電気掃除機
【課題】仕事率が低下することがなく、細塵の捕集性能を向上させることが可能な、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機を提供する。
【解決手段】電気掃除機は、吸気口を有する吸込口体3と、吸気を発生させる電動送風機4と、吸込口体3と電動送風機4との間を連通する吸気通路と、吸気通路に配置され、流入する吸気を旋回させて塵埃を分離するサイクロン集塵装置5と、サイクロン集塵装置5の下流側に配置された電気集塵装置9とを備える。
【解決手段】電気掃除機は、吸気口を有する吸込口体3と、吸気を発生させる電動送風機4と、吸込口体3と電動送風機4との間を連通する吸気通路と、吸気通路に配置され、流入する吸気を旋回させて塵埃を分離するサイクロン集塵装置5と、サイクロン集塵装置5の下流側に配置された電気集塵装置9とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には電気掃除機に関し、特定的にはサイクロン集塵装置を備えた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機においては、塵埃をダストカップ容器の中で高速に旋回させ、遠心力により分離している。しかし、細塵はその質量の少なさから遠心力の作用を受け難く、内筒メッシュフィルターの目の間から抜け出る。このため、細塵を捕捉するためにサイクロン集塵装置の下流側にHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)等の別のフィルターが必要であった。
【0003】
なお、特開平4−341228号公報(特許文献1)には、サイクロン集塵装置を備えていないが、電動送風機の下流側に設けられ、微細な塵やほこりなどを電気的に捕集する電気集塵装置を備えた電気掃除機が記載されている。
【特許文献1】特開平4−341228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のHEPAフィルター等の別フィルターを用いて細塵を捕集するためには、フィルターの目を細かくしなければならない。しかし、フィルターの目を細かくすれば、吸気において圧力損失が生じるので、電気掃除機の本来の吸塵力(仕事率)が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、仕事率が低下することがなく、細塵の捕集性能を向上させることが可能な、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った電気掃除機は、吸気口を有する吸込口体と、吸気を発生させる電動送風機と、吸込口体と電動送風機との間を連通する吸気通路と、吸気通路に配置され、流入する吸気を旋回させて塵埃を分離するサイクロン集塵装置と、サイクロン集塵装置の下流側に配置された電気集塵装置とを備える。
【0007】
この発明の電気掃除機においては、サイクロン集塵装置の下流側に配置された電気集塵装置の放電電極により、サイクロン集塵装置から抜け出た細塵にイオンシャワーを浴びせることができる。これにより帯電した細塵を静電作用で電気集塵装置の捕獲電極に吸着させることによって、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵率を向上させることができる。また、電気集塵装置を設けることによって仕事率が低下することがない。なお、電気集塵装置は、少なくともサイクロン集塵装置の下流側に配置されればよく、電動送風機の下流側に配置されてもよく、サイクロン集塵装置と電動送風機との間に配置されてもよい。
【0008】
特にサイクロン集塵装置の中に進入した塵埃は、サイクロン集塵装置を構成する集塵容器の内壁面と塵埃との摩擦により、電位の高い静電気を帯びることになる。たとえば、塵埃が集塵容器の中で旋回したときに、その集塵容器の内壁面と塵埃との摩擦により塵埃に正の電位が付与されるように集塵容器の材質を選定すれば、サイクロン集塵装置から抜け出た細塵は、結果として正の電位を帯びることになる。
【0009】
このようにサイクロン集塵装置から抜け出た細塵は、電気集塵装置に進入する前に正の電位が付与されているので、電気集塵装置によるイオンシャワーを浴びることにより、さらに高い電位を得ることができる。このため、より高い電位を得て荷電された細塵は、電気集塵装置の捕獲電極との間の静電吸着力(クーロン力)もより強くなるので、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機に電気集塵装置を設けることによって、細塵の捕集率をより効果的に向上させることができる。
【0010】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターをさらに備えることが好ましい。
【0011】
この場合、フィルターは導電性繊維からなる導電性フィルターを含むことが好ましい。
【0012】
このように電気集塵装置の下流側に導電性フィルターを配置すると、電気集塵装置で荷電された細塵が捕獲電極に吸着されることなく、電気集塵装置を抜け出ても、フィルターの濾過効果と、細塵と導電性繊維との間のクーロン力とにより、細塵を濾過し、かつ吸着させることによって、電気集塵装置の小型化を図ることができるとともに、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵性能をさらに向上させることができる。
【0013】
さらに、この場合、電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、導電性フィルターは一方の電極に電気的に接続されていることが好ましい。
【0014】
このように導電性フィルターを電気集塵装置の一方の電極、すなわち、捕獲電極に電気的に接続することによって、導電性フィルターを捕獲電極として利用することができるので、実質的に電気集塵装置の捕獲電極の面積を増大させることができ、帯電した細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0015】
また、この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターは、エレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルターを含むことが好ましい。
【0016】
このように電気集塵装置の下流側にエレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルターを配置することによって、電気集塵装置で荷電された細塵と正負に荷電されたエレクトレット繊維との間のクーロン力により効果的に捕塵することができ、細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0017】
さらに、この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターは、導電性フィルターとエレクトレットフィルターとの積層構造を含むことが好ましい。
【0018】
このように電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターを導電性フィルターとエレクトレットフィルターとの積層構造で構成することによって、導電性フィルターによる効果とエレクトレットフィルターによる効果との両方を得ることができるので、細塵の捕集効率をさらに向上させることができる。
【0019】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、一方の電極は電動送風機の下流側に配置されていることが好ましい。
【0020】
電気掃除機の内部では、たとえば、電動送風機の整流子とブラシとの接触によって塵埃が発生する。また、電動送風機で発生された吸気は、電動送風機を冷却するために、電動送風機の内部を通過し、その後、電気掃除機の外部へ排気される。電動送風機の整流子とブラシとの接触によって発生した塵埃は、電動送風機の内部を通過する吸気とともに電気掃除機の外部へ排気される。電動送風機において発生するこの塵埃には、サブミクロン領域の大きさの粒子も含まれる。そこで、サブミクロン程度の粒子を捕集するためには、電動送風機の下流側に目の細かいフィルターを備えることや、複数の集塵装置やフィルターを設けることなどが考えられる。しかし、このような方法を用いるとフィルターの目詰まりや圧力損失による吸引力の低下が生じやすく、吸引力を保つためには電動送風機の回転数を上昇させなければならない。その結果、電動送風機の整流子とブラシとの接触によって発生して外部に排気される塵埃の量が増加することになる。
【0021】
そこで、電気集塵装置の一方の電極、すなわち捕獲電極を電動送風機の下流側に配置することにより、電動送風機において発生した塵埃を、フィルターを用いることなく、静電気力による集塵で除去することができる。
【0022】
このようにすることにより、電気掃除機の基本性能を低下させることなく、電動送風機において発生した塵埃を捕集することのできる電気掃除機を提供することができる。
【0023】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、他方の電極は電動送風機の上流側に配置されていることが好ましい。
【0024】
電気集塵装置の他方の電極、すなわち放電電極は、サイクロン集塵装置から抜け出た細塵にイオンシャワーを浴びせて細塵を帯電させる。電動送風機を放電電極よりも下流に置くことで、細塵は帯電された後に電動送風機の内部を通過し、電動送風機において発生する塵埃と静電気力で凝集する。
【0025】
このようにすることにより、電動送風機において発生するカーボン粒子など帯電させることが難しい塵埃を効率よく捕集することができる。
【0026】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の上流側に風速変更部を備えることが好ましい。
【0027】
電気集塵装置の内部において、吸気の風速が均一でない場合、電機集塵装置内に吸気の通過しない部分が生じ、塵埃の捕集効率が低下する。また、電気集塵装置を通過する吸気の風速が増大すると、塵埃の捕集効率が低下する。
【0028】
そこで、電気集塵装置の上流側に風速変更部を備えることによって、電気集塵装置を通過する吸気の風速のピーク値を下げる。このようにすることにより、電気集塵装置内の風速が均一になり、電気集塵装置での塵埃の集塵効率が向上する。また、電気掃除機の外部への排気の巻上げを減少させることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のようにこの発明によれば、仕事率が低下することがなく、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本発明の一つの実施の形態として電気掃除機の概略的な全体の構成を示す斜視図である。
【0032】
図1に示すように、本発明の電気掃除機は、掃除機本体1と、延長管2aと、接続ホース2bと、吸込口体3とを備える。延長管2aと接続ホース2bは、吸込口体3から吸引された空気を掃除機本体1に供給するための供給路を構成する。吸込口体3は、後述する電動送風機4の運転により、空気吸込口(図示しない)を介して空気を吸引する。
