説明

電気式脱イオン水製造装置

【課題】 装置構造が簡略であり材料費、加工費、組み立て費を軽減させ、吸着したイオン性不純物の移動を速めて吸着イオンの排除を容易にすると共に、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮による片流れやイオン交換膜との接触不良が生じない電気式脱イオン水製造装置を提供すること。
【解決手段】 イオン交換体を充填した脱イオン室に、直流電場を、排除されるイオンが該イオン交換体内における通水方向に対して同一方向又は逆方向に泳動するように印加して、該イオン交換体に吸着したイオン性不純物を系外に排除する電気式脱イオン水製造装置において、該イオン交換体が、モノリス状有機多孔質イオン交換体と粒状イオン交換樹脂の混合体であることを特徴とする電気式脱イオン水製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱イオン水を用いる半導体製造工業、製薬工業、食品工業、発電所、研究所等の各種の工業あるいは糖液、ジュース、ワイン等の製造等で利用される電気式脱イオン水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脱イオン水を製造する方法として、従来から粒状イオン交換樹脂(以下、単に「イオン交換樹脂」とも言う)に被処理水を通して脱イオンを行う方法が知られているが、この方法ではイオン交換樹脂のイオン交換容量が低下すると薬剤によって再生を行う必要があり、このような処理操作上の不利な点を解消するため、薬剤による再生が全く不要な電気式脱イオン法による脱イオン水製造方法が確立され、実用化に至っている。
【0003】
前記従来の電気式脱イオン水製造装置は、基本的には陽イオン交換膜と陰イオン交換膜で形成される隙間に、イオン交換体としてアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂層を充填して脱イオン室とし、当該イオン交換樹脂層に被処理水を通過させるとともに、前記両イオン交換膜を介して被処理水の流れに対して垂直方向に直流電流を作用させて、両イオン交換膜の外側に流れている濃縮水中に被処理水中のイオンを電気的に排除しながら脱イオン水を製造するものである。
【0004】
一方、特開2003−334560号公報には、モノリス状の有機多孔質イオン交換体(以下、単に「モノリス」とも言う)を充填した脱イオン室を有し、該脱イオン室に通水し、水中のイオン性不純物を除去して脱イオン水を製造すると共に、該脱イオン室に直流電場を印加して、該有機多孔質イオン交換体に吸着したイオン性不純物を系外に排除する電気式脱イオン水製造装置において、該直流電場の印加は、排除されるイオンが該有機多孔質イオン交換体内における通水方向に対して逆向きに泳動するように行う電気式脱イオン水製造装置が開示されている。特開2003−334560号公報記載の電気式脱イオン水製造装置の脱イオン室は幅寸法が大きく採れ且つ脱イオン室充填材として3次元網目構造を有するモノリスを用いるため、直流電流を被処理水の流れに対して垂直方向に印加する従前の電気式脱イオン水製造装置に比べて、装置構造が簡略であり材料費、加工費、組み立て費を軽減させることができる。また、モノリスは粒状イオン交換樹脂と比較して充填層全体が連続体となっているため、イオンの吸脱着が容易であり、吸着したイオン性不純物の移動を速めて吸着イオンの排除を容易にし、炭酸カルシウムや水酸化マグネシウム等のスケール発生の可能性が全くないなど顕著な効果を有している。
【特許文献1】特開2003−334560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2003−334560号公報記載の電気式脱イオン水製造装置は、脱イオン室内にモノリスのみ充填するため、イオン交換容量が小さい、被処理水の水質変動に弱いという問題がある。また、粒状イオン交換樹脂も同様であるが、単一のイオン交換体だけを容器に充填すると、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮により充填状態が変化するという問題がある。
【0006】
容器内充填物の膨潤収縮機構をイオン交換樹脂を例に説明する。膨潤率は例えばカチオン交換樹脂が7%、アニオン交換樹脂が23%である。膨潤率とは、イオン交換樹脂が塩形から再生形に変化する際に変化する体積割合を言う。例えば容積160mlのセル内に再生形(R-OH)のアニオン交換樹脂160mlを充填して被処理水を一定時間通水し、アニオン交換樹脂のR-OHが、R-Cl、R-NO、R-HCO等の塩形に全て変化した場合、160mlのアニオン交換樹脂は160ml÷1.23=130.1mlの計算通り体積が約30%減少する。これにより、脱イオン室内で樹脂が充填されない水相だけの部分が現れ、水の片流れが生じたり、電圧が著しく上昇して、終にはイオン除去に必要な電流が流せなくなる。逆に、容積160mlのセル内にR-Cl、R-NO、R-HCO等の塩形のアニオン交換樹脂160mlを充填して一定時間電気再生した場合、アニオン交換樹脂が全てR-OHに変化し、160mlのアニオン交換樹脂は160ml×1.23=196.8mlの計算通り、イオン交換樹脂は体積を増加させようとする。しかし、この場合、脱イオン室を構成する容器があるため、脱イオン室内で最も強度の低い部分に力が集中して破損する事態となったり、通水抵抗が上昇するという問題がある。モノリスもイオン交換樹脂と同様に膨潤、収縮する性質を有しており、同程度に体積が変化する。このような単一のイオン交換体の膨潤、収縮の問題を解決するため、脱イオン室内に充填されるイオン交換体の塩形や再生形の体積割合を予め決定することも考えられるものの、電気式脱イオン水製造装置の連続運転においては、被処理水の水質や電流効率に応じて脱イオン室内の塩形や再生形の割合が決まるため、予め一定の体積を定めて充填することは不可能である。このような情況下、特開2003−334560号公報記載のモノリスを用いた電気式脱イオン水製造装置の有利な点を維持しつつ、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮による片流れやイオン交換膜との接触不良の問題を解決する電気式脱イオン水製造装置の開発が望まれている。
【0007】
