説明

電気化学的検出のための水溶性コンジュゲート

本発明は水溶性コンジュゲートならびに診断および検出アッセイにおけるその使用方法を提供する。検出および定量アッセイのための装置も提供する。種々の実施形態において、該コンジュゲートはイムノアッセイおよび側方流動アッセイにおいて有用である。本発明は、より高い収率、および該アッセイにおける、より高い感度をもたらす、該コンジュゲートの製造方法を提供する。本発明はまた、非常に高い感度でアナライトを検出しうる電気化学的シグナル成分を利用する水溶性コンジュゲートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断アッセイにおいて有用な水溶性コンジュゲート(conjugate)の組成物、該コンジュゲートの製造方法および使用方法、イムノアッセイ、側方流動アッセイならびに試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用妊娠・妊性検査のような免疫化学的アッセイにおいて使用された場合に高い感度および特異性を示すコンジュゲートを製造するための優れた方法が依然として必要とされている。
【0003】
イムノアッセイの感度および信頼性を改善するための種々の方法がL.J.Kricka(1994)Clin.Chem.40,347−357に概説されている。
【0004】
EP 0 594 772 B1は、ジビニルスルホンに由来する部分を含む、重合体に基づく水溶性コンジュゲートに関するものである。EP 0 594 772 B1は、いわゆる「塩析」効果を利用することにより、水溶性担体分子への抗体および抗原のような分子種の結合を増強する可能性を記載している。しかし、塩濃度を約1Mに増加させることにより、不可逆的な沈殿物が生じることが判明した。
【0005】
Lihmeら,米国特許第6,627,460号は、水溶性架橋コンジュゲートの方法およびその使用方法を提供するものである。該特許は、反応混合物中の塩の濃度を更に増加させる方法を提供するものであり、これは、側方流動装置のような種々の免疫化学的アッセイにおいて有用である水溶性コンジュゲートを含有する可逆的(すなわち、再溶解可能)な沈殿物の生成を引き起こす。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、診断および検出アッセイに使用する水溶性コンジュゲートの組成物ならびにその製造方法および使用方法を提供する。種々の実施形態において、該コンジュゲートはイムノアッセイおよび側方流動アッセイにおいて有用である。本発明は、該コンジュゲートの製造における、より高い収率、および該アッセイにおける、より高い感度をもたらす、該コンジュゲートの製造方法を提供する。本発明はまた、より経済的に製造されうる水溶性コンジュゲートを提供する。本発明はまた、関心のある種々のリガンドの検出および定量アッセイの実施において使用する装置を提供する。本発明はまた、電気化学的検出法を利用し非常に高い感度を有する水溶性コンジュゲートを提供する。
【0007】
水溶性コンジュゲートの製造方法は米国特許第6,627,460号(すべての表、図面および特許請求の範囲を含むその全体を参照により本明細書に組み入れることとする)において考察されている。これらの方法は一般に、担体成分、連結成分、スペーサー成分、シグナル成分および検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンド(一次標的化成分)を有する水溶性コンジュゲートの製造を含む。該シグナル成分は該スペーサー成分に共有結合しており、該スペーサー成分は該連結成分を介して該担体成分に共有結合している。該方法は、a)担体成分、連結成分、スペーサー成分およびシグナル成分(該シグナル成分は該スペーサー成分に共有結合しており、該スペーサー成分は該連結成分を介して該担体成分に共有結合している)を有する水溶性中間体コンジュゲートを少なくとも1つの一次標的化成分(検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンド)と反応させることを含む。該反応は、水溶液中、連結成分に由来する未反応の反応性部分で生じる。該条件は、可逆的沈殿物が生成する条件である。該水溶性コンジュゲートを含有する可逆的沈殿物を水性溶媒に再溶解させ、c)場合によっては、該水溶性架橋コンジュゲートを精製工程に付す。反応パラメーターの更なる詳細は米国特許第6,627,460号(すべての表、図面および特許請求の範囲を含むその全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。種々の実施形態において、該コンジュゲートは、より大きなコンジュゲート分子を形成するよう互いに架橋されうる。
【0008】
該水溶性コンジュゲートの配置の具体例を本明細書に記載するが、他の配置も可能である。例えば、後記のとおり、該標的化要素は該リンカーを介して該担体に結合されることが可能であり、あるいは該スペーサーまたは非特異的タンパク質に結合されることが可能である。また、該シグナル成分は該担体または該スペーサー、あるいは更には該標的化要素に結合されうる。成分の厳密な配置は、試薬として機能する水溶性コンジュゲートを与えるよう、ならびに該アッセイが行われ有用な結果をもたらすよう任意の様態で変更されうる。
【0009】
第1の態様において、本発明は、a)少なくとも1つの担体、少なくとも1つのリンカー、少なくとも1つのシグナル成分および検出すべきリガンドに関する少なくとも1つの標的化要素または検出すべきリガンドを有する水溶性コンジュゲートを懸濁液中の可逆的沈殿物として製造することを含む、水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。該懸濁液を音波処理に付して音波処理調製物を得、該水溶性コンジュゲートを含有する該調製物から上清を分離する。場合によっては、該水溶性コンジュゲートを該上清から精製することが可能である。1つの実施形態においては、該水溶性コンジュゲートをゲル濾過(またはサイズ排除)クロマトグラフィーにより精製する。1つの実施形態においては、300kDの平均サイズ排除を有する媒体を使用して、該ゲル濾過クロマトグラフィーを行う。
【0010】
本明細書に記載されている本発明の種々の実施形態においては、該水溶性コンジュゲートはスペーサー成分をも含有しうる。1つの実施形態においては、該担体は該リンカーに共有結合しており、該シグナル成分は該スペーサーに共有結合している。該水溶性コンジュゲートは、水溶性中間体コンジュゲートを、少なくとも約1.25Mの濃度のリオトロピック塩の存在下、検出すべきリガンドまたはリガンドに関する標的化要素と接触させることにより製造されうる。他の実施形態においては、該リオトロピック塩の濃度は少なくとも約1.5Mまたは少なくとも約1.75Mまたは少なくとも約2.0Mまたは少なくとも約2.5Mでありうる。「水溶性コンジュゲート」は、担体、リンカー、検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンド、シグナル成分を含有し、場合によっては、スペーサー成分をも含有しうる。「水溶性中間体コンジュゲート」は、担体、リンカーおよびシグナル成分を含有する分子を意味する。水溶性中間体コンジュゲートはスペーサー成分をも含有しうる。「水溶性中間体前駆体」は、水溶性コンジュゲートの成分の任意の2以上を有し水溶性コンジュゲートでも中間体コンジュゲートでもない分子を意味する。1つの実施形態においては、該水溶性中間体前駆体は担体およびリンカーを含有する。もう1つの実施形態においては、該前駆体は該担体、リンカーおよびスペーサーを含有する。1つの実施形態においては、該水溶性中間体コンジュゲートは該担体、リンカー、シグナル成分およびスペーサー成分を含有する。「音波処理」は、高周波音エネルギーにさらす、化学および生物学において用いられる公知技術を意味する。これは超音波処理を意味することもある。音波処理は、任意の適当な出力、例えば少なくとも約300ワットまたは少なくとも約500ワットまたは少なくとも約700ワットまたは少なくとも約900ワットまたは少なくとも約1000ワットまたは1000ワット超で行われうる。任意の望ましい周波数、例えば20〜24kHzが用いられうる。本明細書中で用いる「約」なる語はプラスまたはマイナス10%を意味する。「可逆的沈殿物」なる語は、生じた沈殿物を25℃の水溶液に溶解させると、それが再溶解しうることを示すものである。
【0011】
リオトロピック塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアンモニウムの硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩および酒石酸塩のような成分を含有することが可能であり、約2.5Mの濃度で存在しうる。1つの実施形態においては、該塩はリン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムである。
【0012】
本文脈において、該コンジュゲートに関して用いる「水溶性」なる語は、得られたコンジュゲートが水のような水性媒体に室温で可溶性であるべきであること、すなわち、本明細書に開示されている方法により得られた架橋コンジュゲートが、サンプルの目視検査による判断で実質的に透明で均一である溶液を与えるべきであることを意味する。
【0013】
種々の実施形態において、得られたコンジュゲートは、25℃の水1ml当たり少なくとも0.1、または少なくとも0.2、または少なくとも0.5、または少なくとも1、または少なくとも3、または少なくとも5、または少なくとも7、または5〜10、または4〜11、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも30、または少なくとも40、または少なくとも50、または少なくとも100、および特に少なくとも200mgの乾燥コンジュゲートの、水への溶解度を有する。本発明はまた、本発明の任意の方法に従い製造された水溶性コンジュゲートを提供する。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、本明細書に記載の水溶性コンジュゲートを懸濁液中の沈殿物として製造することを含む、水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。該水溶性コンジュゲートを含有するペレットを該懸濁液から分離し、該ペレットを水溶液で洗浄して、第2の懸濁液を得る。該水溶性コンジュゲートを含有する第2の懸濁液からペレットを分離する。これらの方法に従い製造された水溶性コンジュゲートは、本明細書に記載のコンジュゲートと同じ構造を有しうる。例えば、該コンジュゲートは更にスペーサーを含有することが可能であり、該スペーサーは該リンカーに共有結合していることが可能であり、該シグナル成分は該スペーサーに共有結合していることが可能である。
【0015】
1つの実施形態においては、該水溶性コンジュゲートは、該沈殿物を上清から分離し水溶液中の該沈殿物の懸濁液を形成させ該沈殿物を上清から分離する方法により精製される。該コンジュゲートは、リンカーを介して該担体に結合した非特異的タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン)を含有しうる。1つの実施形態においては、該標的化要素は、還元剤で処理された抗体である。「還元剤」は、電子を供与することにより他の物質を化学的に還元する物質を意味する。還元剤の具体例には、ベータ−メルカプトエタノール、ジチオトレイトールおよび2−イミノチオランが含まれる。「ペレットの洗浄」は、ペレットを水溶液と接触させて配置し攪拌することを意味する。攪拌は、任意の方法により、例えば容器をボルテックスまたは攪拌または振とうすることにより行われうる。該ペレットの一部が攪拌中に最初のペレットから破断することがあり、それは遠心分離または他の方法により再ペレット化されうる。もう1つの実施形態においては、水溶液で洗浄した後、該水溶性コンジュゲートに対して、更なる精製工程を行わない。
【0016】
1つの実施形態においては、該水溶性コンジュゲートを遠心分離により上清から分離するが、遠心分離は、該方法を実施するために必要なわけではない。また、該コンジュゲートはゲル濾過のような任意の簡便な技術により上清から精製されうる。「上清」はサンプルの液体部分を意味する。
【0017】
もう1つの態様において、本発明は、担体、該担体に共有結合したリンカー、シグナル成分、検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンドおよび非特異的タンパク質を含有する水溶性コンジュゲートを提供する。1つの実施形態においては、該非特異的タンパク質は該リンカーを介して該担体に共有結合している。もう1つの実施形態においては、該非特異的タンパク質は該リンカーを介して該担体に結合しており、該コンジュゲートの(該リンカー以外の)他のいずれの成分にも結合していない。他の実施形態においては、該非特異的タンパク質の少なくとも2%または少なくとも3%または少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%が該リンカーを介して該担体に結合しており、該コンジュゲートの(該リンカー以外の)他のいずれの成分にも結合していない。他の実施形態においては、該非特異的タンパク質の少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも70%または少なくとも75%または少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%が該リンカーを介して該担体に結合しており、該コンジュゲートの(該リンカー以外)の他のいずれの成分にも結合していない。関連実施形態においては、前記で挙げられているのと同じ比率(%)のリンカーの全てが非特異的タンパク質に結合しており、該非特異的タンパク質は該リンカーに結合しており、該水溶性コンジュゲートの他のいずれの成分にも結合していない。任意の該水溶性コンジュゲートはスペーサー成分をも含有しうる。
【0018】
