電気回路及びパルス電源
【課題】第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流せるようにする。
【解決手段】パルス電源10Aは、第1の回路12と、第2の回路14と、これら第1及び第2の回路12及び14を結合するトランス16と、スイッチングコントローラ18とを有する。第2の回路14は、トランス16の二次巻線22と直列に接続された第3の半導体スイッチSW3を有する。この第3の半導体スイッチSW3は、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間において、第2の回路14に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されている。この第3の半導体スイッチSW3のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの制御信号Spをパルス成形してパルス信号Pcとして出力するゲートアンプ36が接続されている。
【解決手段】パルス電源10Aは、第1の回路12と、第2の回路14と、これら第1及び第2の回路12及び14を結合するトランス16と、スイッチングコントローラ18とを有する。第2の回路14は、トランス16の二次巻線22と直列に接続された第3の半導体スイッチSW3を有する。この第3の半導体スイッチSW3は、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間において、第2の回路14に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されている。この第3の半導体スイッチSW3のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの制御信号Spをパルス成形してパルス信号Pcとして出力するゲートアンプ36が接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる電気回路と、該電気回路を利用し、第2の回路から高電圧パルスを発生することができるパルス電源と、正極性のパルスと負極性のパルスとを連続して出力することができるパルス電源とに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、高電圧パルスの放電によるプラズマにより、脱臭、殺菌、成膜、有害ガスの分解等を行う技術が適応されるようになってきたが(例えば特許文献1及び非特許文献1参照)、プラズマによる処理を効率よく行うためには、高電圧の極めて幅の狭いパルスを供給することが必要であることがわかってきている(例えば非特許文献2参照)。
【0003】
また、例えば特許文献2に示すようなパルス電源が提案されている。このパルス電源100は、図29に示すように、直流電源部102の両端にインダクタ104、第1の半導体スイッチ106及び第2の半導体スイッチ108を直列に接続し、第1の半導体スイッチ106のアノード端子に一端が接続された前記インダクタ104の他端にカソード、前記第1の半導体スイッチ106のゲート端子にアノードとなるようにダイオード110を接続した極めて簡単な回路である。
【0004】
そして、第2の半導体スイッチ108をオンすることにより、第1の半導体スイッチ106も導通し、インダクタ104に直流電源部102の電圧が印加され、該インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積される。その後、第2の半導体スイッチ108をオフさせると、第1の半導体スイッチ106も急速にターンオフするため、インダクタ104に非常に急峻に立ち上がる極めて幅の狭い高電圧パルスPoが発生し、出力端子112及び114より高電圧パルスPoを取り出すことができる。
【0005】
このパルス電源100によれば、高電圧が印加される半導体スイッチを複数個使用することなく、簡単な回路構成で、急峻な立ち上がり時間と極めて狭いパルス幅を有する高電圧パルスPoを供給することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第2649340号公報
【特許文献2】特開2002−359979号公報
【非特許文献1】応用物理,第61巻,第10号,1992,p.1039〜1043,「高電圧パルス放電化学気相成長法によるアモルファスシリコン系薄膜の作製」
【非特許文献2】IEEE TRANSACTION ON PLASMIC SCIENCE,VOL.28,NO.2,APRIL 2000,p.434〜442,「Improvement of NOx Removal Efficiency Using Short-Width Pulsed Power」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図29に示すようなパルス電源においては、二次側に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流せるようにすることが望まれている。
【0008】
また、図29に示すようなパルス電源においては、出力端子にそれぞれ電極を接続し、さらに、これら電極を反応器に収容してプラズマ反応を起こさせるようにしているが、インダクタに電磁エネルギーを蓄積する期間(充電期間)において、インダクタに誘起される電圧(誘起電圧)が二次側に接続された負荷(例えば反応器内の電極)に印加され、反応器内でアーク放電が発生するおそれがある。アーク放電が発生すると、インダクタの一次側回路(主回路)に過電流が流れ、各種半導体スイッチに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
また、電界を変化させて、電子を加速することによってプラズマを発生するために用いられるパルス電源では、低電圧によって高い電位差を発生させるために、極性が逆のパルス、すなわち、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して出力する方式が採用されている。
【0010】
この方式による従来のパルス電源200は、例えば図30に示すように、直流電源202と、該直流電源202の両端に直列接続された第1のスイッチ204及び第2のスイッチ206と、前記直流電源202の両端に直列接続された第3のスイッチ208及び第4のスイッチ210と、第1のスイッチ204と第2のスイッチ206との接点a1と第3のスイッチ208及び第4のスイッチ210との接点a2との間に一次巻線212が接続されたトランス214とを有する。つまり、ブリッジ構成となっている。出力電圧Voutはトランス214の二次巻線216の両端から取り出されるようになっている。
【0011】
そして、例えば第2のスイッチ206と第3のスイッチ208をオンすることで、図31に示すように、二次巻線216の両端からは負極性の電圧が出力され、所定時間後、第2のスイッチ206と第3のスイッチ208をオフするとことで負極性のパルス218が生成される。また、第1のスイッチ204と第4のスイッチ210をターンオンすることで、二次巻線216の両端からは正極性の電圧が出力され、所定時間後、第1のスイッチ204と第4のスイッチ210をターンオフすることで負極性のパルス220が出力されることになる。
【0012】
しかし、この従来例に係るパルス電源200は、ブリッジを組むことから、4つのスイッチ204、206、208及び210を使用する必要があり、部品点数が多くなるという不都合がある。これは、サイズの大型化、コストの高価格化を招く。
【0013】
しかも、上述したように、二次側において、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流せるようにすることや、充電期間において、反応器内の電極に誘起電圧が印加されないようにすることが必要である。
【0014】
また、アプリケーションの適正条件に応じて、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができるようにすることが必要である。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる電気回路及びパルス電源を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明の他の目的は、第1の回路での充電期間において、第2の回路に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができるパルス電源を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができるパルス電源を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、二次側に急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができるパルス電源を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明の他の目的は、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、一次側での充電期間において、二次側に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができるパルス電源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る電気回路は、第1の半導体スイッチを有する第1の回路と、前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行う第2の回路とを具備し、前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とする。
【0021】
これにより、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0022】
そして、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有するようにしてもよい。
【0023】
あるいは、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有するようにしてもよい。
【0024】
また、本発明に係るパルス電源は、電力源と第1の半導体スイッチとを有する第1の回路と、前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行い、高電圧パルスを発生する第2の回路とを具備し、前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とする。
【0025】
これにより、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0026】
そして、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有するようにしてもよい。
【0027】
あるいは、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有するようにしてもよい。
【0028】
また、前記構成において、前記第1の回路と前記第2の回路がトランスを介して結合され、前記第1の回路に前記トランスの一次巻線が接続され、前記第2の回路に前記トランスの二次巻線が接続され、前記第2の半導体スイッチは、前記二次巻線に直列に、且つ、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間において、前記第2の回路に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されていてもよい。
【0029】
これにより、第1の回路での充電期間において、第2の回路に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0030】
また、本発明に係るパルス電源は、第1のインダクタに対する第1の誘導エネルギーの蓄積と、前記第1のインダクタからの前記第1の誘導エネルギーの解放に伴う第1のパルスの発生と、第2のインダクタに対する第2の誘導エネルギーの蓄積と、前記第2のインダクタからの前記第2の誘導エネルギーの解放に伴う前記第1のパルスとは逆極性の第2のパルスの発生とを行うことを特徴とする。
【0031】
これにより、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができる。その結果、高電圧パルスの放電によるプラズマ処理の各種アプリケーションの適正条件に応じたパルスの発生が可能となり、成膜速度やガス分解効率の向上を図ることができる。これは、パルス電源の汎用性の向上につながる。
【0032】
そして、上述の発明に係るパルス電源の具体的構成として、直流電源と、前記第1のインダクタの一次巻線と前記第2のインダクタの一次巻線との接点と前記直流電源との間に接続され、且つ、前記接点に向けて電流を流す整流素子と、前記整流素子からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流すように制御する第1のスイッチ回路と、前記整流素子からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流すように制御する第2のスイッチ回路とを有するようにしてもよい。
【0033】
また、前記構成において、前記第1のスイッチ回路は、前記第1のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流す第1の半導体スイッチと、前記第1の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の半導体スイッチと、前記第2の半導体スイッチのオン/オフを制御する第1の制御回路とを有し、前記第2のスイッチ回路は、前記第2のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流す第3の半導体スイッチと、前記第3の半導体スイッチのオン/オフを制御する第4の半導体スイッチと、前記第4の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の制御回路とを有するようにしてもよい。
【0034】
また、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第5の半導体スイッチを有し、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第6の半導体スイッチを有するようにしてもよい。これにより、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、二次側に急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0035】
この場合、前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第3の制御回路と、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第4の制御回路とを有するようにしてもよい。
【0036】
あるいは、前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第1の回路と、前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第2の回路とを有するようにしてもよい。
【0037】
また、前記構成において、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第1のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第7の半導体スイッチと、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第2のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第8の半導体スイッチとを有するようにしてもよい。これにより、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、一次側での充電期間において、二次側に接続された負荷に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0038】
この場合、前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第5の制御回路と、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第6の制御回路とを有するようにしてもよい。
【0039】
あるいは、前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路と、前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第4の回路とを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明に係る電気回路によれば、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0041】
また、本発明に係るパルス電源によれば、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0042】
また、本発明に係るパルス電源によれば、第1の回路での充電期間において、第2の回路に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0043】
また、本発明に係るパルス電源によれば、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができる。
【0044】
また、本発明に係るパルス電源によれば、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、二次側に急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0045】
また、本発明に係るパルス電源によれば、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、一次側での充電期間において、二次側に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明に係る電気回路及びパルス電源を各種パルス電源に適用した実施の形態例を図1〜図28を参照しながら説明する。
【0047】
まず、第1の実施の形態に係るパルス電源10Aは、図1に示すように、第1の回路12と、第2の回路14と、これら第1及び第2の回路12及び14を結合するトランス16と、スイッチングコントローラ18とを有する。第1の回路12にトランス16の一次巻線20が接続され、第2の回路14にトランス16の二次巻線22が接続され、該二次巻線22の両端から出力が取り出されるようになっている。二次巻線22の両端には負荷24が接続されている。負荷24としては、例えば抵抗負荷や容量性負荷(放電ギャップ等)が用いられる。
【0048】
第1の回路12は、直流電源(電源電圧=E)26と、一次巻線20の他方の端子30と直流電源26の−端子との間に接続され、且つ、直流電源26からの電流を一次巻線20に向けて流す第1の半導体スイッチSW1と、該第1の半導体スイッチSW1のオン/オフを制御する第2の半導体スイッチSW2とを有する。
【0049】
第1の半導体スイッチSW1は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第1の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0050】
第1の半導体スイッチSW1は、ゲート端子と直流電源26の+端子との間に、ダイオードD1と第1の抵抗R1との並列回路32が接続されている。ダイオードD1は、そのアノード端子が第1の半導体スイッチSW1のゲート端子に接続され、カソード端子が直流電源26の+端子に接続されている。
【0051】
第2の半導体スイッチSW2は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第1の実施の形態では、アバランシェ形ダイオードが逆並列で内蔵された例えばnチャネル型の電力用金属酸化半導体電界効果トランジスタを使用している。
【0052】
第2の半導体スイッチSW2は、ソース端子が直流電源26の−端子に接続され、ドレイン端子が第1の半導体スイッチSW1のカソード端子に接続されている。
【0053】
第2の半導体スイッチSW2のゲート端子には、スイッチングコントローラ18からのスイッチング制御信号Scを増幅して前記ゲート端子に供給するドライバ回路34が接続されている。
【0054】
一方、第2の回路14は、トランス16の二次巻線22と直列に接続された第3の半導体スイッチSW3を有する。この第3の半導体スイッチSW3は、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間において、第2の回路14に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されている。
【0055】
第3の半導体スイッチSW3は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第1の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0056】
そして、この第3の半導体スイッチSW3のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの制御信号Spをパルス成形してパルス信号Pcとして出力するゲートアンプ36が接続されている。
