説明

電気化学組成物とその関連技術

【課題】電気化学的な酸化還元反応において使用される第1物質と金属成分または金属酸化物成分とを含んでいる組成物を提供する。
【解決手段】第1物質は一般組成式MXOで表されるが、この場合、Mの代表例としてはアルカリ金属元素を、Mの代表例としては遷移金属元素を挙げることができ、Xは燐を、Oは酸素を表しており、xは0.6から1.4までの範囲の数であり、yは0.6から1.4までの範囲の数である。更に、金属成分または金属酸化物成分は、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、および、上記各種合金の酸化物から構成されるグループから選択された少なくとも2種類の物質を含んでおり、斯かる少なくとも2種類の物質は相互に異なる金属元素を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年3月19日出願の米国特許仮出願連続番号61/161,408号の優先権を主張するものである。上記特許出願の全体は、ここに引例に挙げることにより本件に編入されて本願明細書の一部を構成しているものとする。
本発明は電気化学的酸化還元反応において使用される組成物に関するものであるとともに、かかる組成物を含有する電池に関連している。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルまたは電池などのような多様な電気化学応用例および電気化学装置は、電気化学的な酸化還元作用を示す組成物、電気化学的な酸化還元反応に関与し得る組成物、または、その両方を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
再充電可能なリチウム電池は当該技術では電力供給源として広く使用されており、当該産業で注目されている。典型的には、リチウム電池にはリチウムイオン電解液、陽極としての固体還元剤、陰極としての固体酸化物が含まれている。陰極素材に含まれている多様な固体組成物がリチウム電池の導電率と容量に影響を与えることが分かっている。
【0004】
従って、電気化学的な酸化還元反応に使用するのに好適で尚且つ電池の陰極素材として役立つ組成物の開発が広く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電池の陰極素材として作用する組成物を提案している。本発明の組成物を含有して形成される電池の性能は、従来の電池に比べて、物理特性と電気特性の点でより優れている。
【0006】
本発明は、電気化学的な酸化還元反応において使用される組成物を提案している。斯かる組成物は第1物質と、金属成分または金属酸化物成分を含んでいる。第1物質は一般組成式 M1xM2yXO4で表されるが、この場合、M1 はアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、硼素、および、アルミニウムから選択される少なくとも1種類の元素を表しており、M2 は遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、硼素、アルミニウム、珪素、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、アンチモン、および、ビスマスから選択される少なくとも1種類の元素を表しており、X は燐、砒素、珪素、および、硫黄から選択される少なくとも1種類の元素を表しており、O は酸素を表しており、x は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表しており、y は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表している。更に、金属成分または金属酸化物成分は、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、および、上記各種合金の酸化物から構成されるグループから選択された少なくとも2種類の物質を含んでおり、斯かる少なくとも2種類の物質は相互に異なる金属元素を含んでいる。.更に、第1物質と金属成分または金属酸化物成分とは共結晶化しているか、または、物理的に結合されており、金属成分または金属酸化物成分は組成物の約30%未満を占めている。
【0007】
本発明においては、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、および、上記各種合金の酸化物から構成されるグループから選択された少なくとも2種類の物質は従来公知の組成物に添加され、その混合物は加熱により結晶質の形態を取るようになり、電池の導電率と容量を効果的に向上させることができる。よって、本発明の組成物を含有している電池の性能は高く、先行技術を凌ぐ利点を達成している。
【0008】
本発明の上記目的、特長、利点と、上記以外の目的、特長、利点を理解することができるようにするために、図面を添付した好ましい実施例を後段で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の LixFeyPO4.z(V2O3/MoO2)/C を陰極素材として含有している電池の充電・放電を例示した図である。
【図2】本発明の LixFeyPO4.z(V2O3/Sn)/C を陰極素材として含有している電池の充電・放電を例示した図である。
【図3】本発明の LixFeyPO4.z(V2O3/TiO2)/C を陰極素材として含有している電池の充電・放電を例示した図である。
