説明

電気機器の端子装置及び電磁接触器

【課題】共通の端子カバーによって端子ネジの保持機能を有しかつ汎用の座金組込ネジの使用も可能とした端子装置、及び、このような端子装置を有する電磁接触器を提供する。
【解決手段】固定接触子110と、固定接触子のネジ孔に締結される端子ネジ120と、固定接触子から抜き出された端子ネジを一時的に保持するとともに、端子ネジを保持した状態で固定接触子に対して移動する端子ネジ保持部材140と、固定接触子及び端子ネジを覆って設けられた端子カバー130とを備える端子装置100を、端子カバーは端子ネジ保持部材が着脱可能に装着される開口131が形成され、開口の内径は、端子ネジとして固定接触子のネジ孔に締結される座金組込ネジ120Aに装着される円形座金125の外径よりも大きい構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線が固定される電気機器の端子装置、及び、このような端子装置を有する電磁接触器に関する。特に、丸型圧着端子の接続時等における専用端子ネジの保持機能を有しかつ汎用の座金組込ネジの使用も可能とした端子カバーを有する端子装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、電磁コイルの吸引力を利用して固定鉄心と可動鉄心との接触、離間を切り換えて、電気回路の開閉を制御するものである。
電磁接触器に設けられた、制御対象の配線が接続される端子装置には、作業者が誤って指で触れること等を防ぐため、保護用の端子カバーが装着される。
【0003】
このような端子装置は、オネジである端子ネジを端子板側に設けられたメネジに締結することによって、接続対称の配線を座金と端子板との間に挟みこんで固定する構成が一般的である。そして、配線が単線である場合には、端子ネジを緩めた際に座金と端子板との間にできる隙間に配線を挿入し、端子ネジを締めこむことによって固定が行われる。
また、接続対象となる配線は、先端に端子ネジが挿入される環状部が形成された丸型圧着端子(アンプ端子)を備える場合もある。この場合、端子ネジを一旦端子板側のメネジから完全に抜き取ってから丸型圧着端子を端子装置内に配置し、その後端子ネジを再び装着し、締結する必要がある。
【0004】
丸型圧着端子の脱着時等における作業性を向上するため、従来よりメネジから抜き取られた端子ネジを保持する機能を備えた端子装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、端子ネジの頭部にリング状の凹部又は凸部を形成し、この凹部又は凸部と係合して端子ネジを保持する端子ネジホルダを設けるとともに、端子ネジホルダを、端子ネジが固定接触子に対して近接、離間する方向に移動可能とし、さらに端子ネジが固定接触子から離間した第1の位置、及び、端子ネジが固定接触子に当接した第2の位置において係止されるようにした端子装置が記載されている。この端子装置においては、端子ネジホルダは例えば電気絶縁性のプラスチック等からなる端子カバーとは別体の部材であって、通常の使用時においては端子ネジホルダを端子カバーから取り外すことはできない。
【0005】
また、特許文献2には、端子ネジに設けられる座金をL字状に形成し、この座金を案内する案内部を端子カバーと一体に形成することによって、特許文献1のような独立した端子ネジホルダを設けることなく端子ネジの保持を可能とした端子装置が記載されている。
【特許文献1】特許第2725519号
【特許文献2】特開平8−287982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した各従来技術の端子装置では、端子ネジに設けられる座金はそれぞれの端子ネジ保持機構に対応した専用品とする必要がある。
一方、丸型圧着端子の固定を、汎用品である座金組込ネジ(例えばJIS B 1188に規定される座金組込十字穴小ネジ)でも可能とすることを求めるユーザも存在する。
上述した各従来技術の端子装置においては、専用の座金を有する端子ネジに代えてこのような座金組込ネジを用いることは、端子ネジ保持機構の内径が座金の外径よりも小さいことから実質的に不可能である。このため、専用品以外の端子ネジの利用を希望するユーザに対しては、異なった形状の端子カバーを提供する必要があり、品種の増大につながっていた。