【0033】
掃除機本体1は、電動送風機4とサイクロン集塵装置5とを備える。電動送風機4は、吸込口体3、延長管2a、接続ホース2bおよびサイクロン集塵装置5を通じて空気を吸引するものである。サイクロン集塵装置5は、電動送風機4によって吸引された空気を旋回させ、この空気に含まれる塵埃を遠心分離するものであり、掃除機本体1に対して着脱可能に設けられている。
【0034】
図2は、図1に示される構成を有する従来の電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【0035】
図2に示すように、サイクロン集塵装置を備えた従来の電気掃除機では、掃除機本体1(図1)に収納された電動送風機4が駆動されると、吸込口体3の空気吸込口より空気が吸引され、延長管2a、接続ホース2bを通じて、塵埃8aがサイクロン集塵装置5に送られる。サイクロン集塵装置5では、サイクロン集塵室5aにて空気中に含まれる塵埃が遠心分離され、集塵容器としてのダストカップ5bに集積される。一方、塵埃が除去された空気は、その後、サイクロン集塵装置5の内筒フィルター5cを通じて濾過されて、細塵8bを含む空気になる。
【0036】
細塵8bは、電動送風機4の上流側に配置されたフィルター6にてさらに細かく濾過され、微細塵8cとなる。微細塵8cを含む空気は、電動送風機4を通過した後、最後の排気フィルター7を通過し、超微細塵8dを含む空気となる。超微細塵8dを含む空気は、掃除機本体1に設けられた排出口(図示せず)から機外に排出される。
【0037】
しかしながら、サイクロン集塵装置を備えた従来の電気掃除機では、細塵を除去するためにはフィルター6の目を細かくしなければならないので、仕事率が低下するという問題がある。
【0038】
図3は、図1に示される構成を有する本発明の一つの実施の形態としての電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【0039】
図3に示すように、従来の電気掃除機と同様に、サイクロン集塵装置を備えた本発明の電気掃除機では、掃除機本体1(図1)に収納された電動送風機4が駆動されると、吸込口体3の空気吸込口より空気が吸引され、延長管2a、接続ホース2bを通じて、塵埃8aがサイクロン集塵装置5に送られる。サイクロン集塵装置5では、サイクロン集塵室5aにて空気中に含まれる塵埃8aが遠心分離され、集塵容器としてのダストカップ5bに集積される。一方、塵埃8aが除去された空気は、その後、サイクロン集塵装置5の内筒フィルター5cを通じて濾過されて、細塵8bを含む空気になる。
【0040】
本発明の一つの実施の形態では、掃除機本体1に電気集塵装置9を設置する。具体的には、図3に示すように、電気集塵装置9を電動送風機4の下流側に配置する。この実施の形態では、電気集塵装置9は、サイクロン集塵装置5の下流側として、電動送風機4の下流側に配置しているが、サイクロン集塵装置5と電動送風機4との間に配置してもよい。
【0041】
電気集塵装置9は、対向する一方と他方の電極として放電電極9aと捕獲電極9bとを備え、放電電極9aと捕獲電極9bには高圧電源9cが接続されている。放電電極9aと捕獲電極9bとの間に高圧電源9cより高圧電位を印加することによって、サイクロン集塵装置5で遠心濾過された後の細塵8bを帯電させた後、捕獲電極9bに静電吸着させる。これにより、電気集塵装置9を通過した空気は、微細塵8cを含み、排気フィルター7を通じて、超微細塵8dを含む空気となり、掃除機本体1から機外に排出される。
【0042】
このようにして、従来例のように圧力損失の大きいフィルター6を使用せずに、掃除機本体から排出される細塵の捕集率を向上させることが可能となる。いいかえれば、本発明の電気掃除機はサイクロン集塵装置5の下流側に配置された電気集塵装置9の放電電極9aによって、サイクロン集塵装置5を通過した細塵8bにイオンシャワーを浴びせ、帯電させた細塵8bを電気集塵装置9の捕獲電極9bに静電吸着させることにより、サイクロン集塵装置5を備えた電気掃除機の捕塵率を向上させることができる。
【0043】
特にサイクロン集塵装置5の中に進入した塵埃8aは、サイクロン集塵装置5を構成する集塵容器としてのダストカップ5bの内壁面と塵埃8aとの摩擦により、電位の高い静電気を帯びることになる。たとえば、塵埃8aがサイクロン集塵室5aの中で旋回したときに、集塵容器としてのダストカップ5bの内壁面と塵埃8aとの摩擦により塵埃8aに正の電位が付与されるようにダストカップ5bの材質を選定すれば、サイクロン集塵装置5から抜け出た細塵8bは、結果として正の電位を帯びることになる。
【0044】
このようにサイクロン集塵装置5から抜け出た細塵8bは、電気集塵装置9に進入する前に正の電位が付与されているので、電気集塵装置9によるイオンシャワーを浴びることにより、さらに高い電位を得ることができる。このため、より高い電位を得て荷電された細塵8bは、電気集塵装置9の捕獲電極9bとの間の静電吸着力(クーロン力)もより強くなるので、サイクロン集塵装置5を備えた電気掃除機に電気集塵装置9を設けることによって、細塵8bの捕集率をより効果的に向上させることができる。
【0045】
図4は電気集塵装置の帯電メカニズムを模式的に示す図である。
【0046】
図4にて矢印で示すように、電気集塵装置9に流入した細塵は放電電極9aと捕獲電極9bとの間のイオンシャワーにより正電位に帯電され、捕獲電極9bに静電吸着される。しかしながら、電気掃除機のように吸気の流速が高速の場合、たとえば、10〜30m/sec程度の場合、帯電された細塵が捕獲電極9bに吸着されるためには、図4に示すように、捕獲電極9bの長さLを十分な長さに設定する必要がある。捕獲電極9bの長さLが十分でない場合、細塵は捕獲電極9bに吸着される前に捕獲電極9bを通過してしまうという問題がある。
【0047】
図5は、本発明のもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0048】
図5に示すように、上記の問題を解決するために、電気集塵装置9を構成する捕獲電極9bの長さSは、上述の捕獲電極9bの長さLより短く設定されている。すなわち、上述の捕獲電極9bの長さLは、電気掃除機の吸気の流速が高速であっても、帯電された細塵を静電作用で捕獲電極9bに吸着するために十分必要な長さに設定されていたが、この実施の形態の捕獲電極9bの長さSは、細塵をイオンシャワーで帯電させるためのみに必要な長さに設定されているので、長さLより短い長さである。このため、帯電された細塵を捕獲するために、電気集塵装置9の下流側にフィルターが配置されている。この実施の形態では、相対的に大きな面積の導電性繊維からなる導電性フィルター10が電気集塵装置9の下流側に配置されている。これにより、帯電された細塵は導電性を有する繊維との間のクーロン力により、静電吸着されて捕獲される。したがって、この実施の形態では、電気集塵装置9の下流側に導電性繊維からなる導電性フィルター10を配置することによって、電気集塵装置9で正電位に荷電された細塵は、電気集塵装置9の捕獲電極9bを通過しても、導電性フィルター10の濾過効果と、細塵と導電性繊維との間のクーロン力とにより、濾過され、かつ吸着されることになる。その結果、電気集塵装置の小型化を図ることができるとともに、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵性能をさらに向上させることができる。
【0049】
図6は、本発明のさらにもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0050】
図6に示すように、上述の導電性フィルター10が電気集塵装置9の捕獲電極9bに電気的に接続されている。具体的には、導電性フィルター10に形成された接続端子10aと、捕獲電極9bに形成された接続端子9dとが電気的に接続されるとともに、高圧電源9cに接続されている。このようにすることにより、導電性フィルター10が高圧電源9cに接続されているため、正電位に帯電された細塵の電位が電源側に戻ることになる。したがって、正電位に帯電された細塵が吸着することによって導電性フィルター10の電位が高くなっても、導電性フィルター10の電位上昇による細塵の吸着力の低下が解消されるので、より効果的に細塵を静電吸着することが可能となる。
【0051】
また、この実施の形態では、導電性フィルター10を電気集塵装置の捕獲電極9bに電気的に接続することにより、導電性フィルター10を捕獲電極として利用するができるので、実質的に捕獲電極の面積を増大させることができ、帯電した細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0052】
図7は、本発明のさらに別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0053】
図7に示すように、帯電された細塵を捕獲するために電気集塵装置9の下流側に配置されるフィルターとして、上述の導電性フィルター10の代わりにエレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルター(静電フィルターともいう)11が採用されている。このように構成すると、エレクトレットフィルター11に保持された永久電荷との間のクーロン力により、帯電された細塵を効率よく、静電吸着により捕獲することができる。したがって、この実施の形態では、電気集塵装置9の下流側に、たとえば、通気抵抗の少ない不織布のエレクトレット繊維で構成されたエレクトレットフィルター11を配置することにより、電気集塵装置9で荷電された細塵を正負に荷電されたエレクトレット繊維との間のクーロン力で効果的に捕集することができ、細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0054】
図8は、本発明のさらにまた別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0055】
図8に示すように、帯電された細塵を捕獲するために電気集塵装置9の下流側に配置されるフィルターが、上述の導電性フィルター10とエレクトレットフィルター11との積層構造から構成されている。この実施の形態では、一例として、フィルターは、一層の導電性フィルター10を二層のエレクトレットフィルター11a、11bで挟んだ構造から構成されている。このように構成することにより、帯電した細塵と導電性フィルター10との間のクーロン力と、帯電した細塵とエレクトレットフィルター11a、11bとの間のクーロン力との二重のクーロン力により、帯電した細塵をさらに効果的に静電吸着することができる。したがって、この実施の形態では、電気集塵装置9の下流側に配置されたフィルターを導電性フィルター10とエレクトレットフィルター11a、11bとの積層構造で構成することによって、導電性フィルター10による効果とエレクトレットフィルター11a、11bによる効果との両方を得ることができるので、細塵の捕集効率をさらに向上させることができる。
【0056】