「非特異的タンパク質」は、それが用いられる状況において結合特異性または標的を有さないタンパク質である。該非特異的タンパク質は、典型的には、連結化学法により、該水溶性コンジュゲートに連結される。ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、キーホールリンペットヘモシアニンおよび他のタンパク質は非特異的タンパク質の具体例である。1つの実施形態においては、該非特異的タンパク質は、(スペーサーが存在する場合に)スペーサーとして使用されるタンパク質以外のタンパク質であるが、該スペーサーおよび非特異的タンパク質は、異なる機能を達成するために使用される同じタンパク質であることも可能である。該非特異的タンパク質は、該非特異的タンパク質を該コンジュゲートに共有結合させるために用いられるアミノ基を含有しうるが、他の適当な連結化学法も用いられうる。もう1つの実施形態においては、該スペーサーおよび該非特異的タンパク質は、独立して、該リンカーを介して該担体に共有結合しており、該シグナル成分は該スペーサーに共有結合しており、検出すべきリガンドまたは検出すべきリガンドに関する標的化要素は該担体に共有結合している。
【0019】
他の実施形態においては、該シグナル成分は該スペーサーおよび/または該非特異的タンパク質の一方または両方に結合している。該非特異的タンパク質およびスペーサーを該リンカーを介して該担体に結合させ、該標的化要素またはリガンドおよびシグナル成分を該非特異的タンパク質およびスペーサーの一方または両方に結合させることも可能である。
【0020】
もう1つの態様においては、本発明は、a)担体、リンカー、スペーサーおよびシグナル成分を有する水溶性中間体コンジュゲートをi)検出すべきリガンドに関する標的化要素またはii)検出すべきリガンドと接触させて、水溶性コンジュゲートを含む沈殿物を含有する懸濁液を形成させることを含む、水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。該方法は、該懸濁液から該水溶性コンジュゲートを抽出することをも含む。検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンドは、該水溶性中間体コンジュゲートとの接触の前に、還元剤で前処理される。該抽出は任意の適当な方法により行われうる。1つの実施形態においては、該水溶性コンジュゲートを遠心分離により抽出する。「前処理」は、該組成物を該還元剤と接触させ又は該還元剤と共に温置することを意味する。1つの実施形態においては、該還元剤は、任意の適当な濃度で使用されうるジチオトレイトールである。例えば、該前処理は、ジチオトレイトール少なくとも約15mg/100μlまたは少なくとも約10mg/100μlまたは少なくとも約5mg/100μlまたは少なくとも約20mg/100μlでの前処理でありうる。同等量の他の還元剤も使用されうる。該前処理は、任意の適当な時間、例えば5分間または10分間または15分間または20分間、または20分間より長時間にわたって行われうる。
【0021】
もう1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つの担体および少なくとも1つのリンカーを有する水溶性中間体前駆体を、検出すべきリガンドに関する少なくとも1つの標的化要素または検出すべきリガンドおよび非特異的タンパク質と接触させて、水溶性中間体コンジュゲートを形成させることを含む、水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。該水溶性中間体コンジュゲートにシグナル成分を結合させて、該水溶性コンジュゲートを形成させる。該水溶性コンジュゲートの沈殿物を含有する懸濁液を形成させ、該懸濁液から該水溶性コンジュゲートを抽出する。種々の実施形態において、該非特異的タンパク質はウシ血清アルブミン、免疫グロブリンまたはキーホールリンペットヘモシアニンでありうる。該標的化要素またはリガンドおよび非特異的タンパク質の付加の前に、該担体およびリンカーがシグナル成分を含有することも可能であり、あるいは該標的化要素またはリガンドおよび非特異的タンパク質を結合させた後、該シグナル成分を付加することが可能である。1つの実施形態においては、該標的化要素またはリガンド、および非特異的タンパク質を、同時に、該水溶性中間体前駆体と接触させ、または該前駆体に付加し、または該前駆体に結合させ、または該前駆体と共に温置する。1つの実施形態においては、該標的化要素またはリガンドの付加の前に、該水溶性中間体コンジュゲート前駆体は該担体および該リンカーよりなる。該標的化要素またはリガンドおよび非特異的タンパク質は、少なくとも1.6Mまたは少なくとも1.7Mまたは少なくとも1.8Mまたは少なくとも1.9Mまたは少なくとも2.0Mまたは少なくとも2.2Mまたは約2.5の塩濃度で、該中間体前駆体に結合されうる。該非特異的タンパク質は、該前駆体と、1:1もしくはそれ以上(前駆体:非特異的タンパク質)、または1:5もしくはそれ以上、または1:7もしくはそれ以上、または1:10もしくはそれ以上、または1:12もしくはそれ以上、または1:15もしくはそれ以上、または1:20もしくはそれ以上の比で、反応させることが可能である。該方法は、本明細書に記載されているとおりの水溶性コンジュゲートを与える。
【0022】
もう1つの実施形態においては、該コンジュゲートは、すべてのリンカーが遮蔽されるよう該非特異的タンパク質を該リンカーを介して該担体に結合させることにより製造されうる。ついで該標的化要素またはリガンドを該非特異的タンパク質を介して該前駆体に結合させることが可能である。該シグナル成分を該標的化要素またはリガンドおよび非特異的タンパク質に結合させ、あるいは後の工程で結合させて、最終コンジュゲートを形成させることが可能である。
【0023】
もう1つの態様においては、本発明は水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。該方法は、担体、該担体に共有結合したリンカーおよびシグナル成分を含有する水溶性コンジュゲート前駆体を、検出すべきリガンドまたは検出すべきリガンドに関する標的化要素および非特異的タンパク質と共に温置することを含む。このようにして、該リンカーを介して該担体に共有結合した非特異的タンパク質を有する水溶性コンジュゲートが製造される。1つの実施形態においては、該非特異的タンパク質を該リンカーを介して該担体に結合させ、該水溶性コンジュゲートの他の成分には結合させない。検出すべきリガンドに関する標的化要素(または検出すべきリガンド)および該非特異的タンパク質を、同時に、該前駆体と共に温置する。
【0024】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の水溶性コンジュゲートを含有する装置を提供する。該コンジュゲートは試験ストリップ(試験用細片)上に位置し、これは、サンプル域と検出域とを有する多孔性担体物質である。該サンプル域に適用された液体サンプルは該検出域へ流動する。該試験ストリップは、該試験ストリップの検出域に適用された、該液体サンプル中に存在すると疑われるリガンドに関して、またはリガンドに結合した標的化要素に関して選択的な第2の標的化要素をも有する。「多孔性担体」は、毛管力により流体を移動させうる吸収性物質を意味する。そのような物質の一例として、ニトロセルロースが挙げられるが、本発明において同様に機能する他の吸収性物質、例えばポリアミドおよび前処理紙が当業者により特定されるであろう。「サンプル域」は、試験すべきサンプルが適用される、該試験ストリップの領域である。「試薬域」は、該試験ストリップ上で試薬が含有される領域である。該試薬は乾燥形態で存在することが可能であり、移動可能な様態で該ストリップ上に存在しうる。「検出域」は、サンプル中に存在すると疑われるリガンドの存在、非存在または量を決定するための測定が行われる該試験ストリップの領域である。該装置は、移動可能な様態で標識が該試験ストリップ上に適用される「標識域」をも有しうる。「毛管力」は、毛管または多孔性媒体における液体間で作用し該毛管または多孔性媒体を介して液体を移動させる界面力を意味する。「移動可能(な様態)」は、該試薬または他の組成物が、1つの領域から別の領域まで、該試験ストリップを通る液体の流動により、該装置に沿って移動しうることを意味する。
【0025】
該装置の種々の実施形態が提供されうる。1つの実施形態においては、該水溶性コンジュゲートは該試験ストリップ上の検出域の上流かつサンプル域の下流に乾燥形態で存在する。該試験ストリップは制御域を有することも可能であり、これは検出域の下流に位置しうる。「制御域」は標的化要素を含有し、制御域における結合は、該アッセイが、意図されたとおりに機能していることを示す。もう1つの実施形態においては、該装置は外包(ケーシング)をも有し、これは該試験ストリップを包囲し、サンプル域の範囲を定める。該多孔性担体は、該外包の内側に接触して配置される水分不浸透性物質で裏打ちされうる。1つの実施形態においては、該装置は、該外包の一端上に選択的に収容され該装置のサンプル域を覆う蓋(キャップ)をも有する。該外包はプラスチックまたは他の適当な物質から構成されうる。1つの実施形態においては、該試験ストリップは、検出域の上流に位置し該多孔性担体物質の一部でありうるフィルターをも含有する。該フィルターは、適用されたサンプル中に存在しうる混入物質を除去するよう機能する。該試験ストリップは、それが、ブロッキング(遮蔽)タンパク質またはポリビニルアルコールでブロッキングされた該試験ストリップの結合部位の部分を有するよう製造されうる。例えば、該ブロッキングタンパク質はウシ血清アルブミン、乳タンパク質、または該アッセイに対して同等の効果をもたらす他の物質でありうる。該サンプルは、試験すべき尿、血清、血漿、血液、精液、喀痰、または他の体液または生物由来の他の流体でありうる。もう1つの実施形態においては、該装置は試験ストリップ、外包、および該外包から突出した該試験ストリップの一部を有する。例えば、該試験ストリップの1cmまたはそれ未満の部分が、サンプルを受容するために該外包から突出している。
【0026】
もう1つの実施形態において、本発明は、a)担体、リンカー、スペーサーおよび検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンドを含有する水溶性中間体前駆体をシグナル成分と接触させて、水溶性コンジュゲートを含有する沈殿物を含有する懸濁液を形成させることを含む、水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。ついで該懸濁液から水溶性コンジュゲートを抽出する。
【0027】
もう1つの態様において、本発明は、少なくとも1つの担体成分、少なくとも1つの連結成分、該連結成分を介して該担体成分に共有結合した少なくとも1つの電気化学的シグナル成分、および検出すべきリガンドに関する少なくとも1つの標的化要素または検出すべき少なくとも1つのリガンドを含有する水溶性コンジュゲートを提供する。該コンジュゲートは、該連結成分を介して該担体成分に結合されうるスペーサー成分をも含有しうる。該連結成分を「介して」結合している電気的シグナル成分は、それが介在分子の非存在下に該連結成分に直接的に結合していること、またはそれ自体が該連結成分に結合している成分に該シグナル成分が結合していることを意味する。1つの例においては、該シグナル成分は、該連結成分に結合したスペーサー成分に結合していることが可能である。
【0028】
1つの実施形態においては、該電気化学的シグナル成分は、基質または反応メディエーターを、電気化学的に検出可能な種に変換する酵素である。例えば、該電気化学的シグナル成分はアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたは他の酵素であり、該基質は、該酵素に適した任意のもの、例えば1−ナフチルホスファートまたはヒドロキノンまたは該酵素の他の適当な基質でありうる。したがって、電気的に検出可能な種は1−ナフトールまたはベンゾキノン、あるいは使用基質に対する酵素の作用により生じる他の種でありうる。
【0029】
1つの実施形態においては、該電気化学的シグナル成分は該スペーサーに共有結合しており、検出すべきリガンドまたは検出すべきリガンドに関する標的化要素は該連結成分を介して該担体に共有結合している。
【0030】
もう1つの態様において、本発明は水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。該方法は、少なくとも1つの連結成分を含有する担体成分を少なくとも1つの電気学的シグナル成分と接触させて水溶性中間体コンジュゲートを形成させ、該水溶性中間体コンジュゲートを、検出すべきリガンドまたはリガンドに関する標的化要素と接触させて、水溶性コンジュゲートを形成させることを含む。
【0031】
種々の実施形態において、担体成分と電気化学的シグナル成分とのモル比は、1:10もしくはそれ以上、または1:15もしくはそれ以上、または約1:20、または1:20もしくはそれ以上である。もう1つの実施形態においては、該水溶性前駆体を該標的化要素と接触させて該水溶性コンジュゲートを形成させる工程は、沈殿物として形成される水溶性コンジュゲートを与える。該方法は、該水溶性コンジュゲートの形成後に該沈殿物を音波処理に付す工程をも含みうる。
【0032】
もう1つの態様において、本発明は、サンプル中のアナライトの存在または量の検出方法を提供する。該方法は、検出すべきアナライトに対する特異的結合性分子で被覆された表面をサンプルと接触させ、検出すべきアナライトに対する特異的結合性分子で被覆された表面を本明細書に記載の水溶性コンジュゲートと接触させ、該表面上に被覆された該特異的結合性分子、該アナライトおよび該水溶性コンジュゲートの結合性複合体を形成させ、該結合性複合体を、該電気化学的シグナル酵素の基質と接触させて産物溶液を形成させ、該サンプル中のアナライトの存在または非存在を決定することを含む。
【0033】
1つの実施形態においては、該特異的結合性分子は抗体またはそのフラグメントである。該結合性複合体は、該表面に結合した抗体、該アナライトおよび該コンジュゲートの複合体である。種々の実施形態において、該表面は電極、磁性ビーズまたは他の表面でありうる。該表面が磁性ビーズである場合、該方法は更に、該産物溶液を電極と接触させて該サンプル中のアナライトの存在または量を決定することを含みうる。
【0034】
前記の本発明の概要は限定的なものではなく、本発明の他の特徴および利点が以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0035】
詳細な説明
本発明の方法は、架橋後の水溶性コンジュゲートの適当な音波処理により従来から入手可能であったものより高い産物収量を可能にする。該音波処理法は透明溶液を与え、このことは、それが、肉眼で視認しうる非液体物質を含有しないこと又は最低限度の非液体物質を含有することを意味する。通常、この方法を用いた後は、更なる遠心分離は不要である。