【図4】本発明の LixFeyPO4.z(V2O3/Al2O3)/C を陰極素材として含有している電池の充電・放電を例示した図である。
【図5】本発明の LixFeyPO4.z(V2O3/MgO)/C を陰極素材として含有している電池の充電・放電を例示した図である。
【図6】本発明の LixFeyPO4.z(V2O3/Co3O4)/C を陰極素材として含有している電池の充電・放電を例示した図である。
【図7】LixFeyPO4/C を陰極素材として含有している先行技術の電池の充電・放電を例示した図である。
【図8】LixFeyPO4.zV2O3/C を陰極素材として含有している先行技術の電池の充電・放電を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電気化学的な酸化還元反応において使用される組成物を説明してゆく。斯かる組成物は第1物質を含有しており、第1物質は以下の概略的な組成式(1)によって表される。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)において、M1 はアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、硼素、および、アルミニウムから選択された少なくとも1種類の元素を表している。一般に、「アルカリ金属元素」という語は周期表の IA 族の各種金属のうちのいずれかに言及したものであり、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、および、フランシウムのいずれかを指している。一実施例においては、M1は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのうちのいずれかのアルカリ金属元素を表している。好適なアルカリ金属元素の一例はリチウムである。M1 の代表例としてリチウムを挙げることができ尚且つそれを含有する組成物がリチウム電池の陰極素材として作用する以下に示す幾つかの実施例は具体例として提示されているに過ぎず、本発明を限定するものと解釈するべきではない。
【0013】
組成式(1)においては、M2 は遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、硼素、アルミニウム、珪素、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、アンチモン、および、ビスマスから選択される少なくとも1種類の元素を表している。一般に、「遷移金属元素」という語は原子番号21から29までの元素(スカンジウムから銅までの1行目の遷移金属元素)、原子番号39から47までの元素(イットリウムから銀までの2行目の遷移金属元素)、および、原子番号57から79までの元素(ランタンから金までの3行目の遷移金属元素)のうちのいずれかを指している。一実施例においては、M2 は、例えば、1行目の遷移金属元素を指している。1行目の遷移金属元素の好適な一例としては、鉄が挙げられる。
【0014】
組成式(1)において、X は燐、砒素、珪素、および、硫黄から選択される少なくとも1種類の元素を表している。一実施例においては、X はその具体例として燐または砒素を挙げることができる。更に、O は酸素を表している。
【0015】
組成式(1)において、x は 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表している (0.6 ≦ x ≦1.4) 。或る実施例では、x は 例えば0.8 から約 1.2 までを含むいずれかの数を表している (0.8 ≦ x ≦1.2) 。また別な実施例では、x は 例えば0.9 から約 1.1 までを含むいずれかの数を表している (0.9 ≦ x ≦1.1) 。
【0016】
組成式(1)において、y は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表している(0.6 ≦ y ≦1.4) 。また別な実施例では、y は例えば約 0.8 から約 1.2 までを含むいずれかの数を表している(0.8 ≦ y ≦1.2) 。また別な実施例では、y は例えば約 0.9 から約 1.1 までを含むいずれかの数を表している(0.9 ≦ y ≦1.1) 。
【0017】
電気化学的な酸化還元反応において使用される組成物は金属成分または金属酸化物成分を更に含んでいる。斯かる金属成分または金属酸化物成分は、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、および、上記各種合金の酸化物から構成されるグループから選択された少なくとも2種類の物質を含んでおり、その場合、斯かる少なくとも2種類の物質は相互に異なる金属元素を含んでいる。一般に、「半金属元素」という語は、導電帯と価電子帯のエネルギー帯が僅かに重畳する元素のいずれか、例えば、砒素、アンチモン、ビスマスなどのうちのいずれかを指している。「IIA 族元素」という語はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、または、ラジウムを指している。「IIIA 族元素」という語は硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、または、タリウムを指している。「IVA 族元素」という語は炭素、珪素、ゲルマニウム、錫、または、鉛を指している。
【0018】