また、図8に示すように、この実施の形態では、二層のエレクトレットフィルター11a、11bで挟まれた導電性フィルター10が電気集塵装置9の捕獲電極9bに電気的に接続されている。具体的には、導電性フィルター10に形成された接続端子10aと、捕獲電極9bに形成された接続端子9dとが電気的に接続されるとともに、高圧電源9cに接続されている。このようにすることにより、導電性フィルター10が高圧電源9cに接続されているため、正電位に帯電された細塵の電位が電源側に戻ることになる。したがって、正電位に帯電された細塵が吸着することによって導電性フィルター10の電位が高くなっても、導電性フィルター10の電位上昇による細塵の吸着力の低下が解消されるので、より効果的に細塵を静電吸着することが可能となる。
【0057】
さらに、この実施の形態では、導電性フィルター10を電気集塵装置の捕獲電極9bに電気的に接続することにより、導電性フィルター10を捕獲電極として利用するができるので、実質的に捕獲電極の面積を増大させることができ、帯電した細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0058】
以上のように構成されているので、この実施の形態では、細塵の捕集効率をより効果的に向上させることができる。
【0059】
なお、フィルターは、複数の導電性フィルターと複数のエレクトレットフィルターとを積層して多層構造から構成してもよい。
【0060】
図9は、本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の本体内部の概略的な全体の構成を模式的に示す図である。
【0061】
図9に示すように、掃除機本体1は、略直方体の形状である筐体1aと、筐体1aの側面に取り付けられ、筐体1aを床面100上にて移動自在に支持する車輪1bとを備えている。筐体1a内には、サイクロン集塵装置5、電動送風機4、電気集塵装置9、フィルター6、コードリール、電動送風機4の通電を制御する制御回路等が収容されている。図1に示す接続ホース2bとサイクロン集塵装置5とが入口筒5dを介して連通され、サイクロン集塵室5と電動送風機4とが連結筒2cを介して連通され、電動送風機4と電気集塵装置9とが連結筒2dを介して連通されている。電気集塵装置9は、排気筒2eを介して外部に連通している。フィルター6は、HEPAフィルターであり、電動送風機4の上流側に配置されている。図中の矢印は、吸気の流れを示す。
【0062】
サイクロン集塵装置5では、サイクロン集塵室5aにて空気中に含まれる塵埃が遠心分離され、集塵容器としてのダストカップ5bに集積される。一方、塵埃が除去された空気は、その後、サイクロン集塵装置5の内筒フィルター5cを通じて濾過されて、細塵を含む空気になる。
【0063】
電動送風機4は、略直方体の形状の箱体内に、連結筒2cに接続され、吸気を発生されるファン4aと、ファン4aを回転駆動する回転部4bと、ブラシ4cを有する。
【0064】
電気集塵装置9は、略直方体の形状の箱体と、箱体内に収容された放電電極9aと、高圧電極9eと、2つの捕獲電極9bを含む。高圧電極9eと2つの捕獲電極9bとが捕集部9hを形成する。放電電極9aは、棒状のタングステン製の電極であり、高圧電極9eと捕獲電極9bは、略長方形の板状のSUS(ステンレス鋼)製の電極である。放電電極9a及び高圧電極9eは、箱体の長手方向に並べられ、放電電極9aが上流側に配置されている。2つの捕獲電極9bは、放電電極9aと高圧電極9eをはさむように、所定の間隔を開けて対向している。各電極は、高圧電源9cに電気的に接続されている。放電電極9aと、高圧電極9eには、高圧電源9cが商用交流電源からの交流電圧を基に生成した高電圧が印加される。また、捕獲電極9bは、接地電位に接続される。この実施の形態では、電気集塵装置9の一方の電極としての捕獲電極9bも、他方の電極としての放電電極9aも、高圧電極9eも、電動送風機4の下流側に配置されている。
【0065】
電気集塵装置9は、塵埃に作用するクーロン力を利用した捕集動作を行う。電気集塵装置9内の各電極に電気的に接続された高圧電源9cは、商用交流電源から得た交流電圧をトランス及び整流回路にて昇圧することにより、例えば5[kV]の負の直流電圧を発生させるようにしてあり、発生した5[kV]の電圧を放電電極9a及び高圧電極9eに印加する。この場合、捕獲電極9bは接地電位に接続され、放電電極9a及び高圧電極9eに5[kV]の電圧が印加されると、放電電極9aと捕獲電極9bとの間にコロナ放電が発生する。
【0066】
このとき、放電電極9a近傍の強電界による電離域で生成された電子が、吸気中の粒子を負イオン化し、これが塵埃と付着したり、電離域で塵埃を直接に負イオン化したりすることにより、塵埃と、高圧電極9e及び捕獲電極9bとの間にクーロン力が発生し、塵埃が高圧電極9eから捕獲電極9bへ引き寄せられて捕集される。電動送風機4から発生する塵埃は負イオン化しやすいので、放電部で吸気中の粒子を負イオン化することにより、電動送風機4から発生する粉塵に多く含まれるカーボン粒子をより効率よく捕集することができる。
【0067】
この実施の形態では、カーボンを主成分とするブラシ4cを用いているので、回転部4bに含まれる整流子とブラシ4cの接触によって発生した塵埃にはカーボン粒子が多く含まれる。ブラシ4cの材料は、整流子との相関関係によって選定されるため、ブラシ4cの材料が貴金属などのようにカーボンと異なる場合、ブラシと整流子との接触によって発生する塵埃の成分も異なる。放電電極9aは、電動送風機4で発生する塵埃の成分もしくはブラシ4cの材料などに応じて、電動送風機4で発生する塵埃を効率よく捕集できる極性に変更することもできる。
【0068】
たとえば、電動送風機4において発生する塵埃を正イオン化する場合、負イオン化する場合と比べて放電によって生成されるオゾンの生成率を低く抑えることができ、家電製品として実用化しやすいという利点がある。
【0069】
上記のように、放電電極9aによって塵埃を帯電することにより、塵埃の帯電量(特に微粒子の帯電量)を最大表面電荷密度まで大幅に増加することができる。発明者が検討した結果、放電電極9aによる帯電は、自然に帯電している量と比べて平均で約100倍の帯電量となる(微粒子の場合はさらに多い400倍)。帯電量が多ければ、捕獲電極9bと帯電した塵埃との間により強いクーロン力が働くために捕集効率が向上する。さらに、塵埃を強制的に一方の極性に帯電させるため、塵埃の成分による極性のばらつきをなくすことができる。このようにすることにより、様々な種類の塵埃を効率よく捕集することができる。
【0070】
帯電した塵埃の捕集にエレクトレットフィルターのみを用いる場合、塵埃とエレクトレット化されたフィルターの繊維との距離が離れるとクーロン力は極端に小さくなってしまう。そこで、電気集塵装置9において高圧電極9eに電圧を印加する。高圧電極9eと捕獲電極9bとの間、つまり捕集部9h内に一定の電界が発生するため、捕獲電極9bと帯電した塵埃との距離にかかわらず大きなクーロン力が発生し、フィルターの目を大幅に大きくした場合でも高い集塵効率を得ることが出来る。発明者が検討した結果、エレクトレットフィルターを用いた場合のクーロン力が約1.44×10‐15[N]であるのに対し、電気集塵装置の場合、約6.4×10‐14[N]であり、約44倍ものクーロン力を得ることができる。
【0071】
このように、電気集塵装置9において放電電極9aと捕獲電極9bを設ける構成により、少ない圧力損失で高い捕集効率を実現することができる。
【0072】
HEPAフィルター6は、サイクロン集塵装置5で捕集できない微細な塵埃を捕集する。しかし、HEPAフィルター6の目よりも径の小さい微細な塵埃は、HEPAフィルター6によって完全に捕集されずに電動送風機4を通過する。また、電動送風機4で発生した粉塵にもサブミクロン領域の粒子が含まれており、サブミクロン領域の粒子はHEPAフィルター6による捕集が難しい。一方、電気集塵装置9においては、コロナ放電により帯電した塵埃をクーロン力によって捕集する。そのため、塵埃の大きさが捕集効率に与える影響は少ない。したがって、本実施の形態の電気掃除機1は、サイクロン集塵装置5とHEPAフィルター6と電気集塵装置9を併用することによって、電動送風機4から発生する塵埃と、HEPAフィルター6の目よりも径の小さい微細な塵埃を効率よく捕集することができる。
【0073】
HEPAフィルターの捕集効率は99[%]であるが、仕事率は約40[W]低下する。HEPAフィルターと同程度の捕集効率を、エレクトレットフィルターを用いて得る場合には、約120[W]の仕事率低下が起こる。一方、電気集塵装置9を用いると、仕事率の低下は4[W]未満に抑えることができ、同様の捕集効率を得ることができる。
【0074】
本実施の形態では、電気集塵装置9は圧力損失が小さく、仕事率の低下が1[W]未満であり、電気集塵装置9に代えてHEPAフィルターを用いた場合の約40[W]低下や、エレクトレットフィルターを代わりに用いた場合の約15[W]低下と比べて、非常に小さい値となっている。
【0075】
このように、電気集塵装置9を用いることによって、高い吸い込み仕事率を維持しながら、電動送風機4で発生した塵埃を捕集することができる。
【0076】
また、電気集塵装置9はフィルター7の捕塵による目詰まりなどが発生せず、吸引力の低下が起こらないため、吸引力の低下が少ないというサイクロン式電気掃除機の特徴をより活かすことができる。
【0077】
さらに、電気集塵装置9においては、目詰まりが発生しないので、サイクロン集塵室5aの内部における風速の低下も起こらず、サイクロン集塵効率が低下しない。このため、サイクロン集塵効率の向上および吸引力向上のために、電動送風機4のモータの回転数を上げる必要がない。このようにすることにより、電動送風機4のモータの回転数を上げることによって塵埃が増加して、掃除機本体外に排出される塵埃も増加することを防ぐことができる。
【0078】
さらに、吸気通路の圧力損失も小さいため、電動送風機4への負荷も小さく、電動送風機4のモータへの負荷増加による発塵量増加も防ぐことができる。
【0079】
図10は、本発明のさらにまた別の実施の形態として、電気掃除機の本体内部に備える風速変更部の概略的な構成を模式的に示す図である。
【0080】
図10に示すように、電気集塵装置9の上流に、風速のピーク値を下げる風速変更部12を設ける。図中の矢印は塵埃を含む吸気を示す。
【0081】
風速変更部12としては、たとえば、圧力損失の低い空気調和機などでよく用いられるエアフィルタ(捕集効果がある)、100メッシュ程度の目の粗いメッシュ(薄型でコンパクト)、コルゲート(放熱効果が得られる)、ハニカム(静音効果が得られる)、ペーパー(コストパフォーマンスがよい)、複数の経路で構成されたもの(整流効果が高い)、通気性の高いシート、その他様々なものを用いることができる。紙、不織布や網目状のもの、またはそれらで構成されるフィルター、エレクトレット化されたフィルター、経路を分割するパイプなど、整流を目的として配置する他の整流手段であってもよい。但し、圧力損失の増加がいたずらに大きくならないように注意が必要である。
【0082】