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであって、共通の端子カバーによって端子ネジの保持機能を有しかつ汎用の座金組込ネジの使用も可能とした電気機器の端子装置、及び、このような端子装置を有する電磁接触器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の電気機器の端子装置は、ネジ孔が設けられた固定接触子と、前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される端子ネジと、前記固定接触子の前記ネジ孔から抜き出された前記端子ネジを一時的に保持するとともに、該端子ネジを保持した状態で前記固定接触子に対して接近及び離間する方向に移動する端子ネジ保持部材と、前記固定接触子及び前記端子ネジを覆って設けられた端子カバーと、を備える電気機器の端子装置であって、前記端子カバーは、前記端子ネジの軸心の延長上に設けられ、前記端子ネジ保持部材が着脱可能に装着される開口が形成され、該開口の内径は、前記端子ネジとして前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される座金組込ネジに装着される円形座金の外径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、端子ネジが固定接触子のネジ孔に締結された状態から丸型圧着端子の装着等のため端子ネジを緩めた場合には、端子ネジが端子ネジ保持部材に保持される。端子ネジ保持部材は、端子ネジを保持した状態で固定接触子から離間する方向に移動可能であることから、丸型圧着端子の挿入は端子ネジが端子ネジ保持部材に保持された状態で行うことができ、端子ネジの脱落や紛失を防止できる。
また、ユーザが端子ネジとして汎用の座金組込ネジを用い、かつ、これを端子カバーの外側から挿入したい場合には、端子カバーに対して着脱可能な端子ネジ保持部材を取り外すことによって、その内径が座金の外径よりも大きい開口が出現するから、ここから座金組込ネジを挿入することができる。
以上のように、本発明によれば、端子ネジの保持機能、及び、端子ネジ保持部材を取り外すことによって汎用の座金組込ネジも使用できる機能を、共通の端子カバーによって得ることができ、部品の品種増大を抑制できる。
【0010】
また、本発明は、前記端子ネジ保持部材は、前記固定接触子から離れた側の端部に設けられ、前記端子ネジを回転させる工具が挿入される環状部と、該環状部の周上における複数の箇所から前記固定接触子側へそれぞれ突き出すとともに、前記端子カバーの前記開口の内周縁と当接する可撓性を有するアーム部と、該アーム部の内側に突き出して形成され、前記端子ネジと係合する端子ネジ係合爪と、該アーム部の外側に突き出して形成され、前記端子ネジ係合爪に前記端子ネジが係合される際に前記ネジ保持部材の移動を禁止するとともに、該端子ネジ係合爪への該端子ネジの係合完了後に該端子ネジ保持部材の前記固定接触子から離間する方向の移動を許容するストッパと、を備え、前記ストッパの解除後に前記端子ネジを保持した状態で該端子ネジの先端と前記固定接触子との間に丸型圧着端子の挿入が可能な隙間が形成される位置まで移動可能である構成とすることができる。
これによれば、端子ネジ保持部材へ端子ネジが当接しかつ未係合状態においては、ストッパが端子ネジ保持部材の移動を禁止するため、端子ネジ係合爪への端子ネジの係合を確実に行わせることができる。
【0011】
また、本発明の他の態様においては、電気機器の端子装置は、ネジ孔が設けられた固定接触子と、前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される端子ネジと、前記固定接触子及び前記端子ネジを覆って設けられた端子カバーと、を備える電気機器の端子装置であって、前記端子カバーは、前記端子ネジの軸心の延長上に設けられた開口が形成され、該開口は、内径が前記端子ネジとして前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される座金組込ネジに装着される円形座金の外径よりも大きく、かつ、前記固定接触子の前記ネジ孔から抜き出された前記端子ネジを一時的に保持するとともに、該端子ネジを保持した状態で前記固定接触子に対して接近及び離間する方向に移動する端子ネジ保持部材が着脱可能に装着される被装着部が形成されることを特徴とする。
本発明においても、上述した発明と同様の効果を得ることができる。
【0012】
上記各発明において、前記端子カバーの前記開口の内径は、前記端子ネジのネジ径に対してJIS B 1188に規定される座金組込十字穴小ネジに組み込まれる座金の外径よりも大きい構成とすることができる。
【0013】
