説明

電気接続箱

【課題】放熱性を高めることが可能な電気接続箱を提供する。
【解決手段】本発明の電気接続箱10は、回路構成体11と、前記回路構成体11を収容するケース30とを有し、前記回路構成体11に接続した電線22を前記ケース30の内周面に接触させた状態で、前記ケース30の内周面から内側へ突出する形状の挟持片41により固定した。このような構成によれば、回路構成体11の熱が電線22からケース30に伝達し、ケース30から外部に放散される。したがって、放熱性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路構成体をケース内に収容してなる電気接続箱が知られている(例えば特許文献1参照)。回路構成体は、リレーやスイッチング素子等の電子部品、回路基板、またバスバー等により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−4521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気接続箱は、一般にエンジンルーム内に格納されるものであり、このエンジンルーム内のスペースには限りがあるため小型化が要望されている。そこで、電子部品の配置密度を高めると、回路構成体の発熱密度が高くなってケース内に熱が蓄積されやすくなる。ケース内に熱が蓄積されると、回路構成体の電子部品に悪影響を与えるおそれがあるから放熱性を高めたいという要望がある。しかし、降雨や洗浄等による水滴がケース内に侵入することを防ぐべくケースの密閉性を高めることが、ケース内に熱が蓄積しやすくなる要因となる等、放熱性を高めることを難しくする様々な事情があり対策が望まれていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放熱性を高めることが可能な電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気接続箱は、回路構成体と、前記回路構成体を収容するケースとを有し、前記回路構成体に接続した電線を前記ケースの内周面に接触させた状態で、前記ケースの内周面から内側へ突出する形状の挟持片により固定した。このような構成によれば、回路構成体の熱が電線からケースに伝達し、ケースから外部に放散される。したがって、放熱性を高めることができる。
【0007】
また、前記回路構成体には複数本の電線が接続されており、前記電線を前記ケースに1本ずつ固定したものとしてもよい。ここで、電線を束ねてケースに固定する場合には、ケースに接触しない電線の熱はケース内に放散されることになる。しかし、電線を1本ずつケースに固定することで、各電線の熱を確実にケースに伝達させることができる。
【0008】
また、前記ケースのうち前記電線が固定される固定部の前記電線との接触面に凹凸形状を形成したものとしてもよい。このような構成によれば、固定部の凹凸形状が電線に食い込むから、その分接触面積が増えて電線の熱が固定部へ伝達しやすくなり、また電線を保持する力が向上する。
【0009】
また、前記電線を、前記ケースのうち他の部分よりも相対的に表面温度が低い部分に固定したものとしてもよい。このような構成によれば、電線をケースの他の部分に固定する場合に比べて、回路構成体とケースとの温度差が大きくなるから、回路構成体の熱を効率よくケースに伝達することができる。
【0010】
また、前記ケースは、前記電線を外部に導出する電線導出口を有するとともに、前記電線導出口よりも下方に突出する形状の下底部を有しており、前記電線を、前記下底部に固定したものとしてもよい。
【0011】
また、前記ケースのうち前記電線が固定される固定部と前記電線との間に伝熱材を塗布したものとしてもよい。このような構成によれば、電線と固定部との間の隙間が埋められるから、電線の熱が固定部へ伝達しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放熱性を高めることが可能な電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る電気接続箱においてインナーケースの配置位置を表す概略断面図
【図2】同側断面図
【図3】図2のA−A位置における固定部の拡大断面図
【図4】実施形態2に係る固定部の拡大断面図
【図5】実施形態3に係る固定部の拡大断面図
【図6】実施形態4に係る固定部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について、図1〜図3を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態における電気接続箱10は、車両のタイヤハウジング(図示せず)上に取り付けられるものであって、回路構成体11をインナーケース12内に収容するとともに、そのインナーケース12をアウターケース30(本発明のケースに該当する)内に収容してなるものである。
以下、各構成部材において、図1の上側を上面、下側を下面とする。また、車両に取り付けられたときに進行方向前方を向く側(図1の左側)を前方、後方を向く側(図1の右側)を後方として説明する。
【0015】
