説明

電気化学的反応のための触媒

本発明は、担体および触媒活性材料を含有する、電気化学的反応のための不均一系触媒として使用するための触媒に関し、この場合、この触媒は、50m/g未満のBET表面積を有する炭素担体であることを特徴とする。さらに本発明は、燃料電池における電極触媒としての触媒の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体および触媒活性材料を含む、電気化学的反応のための不均一系触媒として使用するための触媒に関する。さらに本発明は、この触媒の使用に関する。
【0002】
電気化学的反応のための触媒として、通常は、白金族の金属または白金族の金属の合金触媒を使用する。合金成分として、一般的には、遷移金属、たとえばニッケル、コバルト、バナジウム、鉄、チタン、銅、ルテニウム、パラジウム等をそれぞれ単独であるか、あるいは1種またはそれ以上のその他の金属との組合せで使用する。このような触媒の使用は、特に燃料電池において見出される。この触媒は、アノード側と同様にカソード側にも使用することができる。特にカソード側では、さらに腐蝕安定性である活性触媒を使用しなければならない。活性触媒として、一般に合金触媒を使用する。
【0003】
より高い触媒活性表面を得るために、触媒は通常担持される。担体として、一般には炭素を使用する。使用された炭素担体は、通常、触媒−ナノ粒子の微分散が可能な高い比表面積を有する。BET表面積は、一般に100mgを上回る。しかしながら、これら炭素担体、たとえば、約250m/gのBET表面積を有するVulcan XC72、あるいは約850m/gのBET表面積を有するKetjen Black EC-300Jの欠点は、これらが極めて迅速に腐蝕するということである。15時間に亘る1.1Vの電位の際にはVulcan XC72の場合には、約60%の炭素が酸化によって二酸化炭素に腐蝕する。より小さい比表面積を有するカーボンブラック、たとえば約60m/gのBET表面積を有するDenkaBlackの場合には担体の腐蝕安定性は予め高く、それというのもカーボンブラックにおけるグラファイトの割合が高いためである。この腐蝕は、1.1Vで15時間後に8%に過ぎない炭素損失率を示す。より小さい表面積を有する炭素担体上の触媒粒子は、通常、大きいものであり、かつ互いに隣接して存在する。しかしながらこれはしばしば性能損失を招き、それというのも、担体上に塗布された触媒活性材料の量の少ない割合のみを、触媒的に使用することができるためである。
【0004】
小さい表面積を有するカーボンブラック上には、大きい表面積を有するカーボンブラックと比較して、わずかな核形成中心が存在し、かつすでに形成された核の結晶成長が好ましくは実施されることから、低い表面積を有するカーボンブラック上の微細な触媒粒子の製造は困難であることが、通常、認められる。より大きい触媒粒子は、より小さい触媒表面を有することから、電気化学的反応は低い変換率で実施される。小さい表面積を有するカーボンブラック上に粒子が互いに隣接して存在することから、これらは運転中でさらに迅速に凝集され、かつこれによってさらに触媒表面を失う。したがって、活性触媒の製造のために、通常、100m/gを上回るBET表面積を有する担体、たとえば約250m/gのBET表面積を有するVulcan XC72または約850m/gのBET表面積を有するKetjen Black EC-300Jを使用する。
【0005】
さらに、炭素担体およびこの炭素担体上に製造された触媒の表面特性は、電極を製造する顔料への加工特性についての損失的な影響を有する。通常は、触媒は、極めて小さい表面積を有する担体上であまり安定に分散されず、それによってその加工性は困難になりうる。これは、たとえば約60m/gのBET表面積を有するDenkaBlackの使用の際に示される。
【0006】
現在、通常使用されている担体材料は黒色であることから、製造される触媒および最終的には触媒が使用される電極もまた黒色である。このため、アノードおよびカソードは視覚的に区別しえない。これは、燃料電池の組み立ての際の技術的問題を招きうる。したがってアノードおよびカソードが色識別化(Farbcodierung)されることは有利である。添加剤成分の添加または表面後処理による色識別化は、たとえばWO 2004/091024に記載されている。しかしながら、色識別化によりさらなる材料を添加しなければならないことは欠点である。これは、場合によっては、触媒活性について負の影響を与えうる。
【0007】
本発明の課題は、技術水準において公知の触媒よりも改善された耐腐蝕性を有する、電気化学的反応のための触媒を提供することである。
【0008】