また、本発明の電磁接触器は、固定鉄心と、前記固定鉄心に対して当接又は離間する方向に移動可能な可動鉄心と、前記可動鉄心を駆動する電磁コイルと、前記可動鉄心の移動と連動して当接及び離間することによって制御対象となる電気回路を開閉する固定接触子及び可動接触子と、を備える電磁接触器であって、前記固定接触子に制御対象の電気回路を接続する端子装置、前記電磁コイルに駆動電力を供給する配線を接続する端子装置の少なくとも一方に、上記各発明の端子装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、端子ネジを一時的に保持する端子ネジ保持部材を端子カバーに対して着脱可能とし、端子カバーに端子ネジ保持部材が装着される開口の内径を、端子ネジとして用いられる座金組込ネジの円形座金の外径よりも大きくすることによって、共通の端子カバーによって端子ネジの保持機能を有しかつ汎用の座金組込ネジの使用も可能とした電気機器の端子装置、及び、このような端子装置を有する電磁接触器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用した端子装置を含む電磁接触器の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で上下方向、横方向等の説明は、全て図中における姿勢を基準としており、実際に電磁接触器が利用される際の方向とは関係ない。
図1は、本実施形態の電磁接触器1の外観斜視図である。
図2は、電磁接触器1の上面図である。
図3は、電磁接触器1の側面図であって、図2のIII−III部矢視図である。
図4は、電磁接触器1の側面図であって、図3のIV−IV部矢視図である。
図5は、電磁接触器1から端子カバー及び端子ネジホルダを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【0016】
電磁接触器1は、フレームに固定された固定鉄心及び固定鉄心に対して移動可能な可動鉄心を有し、可動鉄心を電磁コイルで駆動することによって制御対象の電気回路の開閉を行うものである。
電磁接触器1は、下部フレーム2、上部フレーム3、外部接続端子部100、電磁コイル端子部200を備えている。
下部フレーム2及び上部フレーム3は、電磁接触器1の各構成部材が装着される基部、並びに、各構成部材を収容するケースとして機能する。下部フレーム2及び上部フレーム3は、例えば絶縁性を有するプラスチックをインジェクション成型し、上下二つ割のケースとして構成されている。
また、電磁接触器1は、図示しない電磁コイルを備えている。この電磁コイルは、図示しない可動鉄心を駆動して電磁接触器1による電気回路の開閉を行なわせるものである。
【0017】
外部接続端子部100は、電磁接触器1による開閉制御の対象となる電気回路が接続されるものである。外部接続端子部100は、固定接触子110、端子ネジ120、消弧カバー130、ネジチャック140を備えている。
固定接触子110は、導電性を有する金属材料によって形成され、上部フレーム3に固定されている。固定接触子110は、上部フレーム3の内部において、可動鉄心を介して電磁コイルによって駆動される可動接触子と接触又は離間することによって、回路の一部を開閉する。この固定接触子110は、端子ネジ120が挿入されネジ結合されるメネジであるネジ孔が設けられている。ネジ孔はその軸心が上下方向にほぼ沿って形成されている。
本実施の形態の場合には、固定接触子110は、例えば5組が横方向に並べて設けられている。各固定接触子110の間には、電気絶縁性を有するプラスチック等によって形成された隔壁(絶縁壁)が設けられ、短絡を防止している。
【0018】
端子ネジ120は、固定接触子110のネジ孔に締結されることによって、接続対称となる配線を固定する。
図6は、角型座金を有する標準の端子ネジ120の外観斜視図である。端子ネジ120は、頭部121及びネジ部122を有し、さらに、座金123が設けられている。頭部121は、図示しないプラススクリュードライバー(ネジ回し)と係合する十字溝が形成されている。
座金123は、端子ネジ120の首部(頭部121とネジ部122との間)にスプリングワッシャを挟んで組み込まれている。座金123は、端子ネジ120の軸方向に沿ってみた平面形がほぼ正方形に形成されている。また、座金123には固定接触子110側にリブ状に張り出した突出部が複数形成されている。
【0019】
消弧カバー130は、電磁接触器1の上端部に設けられ、電気絶縁性を有するプラスチック等によって形成されたプレート状の部材である。消弧カバー130は、図示しない可動接触子が固定接触子と接触又は離間する接点開閉部をカバーする。また、消弧カバー130は、その側端部が端子部、すなわち、固定接触子110、及び、これに締結された端子ネジ120の頭部121の上方側を覆って設けられ、指等による感電を防止し充電保護を行う端子カバーとしての機能も備えている。
