説明

電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタおよび該コネクタを備えた電気式床暖房パネル

【課題】電気式床暖房フロアを作るときに、施工現場で電気式床暖房パネル同士を電気的に接続するためのコネクタが不完全な接続状態のままで放置されるのを防止することのできるコネクタを得る。
【解決手段】コネクタは、雄型端子または雌型端子のいずれか一方を内部に収容する第1のコネクタ10と、雄型端子または雌型端子の他方を内部に収容する第2のコネクタ20とからなり、第1のコネクタ10は第2のコネクタ20が外嵌合する嵌合領域13aを有している。第1のコネクタの前記嵌合領域13aの表面を、コネクタの他の領域とは異なった色とする。嵌合が不完全なときに、作業者は嵌合領域13aが他の領域とは色彩が異なっていることから、それを自分の目により容易かつ確実に視認することができ、不完全な状態で接続作業を終えるのを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタと、そのコネクタを備えた電気式床暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
線状ヒータあるいはPTCヒータのような面状ヒータを備えた電気式床暖房パネルを用いて電気式床暖房フロアを構築することが行われる。特許文献1にはその一例が示されており、図4に示すように、多数枚の電気式床暖房パネル1・・・がコネクタ2を用いて互いに電気的に接続されて床下地の上に敷き詰められる。なお、図4において、1aは電気ヒータを備えないボーダーパネルであり、電気式床暖房フロアの周囲に配置して、安全を確保する。
【0003】
図3は、電気式床暖房パネル同士を電気的に接続するためのコネクタ2の一例を示しており、図3aは接続前の状態を、図3bは接続後の状態を示している。コネクタ2は、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20で構成され、共に樹脂製のハウジング11,21を持つ。第1のコネクタ10は、樹脂製のハウジング11内に雌型端子12を収容しており、ハウジング11の先端領域は、第2のコネクタ20の先端領域23が外嵌合する嵌合領域13とされている。第2のコネクタ20は樹脂製のハウジング21内に雄型端子22を収容しており、ハウジング21の先端領域は、第1コネクタ10の前記した嵌合領域13が入り込む空洞部23となっている。
【0004】
接続に当たっては、第1のコネクタ10を第2のコネクタ20に差し込むようにする。それにより、第1のコネクタ10のハウジング11における先端の嵌合領域13が第2のコネクタ20のハウジング21の先端空洞部23内に挿入され、その過程で、雌型端子12と雄型端子22は電気的に接続する。コネクタ同士の接続作業は、第1のコネクタ10のハウジング11における前記嵌合領域13との境界部に形成されている段差部14に、第2のコネクタ20の先端部24が衝接することにより、終了する。
【0005】
図示されるコネクタ2では、第1のコネクタ10の前記段差部14近傍には第1の係止爪15が形成され、第2のコネクタ20の先端側には第1の係止爪15と係合する第2の係止爪25が形成されており、前記したように接続作業が終了したときに、第1と第2の係止爪15,25が係合する。それにより、コネクタ同士の接続が不用意に離脱するのを防止している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−300113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
施工現場で電気式床暖房パネルを敷き詰めるに当たっては、隣接する電気式床暖房パネルのコネクタ同士の接続を、図3bに示すように、第1と第2の係止爪15,25が完全に係合した状態、すなわち、第1のコネクタ10のハウジング11における先端の嵌合領域13に第2のコネクタ20のハウジング21の先端空洞部23が完全に外嵌合した状態とする必要がある。半嵌合状態で接続作業を終了してしまうと、電気的接続が不安定となると共に、隙間から湿気が入り込む等、防水性能も確保されない。
【0008】
施工現場では、このような不完全な接続状態が生じないように、細心の注意を払いながら作業者がコネクタ同士の接続作業を行っている。しかし、完全嵌合状態となったか、まだ半嵌合状態であるかを、作業者が容易に確認できないことから、作業者の不注意により、半嵌合状態でありながら接続作業が終了した思いこみ、次のコネクタ同士の接続作業に取りかかることが起こり得る。
