説明

電気化学表示パネル及びそれを備えた電気化学表示装置

【課題】表示品位に優れた電気化学表示パネルを提供する。
【解決手段】光吸収状態を酸化還元反応によって可逆変化可能な媒体が観察側基板と非観察側基板との間に設けられているアクティブマトリクス方式の電気化学表示パネルであって、画素電極18と、電源バス4と、画素電極18と電源バス4との間の電気的接続/遮断を切り替えるための駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタをオン/オフ制御するためのスイッチングトランジスタとが、前記非観察側基板上に設けられ、電源バス4と前記駆動トランジスタの各電極(GE13,FE13,SE13)及び前記スイッチングトランジスタの各電極(GE12,FE12,SE12)とが異なる層で形成されている電気化学表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元反応を利用した電気化学表示パネル及びそれを備えた電気化学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手し、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、また近年では、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、閲覧者は比較的長時間にわたって閲覧手段を注視する必要がある。一般に発光型ディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間閲覧すると消費電力が嵩む等が知られており、上記のように比較的長時間にわたって閲覧手段を注視する場合、発光型ディスプレイは人間に優しい手段とは言い難い。
【0004】
発光型ディスプレイが有している欠点を解消することができるディスプレイとして、外光を利用し、電力を消費せずに像情報を保持することができるメモリー性反射型ディスプレイが知られているが、メモリー性反射型ディスプレイは下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
反射型液晶ディスプレイ等の偏光板を用いる方式のメモリー性反射型ディスプレイは、反射率が約40%と低いため白表示に難があり、また、構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。
【0006】
また、ポリマー分散型液晶を用いる方式のメモリー性反射型ディスプレイは、高い駆動電圧を必要とし、また、有機物同士の屈性率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。
【0007】
また、ポリマーネットワーク型液晶を用いる方式のメモリー性反射型ディスプレイは、高い駆動電圧が必要であること、メモリー性を向上させるために複雑なTFT(Thin Film Transistor)回路が必要であること等の課題を抱えている。
【0008】
また、電気泳動方式のメモリー性反射型ディスプレイは、10V以上の高い駆動電圧を必要とし、また、電気泳動性粒子の凝集による画質劣化が起こりやすい。
【0009】
上述した各方式のメモリー性反射型ディスプレイの欠点を解消するものとして、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下EDと略す)方式のメモリー性反射型ディスプレイが知られている。ED方式のメモリー性反射型ディスプレイは、(i)3V以下の低電圧で駆動が可能である、(ii)セル構造が簡便である、(iii)表示品位が優れている(明るいペーパーライクな白表示と引き締まった黒表示が可能である)、という特徴を有している。
【0010】
ED方式の表示素子は、図1に示すように上部電極2と下部電極3で電解質1を挟み込んだ構造である。電解質1は、銀イオン、白色顔料、および溶媒を含むものが一般的である。上部電極2は、観察側に配置されるため、ITO(Indium Tin Oxide)電極に代表される透明電極が用いられる。下部電極3は、化学的に安定な金属で構成され、例えば銀電極が用いられる。
【0011】
上部電極2の電位を基準電位として下部電極3に閾値以上のプラスの電圧を印加すると、上部電極2から電子が注入され、銀が上部電極2上に析出する。この状態を観察側からみると、析出銀による黒色が観察される。
【0012】
一方、上部電極2の電位を基準電位として下部電極3に閾値以上のマイナスの電圧を印加すると、上部電極2上に析出していた銀が酸化され、銀イオンになり電解質1中に溶出するため、析出銀による黒色が消失する。この状態を観察側からみると、白色顔料による白色が観察される。
【0013】
したがって、上部電極2と下部電極3の間に印加する電圧の極性を切り替えることで、白色と黒色の表示を可逆的に切り替えることができる。白黒の濃度制御は、上部電極2上に析出させる銀の量を制御することで行う。銀の析出量を制御する方式としては、例えば、上部電極2と下部電極3の間に印加する電圧の値を変化させる方式や一定電圧を上部電極2と下部電極3の間に印加する印加時間を変化させる方式などが考えられる。
【0014】
ここで、後者の方法について図2を参照して説明する。図2は、ED方式の表示素子の上部電極2と下部電極3の間に一定のパルス電圧が印加された場合の、典型的な濃度変化および電流波形を示す図である。濃度ODは時間tに応じて高くなっていき、電流Iはパルス電圧の印加開始直後にピークを持つような波形となる。パルス電圧の印加を途中で止めた場合はその時点の濃度で止まるため、パルス電圧の幅(パルス電圧の印加時間)を制御することで中間調を表示することが可能である。
【0015】
ED方式の表示素子によってディスプレイを構成する場合、アクティブマトリクス方式を利用することができる。ED方式の表示素子によって構成されたアクティブマトリクス方式のディスプレイの構成例を図3に示す。
【0016】
図3に示すディスプレイは、電源バス4と、信号バス5と、走査バス6と、信号バス5に電圧を供給する信号ドライバ7と、走査バス6に電圧を供給する走査ドライバ8と、画像データ等を記憶する記憶部9と、コントローラ10と、ED方式の表示素子11と、スイッチングトランジスタ12と、駆動トランジスタ13とを備えている。コントローラ10は、記憶部9の記憶内容に基づいて、電源バス4に印加する電圧Vddの値と、信号ドライバ7と、走査ドライバ8とを制御する。
