説明

電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置

【課題】軸状部品の軸線を電気抵抗溶接の電極に設けた受入孔と同軸にして、正しく受入孔内に挿入することができる電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置の提供
【解決手段】供給ロッド7に軸状部品1を保持する保持ヘッド8が設けられ、この保持ヘッド8に軸状部品1をその軸線O−O方向に移動可能な状態で保持する保持凹部が形成され、軸状部品1を保持凹部内に向かって吸引する吸引手段26が設けられ、供給ロッド7が進出して軸部2が電気抵抗溶接の電極28に形成した受入孔29と同軸になっている状態で軸部2を保持凹部の内面の一部に滑動させながら押し込む押し込み手段46が設けられている。これにより軸状部品1を正しく受入孔29内に挿入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸状部品の軸部を保持して電気抵抗溶接の電極に設けた受入孔に挿入する電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置に関している。
【背景技術】
【0002】
特許第3047170号公報には、プロジェクションボルトを供給ロッドの先端部に保持し、供給ロッドを進出させて電気抵抗溶接の電極に設けた受入孔に対して軸状部品が同軸になった位置で進出を停止し、その後、供給ロッド全体を移動させて軸状部品を受入孔に挿入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献1】
【0003】
【特許文献1】特許第3047170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されている技術においては、プロジェクションボルトの軸端面である平面状のフランジ面を供給ロッドの吸着面に吸引して保持するようになっている。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。前記フランジ面はボルトの軸線に対して垂直な位置関係になっているのであるが、金型等でボルト製作をする際に何等かの原因で金型精度が狂うと、この垂直な位置関係がわずかに損なわれることがある。このようになると、供給ロッドの吸着面に密着しているボルトの先端部がボルトの軸線からずれることとなり、前記受入孔に正しく挿入できない現象が発生する。
【0005】
さらに、上記の公知技術は、端部にボルトを保持したまま供給ロッドが進出してボルトが受入孔と同軸になった位置で停止し、それに引き続いて供給ロッド全体が移動してボルトが受入孔内に挿入される。このようにボルトが受入孔と同軸になるまでと、受入孔に挿入されることの2種類の移動軌跡であることにより、供給ロッドの寸法精度や供給ロッドを進退させるエアシリンダ等の動作精度を著しく高度なものとする必要がある。このような高度な精度が少しでも狂うと、ボルトが受入孔に挿入されないという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、軸状部品の軸線を電気抵抗溶接の電極に設けた受入孔と同軸にして、正しく受入孔内に挿入することができる電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、進退動作をする供給ロッドに軸状部品の軸部を保持する保持ヘッドが設けられ、この保持ヘッドに軸状部品をその軸線方向に移動可能な状態で保持する保持凹部が形成され、軸状部品を前記保持凹部内に向かって吸引する吸引手段が設けられ、前記供給ロッドが進出して前記軸部が電気抵抗溶接の電極に形成した受入孔と同軸になっている状態で軸部を保持凹部内面の一部に滑動させながら押し込む押し込み手段が設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置である。
【発明の効果】
【0008】
上述のように保持凹部に保持されている軸部はその軸線方向に移動可能とされているから、軸部と受入孔が同軸状態になっているときに押し込み手段を動作させることによって、軸部が受入孔内に正確に挿入される。凹部構造に軸部を保持する形態であるから、保持凹部と軸部との相対位置が正確に確定し、保持ヘッドの向きを正確に設定することにより、軸部と受入孔との同軸性が確実にえられる。
【0009】
同時に、上述のような保持ヘッドに支持された軸状部品は保持凹部内を滑動するものであるから、供給ロッドや保持ヘッドには単純な進退動作だけを付与すればよい。したがって、保持ヘッドの進退移動軌跡も単純化されて、保持ヘッドの進退軌跡を正確に維持することができ、軸状部品の受入孔への挿入が一層正確になされる。
【0010】