従って、本発明の目的は、装置構造が簡略であり材料費、加工費、組み立て費を軽減させ、吸着したイオン性不純物の移動を速めて吸着イオンの排除を容易にすると共に、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮による片流れやイオン交換膜との接触不良が生じない電気式脱イオン水製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは、上記の従来の電気式脱イオン水製造装置の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、脱イオン室に充填されるイオン交換体が、モノリスとイオン交換樹脂の混合体とすれば、モノリスのイオン交換反応由来の膨潤収縮とは無関係な物理的な伸縮性による緩衝作用により、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮による片流れやイオン交換膜との接触不良を防止できること、このため、単一のイオン交換体では達成し得なかった幅広い脱イオン室構造が採れ、簡略であり材料費、加工費、組み立て費を軽減させること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、イオン交換体を充填した脱イオン室に、直流電場を、排除されるイオンが該イオン交換体内における通水方向に対して同一方向又は逆方向に泳動するように印加して、該イオン交換体に吸着したイオン性不純物を系外に排除する電気式脱イオン水製造装置において、該イオン交換体が、モノリス状有機多孔質イオン交換体と粒状イオン交換樹脂の混合体である電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
また、本発明(2)は、一側の陰イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陰イオン室と、該一側の陰イオン交換膜の外側に配置される陽極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陰極を有し、被処理水を該脱陰イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第1処理水を得るアニオンセルと、一側の陽イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陽イオン室と、該一側の陽イオン交換膜の外側に配置される陰極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陽極を有し、前記アニオンセルの第1処理水を該脱陽イオン室中の一側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱陽イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第2処理水を得るカチオンセルを備える前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明(3)は、一側の陽イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陽イオン室と、該一側の陽イオン交換膜の外側に配置される陰極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陽極を有し、被処理水を該脱陽イオン室中の一側の陽イオン交換膜近傍から供給して該脱陽イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第1処理水を得るカチオンセルと、一側の陰イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陰イオン室と、該一側の陰イオン交換膜の外側に配置される陽極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陰極を有し、該カチオンセルの第1処理水を該脱陰イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第2処理水を得るアニオンセルを備える前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【0011】
また、本発明(4)は、前記カチオンセルの陰極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陽イオン交換体であるか、又は陽極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陰イオン交換体であり、前記アニオンセルの陽極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陰イオン交換体であるか、又は陰極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陽イオン交換体である前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明(5)は、一側の陰イオン交換膜及び他側の陽イオン交換膜の間に中間イオン交換膜を設け、該一側の陰イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陰イオン室と、該他側の陽イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陽イオン室を構成し、該一側の陰イオン交換膜の外側に陽極、該他側の陽イオン交換膜の外側に陰極を配置してなる脱イオンセルであって、被処理水を該脱陽イオン室中の他側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱陽イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第1処理水を得、該第1処理水を該脱陰イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第2処理水を得る前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明(6)は、一側の陽イオン交換膜及び他側の陰イオン交換膜の間に中間イオン交換膜を設け、該一側の陽イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