【0017】
スイッチングトランジスタ12の第1電極は信号バス5に接続され、スイッチングトランジスタ12の第2電極は駆動トランジスタ13のゲート電極に接続され、スイッチングトランジスタ12のゲート電極が走査バス6に接続される。そして、駆動トランジスタ13の第1電極は電源バス4に接続され、駆動トランジスタ13の第2電極はED方式の表示素子11の下部電極(非観察面側画素電極)に接続される。ED方式の表示素子11の上部電極(観察面側共通電極)にはコモン電圧VCOM(図3においてはグランド電圧)が印加される。
【0018】
ED方式の表示素子11に白表示をさせる場合は、観察面側共通電極上に析出している金属または金属塩を溶解させるために、観察面側共通電極のコモン電圧VCOMを基準電位として非観察面側画素電極に閾値以上のマイナスの電圧が印加されるように、コントローラ10は、電源バス4に印加する電圧Vddの値を制御する。これに対して、ED方式の表示素子11に黒表示をさせる場合は、観察面側共通電極上に金属または金属塩を析出させるために、観察面側共通電極のコモン電圧VCOMを基準電位として非観察面側画素電極に閾値以上のプラスの電圧が印加されるように、コントローラ10は、電源バス4に印加する電圧Vddの値を制御する。
【0019】
全画素を一度白表示の状態にしておき、その後、任意の画素のみを黒表示の状態にすることで、任意の画像を表示することができる。ここで、任意の画像を表示するためには、階調制御が必要となる。階調制御の一例としては、黒描画のときに、電源バス4に印加するパルス電圧の幅(パルス電圧の印加時間)を制御することで中間調を表示する手法が挙げられる。例えば、黒描画期間を複数フレームに分割し、電源バス4にパルス電圧を印加するフレーム数を制御することで階調制御が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2009−217220号公報(段落0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のようにED方式の表示素子は金属または金属塩の溶解析出を利用している。また、ED方式の表示素子では、中間調を表示する場合、観察側の電極上に析出させる金属または金属塩の量を制御して白黒の濃度制御を行うため、ED方式の表示素子に供給される電荷量を精密に制御する必要がある(特許文献1参照)。
【0022】
ところが、ED方式の表示素子がマトリクス状に配置されたディスプレイでは、表示色を変化させる面積が大きくなればなるほど、必要となる電流量が増大していく。そして、表示色を変化させる面積が非常に大きい場合、電流の供給量が不足し、面内表示ムラが生じてしまうといった問題があった。
【0023】
なお、上記の問題は、ED方式の表示素子がマトリクス状に配置されたディスプレイのみならず、酸化還元反応を利用した電気化学表示素子がマトリクス状に配置されたディスプレイ全般に共通するものである。
【0024】
本発明は、上記の状況に鑑み、表示品位に優れた電気化学表示パネル及びそれを備えた電気化学表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために本発明に係る電気化学表示パネルは、光吸収状態を酸化還元反応によって可逆変化可能な媒体が観察側基板と非観察側基板との間に設けられているアクティブマトリクス方式の電気化学表示パネルであって、画素電極と、電源バスと、前記画素電極と前記電源バスとの間の電気的接続/遮断を切り替えるための駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタをオン/オフ制御するためのスイッチングトランジスタとが、前記非観察側基板上に形成され、前記電源バスと前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極とが異なる層で形成されている構成とする。
【0026】
このような構成によると、前記電源バスと前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極とで同一層の領域を分け合うことがないため、前記電極バスの幅が制限されない。これにより、前記電極バスの低抵抗化を図ることができ、優れた表示品位を実現することができる。
【0027】
また、このような構成によると、前記電源バスと前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極とで同一層の領域を分け合うことがないため、前記駆動トランジスタ及び前記スイッチングトランジスタの配置できるスペースが大きくなり、設計マージンを従来よりも広くとることが可能となる。
【0028】
また、前記電極バスの抵抗を従来よりも格段に低くするために、前記電源バスがベタ形状または格子形状であることが好ましい。
【0029】
また、前記電源バスが形成される層が、前記駆動トランジスタ及び前記スイッチングトランジスタが形成される複数の層よりも前記非観察側基板側に位置する場合は、前記電源バスをベタ形状にすることが好ましい。一方、前記駆動トランジスタ及び前記スイッチングトランジスタが形成される複数の層が、前記電源バスが形成される層よりも前記非観察側基板側に位置する場合は、前記電源バスを格子形状にすることが好ましい。
【0030】
また、前記電源バスの材料が、前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極の材料よりも高反射率であることが好ましい。
【0031】
前記電源バスに高反射率の材料を用いることで、前記電源バスを反射板として機能させ、白表示を従来よりも明るくすることができる。一方、前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極に低反射率の材料を用いることで、低コスト化を図ることができる。
【0032】
上記目的を達成するために本発明に係る電気化学表示装置は、上記いずれかの構成の電気化学表示パネルと、その電気化学表示パネルに接続される信号ドライバ及び走査ドライバとを備える構成とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る電気化学表示パネル及びそれを備えた電気化学表示装置によると、電源バスと駆動トランジスタの各電極及びスイッチングトランジスタの各電極とが異なる層で形成されているので、前記電極バスの低抵抗化を図ることができ、優れた表示品位を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ED方式の表示素子の概略構造を示す図である。
