極側で生成した化学成分の混合を最小限に抑制したまま分離し排出することを可能にする。電極を具えた流路に対する分岐した流路の接続角度は、特に限定されないが、5°以上120°以下が好ましく、10°以上90°以下がさらに好ましい。この接続角度が5°以下であると、流路を完全に分離するまでの距離が長くなり過ぎ、無駄が多いので好ましくなく、120°以上では、流速にもよるがポンプの微小な圧力差により、液面に振動が生じるため好ましくない。また、電極を具えた流路に対する二つ以上の分岐した流路の接続角度は、対称であっても良く、非対称であっても良い。
【0017】
本発明で用いるマイクロリアクターの流路の長さは特に限定されず、反応液濃度、反応液流量、電流密度、電流効率などを考慮し適宜設計して良い。
【0018】
本発明で用いるマイクロリアクターの電極素材は、通電すれば特に限定されない。例えば、パラジウム、プラチナ、ロジウム、イリジウム、ニッケル、金、タングステン、ニオブ、カドニウム、マンガン、タリウム、鉛、水銀などの金属や、グラッシーカーボン、分光分析級黒鉛、熱分解黒鉛、炭素クロスなどの炭素素材やそれらの粉末をキシレンワックス、エポキシ樹脂、シリコーンゴム、ヌジョールなどに分散させたものなどを使用することができる。また、上記金属を蒸着やスパッタを用いて付着させる際には、基板との付着性を向上させるために、下地としてクロムやチタンなどの薄膜を付着させても良い。また、炭素は、金属電極の表面に炭素粉末を接着性のある素材に分散させたペーストを塗布しても良く、同様に金属電極の表面に炭化水素化合物を塗布し、減圧下で熱分解させて熱分解黒鉛としても良い。
【0019】
本発明で行なう電気化学反応は、特に限定されない。電気化学反応は、酸化反応と還元反応に大別され、特に有機化合物の電気化学反応においては、官能基変換型、付加型、挿入型、置換型、交換型、脱離型、二量化型、交差二量化型、環化型、多量化型、開裂型、金属化型、不斉合成型、などが挙げられるが、いずれも特に限定されない。また、電気化学反応は、反応基質と電極との間の電子授受により基質の酸化・還元を行なう直接法と、メディエーターと呼ばれる電子移動担体を用いる間接法とに大別されるが、いずれにも特に限定されない。同様に、本発明で用いられる反応基質も、有機化合物、無機化合物に限らず、特に限定されない。
【0020】
本発明で行なう電気化学的還元二量化反応の反応基質は、特に限定されない。例えば、マレイン酸、コハク酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルコハク酸、アクリロニトリル等の炭素−炭素二重結合を有する化合物や、ケトン類やアルデヒド類など炭素−酸素二重結合を有する化合物などが挙げられる。これらの反応基質は、同一種類同士で反応させても良く、また、異種間で反応させても良い。
【0021】
本発明で用いることのできる溶剤は、プロトンを供給できる溶剤であれば、特に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,2−エタンジオール、酢酸、塩酸などが使用でき、単一溶剤で用いても良く、混合溶剤として用いても良い。混合する溶剤としては、上述した溶剤でも良く、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチルウレア、エチレンジアミン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどを用いることができる。
【0022】
本発明では支持電解質を用いても良く、反応溶液に溶解し導電性を持たせることができれば特に限定されない。支持電解質は溶媒中でイオンとして働くので、イオン化しやすいアニオンとカチオンで組み合わされた塩である。カチオンとしては、Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラ(n−プロピル)アンモニウムイオン、テトラ(i−プロピル)アンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラ(n−ヘキシル)アンモニウムイオンなどの第4級アルキルアンモニウムなどが挙げられる。アニオンとしては、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、BF、PF、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−1−プロパンスルホニル)イミド、ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−1−ブタンスルホニル)イミド、各種スルホン酸イオンなどが挙げられる。