吸気が風速変更部12を通過することにより、電気集塵装置9の内部における風速のピーク値が小さくなり、空気流および風速分布が均一となる。このようにすることにより、放電電極9aにおいて吸気に含まれる塵埃を効率よく帯電することができ、捕獲電極9bにおいて効率よく集塵することができる。また、流路の面積が大きくなるため、吸気流量に対する排気の風速が低下し、掃除機本体1の外部へ排気する場合の巻上げを少なくすることができる。さらに、電気集塵装置9の内部における単位面積当たりの風速が低下するため、吸気中の塵埃が電気集塵装置9内に存在する時間が長くなり、クーロン力を受けやすくなり、電気集塵装置9の内部における集塵効率を向上することができる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、HEPAフィルター6を設ける構成としたが、フィルターはHEPAフィルターに限るものではなく、紙や不織布等で構成されたフィルター、エレクトレットフィルターなどの高性能集塵フィルターでもよい。また、電気集塵装置9の各電極の形状及び配置等は、図9に示す形状及び配置等に限るものではなく、他の形状、他の配置等であってもよい。
【0084】
風速変更部12は、単位面積当たりの風速が大きい部分の電気集塵装置9において放電電極9aにワイヤーを用い、そのワイヤーによって風速のピーク値を下げる構成であってもよい。また、放電電極9aに棒状のものを用い、その棒状のものによって風速のピーク値を下げる構成にする方法でもよい。または、放電電極9aに板状のものを用い、その板状のものによって風速のピーク値を下げる構成にする方法でもよい。
【0085】
これらのように、放電電極9aの形状によって風速のピーク値を下げる構成にする場合は、風速のピーク値を下げる効果を得ると共に、電気集塵装置9としての性能も向上させることができるので、より高い集塵効率を得ることが出来る。
【0086】
また、風速のピーク値を下げる風速変更部12として集塵効果のあるものを用いると、風速のピーク値を下げながら集塵することが出来るため、より高い効果が得られる。
【0087】
また、風速変更部12に電圧を印加することにより、風速のピーク値を下げながらクーロン力による塵埃の捕集を行うことができ、より高い効果が得られる。
【0088】
図11は、本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の本体内部の概略的な全体の構成を模式的に示す図である。
【0089】
図11に示すように、電気集塵装置9の他方の電極としての放電電極9aと接地電極9fからなる放電部9gを電動送風機4の上流に配置し、電気集塵装置9の一方の電極としての捕獲電極9bと高圧電極9cからなる捕集部9hを電動送風機4の下流に配置する。その他の構成は図9に示す電気掃除機と同様である。電動送風機4から発塵するカーボン粒子は、導電率が高いため、帯電させることが比較的難しい。そこで、カーボン粒子を直接帯電させるのではなく、電動送風機4の上流に放電部9gを配置し、吸気に含まれる粒子を、電動送風機4に流入する前に帯電させる。このようにすることにより、カーボン粒子と帯電した粒子とをクーロン力によって凝集させることができる。このようにして、カーボン粒子など帯電しにくい塵埃等を効率よく捕集することができる。この実施の形態では、細塵を捕獲する、電気集塵装置の一方の電極としての捕獲電極9bを含む捕集部9hは電動送風機4の下流側に配置され、細塵をイオンシャワーによって帯電させる、他方の電極としての放電電極9aを含む放電部9gは電動送風機4の上流側に配置されている。
【0090】
図12は、本発明の別の実施の形態として、電気集塵装置9を電動送風機4の上流側に配置した電気掃除機の概略的な全体図である。
【0091】
図12に示すように、電動送風機4の上流に電気集塵装置9が配置され、その他の部分は図9に示す電気掃除機と同様である。
【実施例】
【0092】
従来の電気掃除機と、本発明の電気掃除機について、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を調べた実験結果について説明する。
【0093】
図12に示す電気掃除機1の構成では、HEPAフィルター6の下流に電気集塵装置9を配置しているので、HEPAフィルター6の目よりも径の小さい微細な塵埃が、HEPAフィルター6において捕集されなくても、電気集塵装置9で捕集することができる。しかしながら、電動送風機4の上流に電気集塵装置9を配置しているので、電動送風機4において発生する塵埃を捕集することはできない。
【0094】
図13は、従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機と、図12に示す本発明の電気掃除機と、図9に示す本発明の電気掃除機とについて、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を示す図である。この関係を調べる実験に用いた電気掃除機は、従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機(図13(A))と、図12に示す、電動送風機が電気集塵装置の下流側に配置された電気掃除機(図13(B))と、図9に示す、電動送風機の下流側に電気集塵機が配置された電気掃除機(図13(C))と、図9に示す電気掃除機の電気集塵装置の上流にさらに風速変更部を備えた電機掃除機(図13(D))であった。排気中に含まれる粒子の大きさと数は、JIS C 9802(家庭用掃除機の性能測定方法)に準拠して測定した。なお、図13の縦軸は、最大値を1として塵埃の個数を相対的に表した値である。
【0095】
従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機(A)と、図12に示す電気掃除機(B)について、排気中の粒子の大きさと数との関係を比較すると、図12に示す電気掃除機(B)は従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機(A)とは異なって、電動送風機の上流に電気集塵部を備えることにより、排気粒子数が若干減少した。しかしながら、排気に含まれる塵埃の多くは、電動送風機の上流側に電気集塵装置が配置された電気掃除機(B)では捕獲されていないことから、電動送風機において発生した塵埃であることが分かる。
【0096】
一方、図9に示す、電動送風機の下流側に電気集塵機が配置された電気掃除機(C)においては、電動送風機の回転部とブラシとの接触によって発生した微細な塵埃を電気集塵装置で捕集することができるので、特に塵埃の粒径が0.4μmよりも小さいとき、排気粒子数を大幅に減少させることができた。
【0097】
また、図9に示す電気掃除機の電気集塵装置の上流にさらに風速変更部を備えた電機掃除機(D)においては、風速変更部12によって電気集塵部内における空気流および風速分布が均一となる。風速変更部12を備えない電気掃除機(C)を用いたときの結果と比較すると、さらに集塵効率が向上し、排気粒子数を減らすことが可能となっている。このように、風速変更部12を設けることによって、よりきれいな排気を実現することができた。
【0098】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一つの実施の形態として電気掃除機の概略的な全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される構成を有する従来の電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【図3】図1に示される構成を有する本発明の一つの実施の形態としての電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【図4】電気集塵装置の帯電メカニズムを模式的に示す図である。
【図5】本発明のもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図6】本発明のさらにもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図7】本発明のさらに別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図8】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図9】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の別の形態を模式的に示す図である。
【図10】本発明のさらにまた別の実施の形態として、電気掃除機に備えられる風速変更部を模式的に示す図である。
【図11】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の別の形態を模式的に示す図である。
【図12】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の別の形態を模式的に示す図である。
【図13】従来の電気掃除機と、本発明の電気掃除機について、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を調べた実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1:掃除機本体、2a:延長管、2b:接続ホース、3:吸込口体、4:電動送風機、5:サイクロン集塵装置、9:電気集塵装置、9a:放電電極、9b:捕獲電極、10:導電性フィルター、11,11a,11b:エレクトレットフィルター、12:風速変更部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には電気掃除機に関し、特定的にはサイクロン集塵装置を備えた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機においては、塵埃をダストカップ容器の中で高速に旋回させ、遠心力により分離している。しかし、細塵はその質量の少なさから遠心力の作用を受け難く、内筒メッシュフィルターの目の間から抜け出る。このため、細塵を捕捉するためにサイクロン集塵装置の下流側にHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)等の別のフィルターが必要であった。
【0003】
なお、特開平4−341228号公報(特許文献1)には、サイクロン集塵装置を備えていないが、電動送風機の下流側に設けられ、微細な塵やほこりなどを電気的に捕集する電気集塵装置を備えた電気掃除機が記載されている。
【特許文献1】特開平4−341228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のHEPAフィルター等の別フィルターを用いて細塵を捕集するためには、フィルターの目を細かくしなければならない。しかし、フィルターの目を細かくすれば、吸気において圧力損失が生じるので、電気掃除機の本来の吸塵力(仕事率)が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、仕事率が低下することがなく、細塵の捕集性能を向上させることが可能な、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った電気掃除機は、吸気口を有する吸込口体と、吸気を発生させる電動送風機と、吸込口体と電動送風機との間を連通する吸気通路と、吸気通路に配置され、流入する吸気を旋回させて塵埃を分離するサイクロン集塵装置と、サイクロン集塵装置の下流側に配置された電気集塵装置とを備える。