【図2】ED方式の表示素子の上部電極と下部電極の間に一定のパルス電圧が印加された場合の、典型的な濃度変化および電流波形を示す図である。
【図3】ED方式の表示素子によって構成されたアクティブマトリクス方式のディスプレイの構成例を示す図である。
【図4】電気化学表示素子の基本構成を示す断面図である。
【図5】参考例1における、非観察側基板上に画素電極を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【図6】参考例2における、非観察側基板上に画素電極を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【図7】第1実施形態における、非観察側基板上に画素電極を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【図8】第2実施形態における、非観察側基板上に画素電極を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【図9】格子形状の電源バスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
まず、参考例と本発明の実施形態とに共通している電気化学表示素子の基本構成について図面を参照して説明する。次に、本発明と比較するために、本発明とは異なる構成例(参考例1および参考例2)について図面を参照して説明する。最後に、本発明の実施形態(第1実施形態および第2実施形態)について図面を参照して説明する。なお、参考例1、参考例2、本発明の第1実施形態、及び本発明の第2実施形態の全てにおいて、電気化学表示パネルおよび電気化学表示装置の各構成は、図3に示す構成と基本的に同一であり、図3中のED方式の表示素子を電気化学表示素子に一般化したものである。したがって、以下の説明においては、図3で用いられている符号を適宜使用する。
【0036】
<電気化学表示素子の基本構成>
図4は、電気化学表示素子の基本構成を示す断面図である。電気化学表示素子は、観察側基板15上に形成される上部電極16と、非観察側基板17上に形成される下部電極18とを対向させ、上部電極16と下部電極18とで電解質14を挟み込んだ構造である。上部電極16は観察側に配置されるため、上部電極16にはITO電極に代表される透明電極が用いられる。下部電極18は化学的に安定な金属で構成される。
【0037】
電解質14は、ECD(Electro-Chromic Display)素子の場合はエレクトロクロミック色素と電解液を含んでおり、ED素子の場合には金属または金属塩(通常、銀または銀を化学構造物中に有する化合物)と電解液とを含んでいる。通常、電解質14は、隔壁部材により画素毎に隔離されている。
【0038】
また、電解質14の電解液中に、白色度を向上させる目的でTiO2等の微粒子を混入させたり、微粒子を水溶性高分子等のバインダーを用いて多孔質化した層を配してもよい。
【0039】
観察側基板15にはガラスやPET(Polyethylene terephthalate)等の透明基板が用いられる。一方、非観察側基板17は、必ずしも透明である必要がないため、ガラスやPET等の透明基板、ステンレスフォイルやポリイミド等の非透明基板のいずれを用いてもよい。
【0040】
以下、電気化学表示素子を構成する各材料の詳細について説明する。
【0041】
〔ECD材料〕
電気化学表示素子をECDで構成する場合、ECD材料としては、エレクトロクロミック色素が用いられる。エレクトロクロミック色素は、電子の供受により光吸収状態を変化させる化合物である。このような化合物としては、有機化合物や金属錯体を使用することが可能である。有機化合物としては、ピリジン化合物や導電性高分子、スチリル化合物を使用することが可能であり、例えば、特開2002−328401号公報に記載の各種ビオロゲン化合物、特表2004−537743号公報に記載の色素、その他知られている色素を用いることができる。ロイコ型色素を用いる場合には、必要に応じて顕色剤あるいは消色剤を併用しても構わない。
【0042】
これらの材料を電極上に直接塗布してもよいし、電子の供受をより効率的に行う目的で、TiO2に代表される酸化物半導体ナノ構造物を電極上に形成し、その上にエレクトロクロミック材料をインクジェット法等の方法により塗布・含浸させた構造としてもよい。
【0043】
〔ED材料〕
電気化学表示素子をEDで構成する場合、ED材料としては、銀または銀を化学構造中に含む化合物が通常用いられる。銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称である。このとき、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0044】
電解質14の電解液に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgよりも少ないと、希薄な銀溶液となって駆動速度が遅延し、逆に、2モル/kgよりも大きいと、溶解性が劣化し、低温保存時に析出が起きやすくなる傾向にあり、不利である。
【0045】
〔電解質〕
「電解質」とは、一般に、水などの溶媒に溶けて、その溶液がイオン伝導性を示す物質のこと(狭義の電解質)を言うが、本明細書では、電解質を含む層全体を指すものとする。つまり、本明細書で言う「電解質」とは、電解質に他の金属や化合物等(電解質、非電解質を問わない)を含有させた混合物(広義の電解質)を指すものとする。
【0046】
電解質14は、有機溶媒、イオン性液体、酸化還元活性物質、支持電解質、錯化剤、白色散乱物、高分子バインダー等を必要に応じて選択して構成されている。
【0047】
また、電解質は、通常、液体電解質と、ポリマー電解質とに分類される。ポリマー電解質は、さらに、実質的に固体化合物からなる固体電解質と、高分子化合物と液体電解質からなるゲル状電解質とに分類される。また、流動性の観点からは、固体電解質は、実質的に流動性がなく、ゲル状電解質は、液体電解質と固体電解質の中間の流動性を有している。
【0048】