【0023】
本発明で用いるマイクロリアクターの流路の入口は、外部より流路内に流体を導入するための供給装置と接続されていても良く、流路内に小型のポンプを内蔵させても良い。外部よりマイクロリアクターに流体を導入するための供給手段は、特に限定されるものではないが、例えば、種々のポンプや、圧送する方法、重力差を利用する方法、高圧に圧縮された容器から供給する方法、などを用いることができる。ポンプとして具体例を示すとすれば、1)シリンダー内の流体をピストンで押し込めるシリンジポンプ、2)ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプといったピストンやプランジャーなどの往復運動を利用して圧力を高める往復式ポンプ、3)ギアポンプやペリスタポンプといった歯車やローラーを回転し、流体を空隙に閉じ込めて押し動かして輸送する回転式ポンプ、4)ボリュートポンプや、デフューザポンプといった、流体を回転羽根で回転しその遠心力によって圧力を高める遠心式ポンプや、その他一般的に知られているポンプなどが挙げられる。
【0024】
本発明で使用するマイクロリアクターの流路の水力相当直径は、1μm以上2000μm以下が好ましく、10μm以上1000μm以下がさらに好ましく、20μm以上500μm以下がとりわけ好ましい。マイクロリアクターの流路の水力相当直径が1μm以下では、圧力損失が甚だ大きくなると共に、処理量も著しく少なくなるため好ましくなく、2000μm以上では温度制御が困難になるため副生成物が増加するので好ましくない。ここで言う水力相当直径とは、(流路断面積×4÷濡れ辺長)で表すことができる。
【0025】
本発明に用いる反応液の前処理方法や後処理方法は、特に限定されないが、本発明で使用するマイクロリアクターと同様の水力相当直径の流路を使って、行なっても良い。
【0026】
本発明で使用するマイクロリアクターには、温度制御機器が備わっていても良い。ここで言う、温度制御機器とは、加熱や冷却機能を持ち所定の温度に制御することのできる装置であれば特に限定されないが、熱媒や冷媒を流す管や、電熱ヒーターや、ペルチェ素子などを挙げることができる。熱制御機器は、反応流路に近い場所に設置した方が、温度応答が素早いので好ましい。また、マイクロリアクターの構成素材も、熱伝導性の高いものの方が好ましい。例えば、銅、金、アルミ、銀、ニッケル、鉄、白金、鉛、錫、チタンなどの金属や、ステンレス、ハステロイ、黄銅、銅タングステンなどの合金や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化ベリリウム、などのセラミックや、シリコン、石英、ガラス、ダイヤモンド、サファイヤ、炭化ケイ素、などが挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
マイクロリアクターは、シリコン基板に溝とその溝の内部に電極を形成したものの上に、ガラス板を接合して作った。具体的には、以下の手順で作成した。
1)シリコン基板にICPエッチング技術を用いて、電極の位置する部分に、深さ40μm、幅100μm、長さ100mmの溝を2本と、その溝の間に10μm角の柱を10μmピッチで隔壁を形成し、反応液の注入口及び吐出口までは、深さ40μm、幅100μmの溝を、図1に示した形状で形成した。
2)水蒸気存在下1000℃で熱酸化し、絶縁層を形成した。
3)フォトレジストを使い、電極の位置する部分以外をマスクした。
4)スパッタ技術で、約500Åのクロム層を形成してから、約2500Åのプラチナ層を形成した。
5)レジストを溶解し、不必要な金属層を取り除き、図2に示した様な幅80μm、電極間距離50μmの一対の電極を形成した。
6)電極を形成したシリコン基板と、反応液注入用の穴を開けたパイレックスガラスを、陽極接合技術を使って接合した。
7)ダイシングして、不必要な部分を切り取り、マイクロリアクターを完成させた。
【0029】
マイクロリアクター流路の一方の注入口から反応液(マレイン酸ジメチル:20 wt%,酢酸ナトリウム:2wt%/メタノール)を注入し、この流路側の電極を陰極とした。マイクロリアクター流路のもう一方の注入口から反応液(酢酸ナトリウム:2wt%/メタノール)を注入し、この流路側の電極を陽極とした。マイクロリアクターは、ペルチェ素子の上に載せ、15℃に温度制御した。反応液は、シリンジポンプを用いてそれぞれ10μL/minの流量で送液した。この時の、電極上の滞留時間は、約2.5秒であった。ポテンシオ・ガルバノスタッド(北斗電工社製HSV−100)を使い5Vの電圧を印加して、吐出したサンプルをガスクロマトグラフィーで定量分析した。マレイン酸ジメチルの二量体であるテトラブチルブタンカルボン酸の収率は、2.1mol%であった。