【0036】
本発明の1つの態様は、反応産物中に沈殿物として存在する形成した水溶性コンジュゲートの遠心分離により得られたペレットの洗浄を含む。該ペレットから上清を分離し、該ペレットを水溶液またはバッファーで洗浄して第2の懸濁液を得る。第2のペレットを分離し、必要に応じて洗浄工程を更に1〜2回繰返すことが可能である。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、該ペレットの洗浄工程は、上清中に見出される遊離(未反応)標的化要素(例えば、抗体)を可溶化したと考えられる。したがって、未反応標的化要素は後に容易に除去されうる。該洗浄工程は、産物の更なる精製を行う必要性を無くさせることも判明した。したがって、例えばゲル濾過(S−300)カラム上の該産物の、高い経費を要する精製工程が省かれた。
【0037】
もう1つの態様において、本発明は、担体、リンカー、場合によってはスペーサー成分、シグナル成分、検出すべきリガンドに関する標的化要素または検出すべきリガンド、および該リンカーを介して該担体に共有結合している非特異的タンパク質を含有する水溶性コンジュゲート(およびその製造方法)を提供する。従来は、水溶性コンジュゲートを得るのに十分なカップリングおよび架橋を確保するために、大量の標的化要素(またはリガンド)分子が使用された。本発明によれは、十分な架橋を確保するために、該担体上の全ての利用可能な部位への結合により用いられるものより実質的に少量の標的化要素またはリガンドしか必要としない。該反応混合物中に非特異的タンパク質を含めることにより、(該リンカーを介して利用可能な)該担体上の多数の部位が該非特異的タンパク質により占拠されることとなる。それでもなお、有用な産物を与える、標的化要素またはリガンドの十分な結合が生じるであろう。したがって、本明細書中に教示されている方法を使用することにより、使用者は、該製造方法において使用する標的化要素(またはリガンド)の量を減少させ、したがって、該産物の製造コストを実質的に削減することが可能である。
【0038】
もう1つの態様において、本発明は、水溶性中間体コンジュゲートを標的化要素またはリガンドと接触させて、水溶性コンジュゲートを含有する沈殿物を含有する懸濁液を形成させ、該懸濁液から該水溶性コンジュゲートを抽出する(該水溶性中間体コンジュゲートとの接触の前に該標的化要素またはリガンドが還元剤で前処理されている場合)ことによる、水溶性コンジュゲートの製造方法を提供する。還元剤での該標的化要素の前処理は、該担体への該標的化要素の、より高い結合率を可能にして、該アッセイの感度の増加をもたらす。実施例5は本発明のこの態様の実用的応用を示す。任意の還元剤、例えばジチオトレイトール、ベータ−メルカプトエタノール、トラウト試薬(Traut’s Reagent)(2−イミノチオラン)または他の還元剤が使用されうる。
【0039】
もう1つの態様において、本発明は、液体サンプル中のアナライトの存在を決定するための方法を提供する。該方法は、液体サンプルを本発明の試験装置の一部分(該部分は検出域の上流に位置する)と接触させ、該液体サンプルを該検出域へ流動させ、該検出域を観察することにより該液体サンプル中のアナライトの存在、非存在または量を決定することを含む。該検出工程は、該検出域におけるシグナルを視覚的に観察しうる。
【0040】
担体
本発明における「担体」なる語は、該コンジュゲートの「バックボーン(骨格)」を示すために用いられる。すなわち、担体成分は、種々の成分が結合しうるバックボーンとして機能する。コンジュゲートの製造方法において担体成分として機能する水溶性重合体は、天然および合成多糖ならびにそれらの誘導体、例えばデキストランおよびデキストラン誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、アミロースおよびペクチン、ならびに或る天然ガムおよびその誘導体、例えばアラビアゴムおよびアルギン酸の塩;適当な反応性官能基を有するホモポリ(アミノ酸)、例えばポリリシン、ポリヒスチジンまたはポリオルニチン;天然および合成ポリペプチドおよびタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)および他の哺乳類アルブミン;および求核性官能基を有する合成重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリエチレングリコールおよび置換ポリアクリラートを含む多種多様なタイプの重合体から選ばれうる。
【0041】
本発明の目的に非常に適した重合体としては、多糖およびその誘導体、例えばデキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ヒドロキシエチル−およびヒドロキシプロピル−デンプン、グリコーゲン、アガロース誘導体ならびにヒドロキシエチル−およびヒドロキシプロピル−セルロースが挙げられる。本明細書中の実施例(後記)から明らかなとおり、注目すべきことに、デキストランは本発明に特に好適な重合体であることが判明している。
【0042】
該コンジュゲートは実効電荷を有さない又は実質的に有さないことが、多くの場合、特に、該コンジュゲートの免疫化学的適用の多くの場合において望ましい。なぜなら、そのような場合の実効正または負電荷の存在は、とりわけ、関心のある物質および/または材料以外の物質および/または材料への該コンジュゲートの望ましくない非特異的結合を招きうるからである。多くの場合、この条件は、荷電種が導入されない限り、単に重合性担体成分自体が実効電荷を有さないことを確保することにより満たされるであろう。したがって、本発明の方法において使用する適当な重合性担体成分は、その遊離状態において、実質的に直鎖状であり、約4〜約10の範囲のpHにおいて実質的に無荷電であり、後者のpH範囲は、免疫化学法、ハイブリダイゼーション法およびコンジュゲートの他の応用の大多数に実用的に妥当な範囲である。この基準を満たす種々の重合体として、例えば、多数の多糖および多糖誘導体、例えばデキストランおよびヒドロキシエチル−およびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0043】
コンジュゲートが使用される用途に応じて、該コンジュゲートは、ある範囲の分子量を有する水溶性重合性担体成分に基づくものでありうる。本発明の1つの実施形態においては、該重合性担体成分は、約4,000〜約40,000,000(該水溶性重合性担体成分をDVS(ジビニルスルホン)またはEPCH(エピクロルヒドリン)のようなリンカー試薬と反応させる前、あるいは架橋コンジュゲートおよび架橋コンジュゲート複合体の最終的な形成のために、得られた水溶性中間体前駆体をスペーサーまたはシグナル成分と反応させる前)の範囲のピーク分子量を有しうる。特に関心のあるピーク分子量としては、100,000〜10,000,000の範囲、例えば、500,000〜8,000,000の範囲、または500,000〜4,000,000の範囲、例えば、500,000〜2,000,000の範囲のピーク分子量が挙げられる。とりわけ重合性担体成分としてのデキストランの場合に特に関心のあるピーク分子量としては、約500,000、約1,000,000、約1,500,000、約2,000,000、2,500,000、約3,000,000、約3,500,000および約4,000,000が挙げられる。
【0044】
より詳しくは、出発担体成分としては、20,000〜2,000,000の分子量範囲のデキストランが適している。最も詳しくは、一次または二次標的としてストレプトアビジンを使用するコンジュゲートおよび/または複合体には(これらに限定されるものではない)、20,000Daのデキストランが適している。さらに、ある色素、酵素を使用し及び或る特異的結合分子(一次または二次標的として)を伴うコンジュゲートおよび/または複合体には(これらに限定されるものではない)、500,000Daのデキストランが適している。さらに、ある他の色素には(これに限定されるものではない)、2,000,000Daのデキストランが適している。種々の実施形態において、該担体は任意の適当な担体分子、例えばデキストラン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、セルロース、天然ゴムまたはそれらの混合物でありうる。
【0045】
該担体成分に関して本明細書および特許請求の範囲において用いる「ピーク分子量」なる語は、最大存在量の分子量、すなわち、分子量の分布のなかで、該重合体の或る与えられたサンプルまたはバッチにおける最大数の分子により所有される分子量を示す。非常に狭い分子量分布の重合体画分を入手または調製することは(最高分子量に関しては特に)困難であるため、多数のタイプの重合体をこのようにして特徴づけることはごく一般的なことである。本発明において関心のある多数の商業的に入手可能な担体成分、例えばデキストランの場合、その製造業者または販売業者が、該重合性担体成分の適切な画分の選択のための基礎をもたらしうる信頼しうるピーク分子量データ(例えばゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるもの)を提供しうるであろう。本明細書および特許請求の範囲において引用されているピーク分子量の値(担体成分に関して用いられる場合)は、問題の遊離重合体のピーク分子量を意味し、例えば、コンジュゲートの製造方法におけるDVSまたはEPCHのような連結成分との反応による2以上の重合体分子の架橋の結果としての架橋重合体単位の考えられうる形成を考慮しておらず、そのような架橋単位は、平均として、それらの形成のもととなる個々の遊離重合体分子より高い分子量を有することを、ここで触れておくべきである。
【0046】
連結成分
本発明における「リンカー」または「連結成分」なる語は、他の(典型的にはより大きな)分子間で共有結合を確立しうる二官能性分子を包含する意である。本発明の方法に適した連結成分の具体例としては、例えば、二官能性反応性を含む分子、例えばグルタルアルデヒド、カルボジイミド、N,N’−フェニレンジマレイミド、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオナート、p−ベンゾキノン、ビス−オキシラン、ジビニルスルホン(DVS)およびエポキシド誘導体、例えば一般式I:
【化1】

(式中、Rは水素またはC1−4−アルキル、nは1〜4の範囲の整数、すなわち、1、2、3または4であり、Xは脱離基、トシル、メシルまたはハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素である。)のエポキシドが挙げられる。この場合、「C1−4−アルキル」なる語は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状飽和炭化水素基、例えばメチル エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、イソブチルなどを示す。本明細書に記載の実施例から明らかなとおり、非常に有望なエポキシド由来連結成分はエピクロロヒドリン(EPCH)、すなわち、Rが水素であり、nが1であり、脱離基Xが塩素である、前記一般式Iの化合物である。
【0047】
該連結成分は水性環境中で安定であるはずであり、したがって、連結成分EPCHは、連結成分DVSと一緒になって、本発明の方法において使用するための非常に有用な連結成分となる。
【0048】
スペーサー成分
スペーサー成分は、連結成分との反応を介して、水溶性中間体前駆体と共有結合し、それにより、第2の水溶性中間体前駆体を形成する。前記のとおり、「スペーサー成分」は、連結基を介して、担体成分に共有結合する。したがって、本文脈において用いられた場合の「スペーサー成分」なる語は、色素(後記)のようなシグナル成分の共有結合に利用可能な複数の部位を有するタンパク質またはポリペプチドを示す。スペーサー成分は、本発明において使用される水溶性コンジュゲートのいずれにおいても、および水溶性コンジュゲートの製造方法のいずれにおいても有用であるが、該コンジュゲートはスペーサー成分無しでも機能することが可能である。
【0049】
スペーサー成分、特に、シグナル成分の共有結合に利用可能な複数の部位を有するスペーサー成分の組み込みの目的の1つは、この方法が、該コンジュゲートに結合しうるシグナル成分の数(すなわち、該水溶性中間体コンジュゲート(前記)中のシグナル成分の「負荷(load)」)を増加させ、それにより、種々のアッセイ、例えば免疫化学的アッセイ、および本明細書に記載の側方流動装置(後記)において使用された場合にそのようなコンジュゲートの感度を増加させる適当な手段となることである。ある実施形態において、シグナル成分(例えば、色素分子)のカップリングが連結成分に対して(スペーサー成分を介さないで)直接的に行われることは、該コンジュゲート中に存在する連結成分の1分子当たり(少なくとも原則として)ただ1つのシグナル分子のみが結合することを示唆すると理解されるべきである。
【0050】
第2の水溶性前駆体の製造のいくつかの実施形態においては、出発デキストランの1モル当たりのスペーサーのモル数(スペーサーの「負荷」)は1〜500、特に、2〜100、最も頻繁には、5〜75の範囲である。また、第2の水溶性中間体は、例えば、担体成分の1モル当たりに結合したスペーサー成分の(モル)数により特徴づけられうる。
【0051】
前記のとおり、該水溶性中間体の連結成分の反応性部分の一部のみがスペーサー成分と反応する。スペーサー成分およびリンカー成分に応じて、スペーサー成分を反応させた後、リンカー成分の未反応の反応性部分の1〜99%、または20〜99%、特に30〜99%、例えば40〜99%、特に50〜99%が未反応のまま残存する。例えば、1つの実施形態においては、ある条件下では、未反応リンカー部分の1〜49%がスペーサー成分と反応した。
【0052】
該スペーサー成分はタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、グロブリンなど、またはポリペプチド、例えばホモポリペプチド、例えばポリリシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチンなどでありうる。しかし、スペーサー成分の選択は、使用するシグナル成分(例えば、個々のコンジュゲートにおいて使用する実際の色素)および使用する連結成分に左右されるであろう。
【0053】