本明細書では、ゲル状電解質とは、室温環境下で高粘性を備え、かつ流動性を有する液状電解質をいい、例えば、25℃における粘度が、100mPa・s以上1000mPa・s以下のゲル状または高粘度電解質液を言う。なお、ゲル状電解質は、温度によるゾルゲル変化を生じる特性を必ずしも備えている必要はない。一方、低粘度電解質は、25℃における粘度が、0.1mPa・s以上100mPa・s未満である電解質液をいい、電解質の溶媒に対する高分子バインダーの量が重量比で10%未満であることが好ましい。
【0049】
<参考例1>
次に、参考例1に係る電気化学表示パネルについて説明する。参考例1に係る電気化学表示パネルでは、図5に示す工程によって、電源バス4と、信号バス5と、走査バス6と、電気化学表示素子11の下部電極(画素電極)18(図4参照)と、スイッチングトランジスタ12と、駆動トランジスタ13とが非観察側基板17(図4参照)上に形成される。なお、図5は、非観察側基板17上に画素電極18を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【0050】
電源バス4の材料としては、例えば、Mo/AlNdやMo/Al/TiやAlTi、CrやCu合金等を用いることができる。また、TFTであるスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13の半導体の材料としては、例えば、a−Si、p−Si等のシリコン系やIGZO、ZnO等の金属酸化物系やペンタセン、ポリチオフェン等の有機系等を用いることができる。また、各層の成膜及びパターニングは、真空蒸着(蒸着、スパッタ、CVD)、フォトリソ法、スピンコート、印刷、インクジェットなどの手法を適宜用いて行う。
【0051】
まず、1層目パターン形成工程において、非観察側基板17(図5において不図示)上に、電源バス4と、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを形成する(図5(a)参照)。
【0052】
次の2層目パターン形成工程において、電源バス4と、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面にゲート絶縁膜を形成するとともに、そのゲート絶縁膜にコンタクトホール19a及び19bを形成する(図5(b)参照)。なお、図5(b)では、ゲート絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、ゲート絶縁膜の図示を省略し、ゲート絶縁膜のコンタクトホール19a及び19bの外縁のみを点線で示している。
【0053】
次の3層目パターン形成工程において、ゲート絶縁膜上の所定の位置に、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13とを形成する(図5(c)参照)。
【0054】
次の4層目パターン形成工程において、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを形成する(図5(d))。スイッチングトランジスタ12の第2電極SE12は、コンタクトホール19aを介して、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13(1層目)に電気的に接続される。また、駆動トランジスタ13の第1電極FE13は、コンタクトホール19bを介して、電源バス4(1層目)に電気的に接続される。
【0055】
次の5層目パターン形成工程において、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13と、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面に層間絶縁膜を形成するとともに、層間絶縁膜にコンタクトホール20を形成する(図5(e)参照)。なお、図5(e)では、層間絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、層間絶縁膜の図示を省略し、コンタクトホール20の外縁のみを点線で示している。
【0056】
最後の6層目パターン形成工程において、画素電極18を形成する(図5(f)参照)。画素電極18は、コンタクトホール20を介して、駆動トランジスタ13の第2電極SE13(4層目)に電気的に接続される。
【0057】
参考例1に係る電気化学表示パネルでは、電極バス4とスイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12および駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とが同一層(1層目)にあって、電極バス4とスイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12および駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とで同一層(1層目)の領域を分け合っているため、電極バス4の幅が制限されている。したがって、電極バス4が高抵抗になり、電気化学表示素子に流れ込むまたは電気化学表示素子から流れ出す電流量が不足し、面内表示ムラが生じてしまうおそれがある。
【0058】
また、2層目のゲート絶縁膜はスイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の性能を良くするために薄く形成されている。このため、抵抗を下げるために電源バス4の厚みを厚くした場合、2層目のゲート絶縁膜が電源バス4のエッジ部分で途切れて電源バス4と4層目のパターンとがショートする不具合や、4層目のパターンが電源バス4のエッジ部分で断線する不具合が発生しやすい。
【0059】
<参考例2>
次に、参考例2に係る電気化学表示パネルについて説明する。参考例2に係る電気化学表示パネルでは、図6に示す工程によって、電源バス4と、信号バス5と、走査バス6と、電気化学表示素子11の画素電極18(図4参照)と、スイッチングトランジスタ12と、駆動トランジスタ13とが非観察側基板17(図4参照)上に形成される。なお、図6は、非観察側基板17上に画素電極18を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【0060】