【0057】
ここで、第1の実施の形態に係るパルス電源10Aの回路動作、特に、二次巻線22の両端に接続される負荷24として一対の電極38a及び38bを有する放電ギャップを用いた場合の回路動作について、図1〜図4の回路図と図5の波形図とを参照しながら説明する。
【0058】
なお、直流電源26の電圧をE(V)、トランス16の巻線比(一次巻線20の巻数/二次巻線22の巻数)を1/n1とする。また、トランス16の一次インダクタンス(励磁インダクタンス)をLexとする。
【0059】
まず、モード0(初期状態)においては、図1に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0060】
その後、図5の時点t0において、第2の半導体スイッチSW2のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Scが供給され、第2の半導体スイッチSW2がオフからオンになる(図5参照)。
【0061】
時点t0で第2の半導体スイッチSW2がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図2に示すように、直流電源26→抵抗R1→第1の半導体スイッチSW1のゲート端子→第1の半導体スイッチSW1のカソード端子→第2の半導体スイッチSW2の経路40で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がターンオンする。これにより、トランス16の一次巻線20には、Vi1=+E(V)が印加され、直流電源26→一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→第2の半導体スイッチSW2の経路42で電流Iiが流れる。電流Iiは、勾配(E/Lex)で時間の経過に伴って直線状に正方向に増加し(図5参照)、一次巻線20に電磁エネルギーが充電される。
【0062】
そして、第2の半導体スイッチSW2がオンとなっている期間Twにおいて、二次巻線22の両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。この二次巻線22の両端に誘起される電圧V1のレベルはn1・E(V)である(図5参照)。
【0063】
また、前記期間Twの最終段階において、スイッチングコントローラ18の制御によってゲートアンプ36からパルス信号Pcが出力され、これによって、第3の半導体スイッチSW3にゲート電流が流れ、該第3の半導体スイッチSW3がオン状態となる。期間Twの最終段階としては、例えば第3の半導体スイッチSW3に対してゲート電流を流すことによって第3の半導体スイッチSW3が完全にオン状態となる期間Tcを見越した時点ta等が挙げられる(図5参照)。
【0064】
但し、第3の半導体スイッチSW3は、アノード−カソード間が二次巻線22の両端に誘起された正極性の電圧(誘起電圧)V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24の一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図5において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第3の半導体スイッチSW3によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0065】
一次巻線20を流れる電流Iiは、時点t1でIip(=E・Tw/Lex)となり、所望の電磁エネルギー(=Lex・Iip2/2)が得られると、スイッチングコントローラ18を通じて低レベルのスイッチング制御信号Scが供給され、これにより、第2の半導体スイッチSW2がターンオフする(図5参照)。
【0066】
時点t1において、第2の半導体スイッチSW2がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図3に示すように、第1の回路12では、一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→ダイオードD1の経路44で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がオフへ移行を始める。また、同時に、一次巻線20に充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流が流れ出す(経路46参照)。このとき、第3の半導体スイッチSW3には第2の半導体スイッチSW2がターンオフする前から十分なゲート電流が流れてオン状態となっているため、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。その後、第1の半導体スイッチSW1は完全なオフ状態に至る。
【0067】
第1の半導体スイッチSW1が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図4に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(Vop)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPoが出力され(図5参照)、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPoの立ち上がりの傾きは、トランス16の励磁インダクタンス(Lex)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0068】
なお、二次巻線22の両端には、前記出力電圧Voとは逆極性の電圧、すなわち、負電圧値(V1p)をピークとした負極性のパルスP1が誘起される。
【0069】
出力電圧Voが放電開始電圧Vopに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図1に示すモード0(初期状態)となる。この一連の動作が繰り返されることで、正極性の高電圧パルスPoが連続して出力されることになる。
【0070】
また、正極性のパルスPoのパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定される。一般に共振周波数が低いほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0071】
なお、直流電源26の電圧Eを100V、励磁インダクタンスLexを10(μH)、トランス16の巻線比を1/(5〜10)としたとき、一次巻線20を流れる電流Iiのピーク値Iipはほぼ100(A)、出力電圧Voのピーク値(Vop)は数〜30(kV)、第2の回路14を流れる出力電流Ioのピーク値(Iop)は数〜数10(A)である。また、第2の半導体スイッチSW2がオンとなっている時間(時点t0から時点t1までの時間Tw)は約10μsecである。
【0072】
このように、第1の実施の形態に係るパルス電源10Aにおいては、第2の回路14に、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間Twの少なくとも最終段階において、逆バイアス下においてオン状態とされる第3の半導体スイッチSW3を接続するようにしたので、第1の回路12から第2の回路14に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。
【0073】
しかも、第1の実施の形態では、第3の半導体スイッチSW3を、トランス16の二次巻線22に直列に、且つ、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間Twにおいて、二次巻線22に誘起される電圧V1が逆バイアスとなる方向に接続するようにしたので、第1の回路12での充電期間Twにおいて、一対の電極38a及び38bに対して二次巻線22での誘起電圧V1が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0074】
次に、第2の実施の形態に係るパルス電源10Bについて図6〜図10を参照しながら説明する。
【0075】
この第2の実施の形態に係るパルス電源10Bは、図6に示すように、上述した第1の実施の形態に係るパルス電源10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1の回路12におけるトランス16の一次巻線20と第1の半導体スイッチSW1のアノード端子間の導体に変流器50を取り付け、該変流器50の出力端子をそれぞれ第3の半導体スイッチSW3のゲート端子とカソード端子に接続した点で異なる。
【0076】
ここで、第2の実施の形態に係るパルス電源10Bの回路動作について、図6〜図9の回路図と図10の波形図とを参照しながら説明する。
【0077】
まず、モード0(初期状態)においては、図6に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0078】
その後、図10の時点t0において、第2の半導体スイッチSW2のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Scが供給され、第2の半導体スイッチSW2がオフからオンになる(図10参照)。
【0079】
時点t0で第2の半導体スイッチSW2がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図7に示すように、直流電源26→抵抗R1→第1の半導体スイッチSW1のゲート端子→第1の半導体スイッチSW1のカソード端子→第2の半導体スイッチSW2の経路40で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がターンオンする。これにより、トランス16の一次巻線20には、直流電源26の電圧Eが印加され、直流電源26→一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→第2の半導体スイッチSW2の経路42で電流Iiが流れ、一次巻線20に電磁エネルギーが充電される。そして、第2の半導体スイッチSW2がオンとなっている期間Twにおいて、二次巻線22の両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。
【0080】
また、前記電流Iiが流れることによって、変流器50を通じて第3の半導体スイッチSW3にゲート電流Igが流れ、該第3の半導体スイッチSW3がオン状態となる。但し、第3の半導体スイッチSW3は、アノード−カソード間が二次巻線22の両端に誘起された正極性の電圧V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図10において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第3の半導体スイッチSW3によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0081】
時点t1において、第2の半導体スイッチSW2がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図8に示すように、第1の回路12では、一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→ダイオードD1の経路44で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がオフへ移行を始める。また、同時に、一次巻線20に充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流が流れ出す(経路46参照)。このとき、第3の半導体スイッチSW3には事前に十分なゲート電流Igが流れていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。その後、第1の半導体スイッチSW1は完全なオフ状態に至る。
【0082】
第1の半導体スイッチSW1が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図9に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(Vop)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPoが出力され、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPoの立ち上がりの傾きは、トランス16の励磁インダクタンス(Lex)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0083】
出力電圧Voが放電開始電圧Vopに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図6に示すモード0(初期状態)となる。この一連の動作が繰り返されることで、正極性の高電圧パルスPoが連続して出力されることになる。
【0084】
ここで、正極性のパルスPoのパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定される。一般に共振周波数が低いほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0085】
このように、第2の実施の形態に係るパルス電源10Bにおいては、上述した第1の実施の形態に係るパルス電源10Aと同様に、第1の回路12から第2の回路14に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。しかも、第1の回路12での充電期間Twにおいて、一対の電極38a及び38bに対して二次巻線22での誘起電圧V1が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0086】
特に、この第2の実施の形態では、第1の回路12に変流器50を取り付けるだけで、第3の半導体スイッチSW3のオン状態を制御することができるため、回路構成の簡略化を図ることができ、パルス電源10Bのコストの低廉化、サイズの小型化を促進させることができる。
【0087】
次に、第3の実施の形態に係るパルス電源10Cについて図11〜図19を参照しながら説明する。
【0088】
この第3の実施の形態に係るパルス電源10Cは、上述した第1及び第2の実施の形態に係るパルス電源10A及び10Bと異なり、正極性の高電圧パルスと負極性の高電圧パルスを交互に、かつ、連続して出力させることができる。
【0089】
具体的には、この第3の実施の形態に係るパルス電源10Cは、図11に示すように、第1の回路12と、第2の回路14と、これら第1及び第2の回路12及び14を結合する2つのトランス(第1のトランス16A及び第2のトランス16B)と、スイッチングコントローラ18と第11のダイオードD11とを有する。
【0090】
第1の回路12に第1及び第2のトランス16A及び16Bの各一次巻線(第1の一次巻線20A及び第2の一次巻線20B)が接続され、第2の回路14に第1及び第2のトランス16A及び16Bの各二次巻線(第1の二次巻線22A及び第2の二次巻線22B)が接続されている。そして、第2の回路14の出力端子から出力が取り出されるようになっている。出力端子には負荷24が接続されている。負荷24としては、例えば抵抗負荷や容量性負荷(放電ギャップ等)が用いられる。
【0091】
第1の回路12は、直流電源(電源電圧=E)26と、第1の一次巻線20Aと第2の一次巻線20Bとの接点60と直流電源26の+端子との間に順方向接続された前記第11のダイオードD11と、第1の一次巻線20Aと直流電源26の−端子との間に接続され、且つ、直流電源26からの電流を第1の一次巻線20Aに向けて流す第11の半導体スイッチSW11と、該第11の半導体スイッチSW11のオン/オフを制御する第12の半導体スイッチSW12と、第2の一次巻線20Bと直流電源26の−端子との間に接続され、且つ、直流電源26からの電流を第2の一次巻線20Bに向けて流す第13の半導体スイッチSW13と、該第13の半導体スイッチSW13のオン/オフを制御する第14の半導体スイッチSW14とを有する。
【0092】
第1及び第3の半導体スイッチSW11及びSW13は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0093】
第11の半導体スイッチSW11は、ゲート端子と第11のダイオードD11のアノード端子との間に、第12のダイオードD12と第11の抵抗R11との並列回路32Aが接続されている。第12のダイオードD12は、そのアノード端子が第11の半導体スイッチSW11のゲート端子に接続され、カソード端子が第11のダイオードD11のアノード端子に接続される。
【0094】
第13の半導体スイッチSW13は、ゲート端子と第11のダイオードD11のアノード端子との間に、第13のダイオードD13と第12の抵抗R12との並列回路32Bが接続されている。第13のダイオードD13は、そのアノード端子が第13の半導体スイッチSW13のゲート端子に接続され、カソード端子が第11のダイオードD11のアノード端子に接続される。
【0095】
第12及び第14の半導体スイッチSW12及びSW14は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、アバランシェ形ダイオードが逆並列で内蔵された例えばnチャネル型の電力用金属酸化半導体電界効果トランジスタを使用している。
【0096】
第12の半導体スイッチSW12は、ソース端子が直流電源26の−端子に接続され、ドレイン端子が第11の半導体スイッチSW11のカソード端子に接続されている。
【0097】
第14の半導体スイッチSW14は、ソース端子が直流電源26の−端子に接続され、ドレイン端子が第13の半導体スイッチSW13のカソード端子に接続されている。
【0098】
第12の半導体スイッチSW12のゲート端子には、スイッチングコントローラ18からの第1のスイッチング制御信号Sc1を増幅して前記ゲート端子に供給する第1のドライバ回路34Aが接続されている。第14の半導体スイッチSW14のゲート端子には、スイッチングコントローラ18からの第2のスイッチング制御信号Sc2を増幅して前記ゲート端子に供給する第2のドライバ回路34Bが接続されている。
【0099】
また、この第1の回路12は、第11のダイオードD11のカソード端子と第13の半導体スイッチSW13のアノード端子との間に第15の半導体スイッチSW15が接続され、第11のダイオードD11のカソード端子と第11の半導体スイッチSW11のアノード端子との間に第16の半導体スイッチSW16が接続されている。
【0100】
第15の半導体スイッチSW15は、第14の半導体スイッチSW14及び第13の半導体スイッチSW13がオンとされている期間において、直流電源26の電源電圧Eが逆バイアスとなる方向に接続され、第16の半導体スイッチSW16は、第12の半導体スイッチSW12及び第11の半導体スイッチSW11がオンとされている期間において、直流電源26の電源電圧Eが逆バイアスとなる方向に接続されている。
【0101】
すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子が第11のダイオードD11のカソード端子を向くように接続され、同様に、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子が第11のダイオードD11のカソード端子を向くように接続されている。
【0102】
第15及び第16の半導体スイッチSW15及びSW16は自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0103】
そして、第15の半導体スイッチSW15のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第1の制御信号Sp1をパルス成形して第1のパルス信号Pc1として出力する第1のゲートアンプ36Aが接続され、第16の半導体スイッチSW16のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第2の制御信号Sp2をパルス成形して第2のパルス信号Pc2として出力する第2のゲートアンプ36Bが接続されている。
【0104】
一方、第2の回路14は、第1の二次巻線22Aと第2の二次巻線22Bとの間に、2つの半導体スイッチ(第17の半導体スイッチSW17及び第18の半導体スイッチSW18)が互いに方向を逆にして、かつ、並列に接続された並列回路62が接続されている。
【0105】
第17の半導体スイッチSW17は、第12の半導体スイッチSW12及び第11の半導体スイッチSW11がオンとされている期間において、第1の二次巻線22Aに誘起される電圧が逆バイアスとなる方向に接続され、第18の半導体スイッチSW18は、第14の半導体スイッチSW14及び第13の半導体スイッチSW13がオンとされている期間において、第2の二次巻線22Bに誘起される電圧が逆バイアスとなる方向に接続されている。
【0106】
すなわち、第1の二次巻線22Aの一方の端子64aが第2の回路14の一方の出力端子(一方の電極38a)に接続され、第2の二次巻線22Bの一方の端子66aが第2の回路14の他方の出力端子(他方の電極38b)に接続されている場合に、第17の半導体スイッチSW17は、カソード端子が第1の二次巻線22Aの他方の端子64bに接続され、アノード端子が第2の二次巻線22Bの他方の端子66bに接続される。同様に、第18の半導体スイッチSW18は、カソード端子が第2の二次巻線22Bの他方の端子66bに接続され、アノード端子が第1の二次巻線22Aの他方の端子64bに接続される。
【0107】
第17及び第18の半導体スイッチSW17及びSW18は自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0108】