一実施例においては、金属成分または金属酸化物成分という場合は2種類の物質Aおよび物質Bが結合した形態(A/Bと表示する)も含んでおり、物質Aおよび物質Bはそれぞれに、遷移金属元素、半金属元素、IIA 族元素、IIIA 族元素、IVA 族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、および、上記各種合金の酸化物などから構成されたグループから選択される。換言すると、A/Bの具体例としては M3aOb /M4cOd 、M3aOb /M4 、M3/M4 、M5eM6fOg/M5hM7iOj 、 M5eM6fOg/M5 、M5eM6fOg/M5M7 、または、M5M6/M5M7、が挙げられるが、その場合、M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7 は互いに異なっており、a 、b 、c 、d 、e 、f 、g 、h 、i 、および、j はいずれも整数である。M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7 はそれぞれに、遷移金属元素、半金属元素、IIA 族元素、IIIA 族元素、IVA 族元素、および、上記各種元素の合金から構成されたグループから選択されている。M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7 はそれぞれに、例えば、遷移金属元素のうち周期表1行目の各元素、周期表2行目の遷移金属元素、IIA 族元素、IIIA 族元素、IVA 族元素などから構成されるグループから選択されるのが好ましい。 M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7は各々がコバルト、モリブデン、チタン、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、錫、ビスマス、亜鉛、バナジウムなどのうちいずれかを表しているのが更に好ましい。
【0019】
本発明を例示するにあたり提示される実施例においては、金属成分または金属酸化物成分は、遷移金属元素、半金属元素、IIA 族元素、IIIA 族元素、IVA 族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、上記各種合金の酸化物など(これらに限定されないが)から構成されたグループから選択される2種類の物質を含んでいる。金属成分または金属酸化物成分は遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIA族元素、IVA族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、上記各種合金の酸化物などから構成されたグループから選択される3種類以上の物質を含んでいる場合もあることが当業者には分かる。
【0020】
本発明において、電気化学的な酸化還元反応に使用される組成物は第1物質と金属成分または金属酸化物成分とを含んでいる。第1物質と金属成分または金属酸化物成分とは共結晶化されるか(符号「・」で示されている)、または、物理的に結合される(符号「/」で示されている)。更に、金属成分または金属酸化物成分は斯かる組成物の約30%未満を占めている。組成物の比表面積は約30 m2/g未満である。組成物の導電率は約 10-8 S/cmよりも高い。組成物の一次分子寸法および二次分子寸法はそれぞれ約 65 μm よりも小さい。
【0021】
本発明の組成物は炭素を更に含んでいるようにしてもよい。組成物の表面の炭素皮膜は導電率を向上させるのに有用である。 炭素供給源は、炭素骨格、炭素骨格を有している低重合体、含水炭素、芳香族炭化水素、天然グラファイト、人工グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、コークス、石油コークスなどを含有している重合体から構成されたグループから選択されている。特に、炭素の前駆物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、グルコース、フルクトース、ショ糖、キシロース、ソルボース、澱粉、セルロース、エチレンと酸化エチレンのブロック重合体、フルフリルアルコールと犠牲炭素の重合体などから構成されたグループから選択される。炭素の粒子寸法は約15マイクロメートル未満であるのが好ましい。
【0022】
幾つかの合成物質の具体例とそれらの比較例を以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
12,000 g の水、5,740 g の亜燐酸、および、2,740 g の鉄粉 (M2 = Fe) を連続して反応槽に投入し、15 時間乃至 30 時間攪拌した。その後、35 g の V2O3(物質Aとして作用する)を添加し、それらの混合物を4時間乃至8時間攪拌した。その後で、フルクトースと脱イオン水の総重量にして3600 g 分を上記混合物に加えた。更に、反応スラリーを練り装置によって 1 時間乃至 3 時間練った後で、2100 g の LiOH.H2O (M1 = Li) を加えた。更に、Li 、Fe 、P 、V2O3 、および、MoO2 のモル比が 1.02 : 1 : 1.01 : 0.0075 : 0.0075 となるように MoO2(物質Bとして作用する)を添加した。前駆物質スラリーが完成した後、噴霧乾燥プロセスを施して前駆体乾燥粉末を得た。前駆体乾燥粉末を酸化アルミニウムの坩堝に投入してから高温炉内で加熱処理を施したが、その場合、7-18℃/分の加熱速度で 500-900℃ まで温度上昇させ、不活性大気中で 5 時間乃至 10 時間に亘り温度を 500-900℃ に維持した。炉内で、炭素粉末を不活性キャリアガス中に懸濁させてから前駆体乾燥粉末と混合し、結晶質のLixFeyPO4.z(V2O3/MoO2)/C 組成物を生成し、斯かる組成中の x 、y 、および、z の値はそれぞれ順に 1.060 、0.992 、および、0.075 であったが、 x 、y 、および、z の値はICP(誘電結合プラズマ)を利用した元素解析で測定されたものであった。