消弧カバー130には、ネジチャック140が装着される開口(ドライバ挿入穴)131が形成されている。開口131は、各固定接触子110に対してそれぞれ1つずつ設けられている。開口131は、ほぼ円形に形成され、その中心は、固定接触子110のネジ孔とほぼ同心となるように配置されている。
【0020】
図7は、消弧カバー130の開口131の拡大斜視図である。
消弧カバー130の開口131は、その内周面から内径側に突き出したフランジ132を有する。
フランジ132の上面には、ネジチャック140が押し込まれた際に、ネジチャック140のフランジ142を受ける受座133が設けられている。この受座133は、開口131の中心軸に対して直交する平面として形成されている。
また、フランジ132には、ネジチャック140が固定接触子110に対して接近及び離間する方向に移動する際に、これをガイドするガイド溝134が形成されている。ガイド溝134は、フランジ132がネジチャック140の外周面と対向する内周縁部の一部を溝状に凹ませて形成されている。
【0021】
ネジチャック140は、消弧カバー130の開口131に対して着脱可能に装着され、端子ネジ120を保持した状態で固定接触子110に対して接近及び離間する端子ネジ保持部材である。
図8は、ネジチャック140の外観斜視図であって、図8(a)は斜め上方側から見た図、図8(b)は図8(a)の裏側(斜め下方側)から見た図である。
ネジチャック140は、本体部141が略円筒状に形成され、さらに、フランジ142、アーム143、端子ネジ保持爪144、突き当て面145、ガイド146、中間ストッパ147、下端ストッパ148等を、例えばプラスチック等の弾性及び電気絶縁性を有する材料を用いたインジェクション成型で一体に形成している。
【0022】
フランジ142は、本体部141の上端部から外径側へつば状に張り出して形成されている。
アーム143は、本体部141の周壁の一部の領域を切り出して形成され、本体部141の上部側から下方側へ突き出して形成された帯板状の部分である。アーム143は、弾性材料によって形成されているため、たわむことによって下端部がネジチャック140の径方向に変位可能となっている。アーム143は、ネジチャック140の周方向に離間して、例えば1対が設けられている。
【0023】
端子ネジ保持爪144は、端子ネジ120の首部と係合することによって、端子ネジ120を保持する部分である。端子ネジ保持爪144は、アーム143の下端部からネジチャック140の内径側に突き出して形成されている。
突き当て面145は、1対のアーム143の端子ネジ保持爪144の下側にそれぞれ形成され、下広がりとなるように配置されることによって、下方から端子ネジ120が押し付けられた際に、1対のアーム143が開く方向に入力を変換する斜面である。
【0024】
ガイド146は、アーム143のネジチャック140の外径側の面から突き出した突条である。ガイド146は、上下方向(ネジチャック140の軸心方向)と平行に延びて形成されている。このガイド146は、上述した消弧カバー130の開口131のガイド溝134と係合し、このガイド溝134によって案内される。
【0025】
中間ストッパ147は、端子ネジ120が緩められてネジチャック140に対して上昇し、その頭部121が突き当て面145に当接してアーム143が広げられた際に、消弧カバー130のフランジ132と係合することによってネジチャック140の上方への移動を防止するものである。中間ストッパ147は、ガイド146の根元部分をその中間部よりも下側の領域にわたって張り出させることによって形成されており、この張り出し部分の上端面がフランジ131と当接することによってストッパとして機能する。
【0026】
下端ストッパ148は、アーム143の下端部からネジチャック140の外径側へ突き出して形成され、消弧カバー130のフランジ132と係合することによって、通常使用時における意図しないネジチャック140の脱落を防止する。
【0027】
電磁コイル端子部200は、電磁コイルに駆動電力を供給する電気配線が接続される部分である。電磁コイル端子部200は、コイル端子210、端子ネジ220、端子カバー230、ネジチャック240を備え、これらはそれぞれ外部接続端子部100の固定接触子110、端子ネジ120、消弧カバー130、ネジチャック140と実質的に同様の構成、特徴を備えている。
電磁コイル端子部200は、電磁接触器1の側面部から突き出して形成されている。
【0028】