この課題は、担体が炭素担体であり、この担体が50m/g未満のBET表面積を有する、担体および触媒活性材料を含む、電気化学的反応のための不均一系触媒として使用するための触媒により解決される。
【0009】
50m/g未満のBET表面積を有する触媒担体を使用することの利点は、技術水準から公知の担体に対してその耐腐食性が顕著に改善されることである。さらに驚くべきことに、小さい表面にもかかわらず、触媒の出力密度が減少しないことが示される。
【0010】
本発明による触媒のさらなる利点は、技術水準から公知の触媒とは異なり黒色ではなく、グレーの色を示すことである。これは、触媒の色識別化を、異なる担体の使用によって単独で可能にする。したがって、たとえばアノード触媒として、技術水準から公知の触媒担体を用いて担持された触媒を使用することができ、それというのも、これは、カソード触媒と同じように腐蝕安定性である必要がないためである。したがって、カソード触媒として本発明による触媒を使用する。異なる色によって、アノード触媒とカソード触媒との明確な区別が可能となり、それによって、触媒のとりちがいが減少するか、さもなければこれを排除することができる。燃料電池における電極触媒のための担体としてのカーボンブラックの使用の際に、着色は、燃料電池の性能を改善することはないが、しかしながらアノードおよびカソードの識別性を技術的に容易にし、この場合、これはたとえば製造工程または組み立ての十分な自動化を可能にする。
【0011】
BET表面積の測定は、通常、N吸着によって実施する。しかしながら代替的に、全表面積はヨウ素吸着によって測定され、それというのも双方の値は通常極めて類似するためである。本発明による触媒は、50m/g未満のBET表面積を示す。好ましくは、BET表面積は20〜30m/gの範囲である。
【0012】
担体の小さいBET表面積の理由から、カーボンブラック中のグラファイトの割合は極めて高い。したがって、たとえばグラファイトは10m/g未満のBET表面積を有する。小さい表面積によって、担体の安定性は酸化腐蝕に対して改善される。これは、特にカソード材料としての使用のために重要である。
【0013】
担体の外表面積は、たとえばいわゆるCTAB値によって特徴付けることができる。CTAB値は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)の吸着により測定される。本発明によれば炭素担体は、50m/g未満のCTAB表面積を示す。好ましくは、CTAB表面積は20〜30m/gの範囲である。
【0014】
本発明による触媒は、特にBET表面積とCTAB表面積との比が1〜1.1の範囲を示す。ほぼ1の値の比は、少ないかまたは極めて小さい細孔を有する相対的に圧縮されたカーボンブラックを表す。
【0015】
触媒のさらなる特徴付けは、いわゆる吸油値(吸油量、OAN)によって実施することができる。吸油値は、たとえばジブチルフタレート(DBP)の吸着によって測定される。代替的に、パラフィン油の吸着も可能である。この際、油数は、カーボンブラックの液体収容量に関する尺度を示す。吸油値は、ml(DBP)/100g(カーボンブラック)の形で示す。本発明による触媒は、炭素担体の液体収容量が、特に100〜140ml/100gの範囲である。この際、液体収容量の測定は、DBPの吸着により実施する。
【0016】
本発明による触媒のためのさらなる特徴は、トルエンにより抽出可能な割合であり、この場合、これは、カーボンブラックの精製のための尺度である。加工性および触媒の考えられる触媒毒を考慮して、トルエンにより抽出可能な割合は1%未満、好ましくは0.1%未満である。
【0017】
本発明による触媒のために使用される炭素担体は、さらに電極触媒のための担体として使用される技術水準から公知のカーボンブラックよりも顕著に明るい色を示す。この明るい色によってアノードおよびカソードの容易な区別が可能となり、これによってたとえば、燃料電池の製造工程または組み立てプロセスの自動化を可能にする。色の定量化は、比色測定によって実施することができる。これに関して、たとえば反射率(Remmision)測定を実施する。この際、吸収された光のみならず、さらにたとえば400〜900nmの波長を関数として担体から反射される光も測定する。代替的に、近赤外線範囲または赤外線の範囲における測定が可能である。
【0018】
技術水準から公知の炭素担体、たとえばDenkaBlack, Vulcan XC72またはKetjen Black EC-300Jであるか、あるいはこの担体上に製造された触媒は、実際にはすべての光線を吸収し、かつ測定された反射率は約2.5%を下回る。これに対して、本発明による触媒は、2.5%を上回り、特に3.5%を上回る反射率を示す。約30質量%またはそれ未満の触媒装填量の場合には、少なくとも4%の反射率が測定される。通常、この値は約5%であるが、しかしながらさらに5%を超過しうる。