【実施例2】
【0024】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1の MoO2 を錫と置換えた。これにより、LixFeyPO4.z(V2O3/Sn)/C の組成物が得られたが、この場合、x 、y 、および、z はそれぞれ順に 1.002 、0.976 、および、0.075であった。
【実施例3】
【0025】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1の MoO2 を TiO2 と置換えた。これにより、LixFeyPO4.z(V2O3/TiO2)/C の組成物が得られたが、この場合、x 、y 、および、z はそれぞれ順に 1.002 、0.978 、および、0.075であった。
【実施例4】
【0026】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1の MoO2 を Al2O3 と置換えた。これにより、LixFeyPO4.z(V2O3/ Al2O3)/C の組成物が得られたが、この場合、x 、y 、および、z はそれぞれ順に 1.003 、0.981 、および、0.075であった。
【実施例5】
【0027】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1の MoO2 をMgO と置換えた。これにより、LixFeyPO4.z(V2O3/ MgO)/C の組成物が得られたが、この場合、x 、y 、および、z はそれぞれ順に 1.058 、0.976 、および、0.075であった。
【実施例6】
【0028】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1の MoO2 をCo3O4 と置換えた。これにより、LixFeyPO4.z(V2O3/ Co3O4)/C の組成物が得られたが、この場合、x 、y 、および、z はそれぞれ順に 1.079 、0.973 、および、0.075であった。
[比較例1]
【0029】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1のV2O3および MoO2 は使用しなかった。これにより、LixFeyPO4/C の組成物が得られたが、この場合、x およびy はそれぞれ 1.136 および 0.921 であった。
[比較例2]
【0030】
実施例1における処置と同じ処置により組成物を準備したが、実施例1の MoO2 は使用しなかった。これにより、LixFeyPO4.zV2O3/C の組成物が得られたが、この場合、x 、y、および、z はそれぞれ順に 1.017、0.990、および、0.075 であった。
【0031】
実施例1から実施例6の各組成物の物理的特性および比較例1および比較例1の各組成物の物理的特性を表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
該組成物の粒子寸法 D50 の許容範囲は 0.2-30 umであり、組成物の粒子寸法 D95の許容範囲は 1-65 um である。これに加えて、該組成物のBET 比表面積の許容範囲は 5-25 m2/g である。図1に例示されているように、実施例1から実施例6と比較例1および比較例2は粒子寸法 D50 および D95 ならびに BET 比表面積に関しては許容範囲内にある。実施例1から実施例6の各々の錠剤密度 Dtは 比較例1および比較例2のそれぞれの錠剤密度よりも高い点に留意するべきである。該組成物がリチウム電池の陰極素材として使用される場合、錠剤密度が高くなるほどリチウム電池の容量も大きくなる。従って、実施例1から実施例6の組成物は各々がリチウム電池の陰極素材としては、比較例1および比較例2の先行技術の各組成物よりも好適である。
【0034】
実施例1から実施例6の組成物と比較例1および比較例2の組成物は各々がリチウム電池の陰極を形成する目的で適用されており、斯様に形成されたリチウム電池は電気化学試験を受けることになる。詳述すると、実施例1から実施例6の組成物と比較例1および比較例2の組成物を個別に含有しているリチウム電池は、容量を測定するのに第1サイクルで 0.1C の速度で充放電されてから第2サイクルで 2C の速度で充放電される。試験は CC(充電電流)= 0.1C、CV(充電電圧)= 4.2 V、および、限流値 = 0.02 C の条件で実施される。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に例示されているように、陰極素材として実施例2の LiFePO4.z(V2O3/Sn)]/C を含有しているリチウム電池の容量は 2C の放電速度では 141 mAh/g であるが(図2に例示されているように)、この容量は同じ 2C の放電速度で比べた場合、比較例1の LiFePO4/C を含有している先行技術のリチウム電池の容量(113 mAh/g、図7に例示のとおり)と比較例2の LiFePO4.zV2O3/C を含有している先行技術のリチウム電池の容量(125 mAh/g、図8に例示のとおり)のいずれよりも格段に高くなっている。更に、実施例3の LiFePO4.z(V2O3/TiO2)]/C を含有しているリチウム電池の容量(129mAh/g、図3に例示のとおり)も、放電速度 2C では先行技術のリチウム電池の容量よりも高い。すなわち、本発明の組成物を含有しているリチウム電池は、電気自動車、電気工具、無停電電源装置などに好適なより良質の電池であると言える。