回路構成体11は、図2に示すように、回路基板13と、この回路基板13の一方の面に実装されたリレー等の電子部品14と、回路基板13の他方の面に貼り付けられたバスバー(図示せず)とで構成されている。バスバーは、導電性に優れた金属板を打ち抜いて形成され、電力回路となる所定の導電路を形成している。
【0016】
インナーケース12は合成樹脂製であり、下向きに開口するコネクタ嵌合部15を有している。インナーケース12は、コネクタ嵌合部15が下側に開口する姿勢で、アウターケース30の前側部分に装着されている。
インナーケース12には、複数本の内部端子16が保持されている。内部端子16は略L字状をなし、その一端はコネクタ嵌合部15内に突出して複数本並んで配置され、他端は回路基板13に開口されたスルーホール17に挿入されて半田付けされている。
【0017】
コネクタ嵌合部15には、外部コネクタ20が嵌合可能とされ、コネクタ嵌合部15内に突出した各内部端子16の一端には、外部コネクタ20に保持された外部端子21が接続可能とされている。外部端子21は、外部回路(例えば電源回路や負荷側回路)に電気的に接続された電線22の端末部に固着されており、内部端子16と外部端子21とが接続することで、外部回路と回路構成体11とが電気的に接続する。なお、電線22は、導体22Aを絶縁被覆22Bで覆ってなるものである。
【0018】
アウターケース30は合成樹脂製であり、インナーケース12の下方を覆うロアケース31と、インナーケース12の周囲を覆うミドルケース32と、インナーケース12の上方を覆うアッパーケース33とからなる。アウターケース30には、電気接続箱10を車両に取り付けるための車両取付部39が複数設けられている。
【0019】
ロアケース31は、底壁31Aとその周縁から上方に向かって立つ側壁31Bとを備えて上面側が開口した容器状に形成され、平面的には前後方向に長い略長方形状をなしている。ロアケース31の底壁31Aは、タイヤハウジングの円弧形状に沿った形状に形成され、具体的には、前方に向かって下がる曲面とされている。
【0020】
ロアケース31の底壁31Aには、電線22を外部に導出する電線導出口34が設けられている。電線導出口34は、ロアケース31の底壁31Aの後端寄りの位置(インナーケース12の取り付け位置よりも後側の位置)に設けられている。外部コネクタ20に接続している電線22は、この電線導出口34から外部へ導出される。
【0021】
ロアケース31は、電線導出口34よりも下方に突出する形状をなす下底部35を有している。下底部35は、ロアケース31のうち電線導出口34よりも前側の部分であり、電気接続箱10を設置したときに最も低い位置に配置される。下底部35は、アウターケース30のうち他の部分よりも相対的に表面温度が低い部分となっている。
【0022】
ロアケース31の上縁部には、ミドルケース32の下縁部の図示しないロック突起に係止するロック片36が、複数箇所に設けられている。また、ロアケース31の上縁部には、その開口の略全周にわたって突条37が形成され、ミドルケース32の下縁部には突条37の外側に被さる被覆壁38が設けられている。
【0023】
ミドルケース32には、インナーケース12、各種電気部品、また電子ユニット等を収容する複数の収容室(図示せず)が設けられ、インナーケース12は収容室に収容されて固定されている。
アッパーケース33は、ミドルケース32の上側の開口の全体を覆う形状をなしている。アッパーケース33とミドルケース32との間は、図示しないパッキンによりシールされている。
【0024】
さて、回路構成体11に電気的に接続した電線22は、アウターケース30の内周面に接触した状態で固定されている。アウターケース30のうち電線22が固定される固定部40には、内側へ突出する形状の挟持片41が一対、アウターケース30に一体に設けられている。一対の挟持片41は、アウターケース30の内周面から片持ち状をなして延出し、互いに対向方向に弾性変位可能とされている。各挟持片41は、その全長にわたり略一定の厚さ寸法とされている。
【0025】
固定部40には、電線22を挟持する挟持部40Aと、挟持部40Aに電線22を案内する案内部40Bとが形成されている。
挟持部40Aは、1本の電線22の外周に沿うとともに一部分が開口した略環状をなし、挟持部40Aと電線22との間には、図示しない高熱伝導グリース等の伝熱材が塗布されている。挟持部40Aの開口寸法は、挟持片41が自然状態のときに、電線22の外径寸法よりも小さくなるように設定され、本実施形態では、電線22の外径寸法の半分以下の寸法とされている。挟持片41のうち挟持部40Aを構成する部分は、根元部分から先端に向かって電線22の周面に沿う弧状をなしている。
【0026】
案内部40Bは、挟持部40Aの開口端から挟持部40Aの外側に突出して設けられている。案内部40Bは、その突出端に向かって少しずつ開口寸法が大きくなる形態をなしている。挟持片41のうち案内部40Bを構成する部分は、挟持部40Aを構成する部分から先端に向かって、対向する挟持片41から離れる向きに斜めに延出している。
【0027】
固定部40は、ロアケース31の下底部35(側壁31Bのうち下底部35を構成する部分、および底壁31Aのうち下底部35を構成する部分)に設けられている。固定部40は、回路構成体11に接続された電線22の取り回し経路上の複数箇所に設けられている。
【0028】