電源バス4の材料としては、例えば、Mo/AlNdやMo/Al/TiやAlTi、CrやCu合金等を用いることができる。また、TFTであるスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13の半導体の材料としては、例えば、a−Si、p−Si等のシリコン系やIGZO、ZnO等の金属酸化物系やペンタセン、ポリチオフェン等の有機系等を用いることができる。また、各層の成膜及びパターニングは、真空蒸着(蒸着、スパッタ、CVD)、フォトリソ法、スピンコート、印刷、インクジェットなどの手法を適宜用いて行う。
【0061】
まず、1層目パターン形成工程において、非観察側基板17(図6において不図示)上に、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを形成する(図6(a)参照)。
【0062】
次の2層目パターン形成工程において、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面にゲート絶縁膜を形成するとともに、そのゲート絶縁膜にコンタクトホール19を形成する(図6(b)参照)。なお、図6(b)では、ゲート絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、ゲート絶縁膜の図示を省略し、ゲート絶縁膜のコンタクトホール19の外縁のみを点線で示している。
【0063】
次の3層目パターン形成工程において、ゲート絶縁膜上の所定の位置に、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13とを形成する(図6(c)参照)。
【0064】
次の4層目パターン形成工程において、電源バス4と、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを形成する(図6(d))。スイッチングトランジスタ12の第2電極SE12は、コンタクトホール19を介して、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13(1層目)に電気的に接続される。
【0065】
次の5層目パターン形成工程において、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13と、電源バス4と、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面に層間絶縁膜を形成するとともに、層間絶縁膜にコンタクトホール20を形成する(図6(e)参照)。なお、図6(e)では、層間絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、層間絶縁膜の図示を省略し、コンタクトホール20の外縁のみを点線で示している。
【0066】
最後の6層目パターン形成工程において、画素電極18を形成する(図6(f)参照)。画素電極18は、コンタクトホール20を介して、駆動トランジスタ13の第2電極SE13(4層目)に電気的に接続される。
【0067】
参考例2に係る電気化学表示パネルでは、電極バス4とスイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12並びに駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とが同一層(4層目)にあって、電極バス4とスイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12並びに駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とで同一層(4層目)の領域を分け合っているため、電極バス4の幅が制限されている。したがって、電極バス4が高抵抗になり、電気化学表示素子に流れ込むまたは電気化学表示素子から流れ出す電流量が不足し、面内表示ムラが生じてしまうおそれがある。
【0068】
また、5層目の層間絶縁膜は、スイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の性能に影響しないため、厚く形成することができる。このため、抵抗を下げるために電源バス4の厚みを厚くした場合でも、参考例1とは異なり、5層目の層間絶縁膜が電源バス4のエッジ部分で途切れて電源バス4と6層目のパターンとがショートする不具合や、6層目のパターンが電源バス4のエッジ部分で断線する不具合を発生しにくくすることができる。しかしながら、電極バス4の幅が制限されていることに変わりはないため、電源バス4の低抵抗化に制限がある。
【0069】
続いて、本発明の構成例(第1実施形態および第2実施形態)について説明する。
【0070】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルについて説明する。本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルでは、図7に示す工程によって、電源バス4と、信号バス5と、走査バス6と、電気化学表示素子11の画素電極18(図4参照)と、スイッチングトランジスタ12と、駆動トランジスタ13とが非観察側基板17(図4参照)上に形成される。なお、図7は、非観察側基板17上に画素電極18を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【0071】
電源バス4の材料としては、例えば、Mo/AlNdやMo/Al/TiやAlTi、CrやCu合金等を用いることができる。また、TFTであるスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13の半導体の材料としては、例えば、a−Si、p−Si等のシリコン系やIGZO、ZnO等の金属酸化物系やペンタセン、ポリチオフェン等の有機系等を用いることができる。また、各層の成膜及びパターニングは、真空蒸着(蒸着、スパッタ、CVD)、フォトリソ法、スピンコート、印刷、インクジェットなどの手法を適宜用いて行う。
【0072】
まず、1層目パターン形成工程において、非観察側基板17(図7において不図示)上の全面に電源バス4を形成する(図7(a)参照)。
【0073】