【0037】
リチウム電池の陰極を形成するのに本発明の組成物を適用した上述の実施例および実施形態は具体例として提示されているのであって、本発明を限定するものと解釈するべきではない。本発明の組成物は上記以外の種類の電池の陰極素材としても利用することができる点を当業者なら認識する。
【0038】
要約すると、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、上記各種元素の合金、上記各種金属元素の酸化物、および、上記各種合金の酸化物から構成されたグループから選択される少なくとも2種類の物質を LixFeyPO4/C などのような従来の陰極素材に添加し、そのような混合物を加熱して結晶質を生成することで、リチウム電池の導電率と容量を効果的に向上させている。
【0039】
好ましい実施例として本発明を開示してきたが、斯かる実施例に限定されるものではない。本発明の真髄および範囲から逸脱せずに幾許かの修正および刷新を図ることができることは、当業者には自明である。よって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の各請求項に規定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的な酸化還元反応において使用される組成物は、
一般組成式 M1xM2yXO4で表される第1物質を含有しており、前記組成式において、
M1 はアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、硼素、および、アルミニウムから選択される少なくとも1種類の元素を表しており、
M2 は遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、硼素、アルミニウム、珪素、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、アンチモン、および、ビスマスから選択される少なくとも1種類の元素を表しており、
X は燐、砒素、珪素、および、硫黄から選択される少なくとも1種類の元素を表しており、
O は酸素を表しており、
x は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表しており、
y は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表しており、
前記組成物は金属成分または金属酸化物成分を更に含有しており、前記金属成分または金属酸化物成分は、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、前記各種元素の合金、前記各種金属元素の酸化物、および、前記各種合金の酸化物から構成されるグループから選択された少なくとも2種類の物質を含んでおり、前記少なくとも2種類の物質は相互に異なる金属元素を含んでおり、
前記第1物質と前記金属成分または金属酸化物成分とは共結晶化しているか、または、物理的に結合されており、金属成分または金属酸化物成分は組成物の約30%未満を占めていることを特長とする組成物。
【請求項2】
前記金属成分または金属酸化物成分の代表例としてはM3aOb /M4cOd 、M3aOb /M4 、M3/M4 、M5eM6fOg/M5hM7iOj 、 M5eM6fOg/M5 、M5eM6fOg/M5M7 、または、M5M6/M5M7が挙げられるが、M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7 は互いに異なっており、a 、b 、c 、d 、e 、f 、g 、h 、i 、および、j はいずれも整数であることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7は各々がコバルト、モリブデン、チタン、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、錫、ビスマス、亜鉛、バナジウムなどのうちいずれかを表していることを特長とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
M1はその代表例としてリチウム、ナトリウム、または、カリウムを挙げることができることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
M2はその代表例として遷移金属元素のうち周期表1行目の各元素を挙げることができることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