側壁31Bに設けられた固定部40のうちいくつかの固定部40は、ロアケース31の側壁31Bのうち上縁寄りの位置(インナーケース12の下縁に沿う位置)に設けられている。この固定部40は、回路構成体11に接続された電線22と同数あるいはそれよりも多い数が、ほぼ同じ高さ位置において電線22の並び方向と同方向に並んで配置されている。ロアケース31の側壁31Bに設けられた固定部40は、一対の挟持片41が水平方向に対向する向き、すなわち挟持部40Aの中心線が上下方向に延びる向きとなっている。また、ロアケース31の底壁31Aに設けられた固定部40は、挟持部40Aの中心線が底壁31Aの傾斜に沿って延びる向きとなっている。
【0029】
そして、回路構成体11に接続された全ての電線22は、固定部40に1本ずつ固定されている。電線22を固定する際には、各電線22を各固定部40の案内部40Bに押し込む。すると、一対の挟持片41が離間方向に弾性変位し、電線22は、案内部40Bにより挟持部40A側へ案内される。やがて、電線22は挟持部40A内に収まり、一対の挟持片41が接近方向に弾性復帰して電線22の周面に沿った状態になる。こうして、各電線22は、挟持部40Aの内周面(アウターケース30および挟持片41の内周面)に接触した状態で固定される。そして、回路構成体11に接続された全ての電線22は、電線導出口34に至るまでの途中部分が、複数箇所においてアウターケース30の下底部35に接触した状態に保持される。
【0030】
次に、上記のように構成された実施形態1の作用および効果について説明する。
本実施形態の電気接続箱10は、回路構成体11に接続した電線22をアウターケース30の内周面に接触させた状態で、アウターケース30の内周面から内側へ突出する形状の挟持片41により固定している。
【0031】
この電気接続箱10において、通電時に電子部品14から発生する熱は、回路基板13の導電路、内部端子16および外部端子21を介して電線22に伝わり、電線22のアウターケース30との接触部分からアウターケース30に伝わって、アウターケース30から外部に放散する。ここで、電線22がアウターケースに接触していない場合には、電線22を伝わる熱は、アウターケース内において空気中に放散し、アウターケース内に蓄積されやすくなる。しかしながら、本実施形態では、電線22がアウターケース30の内周面に接触した状態になっているから、電線22の熱は、アウターケース30内に放散するより先にアウターケース30に伝わってそこから外部に放散する。したがって、アウターケース30内に熱が蓄積されにくくなり、放熱性を高めることができる。
【0032】
また、電線22をアウターケース30に1本ずつ固定している。ここで、例えば回路構成体11に接続された複数本の電線22を束ねてアウターケースに固定する場合には、いく本かの電線22はアウターケースに接触しない状態になり、その電線22の熱はアウターケース内に放散されることになる。しかし、本実施形態では、電線22を1本ずつアウターケース30に固定しているから、各電線22の熱を確実にアウターケース30に伝達させることができ、もって確実にアウターケース30の外部に放散することができる。
【0033】
また、アウターケース30は電線22を外部に導出する電線導出口34を有するとともに、電線導出口34よりも下方に突出する形状の下底部35を有しており、電線22は、下底部35に固定されている。この下底部35は、アウターケース30のうち他の部分よりも相対的に表面温度が低い部分であり、このような部分に電線22を固定することにより、電線22をアウターケース30の他の部分に固定する場合に比べて、回路構成体11とアウターケース30との温度差が大きくなるから、回路構成体11の熱を効率よくアウターケース30に伝達することができる。
【0034】
また、固定部40と電線22との間には伝熱材が塗布されている。これにより、電線22と固定部40との間の隙間が埋められるから、電線22の熱が固定部40へ伝達しやすくなり、もってアウターケース30への伝熱性をより高めることができる。
【0035】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2に係る電気接続箱10を図4によって説明する。
本実施形態の電気接続箱10は、固定部40のうち電線22の接触面に凹凸形状を形成した点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係る電気接続箱10は、実施形態1と同様に、回路構成体11をインナーケース12内に収容するとともに、そのインナーケース12をアウターケース30内に収容してなるものであり、回路構成体11に接続した電線22は、アウターケース30の内周面に接触した状態で、固定部40に固定されている。
【0037】
固定部40には、実施形態1と同様、アウターケース30の内周面から片持ち状をなして延出する一対の挟持片41が設けられ、電線22を挟持する挟持部40Aと、挟持部40Aに電線22を案内する案内部40Bとが形成されている。
【0038】
そして、固定部40のうち電線22と接触する接触面、すなわち挟持部40Aの内周面(アウターケース30および挟持片41の内周面)には、複数の凸部50が設けられている。凸部50は、略台形断面をなして挟持部40Aの内周面から内側へ突出している。複数の凸部50は、挟持部40Aの周方向に所定の間隔(本実施形態では略一定の間隔)をあけて配置されている。このように複数の凸部50が設けられることで、挟持部40Aの内周面のうち隣り合う凸部50の間には凹部51が形成されている。