次の2層目パターン形成工程において、電源バス4を覆うように、非観察側基板17のほぼ全面に第1層間絶縁膜を形成するとともに、その第1層間絶縁膜にコンタクトホール19を形成する(図7(b)参照)。なお、図7(b)では、第1層間絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、第1層間絶縁膜の図示を省略し、第1層間絶縁膜のコンタクトホール19の外縁のみを点線で示している。
【0074】
次の3層目パターン形成工程において、第1層間絶縁膜上の所定の位置に、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを形成する(図7(c)参照)。
【0075】
次の4層目パターン形成工程において、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面にゲート絶縁膜を形成するとともに、そのゲート絶縁膜にコンタクトホール20A及び20Bを形成する(図7(d)参照)。なお、図7(d)では、ゲート絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、ゲート絶縁膜の図示を省略し、ゲート絶縁膜のコンタクトホール20A及び20Bの外縁のみを点線で示している。
【0076】
次の5層目パターン形成工程において、ゲート絶縁膜上の所定の位置に、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13とを形成する(図7(e)参照)。
【0077】
次の6層目パターン形成工程において、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13を形成する(図7(f))。スイッチングトランジスタ12の第2電極SE12は、コンタクトホール20Aを介して、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13(3層目)に電気的に接続される。また、駆動トランジスタ13の第1電極FE13は、コンタクトホール20B及び19を介して、電源バス4(1層目)に電気的に接続される。
【0078】
次の7層目パターン形成工程において、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13と、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面に第2層間絶縁膜を形成するとともに、第2層間絶縁膜にコンタクトホール21を形成する(図7(g)参照)。なお、図7(g)では、第2層間絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、第2層間絶縁膜の図示を省略し、コンタクトホール21の外縁のみを点線で示している。
【0079】
最後の8層目パターン形成工程において、画素電極18を形成する(図7(h)参照)。画素電極18は、コンタクトホール21を介して、駆動トランジスタ13の第2電極SE13(6層目)に電気的に接続される。
【0080】
本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルでは、上述の通り、電源バスが形成される層(1層目)が、TFTであるスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13が形成される複数の層(3〜6層目)よりも非観察側基板17側に位置している。
【0081】
本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルは、電源バス4がベタ形状であるため、電源バス4の抵抗を最も落とすことが可能な構成であり、また、電源バス4の抵抗の面内均一性にも優れた構成である。すなわち、電流の供給量が不足し、面内表示ムラが生じてしまうことを抑制することができる表示品位に優れた構成である。
【0082】
また、電源バス4とスイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の電極とが同一層に形成されないので、電源バス4の抵抗を下げるために電源バス4とともにスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13の電極を厚くする必要がないため、3層目(図7(c)参照)や6層目(図7(f)参照)での段差が小さく不良が発生しにくい。
【0083】
また、電極バス4とスイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の電極とで同一層の領域を分け合うことがないため、スイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の配置できるスペースが大きくなり、設計マージンを従来よりも広くとることが可能となる。これにより、例えば、コンタクトホールを従来よりも大きくすることでき、コンタクト不良を低減することができる。
【0084】
また、電源バス4の材料に高反射のメタルを用いると、パネルのほぼ全面にわたって反射板として機能するので、白表示を従来よりも明るくすることができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電気化学表示パネルについて説明する。本発明の第2実施形態に係る電気化学表示パネルでは、図8に示す工程によって、電源バス4と、信号バス5と、走査バス6と、電気化学表示素子11の画素電極18(図4参照)と、スイッチングトランジスタ12と、駆動トランジスタ13とが非観察側基板17(図4参照)上に形成される。なお、図8は、非観察側基板17上に画素電極18を形成するまでの各工程を示す1画素分の平面図である。
【0086】
電源バス4の材料としては、例えば、Mo/AlNdやMo/Al/TiやAlTi、CrやCu合金等を用いることができる。また、TFTであるスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13の半導体の材料としては、例えば、a−Si、p−Si等のシリコン系やIGZO、ZnO等の金属酸化物系やペンタセン、ポリチオフェン等の有機系等を用いることができる。また、各層の成膜及びパターニングは、真空蒸着(蒸着、スパッタ、CVD)、フォトリソ法、スピンコート、印刷、インクジェットなどの手法を適宜用いて行う。
【0087】