そして、第17の半導体スイッチSW17のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第3の制御信号Sp3をパルス成形して第3のパルス信号Pc3として出力する第3のゲートアンプ36Cが接続され、第18の半導体スイッチSW18のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第4の制御信号Sp4をパルス成形して第4のパルス信号Pc4として出力する第4のゲートアンプ36Dが接続されている。
【0109】
ここで、第3の実施の形態に係るパルス電源10Cの回路動作について、図11の回路図と、図12〜図17の動作説明図と、図18及び図19の波形図とを参照しながら説明する。
【0110】
なお、直流電源26の電圧をE(V)、第1のトランス16Aの巻線比(第1の一次巻線20Aの巻数/第1の二次巻線22Aの巻数)を1/n1とし、第2のトランス16Bの巻線比(第2の一次巻線20Bの巻数/第2の二次巻線22Bの巻数)を1/n2とする。また、第1のトランス16Aの一次インダクタンス(励磁インダクタンス)をLex1、第2のトランス16Bの一次インダクタンス(励磁インダクタンス)をLex2とする。
【0111】
まず、モード0(初期状態)においては、図11に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0112】
その後、図18の時点t0において、第12の半導体スイッチSW12のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc1が供給され、第12の半導体スイッチSW12がオフからオンになる。
【0113】
時点t0で第12の半導体スイッチSW12がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図12に示すように、直流電源26→第11の抵抗R11→第11の半導体スイッチSW11のゲート端子→第11の半導体スイッチSW11のカソード端子→第12の半導体スイッチSW12の経路40Aで電流が流れ、第11の半導体スイッチSW11がターンオンする。これにより、第1のトランス16Aの第1の一次巻線20Aには、Vi1=E(V)が印加され、直流電源26→第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12の半導体スイッチSW12の経路42Aで電流I1(=I2)が流れる。電流I1は、勾配(E/Lex1)で時間の経過に伴って直線状に正方向に増加し(図18参照)、第1の一次巻線20Aに電磁エネルギーが充電される。
【0114】
そして、第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている期間Tw1において、第1の二次巻線22Aの両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。この第1の二次巻線22Aの両端に誘起される電圧V1のレベルはn1・E(V)である(図19参照)。
【0115】
また、前記期間Tw1の最終段階において、スイッチングコントローラ18の制御によって、第1及び第3のゲートアンプ36A及び36Cからパルス信号Pc1及びPc3が出力され、これによって、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17に第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れ、これら第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17がそれぞれオン状態となる。期間Tw1の最終段階としては、例えば第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17に対して第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3を流すことによって第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17が完全にオン状態となる期間Tcを見越した時点ta等が挙げられる(図18参照)。
【0116】
第17の半導体スイッチSW17は、アノード−カソード間が第1の二次巻線22Aの両端に誘起された正極性の電圧V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図19において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第17の半導体スイッチSW17によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0117】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0118】
さらに、第16の半導体スイッチSW16は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0119】
第1の一次巻線20Aを流れる電流I1は、時点t1でI1p(=E・Tw1/Lex1)となり、所望の電磁エネルギー(=Lex1・I1p2/2)が得られると、スイッチングコントローラ18を通じて低レベルのスイッチング制御信号Sc1が供給され、これにより、第12の半導体スイッチSW12がターンオフする。
【0120】
時点t1において、第12の半導体スイッチSW12がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図13に示すように、第1の回路12では、第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12のダイオードD12→第11のダイオードD11の経路44Aで電流I1(=I2)が流れ、第11の半導体スイッチSW11がオフへ移行を始める。また、同時に、第1の一次巻線20Aに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流Ioが流れ出す(経路46A参照)。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には第12の半導体スイッチSW12がターンオフする前から十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れてオン状態となっているため、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路48Aで電流I5(=I6)が流れる。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には第12の半導体スイッチSW12がターンオフする前から十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第11の半導体スイッチSW11は完全なオフ状態に至る。
【0121】
第11の半導体スイッチSW11が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図14に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(V1p)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPo1が出力され(図19参照)、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPo1の立ち上がりの傾きは、第1のトランス16Aの励磁インダクタンス(Lex1)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。なお、第1の二次巻線22Aの両端には、前記出力電圧Voとは逆極性の電圧V1、すなわち、負電圧値(V1p)をピークとした負極性のパルスP1が誘起される。
【0122】
出力電圧Voが放電開始電圧V1pに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図11に示すモード0(初期状態)となる。
【0123】
ここで、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0124】
なお、直流電源26の電圧Eを100V、励磁インダクタンスLex1を10(μH)、第1のトランス16Aの巻線比を1/(5〜10)としたとき、第1の一次巻線20Aを流れる電流I1(=I2)のピーク値I1pはほぼ100(A)、出力電圧Voのピーク値(V1p)は数〜30(kV)、第2の回路14を流れる出力電流Ioのピーク値(Iop1)は10〜20(A)である。また、第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている時間(時点t0から時点t1までの時間)Tw1は約10μsecである。
【0125】
その後、図18の時点t10において、第14の半導体スイッチSW14のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc2が供給され、第14の半導体スイッチSW14がオフからオンになる。
【0126】
時点t10で第14の半導体スイッチSW14がターンオンすると、モード4(充電期間)に入り、図15に示すように、今度は、直流電源26→第12の抵抗R12→第13の半導体スイッチSW13のゲート端子→第13の半導体スイッチSW13のカソード端子→第14の半導体スイッチSW14の経路40Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がターンオンする。これにより、第2のトランス16Bの第2の一次巻線20Bには、Vi2=E(V)が印加され、直流電源26→第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第14の半導体スイッチSW14の経路42Bで電流I4(=I5)が流れる。電流I4は、勾配(E/Lex2)で時間の経過に伴って直線状に正方向に増加し(図18参照)、第2の一次巻線20Bに電磁エネルギーが充電される。
【0127】
そして、第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている期間Tw2において、第2の二次巻線22Bの両端には、一定の正極性の電圧V2が誘起される。この第2の二次巻線22Bの両端に誘起される電圧V2のレベルはn2・E(V)である(図19参照)。
【0128】
また、前記期間Tw2の最終段階において、スイッチングコントローラ18の制御によって、第2及び第4のゲートアンプ36B及び36Dから第2及び第4のパルス信号Pc2及びPc4が出力され、これによって、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18に第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れ、これら第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18がそれぞれオン状態となる。期間Tw2の最終段階としては、例えば第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18に対して第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4を流すことによって第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18が完全にオン状態となる期間Tdを見越した時点tb等が挙げられる。
【0129】
同様に、第18の半導体スイッチSW18は、アノード−カソード間が第2の二次巻線22Bの両端に誘起された正極性の電圧V2によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V2に基づく正極性の電圧(V2:図19において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第18の半導体スイッチSW18によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0130】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0131】
さらに、第15の半導体スイッチSW15は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0132】
第2の一次巻線20Bを流れる電流I4(=I5)は、時点t1でI4p(=E・Tw2/Lex2)となり、所望の電磁エネルギー(=Lex2・I4p2/2)が得られると、スイッチングコントローラ18を通じて低レベルのスイッチング制御信号Sc2が供給され、これにより、第14の半導体スイッチSW14がターンオフする。
【0133】
時点t11において、第14の半導体スイッチSW14がターンオフすると、モード5(転流期間)に入り、図16に示すように、第1の回路12では、第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第13のダイオードD13→第11のダイオードD11の経路44Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がオフへ移行を始める。また、同時に、第2の一次巻線20Bに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流が流れ出す(経路46B参照)。このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には第14の半導体スイッチSW14がターンオフする前から十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れてオン状態となっているため、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路48Bで電流I2(=I3)が流れる。このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には第14の半導体スイッチSW14がターンオフする前から十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第13の半導体スイッチSW13は完全なオフ状態に至る。
【0134】
第13の半導体スイッチSW13が完全にオフ状態になると、モード6(放電期間)に入り、図17に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voの絶対値が上昇し、負電圧値(V2p)をピーク(放電開始電圧)とした負極性のパルスPo2が出力され(図19参照)、出力電流Ioは減少する。この負極性のパルスPo2の立ち上がりの傾きは、第2のトランス16Bの励磁インダクタンス(Lex2)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。なお、第2の二次巻線22Bの両端には、前記出力電圧Voとは同極性の電圧V2、すなわち、負電圧値(V2p)をピークとした負極性のパルスP2が誘起される。
【0135】
出力電圧Voが放電開始電圧V2pに達すると、該出力電圧Voの絶対値は急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図1に示すモード0(初期状態)となる。
【0136】
ここで、負極性のパルスPo2のパルス幅Tp2は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp2は大きくなる。
【0137】
なお、直流電源26の電圧Eを100V、励磁インダクタンスLex2を20(μH)、第2のトランス16Bの巻線比を1/(5〜10)としたとき、第2の一次巻線20Bを流れる電流I4のピーク値I4pはほぼ100(A)、出力電圧Voのピーク値(V2p)は−数〜−30(kV)、第2の回路14を流れる出力電流Ioのピーク値(Iop2)は−10〜−20(A)である。また、第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている時間(時点t10から時点t11までの時間)Tw2は約20μsecである。
【0138】
上述の一連の動作が繰り返されることで、正極性の高電圧パルスPo1と負極性の高電圧パルスPo2が交互に、且つ、連続して出力されることになる。
【0139】
このように、第3の実施の形態に係るパルス電源10Cにおいては、第1のトランス16Aに対する第1の誘導エネルギーの蓄積と、第1のトランス16Aからの第1の誘導エネルギーの解放に伴う正極性の高電圧パルスPo1の発生と、第2のトランス16Bに対する第2の誘導エネルギーの蓄積と、第2のトランス16Bからの第2の誘導エネルギーの解放に伴う負極性の高電圧パルスPo2の発生とを行うようにしている。
【0140】
これにより、正極性の高電圧パルスPo1と負極性の高電圧パルスPo2を連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1と、負極性のパルスPo2のパルス幅Tp2を独立に変えることができる。その結果、高電圧パルスPo1及びPo2の放電によるプラズマ処理の各種アプリケーションの適正条件に応じたパルスの発生が可能となり、成膜速度やガス分解効率の向上を図ることができる。これは、パルス電源10Cの汎用性の向上につながる。
【0141】
また、第1のトランス16Aに対する第1の誘導エネルギーの蓄積期間(第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている期間)Tw1の少なくとも最終段階に、ゼロ電流状態においてオン状態とされる第15の半導体スイッチSW15を有し、第2のトランス16Bに対する第2の誘導エネルギーの蓄積期間(第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている期間)Tw2の少なくとも最終段階に、ゼロ電流状態においてオン状態とされる第16の半導体スイッチSW16を有するようにしたので、第2の回路14に急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。
【0142】
さらに、この第3の実施の形態では、第1のトランス16Aに対する第1の誘導エネルギーの蓄積期間Tw1の少なくとも最終段階に、第1のトランス16Aの第1の二次巻線22Aに発生する電圧V1による逆バイアス下においてオン状態とされる第17の半導体スイッチSW17と、第2のトランス16Bに対する第2の誘導エネルギーの蓄積期間Tw2の少なくとも最終段階に、第2のトランス16Bの第2の二次巻線22Bに発生する電圧V2による逆バイアス下においてオン状態とされる第18の半導体スイッチSW18とを有するようにしたので、第1の回路12での充電期間Tw1及びTw2において、第2の回路14に接続された負荷24(一対の電極38a及び38b)に誘起電圧V1及びV2が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0143】
次に、第4の実施の形態に係るパルス電源10Dについて図20〜図28を参照しながら説明する。
【0144】
この第4の実施の形態に係るパルス電源10Dは、図20に示すように、上述した第3の実施の形態に係るパルス電源10Cとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
【0145】
すなわち、第1の回路12における第1のトランス16Aの第1の一次巻線20Aと第11の半導体スイッチSW11のアノード端子間の導体に2つの変流器(第1の変流器50A及び第2の変流器50B)を取り付け、第1の変流器50Aの出力端子をそれぞれ第15の半導体スイッチSW15のゲート端子とカソード端子に接続し、第2の変流器50Bの出力端子をそれぞれ第17の半導体スイッチSW17のゲート端子とカソード端子に接続している。
【0146】
同様に、第1の回路12における第2のトランス16Bの第2の一次巻線20Bと第13の半導体スイッチSW13のアノード端子間の導体に2つの変流器(第3の変流器50C及び第4の変流器50D)を取り付け、第3の変流器50Cの出力端子をそれぞれ第16の半導体スイッチSW16のゲート端子とカソード端子に接続し、第4の変流器50Dの出力端子をそれぞれ第18の半導体スイッチSW18のゲート端子とカソード端子に接続している。
【0147】
ここで、第4の実施の形態に係るパルス電源10Dの回路動作について、図20〜図26の回路図と図27及び図28の波形図とを参照しながら説明する。
【0148】
まず、モード0(初期状態)においては、図20に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0149】
その後、図27の時点t0において、第12の半導体スイッチSW12のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc1が供給され、第12の半導体スイッチSW12がオフからオンになる。
【0150】
時点t0で第12の半導体スイッチSW12がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図21に示すように、直流電源26→第11の抵抗R11→第11の半導体スイッチSW11のゲート端子→第11の半導体スイッチSW11のカソード端子→第12の半導体スイッチSW12の経路40Aで電流が流れ、第11の半導体スイッチSW11がターンオンする。これにより、第1のトランス16Aの第1の一次巻線20Aには、直流電源26の電圧Eが印加され、直流電源26→第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12の半導体スイッチSW12の経路42Aで電流I1(=I2)が流れ、第1の一次巻線20Aに電磁エネルギーが充電される。そして、第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている期間Tw1において、第1の二次巻線22Aの両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。