固定部40に電線22が固定された状態では、凸部50が電線22の絶縁被覆22Bに食い込み、凹部51には電線22の絶縁被覆22Bが嵌まって、そのほぼ全面に接触した状態になる。
【0039】
以上のように本実施形態においては、回路構成体11に接続した電線22をアウターケース30の内周面に接触させた状態で固定しているから、回路構成体11の熱が電線22からアウターケース30に伝達し、アウターケース30から外部に放散される。したがって、実施形態1と同様、放熱性を高める効果を得ることができる。
【0040】
また、固定部40のうち電線22と接触する接触面には、凸部50および凹部51が形成されている。これにより、固定部40の凸部50が電線22に食い込むから、その分固定部40と電線22との接触面積が増えて電線22の熱が固定部40へ伝達しやすくなり、電線22からアウターケース30への伝熱性をより高めることができる。また、固定部40の凸部50が電線22に食い込むから、電線22をアウターケース30に接触した状態に保持する力が増し、振動等に対して有利なものとすることができる。
【0041】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3に係る電気接続箱10を図5によって説明する。
本実施形態の電気接続箱10は、固定部60の形態を異なるものとした点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る電気接続箱10は、実施形態1と同様に、回路構成体11をインナーケース12内に収容するとともに、そのインナーケース12をアウターケース30内に収容してなるものであり、回路構成体11に接続した電線22は、アウターケース30の内周面に接触した状態で、固定部60に固定されている。
【0043】
挟持片61は、実施形態1と同様、アウターケース30に一体に設けられている。挟持片61は、アウターケース30の内周面から片持ち状をなして延出し、アウターケース30の内周面に対して接近・離間方向に弾性変位可能とされている。挟持片61は、その全長にわたり略一定の厚さ寸法とされている。
【0044】
固定部60は、実施形態1と同様、電線22を挟持する挟持部60Aと、挟持部60Aに電線22を案内する案内部60Bとを有している。挟持部60Aは、1本の電線22の外周に沿うとともに一部分が開放された形状をなしている。挟持部60Aの開口寸法は、挟持片61が自然状態のときに、電線22の外径寸法よりも小さくなるように設定されている。
【0045】
挟持片61のうち挟持部60Aを構成する部分は、アウターケース30の内周面から垂直に突出した後、電線22の周面に沿って周方向に延びる形状をなしている。挟持片61のうち挟持部60Aを構成する部分の先端(根元とは反対側の端)は、アウターケース30の内周面に接近している。
【0046】
挟持片61のうち案内部60Bを構成する部分は、挟持部60Aを構成する部分の先端からアウターケース30の内周面に沿って、アウターケース30の内周面と略平行をなして延出している。挟持片61のうち案内部60Bを構成する部分の長さ寸法は、電線22の外径寸法と同等とされている。
【0047】
以上のように本実施形態においては、回路構成体11に接続した電線22をアウターケース30の内周面に接触させた状態で、固定部60に固定しているから、回路構成体11の熱が電線22からアウターケース30に伝達し、アウターケース30から外部に放散される。したがって、実施形態1と同様、放熱性を高める効果を得ることができる。
【0048】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4に係る電気接続箱10を図6によって説明する。
本実施形態の電気接続箱10は、固定部70の形態を異なるものとした点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る電気接続箱10は、実施形態1と同様に、回路構成体11をインナーケース12内に収容するとともに、そのインナーケース12をアウターケース30内に収容してなるものであり、回路構成体11に接続した電線22は、アウターケース30の内周面に接触した状態で、固定部70に固定されている。
【0050】
固定部70は、電線22を挟持する挟持部70Aと、アウターケース30と挟持片71とが係合する係合部70Bとを有している。挟持部70Aは、1本の電線22の外周に沿う形状をなしている。
【0051】
挟持片71は、実施形態1と同様、アウターケース30に一体に設けられている。挟持片71は、アウターケース30の内周面から片持ち状をなして延出し、アウターケース30の内周面に対して接近・離間方向に弾性変位可能とされている。
【0052】
挟持片71のうち挟持部70Aを構成する部分は、アウターケース30の内周面から電線22の周面に沿って周方向に延びる弧状をなしている。また、挟持片71のうち係合部70Bを構成する部分は、挟持部70Aを構成する部分の先端からアウターケース30の内周面に沿って、アウターケース30の内周面と略平行をなして延出している。挟持片71は、根元側の部分の厚さ寸法が最も小さくされ、先端に向けて少しずつ厚さ寸法が大きくなり、挟持部70Aを構成する部分の途中から係合部70Bの先端にかけての部分は、略一定の厚さ寸法とされている。