該スペーサー成分、例えばタンパク質の分子量は、少なくとも2,5000Da、または少なくとも5,000Da、または少なくとも10,000Da、または10,000〜2,000,000の範囲、例えば、20,000〜500,000の範囲でありうる。導入されるスペーサー成分の特徴の1つは、シグナル成分の導入に利用可能な位置の数を増加させることにあるため、シグナル成分の結合に利用可能な官能基の数はスペーサー成分の分子1個当たり少なくとも5、例えば10〜1,000、特に10〜500であることが更に望ましい。
【0054】
あるいは、該スペーサー成分は多糖またはポリ核酸でありうる。該水溶性中間体コンジュゲートの製造の前に、これらの重合体の化学修飾が必要であり得る。
【0055】
該スペーサー成分上の(第2の水溶性中間体前駆体の形成におけるリンカー成分への、または後の、該水溶性中間体コンジュゲート(後記)の形成におけるシグナル成分への)カップリング化学の性質のため、該スペーサー成分上には反応性官能性、例えば求核性官能性が存在する。したがって、適当なスペーサー成分は、例えば、求核性官能基、例えば−O(例えば、脱プロトン化フェノール性ヒドロキシ基、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質のチロシン残基における脱プロトン化芳香族ヒドロキシ基)、−S(例えば、芳香環または脂肪族基上の脱プロトン化チオール基、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質のシステイン残基における脱プロトン化チオール基)、−OH(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の或るアミノ酸残基、例えばセリンまたはトレオニン残基中に存在する脂肪族ヒドロキシ基)、−SH(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質のシステイン残基におけるチオール基)、第1級アミノ基(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質のリシンまたはオルニチン残基におけるもの)または第2級アミノ基(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質のヒスチジン残基におけるもの)を有するものであろう。当業者に理解されるとおり、前記の官能基がプロトン化状態であるか又は脱プロトン化状態であるのかの問題は、もちろん、選択された反応条件、例えば、反応混合物のpHに左右されるであろう。
【0056】
1つの実施形態においては、該水溶性中間体のリンカー成分の未反応の反応性部分の一部のみが該スペーサー成分と反応する。すなわち、第2の水溶性中間体は有意な量の未反応の反応性部分を尚も有する。
【0057】
得られた第2の水溶性中間体前駆体は、精製工程に関して、すなわち、該水溶性中間体前駆体の精製に関して前記で説明した方法により精製されうる。本明細書に記載の実施例から明らかなとおり、得られた第2の水溶性中間体前駆体を精製するための適当な方法はゲル濾過である。
【0058】
シグナル成分
いくつかの実施形態においては、該シグナル成分は該スペーサー成分との反応により第2の水溶性中間体前駆体に共有結合し、それにより、水溶性中間対コンジュゲートを形成する。
【0059】
本明細書中で用いる「シグナル成分」なる語は、直接的に物理的に検出可能な部分、またはそのような物理的に検出可能な部分の前駆体である若しくは該部分を生成する部分を意味する。1つの実施形態においては、該シグナル成分は、当技術分野で公知の幾つかの物理的技術により、例えば、光学的方法、例えば分光光度法、蛍光、発光、りん光または例えば“Instrumental Methods of Chemical Analysis”G.W.Ewing,5th Ed.,McGraw−Hill Book Company,New York,1988に記載されている方法のような他の方法により容易に測定されうる標識またはマーカーとして機能する。該シグナル成分は肉眼での視覚的観察によっても検出されうる。あるいは、該シグナル成分は、前記のとおり、そのような物理的に検出可能な成分の前駆体でありうる。そのような前駆体の典型例としては、適当な基質と作用すると、前記の物理的方法の1以上により検出されうる例えば着色種のような種を生成しうる酵素が挙げられる。
【0060】
該シグナル成分は、色素のような物質;蛍光、発光、りん光および他の光を放出する物質;金属器レート化物質、例えばイミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびデスフェリオキサミンB;放射性同位体で標識された物質;重金属で標識された物質;ならびにそれらの混合物から選ばれうる。
【0061】
いくつかの他の具体例を挙げると、蛍光物質は、例えば、フルオレセイン(適切にはフルオレセインイソチオシアナート,FITCとしてのもの)、フルオレセインアミン、1−ナフトール、2−ナフトール、エオシン、エリトロシン、モリン、o−フェニレンジアミン、ローダミンおよび8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸から選ばれうる。適当な放射性同位体は、例えば、水素の同位体(すなわち、トリチウム,H)、炭素の同位体(例えば、14C)、リンの同位体(例えば、32P)、硫黄の同位体(例えば、35S)、ヨウ素の同位体(例えば、131I)、ビスマスの同位体(例えば、212Bi)、イットリウムの同位体(例えば、90Y)、テクネチウムの同位体(例えば、99mTc)、パラジウムの同位体(例えば、109Pd)およびサマリウムの同位体(例えば、153Sm)から選ばれうる。適当な重金属は、例えば、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Ag、Au、Hg、I、Bi、Y、La、Ce、EuおよびGdから選ばれうる。金(Au)は多くの場合に特に有用な重金属である。
【0062】
1つの実施形態においては、シグナル成分は、非微粒子標識、例えば非微粒子色素でありうる。この場合、「色素」なる語は、任意の分光光度的に検出可能な色素分子またはその誘導体を意味すると意図される。本発明の方法により製造されるコンジュゲート内への組み込みに有用な色素には、可視色素、りん光色素、蛍光色素、レーザー色素、赤外色素およびランタニドキレートから誘導されるものが含まれる。特に興味深い色素としては、可視色素、例えば可溶性可視色素、例えば顔料、建染め染料、硫化染料、媒染染料、ロイコ建染め染料、ならびにフルオレセイン、ローダミンおよびそれらの誘導体(例えば、スルホローダミン、ローダミン−ヒドリドおよびローダミンヒドラジド)のような種、ならびにオキサジン色素、シアニン色素およびアゾール色素が挙げられる。適当な色素の具体例としては、例えば、テキサス・レッド・ヒドラジン(Texas Red hydrazine)、コンゴ・レッド(Congo Red)、トリパン・ブルー(Trypan Blue)、リサミン・ブルー(Lissamine Blue)、レマゾール・ブラック(Remazol Black)、レマゾール・ブリリアント・レッド(Remazol Brilliant Red)、ローダミンBイソチオシアナート(Rhodamine B Isothiocyanate)、Cy5−Osu単官能性反応性色素、反応性オレンジ(Reactive Orange)16、ユニブルー(Uniblue)Aなどが挙げられる。微粒子色素でない色素も本発明において有用である。「非微粒子」標識は、該標識の検出の基礎が固体の検出以外にあるものであり、これは、該固体がシグナル成分(例えば、ラテックスまたは他の粒子)であるか又は検出のための基礎となる固体粒子が生じるかには無関係である。
【0063】
前記の色素は本発明の目的のためのシグナル成分として有用であり、当技術分野でよく知られており、本発明の目的のためのシグナル成分として他の色素も使用されうることが当業者に明らかであろう。シグナル成分として使用される色素の他の具体例としては、例えば、“Dyeing and Chemical Technology of Textile Fibers”,Trotman,34th Ed.,C.Griffin & Co.,Londonおよび“The Chemistry of Synthetic Dyes”,Vankataramon(編),Academic Press,New York,1979(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載されているような色素が挙げられる。
【0064】
該シグナル成分は、BSAのようなタンパク質と反応可能、および/または、後記の代替実施形態に関しては、リンカー成分の未反応の反応性部分と反応可能でありうる。さらに、該シグナル成分は、該スペーサーとの反応または結合に際して、生じる水溶性中間体コンジュゲートの望ましくない特性を何らもたらすべきではない。すなわち、該シグナル成分は、制御不可能な非特異的結合を促進すべきではなく、また、該コンジュゲートに結合する標的化成分(例えば、抗体)の活性を抑制すべきではない。さらに、該シグナル成分は該コンジュゲートの水溶性を有意に減少させるべきではない。
【0065】
1つの実施形態においては、第2の水溶性中間体の連結成分の反応性部分の僅かの部分のみが該水溶性中間体コンジュゲートの形成においてシグナル成分と反応する。シグナル成分、スペーサー成分およびリンカー成分に応じて、該シグナル成分と反応した後、第2の水溶性中間体前駆体において利用可能な未反応の反応性連結成分の量に応じて、該リンカー成分の未反応の反応性部分の50〜100%、例えば、60〜100%、特に、70〜100%、例えば、80〜100%、特に、90〜100%が未反応のままとなる(第2の水溶性中間体前駆体と比較した場合のものであることに注意されたい。)。
【0066】
個々の色素に応じて、本発明の方法により製造されたコンジュゲートは、可視領域、UV領域または近赤外領域の光子を反射、散乱または放出する。ローダミンのような可視色素の使用は本発明のコンジュゲートに可視領域(例えば、青)の光子を反射または散乱させて、観察者にとっての、色の補色主波長(例えば、赤)の透過をもたらす。あるいは、蛍光色素の使用は、(照射されると)基底状態への電子の戻りにより本発明のコンジュゲートに特定の波長の光子を放射させる。「可視色素」は、可視領域の光を反射または散乱する色素である。
【0067】
1つの実施形態においては、該シグナル成分は供与/受容色素ペアである。供与/受容色素ペアは化学分野において公知である。共鳴エネルギー転移において、供与分子は光子を吸収し、受容体へのエネルギー転移を開始させる。該受容体はエネルギー転移を受容し、光子を放出する。該供与色素および受容色素は、励起されると、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)をもたらしうる。適当な供与体/受容体ペアの幾つかの具体例として、6−カルボキシフルオレセイン/6−カルボキシ−X−ローダミン(FAM−ROX)、3−(イプシロン−カルボキシペンチル)−3’−エチル−5,5’−ジメチルオキサカルボシアニン/6−カルボキシ−X−ローダミン(CYA−ROX)および4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3アルファ、4アルファ−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸(BODIPY)誘導体、5,7−ジメチル−BODIPY/5−(4−フェニル−1,3−ブタジエニル)BODIPY(BODIPY503/512−BODIPY581/591)が挙げられる。これらの供与体/受容体ペアは例示として記載されており、本開示に関する当業者は、FRETを示し本発明での使用に適した他の供与/受容色素ペアを特定しうるであろう。FRETは蛍光共鳴エネルギー転移であり、これは供与体から受容体への励起状態のエネルギーの転移である。
【0068】
1つの実施形態においては、該スペーサーはリンカーを介して担体に共有結合しており、シグナル成分は、該スペーサーに共有結合した色素(例えば、供与体/受容体ペアのメンバー)であり、リガンドまたはリガンドに関する標的化要素は該担体に共有結合している。該担体はデキストランであり、該リンカーはジビニルスルホンであり、該スペーサーはウシ血清アルブミンである。
【0069】
該方法はまた、シグナル成分が連結成分に共有結合しており該連結成分が担体成分に結合している(すなわち、タンパク質またはポリペプチドスペーサー成分は該コンジュゲート内に組み込まれていない)水溶性コンジュゲートの製造に適している(後記)。更なる詳細は、とりわけ、米国特許第6,627,460号第12欄に記載されている。
【0070】
もう1つの実施形態においては、該シグナル成分は、リンカーを介して担体に共有結合しうる電気化学的シグナル成分である。1つの実施形態においては、これらのコンジュゲート中にはスペーサー成分が含まれるが、該コンジュゲートは、担体分子、連結成分、および該連結成分に結合した電気化学的シグナル成分よりなる。該電気化学的シグナル成分は、基質と反応して電気化学的に検出可能な種を生成する酵素でありうる。電気化学的に検出可能な種は該基質から変換されうるか、あるいは該反応の副生成物(例えば、反応メディエーター)でありうる。本発明において使用されうる酵素の具体例には、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼおよびコリンオキシダーゼが含まれる。酵素の組合せを用いることが可能であり、この場合、組合される酵素は、独立して作用するか、あるいは二酵素系または多酵素系で作用するかには無関係である。二酵素系の一例として、NADHオキシダーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼが挙げられる。本発明において機能しうるもう1つの二酵素系はチロシナーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼである。二酵素系は検出のために酸素センサーを利用しうる。電気化学的シグナル成分が酵素(または酵素の組合せ)である場合、それは電気化学的シグナル酵素と称される。
【0071】