【0019】
測定された反射率曲線から、明度ならびに色差を測定することができる。これに関して、この波長範囲に亘って曲線は、相当するスペクトル関数と組み合わせて、色相およびその明度を記載する3個の色の座標が得られる。しばしば使用される座標系はCIE L系である。これに関して、Lは明度を示す。本発明による触媒は、技術水準から公知の触媒よりもその明度において顕著に高い値を示す。したがって、Lに関しては技術水準から公知の触媒に関してはたとえば32〜34の範囲であるのに対して、本発明による触媒に関するこの値は35.3〜36.5の範囲である。
【0020】
比較試料と参考試料との間の色差は、通常、ΔEとして示される。
【0021】

【0022】
これに関して、示数compは比較試料の値を意味し、かつ示数refは参考試料の値を意味する。
【0023】
ΔEが5を上回る値を示す場合には、比較試料と参考試料とが異なる色を有することを意味する。1を上回るΔEの値は顕著な色差を意味し、かつ0.5未満のΔEの値は、試料がその色において相違しないかあるいはほぼ相違しないことを意味する。技術水準から公知の触媒と、本発明による触媒との色差は部分的にはほぼ他の色に相当する。一般に、技術水準から公知の触媒と本発明による触媒との間の色差はΔE>2である。通常、ΔEの値は約3である。
【0024】
使用される触媒活性材料は、たとえば白金族の金属、遷移金属またはこれら金属の合金を含む。好ましくは、この触媒活性材料は、白金またはパラジウムまたはこれら金属の合金から選択されるか、あるいはこれら金属の少なくとも1種を含有する合金から選択される。特に好ましくは、触媒活性金属が白金または白金含有合金であることである。合金金属として、たとえばニッケル、コバルト、鉄、バナジウム、チタン、ルテニウムおよび銅が適しており、特にニッケルおよびコバルトである。合金を使用する場合、特に白金−ニッケル−合金または白金−コバルト合金が好ましい。触媒活性材料として合金を使用する場合には、合金中の白金族の金属の割合は、特に40〜80原子%、より好ましくは50〜80原子%および特に60〜80原子%の範囲である。
【0025】
触媒のための担体として、特にカーボンブラックを使用する。これに関してカーボンブラックは、それぞれ、当業者から公知の任意の方法によって製造することができる。
【0026】
通常使用されているカーボンブラックは、たとえばファーネスブラック、フレームブラック(Flammruss)、アセチレンブラックであるか、あるいは、それぞれ当業者から公知の任意のカーボンブラックである。
【0027】
本発明による触媒は、たとえば電極触媒として、好ましくはカソード触媒として使用する。特に、この触媒は、電極触媒としての使用、特に燃料電池中のカソード触媒としての使用に適している。
【実施例】
【0028】
例1
担体の腐蝕安定性の比較
担体の腐蝕安定性は、燃料電池のアノード側において試験され、カソード側ではこの触媒の代わりに担体のみを取り付け、かつ窒素を担体ガスとして、空気流の代わりに導入した。担体の腐蝕は、炭素と担体ガスの水との反応において二酸化炭素に変換されることから成る。これに関して反応速度は、一般には極めてゆっくりである。但し、上昇した電圧の場合、特に、標準的な水素電極(SHE、標準的な水素電極)に対して0.9Vを上回る電極の場合には、二酸化炭素の放出は特に高い温度の場合に促進される。
【0029】
第1の試験測定に関して、燃料電池は180℃の温度で、かつ1.1Vの電圧で運転される。放出した二酸化酸素量を測定し、かつ担体の質量損失について換算する。これに関して、標準的な炭素担体、たとえばVulcan XC72は1時間後にすでにその質量の7%、5時間後に27%および15時間後に57%が、腐蝕によって二酸化炭素の形で失われることが示される。腐蝕に対して安定性であることが知られているDenkaBlackは、1時間後にその炭素の1%、5時間後に3%および15時間後に7%を失う。
【0030】
本発明によるカーボンブラック担体R1は、30m/gのBET表面積、29m/gのCTAB表面積、121ml/100gの吸油値および0.04%の抽出分により特徴付けられる。本発明によるカーボンブラック担体R1は、1時間後にその炭素の0.2%のみ、5時間後に0.4%および15時間の全時間後に1.8%を失う。
【0031】
これは、担体1%の腐蝕のためにVulcan XC72の場合には数分、DenkaBlackの使用の場合には1時間、および本発明による担体の場合には約12時間(それぞれ、1.1Vの適用された電圧の場合)が必要とされることを意味する。
【0032】
同様に、継続的に促進される老化挙動を測定するために、第2の測定を1.2Vで実施した。この結果は、定量的に類似しており、かつ第1表にまとめられている。