陽イオン室と、該他側の陰イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陰イオン室を構成し、該一側の陽イオン交換膜の外側に陰極、該他側の陰イオン交換膜の外側に陽極を配置してなる脱イオンセルであって、被処理水を該脱陰イオン室中の他側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第1処理水を得、該第1処理水を該脱陽イオン室中の一側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱陽イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第2処理水を得る前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【0014】
また、本発明(7)は、前記脱陽イオン室の陰極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陽イオン交換体であるか、又は前記脱陰イオン室の陽極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陰イオン交換体である前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【0015】
また、本発明(8)は、一側の陰イオン交換膜と他側の陽イオン交換膜で区画される脱イオン室と、該一側の陰イオン交換膜の外側に配置される陽極と、該他側の陽イオン交換膜の外側に配置される陰極を有し、該脱イオン室の陽極側にモノリス状有機多孔質陰イオン交換体を充填するか、又は該脱イオン室の陰極側にモノリス状有機多孔質陽イオン交換体を充填した脱イオンセルにおいて、被処理水を該脱イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱イオン室中の他側の陽イオン交換膜近傍から処理水を得るか、又は被処理水を該脱イオン室中の他側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から処理水を得る前記電気式脱イオン水製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脱イオン交換室に充填されるイオン交換体の一部にモノリスを使用するため、モノリス及びイオン交換樹脂の膨潤、収縮反応による体積変化を、モノリスの物理的な伸縮性により緩衝し、該脱イオン室内の充填状態を均一に保つことができる。また、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮による片流れやイオン交換膜との接触不良を防止できるため、単一のイオン交換樹脂では達成し得なかった幅広いスペースを有する簡略化された脱イオン交換室構造が形成でき、材料費、加工費、組み立て費を軽減できる。また、イオン交換樹脂に比べて、モノリスはイオンの移動速度が速くイオン交換体長さが短いため、被処理水流入口近傍に配置されたモノリスはイオンの排出を促進して高イオン濃度水の処理を可能にし、処理水流出口近傍に配置されたモノリスは希薄濃度域での微量イオンの漏れを抑えて高純度処理水を得ることができる。また、脱イオン室の被処理水流入口近傍にモノリスを配置することで、脱陽イオン室ではカルシウム等の硬度成分の排除速度が向上し、脱陰イオン室では炭酸やシリカ等の陰イオンの排除速度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の電気式脱イオン水製造装置の基本構造は、両側のイオン交換膜で区画される脱イオン室にモノリスとイオン交換樹脂の混合体を充填して脱イオン室を構成し、当該イオン交換膜の外側に直流電場を印加する電極を配置してなり、該直流電場の印加は、排除されるイオンが該イオン交換体内における通水方向に対して同一又は逆方向に泳動するように行うものである。当該「同一又は逆方向に泳動する」とは、同一及び逆方向の両方向に泳動する場合も含む意味である。本発明において、混合イオン交換体内における通水方向とは、該混合イオン交換体内の概ね中心部分における通水方向を言う。例えば図2に示すように、被処理水流入口と処理水流出口は側面視で略対角線上にあり、該混合イオン交換体内の流れが一方向、すなわち図中、左右方向ではないものの、実際には該混合イオン交換体内の大部分における通水方向は概ね左右方向であり、このような通水形態を含むものである。なお、該混合イオン交換体内には、被処理水導入分配部や処理水集水部を別途に配設する必要はないが、設置してもよい。
【0018】
モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、特に制限されず、特開2003−334560号公報記載のものが挙げられ、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1000μmのメソポアを有する連続気泡構造を有し、全細孔容積が1ml/g〜50ml/gであり、イオン交換基が均一に分布され、イオン交換容量が0.5mg当量/g乾燥多孔質体以上である3次元網目構造のものが使用できる。粒状イオン交換樹脂としては、特に制限されず、水処理に使用される公知のイオン交換樹脂が挙げられる。
【0019】
モノリスとイオン交換樹脂の混合体としては、特に制限されないが、通水方向(排出イオンが泳動する方向)にモノリス相とイオン交換樹脂相が積層された層状体が挙げられる。モノリスとイオン交換樹脂の層状体は、モノリスがスポンジ状の一体構造物であるため、イオン交換樹脂と混ざることがなく、容器内においてイオン交換膜等の区画手段を用いなくとも相状に充填できる。層状体におけるモノリス相とイオン交換樹脂相の体積割合としては、特に制限されず、イオン交換基の種類、被処理水の処理目的などにより適宜決定される。また、層状体の積層構造としては、特に制限されず、一側のイオン交換膜から他側のイオン交換膜に向けて順に、モノリス相とイオン交換樹脂相、イオン交換樹脂相とモノリス相の2層構造;モノリス相とイオン交換樹脂相とモノリス相、イオン交換樹脂相とモノリス相とイオン交換樹脂相の3層構造;モノリス相とイオン交換樹脂相の繰り返しである4層構造等が挙げられる。このうち、被処理水流入口近傍にモノリス相を配置する形態が、脱陽イオン室ではカルシウムイオン等の硬度成分の排除速度が向上し、脱陰イオン室では炭酸やシリカ等の陰イオンの排除速度が向上する点で好ましい。また、脱陰イオン室では処理水流出口近傍にカチオンモノリスを配置することが、脱陽イオン室で除去できなかった微量カチオンを確実に除去できる点で好ましい。