【0007】
この発明の電気掃除機においては、サイクロン集塵装置の下流側に配置された電気集塵装置の放電電極により、サイクロン集塵装置から抜け出た細塵にイオンシャワーを浴びせることができる。これにより帯電した細塵を静電作用で電気集塵装置の捕獲電極に吸着させることによって、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵率を向上させることができる。また、電気集塵装置を設けることによって仕事率が低下することがない。なお、電気集塵装置は、少なくともサイクロン集塵装置の下流側に配置されればよく、電動送風機の下流側に配置されてもよく、サイクロン集塵装置と電動送風機との間に配置されてもよい。
【0008】
特にサイクロン集塵装置の中に進入した塵埃は、サイクロン集塵装置を構成する集塵容器の内壁面と塵埃との摩擦により、電位の高い静電気を帯びることになる。たとえば、塵埃が集塵容器の中で旋回したときに、その集塵容器の内壁面と塵埃との摩擦により塵埃に正の電位が付与されるように集塵容器の材質を選定すれば、サイクロン集塵装置から抜け出た細塵は、結果として正の電位を帯びることになる。
【0009】
このようにサイクロン集塵装置から抜け出た細塵は、電気集塵装置に進入する前に正の電位が付与されているので、電気集塵装置によるイオンシャワーを浴びることにより、さらに高い電位を得ることができる。このため、より高い電位を得て荷電された細塵は、電気集塵装置の捕獲電極との間の静電吸着力(クーロン力)もより強くなるので、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機に電気集塵装置を設けることによって、細塵の捕集率をより効果的に向上させることができる。
【0010】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターをさらに備えることが好ましい。
【0011】
この場合、フィルターは導電性繊維からなる導電性フィルターを含むことが好ましい。
【0012】
このように電気集塵装置の下流側に導電性フィルターを配置すると、電気集塵装置で荷電された細塵が捕獲電極に吸着されることなく、電気集塵装置を抜け出ても、フィルターの濾過効果と、細塵と導電性繊維との間のクーロン力とにより、細塵を濾過し、かつ吸着させることによって、電気集塵装置の小型化を図ることができるとともに、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵性能をさらに向上させることができる。
【0013】
さらに、この場合、電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、導電性フィルターは一方の電極に電気的に接続されていることが好ましい。
【0014】
このように導電性フィルターを電気集塵装置の一方の電極、すなわち、捕獲電極に電気的に接続することによって、導電性フィルターを捕獲電極として利用することができるので、実質的に電気集塵装置の捕獲電極の面積を増大させることができ、帯電した細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0015】
また、この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターは、エレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルターを含むことが好ましい。
【0016】
このように電気集塵装置の下流側にエレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルターを配置することによって、電気集塵装置で荷電された細塵と正負に荷電されたエレクトレット繊維との間のクーロン力により効果的に捕塵することができ、細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0017】
さらに、この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターは、導電性フィルターとエレクトレットフィルターとの積層構造を含むことが好ましい。
【0018】
このように電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターを導電性フィルターとエレクトレットフィルターとの積層構造で構成することによって、導電性フィルターによる効果とエレクトレットフィルターによる効果との両方を得ることができるので、細塵の捕集効率をさらに向上させることができる。
【0019】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、一方の電極は電動送風機の下流側に配置されていることが好ましい。
【0020】
電気掃除機の内部では、たとえば、電動送風機の整流子とブラシとの接触によって塵埃が発生する。また、電動送風機で発生された吸気は、電動送風機を冷却するために、電動送風機の内部を通過し、その後、電気掃除機の外部へ排気される。電動送風機の整流子とブラシとの接触によって発生した塵埃は、電動送風機の内部を通過する吸気とともに電気掃除機の外部へ排気される。電動送風機において発生するこの塵埃には、サブミクロン領域の大きさの粒子も含まれる。そこで、サブミクロン程度の粒子を捕集するためには、電動送風機の下流側に目の細かいフィルターを備えることや、複数の集塵装置やフィルターを設けることなどが考えられる。しかし、このような方法を用いるとフィルターの目詰まりや圧力損失による吸引力の低下が生じやすく、吸引力を保つためには電動送風機の回転数を上昇させなければならない。その結果、電動送風機の整流子とブラシとの接触によって発生して外部に排気される塵埃の量が増加することになる。
【0021】
そこで、電気集塵装置の一方の電極、すなわち捕獲電極を電動送風機の下流側に配置することにより、電動送風機において発生した塵埃を、フィルターを用いることなく、静電気力による集塵で除去することができる。
【0022】
このようにすることにより、電気掃除機の基本性能を低下させることなく、電動送風機において発生した塵埃を捕集することのできる電気掃除機を提供することができる。
【0023】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、他方の電極は電動送風機の上流側に配置されていることが好ましい。
【0024】
電気集塵装置の他方の電極、すなわち放電電極は、サイクロン集塵装置から抜け出た細塵にイオンシャワーを浴びせて細塵を帯電させる。電動送風機を放電電極よりも下流に置くことで、細塵は帯電された後に電動送風機の内部を通過し、電動送風機において発生する塵埃と静電気力で凝集する。
【0025】
このようにすることにより、電動送風機において発生するカーボン粒子など帯電させることが難しい塵埃を効率よく捕集することができる。
【0026】
この発明の電気掃除機においては、電気集塵装置の上流側に風速変更部を備えることが好ましい。
【0027】
電気集塵装置の内部において、吸気の風速が均一でない場合、電機集塵装置内に吸気の通過しない部分が生じ、塵埃の捕集効率が低下する。また、電気集塵装置を通過する吸気の風速が増大すると、塵埃の捕集効率が低下する。
【0028】
そこで、電気集塵装置の上流側に風速変更部を備えることによって、電気集塵装置を通過する吸気の風速のピーク値を下げる。このようにすることにより、電気集塵装置内の風速が均一になり、電気集塵装置での塵埃の集塵効率が向上する。また、電気掃除機の外部への排気の巻上げを減少させることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のようにこの発明によれば、仕事率が低下することがなく、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本発明の一つの実施の形態として電気掃除機の概略的な全体の構成を示す斜視図である。
【0032】
図1に示すように、本発明の電気掃除機は、掃除機本体1と、延長管2aと、接続ホース2bと、吸込口体3とを備える。延長管2aと接続ホース2bは、吸込口体3から吸引された空気を掃除機本体1に供給するための供給路を構成する。吸込口体3は、後述する電動送風機4の運転により、空気吸込口(図示しない)を介して空気を吸引する。
【0033】
掃除機本体1は、電動送風機4とサイクロン集塵装置5とを備える。電動送風機4は、吸込口体3、延長管2a、接続ホース2bおよびサイクロン集塵装置5を通じて空気を吸引するものである。サイクロン集塵装置5は、電動送風機4によって吸引された空気を旋回させ、この空気に含まれる塵埃を遠心分離するものであり、掃除機本体1に対して着脱可能に設けられている。
【0034】
図2は、図1に示される構成を有する従来の電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【0035】
図2に示すように、サイクロン集塵装置を備えた従来の電気掃除機では、掃除機本体1(図1)に収納された電動送風機4が駆動されると、吸込口体3の空気吸込口より空気が吸引され、延長管2a、接続ホース2bを通じて、塵埃8aがサイクロン集塵装置5に送られる。サイクロン集塵装置5では、サイクロン集塵室5aにて空気中に含まれる塵埃が遠心分離され、集塵容器としてのダストカップ5bに集積される。一方、塵埃が除去された空気は、その後、サイクロン集塵装置5の内筒フィルター5cを通じて濾過されて、細塵8bを含む空気になる。
【0036】
細塵8bは、電動送風機4の上流側に配置されたフィルター6にてさらに細かく濾過され、微細塵8cとなる。微細塵8cを含む空気は、電動送風機4を通過した後、最後の排気フィルター7を通過し、超微細塵8dを含む空気となる。超微細塵8dを含む空気は、掃除機本体1に設けられた排出口(図示せず)から機外に排出される。
【0037】
しかしながら、サイクロン集塵装置を備えた従来の電気掃除機では、細塵を除去するためにはフィルター6の目を細かくしなければならないので、仕事率が低下するという問題がある。
【0038】
図3は、図1に示される構成を有する本発明の一つの実施の形態としての電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【0039】
図3に示すように、従来の電気掃除機と同様に、サイクロン集塵装置を備えた本発明の電気掃除機では、掃除機本体1(図1)に収納された電動送風機4が駆動されると、吸込口体3の空気吸込口より空気が吸引され、延長管2a、接続ホース2bを通じて、塵埃8aがサイクロン集塵装置5に送られる。サイクロン集塵装置5では、サイクロン集塵室5aにて空気中に含まれる塵埃8aが遠心分離され、集塵容器としてのダストカップ5bに集積される。一方、塵埃8aが除去された空気は、その後、サイクロン集塵装置5の内筒フィルター5cを通じて濾過されて、細塵8bを含む空気になる。