【0151】
また、前記電流I1が流れることによって、第1及び第2の変流器50A及び50Bを通じて第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17にそれぞれ第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れ、これら第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17がオン状態となる。
【0152】
第17の半導体スイッチSW17は、アノード−カソード間が第1の二次巻線22Aの両端に誘起された正極性の電圧V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図28において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第17の半導体スイッチSW17によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0153】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0154】
さらに、第16の半導体スイッチSW16は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0155】
時点t1において、第12の半導体スイッチSW12がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図22に示すように、第1の回路12では、第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12のダイオードD12→第11のダイオードD11の経路44Aで電流が流れ、第11の半導体スイッチSW11がオフへ移行を始める。また、同時に、第1の一次巻線20Aに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流Ioが流れ出す(経路46A参照)。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には事前に十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れていたため、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路48Aで電流I5(=I6)が流れる。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には第12の半導体スイッチSW12がターンオフする前から十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第11の半導体スイッチSW11は完全なオフ状態に至る。
【0156】
第11の半導体スイッチSW11が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図23に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(V1p)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPo1が出力され(図28参照)、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPo1の立ち上がりの傾きは、第1のトランス16Aの励磁インダクタンスと負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0157】
出力電圧Voが放電開始電圧V1pに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図20に示すモード0(初期状態)となる。
【0158】
ここで、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0159】
その後、図27の時点t10において、第14の半導体スイッチSW14のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc2が供給され、第14の半導体スイッチSW14がオフからオンになる。
【0160】
時点t10で第14の半導体スイッチSW14がターンオンすると、モード4(充電期間)に入り、図24に示すように、今度は、直流電源26→第12の抵抗R12→第13の半導体スイッチSW13のゲート端子→第13の半導体スイッチSW13のカソード端子→第14の半導体スイッチSW14の経路40Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がターンオンする。これにより、第2のトランス16Bの第2の一次巻線20Bには、直流電源26の電圧Eが印加され、直流電源26→第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第14の半導体スイッチSW14の経路42Bで電流I4(=I5)が流れ、第2の一次巻線20Bに電磁エネルギーが充電される。そして、第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている期間Tw2において、第2の二次巻線22Bの両端には、一定の正極性の電圧V2が誘起される(図28参照)。
【0161】
また、前記電流I4が流れることによって、第3及び第4の変流器50C及び50Dを通じて第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18にそれぞれ第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れ、これら第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18がオン状態となる。
【0162】
第18の半導体スイッチSW18は、アノード−カソード間が第2の二次巻線22Bの両端に誘起された正極性の電圧V2によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記正極性の電圧V2の印加が、第18の半導体スイッチSW18によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0163】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0164】
さらに、第15の半導体スイッチSW15は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0165】
時点t11において、第14の半導体スイッチSW14がターンオフすると、モード5(転流期間)に入り、図25に示すように、第1の回路12では、第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第13のダイオードD13→第11のダイオードD11の経路44Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がオフへ移行を始める。また、同時に、第2の一次巻線20Bに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流Ioが流れ出す(経路46B参照)。このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には事前に十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れていたため、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路48Bで電流I2(=I3)が流れる。
【0166】
このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には第13の半導体スイッチSW13がターンオフする前から十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第13の半導体スイッチSW13は完全なオフ状態に至る。
【0167】
第13の半導体スイッチSW13が完全にオフ状態になると、モード6(放電期間)に入り、図26に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voの絶対値が上昇し、負電圧値(V2p)をピーク(放電開始電圧)とした負極性のパルスPo2が出力され(図28参照)、出力電流Ioは減少する。この負極性のパルスPo2の立ち上がりの傾きは、第2のトランス16Bの励磁インダクタンス(Lex2)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0168】
出力電圧Voが放電開始電圧V2pに達すると、該出力電圧Voの絶対値は急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図20に示すモード0(初期状態)となる。
【0169】
ここで、正極性のパルスPo2のパルス幅Tp2は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp2は大きくなる。
【0170】
このように、第4の実施の形態に係るパルス電源10Dにおいては、上述した第3の実施の形態に係るパルス電源10Cと同様に、正極性の高電圧パルスPo1と負極性の高電圧パルスPo2を連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1と、負極性のパルスPo2のパルス幅Tp2を独立に変えることができる。
【0171】
また、第1の回路12から第2の回路14に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。しかも、第1の回路12での充電期間Tw1及びTw2において、一対の電極38a及び38bに対して第1の二次巻線22Aでの誘起電圧V1及び第2の二次巻線22Bでの誘起電圧V2が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0172】
特に、この第4の実施の形態では、第1の回路12に第1〜第4の変流器50A〜50Dを取り付けるだけで、第15〜第18の半導体スイッチSW15〜SW18のオン状態を制御することができるため、回路構成の簡略化を図ることができ、パルス電源10Dのコストの低廉化、サイズの小型化を促進させることができる。
【0173】
なお、本発明に係る電気回路及びパルス電源は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】第1の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図3】第1の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図4】第1の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図5】第1の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図7】第2の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図9】第2の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図10】第2の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形を示す図である。
【図11】第3の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図12】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図13】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図14】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図15】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード4(充電期間)を示す動作説明図である。
【図16】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード5(転流期間)を示す動作説明図である。
【図17】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード6(放電期間)を示す動作説明図である。
【図18】第3の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その1)を示す図である。
【図19】第3の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その2)を示す図である。
【図20】第4の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図21】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図22】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図23】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図24】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード4(充電期間)を示す動作説明図である。
【図25】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード5(転流期間)を示す動作説明図である。
【図26】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード6(放電期間)を示す動作説明図である。
【図27】第4の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その1)を示す図である。
【図28】第4の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その2)を示す図である。
【図29】従来例に係るパルス電源を示す回路図である。
【図30】他の従来例に係るパルス電源を示す回路図である。
【図31】他の従来例に係るパルス電源から出力されるパルス波形を示す図である。
【符号の説明】
【0175】
10A〜10D…パルス電源 12…第1の回路
14…第2の回路 16、16A、16B…トランス
18…スイッチングコントローラ 20、20A、20B…一次巻線
22、22A、22B…二次巻線 24…負荷
26…直流電源 34、34A、34B…ドライバ回路
36、36A〜36D…ゲートアンプ 38a、38b…電極
50、50A〜50D…変流器
SW1〜SW3、SW11〜SW18…半導体スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる電気回路と、該電気回路を利用し、第2の回路から高電圧パルスを発生することができるパルス電源と、正極性のパルスと負極性のパルスとを連続して出力することができるパルス電源とに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、高電圧パルスの放電によるプラズマにより、脱臭、殺菌、成膜、有害ガスの分解等を行う技術が適応されるようになってきたが(例えば特許文献1及び非特許文献1参照)、プラズマによる処理を効率よく行うためには、高電圧の極めて幅の狭いパルスを供給することが必要であることがわかってきている(例えば非特許文献2参照)。
【0003】
また、例えば特許文献2に示すようなパルス電源が提案されている。このパルス電源100は、図29に示すように、直流電源部102の両端にインダクタ104、第1の半導体スイッチ106及び第2の半導体スイッチ108を直列に接続し、第1の半導体スイッチ106のアノード端子に一端が接続された前記インダクタ104の他端にカソード、前記第1の半導体スイッチ106のゲート端子にアノードとなるようにダイオード110を接続した極めて簡単な回路である。
【0004】
そして、第2の半導体スイッチ108をオンすることにより、第1の半導体スイッチ106も導通し、インダクタ104に直流電源部102の電圧が印加され、該インダクタ104に誘導エネルギーが蓄積される。その後、第2の半導体スイッチ108をオフさせると、第1の半導体スイッチ106も急速にターンオフするため、インダクタ104に非常に急峻に立ち上がる極めて幅の狭い高電圧パルスPoが発生し、出力端子112及び114より高電圧パルスPoを取り出すことができる。
【0005】
このパルス電源100によれば、高電圧が印加される半導体スイッチを複数個使用することなく、簡単な回路構成で、急峻な立ち上がり時間と極めて狭いパルス幅を有する高電圧パルスPoを供給することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第2649340号公報
【特許文献2】特開2002−359979号公報
【非特許文献1】応用物理,第61巻,第10号,1992,p.1039〜1043,「高電圧パルス放電化学気相成長法によるアモルファスシリコン系薄膜の作製」
【非特許文献2】IEEE TRANSACTION ON PLASMIC SCIENCE,VOL.28,NO.2,APRIL 2000,p.434〜442,「Improvement of NOx Removal Efficiency Using Short-Width Pulsed Power」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図29に示すようなパルス電源においては、二次側に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流せるようにすることが望まれている。
【0008】
また、図29に示すようなパルス電源においては、出力端子にそれぞれ電極を接続し、さらに、これら電極を反応器に収容してプラズマ反応を起こさせるようにしているが、インダクタに電磁エネルギーを蓄積する期間(充電期間)において、インダクタに誘起される電圧(誘起電圧)が二次側に接続された負荷(例えば反応器内の電極)に印加され、反応器内でアーク放電が発生するおそれがある。アーク放電が発生すると、インダクタの一次側回路(主回路)に過電流が流れ、各種半導体スイッチに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
また、電界を変化させて、電子を加速することによってプラズマを発生するために用いられるパルス電源では、低電圧によって高い電位差を発生させるために、極性が逆のパルス、すなわち、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して出力する方式が採用されている。
【0010】
この方式による従来のパルス電源200は、例えば図30に示すように、直流電源202と、該直流電源202の両端に直列接続された第1のスイッチ204及び第2のスイッチ206と、前記直流電源202の両端に直列接続された第3のスイッチ208及び第4のスイッチ210と、第1のスイッチ204と第2のスイッチ206との接点a1と第3のスイッチ208及び第4のスイッチ210との接点a2との間に一次巻線212が接続されたトランス214とを有する。つまり、ブリッジ構成となっている。出力電圧Voutはトランス214の二次巻線216の両端から取り出されるようになっている。
【0011】
そして、例えば第2のスイッチ206と第3のスイッチ208をオンすることで、図31に示すように、二次巻線216の両端からは負極性の電圧が出力され、所定時間後、第2のスイッチ206と第3のスイッチ208をオフするとことで負極性のパルス218が生成される。また、第1のスイッチ204と第4のスイッチ210をターンオンすることで、二次巻線216の両端からは正極性の電圧が出力され、所定時間後、第1のスイッチ204と第4のスイッチ210をターンオフすることで負極性のパルス220が出力されることになる。
【0012】
しかし、この従来例に係るパルス電源200は、ブリッジを組むことから、4つのスイッチ204、206、208及び210を使用する必要があり、部品点数が多くなるという不都合がある。これは、サイズの大型化、コストの高価格化を招く。
【0013】
しかも、上述したように、二次側において、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流せるようにすることや、充電期間において、反応器内の電極に誘起電圧が印加されないようにすることが必要である。
【0014】