前記吸引手段による吸引力が作用して軸部が保持凹部内面の所定箇所に確実に接触し、保持凹部と軸部との相対位置が正確に設定される。そして、軸部は保持凹部内面の一部に対して滑動しながら押し出されるので、押し出し過渡期に軸部先端が軸線からずれるようなことがない。このような利点は、軸状部品の軸部は軸線が曲がったりすることなく高い精度で製作することができるので、押し出しによる滑動現象によって軸部と受入孔の軸線がずれたりすることなく、受入孔への挿入が正確になされる。軸部の断面形状が円形であるような場合には、外面が正確な円筒形になるので、上記軸線のずれが最小化される。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記軸部の押出し方向側の部分が保持凹部に保持され、この保持されている箇所以外の軸部の部分は保持ヘッドのどこにも接触しないように構成した請求項1記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置である。
【0012】
このような構成により、軸状部品が押し出されて行くときには、軸部だけが保持凹部内面に接触しているので、軸状部品の軸線を傾けるような現象が一切発生せず、軸部はその軸線とそれと同軸の受入孔の軸線からずれることなく、正確に受入孔に挿入される。そして、軸部はその押出し方向側の部分が保持凹部に保持されているから、軸状部品の押し出し変位に要する軸部の無接触空間が確保できる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記保持ヘッドに軸状部品の軸端面の外周部側の一部に接触する係止片が設けられている請求項2または請求項3記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置である。
【0014】
このような構成により、軸端面の外周部側の一部が係止片によって受け止められているので、軸状部品に対してその直径方向に何の力も作用することなく、軸線方向における軸状部品と保持凹部との相対位置が正確に維持できる。また、保持ヘッドが供給ロッドとともに進出するときに、保持凹部と軸状部品との軸線方向の相対位置が狂うことが防止できる。さらに、係止片は軸端面の外周部側の一部に接触しているので、それ以外の軸端面の箇所に対して押し込み手段の押し出し力を作用させることができ、軸状部品に対する押し出し力を簡単な機構で作用させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記軸状部品の供給管の端部に前記保持ヘッド側に開口している出口孔が形成され、軸状部品が前記出口孔から保持ヘッド側へ移行するときに軸状部品の軸端面を受け止める位置決め片が前記出口孔近傍に設けられている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置である。
【0016】
軸状部品が前記吸引手段の吸引力によって前記出口孔から保持ヘッド側へ移行する過渡期に、軸状部品が軸線方向に異常にずれると軸状部品と保持凹部との相対位置が狂うことになる。しかし、前記位置決め片が出口孔近傍に設けられているので、位置決め片と保持ヘッドの相対位置を予め定めておくことにより、軸状部品を位置決め片に接触させて保持凹部の正しい箇所に到達させることができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記軸端面を前記位置決め片の位置決め面に向かって吸引する吸引手段が設けられている請求項4記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置である。
【0018】
このように前記位置決め面に対して軸端面が積極的に吸引される構成であるから、軸状部品は位置決め面によって正確に位置決めがなされ、同時に軸状部品と保持凹部との相対位置が正確に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】装置全体を示す側面図である。
【図2】保持ヘッドの各部の断面図である。
【図3】位置決め片の各部の断面図である。
【図4】装置の平面図である。
【図5】固定電極の断面図である。
【図6】他の実施例を示す断面図である。
【図7】さらに他の実施例を示す断面図である。
【図8】軸状部品の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明に係る電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1〜図5は、本発明の実施例1を示す。
【0022】
最初に、軸状部品について説明する。
【0023】