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタの接続が、完全になされたか不完全であるかを、施工現場の作業者が、自分の目でもって容易にかつ確実に認識できるようにした、電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタを提供することを目的とする。また、上記の構成のコネクタを備えた電気式床暖房パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるコネクタは、雄型端子または雌型端子のいずれか一方を内部に収容する第1のコネクタと、雄型端子または雌型端子の他方を内部に収容する第2のコネクタとからなり、第1のコネクタは第2のコネクタが外嵌合する嵌合領域を有している形状の電気式床暖房パネル同士を電気的に接続するためのコネクタであって、第1のコネクタの前記嵌合領域の表面は、第1のコネクタの他の部分の表面および第2のコネクタの表面とは異なった色とされていることを特徴とする。好ましくは、第1のハウジングの前記嵌合領域を除いた部分の表面と第2のコネクタの表面とは同じ色とされる。
【0011】
本発明によるコネクタでは、第1のコネクタの嵌合領域の表面は、第1のコネクタの他の部分の表面および第2のコネクタの表面とは異なった色とされているが、第1と第2のコネクタが完全に嵌合した状態では、第1のコネクタの嵌合領域のすべてが第2のコネクタによって覆われるので、前記異なった色は外部に露出することはなく、外から認識されることはない。
【0012】
嵌合が不十分なとき、すなわち半嵌合状態のときは、第1のコネクタの嵌合領域の一部は第2のコネクタによって覆われない部分が残る。そのために、その異なった色の部分が外部に露出した状態となり、作業者は、接合が不完全であることを目でもって容易にかつ確実に認識することができる。そのために、施工現場において、作業者の不注意により、半嵌合状態でコネクタ同士の接続作業を終えるような事態が生じるのを確実に回避することができる。
【0013】
前記嵌合領域の色は、他の領域と識別が容易な色であることが望ましく、通常、樹脂製であるコネクタの表面色彩は灰色系であることから、嵌合領域の色は赤や黄のような明色系が望ましい。蛍光色であってもよい。嵌合領域への色づけは、塗材の塗布によってもよく、着色シール等の貼り付けによってもよい。成形が可能であれば、成形時に嵌合領域に異なった色を持たせるようにしてもよい。嵌合領域における異なった色とされる部分は、嵌合領域のすべてであってもよく、嵌合終端部の近傍のみであってもよい。
【0014】
本発明は、さらに、上記したコネクタにおける第1のコネクタを一方の側縁に形成したコネクタ収容凹部に収容し、第2のコネクタを他方の側縁に形成したコネクタ収容凹部に収容していることを特徴とする電気式床暖房パネルをも開示する。この電気式床暖房パネルは、上記のコネクタを備えることにより、床下地への電気式床暖房パネルの敷き詰め作業を迅速化することができ、かつ容易に、電気的接続が完全になされた電気式床暖房フロアを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気式床暖房パネル同士を接続するときの作業者の不注意によるコネクタの接続不良を確実に回避することができる。結果として、電気式床暖房フロアの施工が容易かつ迅速化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明によるコネクタを備えた電気式床暖房パネルの一例を説明する図であり、図2は本発明によるコネクタをその使用態様と共に示している。
【0017】
図示される電気式床暖房パネル1は、木質材であるパネル基材3の裏面に形成した凹溝4内に線ヒータである電気ヒータ5を組み込んでおり、かつ、電気ヒータ5に電気を通電するための電源線6および第1のコネクタ10と第2のコネクタ20とからなるコネクタを備えている。また、パネル基材3の裏面全面には緩衝材3bが貼着されており、直貼り式の電気式床暖房パネルとして用いうるようになっている。
【0018】
パネル基材3の一方の側縁側には雄実7が形成されており、雄実7の一部を切除するようにして第1のコネクタ10を収容するための第1のコネクタ収容凹部7aが形成されている。他方の側縁側には雌実8が形成されており、そこに第2のコネクタ20を収容するための第2のコネクタ収容凹部8aが形成されている。そして、この例では、第1のコネクタ10は第1のコネクタ収容凹部7a内に引き出し可能な状態で収容されており、第2のコネクタ20は第2のコネクタ収容凹部8a内に固定的に収容されている。また、図1cに示すように、雄実7側の第1のコネクタ収容凹部7aの天面には、前記雄実7の切除した領域を覆うようにして雄実7の先端近傍にまで延出する金属製の補強板9が取り付けてあり、雄実7を一部切除したことによる強度低下を補強している。
【0019】
電気式床暖房フロアを形成するに当たっては、隣接する電気式床暖房パネル1・・同士を雄実7と雌実8とのいわゆる実結合により接続する。なお、図示の例では、パネル基材3は4本の床材ピース3aを雁木状に組み付けることにより形成されているが、一枚の板材でパネル基材3を作ることもでき、また、雁木状でなく、全体として単に矩形状にパネル基材3を形成してもよい。
【0020】
上記の電気式床暖房パネル1で使用される電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタの基本的構成は、図3に基づき説明した従来使用されているコネクタ2と同様であり、第1のコネクタ10と第2のコネクタ20が電気的接続を取るための内部構造も図3に示したものと同じであってよい。同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0021】
