説明

電気器具の端子装置

【課題】ボックス端子の脱落防止と併せて電線の配線作業性改善が図れるように端子カバー,およびその取付け構造を改良した電気器具の端子装置を提供する。
【解決手段】左右を相間隔壁11で仕切った本体ケース1の端子台12に端子板2,該端子板に接続する電線を差し込み締結するネジ付きボックス端子3、および端子台の前面,上面を覆うモールド樹脂製の端子カバー4を装備した電気器具の端子装置において、前記端子カバーの前壁の裏側に、該壁に開口した電線挿入孔45に合わせてボックス端子を所定位置に嵌合保持する端子保持枠44を一体成型して設け、また端子カバーの下端には係合爪47を設け、装着位置で本体ケースの係合溝14に掛止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁開閉器,あるいは電磁開閉器に付属して使用する補助継電器(サーマルリレー)などを実施対象とした電気器具の端子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭記の電気器具には電線を配線するための端子装置として、電線の接続形態(圧着端子付き,あるいは素線)に合わせて器具側の端子板に直接螺合した端子ネジ,ないしは端子板に組み合わせて前方から挿入した電線を締結するボックス端子の端子金具を備えた上で、該端子(充電部)の感電防止対策として端子台の前面,上面を覆うように絶縁物(モールド樹脂)製の端子カバーを付設し(例えば、特許文献1参照)、この端子カバーを本体ケースへ着脱可能に係止固定するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−170605号公報
【特許文献2】特開2002−163972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来構造の端子装置は配線作業性の面で次記のような問題点がある。
【0004】
すなわち、特許文献1の図1に開示されている端子構造では、ボックス端子を採用する場合にボックス端子を端子板に別なネジで固定する必要があってその組立作業に手間が掛かる。また、同文献の図8で示すようにボックス端子を端子板に遊嵌保持した構造では、ボックス端子のネジを緩めたまま配線作業の際に端子カバーを取り外すと、電気器具の据付け姿勢(縦向き姿勢)によってはボックス端子が端子板から不測に抜け落ちて脱落するおそれがある。
【0005】
また、前記と同様な配線作業性の問題は、特許文献2に開示されている端子カバー装置においても発生する。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は従来構造による前記問題点を解消し、ボックス端子の脱落防止と併せて配線作業性の改善が図れるように端子カバーおよびその取付け構造を改良した電気器具の端子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、左右を相間隔壁で仕切った本体ケースの端子台に端子板,該端子板に接続する電線を差し込み締結するネジ付きボックス端子、および端子台の前面,上面を覆うモールド樹脂製の逆L字形端子カバーを装備した電気器具の端子装置において、
前記端子カバーの前壁の裏側に、該壁に開口した電線挿入孔に合わせてボックス端子を所定位置に嵌合保持する端子保持枠を一体に成型し(請求項1)、また端子カバーには次記のような構造を付加して構成するものとする。
(1)端子カバーの前壁下端部に、器具本体ケースへの装着位置で該ケースに係止する抜け止め用の係合爪を設ける(請求項2)。
(2)端子カバーの上壁が折り曲げヒンジを介して前壁の上縁に連設した構造とする(請求項3)。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、次記の効果を奏する。すなわち、
(1)端子カバーにボックス端子の保持枠を一体成型し、ここにボックス端子を嵌合保持しておくことにより、配線作業の際に端子カバーを取り外してもボックス端子が不測に脱落して紛失するのを防止できる。
(2)また、端子カバーの下端に係合爪を設け、器具本体ケースへの装着位置で前記係合爪を本体ケース側に掛止させることで、端子カバーをガタつきなしに定位置に安定よく固定することができる。
(3)さらに、端子カバーの上壁は、樹脂の弾性を利用した折り曲げヒンジを介して前壁の上縁に連設した構造とすることにより、端子カバーにボックス端子を保持させる際には、上壁を上向きに起立させ状態でボックス端子を前壁の裏面に設けた保持枠内に嵌入した後に上壁を横向きに戻すことで、ボックス端子を定位置に保持したまま端子カバーと一緒に取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に示す実施例に基づいて説明する。各図において、1は電気器具(電磁開閉器の付属サーマルリレー)の本体ケース、2は本体ケース1に組み込んだ3相主回路の端子板、3は電線(図示せず)を配線する場合に使用するボックス端子、4は端子台12の前面,上面を覆う端子カバーである。