本発明で供給される軸状部品としては、種々なものがある。それを図8にしたがって説明する。同図(A)と(B)に示した鉄製の軸状部品1は、真っ直ぐな円柱形の軸部2に円形のフランジ3が一体的に形成されたもので、フランジ3の下面に溶着用突起4が設けられている。フランジ3の表面は平面状とされ、そこが軸状部品1の軸端面5であり、軸状部品1の軸線O−Oはフランジ3の中心部を通過している。同図(A)に示した軸状部品1は、軸端面5は軸線O−Oに対して垂直であるが、軸部2の下端面が製作誤差等により傾斜している。その傾斜角はθ1で示してある。また、同図(B)に示した軸状部品1は、軸端面5は軸線O−Oに対して垂直ではなく、製作誤差等により傾斜している。その傾斜角はθ2で示してある。
【0024】
同図(A)および(B)に示した軸状部品1の各部寸法は、フランジ3の直径は18mm、フランジ3の厚さは2.5mm、軸部2の直径は9mm、軸部2の長さは38mmである。同図(C)および(D)に示した軸状部品1も同様な寸法値とされている。
【0025】
同図(C)に示す軸状部品1は、鉄製のプロジェクションボルト1である。上述の軸状部品1とは軸部2に雄ねじか形成されている点が異なっている。また、同図(D)に示した軸状部品1は、フランジがなくて真っ直ぐな円柱状の部材であり、先の部品と同じ箇所に同一符号が記載されている。
【0026】
本実施例における軸状部品1は、同図(A)および(B)に示したものである。
【0027】
つぎに、装置全体の構成を説明する。
【0028】
静止部材に固定されているエアシリンダ6の動作で供給ロッド7が進退する。供給ロッド7の先端に保持ヘッド8が固定されており、そこに軸状部品1が保持される。軸状部品1はパーツフィーダ9から合成樹脂製の供給ホース10を経て供給管11に送給される。この供給管11から保持ヘッド8に移行されるようになっている。
【0029】
供給管11の端部に前記保持ヘッド8側に開口している出口孔13が形成され、また、端部に軸部2を受け止めるストッパ面14が形成されている。供給管11も静止部材に固定されており、ここでは供給管11とエアシリンダ6を一体化する結合部材15が、装置の機枠等で構成された静止部材16に固定されている。
【0030】
供給管11の下端に停止した軸状部品1が不用意に転落しないようにするために、出口孔13を開閉する規制片17が設けてある。この規制片17は板状の部材であり、図1(B)に示すように、エアシリンダ18によって開閉するようになっている。このエアシリンダ18は支持部材19の一端に結合され、支持部材19の他端は供給管11の下部に固定されている。
【0031】
保持ヘッド8は、供給ロッド7が後退したときに出口孔13の近傍に位置するように配置してある。前記規制片17が開くと軸状部品1が保持ヘッド8に移行し、保持ヘッド8に保持されるようになっている。
【0032】
つぎに、保持ヘッドについて説明する。
【0033】
図2に示すように、保持ヘッド8の本体部21はブロック形状の部材を加工したものであり、その下側に出口孔13の方へ突き出た突出部22が形成され、ここに出口孔13側が開放された保持凹部23が形成してある。保持凹部23内に軸部2が保持される。保持凹部23では、軸部2がその軸線O−O方向にのみ移動できるように保持されている。そのために、保持凹部23の断面形状を軸部2に合致する円弧状の溝型にする方法もあるが、ここでは線接触による保持方式が採用されている。
【0034】
つまり、保持凹部23の奥側に対向する平面24がV字型に形成してある。平面24は、出口孔13側に拡開しており、そこに引き込まれた軸部2は符号25で示す箇所に線接触をしている。この接触線25は平行になっている。この線接触状態を維持するために、軸部2を前記保持凹部23内すなわち保持凹部23の奥に向かって吸引する吸引手段26が配置してある。この吸引手段26は軸部2を保持凹部23の奥側へ吸引する機能を果たすものであり、図2(B)に示したものは永久磁石27である。この永久磁石27は、保持凹部23と軸部2に対応する箇所に配置してあり、突出部22に埋め込んである。
【0035】
上述の構成は軸部2の直径方向における保持位置に着眼しているが、つぎに軸部2の軸線方向における保持位置について説明する。突出部22の軸線O−O方向における寸法は、軸部2の長さの半分またはそれを若干下回る値に設定してある。そして、軸部2の先端側が保持凹部23内に収容されている。つまり、後述のように軸部2が押し出されて行く側の部分が保持凹部23に保持され、この保持されている箇所以外の部分の軸部2は保持ヘッド8のどこにも接触しないようになっている。軸部2がこのように保持されているので、軸線O−O方向の押し出し力が軸端面5に作用すると、前記線接触部分25に滑動がなされ、軸部2が軸線O−O方向に進出してゆく。このように軸部2の先端側が保持凹部23に支持されているので、軸部2に押し出しストロークが付与される。
【0036】
前記保持ヘッド8に軸端面5の外周部側の一部に接触する係止片34が設けられている。この係止片34は、出口孔13から移動してきた軸状部品1の軸線方向の位置を設定するものであり、軸部2が永久磁石27で吸引された安定した静止状態では、フランジ3の外周面と本体部21との間に隙間Lが存在するように、本体部21の側面位置が設定してある。したがって、軸状部品1に対してその軸線O−Oを傾けるような力成分は作用しない。