次に、本実施の形態の電磁接触器における外部接続端子部100の機能についてより詳細に説明する。図9及び図10は、電磁接触器1における端子ネジ120を固定接触子110から取り外す過程を示す図であって、図9は外観斜視図、図10は側面図である。
電磁接触器1は、上述したように横方向に5組の端子部を配列してなるが、図9及び図10に示すように、図面上における左側から順に、端子ネジ120の取り外しにおける各ステップを示している。以下、各ステップ毎に順を追って説明する。
【0029】
<初期状態>
先ず、1番左側の端子部は、端子ネジ120の取り外しを開始する前の状態を示している。この状態では、端子ネジ120は、固定接触子110のネジ孔に対して締めこまれた状態となっており、座金123は固定接触子110と当接している。
【0030】
<端子ネジ緩め開始状態>
左から2つ目の端子部は、端子ネジ120をプラススクリュードライバーで回転させて緩め始めた状態を示しているが、未だ外観上では上述した初期状態に対して顕著な差はない。
【0031】
<端子ネジ−ネジチャック当接(未係合)状態>
左から3つ目の端子部は、端子ネジ120を緩めた結果、頭部121が上昇してネジチャック140の突き当て面部145と当接した状態を示している。頭部121が突き当て面部145と当接すると、突き当て面部145の傾斜に起因してアーム143は外側に開かれるとともに、ネジチャック140は押し上げられて消弧カバー130に対して上昇を開始する。ネジチャック140が上昇して中間ストッパ147が開口131のフランジ132に達すると、アーム143が広がっているために中間ストッパ147はフランジ132と係合し、ネジチャック140は停止する。
【0032】
<端子ネジ−ネジチャック係合状態>
左から4つ目の端子部は、端子ネジ120をさらに緩めて端子ネジ120がネジチャック140と係合した状態を示している。
上述した状態からさらに端子ネジ120を緩め、その頭部121が上昇すると、端子ネジ120の頭部はネジチャック140の端子ネジ保持爪144を乗り越える。これによって、端子ネジ保持爪144は端子ネジ120の首部に引っかかり、ネジチャック140は端子ネジ120と係合する。すなわち、端子ネジ120は、ネジチャック140によって保持される。このとき端子ネジ120の先端(下端部)は、未だ固定接触子110のネジ孔と当接している。
【0033】
<取り外し完了状態>
左から5番目の端子部は、端子ネジ120が固定接触子110から完全に離間し、これらの間に丸型圧着端子の挿入が可能となった状態を示している。
上述したように、端子ネジ120がネジチャック140によって保持された後、ユーザが外部からネジチャック140のフランジ142を指等でつまんで引っ張り上げると、ネジチャック140は、消弧カバー130から突き出しながら引き出され、下端ストッパ148がフランジ132に当接する箇所で停止する。このとき、端子ネジ120は、ネジチャック140に同伴して上昇し、その下端部と固定接触子との間には隙間が形成されている。
【0034】
次に、電磁接触器1に丸型圧着端子を装着する方法について説明する。図11及び図12は、電磁接触器1に丸型圧着端子Tを装着する過程を示す図であって、図11は外観斜視図、図12は側面図である。
図11及び図12において、図面上における左側の端子部から順に(最も左側のものは除く)、丸型圧着端子Tの装着における各ステップを示している。以下、各ステップ毎に順を追って説明する。
【0035】
<丸型圧着端子挿入>
先ず、左から2つ目、3つ目の端子部のように、丸型圧着端子Tの先端を、ネジチャック140が引き上げられることによって端子ネジ120の先端と固定接触子110との間に形成された隙間に挿入する。
<ネジチャック押し下げ・端子ネジ締め込み>
次に、左から4つ目の端子部のように、外部からネジチャック140を消弧カバー130に押し込む方向に押し下げて、端子ネジ120の先端を固定接触子110のネジ孔に当接させる。
そして、ネジチャック140の上方側からプラススクリュドライバを挿入して端子ネジ120を回転させ、端子ネジ120を固定接触子110のネジ孔に対して締めこむ。これによって、端子ネジ120はネジチャック140とともに固定接触子110側に降下する。
【0036】
<装着完了>
端子ネジ120の締め込みによってネジチャック140が消弧カバー130の開口131内に引き込まれ、ネジチャック140のフランジ142が開口131内のフランジ132と当接すると、ネジチャック140のそれ以上の移動は阻止される。ここからさらに端子ネジ120を締めこむと、ネジチャック140のアーム143が撓んで端子ネジ係合爪144と端子ネジ120との係合は解除され、ここからは端子ネジ120のみが降下する。そして、端子ネジ120が固定接触子110のネジ孔に対して締結され、丸型圧着端子Tが端子ネジ120の座金123と固定接触子110との間に挟持されると、丸型圧着端子の装着は完了する。