【0020】
モノリスとイオン交換樹脂の混合体のイオン形としては、特に制限されないが、塩形と再生形の混合体が、イオン交換反応に伴う膨潤、収縮を緩和できる点で好ましい。なお、本発明においては、モノリスとイオン交換樹脂の混合体による当該膨潤、収縮緩和効果のみでは十分ではなく、これにモノリスの物理的な伸縮効果が加わって、脱イオン室内の密着性が確保できる。モノリスとイオン交換樹脂の混合体の膨張、収縮についてカチオンセルを例に説明する。図1(A)のカチオンセルは、陰極側から陽極側に向けて順にR-Na粒状カチオン交換樹脂40ml(断面4×5=20cm、電極間長さ2cm)、R-H粒状カチオン交換樹脂80ml(断面4×5=20cm、電極間長さ4cm)、R-Naカチオンモノリス40ml(断面4×5=20cm、電極間長さ2cm)を充填したものである。上記カチオンセルについて連続通水/連続再生を行った場合、通常、R-Na粒状カチオン交換樹脂は一部再生されて膨潤し、R-H粒状カチオン交換樹脂は変化せず、R-Naカチオンモノリスは再生されて膨潤する。この際、R-NaからR-Hに再生されたカチオンモノリスは膨潤するものの、スポンジ状(凹状)に潰れて、R-Na粒状カチオン交換樹脂の膨潤を吸収するため、各イオン交換体は密着度が向上すると共に容器内にバランスよく収まる(図1(B))。一方、上記カチオンセルについて、連続通水/連続再生を行った際、被処理水のイオン負荷が高く、初期充填状態よりもイオン蓄積傾向でバランスした場合、被処理水流入口側(陰極、イオン排除側)から処理水流出口(陽極、再生側)へイオン交換体長さが伸びた状態で連続処理される。この場合、R-Na粒状カチオン交換樹脂は変化せず、R-H粒状カチオン交換樹脂は一部塩形に変化して収縮し、R-NaカチオンモノリスはR-Hに再生されて膨潤する。この際、R-NaからR-Hに再生されたカチオンモノリスはR-H粒状カチオン交換樹脂の体積減少分を補填するため、前記同様に、各イオン交換体は密着度が向上すると共に容器内にバランスよく収まる(図1(C))。本例ではR-Na粒状カチオン交換樹脂とR-H粒状カチオン交換樹脂は層状に充填したもので説明したが、これに限定されず、混合して使用してもよく、この場合も上記と同様の作用を奏する。
【0021】
本発明において、被処理水としては、脱イオン処理を目的とするものであり、濁質を含まないものであれば特に限定されないが、例えば、濁度1度程度以下の工業用水や市水などを挙げることができる。
【0022】
次に、本発明の第1の実施の形態における電気式脱イオン水製造装置を図2を参照して説明する。図2は本例の電気式脱イオン水製造装置の構造を示す模式図である。図2の電気式脱イオン水製造装置20Aは、被処理水から主に陰イオン性不純物を除去するアニオンセル20aと、アニオンセル20aの処理水から主に陽イオン性不純物を除去するカチオンセル20bとからなるものである。
【0023】
アニオンセル20aは、一側の陰イオン交換膜2及び他側の陽イオン交換膜1で区画される脱イオン室に一側の陰イオン交換膜2側から順に、アニオンモノリス14とアニオン交換樹脂11を充填して脱陰イオン室7を構成し、一側の陰イオン交換膜2の外側に陽極10、他側の陽イオン交換膜1の外側に陰極9を配置してなり、被処理水を脱陰イオン室7中の一側(陽極側)の陰イオン交換膜2近傍の流入口3aから供給して、脱陰イオン室7中の他側(陰極側)の陽イオン交換膜1近傍の流出口4aから第1処理水を得るものである。すなわち、アニオンセル20aの脱陰イオン室7内における通水方向は図2中の実線の矢印方向である左から右である。アニオンモノリス14とアニオン交換樹脂11の充填割合としては、被処理水の性状等により任意に決定できるが、好ましくはモノリス:イオン交換樹脂が、体積割合で1:0.5〜1:10である。
【0024】
一方、カチオンセル20bは、一側の陽イオン交換膜1及び他側の陽イオン交換膜1で区画される脱イオン室に一側の陽イオン交換膜1から順に、カチオンモノリス13とカチオン交換樹脂12を充填して脱陽イオン室6を構成し、一側の陽イオン交換膜1の外側に陰極9、他側の陽イオン交換膜1の外側に陽極10を配置してなり、アニオンセル20aの処理水(第1処理水)を脱陽イオン室6中の一側(陰極側)の陽イオン交換膜1近傍の流入口3bから供給して、脱陽イオン室6中の他側(陽極側)の陽イオン交換膜1近傍の流出口4bから処理水(第2処理水)を得るものである。すなわち、カチオンセル20bの陽イオン室6内における通水方向は図1中の実線の矢印方向である左から右である。カチオンモノリス13とカチオン交換樹脂12の充填割合としては、被処理水の性状等により任意に決定できるが、好ましくはモノリス:イオン交換樹脂が、体積割合で1:0.5〜1:10である。
【0025】
本例のアニオンセル20aの脱陰イオン室7に充填されるアニオンモノリス14及びカチオンセル20bの脱陽イオン室6に充填されるカチオンモノリス13としては、前述のモノリス状有機多孔質イオン交換体が好適である。また、脱陽イオン室6及び脱陰イオン室7の形状としては、排除されるイオンが、混合イオン交換体内の通水方向に対して逆方向に泳動するように電場を印加することができれば、特に制限されないが、例えば円柱状又は直方体状とすることが構成部材の製造のし易さ等の点から好適である。また、被処理水が移動する距離、即ち脱陽イオン室6及び脱陰イオン室7を構成する混合イオン交換体充填層の有効厚みは、20〜600mm、好ましくは30〜300mmとすることが、電気抵抗値や通水差圧を抑えつつ脱イオン処理を確実に行うことができる点で好適である。
【0026】
陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、陰極、陽極、電極とイオン交換膜の配置形態、直流電流の配置形態及び直流電流の通電方法などは、特開2003-334560号公報記載のものが挙げられる。なお、アニオンセル20aにおいて、陽極と陰イオン交換膜間には両者の直接接触を避けるため、ポリオレフィン製メッシュなどの不導体スペーサー8を介在させている。これにより、陽極側の強い酸化作用による陰イオン交換膜の劣化を防ぐことができる。