また、アプリケーションの適正条件に応じて、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができるようにすることが必要である。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる電気回路及びパルス電源を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明の他の目的は、第1の回路での充電期間において、第2の回路に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができるパルス電源を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができるパルス電源を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、二次側に急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができるパルス電源を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明の他の目的は、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、一次側での充電期間において、二次側に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができるパルス電源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る電気回路は、第1の半導体スイッチを有する第1の回路と、前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行う第2の回路とを具備し、前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とする。
【0021】
これにより、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0022】
そして、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有するようにしてもよい。
【0023】
あるいは、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有するようにしてもよい。
【0024】
また、本発明に係るパルス電源は、電力源と第1の半導体スイッチとを有する第1の回路と、前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行い、高電圧パルスを発生する第2の回路とを具備し、前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とする。
【0025】
これにより、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0026】
そして、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有するようにしてもよい。
【0027】
あるいは、前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有するようにしてもよい。
【0028】
また、前記構成において、前記第1の回路と前記第2の回路がトランスを介して結合され、前記第1の回路に前記トランスの一次巻線が接続され、前記第2の回路に前記トランスの二次巻線が接続され、前記第2の半導体スイッチは、前記二次巻線に直列に、且つ、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間において、前記第2の回路に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されていてもよい。
【0029】
これにより、第1の回路での充電期間において、第2の回路に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0030】
また、本発明に係るパルス電源は、第1のインダクタに対する第1の誘導エネルギーの蓄積と、前記第1のインダクタからの前記第1の誘導エネルギーの解放に伴う第1のパルスの発生と、第2のインダクタに対する第2の誘導エネルギーの蓄積と、前記第2のインダクタからの前記第2の誘導エネルギーの解放に伴う前記第1のパルスとは逆極性の第2のパルスの発生とを行うことを特徴とする。
【0031】
これにより、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができる。その結果、高電圧パルスの放電によるプラズマ処理の各種アプリケーションの適正条件に応じたパルスの発生が可能となり、成膜速度やガス分解効率の向上を図ることができる。これは、パルス電源の汎用性の向上につながる。
【0032】
そして、上述の発明に係るパルス電源の具体的構成として、直流電源と、前記第1のインダクタの一次巻線と前記第2のインダクタの一次巻線との接点と前記直流電源との間に接続され、且つ、前記接点に向けて電流を流す整流素子と、前記整流素子からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流すように制御する第1のスイッチ回路と、前記整流素子からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流すように制御する第2のスイッチ回路とを有するようにしてもよい。
【0033】
また、前記構成において、前記第1のスイッチ回路は、前記第1のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流す第1の半導体スイッチと、前記第1の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の半導体スイッチと、前記第2の半導体スイッチのオン/オフを制御する第1の制御回路とを有し、前記第2のスイッチ回路は、前記第2のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流す第3の半導体スイッチと、前記第3の半導体スイッチのオン/オフを制御する第4の半導体スイッチと、前記第4の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の制御回路とを有するようにしてもよい。
【0034】
また、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第5の半導体スイッチを有し、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第6の半導体スイッチを有するようにしてもよい。これにより、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、二次側に急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0035】
この場合、前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第3の制御回路と、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第4の制御回路とを有するようにしてもよい。
【0036】
あるいは、前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第1の回路と、前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第2の回路とを有するようにしてもよい。
【0037】
また、前記構成において、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第1のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第7の半導体スイッチと、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第2のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第8の半導体スイッチとを有するようにしてもよい。これにより、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、一次側での充電期間において、二次側に接続された負荷に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0038】
この場合、前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第5の制御回路と、前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第6の制御回路とを有するようにしてもよい。
【0039】
あるいは、前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路と、前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第4の回路とを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明に係る電気回路によれば、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0041】
また、本発明に係るパルス電源によれば、第1の回路から第2の回路に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0042】
また、本発明に係るパルス電源によれば、第1の回路での充電期間において、第2の回路に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0043】
また、本発明に係るパルス電源によれば、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスのパルス幅と、負極性のパルスのパルス幅を独立に変えることができる。
【0044】
また、本発明に係るパルス電源によれば、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、二次側に急峻な立ち上がりの大電流を低損失で流すことができる。
【0045】
また、本発明に係るパルス電源によれば、正極性のパルスと負極性のパルスを連続して発生することができ、しかも、一次側での充電期間において、二次側に誘起電圧が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明に係る電気回路及びパルス電源を各種パルス電源に適用した実施の形態例を図1〜図28を参照しながら説明する。
【0047】
まず、第1の実施の形態に係るパルス電源10Aは、図1に示すように、第1の回路12と、第2の回路14と、これら第1及び第2の回路12及び14を結合するトランス16と、スイッチングコントローラ18とを有する。第1の回路12にトランス16の一次巻線20が接続され、第2の回路14にトランス16の二次巻線22が接続され、該二次巻線22の両端から出力が取り出されるようになっている。二次巻線22の両端には負荷24が接続されている。負荷24としては、例えば抵抗負荷や容量性負荷(放電ギャップ等)が用いられる。
【0048】
第1の回路12は、直流電源(電源電圧=E)26と、一次巻線20の他方の端子30と直流電源26の−端子との間に接続され、且つ、直流電源26からの電流を一次巻線20に向けて流す第1の半導体スイッチSW1と、該第1の半導体スイッチSW1のオン/オフを制御する第2の半導体スイッチSW2とを有する。
【0049】
第1の半導体スイッチSW1は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第1の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0050】
第1の半導体スイッチSW1は、ゲート端子と直流電源26の+端子との間に、ダイオードD1と第1の抵抗R1との並列回路32が接続されている。ダイオードD1は、そのアノード端子が第1の半導体スイッチSW1のゲート端子に接続され、カソード端子が直流電源26の+端子に接続されている。
【0051】
第2の半導体スイッチSW2は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第1の実施の形態では、アバランシェ形ダイオードが逆並列で内蔵された例えばnチャネル型の電力用金属酸化半導体電界効果トランジスタを使用している。
【0052】
第2の半導体スイッチSW2は、ソース端子が直流電源26の−端子に接続され、ドレイン端子が第1の半導体スイッチSW1のカソード端子に接続されている。
【0053】
第2の半導体スイッチSW2のゲート端子には、スイッチングコントローラ18からのスイッチング制御信号Scを増幅して前記ゲート端子に供給するドライバ回路34が接続されている。
【0054】
一方、第2の回路14は、トランス16の二次巻線22と直列に接続された第3の半導体スイッチSW3を有する。この第3の半導体スイッチSW3は、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間において、第2の回路14に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されている。
【0055】
第3の半導体スイッチSW3は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第1の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0056】
そして、この第3の半導体スイッチSW3のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの制御信号Spをパルス成形してパルス信号Pcとして出力するゲートアンプ36が接続されている。
【0057】
ここで、第1の実施の形態に係るパルス電源10Aの回路動作、特に、二次巻線22の両端に接続される負荷24として一対の電極38a及び38bを有する放電ギャップを用いた場合の回路動作について、図1〜図4の回路図と図5の波形図とを参照しながら説明する。
【0058】
なお、直流電源26の電圧をE(V)、トランス16の巻線比(一次巻線20の巻数/二次巻線22の巻数)を1/n1とする。また、トランス16の一次インダクタンス(励磁インダクタンス)をLexとする。
【0059】
まず、モード0(初期状態)においては、図1に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0060】
その後、図5の時点t0において、第2の半導体スイッチSW2のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Scが供給され、第2の半導体スイッチSW2がオフからオンになる(図5参照)。
【0061】
時点t0で第2の半導体スイッチSW2がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図2に示すように、直流電源26→抵抗R1→第1の半導体スイッチSW1のゲート端子→第1の半導体スイッチSW1のカソード端子→第2の半導体スイッチSW2の経路40で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がターンオンする。これにより、トランス16の一次巻線20には、Vi1=+E(V)が印加され、直流電源26→一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→第2の半導体スイッチSW2の経路42で電流Iiが流れる。電流Iiは、勾配(E/Lex)で時間の経過に伴って直線状に正方向に増加し(図5参照)、一次巻線20に電磁エネルギーが充電される。
【0062】
そして、第2の半導体スイッチSW2がオンとなっている期間Twにおいて、二次巻線22の両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。この二次巻線22の両端に誘起される電圧V1のレベルはn1・E(V)である(図5参照)。
【0063】
また、前記期間Twの最終段階において、スイッチングコントローラ18の制御によってゲートアンプ36からパルス信号Pcが出力され、これによって、第3の半導体スイッチSW3にゲート電流が流れ、該第3の半導体スイッチSW3がオン状態となる。期間Twの最終段階としては、例えば第3の半導体スイッチSW3に対してゲート電流を流すことによって第3の半導体スイッチSW3が完全にオン状態となる期間Tcを見越した時点ta等が挙げられる(図5参照)。
【0064】
但し、第3の半導体スイッチSW3は、アノード−カソード間が二次巻線22の両端に誘起された正極性の電圧(誘起電圧)V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24の一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図5において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第3の半導体スイッチSW3によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0065】
一次巻線20を流れる電流Iiは、時点t1でIip(=E・Tw/Lex)となり、所望の電磁エネルギー(=Lex・Iip2/2)が得られると、スイッチングコントローラ18を通じて低レベルのスイッチング制御信号Scが供給され、これにより、第2の半導体スイッチSW2がターンオフする(図5参照)。
【0066】
時点t1において、第2の半導体スイッチSW2がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図3に示すように、第1の回路12では、一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→ダイオードD1の経路44で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がオフへ移行を始める。また、同時に、一次巻線20に充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流が流れ出す(経路46参照)。このとき、第3の半導体スイッチSW3には第2の半導体スイッチSW2がターンオフする前から十分なゲート電流が流れてオン状態となっているため、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。その後、第1の半導体スイッチSW1は完全なオフ状態に至る。
【0067】
第1の半導体スイッチSW1が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図4に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(Vop)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPoが出力され(図5参照)、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPoの立ち上がりの傾きは、トランス16の励磁インダクタンス(Lex)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0068】
なお、二次巻線22の両端には、前記出力電圧Voとは逆極性の電圧、すなわち、負電圧値(V1p)をピークとした負極性のパルスP1が誘起される。
【0069】
出力電圧Voが放電開始電圧Vopに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図1に示すモード0(初期状態)となる。この一連の動作が繰り返されることで、正極性の高電圧パルスPoが連続して出力されることになる。
【0070】
また、正極性のパルスPoのパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定される。一般に共振周波数が低いほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0071】
なお、直流電源26の電圧Eを100V、励磁インダクタンスLexを10(μH)、トランス16の巻線比を1/(5〜10)としたとき、一次巻線20を流れる電流Iiのピーク値Iipはほぼ100(A)、出力電圧Voのピーク値(Vop)は数〜30(kV)、第2の回路14を流れる出力電流Ioのピーク値(Iop)は数〜数10(A)である。また、第2の半導体スイッチSW2がオンとなっている時間(時点t0から時点t1までの時間Tw)は約10μsecである。
【0072】
このように、第1の実施の形態に係るパルス電源10Aにおいては、第2の回路14に、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間Twの少なくとも最終段階において、逆バイアス下においてオン状態とされる第3の半導体スイッチSW3を接続するようにしたので、第1の回路12から第2の回路14に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。
【0073】
しかも、第1の実施の形態では、第3の半導体スイッチSW3を、トランス16の二次巻線22に直列に、且つ、第2の半導体スイッチSW2がオンとされている期間Twにおいて、二次巻線22に誘起される電圧V1が逆バイアスとなる方向に接続するようにしたので、第1の回路12での充電期間Twにおいて、一対の電極38a及び38bに対して二次巻線22での誘起電圧V1が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0074】
次に、第2の実施の形態に係るパルス電源10Bについて図6〜図10を参照しながら説明する。
【0075】
この第2の実施の形態に係るパルス電源10Bは、図6に示すように、上述した第1の実施の形態に係るパルス電源10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1の回路12におけるトランス16の一次巻線20と第1の半導体スイッチSW1のアノード端子間の導体に変流器50を取り付け、該変流器50の出力端子をそれぞれ第3の半導体スイッチSW3のゲート端子とカソード端子に接続した点で異なる。
【0076】
ここで、第2の実施の形態に係るパルス電源10Bの回路動作について、図6〜図9の回路図と図10の波形図とを参照しながら説明する。