図11及び図12における左側から5つ目の端子部は、このような装着完了後の状態を示している。
【0037】
以上の使用方法は、標準の端子ネジ120である角型座金付きの専用端子ネジを用いる場合を示したが、ユーザによっては、例えばJIS B 1188に規定される座金組込十字穴小ネジを用い、かつ、このネジを消弧カバー130の上方側から挿入する使い方を希望する場合もある。
図13は、汎用の座金組込十字穴小ネジ(以下、「座金組込ネジ」と称する)の外観斜視図である。
座金組込ネジ120Aは、上述した端子ネジ120の角型座金123に代えて、スプリングワッシャ124、及び、円形ワッシャ125を備えている。
【0038】
座金組込ネジ120Aの円形ワッシャ125の外径は、通常ネジチャック140の本体部141の内径よりも大きいので、ここを通過させて座金組込ネジ120Aの挿入を行うことはできない。
そこで、本実施の形態においては、消弧カバー130の開口131の内径を、このような座金組込ネジ120Aの円形ワッシャ125の外径よりも大きく設定している。
図14は、ネジチャック140を取り外して座金組込ネジ120Aを用いる場合の電磁接触器1の分解斜視図である。
本実施の形態では、ネジチャック140を消弧カバー130に対してこじる等して取り外すと、取り外した後の開口131から座金組込ネジ120Aを挿入して、座金組込ネジ120Aを固定接触子110に装着することが可能となっている。
【0039】
次に、上述した本実施の形態の効果を、以下説明する本発明の比較例1、2と対比して説明する。なお、以下説明する各比較例において、上述した実施の形態と実質的に共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図15は、比較例1の電磁接触器1Aの外観斜視図である。
図16は、電磁接触器1A及び端子カバー150,250の分解斜視図である。
図17は、端子カバー150,250を装着された電磁接触器1Aを示す外観斜視図である。
図18は、図17の電磁接触器1Aの上面図である。
図19は、図18のa−a部矢視図である。
図20は、図19のb−b部矢視図である。
【0040】
比較例1の電磁接触器1Aにおいては、消弧カバー130Aは、端子部分までカバーしておらず、端子カバーとしての機能は備えていない。比較例1においては、独立した端子カバー150が設けられ、この端子カバー150に端子ネジの一時的な保持機能が備えられる。端子カバー150には、工具挿入用の開口151が形成される。
また、電磁コイル用の端子部にも、上述した端子カバー150と実質的に同様の機能を備えた端子カバー250が設けられる。
【0041】
図21は、比較例1の電磁接触器1Aにおける端子ネジ120Bの外観斜視図である。この端子ネジ120Bは、上記実施の形態における端子ネジ120の座金123に代えて、以下説明するL字状の座金126を備えたものである。
座金126は、上述した座金123と実質的に同様の平面部127、及び、平面部127の一端部から上方へ立ち上げられたガイド面部128を一体に形成したものである。
【0042】
一方、端子カバー150には、ガイド面部128が嵌め込まれ、ガイド面部128の側端部を上下方向に案内する溝部を有する図示しないガイド部152が形成されている。
そして、端子ネジ120Bが固定接触子110に締結された状態から緩められて上昇すると、端子ネジ120Bのガイド面部128の両側端は、ガイド部152の溝内に挿入される。そして、端子ネジ120Bは、固定接触子110から完全に抜き出されると、ガイド面部128とガイド部152との接触面部の摩擦によって保持される。
【0043】
図22は、比較例2の電磁接触器1Bの外観斜視図である。
図23は、電磁接触器1Bの上面図である。
図24は、図23のa−a部矢視図である。
図25は、図24のb−b部矢視図である。
図26は、電磁接触器1Bから消弧カバー130B及び端子ネジ120Bを取り外した状態を示す分解斜視図である。
比較例2の電磁接触器1Bは、比較例1の端子カバー150と同様の端子ネジ保持機構を有する端子カバーを一体に形成した消弧カバー130Bを備えている。この消弧カバー130Bは、比較例1の端子カバー150の開口151及びガイド部152と実質的に同様の開口131B及びガイド部132B(図26参照)を有する。
【0044】
上述した比較例1で座金組込ネジ120Aを端子ネジとして使用する場合、端子カバー150,250を装着した状態では、各端子カバーの開口から座金組込ネジ120Aを挿入することができない。このため、端子カバー150,250は取り外す必要がある。そして、充電部保護の必要がある場合には、別途別設計の端子カバーを準備して装着する必要がある。