【0037】
図2(B)に示した吸引手段26は永久磁石27を利用したものであるが、同図(C)に示したものは、空気吸引によるものである。空気通路35が保持凹部23の底部に開口しており、吸引ポンプ(図示していない)から延びてきている空気ホース36が空気通路35に接続されている。空気吸引がなされているときに軸状部品1が出口孔13から送出されると、低圧とされた保持凹部23の奥に軸部2が吸い付けられる。
【0038】
つぎに、電極構造について説明する。
【0039】
鋼板部品31が載置されている固定電極28に、軸部2が挿入される受入孔28が固定電極28の軸線方向に形成してある。そして、受入孔29には進退式のガイドピン30が挿入され、その先端部は鋼板部品31の下孔32を貫通している。ガイドピン30は、エアシリンダ33によって進退する。図2(A)に示すように、供給ロッド7の進出端において、軸部2と受入孔29とが軸線O−O上に位置するように、保持ヘッド8の停止位置とその姿勢が設定されている。また、可動電極(図示していない)は、固定電極28に対向した位置に配置してある。
【0040】
ガイドピン30の先端にテーパ部42が形成され、その中心部に尖った頂部57が形成されている。このような尖った頂部57が軸部2の下端面に接触することによって、端面が図8(A)に示すように、傾斜角θ1のように傾斜していても、軸部2がスリップするようなことが防止できる。また、図5に示したように、端部がギザギザになっていても、頂部57のスリップ防止作用で軸部2の端部中心部が確実に支持される。
【0041】
つぎに、位置決め片について説明する。
【0042】
図3に示すように位置決め片37は、出口孔13に近い箇所の供給管11に溶接された庇状の部材である。そして、軸状部品1が出口孔13から保持ヘッド8側へ移行するときに軸端面5を受け止める機能を果たしている。そのために、位置決め片37の下面に平面とされた位置決め面38が形成されている。この位置決め面38と係止片34の下面は、一仮想平面上に配置してある。
【0043】
規制片17が閉じていることにより軸状部品1が出口孔13の箇所に一時係止されている。ここで規制片17がエアシリンダ18の動作で開くと、軸状部品1は永久磁石27の吸引力で保持凹部23内に吸引される。この移行過渡期に軸端面5が位置決め面38に密着することにより、保持ヘッド8に対する軸状部品1の軸線方向の相対位置が設定される。このように軸状部品1が移行するときには、軸部2の下側が保持凹部23に受止められるので、軸部2は慣性力でわずかに傾いてフランジ3の外周面が本体部21の横側面に接触する。しかし、永久磁石27の吸引力で軸部2が保持凹部23内に安定した静止状態になると、前記隙間Lが存在した傾きのない状態で保持される。
【0044】
軸端面5を位置決め面38に確実に密着させるために、位置決め片37に作用する吸引手段39が設けられている。図1(A)や図3(A)に示すように、永久磁石40が位置決め片37の上側に配置してある。永久磁石40は容器41内に収容され、この容器41が供給管11に溶接してある。永久磁石40の吸引力が移行中の軸端面5に作用し、軸端面5が確実に位置決め面38と係止片34の下面に密着する。
【0045】
図1(A)や図3(A)に示された吸引手段39は永久磁石40を利用したものであるが、他の例として空気吸引式のものであってもよい。図3(C)に示すように、位置決め片37に設けた空気通路43が円形の吸引開口部44を経て位置決め面38に開口している。空気通路43は、吸引ポンプ(図示していない)から延びてきている空気ホース45に接続されている。空気吸引がなされているときに軸状部品1が出口孔13から送出されると、低圧とされた吸引開口部44に吸い寄せられ、位置決め面38と係止片34の下面に軸端面5が密着する。
【0046】
つぎに、押し込み手段について説明する。
【0047】
供給ロッド7が進出して軸状部品1が受入孔29と同軸になったときに供給ロッド7の進出が停止し、引き続いて押し込み手段46が動作して、軸部2が保持凹部23の線接触部25を滑動しながら受入孔29内に挿入される。押し込み手段46の型式としては種々なものが採用できる。ここでは2つのエアシリンダで動作するものが採用されている。
【0048】
軸線O−Oと平行な方向に進退出力をするエアシリンダ47が静止部材16に固定されている。このエアシリンダ47はそのピストンロッド48が静止部材16に固定され、ピストン55の上下に交互に空気を給排することによりシリンダボディ49が進退するようになっている。シリンダボディ49に結合片50を介してエアシリンダ51が一体化されている。エアシリンダ51は図1に示すように、傾斜した姿勢で配置してあり、そのピストンロッドに押し込みロッド52が結合してある。この押し込みロッド52は、エアシリンダ51と同方向に傾斜した傾斜部53と、軸線O−Oと平行な押し込み部54がくの字型になった状態で形成されている。