【0077】
まず、モード0(初期状態)においては、図6に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0078】
その後、図10の時点t0において、第2の半導体スイッチSW2のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Scが供給され、第2の半導体スイッチSW2がオフからオンになる(図10参照)。
【0079】
時点t0で第2の半導体スイッチSW2がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図7に示すように、直流電源26→抵抗R1→第1の半導体スイッチSW1のゲート端子→第1の半導体スイッチSW1のカソード端子→第2の半導体スイッチSW2の経路40で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がターンオンする。これにより、トランス16の一次巻線20には、直流電源26の電圧Eが印加され、直流電源26→一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→第2の半導体スイッチSW2の経路42で電流Iiが流れ、一次巻線20に電磁エネルギーが充電される。そして、第2の半導体スイッチSW2がオンとなっている期間Twにおいて、二次巻線22の両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。
【0080】
また、前記電流Iiが流れることによって、変流器50を通じて第3の半導体スイッチSW3にゲート電流Igが流れ、該第3の半導体スイッチSW3がオン状態となる。但し、第3の半導体スイッチSW3は、アノード−カソード間が二次巻線22の両端に誘起された正極性の電圧V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図10において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第3の半導体スイッチSW3によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0081】
時点t1において、第2の半導体スイッチSW2がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図8に示すように、第1の回路12では、一次巻線20→第1の半導体スイッチSW1→ダイオードD1の経路44で電流が流れ、第1の半導体スイッチSW1がオフへ移行を始める。また、同時に、一次巻線20に充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流が流れ出す(経路46参照)。このとき、第3の半導体スイッチSW3には事前に十分なゲート電流Igが流れていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。その後、第1の半導体スイッチSW1は完全なオフ状態に至る。
【0082】
第1の半導体スイッチSW1が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図9に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(Vop)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPoが出力され、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPoの立ち上がりの傾きは、トランス16の励磁インダクタンス(Lex)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0083】
出力電圧Voが放電開始電圧Vopに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図6に示すモード0(初期状態)となる。この一連の動作が繰り返されることで、正極性の高電圧パルスPoが連続して出力されることになる。
【0084】
ここで、正極性のパルスPoのパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定される。一般に共振周波数が低いほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0085】
このように、第2の実施の形態に係るパルス電源10Bにおいては、上述した第1の実施の形態に係るパルス電源10Aと同様に、第1の回路12から第2の回路14に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。しかも、第1の回路12での充電期間Twにおいて、一対の電極38a及び38bに対して二次巻線22での誘起電圧V1が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0086】
特に、この第2の実施の形態では、第1の回路12に変流器50を取り付けるだけで、第3の半導体スイッチSW3のオン状態を制御することができるため、回路構成の簡略化を図ることができ、パルス電源10Bのコストの低廉化、サイズの小型化を促進させることができる。
【0087】
次に、第3の実施の形態に係るパルス電源10Cについて図11〜図19を参照しながら説明する。
【0088】
この第3の実施の形態に係るパルス電源10Cは、上述した第1及び第2の実施の形態に係るパルス電源10A及び10Bと異なり、正極性の高電圧パルスと負極性の高電圧パルスを交互に、かつ、連続して出力させることができる。
【0089】
具体的には、この第3の実施の形態に係るパルス電源10Cは、図11に示すように、第1の回路12と、第2の回路14と、これら第1及び第2の回路12及び14を結合する2つのトランス(第1のトランス16A及び第2のトランス16B)と、スイッチングコントローラ18と第11のダイオードD11とを有する。
【0090】
第1の回路12に第1及び第2のトランス16A及び16Bの各一次巻線(第1の一次巻線20A及び第2の一次巻線20B)が接続され、第2の回路14に第1及び第2のトランス16A及び16Bの各二次巻線(第1の二次巻線22A及び第2の二次巻線22B)が接続されている。そして、第2の回路14の出力端子から出力が取り出されるようになっている。出力端子には負荷24が接続されている。負荷24としては、例えば抵抗負荷や容量性負荷(放電ギャップ等)が用いられる。
【0091】
第1の回路12は、直流電源(電源電圧=E)26と、第1の一次巻線20Aと第2の一次巻線20Bとの接点60と直流電源26の+端子との間に順方向接続された前記第11のダイオードD11と、第1の一次巻線20Aと直流電源26の−端子との間に接続され、且つ、直流電源26からの電流を第1の一次巻線20Aに向けて流す第11の半導体スイッチSW11と、該第11の半導体スイッチSW11のオン/オフを制御する第12の半導体スイッチSW12と、第2の一次巻線20Bと直流電源26の−端子との間に接続され、且つ、直流電源26からの電流を第2の一次巻線20Bに向けて流す第13の半導体スイッチSW13と、該第13の半導体スイッチSW13のオン/オフを制御する第14の半導体スイッチSW14とを有する。
【0092】
第1及び第3の半導体スイッチSW11及びSW13は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0093】
第11の半導体スイッチSW11は、ゲート端子と第11のダイオードD11のアノード端子との間に、第12のダイオードD12と第11の抵抗R11との並列回路32Aが接続されている。第12のダイオードD12は、そのアノード端子が第11の半導体スイッチSW11のゲート端子に接続され、カソード端子が第11のダイオードD11のアノード端子に接続される。
【0094】
第13の半導体スイッチSW13は、ゲート端子と第11のダイオードD11のアノード端子との間に、第13のダイオードD13と第12の抵抗R12との並列回路32Bが接続されている。第13のダイオードD13は、そのアノード端子が第13の半導体スイッチSW13のゲート端子に接続され、カソード端子が第11のダイオードD11のアノード端子に接続される。
【0095】
第12及び第14の半導体スイッチSW12及びSW14は、自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、アバランシェ形ダイオードが逆並列で内蔵された例えばnチャネル型の電力用金属酸化半導体電界効果トランジスタを使用している。
【0096】
第12の半導体スイッチSW12は、ソース端子が直流電源26の−端子に接続され、ドレイン端子が第11の半導体スイッチSW11のカソード端子に接続されている。
【0097】
第14の半導体スイッチSW14は、ソース端子が直流電源26の−端子に接続され、ドレイン端子が第13の半導体スイッチSW13のカソード端子に接続されている。
【0098】
第12の半導体スイッチSW12のゲート端子には、スイッチングコントローラ18からの第1のスイッチング制御信号Sc1を増幅して前記ゲート端子に供給する第1のドライバ回路34Aが接続されている。第14の半導体スイッチSW14のゲート端子には、スイッチングコントローラ18からの第2のスイッチング制御信号Sc2を増幅して前記ゲート端子に供給する第2のドライバ回路34Bが接続されている。
【0099】
また、この第1の回路12は、第11のダイオードD11のカソード端子と第13の半導体スイッチSW13のアノード端子との間に第15の半導体スイッチSW15が接続され、第11のダイオードD11のカソード端子と第11の半導体スイッチSW11のアノード端子との間に第16の半導体スイッチSW16が接続されている。
【0100】
第15の半導体スイッチSW15は、第14の半導体スイッチSW14及び第13の半導体スイッチSW13がオンとされている期間において、直流電源26の電源電圧Eが逆バイアスとなる方向に接続され、第16の半導体スイッチSW16は、第12の半導体スイッチSW12及び第11の半導体スイッチSW11がオンとされている期間において、直流電源26の電源電圧Eが逆バイアスとなる方向に接続されている。
【0101】
すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子が第11のダイオードD11のカソード端子を向くように接続され、同様に、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子が第11のダイオードD11のカソード端子を向くように接続されている。
【0102】
第15及び第16の半導体スイッチSW15及びSW16は自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0103】
そして、第15の半導体スイッチSW15のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第1の制御信号Sp1をパルス成形して第1のパルス信号Pc1として出力する第1のゲートアンプ36Aが接続され、第16の半導体スイッチSW16のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第2の制御信号Sp2をパルス成形して第2のパルス信号Pc2として出力する第2のゲートアンプ36Bが接続されている。
【0104】
一方、第2の回路14は、第1の二次巻線22Aと第2の二次巻線22Bとの間に、2つの半導体スイッチ(第17の半導体スイッチSW17及び第18の半導体スイッチSW18)が互いに方向を逆にして、かつ、並列に接続された並列回路62が接続されている。
【0105】
第17の半導体スイッチSW17は、第12の半導体スイッチSW12及び第11の半導体スイッチSW11がオンとされている期間において、第1の二次巻線22Aに誘起される電圧が逆バイアスとなる方向に接続され、第18の半導体スイッチSW18は、第14の半導体スイッチSW14及び第13の半導体スイッチSW13がオンとされている期間において、第2の二次巻線22Bに誘起される電圧が逆バイアスとなる方向に接続されている。
【0106】
すなわち、第1の二次巻線22Aの一方の端子64aが第2の回路14の一方の出力端子(一方の電極38a)に接続され、第2の二次巻線22Bの一方の端子66aが第2の回路14の他方の出力端子(他方の電極38b)に接続されている場合に、第17の半導体スイッチSW17は、カソード端子が第1の二次巻線22Aの他方の端子64bに接続され、アノード端子が第2の二次巻線22Bの他方の端子66bに接続される。同様に、第18の半導体スイッチSW18は、カソード端子が第2の二次巻線22Bの他方の端子66bに接続され、アノード端子が第1の二次巻線22Aの他方の端子64bに接続される。
【0107】
第17及び第18の半導体スイッチSW17及びSW18は自己消弧形あるいは転流消弧形のデバイスを用いることができる。この第3の実施の形態では、SIサイリスタを用いた例を示す。もちろん、バイポーラトランジスタやGTO等を用いてもよい。
【0108】
そして、第17の半導体スイッチSW17のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第3の制御信号Sp3をパルス成形して第3のパルス信号Pc3として出力する第3のゲートアンプ36Cが接続され、第18の半導体スイッチSW18のゲート端子とカソード端子間に、スイッチングコントローラ18からの第4の制御信号Sp4をパルス成形して第4のパルス信号Pc4として出力する第4のゲートアンプ36Dが接続されている。
【0109】
ここで、第3の実施の形態に係るパルス電源10Cの回路動作について、図11の回路図と、図12〜図17の動作説明図と、図18及び図19の波形図とを参照しながら説明する。
【0110】
なお、直流電源26の電圧をE(V)、第1のトランス16Aの巻線比(第1の一次巻線20Aの巻数/第1の二次巻線22Aの巻数)を1/n1とし、第2のトランス16Bの巻線比(第2の一次巻線20Bの巻数/第2の二次巻線22Bの巻数)を1/n2とする。また、第1のトランス16Aの一次インダクタンス(励磁インダクタンス)をLex1、第2のトランス16Bの一次インダクタンス(励磁インダクタンス)をLex2とする。
【0111】
まず、モード0(初期状態)においては、図11に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0112】
その後、図18の時点t0において、第12の半導体スイッチSW12のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc1が供給され、第12の半導体スイッチSW12がオフからオンになる。
【0113】
時点t0で第12の半導体スイッチSW12がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図12に示すように、直流電源26→第11の抵抗R11→第11の半導体スイッチSW11のゲート端子→第11の半導体スイッチSW11のカソード端子→第12の半導体スイッチSW12の経路40Aで電流が流れ、第11の半導体スイッチSW11がターンオンする。これにより、第1のトランス16Aの第1の一次巻線20Aには、Vi1=E(V)が印加され、直流電源26→第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12の半導体スイッチSW12の経路42Aで電流I1(=I2)が流れる。電流I1は、勾配(E/Lex1)で時間の経過に伴って直線状に正方向に増加し(図18参照)、第1の一次巻線20Aに電磁エネルギーが充電される。
【0114】
そして、第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている期間Tw1において、第1の二次巻線22Aの両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。この第1の二次巻線22Aの両端に誘起される電圧V1のレベルはn1・E(V)である(図19参照)。
【0115】
また、前記期間Tw1の最終段階において、スイッチングコントローラ18の制御によって、第1及び第3のゲートアンプ36A及び36Cからパルス信号Pc1及びPc3が出力され、これによって、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17に第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れ、これら第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17がそれぞれオン状態となる。期間Tw1の最終段階としては、例えば第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17に対して第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3を流すことによって第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17が完全にオン状態となる期間Tcを見越した時点ta等が挙げられる(図18参照)。
【0116】
第17の半導体スイッチSW17は、アノード−カソード間が第1の二次巻線22Aの両端に誘起された正極性の電圧V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図19において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第17の半導体スイッチSW17によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0117】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0118】
さらに、第16の半導体スイッチSW16は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0119】
第1の一次巻線20Aを流れる電流I1は、時点t1でI1p(=E・Tw1/Lex1)となり、所望の電磁エネルギー(=Lex1・I1p2/2)が得られると、スイッチングコントローラ18を通じて低レベルのスイッチング制御信号Sc1が供給され、これにより、第12の半導体スイッチSW12がターンオフする。
【0120】
時点t1において、第12の半導体スイッチSW12がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図13に示すように、第1の回路12では、第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12のダイオードD12→第11のダイオードD11の経路44Aで電流I1(=I2)が流れ、第11の半導体スイッチSW11がオフへ移行を始める。また、同時に、第1の一次巻線20Aに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流Ioが流れ出す(経路46A参照)。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には第12の半導体スイッチSW12がターンオフする前から十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れてオン状態となっているため、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路48Aで電流I5(=I6)が流れる。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には第12の半導体スイッチSW12がターンオフする前から十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第11の半導体スイッチSW11は完全なオフ状態に至る。
【0121】
第11の半導体スイッチSW11が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図14に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(V1p)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPo1が出力され(図19参照)、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPo1の立ち上がりの傾きは、第1のトランス16Aの励磁インダクタンス(Lex1)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。なお、第1の二次巻線22Aの両端には、前記出力電圧Voとは逆極性の電圧V1、すなわち、負電圧値(V1p)をピークとした負極性のパルスP1が誘起される。
【0122】
出力電圧Voが放電開始電圧V1pに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図11に示すモード0(初期状態)となる。
【0123】
ここで、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0124】
なお、直流電源26の電圧Eを100V、励磁インダクタンスLex1を10(μH)、第1のトランス16Aの巻線比を1/(5〜10)としたとき、第1の一次巻線20Aを流れる電流I1(=I2)のピーク値I1pはほぼ100(A)、出力電圧Voのピーク値(V1p)は数〜30(kV)、第2の回路14を流れる出力電流Ioのピーク値(Iop1)は10〜20(A)である。また、第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている時間(時点t0から時点t1までの時間)Tw1は約10μsecである。