電気化学的シグナルを生成するために使用されうる基質または反応メディエーターには、電気化学的に検出可能な産物または種を与える、選択した酵素に適した任意の基質または反応メディエーターが含まれる。基質の具体例には、4−アミノフェニルホスファート、1−ナフチルホスファート、グルコース−6−ホスファート、4−ヒドロキシナフチル−1−ホスファート、3−インドキシルホスファート、フェニルホスファート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファートエステル、6−(N−フェロセノイルアミノ)−2,4−ジメチルフェニルホスファート、パラセタモール(paracetamol)ホスファート、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、ヒドロキノン、レドックスOs+2に基づく重合体、NADおよびグルコース−6−ホスファート、アセチルチオコリンヨージド、4−アミノフェニル−ベータ−D−ガラクトピラノシド(PAPG)、グルコースおよびメディエーター、およびコリンが含まれる。反応メディエーターの具体例には、フェリシアニド、フェロセンおよびフェロセン誘導体が含まれる。これらの一覧は単に例示として示されているに過ぎず、多数の他の基質および反応メディエーターも使用されうる。「反応メディエーター」は、酵素反応において利用される、基質とは異なる物質である。反応メディエーターは、酵素反応中に、電気化学的に検出可能な種に変換されうる。
【0072】
「電気化学的に検出可能な種」は、ボルタンメトリー、電位差測定または電気伝導度測定の電気分析技術の少なくとも1つにより検出可能な物質である。電気化学的に検出可能な種の具体例には、4−アミノフェノール、1−ナフトール、グルコース、ジヒドロキシナフタレン、インジゴブルー、フェノール、H、6−(N−フェロセノイルアミノ)−2,4−ジメチルフェノール、4−アセトアミドフェノール(TMB ox)、ベンゾキノン、フェリシアニド、酸化型フェロセンおよびフェロセン誘導体、Os+3、NADH、チオコリン、4−アミノフェノール(PAP)、グルコノラクトンおよび還元型メディエーター、ならびにベタインが含まれる。本開示に関して、当業者は、本発明において使用されうる多数の他の酵素、基質および電気化学的に検出可能な種を認識するであろう。
【0073】
ボルタンメトリーは、電気化学的分析のために又は電極反応の速度論およびメカニズムの決定のために用いられる電気化学的測定技術である。ボルタンメトリーにおいては、作用電極の電位を(典型的にはポテンショスタットで)制御し、電極を通って流れる電流を測定する。電位差測定は、無電流の条件下で電位を測定する電気分析化学の分野である。ついで、測定した電位を用いて、関心のある分析量、一般にはアナライト溶液の何らかの成分の濃度を決定することが可能である。電気化学セルにおいて発生する電位は、平衡条件が満たされるまで化学現象が進行するために生じる遊離エネルギー変化の結果である。電気伝導度測定は溶液コンダクタンスの科学測定の分野である。
【0074】
検出すべきリガンドおよびリガンドに関する標的化要素
「標的化要素」なる語は、相補的分子または生物由来の物質の相補的構造領域に結合または反応しうる分子、特に生物由来の分子を意味する。標的化要素が、検出すべきリガンドに関する標的化要素である場合、該標的化要素は、検出すべきリガンドと結合または反応する。
【0075】
検出すべきリガンドに関する妥当な標的化要素の具体例としては、例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、遺伝子プローブ、天然および合成オリゴおよびポリヌクレオチド、天然および合成単糖、オリゴ糖および多糖、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、増殖因子、ホルモン、受容体分子、プロテインAおよびプロテインG,ならびにそれらの混合物が挙げられる。個々の具体例には、抗ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(抗hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、ウサギ抗ヒトCRP、ストレプトアビジン、アビジン、抗HIV、抗C型肝炎、抗クラミジア、抗ヘルペス、抗甲状腺刺激ホルモン(抗TSH)、抗リステリア、抗サルモネラ、抗単核症、抗HBeAb、抗HBsAbおよび抗ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)が含まれる。
【0076】
検出すべきリガンド
「リガンド」は、該リガンドに関する標的化要素が結合する分子である。本発明において有用なリガンドの具体例としては、抗原およびハプテンが挙げられるが、該具体例には、該検出における関心のある任意のリガンドが含まれうる。リガンドとしてのホルモンの具体例としては、ホルモン(例えば、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(抗hCG)、黄体形成ホルモン、ろ胞刺激ホルモン、コルチゾン、T3、T4)、アミノ酸ホルモン(例えば、チロキシン)ならびにペプチドおよびタンパク質ホルモン(例えば、バソプレッシン、ボンベシン、ガストリンまたはインスリン)、および乱用の薬物が挙げられる。他のリガンドには、心臓マーカー、例えばトロポニンI、トロポニンT、高感受性C反応性タンパク質(hsCRP)、CK−MB、ミオグロブリン、NT−プロBNP、B型ナトリウム利尿性ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)およびミエロペルオキシダーゼ;ならびに癌マーカー、例えば前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)およびアルファ−フェトプロテイン(AFP)が含まれる。「乱用の薬物」は、非医学的な理由で(通常は精神改変効果のために)摂取される薬物である。そのような薬物の乱用は身体的および精神的損傷ならびに(いくつかの物質では)依存および中毒を招きうる。乱用の薬物の具体例には、コカイン、アンフェタミン(例えば、ブラックビューティー、ホワイトベニー、デクストロアンフェタミン(デキシー、ビーン)、メタンフェタミン(クランク、メス、クリスタル、スピード)、バルビツレート、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、抑制薬、鎮静薬(例えば、選択的セロトニン再取り込みインヒビター)、フェンシクリジン(PCP)、テトラヒドロカンナビノール(THC)およびオピエート(例えば、モルヒネ、アヘン、コデインおよびヘロイン)が含まれる。
【0077】
本方法および組成物は種々のアッセイ形態において有用である。例えば、いくつかの形態は、サンプル中に存在する疑いのあるリガンドに特異的な抗体を使用する。これらの形態においては、試薬は、試験ストリップ上に、移動可能な様態で位置することが可能であり、サンプルはサンプル域に適用される。ついでサンプルは、サンプル中に存在する疑いのあるリガンドに試薬が結合しうる試薬域を通過して泳動し、検出域に達し、ここで、標的化要素が該域に適用され、存在する疑いのあるリガンドに結合し、あるいは該リガンドに結合した標的化要素に結合し、または更には該コンジュゲートの別の成分に結合する。「選択的結合」は、意図されたとおりにアッセイが機能するよう、該標的化要素が、関心のあるリガンドを、サンプル中に存在する他のあらゆるリガンドから識別することを意味する。選択的に結合する標的化要素は2以上のリガンドに尚も結合しうる。「特異的結合」は、標的化要素がその標的リガンドに結合し、サンプル中に存在しうる他のリガンドには結合しないことを意味する。
【0078】
もう1つのアッセイ形態においては、関心のあるリガンドに対する、より低い選択性を有し、したがって、関心のあるリガンドだけでなく、サンプル中に存在する第2の分子にも結合しうる2つの抗体を使用することが可能である。この形態においては、その第2の分子上の結合部位に結合して、これらの部位を遮断し、これらの2つの抗体を、関心のあるリガンドのみに結合させる捕捉(scavenger)抗体を使用する。他の形態においては、2以上の捕捉抗体を使用することが可能であり、3以上の抗体を使用することが可能である。本開示に関して、当業者は、同様に本発明に含まれる追加的なアッセイ形態を案出しうるであろう。本明細書中に挙げられている個々の形態は例示として記載されている。
【0079】
本発明は直接サンドイッチアッセイ形態にも適用されうる。この形態においては、サンプルはサンプル域に適用され、標識(例えば、デキストラン−BSA−抗hCG抗体−ローダミン)を含有する標識域を通過して流動し、検出すべきリガンドが存在する場合、該標識は該リガンドに結合する。ついでサンプルは検出域(例えば、試験ストリップに固定された抗hCG抗体を含有する)へ流動し続ける。検出域において、標識リガンドが検出域に結合し、検出域の観察はアッセイの結果をもたらす。
【0080】
もう1つのアッセイ形態(「間接」形態と称されることもある)においては、サンプルはサンプル域に適用され、移動可能な様態で試薬域内に存在する、検出すべきリガンドに特異的な標的化要素(例えば、ビオチン−hCG Ab)を含有する試薬域を通過して泳動する。ついでサンプルは、リガンド(例えば、hCGのベータ部分)またはリガンドに結合した標的化要素に特異的に結合する本発明のコンジュゲートを含有する標識域を通過して泳動し続ける。したがって、シグナル成分が、検出すべきリガンドに結合する。ついでサンプルは検出域へと泳動し続け、ここで、サンプルに対する標的化要素(ストレプトアビジン−IgGまたはストレプトアビジン−BSA)の結合が生じる。検出域の目視観察は、存在するリガンドの存在、非存在または量を示す。
【0081】
本開示に関して、当業者は、同様に本発明に含まれる本発明の適用のための他の形態を認識するであろう。例えば、本発明は、以下の参考文献に記載されている形態において適用されうる:5,602,040、5,622,871、5,656,503、6,187,598、6,228,660、6,352,862、2001/0,008,774、2001/0,041,368、5,714,389、5,989,921、6,485,982、5,252,496、5,559,041、5,728,587、6,027,943、6,506,612、6,541,277、2002/0,160,525、5,073,484、5,654,162、6,020,147、5,120,643、5,578,577、6,534,320、4,703,017、4,743,560、5,591,645、3,011,874、3,641,235、4,094,647、4,168,146、4,373,932、4,477,575、4,722,889、4,861,711、4,943,522、4,978,503、5,571,726、EP 0,149,168、EP 0,170,375、EP 0,192,320、EP 0,250,137、EP 0,287,731、EP 0,291,194、EP 0,349,215、GB 2,062,224、GB 8,709,873。以下の実施例は本発明の更なる例示のために記載されている。
【0082】
酵素電気化学イムノアッセイ
酵素電気化学イムノアッセイ(ECI)においては、アナライトまたは第2の抗体を、電気化学的に検出可能な産物の産生を触媒する酵素で標識し、産物生成の速度を用いてアナライトの量を定量する。したがって、酵素ECIは、化学的増幅により、特異性のために抗体を、そして感度のために酵素標識を使用する。
【0083】
イムノアッセイにおける電気化学的検出技術の大多数は、ボルタンメトリー(これは、電気化学セルに電位を加え、電極における酸化または還元から生じた電流を測定することを含む電気分析の一法である)に基づくものである。ボルタンメトリーの多数の技術のうち、電流測定法がECIには最も一般的である。電流測定法においては、電極を一定電位で保持し、電極表面において酸化還元事象から生じた電流を測定する。電流測定法は、流体力学電気化学検出器に適用されると、ナノモルレベルの検出限界をもたらす。検出は非常に小さなサンプル容量(10μL未満)で行われうるため、サンプルにおいて検出される酸化還元(レッドクス)活性種の絶対量は僅か10−14モル以下となりうる。
【0084】
電流測定法においては、検出のための最適電極電位は、加えられた電位の関数としての、アナライトにより生じた電流応答を得ることにより選択される。溶液中の電気活性種に関するこの電流応答は通常、3つの異なる挙動領域を有する。第1は、化合物が電気活性ではなく電流が無視されうる電位領域である。第2は、ネルンスト式により定義される電流応答を上昇させる領域である。第3は、電位に非依存的な限界電流プラトーである。検出のための最良の電位はこの限界電流プラトーに沿ったものであり、この場合、アナライトは電極への物質輸送の限界において電気分解されており、適用電位における小さな変化は電流測定に有意な影響を及ぼさない。限界プラトーにおける電流応答はアナライト濃度に正比例し、式:I=nFADC°/d(式中、Iは電流であり、nは、酸化還元反応に関与する電子の数であり、Fはファラデー定数であり、Aは電極表面積であり、Dは拡散係数であり、C°はバルクアナライト濃度であり、dは拡散層の厚さである)により与えられる。
【0085】
酵素−基質−産物(E−S−P)系
E−S−P系の選択は、酵素ECIにおける重要な要因である。酵素反応は迅速であること、および産物Pが活性である何らかの電位領域にわたって、基質Sは酸化還元に対して不活性であることが重要である。また、電位の上昇と共に増加するバックグラウンドノイズが低いまま維持されるよう、産物Pは低電位において電気活性であることが好ましい。一般に使用される酵素標識であるアルカリホスファターゼ(ALP)は、4−アミノフェニルホスファート(PAPP)を基質とする。その酵素産物である4−アミノフェノール(PAP)は、低い酸化電位(すなわち、pH7のバッファー中のガラス状炭素電極におけるAg/AgClに対して0.18V)を有し、電極毒を引き起こさない。より安価で、より安定なALP基質である1−ナフチルホスファートも使用されている。このE−Sペアは、スクリーンプリント電極に基づくイムノセンサーの場合に特に良好であることが示されている。ECIにおいて使用される他の酵素は本明細書に記載されている。
【0086】
単一のE−Sペアの使用が酵素イムノアッセイにおける最も一般的な実施であるが、二酵素または多酵素系も使用されうる。1つの検出法は、フェノールを、まずはカテコールへ、ついでO−キノンに酸化するために、チロシナーゼを使用することを含む。O−キノンはグルコースの酵素的脱水素におけるメディエーターとなり、カテコールへ再変換される。ALPの定量は、フェノールの酸化におけるOの喪失を測定することにより間接的に行われる。