まず、1層目パターン形成工程において、非観察側基板17(図8において不図示)上に、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを形成する(図8(a)参照)。
【0088】
次の2層目パターン形成工程において、走査バス6と、スイッチングトランジスタ12のゲート電極GE12と、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面にゲート絶縁膜を形成するとともに、そのゲート絶縁膜にコンタクトホール19を形成する(図8(b)参照)。なお、図8(b)では、ゲート絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、ゲート絶縁膜の図示を省略し、ゲート絶縁膜のコンタクトホール19の外縁のみを点線で示している。
【0089】
次の3層目パターン形成工程において、ゲート絶縁膜上の所定の位置に、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13とを形成する(図8(c)参照)。
【0090】
次の4層目パターン形成工程において、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを形成する(図8(d))。スイッチングトランジスタ12の第2電極SE12は、コンタクトホール19を介して、駆動トランジスタ13のゲート電極GE13(1層目)に電気的に接続される。
【0091】
次の5層目パターン形成工程において、スイッチングトランジスタ12の半導体S12と、駆動トランジスタ13の半導体S13と、信号バス5と、スイッチングトランジスタ12の第1電極FE12及び第2電極SE12と、駆動トランジスタ13の第1電極FE13及び第2電極SE13とを覆うように、非観察側基板17のほぼ全面に第1層間絶縁膜を形成するとともに、その第1層間絶縁膜にコンタクトホール20a及び20bを形成する(図8(e)参照)。なお、図8(e)では、第1層間絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、第1層間絶縁膜の図示を省略し、第1層間絶縁膜のコンタクトホール20a及び20bの外縁のみを点線で示している。
【0092】
次の6層目パターン形成工程において、非観察側基板17(図8において不図示)上の全面に格子形状の電源バス4を形成する(図8(f)参照)。例えば、便宜上3×3のマトリクスを考えた場合、電源バス4の全体形状は図9に示すようになる。電源バス4は、コンタクトホール20aを介して、駆動トランジスタ13の第1電極FE13(4層目)に電気的に接続される。
【0093】
次の7層目パターン形成工程において、電源バス4を覆うように、非観察側基板17のほぼ全面に第2層間絶縁膜を形成するとともに、第2層間絶縁膜にコンタクトホール21を形成する(図8(g)参照)。なお、図8(g)では、第2層間絶縁膜を図示すると、層の上下関係を示す図示が複雑化するため、便宜上、第2層間絶縁膜の図示を省略し、コンタクトホール21の外縁のみを点線で示している。
【0094】
最後の8層目パターン形成工程において、画素電極18を形成する(図8(h)参照)。画素電極18は、コンタクトホール21及び20bを介して、駆動トランジスタ13の第2電極SE13(4層目)に電気的に接続される。
【0095】
本発明の第2実施形態に係る電気化学表示パネルでは、上述の通り、TFTであるスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13が形成される複数の層(1〜4層目)が、電源バスが形成される層(6層目)よりも非観察側基板17側に位置している。
【0096】
本発明の第2実施形態に係る電気化学表示パネルは、電源バス4がベタ形状に近い格子形状であるため、電源バス4の抵抗を落とすことが可能な構成であり、また、電源バス4の抵抗の面内均一性にも優れた構成である。すなわち、電流の供給量が不足し、面内表示ムラが生じてしまうことを抑制することができる表示品位に優れた構成である。
【0097】
また、電源バス4とスイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の電極とが同一層に形成されないので、電源バス4の抵抗を下げるために電源バス4とともにスイッチングトランジスタ12及び駆動トランジスタ13の電極を厚くする必要がないため、1層目(図8(a)参照)や4層目(図8(d)参照)での段差が小さく不良が発生しにくい。
【0098】
また、電極バス4とスイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の電極とで同一層の領域を分け合うことがないため、スイッチングトランジスタ12および駆動トランジスタ13の配置できるスペースが大きくなり、設計マージンを従来よりも広くとることが可能となる。これにより、例えば、コンタクトホールを従来よりも大きくすることでき、コンタクト不良を低減することができる。
【0099】
また、電源バス4の材料に高反射のメタルを用いると、パネルのほぼ全面にわたって反射板として機能するので、白表示を従来よりも明るくすることができる。さらに、本発明の第2実施形態に係る電気化学表示パネルは、本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルよりも電源バス4が電解質側にあるため、本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルに比べて白表示を明るくすることができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明の第1実施形態に係る電気化学表示パネルの非観察側基板17上に画素電極18を形成するまでの各工程について具体的な実施例(実施例1)及び本発明の第2実施形態に係る電気化学表示パネルの非観察側基板17上に画素電極18を形成するまでの各工程について具体的な実施例(実施例2)を順に説明する。なお、本発明は上述した実施形態及び以下の実施例に限定されない。
【0101】
<実施例1>
1)非観察側基板17に厚さ0.7mmの無アルカリガラスを用いた。
2)1層目パターン形成工程において、膜厚1μmの導電膜(Mo/Al/Mo)を真空スパッタで成膜した。
3)2層目パターン形成工程において、膜厚200nmの絶縁膜(SiO2)をプラズマCVDで成膜し、フォトリソ法(フォトレジスト成膜、露光、現像、エッチング、レジスト剥離)でその絶縁膜をパターンニングした。