【0027】
アニオンセル20a及びカチオンセル20bにおいて、被処理水の混合イオン交換体内への流入方法及び処理水の混合イオン交換体内からの集水方法としては、特に制限されず、混合イオン交換体を充填する容器のイオン交換膜近傍に設置される流入口又は流出口から被処理水を流入または処理水を流出させればよい。また、例えば脱イオン室内に均等な被処理水の流れを形成せしめるように、脱イオン室形状に合わせて、配管に細孔を開けた分配管および集水管を同心円状や等間隔平行線状にイオン交換体内に埋設させる方法やモノリスの処理水集水部や第1処理水導入分配部に溝を切り、モノリスそのものに処理水集水機能や被処理水分配機能を持たせる方法などを用いてもよい。
【0028】
また、本例の電気式脱イオン水製造装置20Aの運転方法としては、連続運転及び断続運転のいずれでもよく、例えば被処理水の装置への連続通水及び連続通電による連続運転方法及び被処理水の通水を一定時間停止し、その通水停止時間のみ直流電流を通電する断続運転方法等が挙げられる。
【0029】
アニオンセル20aにおいて、被処理水は脱陰イオン室7の陽極10側陰イオン交換膜2近傍の流入口3aから導入される。次いで、被処理水はアニオンモノリス14及びアニオン交換樹脂11内において陰イオンYを吸着除去されながら陰極9側へ移動し、第1処理水として脱陰イオン室7の陰極9側陽イオン交換膜1近傍の流出口4aからから排出される。次いで、該第1処理水は連通管5a及び流入口3bを通ってカチオンセル20bの脱陽イオン室6内の陰極9側陽イオン交換膜1近傍に導入される。次いで、被処理水である第1処理水はカチオンモノリス13とカチオン交換樹脂12内において陽イオンXを吸着除去されながら陽極10側へ移動し、第2処理水として脱陽イオン室6の陽極10側陽イオン交換膜1近傍流出口4bから排出される。
【0030】
脱陰イオン室7でアニオンモノリス14及びアニオン交換樹脂11に吸着された陰イオンYは、脱陰イオン室7の両端に配設された陰極9及び陽極10間に印加された直流電流によって電気的に泳動し、陰イオンYは陽極10側の陰イオン交換膜2を通過して陽極室(不図示)へ排出される。同様に、脱陽イオン室6でカチオンモノリス13及びカチオン交換樹脂12に吸着された陽イオンXは、脱陽イオン室6の両端に配設された陰極9及び陽極10間に印加された直流電流によって電気的に泳動し、陰極9側の陽イオン交換膜1を通過して陰極室(不図示)へ排出される。
【0031】
陽極室に排出された不純物陰イオンは、陽極室入口から流入し、陽極室出口から流出する電極水に取り込まれ系外に排出される。同様に陰極室に排出された不純物陽イオンは、陰極室入口から流入し、陰極室出口から流出する電極水に取り込まれ系外に排出される。電極水は被処理水の一部を分岐させて4つの電極室に独立に流してもよく、また、陽極水系及び陰極水系の2系統にそれぞれ流すようにしてもよい。また、電極水は常時流してもよく、断続的に適宜流してもよい。
【0032】
この方法は、アニオンセル20aでは被処理水流入口近傍にアニオンモノリス相を配置するため、炭酸やシリカ等の陰イオンの排除速度が向上するため、例えば逆浸透膜の透過水のように水中に遊離炭酸を多く含む場合に特に有効である。本装置によると、セル内にモノリスとイオン交換樹脂を層状に混合するため、モノリスを使用することによるイオン交換容量の低下を補うことができる。また、モノリス及びイオン交換樹脂の膨潤、収縮反応による体積変化を、モノリスの物理的な伸縮性により緩和し、該脱イオン交換室内の充填状態を均一に保つことができる。また、不純物陽イオンと不純物陰イオンは、それぞれ別個に装置外へ排出されるため、従来の電気式脱イオン水製造装置のように装置内において混合されることがなく、被処理水にカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分が含まれた場合でも、装置内にスケールが発生することがない。
【0033】
なお、電気式脱イオン水製造装置20Aの通水方法として、上記以外に、例えば被処理水をカチオンセル20bで処理し、次いでカチオンセル20bの処理水をアニオンセル20aで処理する方法を採ることができる。この方法によると、最初にカチオンセルに通水し、カルシウムイオン、マグネシウムイオンを排除するため、アニオンセル20a内でのスケール発生を防止でき、更に、カチオンセル20bでは被処理水流入口近傍にカチオンモノリス相を配置するため、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの排除速度が向上する。このため、該方法はカルシウム、マグネシウムなどの硬度成分を含む被処理水を処理する場合に有効である。
【0034】
本例の電気式脱イオン水製造装置20Aにおいて、脱陰イオン室7内に充填される混合イオン交換体は、上記形態の他、一側(陽極側)の陰イオン交換膜2から他側の陽イオン交換膜1に向けて順に、アニオン交換樹脂とカチオンモノリスを充填する形態、アニオンモノリスとアニオン交換樹脂とカチオンモノリスを充填する形態等が挙げられる。陰極側のイオン交換膜は近傍に充填されるイオン交換体によって陽イオン交換膜か陰イオン交換膜に決定される。アニオン交換樹脂とカチオンモノリスを充填した場合、カチオンモノリスの物理的な伸縮性により緩衝し、脱陰イオン室内の充填状態を均一に保つことができ、更に簡易なポリッシング機能を有することができる。また、アニオンモノリス、アニオン交換樹脂、カチオンモノリスの順に充填した場合、上記の炭酸やシリカ等の不純物陰イオンの排除速度を高めることができると共に、簡易なポリッシング機能も有し、更には両モノリスの物理的な伸縮性により脱陰イオン室内の充填状態を均一に保つことができる。また、脱陽イオン室6内に充填される混合イオン交換体についても、同様に適宜イオン交換体を選択することができる。また、これらの形態についても同様に、被処理水をカチオンセル20bで処理し、次いでカチオンセル20bの処理水をアニオンセル20aで処理する方法を採ることができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態における電気式脱イオン水製造装置を図3を参照して説明する。図3は本例の電気式脱イオン水製造装置の構造を示す模式図である。図3において、図2と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。