【0087】
スクリーンプリント電極(SPE)は、ポリスチレン表面上に電極をプリントするために黒鉛粉末に基づくインクを使用する厚膜技術で製造され、主として電極表面への抗体の受動吸着によりイムノセンサーに適合化される。SPEに基づくイムノセンサーは、本明細書に記載されているアッセイのための多数の用途に使用されうる。
【0088】
本発明の組成物および方法は任意の簡便なアッセイ形態で使用されうる。しかし、2つの形態が電気化学的検出試薬に好適である。1つの形態においては、磁性ビーズを、検出すべきアナライトに対する特異的結合分子(例えば、抗体)で処理し、容器内に配置する。分析すべきサンプルを該ビーズに接触させる。サンプル中にアナライトが存在すれば、それは該ビーズ上の特異的結合性分子に結合するであろう。電気化学的シグナル成分を有する本発明の組成物を加え、該混合物を反応させる。適当な洗浄の後、該電気化学的シグナル成分に対する基質を該ビーズと接触させる。この混合物を、非常に小さな容量で、毛細管内で反応させることが可能である。非常に小さな容量は酵素産物の希釈を低下させて、電気化学的シグナルの増強をもたらす。なぜなら、該シグナルは該濃度に直線的に比例するからである。適当な混合および洗浄の後、産物溶液を電極上に配置し、サンプル中のアナライトの存在または量を決定する。
【0089】
もう1つの実施形態においては、アナライトに対する特異的結合性分子を電極に吸着させる。このタイプのアッセイにおいては、サンプル溶液を電極に接触させる。サンプル中にアナライトが存在すれば、それは該特異的結合性分子に結合するであろう。本発明の組成物を該電極と接触させて、アナライトに対する抗体、アナライトおよび本発明のコンジュゲートの複合体を形成させる。適当な洗浄の後、電気化学的シグナル成分に対する基質を電極と接触させる。反応後、例えばボルタンメトリー、電位差測定法または電気伝導度測定法を用いて測定を行い、サンプル中のアナライトの存在または量を決定する。
【0090】
「特異的結合性分子」は、化学的または物理的手段により、サンプル中に存在する検出可能な物質に選択的に結合する分子を意味する。「選択的に結合」は、該分子が、関心のある標的に優先的に結合し、または標的に、他の分子に結合する場合より大きなアフィニティーで結合することを意味する。1つの実施形態においては、特異的結合性分子は抗体または抗体のフラグメントである。「抗体」は免疫グロブリンを意味し、天然物であるか又は部分的もしくは完全に合成的に産生されるかどうかには無関係である。該用語は、特異的結合能を維持するその誘導体を含む。該用語は、免疫グロブリン結合ドメインと相同またはほとんど相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質をも包含する。これらのタンパク質は天然由来であることが可能であり、あるいは部分的または完全に合成的に産生されうる。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであることが可能であり、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、IgGおよびIgEのいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラス(またはクラスの組合せ)のメンバーでありうる。「抗体フラグメント」は、完全長未満である、抗体の任意の誘導体である。抗体フラグメントは完全長抗体の特異的結合能の少なくとも有意な部分を保有しうる。抗体フラグメントの具体例には、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、dsFvジアボディおよびFdフラグメントが含まれるが、これらに限定されるものではない。「誘導体」は、親化合物と同じ基本構造を有する任意の分子である。
【0091】
抗体フラグメントは任意の手段により製造されうる。例えば、抗体フラグメントは無傷抗体の断片化により酵素的または化学的に製造されることが可能であり、あるいはそれは、部分抗体配列をコードする遺伝子から組換え製造されうる。あるいは、抗体フラグメントは全体的または部分的に合成的に製造されうる。抗体フラグメントは、場合によっては、一本鎖抗体フラグメントでありうる。あるいは、該フラグメントは、例えばジスルフィド結合により互いに連結された複数の鎖を含みうる。該フラグメントはまた、場合によっては、多分子複合体でありうる。機能性抗体フラグメントは、典型的には少なくとも約50アミノ酸、より典型的には少なくとも約200アミノ酸を含む。
【0092】
一本鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーにより互いに共有結合した可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)のみよりなる組換え抗体フラグメントである。VまたはVのいずれかがNH末端ドメインでありうる。それらの2つの可変ドメインが、重大な立体的干渉を伴わずに架橋されている限り、該ポリペプチドリンカーは様々な長さ及び組成のものでありうる。典型的には、該リンカーは、主として、グリシンおよびセリン残基の伸長から構成され、可溶性のために幾つかのグルタミン酸またはリシン残基が介在する。「ジアボディ」は二量体scFvである。ジアボディの成分は、典型的には、ほとんどのscFvより短いペプチドリンカーを有し、これらは、二量体として会合し易い傾向を示す。
【0093】
「Fv」フラグメントは、非共有結合相互作用により互いに保持された1つのVおよび1つのVドメインよりなる。「dsFv」なる語は、本明細書においては、V−Vペアを安定化するための操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvを意味するものとして用いられる。F(ab’)フラグメントは、pH4.0〜4.5で酵素ペプシンでの消化により免疫グロブリン(典型的にはIgG)から得られるものと実質的に同等の抗体フラグメントである。該フラグメントは組換え製造されうる。Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメントにおける2つの重鎖片を連結するジスルフィド架橋の還元により得られるものと実質的に同等の抗体フラグメントである。Fab’フラグメントは組換え製造されうる。「Fab」フラグメントは、酵素パパインでの免疫グロブリン(典型的にはIgG)の消化により得られるものと実質的に同等の抗体フラグメントである。Fabフラグメントは組換え製造されうる。Fabフラグメントの重鎖セグメントがFd片である。
【0094】
抗体の活性フラグメントは、好ましくは、抗体のFv領域を含む。抗体の活性フラグメントは、抗体を含むサンプルのタンパク質分解消化のような当技術分野で公知の方法を用いて製造されうる。特に示さない限り、抗体はポリクローナルまたはモノクローナルでありうる。抗体の調製物は全血または血清または血漿のような粗製物であることが可能であり、あるいは例えば分子量精製または硫酸アンモニウム沈殿のような粗分離法により部分的に精製されることが可能であり、あるいは例えば抗体のクラス、抗体のサブクラスに関するアフィニティークロマトグラフィーにより、または個々の抗原もしくはエピトープへの結合により、実質的に精製されうる。そのような精製のための方法は当技術分野で公知であり、例えば、HarlowおよびLane,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)に記載されている。
【実施例1】
【0095】
水溶性コンジュゲートの製造
製造方法のこの実施形態は以下の4つの工程を含む:ジビニルスルホンでのデキストランの活性化、活性化デキストランのBSAの結合、デキストラン−BSA骨格のBSA部分へのローダミン色素の取り込み、およびデキストラン−BSA−ローダミン骨格への抗体の架橋。
【0096】
活性化デキストラン:
以下の溶液を活性化のために調製した:蒸留水中の25mg/ml デキストラン(500,000MW)、0.5M リン酸カリウム(pH 11.4)および蒸留水中の25mg/ml 水素化ホウ素ナトリウム(使用直前に調製)。
【0097】
活性化条件は、10mg/ml デキストラン最終濃度、0.25M リン酸カリウムバッファー、0.25mg/ml 水素化ホウ素ナトリウム最終濃度および5% DVSであった。全操作は換気フード内で行った。最初に該デキストラン、蒸留水およびリン酸カリウムバッファーを一緒にし、10〜15分間混合した。該水素化ホウ素ナトリウムを加え、ついで直ちにDVSを加えた。DVSの添加の最初の一滴からタイマーを開始し、DVSを2分以内に滴下した。DVSの全量を加えた後、該溶液を30〜35分間まで継続的に攪拌した。その30〜35分間の温置の後、25% HClでpHを7に調節することにより該活性化を停止させた。活性化デキストランを蒸留水に対して十分に透析し、この場合、該水を4日間にわたり1日2回交換した。透析物を集め、クロロブタノールを0.01%の最終濃度で加えた。
【0098】
活性化デキストランへのBSAの結合:
該結合のために調製した溶液は、0.1M 塩化ナトリウム中の50mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン)、0.4M リン酸ナトリウム(pH 10.4)および0.1M 塩化ナトリウムであった。
【0099】
結合条件は、1:25の活性化デキストラン:BSA(モル比)、0.010M KHPO、pH 10.4、30℃および22時間であった。該活性化デキストラン、BSA溶液およびリン酸カリウムバッファーを一緒に加えた。該混合物のpHを1M HClで10.4に調節した。該混合物を30℃のオーブン中に22時間配置した。その22時間の温置の後、該混合物のpHを1M HClで6.5に低下させた。ついで、ランニングバッファーとしての0.1M 塩化ナトリウムと共にS300サイズ排除カラムを使用して、該混合物を精製した。最初のピークを集め、次工程で使用した。
【0100】
デキストラン−BSAのBSA部分へのローダミン色素の取り込み:
以下の溶液を調製した:1M 炭酸水素ナトリウム(pH 8.6)、DMSO中の10mg/ml ローダミンイソチオシアナート、0.5M K2HPO4(pH 7.2)。
【0101】
結合条件は、100〜200μg色素/mg BSA、0.1M 炭酸水素ナトリウム、pH 8.0、30℃および1時間であった。該デキストラン−BSA、ローダミン溶液および炭酸水素ナトリウムバッファーを一緒に加えた。pHを1M HClで8.0に調節した。該混合物を30℃のオーブン中で1時間温置した。該温置の後、該混合物を10mM KHPO(pH 7.2)に対して十分に透析した(4日間にわたり1日2回の交換)。透析物を集め、ブロニドクス(Bronidox)を0.05%の最終濃度で加えた。
【0102】
デキストラン−BSA−ローダミンへの抗体の架橋:
架橋に必要な成分は以下のとおりであった:抗体溶液、3.5M KHPO(pH 9〜10)、デキストラン−BSA−ローダミン、蒸留水中の0.1M システイン(使用直前に調製)、蒸留水および50mM Tris(pH 7.2)/0.1M NaCl/0.02% アジ化ナトリウム。
【0103】
架橋条件は、1:2.5〜1:5のデキストラン−BSA−ローダミン:抗体(モル比)、30℃、18〜22時間および2.5M KHPO塩モル濃度であった。該デキストラン−BSA−ローダミンを4000gで遠心分離して粒子を除去した。該抗体溶液、デキストラン−BSA−ローダミンおよびKHPOを一緒にした。該混合物を30℃のオーブン中で18〜22時間温置した。該温置の後、システインを全容量の1/10加えた。蒸留水を加えることにより、該塩濃度を2.5M〜1.75Mに調節した。ついで該混合物を9,333gで遠心分離して該水溶性コンジュゲートをペレット化した。該ペレットを、該架橋に使用したデキストラン−BSA−ローダミンの元の容量の1/2の容量の蒸留水に再懸濁させた。該再懸濁ペレットを327gで5分間遠心分離した。ランニングバッファーとして50mM Tris/0.1M NaCl/0.02% アジ化ナトリウムを使用して、S300ゲル濾過カラム内で上清を精製した。最初のピークを集め、標識コンジュゲートとして使用した。
【実施例2】
【0104】
デキストラン−BSA−ローダミンに抗体を架橋した後の音波処理の利用
この実施例は該方法における音波処理の利用を例示する。架橋条件は1:2.5のデキストラン−BSA−ローダミン:抗体(モル比)、30℃、18〜22時間および2.5M 塩モル濃度であった。該デキストラン−BSA−ローダミンを4000gで遠心分離して粒子を除去した。該抗体溶液、デキストラン−BSA−ローダミンおよびKHPOを一緒にした。該混合物を30℃のオーブン中で18〜22時間温置した。該温置の後、システインを全容量の1/10加えた。蒸留水を加えることにより、該塩濃度を2.5M〜1.75Mに調節した。ついで該混合物を9,333gで遠心分離して該水溶性コンジュゲートをペレット化した。該ペレットを、該架橋に使用したデキストラン−BSA−ローダミンの元の容量の1/2の容量の蒸留水に再懸濁させた。該再懸濁ペレットを音波処理(出力設定700ワット、5秒/サイクル、10サイクル、サイクル間に10秒間の休止)し、ついで327gで5分間遠心分離した。ランニングバッファーとして50mM Tris/0.1M NaCl/0.02% アジ化ナトリウムを使用して、S300ゲル濾過カラム内で上清を精製した。最初のピークを集め、標識コンジュゲートとして使用した。
【0105】
標識パッドの調製のために、OD 1.5を27−μl/試験で使用した。結果は、リガンドが存在しない場合には陰性結果を、そして25mIU/mlおよび50mIU/mlのリガンドが存在する場合には陽性結果を示した。
【実施例3】
【0106】
洗浄法の利用はゲル濾過カラムの使用を省略させる
以下の方法は、沈殿後の該ペレットの洗浄がゲル濾過または他の工程による該水溶性コンジュゲートの精製の必要性を無くすことを例示するものである。
【0107】
抗体および「Dex−BSA−ローダミン」を含有する以下の溶液を調製した:0.00258μモルの抗体および0.00535μモルのデキストラン(「dex−BSA−ローダミン」として)を3.5M リン酸カリウムバッファー(pH 11.5)と混合して以下の最終濃度を得た:2.5M リン酸カリウムバッファー(pH 11.0)。該溶液におけるモル比:「dex−BSA−ローダミン」/抗体は1/2.5であった。
【0108】