【0125】
その後、図18の時点t10において、第14の半導体スイッチSW14のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc2が供給され、第14の半導体スイッチSW14がオフからオンになる。
【0126】
時点t10で第14の半導体スイッチSW14がターンオンすると、モード4(充電期間)に入り、図15に示すように、今度は、直流電源26→第12の抵抗R12→第13の半導体スイッチSW13のゲート端子→第13の半導体スイッチSW13のカソード端子→第14の半導体スイッチSW14の経路40Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がターンオンする。これにより、第2のトランス16Bの第2の一次巻線20Bには、Vi2=E(V)が印加され、直流電源26→第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第14の半導体スイッチSW14の経路42Bで電流I4(=I5)が流れる。電流I4は、勾配(E/Lex2)で時間の経過に伴って直線状に正方向に増加し(図18参照)、第2の一次巻線20Bに電磁エネルギーが充電される。
【0127】
そして、第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている期間Tw2において、第2の二次巻線22Bの両端には、一定の正極性の電圧V2が誘起される。この第2の二次巻線22Bの両端に誘起される電圧V2のレベルはn2・E(V)である(図19参照)。
【0128】
また、前記期間Tw2の最終段階において、スイッチングコントローラ18の制御によって、第2及び第4のゲートアンプ36B及び36Dから第2及び第4のパルス信号Pc2及びPc4が出力され、これによって、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18に第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れ、これら第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18がそれぞれオン状態となる。期間Tw2の最終段階としては、例えば第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18に対して第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4を流すことによって第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18が完全にオン状態となる期間Tdを見越した時点tb等が挙げられる。
【0129】
同様に、第18の半導体スイッチSW18は、アノード−カソード間が第2の二次巻線22Bの両端に誘起された正極性の電圧V2によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V2に基づく正極性の電圧(V2:図19において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第18の半導体スイッチSW18によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0130】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0131】
さらに、第15の半導体スイッチSW15は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0132】
第2の一次巻線20Bを流れる電流I4(=I5)は、時点t1でI4p(=E・Tw2/Lex2)となり、所望の電磁エネルギー(=Lex2・I4p2/2)が得られると、スイッチングコントローラ18を通じて低レベルのスイッチング制御信号Sc2が供給され、これにより、第14の半導体スイッチSW14がターンオフする。
【0133】
時点t11において、第14の半導体スイッチSW14がターンオフすると、モード5(転流期間)に入り、図16に示すように、第1の回路12では、第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第13のダイオードD13→第11のダイオードD11の経路44Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がオフへ移行を始める。また、同時に、第2の一次巻線20Bに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流が流れ出す(経路46B参照)。このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には第14の半導体スイッチSW14がターンオフする前から十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れてオン状態となっているため、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路48Bで電流I2(=I3)が流れる。このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には第14の半導体スイッチSW14がターンオフする前から十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第13の半導体スイッチSW13は完全なオフ状態に至る。
【0134】
第13の半導体スイッチSW13が完全にオフ状態になると、モード6(放電期間)に入り、図17に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voの絶対値が上昇し、負電圧値(V2p)をピーク(放電開始電圧)とした負極性のパルスPo2が出力され(図19参照)、出力電流Ioは減少する。この負極性のパルスPo2の立ち上がりの傾きは、第2のトランス16Bの励磁インダクタンス(Lex2)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。なお、第2の二次巻線22Bの両端には、前記出力電圧Voとは同極性の電圧V2、すなわち、負電圧値(V2p)をピークとした負極性のパルスP2が誘起される。
【0135】
出力電圧Voが放電開始電圧V2pに達すると、該出力電圧Voの絶対値は急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図1に示すモード0(初期状態)となる。
【0136】
ここで、負極性のパルスPo2のパルス幅Tp2は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp2は大きくなる。
【0137】
なお、直流電源26の電圧Eを100V、励磁インダクタンスLex2を20(μH)、第2のトランス16Bの巻線比を1/(5〜10)としたとき、第2の一次巻線20Bを流れる電流I4のピーク値I4pはほぼ100(A)、出力電圧Voのピーク値(V2p)は−数〜−30(kV)、第2の回路14を流れる出力電流Ioのピーク値(Iop2)は−10〜−20(A)である。また、第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている時間(時点t10から時点t11までの時間)Tw2は約20μsecである。
【0138】
上述の一連の動作が繰り返されることで、正極性の高電圧パルスPo1と負極性の高電圧パルスPo2が交互に、且つ、連続して出力されることになる。
【0139】
このように、第3の実施の形態に係るパルス電源10Cにおいては、第1のトランス16Aに対する第1の誘導エネルギーの蓄積と、第1のトランス16Aからの第1の誘導エネルギーの解放に伴う正極性の高電圧パルスPo1の発生と、第2のトランス16Bに対する第2の誘導エネルギーの蓄積と、第2のトランス16Bからの第2の誘導エネルギーの解放に伴う負極性の高電圧パルスPo2の発生とを行うようにしている。
【0140】
これにより、正極性の高電圧パルスPo1と負極性の高電圧パルスPo2を連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1と、負極性のパルスPo2のパルス幅Tp2を独立に変えることができる。その結果、高電圧パルスPo1及びPo2の放電によるプラズマ処理の各種アプリケーションの適正条件に応じたパルスの発生が可能となり、成膜速度やガス分解効率の向上を図ることができる。これは、パルス電源10Cの汎用性の向上につながる。
【0141】
また、第1のトランス16Aに対する第1の誘導エネルギーの蓄積期間(第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている期間)Tw1の少なくとも最終段階に、ゼロ電流状態においてオン状態とされる第15の半導体スイッチSW15を有し、第2のトランス16Bに対する第2の誘導エネルギーの蓄積期間(第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている期間)Tw2の少なくとも最終段階に、ゼロ電流状態においてオン状態とされる第16の半導体スイッチSW16を有するようにしたので、第2の回路14に急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。
【0142】
さらに、この第3の実施の形態では、第1のトランス16Aに対する第1の誘導エネルギーの蓄積期間Tw1の少なくとも最終段階に、第1のトランス16Aの第1の二次巻線22Aに発生する電圧V1による逆バイアス下においてオン状態とされる第17の半導体スイッチSW17と、第2のトランス16Bに対する第2の誘導エネルギーの蓄積期間Tw2の少なくとも最終段階に、第2のトランス16Bの第2の二次巻線22Bに発生する電圧V2による逆バイアス下においてオン状態とされる第18の半導体スイッチSW18とを有するようにしたので、第1の回路12での充電期間Tw1及びTw2において、第2の回路14に接続された負荷24(一対の電極38a及び38b)に誘起電圧V1及びV2が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0143】
次に、第4の実施の形態に係るパルス電源10Dについて図20〜図28を参照しながら説明する。
【0144】
この第4の実施の形態に係るパルス電源10Dは、図20に示すように、上述した第3の実施の形態に係るパルス電源10Cとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
【0145】
すなわち、第1の回路12における第1のトランス16Aの第1の一次巻線20Aと第11の半導体スイッチSW11のアノード端子間の導体に2つの変流器(第1の変流器50A及び第2の変流器50B)を取り付け、第1の変流器50Aの出力端子をそれぞれ第15の半導体スイッチSW15のゲート端子とカソード端子に接続し、第2の変流器50Bの出力端子をそれぞれ第17の半導体スイッチSW17のゲート端子とカソード端子に接続している。
【0146】
同様に、第1の回路12における第2のトランス16Bの第2の一次巻線20Bと第13の半導体スイッチSW13のアノード端子間の導体に2つの変流器(第3の変流器50C及び第4の変流器50D)を取り付け、第3の変流器50Cの出力端子をそれぞれ第16の半導体スイッチSW16のゲート端子とカソード端子に接続し、第4の変流器50Dの出力端子をそれぞれ第18の半導体スイッチSW18のゲート端子とカソード端子に接続している。
【0147】
ここで、第4の実施の形態に係るパルス電源10Dの回路動作について、図20〜図26の回路図と図27及び図28の波形図とを参照しながら説明する。
【0148】
まず、モード0(初期状態)においては、図20に示すように、全てのスイッチがオフ状態となっている。
【0149】
その後、図27の時点t0において、第12の半導体スイッチSW12のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc1が供給され、第12の半導体スイッチSW12がオフからオンになる。
【0150】
時点t0で第12の半導体スイッチSW12がターンオンすると、モード1(充電期間)に入り、図21に示すように、直流電源26→第11の抵抗R11→第11の半導体スイッチSW11のゲート端子→第11の半導体スイッチSW11のカソード端子→第12の半導体スイッチSW12の経路40Aで電流が流れ、第11の半導体スイッチSW11がターンオンする。これにより、第1のトランス16Aの第1の一次巻線20Aには、直流電源26の電圧Eが印加され、直流電源26→第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12の半導体スイッチSW12の経路42Aで電流I1(=I2)が流れ、第1の一次巻線20Aに電磁エネルギーが充電される。そして、第12の半導体スイッチSW12がオンとなっている期間Tw1において、第1の二次巻線22Aの両端には、一定の正極性の電圧V1が誘起される。
【0151】
また、前記電流I1が流れることによって、第1及び第2の変流器50A及び50Bを通じて第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17にそれぞれ第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れ、これら第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17がオン状態となる。
【0152】
第17の半導体スイッチSW17は、アノード−カソード間が第1の二次巻線22Aの両端に誘起された正極性の電圧V1によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記誘起電圧V1に基づく負極性の電圧(−V1:図28において電圧Voの破線で示す電圧)の印加が、第17の半導体スイッチSW17によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0153】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0154】
さらに、第16の半導体スイッチSW16は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0155】
時点t1において、第12の半導体スイッチSW12がターンオフすると、モード2(転流期間)に入り、図22に示すように、第1の回路12では、第1の一次巻線20A→第11の半導体スイッチSW11→第12のダイオードD12→第11のダイオードD11の経路44Aで電流が流れ、第11の半導体スイッチSW11がオフへ移行を始める。また、同時に、第1の一次巻線20Aに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流Ioが流れ出す(経路46A参照)。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には事前に十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れていたため、第15の半導体スイッチSW15を含む経路、すなわち、第15の半導体スイッチSW15のカソード端子→接点60→第2の一次巻線20B→第15の半導体スイッチSW15のアノード端子の経路48Aで電流I5(=I6)が流れる。このとき、第15及び第17の半導体スイッチSW15及びSW17には第12の半導体スイッチSW12がターンオフする前から十分な第1及び第3のゲート電流Ig1及びIg3が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第11の半導体スイッチSW11は完全なオフ状態に至る。
【0156】
第11の半導体スイッチSW11が完全にオフ状態になると、モード3(放電期間)に入り、図23に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voが上昇し、正電圧値(V1p)をピーク(放電開始電圧)とした正極性のパルスPo1が出力され(図28参照)、出力電流Ioは減少する。この正極性のパルスPo1の立ち上がりの傾きは、第1のトランス16Aの励磁インダクタンスと負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0157】
出力電圧Voが放電開始電圧V1pに達すると、該出力電圧Voは急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図20に示すモード0(初期状態)となる。
【0158】
ここで、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp1は大きくなる。
【0159】
その後、図27の時点t10において、第14の半導体スイッチSW14のゲート−ソース間に例えば高レベルのスイッチング制御信号Sc2が供給され、第14の半導体スイッチSW14がオフからオンになる。
【0160】
時点t10で第14の半導体スイッチSW14がターンオンすると、モード4(充電期間)に入り、図24に示すように、今度は、直流電源26→第12の抵抗R12→第13の半導体スイッチSW13のゲート端子→第13の半導体スイッチSW13のカソード端子→第14の半導体スイッチSW14の経路40Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がターンオンする。これにより、第2のトランス16Bの第2の一次巻線20Bには、直流電源26の電圧Eが印加され、直流電源26→第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第14の半導体スイッチSW14の経路42Bで電流I4(=I5)が流れ、第2の一次巻線20Bに電磁エネルギーが充電される。そして、第14の半導体スイッチSW14がオンとなっている期間Tw2において、第2の二次巻線22Bの両端には、一定の正極性の電圧V2が誘起される(図28参照)。
【0161】
また、前記電流I4が流れることによって、第3及び第4の変流器50C及び50Dを通じて第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18にそれぞれ第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れ、これら第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18がオン状態となる。
【0162】
第18の半導体スイッチSW18は、アノード−カソード間が第2の二次巻線22Bの両端に誘起された正極性の電圧V2によって逆バイアス状態となっているため、第2の回路14には電流は流れない。つまり、負荷24における一対の電極38a及び38bへの前記正極性の電圧V2の印加が、第18の半導体スイッチSW18によって回避されるため、一対の電極38a及び38bが収容された反応器内にアーク放電は発生しない。
【0163】
また、第2の回路14に電流が流れないので、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路には電流は流れない。
【0164】
さらに、第15の半導体スイッチSW15は、アノード−カソード間が直流電源26の電源電圧Eによって逆バイアス状態となっているため、完全なオフ状態へ移行、維持される。
【0165】
時点t11において、第14の半導体スイッチSW14がターンオフすると、モード5(転流期間)に入り、図25に示すように、第1の回路12では、第2の一次巻線20B→第13の半導体スイッチSW13→第13のダイオードD13→第11のダイオードD11の経路44Bで電流が流れ、第13の半導体スイッチSW13がオフへ移行を始める。また、同時に、第2の一次巻線20Bに充電された電磁エネルギーにより第2の回路14に電流Ioが流れ出す(経路46B参照)。このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には事前に十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れていたため、第16の半導体スイッチSW16を含む経路、すなわち、第16の半導体スイッチSW16のカソード端子→接点60→第1の一次巻線20A→第16の半導体スイッチSW16のアノード端子の経路48Bで電流I2(=I3)が流れる。
【0166】
このとき、第16及び第18の半導体スイッチSW16及びSW18には第13の半導体スイッチSW13がターンオフする前から十分な第2及び第4のゲート電流Ig2及びIg4が流れてオン状態となっていたため、急峻な立ち上がりの大電流Ioが低損失で流れることになる。その後、第13の半導体スイッチSW13は完全なオフ状態に至る。
【0167】
第13の半導体スイッチSW13が完全にオフ状態になると、モード6(放電期間)に入り、図26に示すように、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振で、一対の電極38a及び38b間の出力電圧Voの絶対値が上昇し、負電圧値(V2p)をピーク(放電開始電圧)とした負極性のパルスPo2が出力され(図28参照)、出力電流Ioは減少する。この負極性のパルスPo2の立ち上がりの傾きは、第2のトランス16Bの励磁インダクタンス(Lex2)と負荷24の容量との共振周波数で決定される。
【0168】
出力電圧Voが放電開始電圧V2pに達すると、該出力電圧Voの絶対値は急速に低下する。一方、出力電流Ioは、放電時の負荷24の特性により決まる時定数で減衰し、再び図20に示すモード0(初期状態)となる。
【0169】