【0030】
(比較例1)
図3に示した様に実施例1で示したマイクロリアクターの電極間の隔壁を取り除いたマイクロリアクターを使用した点以外は、実施例1と同様にして実験した。テトラブチルブタンカルボン酸の収率は、1.1mol%であった。
【0031】
(比較例2)
実施例1で示したマイクロリアクターの電極間距離を500μmにした反応器を用い、電極のある流路を通過するのに要する時間を同じくするため、二つの反応液の流量をそれぞれ63μL/minにした以外は、実施例1と同様にして実験した。テトラブチルブタンカルボン酸はガスクロマトグラフィーで検出することが出来ず、コハク酸ジメチルの収率は0.8mol%であった。
【0032】
(実施例2)
実施例1で示したマイクロリアクター制作工程の4)で、プラチナをスパッタする代りにニッケルをスパッタする以外は同様にして、同様の流路形状のマイクロリアクターを作製した。さらに、このマイクロリアクターの陰極側の流路に0.10M塩化パラジウム/10%塩酸溶液を、陽極側の流路に10%塩酸を、それぞれ10μL/minの流量で送液しながら電圧を掛け電解し、陰極にパラジウム黒を電着させた。
【0033】
マイクロリアクター流路の一方の注入口から反応液(フェニルアセトニトリル:3.0g,20%塩酸:30mL,エタノール:50mL)を注入し、この流路側の電極を陰極とした。マイクロリアクター流路のもう一方の注入口から10%塩酸を注入し、この流路側の電極を陽極とした。マイクロリアクターは、ペルチェ素子の上に載せ、15℃に温度制御した。反応液は、シリンジポンプを用いてそれぞれ10μL/minの流量で送液した。この時の、電極上の滞留時間は、約2.5秒であった。ポテンシオ・ガルバノスタッド(北斗電工社製HSV−100)を使い5Vの電圧を印加して、吐出したサンプルを液体クロマトグラフィーで定量分析した。2−フェニルエチルアミンの収率は、4.5mol%であった。
【0034】
(比較例3)
比較例1で示した形状のマイクロリアクターを使用した点以外は、実施例3と同様に電極を加工し、同様の実験をした。2−フェニルエチルアミンの収率は、1.5mol%であった。
【0035】
(比較例4)
実施例2で示したマイクロリアクターの電極間距離を500μmにした反応器を用い、電極のある流路を通過するのに要する時間を同じくするため、二つの反応液の流量をそれぞれ63μL/minにした以外は、実施例3と同様にして実験した。2−フェニルエチルアミンは、液体クロマトグラフィーで検出することは出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るマイクロリアクターの概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るマイクロリアクターの部分断面説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るマイクロリアクターの部分断面説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1.電極部流路
2.電極部から注入口および吐出口までの流路
3.注入口および吐出口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用極と対極の一対以上の電極を具えた流路があり、作用極と対極間の電極間距離が200μm以下であり、作用極と対極の間に隔壁が設けられていることを特徴とするマイクロリアクターを用いて電気化学反応を実施することによる化学物質の製造方法。
【請求項2】
マイクロリアクターが温度制御機器を有することを特徴とする、請求項1記載の化学物質の製造方法。
【請求項3】
電気化学反応が、還元二量化反応であることを特徴とする、請求項1または2に記載の化学物質の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−225726(P2006−225726A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41590(P2005−41590)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】