【0010】
ここで、本体ケース1の端部には左右を相間隔壁11で仕切った端子台12を形成して、この端子台12の上に端子板2の先端を引き出している。また、ボックス端子3は先記の特許文献1に開示されているものと同様な構造で、導電材質のボックス31と、ボックス31の頂部に螺合したワッシャ付き締結ネジ32からなり、ボックス31を端子板2の先端に遊嵌し、この位置で前方からボックス31に挿入した電線の素線をネジ32により締結して端子板2との間に挟持固定する。
【0011】
一方、モールド樹脂成型品の端子カバー4は、前記端子台12の前方を覆う前壁41と、前壁41の上縁に樹脂の弾性を利用した折り曲げヒンジ42を介して連なる上壁43からなり、前壁41の裏面側には3相分のボックス端子3を左右に並べて嵌合保持するボックス端子保持枠44が一体に形成されている。ここで、前壁41には各相のボックス端子3に通じる電線挿入孔45が左右に並んで開口し、さらに左右側縁の中段位置には係合突起46,下端には二股状の係合爪47が形成されている。また、上壁43には前記ボックス端子3の締結ネジ32に対応するネジ操作孔48が開口し、後縁には係合爪49が形成されている。また、前記の係合突起46,係合爪47に対応して器具の本体ケース1には、相間隔壁11の前部,および端子台12の底部に係合溝13,14が形成されている。
【0012】
上記の構成で、ボックス端子3を使用して電線(素線)を配線する場合には、端子カバー4を本体ケース1から取り外し、その上壁43を図1(a)のように上向きに起立させた状態で各相のボックス端子3を上方からボックス端子保持枠44に挿入し、次いで上壁43を図1(b)で示すように横向き姿勢に倒してボックス端子3が保持枠44から抜け出ないように保持する。
【0013】
次に、端子カバー4を前方から本体ケース1の相間隔壁11の間に押し込み装着し、この装着位置で保持枠44に保持したボックス端子3のボックス31を端子板2の先端に嵌挿するとともに、前記係合突起46を相間隔壁11の係合溝13に圧入し、下端の係合突起47をケース側の係合溝14に掛止させる。同時に上壁43の後縁に設けた係合爪49を本体ケース1にクリック結合させて定位置に固定する。これにより端子カバー3はガタつきなしに、本体ケース1へ安定よく抜け止め支持されることになる。
【0014】
この端子組立状態で電線を接続するには、端子カバー4の前壁41に開口した孔45を通して電線の素線を前方から挿入してボックス端子3のボックス31に差し込み、上壁43に開口した孔48に差し込んだネジ回し工具(ドライバー)によりボックス端子3の締結ネジ32を締め付けて電線を端子板2に圧接した状態に挟持固定する。
【0015】
なお、電線の非接続状態で本体ケース1から端子カバー4を取り外すと、ボックス端子3は保持枠44に保持されたまま、端子カバー4と一緒に端子板2から引き出されることになるので、ボックス端子3が不測に脱落するおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例による端子装置の構成図で、(a)は分解斜視図、(b)はボックス端子を嵌合保持した状態を表す端子カバーの斜視背面図
【図2】図1における端子カバーの取付構造の説明図で、(a)は端子カバーの正面図、(b)は本体ケースの端子台部の正視断面図
【図3】図1の端子装置を組み付けた電気器具の外観斜視図
【符号の説明】
【0017】
1 電気器具の本体ケース
11 相間隔壁
12 端子台
2 端子板
3 ボックス端子
4 端子カバー
41 前壁
42 折り曲げヒンジ
43 上壁
44 ボックス端子保持枠
45 電線挿入孔
47 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右を相間隔壁で仕切った本体ケースの端子台に端子板,該端子板に接続する電線を差込み締結するネジ付きボックス端子、および端子台の前面,上面を覆うモールド樹脂製の逆L字形端子カバーを装備した電気器具の端子装置において、
前記端子カバーの前壁の裏側に、該壁に開口した電線挿入孔に合わせてボックス端子を嵌合保持する端子保持枠を一体成型したことを特徴とする電気器具の端子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端子装置において、端子カバーの前壁の下端部に、本体ケースへの装着位置で該ケースに係止する抜け止め用の係合爪部を設けたことを特徴とする電気器具の端子装置。
【請求項3】
請求項1に記載の端子装置において、端子カバーの上壁が、折り曲げヒンジを介して前壁の上縁に連設されていることを特徴とする電気器具の端子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−213963(P2007−213963A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32408(P2006−32408)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】