図3の電気式脱イオン水製造装置20Bにおいて図2と異なる点は、電極1組を省略して、1組の電極間に脱陽イオン室と脱陰イオン室を併設した点にある。すなわち、本例の電気式脱イオン水製造装置20Bは、一側の陽イオン交換膜1及び他側の陰イオン交換膜2の間に中間陽イオン交換膜1を設け、一側の陽イオン交換膜1と中間陽イオン交換膜1で区画される第1脱イオン室にカチオンモノリス13とカチオン交換樹脂12を充填して脱陽イオン室6を構成し、他側の陰イオン交換膜2と中間陽イオン交換膜1で区画される第2脱イオン室に中間陽イオン交換膜1側からアニオン交換樹脂11とアニオンモノリス14を充填して脱陰イオン室7を構成し、一側の陽イオン交換膜1の外側に陰極9、他側の陰イオン交換膜2の外側に陽極10を配置してなり、被処理水を脱陰イオン7室中の他側(陽極側)の陰イオン交換膜2近傍にある流入口3aから供給して、脱陰イオン室7中の中間陽イオン交換膜1近傍にある流出口4aから第1処理水を得、第1処理水を脱陽イオン室6中の一側(陰極側)の陽イオン交換膜1近傍にある流入口3bから供給して、脱陽イオン室6中の中間陽イオン交換膜1近傍にある流出口4bから第2処理水を得るものである。
【0036】
電気式脱イオン水製造装置20Bにおいて、脱陰イオン室7の陽極10側陰イオン交換膜2近傍から流入した被処理水はアニオンモノリス14及びアニオン交換樹脂11内において陰イオンYを吸着除去されながら中間陽イオン交換膜1側へ移動し、脱陰イオン室7の中間陽イオン交換膜1近傍流出口4bから第1処理水として排出される。次いで、第1処理水は連通管5bによって脱陽イオン室6内の陰極9側陽イオン交換膜1近傍から脱陽イオン室6内に導入される。次いで、該第1処理水はカチオンモノリス13及びカチオン交換樹脂12内において陽イオンXを吸着除去されながら中間陽イオン交換膜1側へ移動し、第2処理水として脱陽イオン室6の中間陽イオン交換膜1近傍から排出される。
【0037】
一方、脱陽イオン室6で混合陽イオン交換体に吸着された陽イオンXは、該装置20Bの両端に配設された陰極9及び陽極10間に印加された直流電流によって電気的に泳動し、陰極9側の陽イオン交換膜1を通過して陰極室(不図示)へ排出される。同様に、脱陰イオン室7で混合陰イオン交換体に吸着された陰イオンYは、同様に陰極9及び陽極10間に印加された直流電流によって電気的に泳動し、陽極10側の陰イオン交換膜2を通過して陽極室(不図示)へ排出される。すなわち、脱陰イオン室7内における通水方向は図3中の実線の矢印方向である右から左であり、排除される陰イオンが、混合イオン交換体内の通水方向に対して逆方向に泳動し、また、脱陽イオン室6内における通水方向は実線の矢印方向である左から右であり、排除される陽イオンが混合イオン交換体内の通水方向に対して逆方向に泳動する。脱陽イオン室6内及び脱陰イオン室7内におけるモノリスとイオン交換樹脂の充填割合としては、被処理水の性状等により任意に決定できるが、好ましくはモノリス:イオン交換樹脂が、体積割合で1:0.5〜1:10である。第2の実施の形態例の電気式脱イオン水製造装置20Bによれば、第1の実施の形態例の電気式脱イオン水製造装置20Aと同様の効果を奏する他、電極1組を省略して装置の小型化、簡素化を図ることができる。
【0038】
なお、電気式脱イオン水製造装置20Bの通水方法として、上記以外に、例えば被処理水を脱陽イオン室6で処理し、次いで脱陽イオン室6の処理水を脱アニオン室7で処理する方法を採ることができる。この方法によると最初に脱陽イオン室6に通水しカルシウムイオン、マグネシウムイオンを排除するため、脱陰イオン室7内でのスケール発生を防止でき、更に脱陽イオン室6では被処理水流入口近傍にカチオンモノリス相を配置するため、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの排除速度が向上する。このため、カルシウム、マグネシウムなどの硬度成分を含む被処理水を処理する場合に有効である。
【0039】
本例の電気式脱イオン水製造装置20Bにおいて、脱陽イオン室6内に充填される混合イオン交換体は、上記形態の他、一側(陰極側)の陽イオン交換膜1から中間イオン交換膜1に向けて順に、カチオン交換樹脂とアニオンモノリスを充填する形態、カチオンモノリスとカチオン交換樹脂とアニオンモノリスを充填する形態等が挙げられる。中間イオン交換膜1は近傍に充填されるイオン交換体によって陽イオン交換膜または陰イオン交換膜に決定される。カチオン交換樹脂とアニオンモノリスを充填した場合、アニオンモノリスの物理的な伸縮性により緩衝し、脱陽イオン室6内の充填状態を均一に保つことができ、更に簡易なポリッシング機能を有することができる。また、カチオンモノリス、カチオン交換樹脂、アニオンモノリスの順に充填した場合、上記のカルシウム、マグネシウム等の硬度成分をはじめとする不純物陽イオンの排除速度を高めることができると共に、ポリッシング機能を有し、更には両モノリスの物理的な伸縮性により脱陽イオン室6内の充填状態を均一に保つことができる。脱陰イオン室7内に充填される混合イオン交換体についても、同様に適宜イオン交換体を選択することができる。また、これらの形態についても同様に、被処理水を脱陽イオン室6で処理し、次いで脱陽イオン室6の処理水を脱陰イオン室7で処理する方法を採ることができる。
【0040】
次に、本発明の第3の実施の形態における電気式脱イオン水製造装置を図4を参照して説明する。図4は本例の電気式脱イオン水製造装置の構造を示す模式図である。図4において、図3と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。図4の電気式脱イオン水製造装置20Cにおいて図3と異なる点は、中間陽イオン交換膜1及びカチオン交換樹脂を共に省略した点にある。すなわち、本例の電気式脱イオン水製造装置20Cは、一側の陰イオン交換膜2の外側に陽極10、他側の陽イオン交換膜1の外側に陰極9を配置してなり、一側の陰イオン交換膜2及び他側の陽イオン交換膜1で区画される脱イオン室15に一側(陽極側)の陰イオン交換膜2側から順に、アニオンモノリス14とアニオン交換樹脂11とカチオンモノリス13を充填して脱イオン室15を構成し、被処理水を脱イオン室15中の一側の陰イオン交換膜2近傍の流入口3cから供給して、脱イオン室15中の他側の陽イオン交換膜1近傍の流出口4cから処理水を得るものである。すなわち、脱イオン室15内における通水方向は図4中の実線の矢印方向である左から右である。