【0040】
本発明の一つの実施の形態では、掃除機本体1に電気集塵装置9を設置する。具体的には、図3に示すように、電気集塵装置9を電動送風機4の下流側に配置する。この実施の形態では、電気集塵装置9は、サイクロン集塵装置5の下流側として、電動送風機4の下流側に配置しているが、サイクロン集塵装置5と電動送風機4との間に配置してもよい。
【0041】
電気集塵装置9は、対向する一方と他方の電極として放電電極9aと捕獲電極9bとを備え、放電電極9aと捕獲電極9bには高圧電源9cが接続されている。放電電極9aと捕獲電極9bとの間に高圧電源9cより高圧電位を印加することによって、サイクロン集塵装置5で遠心濾過された後の細塵8bを帯電させた後、捕獲電極9bに静電吸着させる。これにより、電気集塵装置9を通過した空気は、微細塵8cを含み、排気フィルター7を通じて、超微細塵8dを含む空気となり、掃除機本体1から機外に排出される。
【0042】
このようにして、従来例のように圧力損失の大きいフィルター6を使用せずに、掃除機本体から排出される細塵の捕集率を向上させることが可能となる。いいかえれば、本発明の電気掃除機はサイクロン集塵装置5の下流側に配置された電気集塵装置9の放電電極9aによって、サイクロン集塵装置5を通過した細塵8bにイオンシャワーを浴びせ、帯電させた細塵8bを電気集塵装置9の捕獲電極9bに静電吸着させることにより、サイクロン集塵装置5を備えた電気掃除機の捕塵率を向上させることができる。
【0043】
特にサイクロン集塵装置5の中に進入した塵埃8aは、サイクロン集塵装置5を構成する集塵容器としてのダストカップ5bの内壁面と塵埃8aとの摩擦により、電位の高い静電気を帯びることになる。たとえば、塵埃8aがサイクロン集塵室5aの中で旋回したときに、集塵容器としてのダストカップ5bの内壁面と塵埃8aとの摩擦により塵埃8aに正の電位が付与されるようにダストカップ5bの材質を選定すれば、サイクロン集塵装置5から抜け出た細塵8bは、結果として正の電位を帯びることになる。
【0044】
このようにサイクロン集塵装置5から抜け出た細塵8bは、電気集塵装置9に進入する前に正の電位が付与されているので、電気集塵装置9によるイオンシャワーを浴びることにより、さらに高い電位を得ることができる。このため、より高い電位を得て荷電された細塵8bは、電気集塵装置9の捕獲電極9bとの間の静電吸着力(クーロン力)もより強くなるので、サイクロン集塵装置5を備えた電気掃除機に電気集塵装置9を設けることによって、細塵8bの捕集率をより効果的に向上させることができる。
【0045】
図4は電気集塵装置の帯電メカニズムを模式的に示す図である。
【0046】
図4にて矢印で示すように、電気集塵装置9に流入した細塵は放電電極9aと捕獲電極9bとの間のイオンシャワーにより正電位に帯電され、捕獲電極9bに静電吸着される。しかしながら、電気掃除機のように吸気の流速が高速の場合、たとえば、10〜30m/sec程度の場合、帯電された細塵が捕獲電極9bに吸着されるためには、図4に示すように、捕獲電極9bの長さLを十分な長さに設定する必要がある。捕獲電極9bの長さLが十分でない場合、細塵は捕獲電極9bに吸着される前に捕獲電極9bを通過してしまうという問題がある。
【0047】
図5は、本発明のもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0048】
図5に示すように、上記の問題を解決するために、電気集塵装置9を構成する捕獲電極9bの長さSは、上述の捕獲電極9bの長さLより短く設定されている。すなわち、上述の捕獲電極9bの長さLは、電気掃除機の吸気の流速が高速であっても、帯電された細塵を静電作用で捕獲電極9bに吸着するために十分必要な長さに設定されていたが、この実施の形態の捕獲電極9bの長さSは、細塵をイオンシャワーで帯電させるためのみに必要な長さに設定されているので、長さLより短い長さである。このため、帯電された細塵を捕獲するために、電気集塵装置9の下流側にフィルターが配置されている。この実施の形態では、相対的に大きな面積の導電性繊維からなる導電性フィルター10が電気集塵装置9の下流側に配置されている。これにより、帯電された細塵は導電性を有する繊維との間のクーロン力により、静電吸着されて捕獲される。したがって、この実施の形態では、電気集塵装置9の下流側に導電性繊維からなる導電性フィルター10を配置することによって、電気集塵装置9で正電位に荷電された細塵は、電気集塵装置9の捕獲電極9bを通過しても、導電性フィルター10の濾過効果と、細塵と導電性繊維との間のクーロン力とにより、濾過され、かつ吸着されることになる。その結果、電気集塵装置の小型化を図ることができるとともに、サイクロン集塵装置を備えた電気掃除機の捕塵性能をさらに向上させることができる。
【0049】
図6は、本発明のさらにもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0050】
図6に示すように、上述の導電性フィルター10が電気集塵装置9の捕獲電極9bに電気的に接続されている。具体的には、導電性フィルター10に形成された接続端子10aと、捕獲電極9bに形成された接続端子9dとが電気的に接続されるとともに、高圧電源9cに接続されている。このようにすることにより、導電性フィルター10が高圧電源9cに接続されているため、正電位に帯電された細塵の電位が電源側に戻ることになる。したがって、正電位に帯電された細塵が吸着することによって導電性フィルター10の電位が高くなっても、導電性フィルター10の電位上昇による細塵の吸着力の低下が解消されるので、より効果的に細塵を静電吸着することが可能となる。
【0051】
また、この実施の形態では、導電性フィルター10を電気集塵装置の捕獲電極9bに電気的に接続することにより、導電性フィルター10を捕獲電極として利用するができるので、実質的に捕獲電極の面積を増大させることができ、帯電した細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0052】
図7は、本発明のさらに別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0053】
図7に示すように、帯電された細塵を捕獲するために電気集塵装置9の下流側に配置されるフィルターとして、上述の導電性フィルター10の代わりにエレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルター(静電フィルターともいう)11が採用されている。このように構成すると、エレクトレットフィルター11に保持された永久電荷との間のクーロン力により、帯電された細塵を効率よく、静電吸着により捕獲することができる。したがって、この実施の形態では、電気集塵装置9の下流側に、たとえば、通気抵抗の少ない不織布のエレクトレット繊維で構成されたエレクトレットフィルター11を配置することにより、電気集塵装置9で荷電された細塵を正負に荷電されたエレクトレット繊維との間のクーロン力で効果的に捕集することができ、細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0054】
図8は、本発明のさらにまた別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【0055】
図8に示すように、帯電された細塵を捕獲するために電気集塵装置9の下流側に配置されるフィルターが、上述の導電性フィルター10とエレクトレットフィルター11との積層構造から構成されている。この実施の形態では、一例として、フィルターは、一層の導電性フィルター10を二層のエレクトレットフィルター11a、11bで挟んだ構造から構成されている。このように構成することにより、帯電した細塵と導電性フィルター10との間のクーロン力と、帯電した細塵とエレクトレットフィルター11a、11bとの間のクーロン力との二重のクーロン力により、帯電した細塵をさらに効果的に静電吸着することができる。したがって、この実施の形態では、電気集塵装置9の下流側に配置されたフィルターを導電性フィルター10とエレクトレットフィルター11a、11bとの積層構造で構成することによって、導電性フィルター10による効果とエレクトレットフィルター11a、11bによる効果との両方を得ることができるので、細塵の捕集効率をさらに向上させることができる。
【0056】
また、図8に示すように、この実施の形態では、二層のエレクトレットフィルター11a、11bで挟まれた導電性フィルター10が電気集塵装置9の捕獲電極9bに電気的に接続されている。具体的には、導電性フィルター10に形成された接続端子10aと、捕獲電極9bに形成された接続端子9dとが電気的に接続されるとともに、高圧電源9cに接続されている。このようにすることにより、導電性フィルター10が高圧電源9cに接続されているため、正電位に帯電された細塵の電位が電源側に戻ることになる。したがって、正電位に帯電された細塵が吸着することによって導電性フィルター10の電位が高くなっても、導電性フィルター10の電位上昇による細塵の吸着力の低下が解消されるので、より効果的に細塵を静電吸着することが可能となる。
【0057】
さらに、この実施の形態では、導電性フィルター10を電気集塵装置の捕獲電極9bに電気的に接続することにより、導電性フィルター10を捕獲電極として利用するができるので、実質的に捕獲電極の面積を増大させることができ、帯電した細塵の捕集性能を向上させることができる。
【0058】
以上のように構成されているので、この実施の形態では、細塵の捕集効率をより効果的に向上させることができる。
【0059】
なお、フィルターは、複数の導電性フィルターと複数のエレクトレットフィルターとを積層して多層構造から構成してもよい。
【0060】
図9は、本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の本体内部の概略的な全体の構成を模式的に示す図である。
【0061】
図9に示すように、掃除機本体1は、略直方体の形状である筐体1aと、筐体1aの側面に取り付けられ、筐体1aを床面100上にて移動自在に支持する車輪1bとを備えている。筐体1a内には、サイクロン集塵装置5、電動送風機4、電気集塵装置9、フィルター6、コードリール、電動送風機4の通電を制御する制御回路等が収容されている。図1に示す接続ホース2bとサイクロン集塵装置5とが入口筒5dを介して連通され、サイクロン集塵室5と電動送風機4とが連結筒2cを介して連通され、電動送風機4と電気集塵装置9とが連結筒2dを介して連通されている。電気集塵装置9は、排気筒2eを介して外部に連通している。フィルター6は、HEPAフィルターであり、電動送風機4の上流側に配置されている。図中の矢印は、吸気の流れを示す。
【0062】
サイクロン集塵装置5では、サイクロン集塵室5aにて空気中に含まれる塵埃が遠心分離され、集塵容器としてのダストカップ5bに集積される。一方、塵埃が除去された空気は、その後、サイクロン集塵装置5の内筒フィルター5cを通じて濾過されて、細塵を含む空気になる。
【0063】