本発明によるコネクタは、図2aに示すように、第1のコネクタ10における前記した第2のコネクタ20の先端領域23が外嵌合する嵌合領域13aが、他の領域、すなわち、第1のコネクタ10を構成する樹脂製ハウジング11の他の部分の表面領域および第2のコネクタ20の樹脂製ハウジング21の表面領域、とは異なった色とされている点で構成を異にする。なお、図2では、嵌合領域13aが他の領域とは異なった色であることを示すために、嵌合領域13aに細かい点を付してナシ地状に示しているが、実際の商品では、例えば双方の樹脂製ハウジング11,21の表面色彩が灰色系である場合には、赤色や黄色等の明彩色が施される。
【0022】
なお、特に図示しないが、嵌合領域13aを他の領域と異なった色とするには、塗材の塗布によってもよく、着色した粘着テープやシール等の貼り付けによってもよい。成形が可能であれば、成形時に嵌合領域13aに異なった色を持たせるようにしてもよい。また、嵌合領域13aにおける異なった色とされる部分は、嵌合領域13のすべてであってもよく、嵌合終端部に形成される段差部14の近傍のみであってもよい。
【0023】
隣接する電気式床暖房パネル1・・を電気的に接続するに当たっては、第1のコネクタ10と第2のコネクタ10を嵌合しながら接続する。接続当初の状態が図2bに示される。色彩が異なっていることから、第1のコネクタ10の嵌合領域13aは、外から見て目立っている。図2dは完全嵌合状態、すなわちコネクタの接続が完全に完了した場合であり、上記した第1のコネクタ20の嵌合領域13aは第2のコネクタ20によって完全に覆われており、色彩の異なる嵌合領域13aを外から視認することはできない。
【0024】
図2cは不完全嵌合状態、すなわちコネクタの接続が完全でない場合を示しており、この場合には、第1のコネクタ10の嵌合領域13aが部分的に外部に露出している状態となる。嵌合領域13aはよく目立つように他とは異なった色彩となっており、僅かでも嵌合領域13aが外部に露出していると、作業者は容易にかつ確実にそのことを自分の目で認識することができる。結果として、作業者の不注意によりコネクタの接続が不完全な接続状態で接続作業を終えてしまうのを、確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるコネクタを備えた電気式床暖房パネルの一例を説明する図であり、図1aは背面を、図1bは図1aのb−b線による断面を、図1cは図1aのc−c線による断面を、それぞれ示している。
【図2】本発明による電気式床暖房パネル同士を電気的に接続するためのコネクタをその使用態様と共に示しており、図2aは第1のコネクタを、図2bはコネクタ接続作業の当初の状態を、図2cは接続が不十分である場合の状態を、図2dは接続が完全になされた状態を、それぞれ示している。
【図3】従来用いられているコネクタの一例を説明する図であり、図3aは接続前の状態を、図3bは接続後の状態を示している。
【図4】電気式床暖房フロアを説明する図。
【符号の説明】
【0026】
1…電気式床暖房パネル、2…コネクタ、3…パネル基材、3b…緩衝材、5…電気ヒータ、10…第1のコネクタ、20…第2のコネクタ、11…第1のコネクタを構成する樹脂製ハウジング、13a…異なった色とされた嵌合領域、20…第2のコネクタ、21…第1のコネクタを構成する樹脂製ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型端子または雌型端子のいずれか一方を内部に収容する第1のコネクタと、雄型端子または雌型端子の他方を内部に収容する第2のコネクタとからなり、第1のコネクタは第2のコネクタが外嵌合する嵌合領域を有している形状の電気式床暖房パネル同士を電気的に接続するためのコネクタであって、
第1のコネクタの前記嵌合領域の表面は、第1のコネクタの他の部分の表面および第2のコネクタの表面とは異なった色とされていることを特徴とする電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタ。
【請求項2】
第1のコネクタの前記嵌合領域を除いた部分の表面と第2のコネクタの表面とは同じ色とされていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房パネルを電気的に接続するためのコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコネクタにおける第1のコネクタを一方の側縁に形成したコネクタ収容凹部に収容し、第2のコネクタを他方の側縁に形成したコネクタ収容凹部に収容している電気式床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−218482(P2007−218482A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38372(P2006−38372)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】