ここで、正極性のパルスPo2のパルス幅Tp2は、励磁インダクタンスと負荷24における一対の電極38a及び38b間の容量との共振及び、放電時の負荷24の特性によって決定されるが、共振周波数が低周波であるほどパルス幅Tp2は大きくなる。
【0170】
このように、第4の実施の形態に係るパルス電源10Dにおいては、上述した第3の実施の形態に係るパルス電源10Cと同様に、正極性の高電圧パルスPo1と負極性の高電圧パルスPo2を連続して発生することができ、しかも、正極性のパルスPo1のパルス幅Tp1と、負極性のパルスPo2のパルス幅Tp2を独立に変えることができる。
【0171】
また、第1の回路12から第2の回路14に転流が行われる場合に、急峻な立ち上がりの大電流Ioを低損失で流すことができる。しかも、第1の回路12での充電期間Tw1及びTw2において、一対の電極38a及び38bに対して第1の二次巻線22Aでの誘起電圧V1及び第2の二次巻線22Bでの誘起電圧V2が印加されないようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0172】
特に、この第4の実施の形態では、第1の回路12に第1〜第4の変流器50A〜50Dを取り付けるだけで、第15〜第18の半導体スイッチSW15〜SW18のオン状態を制御することができるため、回路構成の簡略化を図ることができ、パルス電源10Dのコストの低廉化、サイズの小型化を促進させることができる。
【0173】
なお、本発明に係る電気回路及びパルス電源は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】第1の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図3】第1の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図4】第1の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図5】第1の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図7】第2の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図9】第2の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図10】第2の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形を示す図である。
【図11】第3の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図12】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図13】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図14】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図15】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード4(充電期間)を示す動作説明図である。
【図16】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード5(転流期間)を示す動作説明図である。
【図17】第3の実施の形態に係るパルス電源のモード6(放電期間)を示す動作説明図である。
【図18】第3の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その1)を示す図である。
【図19】第3の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その2)を示す図である。
【図20】第4の実施の形態に係るパルス電源の構成並びにモード0(初期状態)を示す回路図である。
【図21】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード1(充電期間)を示す動作説明図である。
【図22】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード2(転流期間)を示す動作説明図である。
【図23】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード3(放電期間)を示す動作説明図である。
【図24】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード4(充電期間)を示す動作説明図である。
【図25】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード5(転流期間)を示す動作説明図である。
【図26】第4の実施の形態に係るパルス電源のモード6(放電期間)を示す動作説明図である。
【図27】第4の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その1)を示す図である。
【図28】第4の実施の形態に係るパルス電源の回路動作における信号波形(その2)を示す図である。
【図29】従来例に係るパルス電源を示す回路図である。
【図30】他の従来例に係るパルス電源を示す回路図である。
【図31】他の従来例に係るパルス電源から出力されるパルス波形を示す図である。
【符号の説明】
【0175】
10A〜10D…パルス電源 12…第1の回路
14…第2の回路 16、16A、16B…トランス
18…スイッチングコントローラ 20、20A、20B…一次巻線
22、22A、22B…二次巻線 24…負荷
26…直流電源 34、34A、34B…ドライバ回路
36、36A〜36D…ゲートアンプ 38a、38b…電極
50、50A〜50D…変流器
SW1〜SW3、SW11〜SW18…半導体スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体スイッチを有する第1の回路と、
前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行う第2の回路とを具備し、
前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とする電気回路。
【請求項2】
請求項1記載の電気回路において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有することを特徴とする電気回路。
【請求項3】
請求項1記載の電気回路において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有することを特徴とする電気回路。
【請求項4】
第1の半導体スイッチを有する第1の回路と、前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行い、高電圧パルスを発生する第2の回路とを具備し、
前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項5】
請求項4記載のパルス電源において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有することを特徴とするパルス電源。
【請求項6】
請求項4記載のパルス電源において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有することを特徴とするパルス電源。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のパルス電源において、
前記第1の回路と前記第2の回路がトランスを介して結合され、
前記第1の回路に前記トランスの一次巻線が接続され、
前記第2の回路に前記トランスの二次巻線が接続され、
前記第2の半導体スイッチは、前記二次巻線に直列に、且つ、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間において、前記第2の回路に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されていることを特徴とするパルス電源。
【請求項8】
第1のインダクタに対する第1の誘導エネルギーの蓄積と、
前記第1のインダクタからの前記第1の誘導エネルギーの解放に伴う第1のパルスの発生と、
第2のインダクタに対する第2の誘導エネルギーの蓄積と、
前記第2のインダクタからの前記第2の誘導エネルギーの解放に伴う前記第1のパルスとは逆極性の第2のパルスの発生とを行うことを特徴とするパルス電源。
【請求項9】
請求項8記載のパルス電源において、
直流電源と、
前記第1のインダクタの一次巻線と前記第2のインダクタの一次巻線との接点と、前記直流電源との間に接続され、前記接点に向けて電流を流す整流素子と、
前記整流素子からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流すように制御する第1のスイッチ回路と、
前記整流素子からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流すように制御する第2のスイッチ回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項10】
請求項9記載のパルス電源において、
前記第1のスイッチ回路は、
前記第1のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流す第1の半導体スイッチと、
前記第1の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の半導体スイッチと、
前記第2の半導体スイッチのオン/オフを制御する第1の制御回路とを有し、
前記第2のスイッチ回路は、
前記第2のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流す第3の半導体スイッチと、
前記第3の半導体スイッチのオン/オフを制御する第4の半導体スイッチと、
前記第4の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の制御回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項11】
請求項9又は10記載のパルス電源において、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第5の半導体スイッチを有し、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第6の半導体スイッチを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項12】
請求項11記載のパルス電源において、
前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第3の制御回路と、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第4の制御回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項13】
請求項11記載のパルス電源において、
前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第1の回路と、
前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第2の回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載のパルス電源において、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第1のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第7の半導体スイッチと、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第2のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第8の半導体スイッチとを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項15】
請求項14記載のパルス電源において、
前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第5の制御回路と、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第6の制御回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項16】
請求項14記載のパルス電源において、
前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路と、
前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第4の回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項1】
第1の半導体スイッチを有する第1の回路と、
前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行う第2の回路とを具備し、
前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とする電気回路。
【請求項2】
請求項1記載の電気回路において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有することを特徴とする電気回路。
【請求項3】
請求項1記載の電気回路において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有することを特徴とする電気回路。
【請求項4】
第1の半導体スイッチを有する第1の回路と、前記第1の半導体スイッチのターンオフに基づいて転流を行い、高電圧パルスを発生する第2の回路とを具備し、
前記第2の回路は、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、逆バイアス下においてオン状態とされる第2の半導体スイッチを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項5】
請求項4記載のパルス電源において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間の少なくとも最終段階に、前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する制御回路を有することを特徴とするパルス電源。
【請求項6】
請求項4記載のパルス電源において、
前記第2の半導体スイッチは、ゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第2の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1の回路に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路を有することを特徴とするパルス電源。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のパルス電源において、
前記第1の回路と前記第2の回路がトランスを介して結合され、
前記第1の回路に前記トランスの一次巻線が接続され、
前記第2の回路に前記トランスの二次巻線が接続され、
前記第2の半導体スイッチは、前記二次巻線に直列に、且つ、前記第1の半導体スイッチがオンとされている期間において、前記第2の回路に発生する電圧が逆バイアスとなる方向に接続されていることを特徴とするパルス電源。
【請求項8】
第1のインダクタに対する第1の誘導エネルギーの蓄積と、
前記第1のインダクタからの前記第1の誘導エネルギーの解放に伴う第1のパルスの発生と、
第2のインダクタに対する第2の誘導エネルギーの蓄積と、
前記第2のインダクタからの前記第2の誘導エネルギーの解放に伴う前記第1のパルスとは逆極性の第2のパルスの発生とを行うことを特徴とするパルス電源。
【請求項9】
請求項8記載のパルス電源において、
直流電源と、
前記第1のインダクタの一次巻線と前記第2のインダクタの一次巻線との接点と、前記直流電源との間に接続され、前記接点に向けて電流を流す整流素子と、
前記整流素子からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流すように制御する第1のスイッチ回路と、
前記整流素子からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流すように制御する第2のスイッチ回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項10】
請求項9記載のパルス電源において、
前記第1のスイッチ回路は、
前記第1のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第1のインダクタに向けて流す第1の半導体スイッチと、
前記第1の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の半導体スイッチと、
前記第2の半導体スイッチのオン/オフを制御する第1の制御回路とを有し、
前記第2のスイッチ回路は、
前記第2のインダクタと前記直流電源との間に接続され、前記直流電源からの電流を前記接点から前記第2のインダクタに向けて流す第3の半導体スイッチと、
前記第3の半導体スイッチのオン/オフを制御する第4の半導体スイッチと、
前記第4の半導体スイッチのオン/オフを制御する第2の制御回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項11】
請求項9又は10記載のパルス電源において、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第5の半導体スイッチを有し、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、ゼロ電流の状況下においてオン状態とされる第6の半導体スイッチを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項12】
請求項11記載のパルス電源において、
前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第3の制御回路と、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第4の制御回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項13】
請求項11記載のパルス電源において、
前記第5及び第6の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第5の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第1の回路と、
前記第6の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタに流れる電流をオン信号として供給する第2の回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載のパルス電源において、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第1のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第7の半導体スイッチと、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第2のインダクタの二次巻線に発生する電圧による逆バイアス下においてオン状態とされる第8の半導体スイッチとを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項15】
請求項14記載のパルス電源において、
前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第1のインダクタに対する前記第1の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第5の制御回路と、
前記第2のインダクタに対する前記第2の誘導エネルギーの蓄積期間の少なくとも最終段階に、前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に少なくともオン信号を供給する第6の制御回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【請求項16】
請求項14記載のパルス電源において、
前記第7及び第8の半導体スイッチは、それぞれゲート端子、カソード端子及びアノード端子を有し、
前記第7の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第1のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第3の回路と、
前記第8の半導体スイッチの前記ゲート端子とカソード端子間に前記第2のインダクタの一次巻線に流れる電流をオン信号として供給する第4の回路とを有することを特徴とするパルス電源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2007−14089(P2007−14089A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189919(P2005−189919)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]