電動送風機4は、略直方体の形状の箱体内に、連結筒2cに接続され、吸気を発生されるファン4aと、ファン4aを回転駆動する回転部4bと、ブラシ4cを有する。
【0064】
電気集塵装置9は、略直方体の形状の箱体と、箱体内に収容された放電電極9aと、高圧電極9eと、2つの捕獲電極9bを含む。高圧電極9eと2つの捕獲電極9bとが捕集部9hを形成する。放電電極9aは、棒状のタングステン製の電極であり、高圧電極9eと捕獲電極9bは、略長方形の板状のSUS(ステンレス鋼)製の電極である。放電電極9a及び高圧電極9eは、箱体の長手方向に並べられ、放電電極9aが上流側に配置されている。2つの捕獲電極9bは、放電電極9aと高圧電極9eをはさむように、所定の間隔を開けて対向している。各電極は、高圧電源9cに電気的に接続されている。放電電極9aと、高圧電極9eには、高圧電源9cが商用交流電源からの交流電圧を基に生成した高電圧が印加される。また、捕獲電極9bは、接地電位に接続される。この実施の形態では、電気集塵装置9の一方の電極としての捕獲電極9bも、他方の電極としての放電電極9aも、高圧電極9eも、電動送風機4の下流側に配置されている。
【0065】
電気集塵装置9は、塵埃に作用するクーロン力を利用した捕集動作を行う。電気集塵装置9内の各電極に電気的に接続された高圧電源9cは、商用交流電源から得た交流電圧をトランス及び整流回路にて昇圧することにより、例えば5[kV]の負の直流電圧を発生させるようにしてあり、発生した5[kV]の電圧を放電電極9a及び高圧電極9eに印加する。この場合、捕獲電極9bは接地電位に接続され、放電電極9a及び高圧電極9eに5[kV]の電圧が印加されると、放電電極9aと捕獲電極9bとの間にコロナ放電が発生する。
【0066】
このとき、放電電極9a近傍の強電界による電離域で生成された電子が、吸気中の粒子を負イオン化し、これが塵埃と付着したり、電離域で塵埃を直接に負イオン化したりすることにより、塵埃と、高圧電極9e及び捕獲電極9bとの間にクーロン力が発生し、塵埃が高圧電極9eから捕獲電極9bへ引き寄せられて捕集される。電動送風機4から発生する塵埃は負イオン化しやすいので、放電部で吸気中の粒子を負イオン化することにより、電動送風機4から発生する粉塵に多く含まれるカーボン粒子をより効率よく捕集することができる。
【0067】
この実施の形態では、カーボンを主成分とするブラシ4cを用いているので、回転部4bに含まれる整流子とブラシ4cの接触によって発生した塵埃にはカーボン粒子が多く含まれる。ブラシ4cの材料は、整流子との相関関係によって選定されるため、ブラシ4cの材料が貴金属などのようにカーボンと異なる場合、ブラシと整流子との接触によって発生する塵埃の成分も異なる。放電電極9aは、電動送風機4で発生する塵埃の成分もしくはブラシ4cの材料などに応じて、電動送風機4で発生する塵埃を効率よく捕集できる極性に変更することもできる。
【0068】
たとえば、電動送風機4において発生する塵埃を正イオン化する場合、負イオン化する場合と比べて放電によって生成されるオゾンの生成率を低く抑えることができ、家電製品として実用化しやすいという利点がある。
【0069】
上記のように、放電電極9aによって塵埃を帯電することにより、塵埃の帯電量(特に微粒子の帯電量)を最大表面電荷密度まで大幅に増加することができる。発明者が検討した結果、放電電極9aによる帯電は、自然に帯電している量と比べて平均で約100倍の帯電量となる(微粒子の場合はさらに多い400倍)。帯電量が多ければ、捕獲電極9bと帯電した塵埃との間により強いクーロン力が働くために捕集効率が向上する。さらに、塵埃を強制的に一方の極性に帯電させるため、塵埃の成分による極性のばらつきをなくすことができる。このようにすることにより、様々な種類の塵埃を効率よく捕集することができる。
【0070】
帯電した塵埃の捕集にエレクトレットフィルターのみを用いる場合、塵埃とエレクトレット化されたフィルターの繊維との距離が離れるとクーロン力は極端に小さくなってしまう。そこで、電気集塵装置9において高圧電極9eに電圧を印加する。高圧電極9eと捕獲電極9bとの間、つまり捕集部9h内に一定の電界が発生するため、捕獲電極9bと帯電した塵埃との距離にかかわらず大きなクーロン力が発生し、フィルターの目を大幅に大きくした場合でも高い集塵効率を得ることが出来る。発明者が検討した結果、エレクトレットフィルターを用いた場合のクーロン力が約1.44×10‐15[N]であるのに対し、電気集塵装置の場合、約6.4×10‐14[N]であり、約44倍ものクーロン力を得ることができる。
【0071】
このように、電気集塵装置9において放電電極9aと捕獲電極9bを設ける構成により、少ない圧力損失で高い捕集効率を実現することができる。
【0072】
HEPAフィルター6は、サイクロン集塵装置5で捕集できない微細な塵埃を捕集する。しかし、HEPAフィルター6の目よりも径の小さい微細な塵埃は、HEPAフィルター6によって完全に捕集されずに電動送風機4を通過する。また、電動送風機4で発生した粉塵にもサブミクロン領域の粒子が含まれており、サブミクロン領域の粒子はHEPAフィルター6による捕集が難しい。一方、電気集塵装置9においては、コロナ放電により帯電した塵埃をクーロン力によって捕集する。そのため、塵埃の大きさが捕集効率に与える影響は少ない。したがって、本実施の形態の電気掃除機1は、サイクロン集塵装置5とHEPAフィルター6と電気集塵装置9を併用することによって、電動送風機4から発生する塵埃と、HEPAフィルター6の目よりも径の小さい微細な塵埃を効率よく捕集することができる。
【0073】
HEPAフィルターの捕集効率は99[%]であるが、仕事率は約40[W]低下する。HEPAフィルターと同程度の捕集効率を、エレクトレットフィルターを用いて得る場合には、約120[W]の仕事率低下が起こる。一方、電気集塵装置9を用いると、仕事率の低下は4[W]未満に抑えることができ、同様の捕集効率を得ることができる。
【0074】
本実施の形態では、電気集塵装置9は圧力損失が小さく、仕事率の低下が1[W]未満であり、電気集塵装置9に代えてHEPAフィルターを用いた場合の約40[W]低下や、エレクトレットフィルターを代わりに用いた場合の約15[W]低下と比べて、非常に小さい値となっている。
【0075】
このように、電気集塵装置9を用いることによって、高い吸い込み仕事率を維持しながら、電動送風機4で発生した塵埃を捕集することができる。
【0076】
また、電気集塵装置9はフィルター7の捕塵による目詰まりなどが発生せず、吸引力の低下が起こらないため、吸引力の低下が少ないというサイクロン式電気掃除機の特徴をより活かすことができる。
【0077】
さらに、電気集塵装置9においては、目詰まりが発生しないので、サイクロン集塵室5aの内部における風速の低下も起こらず、サイクロン集塵効率が低下しない。このため、サイクロン集塵効率の向上および吸引力向上のために、電動送風機4のモータの回転数を上げる必要がない。このようにすることにより、電動送風機4のモータの回転数を上げることによって塵埃が増加して、掃除機本体外に排出される塵埃も増加することを防ぐことができる。
【0078】
さらに、吸気通路の圧力損失も小さいため、電動送風機4への負荷も小さく、電動送風機4のモータへの負荷増加による発塵量増加も防ぐことができる。
【0079】
図10は、本発明のさらにまた別の実施の形態として、電気掃除機の本体内部に備える風速変更部の概略的な構成を模式的に示す図である。
【0080】
図10に示すように、電気集塵装置9の上流に、風速のピーク値を下げる風速変更部12を設ける。図中の矢印は塵埃を含む吸気を示す。
【0081】
風速変更部12としては、たとえば、圧力損失の低い空気調和機などでよく用いられるエアフィルタ(捕集効果がある)、100メッシュ程度の目の粗いメッシュ(薄型でコンパクト)、コルゲート(放熱効果が得られる)、ハニカム(静音効果が得られる)、ペーパー(コストパフォーマンスがよい)、複数の経路で構成されたもの(整流効果が高い)、通気性の高いシート、その他様々なものを用いることができる。紙、不織布や網目状のもの、またはそれらで構成されるフィルター、エレクトレット化されたフィルター、経路を分割するパイプなど、整流を目的として配置する他の整流手段であってもよい。但し、圧力損失の増加がいたずらに大きくならないように注意が必要である。
【0082】
吸気が風速変更部12を通過することにより、電気集塵装置9の内部における風速のピーク値が小さくなり、空気流および風速分布が均一となる。このようにすることにより、放電電極9aにおいて吸気に含まれる塵埃を効率よく帯電することができ、捕獲電極9bにおいて効率よく集塵することができる。また、流路の面積が大きくなるため、吸気流量に対する排気の風速が低下し、掃除機本体1の外部へ排気する場合の巻上げを少なくすることができる。さらに、電気集塵装置9の内部における単位面積当たりの風速が低下するため、吸気中の塵埃が電気集塵装置9内に存在する時間が長くなり、クーロン力を受けやすくなり、電気集塵装置9の内部における集塵効率を向上することができる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、HEPAフィルター6を設ける構成としたが、フィルターはHEPAフィルターに限るものではなく、紙や不織布等で構成されたフィルター、エレクトレットフィルターなどの高性能集塵フィルターでもよい。また、電気集塵装置9の各電極の形状及び配置等は、図9に示す形状及び配置等に限るものではなく、他の形状、他の配置等であってもよい。
【0084】
風速変更部12は、単位面積当たりの風速が大きい部分の電気集塵装置9において放電電極9aにワイヤーを用い、そのワイヤーによって風速のピーク値を下げる構成であってもよい。また、放電電極9aに棒状のものを用い、その棒状のものによって風速のピーク値を下げる構成にする方法でもよい。または、放電電極9aに板状のものを用い、その板状のものによって風速のピーク値を下げる構成にする方法でもよい。
【0085】
これらのように、放電電極9aの形状によって風速のピーク値を下げる構成にする場合は、風速のピーク値を下げる効果を得ると共に、電気集塵装置9としての性能も向上させることができるので、より高い集塵効率を得ることが出来る。
【0086】
また、風速のピーク値を下げる風速変更部12として集塵効果のあるものを用いると、風速のピーク値を下げながら集塵することが出来るため、より高い効果が得られる。
【0087】
また、風速変更部12に電圧を印加することにより、風速のピーク値を下げながらクーロン力による塵埃の捕集を行うことができ、より高い効果が得られる。
【0088】
図11は、本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の本体内部の概略的な全体の構成を模式的に示す図である。
【0089】