また、比較例2においては、端子カバーが消弧カバー130Bと一体に形成されていることから、座金組込ネジ120Aを端子ネジとして使用する場合には、別設計の消弧カバーを準備する必要がある。
さらに、比較例1、2では、L字状に立ち上げられたガイド面部128を有する座金126を用いることから、その組み付けに方向性があり、電磁接触器の組立構成が煩雑となってしまう。
【0045】
これに対し、本実施の形態においては、ユーザが端子ネジとして汎用の座金組込ネジ120Aを用い、かつ、これを端子カバー一体型の消弧カバー130の外側から挿入したい場合には、消弧カバー130に対して着脱可能なネジチャック140を取り外すことによって、その内径が円形ワッシャ125の外径よりも大きい開口131が出現するから、ここから座金組込ネジ120Aを挿入して使用することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、端子ネジ120の保持機能、及び、ネジチャック140を取り外すことによって汎用の座金組込ネジ120Aも使用できる機能を、共通の消弧カバー130によって得ることができ、部品の品種増大を抑制できる。これによって、製造時、物流時、販売時等の管理費も低減できる。
さらに、本実施の形態においては、端子ネジ120の座金123に方向性がないため、電磁接触器の組立工程が簡素化される。
【0046】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、端子装置及び電磁接触器の構造や各構成部品の形状、材質等は、上述した実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を適用した電磁接触器の実施の形態における外観斜視図である。
【図2】図1の電磁接触器の上面図である。
【図3】図1の電磁接触器の側面図であって、図2のIII−III部矢視図である。
【図4】図1の電磁接触器の側面図であって、図3のIV−IV部矢視図である。
【図5】図1の電磁接触器から端子カバー及び端子ネジホルダを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図6】図1の電磁接触器における角型座金を有する標準端子ネジの外観斜視図である。
【図7】図1の電磁接触器における消弧カバーの開口の拡大斜視図である。
【図8】図1の電磁接触器におけるネジチャックの外観斜視図である。
【図9】図1の電磁接触器における端子ネジを固定接触子から取り外す過程を示す外観斜視図である。
【図10】図1の電磁接触器における端子ネジを固定接触子から取り外す過程を示す側面図である。
【図11】図1の電磁接触器における丸型圧着端子を装着する過程を示す外観斜視図である。
【図12】図1の電磁接触器における丸型圧着端子を装着する過程を示す側面図である。
【図13】図1の電磁接触器で端子ネジとして用いられる汎用の座金組込十字穴小ネジの外観斜視図である。
【図14】図1の電磁接触器でネジチャックを取り外して座金組込ネジを用いる場合の電磁接触器1の分解斜視図である。
【図15】本発明の比較例1である電磁接触器の外観斜視図である。
【図16】比較例1の電磁接触器及び端子カバーの分解斜視図である。
【図17】端子カバーが装着された比較例1の電磁接触器の外観斜視図である。
【図18】図17の電磁接触器の上面図である。
【図19】図18のa−a部矢視図である。
【図20】図19のb−b部矢視図である。
【図21】比較例1の電磁接触器における端子ネジの外観斜視図である。
【図22】本発明の比較例の電磁接触器の外観斜視図である。
【図23】比較例2の電磁接触器の上面図である。
【図24】図23のa−a部矢視図である。
【図25】図24のb−b部矢視図である。
【図26】比較例2の電磁接触器から消弧カバー及び端子ネジを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 電磁接触器 2 下部フレーム
3 上部フレーム 100 外部接続端子部
110 固定接触子 120 端子ネジ
123 座金 130 消弧カバー
131 開口 132 フランジ
133 受座 134 ガイド溝
140 ネジチャック 141 本体部
142 フランジ 143 アーム
144 端子ネジ保持爪 145 突き当て面
146 ガイド 147 中間ストッパ
148 下端ストッパ 200 電磁コイル端子部
210 コイル端子 220 端子ネジ