混合後、沈殿物を溶液中で観察した。カップリング(結合)を30℃で3時間継続させた。カップリング後、システインを該サンプルに、0.01M システインの最終濃度となるまで加えた。溶液中のリン酸バッファーの濃度を、該溶液への脱イオン水の添加により、1.75Mに調節した。ついで溶液を10,000rpmで5分間遠心分離し、透明でほとんど無色の上清をピペットで注意深く吸引した。
【0109】
遊離抗体および結合抗体を含有する沈殿物(ペレット)を3mlの脱イオン水に溶解した。該再溶解沈殿物を12000rpmで10分間遠心し、遊離抗体を含有する上清を排出させた。前記工程を1回繰返した。ついで該沈殿物(ペレット)を1mlの脱イオン(DI)水に溶解した。「Dex−BSA−ローダミン−抗体」コンジュゲートのOD558を測定し、それは20を上回った。結果を以下に要約する。
【0110】
【表1】

【実施例4】
【0111】
非特異的タンパク質を使用する水溶性コンジュゲートの製造
この実施例は、非特異的タンパク質(この場合はBSAおよび免疫グロブリン)を使用する水溶性コンジュゲートの製造を例示する。
【0112】
方法:
(1)以下の物質をこの順序で加えた:
Medixのモノクローナル抗ベータHCG,クローン5008 10mg。
デキストラン−BSA−色素 6ml(デキストラン濃度0.0043μm/ml)、(Dex:Ab=1:2.5)。
Acon BioのマウスIgG,R103008、5mg(Dex:マウスIgG=1:1.25)またはマウスIgG無し。
3.5M KHPO(pH 9.5)20.2ml(最終2.5M)。
30C、O/N。
0.1M システイン 2ml。
DI水 6.67ml。
8000rpm、10分間。
S−300精製。
精製Abコンジュゲートを標識パッドにOD558=0.686(59μl/試験)で適用。
【0113】
試験結果:
【0114】
【表2】

【0115】
2)第2の実施例において、以下の物質をこの順序で加えた。
【0116】
【表3】

【0117】
精製Abコンジュゲートを標識パッドにOD558=0.686(59μl/試験)で適用。
【0118】
【表4】

【実施例5】
【0119】
ジチオトレイトールでの前処理による水溶性コンジュゲートの製造
この実施例は、ジチオトレイトールでの抗体(標的化要素)の前処理を用いる水溶性コンジュゲートの製造を例示する。
【0120】
Dex−BSA−ローダミン、dex濃度 0.00464μM/ml、Ab:モノクローナル抗ベータhCG,クローン5008、4.8mg/ml。
【0121】
2.方法
【0122】
【表5】

【0123】
結果
モノクローナル抗アルファhCG(Acon Bio)で除去(strip)されたNC:FHC102。
【0124】
【表6】

【実施例6】
【0125】
代替逐次的コンジュゲート
この実施例は、水溶性コンジュゲートを製造するための1つの代替方法を例示する。この方法においては、水溶性コンジュゲートを形成させるために、水溶性中間体コンジュゲートと組合わせる前に、シグナル成分を標的化要素に連結する。
【0126】
ウシ血清アルブミンを活性化デキストランにコンジュゲート化した。該組成物を精製して遊離BSAを分離した。ついでhCG抗体をデキストラン−BSAに、5:1のモル比で、0.1M リン酸カリウム(pH9.6)中、30℃で18時間コンジュゲート化した。該組成物を再び精製して遊離抗体を分離した。ローダミン色素を該デキストラン−BSA−抗体に、150μg色素/mgタンパク質の比で、0.1M 炭酸水素ナトリウム(pH8.0)中、30℃で3時間コンジュゲート化した。該反応をシステインで停止させ、再び10mM KHPO(pH 7.2)に対して十分に透析した。最後に、該抗体を該デキストラン−BSA−抗体−色素に、2.5:1の比で、2.5M KHPO(pH 10.6)中、30℃で18時間架橋した。ついで該コンジュゲートを精製して遊離抗体を分離した。
【0127】
27μl/試験で0.8のODを用いて、標識パッドを調製した。結果は、リガンドが存在しない場合には陰性結果を、そして100mIU/mlのリガンドが存在する場合には陽性結果を示した。
【実施例7】
【0128】
間接アッセイ形態
この実施例は間接アッセイ形態における本発明の使用を例示する。最初の遠心分離の後でペレットを蒸留水中で3回洗浄すること以外は前記の方法に従い、水溶性コンジュゲートを製造した。ついで最終ペレットを蒸留水に再懸濁させた。5秒間のサイクルを10サイクル(サイクル間に10秒間の休止)にわたって用いて、該溶液を音波処理した。標識パッドをOD550 45で調製した。
【0129】
該標識パッドをこの形態に従い評価した:サンプル域、試薬域内のビオチン化アルファhCG抗体、標識パッド、ならびに検出域内のニトロセルロースおよび吸着剤上にストライプ処理(Sstriped down)されたストレプトアビジン−IgGを含有する試験ストリップ。該試験ストリップをプラスチックハウジング内に配置した。該試験装置を種々のレベルのhCG濃度、陰性尿および蒸留水で試験した。
【0130】
3分の時点で得られた結果は、hCGの非存在下の蒸留水および尿に関しては陰性であった。そして、1 IU/ml、500mIU/ml、100mIU/mlおよび50mIU/mlを含有するサンプルに関しては、陽性結果が得られた。
【実施例8】
【0131】
活性化デキストランへのHRPのコンジュゲート化
この実施例は、分子量500,000のDVS活性化デキストランへのHRPのコンジュゲート化を例示する。26%の活性化度を有する500,000の分子量を有する活性化デキストランをHRP溶液に、1:20(デキストラン:HRP)のモル比で加えた。カップリングバッファーは10mM ホスファート(pH10.4)であった。40mg/mlでHRPを使用してカップリングを30℃で22時間継続した。30℃の温置からボトルを取り出した後、pHを1M HClで6.5に滴定した。該溶液をSephacryl(登録商標)S−200ゲル濾過カラム上で分離した。使用前に脱気した0.1M NaCl中で該カラムを平衡化した。溶離液として0.1M NaClを使用する無勾配溶出により、精製を行った。HRP溶出を403nmで検出した。
【実施例9】
【0132】
電気化学的イムノアッセイのための抗hCGコンジュゲートの製造
この実施例は、高塩バッファー中の沈殿を用いるジビニルスルホン活性化デキストラン−HRPへの抗hCG抗体のコンジュゲート化による抗hCGコンジュゲートの合成を例示する。
【0133】
抗ベータhCG(R006003、PBS中、6.5mg/ml)を、活性化デキストラン−HRP−コンジュゲートに、該デキストラン上の遊離ジビニルスルホン(DVS)基を介してコンジュゲート化する。カップリングおよび沈殿の後、遊離未反応VS基をシステインの添加により遮蔽する。沈殿物を遠心分離によりペレット化し、脱イオン水中の音波処理により再懸濁させる。デキストラン−HRP/抗hCGコンジュゲートをSephacryl(登録商標)S−300上のゲル濾過により未結合抗体から分離する。精製されたコンジュゲートを280nmで測定する。
【0134】
デキストラン−HRP 1モル当たり抗体2モルのモル比を用いた。リン酸緩衝食塩水(PBS)中の0.95mlの抗ベータhCG(6.5mg/ml)と共に0.46mlのデキストラン−HRP。15mlの円錐チューブ内で回転させながら、1.9mlのKHPO(3M,pH 9.0)を滴下して該ホスファート濃度を2Mとした。全容量は3.31mlであった。該チューブを、125rpmで穏やかに振とうしながら、30℃で18時間温置した。18時間後、溶液表面付近に該沈殿物が蓄積する。0.46mlの脱イオン水を加え、該溶液を混合してホスファート濃度を1.75Mに調節した。0.377mlの0.1M システインを加えて、残留ビニル基を覆った(cap)。ついで該溶液を穏やかに混合し、室温で15分間放置した。該混合物を2mlのミクロフュージ(microfuge)チューブに移し、10,000rpmで15分間遠心した。透明な上清を除去し、ペレットを再懸濁させ、約1.5mlの容量の脱イオン水中に一緒にした。
【0135】
該チューブを、カップホルン(cuphorn)浴内に氷を維持したカップホルンソニケーター内で音波処理した。該ソニケーターの制御器を5秒パルス、90%最大出力に設定した。音波処理中、ポリプロピレンプラスチックチューブを音波プローブに押し付けて、4℃で最大エネルギー転移を得た。音波処理を3分間隔で行った。該チューブを氷上で維持し、該ソニケーターに3分間隔で4回押し付けた。この方法は、サンプルの微小加熱(micro−heating)を妨げ、サンプルの再可溶化を最大にすることが判明した。
【0136】
該ペレットを再び遠心沈殿させ、上清を取っておいた。該ペレットを0.35mlのDI水に再懸濁させ、該音波処理操作を繰返した。該ペレットの少なくとも90%が溶解するまで、音波処理および遠心のサイクルを繰返した。ついでそれらの溶液を一緒にした。
【0137】
30,000の分子量カットオフを有する遠心濃縮器を使用して、溶解したコンジュゲートを約1mlの容量まで濃縮した。ついで、50mM Tris、0.1M NaCl(pH 7.2)で予め平衡化されたS−300カラム(少なくとも31mlのベッド容量)に該コンジュゲートを適用した。溶出をTris緩衝食塩水で1ml/分の流速で行い、最初のピークを1個または2個の画分内に集めた。該コンジュゲートは最初のピークに溶出し、ピーク画分を一緒にした。
【実施例10】
【0138】
電気化学的検出のための抗体での電極の被覆
この実施例は、hCGの電気化学的検出のためのアフィニティーセンサーとして使用する、抗体で被覆された炭素電極の製造を例示する。
【0139】
Melinex(登録商標)ST328ポリエステルフィルム基質を有するスクリーンプリンント(screen−printed)炭素電極を使用した。黒鉛インクおよび塩化銀インクを使用して、該電極をプリントした。該スクリーンプリンターはSMT Optiprint,モデル1616,PD−Fであった。
【0140】
該電極を、100μg/mlの抗αhCG抗体を含有する被覆バッファーに室温で2時間浸け、ついでブロッキングバッファーに室温で1時間浸けた。洗浄および乾燥の後、該電極を乾燥状態で保存した。
【0141】
その被覆された電極を、既知濃度のhCG(例えば、0、2、5または50mIU/ml hCG)を含有するPBSバッファーまたはサンプルマトリックス中で室温で30分間温置した。洗浄後、該電極を標識コンジュゲートバッファー中の抗βhCG標識コンジュゲート(3μg/ml)に室温で30分間浸けた。洗浄後、20μlの基質を該電極に適用し(ALPコンジュゲートの場合、20mM リン酸ナフトール、0.1M NaCl、0.1M ジエタノールアミン,pH 9.6)、室温で10分間温置した。ついで、示差パルスボルタンメトリーを用いて、シグナルを記録した。
【実施例11】
【0142】
通常のHRP−Ab検出とHRP−デキストラン−Abとの比較
50μlのDynabeads(登録商標)M−280ストレプトアビジンおよび133μlの100μg/ml ビオチン化6002 hCG捕捉抗体を容器内に混合し、50分間混合することにより、捕捉表面を調製した。該ビーズを洗浄バッファー(0.5% BSAおよび0.5% Tweenを含有する80μlのリン酸バッファー(pH7.2))で洗浄した。80μlの1% カゼインを加え、該混合物を2時間温置した。ついで該混合物を1% カゼインで洗浄し、166μlの1% カゼインに再懸濁させ、4℃の冷蔵庫内に配置した。
【0143】
2つのチューブをAおよびBと表示した。チューブAに10μlの該ビーズを加えた。適当な洗浄の後、本明細書に記載されているとおりに調製した5μlのHRP−6003コンジュゲートをパッド化(pad)し、該混合物を振とう器上に配置した。50μlのhCG標準を、混合しながらチューブAに加えた。該混合物を7.5分間温置し、洗浄バッファー(前記)で2回洗浄し、50μlの洗浄バッファーに再懸濁させた。
【0144】
チューブA内のビーズをチューブBに移し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。ついで該ビーズを磁石で分離し、上清を取り出した。15μlの酵素基質混合物(10mMの最終濃度となるよう新たに混合されたHを含有する10mM ヒドロキノン)を洗浄した後、20分間の混合を行った。該ビーズを分離し、5μlのビーズを電極上にピペッティングして示差パルスボルタンメトリーを実施した。
【0145】
比較のために、独立した実験において、30μlのDynabeads(登録商標)M−280ストレプトアビジンを80μlの100μg/ml biot−6002抗体と混合することにより、該捕捉表面を調製した。該混合物を45分間混合し、0.5% BSAおよび0.5% Tweenを含有する80μlのリン酸バッファー(pH7.2)で1回洗浄した。80μlの1% カゼインを加え、2時間温置した。該混合物を80μlのカゼインで洗浄し、100μlの1% カゼインに再懸濁させた。標識抗体は、本明細書に記載されているとおりに調製したアルカリホスファターゼ−6003コンジュゲート抗体であった。hCG標準は以下のとおりに調製した。
ウェル400−120μlの1% カゼイン+80μlのhCGを加える。
ウェル200−100μlの1% カゼイン+前記チューブからの100μlを加える。
ウェル100−100μlの1% カゼイン+前記チューブからの100μlを加える。
ウェル50−100μlの1% カゼイン+前記チューブからの100μlを加える。
ウェル25−100μlの1% カゼイン+前記チューブからの100μlを加える。
ウェル12.5−100μlの1% カゼイン+前記チューブからの100μlを加える。
ウェル0−100μlの1% カゼインを加える。
【0146】
マイクロタイタープレートの1つの列に沿ってhCG標準を調製し、ウェル当たり5μlの標識抗体を加えた。2分の時点で、50μlのhCG標準を第12列から第1列へ素早く移し、混合し、2分間プレ温置した。ウェル当たり10μlのビーズを、プレート振とう器上で混合しながら加え、8分間温置した。該ビーズを磁石で分離し、上清を各ウェルから除去した。該ビーズを、0.5% BSAおよび0.5% Tweenを含有する70μlのリン酸バッファー(pH7.2)で2回洗浄した。ついで70μlの該リン酸バッファーを各ウェルに加え、該ビーズを第2列内の隣接ウェルに移した。該ビーズを再び70μlのリン酸バッファーで洗浄した。15μlの基質(100mM ジエタノールアミン(pH9.6)中の20mM 1−ナフチルホスファート)を加え、該混合物を25分間温置した。該ビーズを保持し、示差パルスボルタンメトリーのために8μlの基質をスクリーンプリント電極上に直接移した。