【0033】
【表1】

【0034】
例2
本発明によるカーボンブラックR1上での白金触媒(30質量%Pt)の製造
500mlの水中に、7.0gの本発明によるカーボンブラックR1を分散させ、かつUltra-Turraxで、8000rpmで15分に亘ってホモジナイズした。5.13gの硝酸白金を100mlの水中に溶解し、かつカーボンブラック分散液にゆっくりと添加した。引き続いて、200mlの水および800mlのエタノールを混合物に添加し、かつ6時間に亘って還流下で加熱した。一晩冷却後に、この分散液を濾過し、2lの熱水で、硝酸塩を洗浄除去し、かつ真空乾燥させた。このようにして製造した白金の装填量は27.1%であり、かつXRD中での平均結晶サイズは3.4nmであった。
【0035】
例3
本発明によるカーボンブラックR1上での白金ニッケル触媒(20質量%のPt、5質量%のNi)の製造
第1工程において、白金触媒を、例2に記載された方法と同様に製造した。全部で24.0gの本発明によるカーボンブラックR1、10.26gの硝酸白金、ならびに例1と比較して全部で2倍の溶剤量をこのバッチのために使用した。白金の装填量は19.6%であり、かつXRD中での平均結晶サイズは3.0nmであった。
【0036】
第2工程において、ニッケル合金を実施した。このために18.0gの白金触媒と9.70gのニッケルアセチルアセトネートを混合し、回転管中に導入し、かつ窒素下で約30分に亘って洗浄した。引き続いて、混合物を窒素下で110℃に加熱し、かつ2時間に亘ってこの温度に維持した。その後にガス雰囲気をフォーミングガス(窒素中5体積%の水素)に置き換え、210℃の炉温度で加熱し、かつ4時間に亘って維持した。その後に、この温度を600℃まで上昇させて、3時間に亘って維持した。引き続いて、この炉をさらに窒素で洗浄し、かつ冷却した。合金にされていないニッケルを除去するために、この触媒を2lの0.5M硫酸で1時間に亘って90℃に加熱し、その後に濾過し、2.5lの熱水で洗浄し、かつ引き続いて乾燥させた。金属装填量は18.2%のPtおよび5.0%のNiであった。XRD中での平均結晶サイズは、3.742Åの格子定数で3.4nmであった。
【0037】
比較例1
Vulcan XC72上での白金触媒(30質量%Pt)の製造
白金触媒は、例2に記載された方法にしたがって製造されたが、しかしながらカーボンブラックVulcan XC72を、本発明によるカーボンブラックR1の代わりに使用した。このようにして製造した触媒のVulcan XC72上における白金装填量は27.7%であり、かつ、XRD中での平均結晶サイズは1.9nmであった。
【0038】
比較例2
DenkaBlack(50%圧縮)上での白金触媒(30質量%Pt)の製造
同様に、触媒の製造は例2に記載された方法で実施し、その際、本発明によるカーボンブラックR1に代えてDenkaBlackを使用した。このようにして製造した触媒の白金装填量は27.7%であり、XRD中での平均結晶サイズは3.7nmであった。
【0039】
例4
回転するディスク電極を用いての酸素還元反応に関する質量特異的活性の測定
回転するディスク電極を用いての測定は、酸素飽和された1M HClO中で実施する。試験すべき触媒を、ガラス状炭素電極上に1cmの面積で塗布する。この装填量は約15〜20μgのPtである。可逆的水素電極に対する50〜950mVの5サイクルは、5mV/sおよび1600rpmの速度で実施し、かつ900mVで評価した。900mVにおける制限された拡散電流と反応電流との積および差が形成され、かつプラチナ量に対して標準化した。それにより、900mVでの質量特異的活性が得られる。
【0040】
比較例1によるVulcanで担持された触媒の場合には、130mA/mgのPt活性が測定され、比較例2に相当するDenkaBlackで担持された触媒に関しては112mA/mgのPt、ならびに例2による本発明による触媒に関しては122mA/mgのPtを測定した。これは、担体の顕著に小さい表面積にもかかわらず、実際には活性損失が検出されないことを示す。例3による合金触媒は、237mA/mgのPtの活性を示す。
【0041】
例5
回転するディスク電極を用いての触媒の耐腐蝕性の測定