図11に示すように、電気集塵装置9の他方の電極としての放電電極9aと接地電極9fからなる放電部9gを電動送風機4の上流に配置し、電気集塵装置9の一方の電極としての捕獲電極9bと高圧電極9cからなる捕集部9hを電動送風機4の下流に配置する。その他の構成は図9に示す電気掃除機と同様である。電動送風機4から発塵するカーボン粒子は、導電率が高いため、帯電させることが比較的難しい。そこで、カーボン粒子を直接帯電させるのではなく、電動送風機4の上流に放電部9gを配置し、吸気に含まれる粒子を、電動送風機4に流入する前に帯電させる。このようにすることにより、カーボン粒子と帯電した粒子とをクーロン力によって凝集させることができる。このようにして、カーボン粒子など帯電しにくい塵埃等を効率よく捕集することができる。この実施の形態では、細塵を捕獲する、電気集塵装置の一方の電極としての捕獲電極9bを含む捕集部9hは電動送風機4の下流側に配置され、細塵をイオンシャワーによって帯電させる、他方の電極としての放電電極9aを含む放電部9gは電動送風機4の上流側に配置されている。
【0090】
図12は、本発明の別の実施の形態として、電気集塵装置9を電動送風機4の上流側に配置した電気掃除機の概略的な全体図である。
【0091】
図12に示すように、電動送風機4の上流に電気集塵装置9が配置され、その他の部分は図9に示す電気掃除機と同様である。
【実施例】
【0092】
従来の電気掃除機と、本発明の電気掃除機について、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を調べた実験結果について説明する。
【0093】
図12に示す電気掃除機1の構成では、HEPAフィルター6の下流に電気集塵装置9を配置しているので、HEPAフィルター6の目よりも径の小さい微細な塵埃が、HEPAフィルター6において捕集されなくても、電気集塵装置9で捕集することができる。しかしながら、電動送風機4の上流に電気集塵装置9を配置しているので、電動送風機4において発生する塵埃を捕集することはできない。
【0094】
図13は、従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機と、図12に示す本発明の電気掃除機と、図9に示す本発明の電気掃除機とについて、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を示す図である。この関係を調べる実験に用いた電気掃除機は、従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機(図13(A))と、図12に示す、電動送風機が電気集塵装置の下流側に配置された電気掃除機(図13(B))と、図9に示す、電動送風機の下流側に電気集塵機が配置された電気掃除機(図13(C))と、図9に示す電気掃除機の電気集塵装置の上流にさらに風速変更部を備えた電機掃除機(図13(D))であった。排気中に含まれる粒子の大きさと数は、JIS C 9802(家庭用掃除機の性能測定方法)に準拠して測定した。なお、図13の縦軸は、最大値を1として塵埃の個数を相対的に表した値である。
【0095】
従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機(A)と、図12に示す電気掃除機(B)について、排気中の粒子の大きさと数との関係を比較すると、図12に示す電気掃除機(B)は従来のサイクロン集塵室を備えた電気掃除機(A)とは異なって、電動送風機の上流に電気集塵部を備えることにより、排気粒子数が若干減少した。しかしながら、排気に含まれる塵埃の多くは、電動送風機の上流側に電気集塵装置が配置された電気掃除機(B)では捕獲されていないことから、電動送風機において発生した塵埃であることが分かる。
【0096】
一方、図9に示す、電動送風機の下流側に電気集塵機が配置された電気掃除機(C)においては、電動送風機の回転部とブラシとの接触によって発生した微細な塵埃を電気集塵装置で捕集することができるので、特に塵埃の粒径が0.4μmよりも小さいとき、排気粒子数を大幅に減少させることができた。
【0097】
また、図9に示す電気掃除機の電気集塵装置の上流にさらに風速変更部を備えた電機掃除機(D)においては、風速変更部12によって電気集塵部内における空気流および風速分布が均一となる。風速変更部12を備えない電気掃除機(C)を用いたときの結果と比較すると、さらに集塵効率が向上し、排気粒子数を減らすことが可能となっている。このように、風速変更部12を設けることによって、よりきれいな排気を実現することができた。
【0098】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一つの実施の形態として電気掃除機の概略的な全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される構成を有する従来の電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【図3】図1に示される構成を有する本発明の一つの実施の形態としての電気掃除機の主要な塵埃の濾過状態を模式的に示す図である。
【図4】電気集塵装置の帯電メカニズムを模式的に示す図である。
【図5】本発明のもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図6】本発明のさらにもう一つの実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図7】本発明のさらに別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図8】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気集塵装置の別の形態を模式的に示す図である。
【図9】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の別の形態を模式的に示す図である。
【図10】本発明のさらにまた別の実施の形態として、電気掃除機に備えられる風速変更部を模式的に示す図である。
【図11】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の別の形態を模式的に示す図である。
【図12】本発明のさらにまた別の実施の形態として電気掃除機の別の形態を模式的に示す図である。
【図13】従来の電気掃除機と、本発明の電気掃除機について、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を調べた実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1:掃除機本体、2a:延長管、2b:接続ホース、3:吸込口体、4:電動送風機、5:サイクロン集塵装置、9:電気集塵装置、9a:放電電極、9b:捕獲電極、10:導電性フィルター、11,11a,11b:エレクトレットフィルター、12:風速変更部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口を有する吸込口体と、
吸気を発生させる電動送風機と、
前記吸込口体と前記電動送風機との間を連通する吸気通路と、
前記吸気通路に配置され、流入する吸気を旋回させて塵埃を分離するサイクロン集塵装置と、
前記サイクロン集塵装置の下流側に配置された電気集塵装置とを備えた、電気掃除機。
【請求項2】
前記電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターをさらに備える、請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記フィルターは導電性繊維からなる導電性フィルターを含む、請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、前記導電性フィルターは前記一方の電極に電気的に接続されている、請求項3に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記フィルターはエレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルターを含む、請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記フィルターは、導電性フィルターとエレクトレットフィルターとの積層構造を含む、請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、前記一方の電極は前記電動送風機の下流側に配置されている、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項8】
前記電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、前記他方の電極は前記電動送風機の上流側に配置されている、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項9】
前記電気集塵装置の上流側に風速変更部を備える、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項1】
吸気口を有する吸込口体と、
吸気を発生させる電動送風機と、
前記吸込口体と前記電動送風機との間を連通する吸気通路と、
前記吸気通路に配置され、流入する吸気を旋回させて塵埃を分離するサイクロン集塵装置と、
前記サイクロン集塵装置の下流側に配置された電気集塵装置とを備えた、電気掃除機。
【請求項2】
前記電気集塵装置の下流側に配置されたフィルターをさらに備える、請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記フィルターは導電性繊維からなる導電性フィルターを含む、請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、前記導電性フィルターは前記一方の電極に電気的に接続されている、請求項3に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記フィルターはエレクトレット繊維からなるエレクトレットフィルターを含む、請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記フィルターは、導電性フィルターとエレクトレットフィルターとの積層構造を含む、請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、前記一方の電極は前記電動送風機の下流側に配置されている、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項8】
前記電気集塵装置は対向する一方と他方の電極を含み、前記他方の電極は前記電動送風機の上流側に配置されている、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項9】
前記電気集塵装置の上流側に風速変更部を備える、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−296305(P2007−296305A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188771(P2006−188771)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]