【0147】
図2は、本発明に従い電気化学的検出を利用した場合、通常の電気化学的方法と比べて数倍高い感度が得られたことを示している。通常の方法で用いた約2倍も長い温置時間(20分間)(一方、本発明方法では11分間)に関して補正したところ、該相違はより一層劇的である。
【0148】
本明細書中に例示として記載されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素、限定の非存在下で実施されうる。用いられている用語および表現は、限定ではなく説明のための用語として用いられおり、そのような用語および表現の使用においては、示されており記載されている特徴またはその一部のいずれの均等物をも除外することを意図するものではなく、特許請求されている本発明の範囲内で種々の変更が可能であると認識される。したがって、本発明は種々の実施形態および随意的な特徴により具体的に開示されているが、開示されている本発明における概念の修飾および変更が当業者により施されることが可能であり、そのような修飾および変更も、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲内であるとみなされると理解されるべきである。
【0149】
本明細書中に挙げられている又は引用されている文献、特許および特許出願ならびに全ての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容の全体を、それぞれの個々の刊行物が参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別的に示されているのと同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。本出願人は、任意のそのような文献、特許、特許出願または他の文書からのあらゆる資料および情報を本出願に物理的に組み入れる権利を保有する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1A】図1は水溶性コンジュゲートおよびその製造における一般技術の概要図であり、読者が該コンジュゲートを視覚化し本明細書に記載の方法を理解するのを助けるものである。
【図1B】図1は水溶性コンジュゲートおよびその製造における一般技術の概要図であり、読者が該コンジュゲートを視覚化し本明細書に記載の方法を理解するのを助けるものである。
【図2】図2は通常のHRP−デキストランコンジュゲート検出方法と本発明方法との応答の比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの担体成分、
少なくとも1つの連結成分、
該連結成分を介して該担体成分に共有結合した少なくとも1つの電気化学的シグナル成分、
検出すべきリガンドに関する少なくとも1つの標的化要素または検出すべき少なくとも1つのリガンド
を含んでなる水溶性コンジュゲート。
【請求項2】
該連結成分を介して該担体成分に結合したスペーサー成分を更に含む、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項3】
該スペーサーが、タンパク質、ポリペプチド、ウシ血清アルブミン、オボアルブミンまたはグロブリンよりなる群から選ばれる、請求項2記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項4】
該担体が、デキストラン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、セルロース、天然ゴムおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれ、
検出すべきリガンドに関する少なくとも1つの標的化要素または検出すべき少なくとも1つのリガンドが該連結成分を介して該担体に結合している、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項5】
該担体がデキストランである、請求項4記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項6】
該連結成分がジビニルスルホンである、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項7】
該電気化学的シグナル成分が、基質または反応メディエーターを、電気化学的に検出可能な種に変換する酵素である、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項8】
該酵素が、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コリンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼよりなる群から選ばれる、請求項7記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項9】
該基質または反応メディエーターが、4−アミノフェニルホスファート、1−ナフチルホスファート、グルコース−6−ホスファート、4−ヒドロキシナフチル−12−ホスファート、3−インドキシルホスファート、フェニルホスファート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファートエステル、6−(N−フェロセノイルアミノ)−2,4−ジメチルフェニルホスファート、パラセタモール(paracetamol)ホスファート、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、ヒドロキノン、NADおよびグルコース−6−ホスファート、アセチルチオコリンヨージド、4−アミノフェニル−ベータ−D−ガラクトピラノシド(PAPG)、グルコースおよびコリンよりなる群から選ばれ、
電気化学的に検出可能な種が、1−ナフトールおよびベンゾキノンよりなる群から選ばれる、請求項8記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項10】
電気化学的シグナル成分が該スペーサーに共有結合しており、
検出すべきリガンドまたは検出すべきリガンドに関する標的化要素が該連結成分を介して該担体に共有結合している、請求項2記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項11】
検出すべきリガンドに関する標的化要素が、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、受容体分子、レクチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびビオチンよりなる群から選ばれる、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項12】
該リガンドが、抗原、ハプテン、遺伝子プローブ、オリゴ−またはポリヌクレオチド、単糖、オリゴ糖または多糖、ホルモン、薬理学的物質、ペプチド、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、増殖因子およびタンパク質よりなる群から選ばれる、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項13】
該リガンドが、細菌またはウイルス抗原、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、ろ胞刺激ホルモン、コルチゾン、T3、T4、乱用の薬物、トロポニンI、トロポニンT、高感受性C反応性タンパク質(hsCRP)、CK−MB、ミオグロブリン、NT−プロBNP、B型ナトリウム利尿性ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)およびアルファ−フェトプロテイン(AFP)よりなる群から選ばれる、請求項1記載の水溶性コンジュゲート。
【請求項14】
少なくとも1つの連結成分を含有する担体成分を少なくとも1つの電気化学的シグナル成分と接触させて、水溶性中間体コンジュゲートを形成させ、
該水溶性中間体コンジュゲートを、リガンドまたは検出すべきリガンドに関する標的化要素と接触させて、水溶性コンジュゲートを形成させることを含んでなる、水溶性コンジュゲートの製造方法。
【請求項15】
担体成分:電気化学的シグナル成分のモル比が1:10またはそれ以上である、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
該担体成分がデキストランであり、該電気化学的シグナル成分がホースラディッシュペルオキシダーゼである、請求項14記載の製造方法。
【請求項17】
該水溶性中間体コンジュゲートを該標的化要素と接触させて該水溶性コンジュゲートを形成させる工程が、沈殿物の形態で形成される水溶性コンジュゲートを与える、請求項14記載の製造方法。
【請求項18】
該水溶性コンジュゲートを形成させた後、該沈殿物を音波処理に付すことを更に含む、請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
該担体が、デキストラン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、セルロース、天然ゴムおよびそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項14記載の製造方法。
【請求項20】
該連結成分がジビニルスルホンである、請求項14記載の製造方法。
【請求項21】
該電気化学的シグナル成分が、基質または反応メディエーターを、電気化学的に検出可能な種に変換する酵素である、請求項14記載の製造方法。
【請求項22】
該酵素が、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コリンオキシダーゼ、カタラーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼよりなる群から選ばれる、請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
該基質または反応メディエーターが、4−アミノフェニルホスファート、1−ナフチルホスファート、グルコース−6−ホスファート、4−ヒドロキシナフチル−12−ホスファート、3−インドキシルホスファート、フェニルホスファート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファートエステル、6−(N−フェロセノイルアミノ)−2,4−ジメチルフェニルホスファート、パラセタモール(paracetamol)ホスファート、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、ヒドロキノン、NADおよびグルコース−6−ホスファート、アセチルチオコリンヨージド、4−アミノフェニル−ベータ−D−ガラクトピラノシド(PAPG)、グルコース、コリン、フェロセンおよびフェリシアニドよりなる群から選ばれ、
電気化学的に検出可能な種が、4−アミノフェノール、1−ナフトール、ベンゾキノン、フェリシアニドおよびチオコリンよりなる群から選ばれる、請求項22記載の製造方法。
【請求項24】
検出すべきリガンドに関する標的化要素が、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、受容体分子、レクチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびビオチンよりなる群から選ばれる、請求項14記載の製造方法。
【請求項25】
該リガンドが、抗原、ハプテン、遺伝子プローブ、オリゴ−またはポリヌクレオチド、単糖、オリゴ糖または多糖、ホルモン、薬理学的物質、ペプチド、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、増殖因子、タンパク質またはそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項14記載の製造方法。
【請求項26】
検出すべきアナライトに対する特異的結合性分子で被覆された表面をサンプルと接触させること、
検出すべきアナライトに対する特異的結合性分子で被覆された表面を、
少なくとも1つの担体成分、
少なくとも1つの連結成分、
該担体成分に共有結合した少なくとも1つの電気化学的シグナル酵素、
検出すべきアナライトに関する少なくとも1つの標的化要素
を含む水溶性コンジュゲートと接触させること、
該表面上に被覆された該特異的結合性分子、該アナライトおよび該水溶性コンジュゲートの結合性複合体を形成させること、
該結合性複合体を、該電気化学的シグナル酵素の基質と接触させて産物溶液を形成させること、
サンプル中のアナライトの存在または非存在を決定すること
を含んでなる、サンプル中のアナライトの存在または量の検出方法。
【請求項27】
該特異的結合性分子が抗体またはそのフラグメントであり、
該電気化学的シグナル酵素が、アルカリホスファターゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼよりなる群から選ばれ、
該基質が、1−ナフチルホスファートおよびヒドロキノンよりなる群から選ばれる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
該表面が磁気ビーズである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該産物溶液を電極と接触させることを更に含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該表面が電極である、請求項27記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−530639(P2009−530639A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501392(P2009−501392)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/010406
【国際公開番号】WO2007/123507
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)