【0049】
供給ロッド7を進退させるエアシリンダ6のストローク方向の中央付近に、ピストン通過を検知して信号を発信するセンサー56が取り付けてある。供給ロッド7が進出して保持ヘッド8が停止する前に、センサー56からの信号でエアシリンダ51を動作させて押し込みロッド52を後続的に進出させる。つまり、軸状部品1の軸線O−Oが受入孔29と同軸状態になって保持ヘッド8の進出が停止する前に、押し込みロッド52の進出を開始して、供給ロッド7と押し込みロッド52の合計動作時間を短縮し、生産性を向上している。
【0050】
上記の構成において、各エアシリンダに換えて進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、永久磁石27や40の吸引力を軸状部品1に対してより強く作用させるために、永久磁石27、40の近辺の部材をステンレス鋼のような非磁性材料で構成することが望ましい。例えば、保持ヘッド8の本体部21、突出部22や、容器41、位置決め片37等である。
【0051】
図4は、図1(A)に示した装置構造を平面的に示した図である。静止部材16がほぼL字型の部材で構成され、それに前記結合部材15やエアシリンダ49のピストンロッド48が固定されている。
【0052】
つぎに、装置全体の動作を説明する。
【0053】
図1(A)は、供給ロッド7が後退位置になっていて保持ヘッド8が出口孔13の向かい側に停止しており、同時に押し込みロッド52とシリンダボディ49が後退している状態である。そして、軸状部品1はストッパ面14と規制片17によって一時係止とされている。
【0054】
ここで、エアシリンダ18の動作により規制片17が出口孔13を開けると、軸状部品1は永久磁石27の吸引力で保持凹部23の方へ吸引される。この吸引による移行の過渡期に、軸状部品1は永久磁石40によって上方へ吸引されるので、軸端面5は位置決め片37の位置決め面38と係止片34の下面に密着し、軸状部品1は軸線O−O方向の位置決めがなされる。軸部2が保持凹部23の内面に受止められると、その時の慣性力でフランジ3の外周面が本体部21の横側面に衝突するが、永久磁石27の吸引力で軸部2が保持凹部23内で静止すると、図2(A)に示した前記隙間Lが形成されて、軸状部品1と保持ヘッド8との相対位置が正しく設定される。
【0055】
ついで、供給ロッド7が進出して軸部2の軸線O−Oが受入孔29と同軸になった位置で供給ロッド7の進出が停止する。エアシリンダ6のピストン移動でセンサー56から信号が出され、この信号でエアシリンダ51が供給ロッド7の進出と並行して進出を開始し、押し込み部54が軸線O−Oと同軸になった位置で停止し、このときには押し込み部54の先端部は図1(A)の2点鎖線で示すように、軸端面5の直前で停止している。その後、ピストン55の下側に動作空気が供給されると、シリンダボディ49が下降し、これによってエアシリンダ51と押し込みロッド52が一体になって軸線O−O方向に下降する。この下降動作で押し込み部54の先端が軸端面5を押し下げるので、軸部2が受入孔29内に挿入される。この挿入時には、軸部2が接触線25を滑動する。また、軸部2の挿入に同期してガイドピン30がエアシリンダ33によって引き込まれる。
【0056】
このようにして軸状部品1が受入孔29内に完全に挿入されて溶着用突起4が鋼板部品31に接触すると、押し込みロッド52がエアシリンダ47、51によって後退する。その後、可動電極が軸状部品1を鋼板部品31に加圧し、溶接電流が通電されて溶接が完了する。
【0057】
上記動作において、保持片34はフランジ3の外周近くに接触しているので、押し込み部54の先端部は軸端面5の中央部を押し下げることができる。上記押し下げ動作で軸部2は受入孔29内に挿入されつつあるときに、保持ヘッド8が供給ロッド7によって後退するので、フランジ3が突出部22に干渉することがない。このように干渉しないには、突出部22つまり保持凹部23が軸部2の下端側を保持しているからである。
【0058】
上述の動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行わせることが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0059】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0060】
上述のように保持凹部23に保持されている軸部2はその軸線方向に移動可能とされているから、軸部2と受入孔29が同軸状態になっているときに、押し込み手段46であるエアシリンダ51、押し込みロッド52、エアシリンダ49等を動作させることによって、軸部2が受入孔29内に正確に挿入される。凹部構造に軸部2を保持する形態であるから、保持凹部23と軸部2との相対位置が正確に確定し、保持ヘッド8の向きを正確に設定することにより、軸部2と受入孔29との同軸性が軸線O−O上で確実にえられる。