Xはその代表例として燐または砒素を挙げることができることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物はその表面に炭素皮膜が更に施されており、炭素供給源は、炭素骨格、炭素骨格を有している低重合体、含水炭素、芳香族炭化水素、天然グラファイト、人工グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、コークス、石油コークスなどを含有している重合体から構成されたグループから選択されていることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の比表面積は約 30 m2/g未満であることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の導電率は約10-8 S/cmよりも大きいことを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の一次分子寸法および二次分子寸法はそれぞれ約 65 μm よりも小さいことを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は電池の陰極素材として使用されることを特長とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
陰極素材として或る組成物を含有している電池において、前記組成物は、
一般組成式 M1xM2yXO4で表される第1物質を含有しており、前記組成式において、
M1 はアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カドミウム、硼素、および、アルミニウムから選択される少なくとも1種類の元素を表しており、
M2 は遷移金属元素、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、硼素、アルミニウム、珪素、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、アンチモン、および、ビスマスから選択される少なくとも1種類の元素を表しており、
X は燐、砒素、珪素、および、硫黄から選択される少なくとも1種類の元素を表しており、
O は酸素を表しており、
x は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表しており、
y は約 0.6 から約 1.4 までを含むいずれかの数を表しており、
前記組成物は金属成分または金属酸化物成分を更に含有しており、前記金属成分または金属酸化物成分は、遷移金属元素、半金属元素、IIA族元素、IIIA族元素、IVA族元素、前記各種元素の合金、前記各種金属元素の酸化物、および、前記各種合金の酸化物から構成されるグループから選択された少なくとも2種類の物質を含んでおり、前記少なくとも2種類の物質は相互に異なる金属元素を含んでおり、
前記第1物質と前記金属成分または金属酸化物成分とは共結晶化しているか、または、物理的に結合されており、金属成分または金属酸化物成分は前記組成物の約30%未満を占めていることを特長とする組成物。
【請求項13】
前記金属成分または金属酸化物成分の代表例としてはM3aOb /M4cOd 、M3aOb /M4 、M3/M4 、M5eM6fOg/M5hM7iOj 、 M5eM6fOg/M5 、M5eM6fOg/M5M7 、または、M5M6/M5M7が挙げられるが、M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7 は互いに異なっており、a 、b 、c 、d 、e 、f 、g 、h 、i 、および、j はいずれも整数であることを特長とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
M3 、M4 、M5 、M6 、および、M7は各々がコバルト、モリブデン、チタン、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、錫、ビスマス、亜鉛、バナジウムのうちいずれかを表していることを特長とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
M1はその代表例としてリチウム、ナトリウム、または、カリウムを挙げることができることを特長とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
M2はその代表例として遷移金属元素のうち周期表1行目の各元素を挙げることができることを特長とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
Xはその代表例として燐または砒素を挙げることができることを特長とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の比表面積は約 30 m2/g未満であることを特長とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物の導電率は約10-8 S/cmよりも大きいことを特長とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の一次分子寸法および二次分子寸法はそれぞれ約 65 μm よりも小さいことを特長とする、請求項12に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−222243(P2010−222243A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−62069(P2010−62069)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(510076018)台灣立凱電能科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】