【0041】
電気式脱イオン水製造装置20Cにおいて、被処理水は脱イオン室15の陽極10側陰イオン交換膜2近傍の流入口3cから導入される。次いで、被処理水はアニオンモノリス14及びアニオン交換樹脂11内において陰イオンYを吸着除去されながら陰極9側へ移動し、カチオンモノリス13内において陽イオンXを吸着除去されながら更に陰極9側へ移動し、処理水として脱イオン室15の陰極9側陽イオン交換膜1近傍の流出口4cからから排出される。電気式脱イオン水製造装置20Cによれば、電気式脱イオン水製造装置20Bと同様の効果を奏する他、中間カチオン膜を省略して装置の小型化、簡素化を図ることができる。また、電気式脱イオン水製造装置20Cの場合、陰イオンYの泳動方向は通水方向と逆方向であり、陽イオンXの泳動方向は通水方向と同一方向である。
【0042】
なお、電気式脱イオン水製造装置20Cにおいて、脱イオン室15内に充填される混合イオン交換体は、上記形態の他、一側の陰イオン交換膜2から他側の陽イオン交換膜1に向けて順に、アニオン交換樹脂11とカチオンモノリス13を充填する形態が挙げられる。また、上記形態及び他の形態についても同様に、被処理水の流入場所は上記形態例に限定されず、被処理水を他側の陽イオン交換膜1近傍の流入口に流入させ、カチオン交換体内において陽イオンXを吸着除去しながら陽極10側へ移動させ、アニオン交換体内において陰イオンYを吸着除去しながら更に陽極10側へ移動し、陰イオン交換膜2近傍の流出口から処理水を得る方法であってもよい。脱イオン室15内におけるモノリスとイオン交換樹脂の充填割合としては、被処理水の性状等により任意に決定できるが、好ましくはモノリス:イオン交換樹脂が、体積割合で1:0.5〜1:10である。
【0043】
本発明の電気式脱イオン水製造装置は、従来のイオン交換装置と同様の応用や組み合わせが可能であり、例えば、脱陽イオン室のみを用いて軟化装置としたり、後段に混床式イオン交換器を付けて、更に処理水質の高純度化を図ることなどができる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって本発明を制限するものではない。
(電気式脱陽イオン水製造装置の作製)
図5の簡略図に示すような下記仕様の電気式脱イオン水製造装置を使用した。
・ セルサイズ;160ml(縦5cm×横4cm×高さ(電極間長さ)8cm)
・ セル容器;内容積160ml
・ アニオン交換樹脂(陽極側に充填);120ml(IRA402BL)、縦5cm×横4cm×高さ6cm、
・ カチオンモノリス;特開2003-334560号公報実施例記載のモノリスを切断した縦5cm×横4cm×高さ2cmのもの、
・ 被処理水;逆浸透膜透過水、導電率約20μS/cm,流量15l/時間
・ 電極水;アノード水、カソード水共に、流量各5l/時間
(電気式脱イオン水製造装置の運転)
得られた電気式脱イオン水製造装置に被処理水を流速15l/時間(LV=7.5、SV=94(全体))で連続通水し、0.33Aの直流電流を通電したところ、操作電圧は64Vで、導電率0.8μS/cmの処理水が得られ、本発明の電気式脱イオン水製造装置によって純度の高い純水が生成されることが示された。また、連続運転中、容器内を観察したところ、アニオン交換樹脂が膨張してカチオンモノリスが潰されており、混合イオン交換体は容器に密着している状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の電気式脱イオン水製造装置は、脱イオン水を用いる半導体製造工業、製薬工業、食品工業、発電所、研究所等の各種の工業あるいは糖液、ジュース、ワイン等の製造等で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】モノリス-イオン交換樹脂混合体の膨潤、収縮を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態例の電気式脱イオン水製造装置の構造を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態例の電気式脱イオン水製造装置の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態例の電気式脱イオン水製造装置の構造を示す模式図である。
【図5】実施例で用いた電気式脱陽イオン水製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1 陽イオン交換膜
2 陰イオン交換膜
3a〜3c 流入口
4a〜4c 流出口
5a、5b 連通管
6 脱陽イオン室
7 脱陰イオン室
8 不導体スペーサー
9 陰極
10 陽極
11 アニオン交換樹脂
12 カチオン交換樹脂
13 カチオンモノリス
14 アニオンモノリス
15 脱イオン室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換体を充填した脱イオン室に、直流電場を、排除されるイオンが該イオン交換体内における通水方向に対して同一方向又は逆方向に泳動するように印加して、該イオン交換体に吸着したイオン性不純物を系外に排除する電気式脱イオン水製造装置において、該イオン交換体が、モノリス状有機多孔質イオン交換体と粒状イオン交換樹脂の混合体であることを特徴とする電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
一側の陰イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陰イオン室と、該一側の陰イオン交換膜の外側に配置される陽極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陰極を有し、被処理水を該脱陰イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第1処理水を得るアニオンセルと、