230 端子カバー 240 ネジチャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ孔が設けられた固定接触子と、
前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される端子ネジと、
前記固定接触子の前記ネジ孔から抜き出された前記端子ネジを一時的に保持するとともに、該端子ネジを保持した状態で前記固定接触子に対して接近及び離間する方向に移動する端子ネジ保持部材と、
前記固定接触子及び前記端子ネジを覆って設けられた端子カバーと、
を備える電気機器の端子装置であって、
前記端子カバーは、前記端子ネジの軸心の延長上に設けられ、前記端子ネジ保持部材が着脱可能に装着される開口が形成され、
該開口の内径は、前記端子ネジとして前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される座金組込ネジに装着される円形座金の外径よりも大きいこと
を特徴とする電気機器の端子装置。
【請求項2】
前記端子ネジ保持部材は、前記固定接触子から離れた側の端部に設けられ、前記端子ネジを回転させる工具が挿入される環状部と、
該環状部の周上における複数の箇所から前記固定接触子側へそれぞれ突き出すとともに、前記端子カバーの前記開口の内周縁と当接する可撓性を有するアーム部と、
該アーム部の内側に突き出して形成され、前記端子ネジと係合する端子ネジ係合爪と、
該アーム部の外側に突き出して形成され、前記端子ネジ係合爪に前記端子ネジが係合される際に前記ネジ保持部材の移動を禁止するとともに、該端子ネジ係合爪への該端子ネジの係合完了後に該端子ネジ保持部材の前記固定接触子から離間する方向の移動を許容するストッパと、を備え、
前記ストッパの解除後に前記端子ネジを保持した状態で該端子ネジの先端と前記固定接触子との間に丸型圧着端子の挿入が可能な隙間が形成される位置まで移動可能であること
を特徴とする請求項1に記載の電気機器の端子装置。
【請求項3】
ネジ孔が設けられた固定接触子と、
前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される端子ネジと、
前記固定接触子及び前記端子ネジを覆って設けられた端子カバーと、
を備える電気機器の端子装置であって、
前記端子カバーは、前記端子ネジの軸心の延長上に設けられた開口が形成され、
該開口は、内径が前記端子ネジとして前記固定接触子の前記ネジ孔に締結される座金組込ネジに装着される円形座金の外径よりも大きく、かつ、前記固定接触子の前記ネジ孔から抜き出された前記端子ネジを一時的に保持するとともに、該端子ネジを保持した状態で前記固定接触子に対して接近及び離間する方向に移動する端子ネジ保持部材が着脱可能に装着される被装着部が形成されること
を特徴とする電気機器の端子装置。
【請求項4】
前記端子カバーの前記開口の内径は、前記端子ネジのネジ径に対してJIS B 1188に規定される座金組込十字穴小ネジに組み込まれる座金の外径よりも大きいこと
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気機器の端子装置。
【請求項5】
固定鉄心と、前記固定鉄心に対して当接又は離間する方向に移動可能な可動鉄心と、前記可動鉄心を駆動する電磁コイルと、前記可動鉄心の移動と連動して当接及び離間することによって制御対象となる電気回路を開閉する固定接触子及び可動接触子と、を備える電磁接触器であって、
前記固定接触子に制御対象の電気回路を接続する端子装置として、請求項1から4のいずれかに記載の端子装置を備えることを特徴とする電磁接触器。
【請求項6】
固定鉄心と、前記固定鉄心に対して当接又は離間する方向に移動可能な可動鉄心と、前記可動鉄心を駆動する電磁コイルと、前記可動鉄心の移動と連動して当接及び離間することによって制御対象となる電気回路を開閉する固定接触子及び可動接触子と、を備える電磁接触器であって、
前記電磁コイルに駆動電力を供給する配線を接続する端子装置として、請求項1から4のいずれかに記載の端子装置を備えることを特徴とする電磁接触器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−16261(P2009−16261A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178799(P2007−178799)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(503361927)富士電機アセッツマネジメント株式会社 (402)
【Fターム(参考)】