【0061】
同時に、上述のような保持ヘッド8に支持された軸状部品1は保持凹部23内を滑動するものであるから、供給ロッド7や保持ヘッド8には単純な進退動作だけを付与すればよい。したがって、保持ヘッド8の進退移動軌跡も単純化されて、保持ヘッド8の進退軌跡を正確に維持することができ、軸状部品1の受入孔29への挿入が一層正確になされる。
【0062】
前記吸引手段である永久磁石27による吸引力が作用して軸部2が保持凹部23内面の所定箇所に確実に接触し、保持凹部23と軸部2との相対位置が正確に設定される。そして、軸部2は保持凹部23内面の接触線25に対して滑動しながら押し出されるので、押し出し過渡期に軸部先端が軸線O−Oからずれるようなことがない。このような利点は、軸状部品1の軸部2は軸線O−Oが曲がったりすることなく高い精度で製作することができるので、押し出しによる滑動現象によって軸部2と受入孔29の軸線O−Oがずれたりすることなく、受入孔29への挿入が正確になされる。軸部2の断面形状が円形であるような場合には、外面が正確な円筒形になるので、上記軸線O−Oのずれが最小化される。
【0063】
前記軸部2の押出し方向側の部分が保持凹部23に保持され、この保持されている箇所以外の軸部2の部分は保持ヘッド8のどこにも接触しないように構成した。
【0064】
このような構成により、軸状部品1が押し出されて行くときには、軸部2だけが保持凹部23の内面に接触しているので、軸状部品1の軸線O−Oを傾けるような現象が一切発生せず、軸部2はその軸線O−Oとそれと同軸の受入孔29の軸線からずれることなく、正確に受入孔29に挿入される。そして、軸部2はその押出し方向側の部分が保持凹部23に保持されているから、軸状部品1の押し出し変位に要する軸部2の無接触空間が確保できる。
【0065】
前記保持ヘッド8に軸状部品1の軸端面5の外周部側の一部に接触する係止片34が設けられている。
【0066】
このような構成により、軸端面5の外周部側の一部が係止片34によって受け止められているので、軸状部品1に対してその直径方向に何の力も作用することなく、軸線方向O−Oにおける軸状部品1と保持凹部23との相対位置が正確に維持できる。また、保持ヘッド8が供給ロッド7とともに進出するときに、保持凹部23と軸状部品1との軸線方向O−Oの相対位置が狂うことが防止できる。さらに、係止片34は軸端面5の外周部側の一部に接触しているので、それ以外の軸端面5の中心部に対して押し込み部54を押し付けて押し込み手段46の押し出し力を作用させることができ、軸状部品1に対する押し出し力を簡単な機構で作用させることができる。
【0067】
前記軸状部品1の供給管11の端部に前記保持ヘッド8側に開口している出口孔13が形成され、軸状部品1が前記出口孔13から保持ヘッド8側へ移行するときに軸状部品1の軸端面5を受け止める位置決め片37が前記出口孔13の近傍に設けられている。
【0068】
軸状部品1が前記吸引手段26の吸引力によって前記出口孔13から保持ヘッド8側へ移行する過渡期に、軸状部品1が軸線O−O方向に異常にずれると軸状部品1と保持凹部23の相対位置が狂うことになる。しかし、前記位置決め片37が出口孔13近傍に設けられているので、位置決め片37と保持ヘッド8との相対位置を予め定めておくことにより、軸状部品1を位置決め片37の位置決め面38に接触させて保持凹部23の正しい箇所に到達させることができる。
【0069】
前記軸端面5を前記位置決め片37の位置決め面38に向かって吸引する吸引手段39が設けられている。
【0070】
このように前記位置決め面38に対して軸端面5が積極的に吸引される構成であるから、軸状部品1は位置決め面38によって正確に位置決めがなされ、同時に軸状部品1と保持凹部23との相対位置が正確に設定される。
【実施例2】
【0071】
図6は、本発明の実施例2を示す。
【0072】
この実施例2は、前記押し込み手段が可動電極の構造を利用して形成されているものである。
【0073】
静止部材16にエアシリンダ58が固定され、このエアシリンダ58のピストンロッド59に結合部材60を介して可動電極61が固定されている。この可動電極は前記軸線O−Oに沿って進退するもので、可動電極61の中心部に真っ直ぐな押し込みロッド52が進退自在な状態で貫通させてある。この押し込みロッド52を進退させるエアシリンダ62が可動電極61の上側に固定されている。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実施例1と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0074】