一側の陽イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陽イオン室と、該一側の陽イオン交換膜の外側に配置される陰極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陽極を有し、前記アニオンセルの第1処理水を該脱陽イオン室中の一側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱陽イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第2処理水を得るカチオンセルを備えることを特徴とする請求項1記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
一側の陽イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陽イオン室と、該一側の陽イオン交換膜の外側に配置される陰極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陽極を有し、被処理水を該脱陽イオン室中の一側の陽イオン交換膜近傍から供給して該脱陽イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第1処理水を得るカチオンセルと、
一側の陰イオン交換膜と他側のイオン交換膜で区画される脱陰イオン室と、該一側の陰イオン交換膜の外側に配置される陽極と、該他側のイオン交換膜の外側に配置される陰極を有し、該カチオンセルの第1処理水を該脱陰イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の他側のイオン交換膜近傍から第2処理水を得るアニオンセルを備えることを特徴とする請求項1記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記カチオンセルの陰極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陽イオン交換体であるか、又は陽極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陰イオン交換体であり、前記アニオンセルの陽極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陰イオン交換体であるか、又は陰極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陽イオン交換体であることを特徴とする請求項2又は3記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
一側の陰イオン交換膜及び他側の陽イオン交換膜の間に中間イオン交換膜を設け、該一側の陰イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陰イオン室と、該他側の陽イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陽イオン室を構成し、該一側の陰イオン交換膜の外側に陽極、該他側の陽イオン交換膜の外側に陰極を配置してなる脱イオンセルであって、被処理水を該脱陽イオン室中の他側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱陽イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第1処理水を得、該第1処理水を該脱陰イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第2処理水を得ることを特徴とする請求項1記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
一側の陽イオン交換膜及び他側の陰イオン交換膜の間に中間イオン交換膜を設け、該一側の陽イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陽イオン室と、該他側の陰イオン交換膜と該中間イオン交換膜で区画される脱陰イオン室を構成し、該一側の陽イオン交換膜の外側に陰極、該他側の陰イオン交換膜の外側に陽極を配置してなる脱イオンセルであって、被処理水を該脱陰イオン室中の他側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱陰イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第1処理水を得、該第1処理水を該脱陽イオン室中の一側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱陽イオン室中の中間イオン交換膜近傍から第2処理水を得ることを特徴とする請求項1記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項7】
前記脱陽イオン室の陰極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陽イオン交換体であるか、又は前記脱陰イオン室の陽極側に充填されるイオン交換体が、モノリス状有機多孔質陰イオン交換体であることを特徴とする請求項5又は6記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項8】
一側の陰イオン交換膜と他側の陽イオン交換膜で区画される脱イオン室と、該一側の陰イオン交換膜の外側に配置される陽極と、該他側の陽イオン交換膜の外側に配置される陰極を有し、該脱イオン室の陽極側にモノリス状有機多孔質陰イオン交換体を充填するか、又は該脱イオン室の陰極側にモノリス状有機多孔質陽イオン交換体を充填した脱イオンセルにおいて、被処理水を該脱イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から供給して、該脱イオン室中の他側の陽イオン交換膜近傍から処理水を得るか、又は被処理水を該脱イオン室中の他側の陽イオン交換膜近傍から供給して、該脱イオン室中の一側の陰イオン交換膜近傍から処理水を得ることを特徴とする請求項1記載の電気式脱イオン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−15260(P2006−15260A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196271(P2004−196271)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】