担体の耐酸化性とは別に、さらに触媒粒子の焼結により、活性の顕著な低下がもたらされる。この理由から、さらに触媒系の腐蝕試験が実施された。これに関連して、先ず測定を、例4に記載されているような回転するディスク電極を用いて実施した。その後に、500〜1300mVの間の150回の電位サイクルを50mV/sの速度で実施し、かつ引き続いてさらにその活性を測定した。比較例1によるVulcanで担持された触媒の場合には、活性損失は75%であった。比較例2によるDenkaBlackで担持された触媒に関しては活性損失は47%であり、かつ、例2による本発明による触媒の場合には33%に過ぎないものであった。電流−電圧曲線は、この効果をなおも顕著に示す。したがって、酸化されたVulcanで担持された触媒の曲線は、900mVでほぼ1mAずつシフトするか、あるいは−1mAで30mVずつシフトするのに対して、本発明によるカーボンブラックR1上で担持された触媒の曲線は、実際には変化しない。これは、より低い電位へのシフトが−1mAで8mVに過ぎないことを意味する。
【0042】
例6
電気触媒層の着色
標準的な炭素担持触媒と本発明による触媒との間の色差は、すでに視覚的に確認される。この相違はさらに、たとえば反射率測定によって定量化することができる。これに関して、吸収された光のみならず反射された(remittieren)光も測定する。これに関連して、標準的には、実際に完全な吸収により示され、かつさらにVulcanで担持された触媒は、可視の範囲内(約750nmまで)で約2.5%の極めて小さい反射率を示す。本発明による触媒は顕著に大きく減退させ、したがって可視の範囲内においてこの反射率は少なくとも3.5%、通常約4〜4.5%である。
【0043】
反射率曲線から明度が測定され、本発明によるカーボンブラックにより担持された触媒およびVulcan XC72により担持された触媒に関する明度については、第2表に示す。これに関して、本発明によるカーボンブラックR1で担持された触媒、ならびに本発明によるカーボンブラックR1は、Vulcan XC72との比較において少なくとも2の色差を示す。純粋なカーボンブラックおよび触媒が30質量%またはそれ未満である場合には、色差はそれどころか約3である。
【0044】
【表2】

【0045】
この表において、ΔEに関する値を測定するために、カーボンブラックVulcan XC72を参考例(ref)として示し、かつ、括弧書きの値に関しては、本発明によるカーボンブラックR1を参考例(ref)として示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体および触媒活性材料を含む、電気化学的反応のための不均一系触媒として使用するための触媒において、担体が、50m/g未満のBET表面積を有する炭素担体であることを特徴とする、前記触媒。
【請求項2】
炭素担体が、50m/g未満のCTAB表面積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
BET表面積対CTAB表面積の比が1〜1.1である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
炭素担体の液体収容量が100〜140ml/100gである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
触媒が、2.5%を上回る反射率を示す、請求項1から4までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
炭素担体が、1%未満のトルエン抽出分を示す、請求項1から5までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
触媒活性材料が、白金族の金属、遷移金属またはこれら金属の合金を含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
触媒活性材料が、白金または白金含有合金である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
触媒活性材料が、白金族の金属の1種を含有する合金であり、その際、合金中における白金族の金属の割合は40〜80原子%である、請求項7または8に記載の触媒。
【請求項10】
触媒が、カソード触媒である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
燃料電池における電極触媒としての、請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒の使用。

【公表番号】特表2013−500855(P2013−500855A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523287(P2012−523287)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060936
【国際公開番号】WO2011/015500
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】