4)3層目パターン形成工程において、膜厚200nmの導電膜(Cr)を真空スパッタで成膜し、フォトリソ法でその導電膜をパターンニングした。
5)4,5層目パターン形成工程において、膜厚200nmの絶縁膜(SiO2)膜厚200nmの半導体膜(a−Si膜、n+a−Si膜)をプラズマCVDで連続成膜し、フォトリソ法でその絶縁膜及び半導体膜をパターンニングした。
6)6層目パターン形成工程において、膜厚200nmの導電膜(Cr)を真空スパッタで成膜し、フォトリソ法でその導電膜をパターンニングした。
7)7層目パターン形成工程において、膜厚200nmの絶縁膜(SiO2)をプラズマCVDで成膜し、フォトリソ法でその絶縁膜をパターンニングした。
8)8層目パターン形成工程において、膜厚100nmの導電膜(ITO)を真空スパッタで成膜し、フォトリソ法でその導電膜をパターンニングし、さらに、そのパターンニングした導電膜の上にナノITO粒子の分散液(住友金属鉱山社製)をインクジェットで射出することでITO電極の表面を厚さ1μmの多孔質ITOにした。
【0102】
このアクティブマトリクス基板を用いた11インチの電気化学表示素子を作成したところ、表示ムラがなく、良好な表示特性を示した。
【0103】
<実施例2>
1)非観察側基板17に厚さ0.7mmの無アルカリガラスを用いた。
2)1層目パターン形成工程において、膜厚200nmの導電膜(Cr)を真空スパッタで成膜し、フォトリソ法でその導電膜をパターンニングした。
3)2,3層目パターン形成工程において、膜厚200nmの絶縁膜(SiO2)膜厚200nmの半導体膜(a−Si膜、n+a−Si膜)をプラズマCVDで連続成膜し、フォトリソ法でその絶縁膜及び半導体膜をパターンニングした。
4)4層目パターン形成工程において、膜厚200nmの導電膜(Cr)を真空スパッタで成膜し、フォトリソ法でその導電膜をパターンニングした。
5)5層目パターン形成工程において、膜厚200nmの絶縁膜(SiO2)をプラズマCVDで成膜し、フォトリソ法でその絶縁膜をパターンニングした。
6)6層目パターン形成工程において、膜厚1μmの導電膜(AlNd)を真空スパッタで成膜した。
7)7層目パターン形成工程において、膜厚2μmの絶縁膜(感光性アクリル樹脂:JSR社製)をスピンコートで成膜し、露光現像することでその絶縁膜をパターニングした。
8)8層目パターン形成工程において、膜厚100nmの導電膜(ITO)を真空スパッタで成膜し、フォトリソ法でその導電膜をパターンニングし、さらに、そのパターンニングした導電膜の上にナノITO粒子の分散液(住友金属鉱山社製)をインクジェットで射出することでITO電極の表面を厚さ1μmの多孔質ITOにした。
【0104】
6層目の導電膜(電源バス4)が厚いので、7層目の絶縁膜(第2層間絶縁膜)が薄いと6層目の導電膜の段差部をカバーできずに6層目の導電膜(電源バス4)と8層目の導電膜(画素電極18)とがショートしてしまう。このため、7層目の絶縁膜は厚膜にしている。また、ここで用いた厚膜の絶縁膜は、パターンエッジがなだらか(順テーパー)になるため、8層目の導電膜(画素電極18)がコンタクトホール部で断線しにくい。
【0105】
このアクティブマトリクス基板を用いた11インチの電気化学表示素子を作成したところ、表示ムラがなく、良好な表示特性を示した。
【符号の説明】
【0106】
1、14 電解質
2、16 上部電極
3、18 下部電極
4 電源バス
5 信号バス
6 走査バス
7 信号ドライバ
8 走査ドライバ
9 記憶部
10 コントローラ
11 ED方式の表示素子
12 スイッチングトランジスタ
13 駆動トランジスタ
15 観察側基板
17 非観察側基板
19、19a、20、20a、20b、21 コンタクトホール
FE12、FE13 第1電極
GE12、GE13 ゲート電極
S12、S13 半導体
SE12、SE13 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収状態を酸化還元反応によって可逆変化可能な媒体が観察側基板と非観察側基板との間に設けられているアクティブマトリクス方式の電気化学表示パネルであって、
画素電極と、
電源バスと、
前記画素電極と前記電源バスとの間の電気的接続/遮断を切り替えるための駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタをオン/オフ制御するためのスイッチングトランジスタとが、前記非観察側基板上に形成され、
前記電源バスと前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極とが異なる層で形成されていることを特徴とする電気化学表示パネル。
【請求項2】
前記電源バスがベタ形状または格子形状である請求項1に記載の電気化学表示パネル。
【請求項3】
前記電源バスがベタ形状であって、
前記電源バスが形成される層が、前記駆動トランジスタ及び前記スイッチングトランジスタが形成される複数の層よりも前記非観察側基板側に位置している請求項2に記載の電気化学表示パネル。
【請求項4】
前記電源バスが格子形状であって、
前記駆動トランジスタ及び前記スイッチングトランジスタが形成される複数の層が、前記電源バスが形成される層よりも前記非観察側基板側に位置している請求項2に記載の電気化学表示パネル。
【請求項5】
前記電源バスの材料が、前記駆動トランジスタの各電極及び前記スイッチングトランジスタの各電極の材料よりも高反射率である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学表示パネル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学表示パネルと、
前記電気化学表示パネルに接続される信号ドライバ及び走査ドライバとを備えることを特徴とする電気化学表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−197601(P2011−197601A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67232(P2010−67232)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】