【0053】
挟持片71のうち係合部70Bを構成する部分には、係合孔73が設けられている。係合孔73は、挟持片71を厚さ方向に貫通する孔である。一方、アウターケース30には、係合孔73に係合する係合突部72が突出して設けられている。係合突部72は、その突出端側が開くV字形をなし、弾性的に縮径変形(幅寸法が小さくなる方向の変形)が可能とされている。
【0054】
係合突部72の突出端には、外側に突出する爪部74が設けられている。係合突部72が縮径変形したときには、爪部74を含む係合突部72の全体が係合孔73を通過可能になり、係合突部72が拡径方向に弾性復帰したときには、爪部74が係合孔73の周縁部に係合するようになっている。なお、爪部74の上面(係合突部72の突出端面)は、緩い弧状をなす案内面75とされている。
【0055】
そして、電線22を固定する際には、挟持片71をアウターケース30の内周面から離間方向に弾性変位させ、電線22を挟持部70A内に収めた状態にする。次いで、挟持片71をアウターケース30の内周面に接近方向に変位させ、係合孔73に係合突部72が挿入されるようにして押し付ける。すると、係合孔73の周縁部が係合突部72の案内面75に接触し、案内面75が押されることで係合突部72が縮径方向に弾性変形する。やがて、係合孔73が係合突部72の爪部74を乗り越えてその根元側に至ると、係合突部72は弾性復帰して爪部74が係合孔73の周縁部に係合した状態になる。こうして、固定部70の挟持部70Aは閉じた状態に保持され、各電線22は、挟持部70Aの内周面に接触した状態で、固定部70に固定される。
【0056】
以上のように本実施形態においては、回路構成体11に接続した電線22をアウターケース30の内周面に接触させた状態で、固定部70に固定しているから、回路構成体11の熱が電線22からアウターケース30に伝達し、アウターケース30から外部に放散される。したがって、実施形態1と同様、放熱性を高める効果を得ることができる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)上記実施形態では、電気接続箱10はタイヤハウジング上に取り付けられるものとされているが、これに限らず、自動車等に取り付けられる電気接続箱について広く適用が可能である。
(2)上記実施形態では、固定部40(60)(70)を下底部35に設けたが、これに限らず、例えば冷却される等の理由で他の部分よりも相対的に表面温度が低くなる部分がアウターケースに存在するのであれば、そのような部分に設けるようにしてもよい。
【0059】
(3)実施形態2では、凸部50は、略台形断面をなして挟持部40Aの内周面から突出しているが、凸部は、電線に食い込み可能な形状であればどのような形状としてもよく、例えば略三角形断面をなして突出する形状としてもよい。
(4)実施形態2では、凸部50は、アウターケース30および挟持片41の内周面に設けられているが、これに限らず、凸部を、アウターケースの内周面のみ、または挟持片の内周面のみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…電気接続箱
11…回路構成体
22…電線
30…アウターケース(ケース)
34…電線導出口
35…下底部
40,60,70…固定部
41,61,71…挟持片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路構成体と、前記回路構成体を収容するケースとを有し、
前記回路構成体に接続した電線を前記ケースの内周面に接触させた状態で、前記ケースの内周面から内側へ突出する形状の挟持片により固定した電気接続箱。
【請求項2】
前記回路構成体には複数本の電線が接続されており、
前記電線を前記ケースに1本ずつ固定した請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケースのうち前記電線が固定される固定部の前記電線との接触面に凹凸形状を形成した請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記電線を、前記ケースのうち他の部分よりも相対的に表面温度が低い部分に固定した請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記ケースは、前記電線を外部に導出する電線導出口を有するとともに、前記電線導出口よりも下方に突出する形状の下底部を有しており、
前記電線を、前記下底部に固定した請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記ケースのうち前記電線が固定される固定部と前記電線との間に伝熱材を塗布した請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−220357(P2010−220357A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63262(P2009−63262)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】