エアシリンダ58の動作で可動電極61がフランジ3に接近すると、今度はエアシリンダ62の出力で実施例1と同様に、押し込みロッド52が動作し、軸状部品1が受入孔29内に挿入される。このようにして軸状部品1が受入孔29内に完全に挿入されて溶着用突起4が鋼板部品31に接触すると、押し込みロッド52がエアシリンダ62によって後退する。その後、可動電極61が軸状部品1を鋼板部品31に加圧し、溶接電流が通電されて溶接が完了する。
【0075】
本実施例の作用効果は、先の実施例1と同じである。
【実施例3】
【0076】
図7は、本発明の実施例3を示す。
【0077】
この実施例3は、前記供給ロッドが水平方向と鉛直方向に進退するものである。
【0078】
供給ロッド7を水平方向に進退させるエアシリンダ64が設けられている。他方、鉛直方向に出力するエアシリンダ65が静止部材16に固定され、そのピストンロッド66の端部が前記エアシリンダ64に結合してある。また、押し込み手段46は鉛直方向に出力するエアシリンダ67が静止部材16に固定され、そのピストンロッド68に支持部材69が結合され、この支持部材69の下面に押し込みピン70が固定されている。なお、図示していないが、保持ヘッド8が下降するときに、支持部材69と干渉することを避けるために、支持部材69がピストンロッド68を中心にして回動するようにしてある。このような回動機構としては色々なものが採用できるが、例えば、ラックピニオン機構によって簡単に実施できる。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の各実施例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0079】
図7の2点鎖線図示の位置に軸状部品1が移動して軸状部品1と受入孔29が同軸になると供給ロッド7の動きが停止する。その後、エアシリンダ67の動作で押し込みピン70が下降して軸状部品1が受入孔29内に挿入される。
【0080】
本実施例の作用効果は、先の各実施例と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
上述のように、本発明の装置によれば、軸状部品の軸線を電気抵抗溶接の電極に設けた受入孔と同軸にして、軸状部品を正しく受入孔内に挿入することができる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 軸状部品、プロジェクションボルト
2 軸部
3 フランジ
5 軸端面
7 供給ロッド
8 保持ヘッド
11 供給管
13 出口孔
17 規制片
21 本体部
22 突出部
23 保持凹部
24 平面
25 接触線
26 吸引手段
27 永久磁石
28 固定電極
29 受入孔
30 ガイドピン
31 鋼板部品
34 係止片
37 位置決め片
38 位置決め面
39 吸引手段
40 永久磁石
46 押し込み手段
O−O 軸線
L 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進退動作をする供給ロッドに軸状部品の軸部を保持する保持ヘッドが設けられ、この保持ヘッドに軸状部品をその軸線方向に移動可能な状態で保持する保持凹部が形成され、軸状部品を前記保持凹部内に向かって吸引する吸引手段が設けられ、前記供給ロッドが進出して前記軸部が電気抵抗溶接の電極に形成した受入孔と同軸になっている状態で軸部を保持凹部内面の一部に滑動させながら押し込む押し込み手段が設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置。
【請求項2】
前記軸部の押出し方向側の部分が保持凹部に保持され、この保持されている箇所以外の軸部の部分は保持ヘッドのどこにも接触しないように構成した請求項1記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置。
【請求項3】
前記保持ヘッドに軸状部品の軸端面の外周部側の一部に接触する係止片が設けられている請求項2または請求項3記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置。
【請求項4】
前記軸状部品の供給管の端部に前記保持ヘッド側に開口している出口孔が形成され、軸状部品が前記出口孔から保持ヘッド側へ移行するときに軸状部品の軸端面を受け止める位置決め片が前記出口孔近傍に設けられている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置。
【請求項5】
前記軸端面を前記位置決め片の位置決め面に向かって吸引する吸引手段が設けられている請求項4記載の電気抵抗溶接における軸状部品の供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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