説明

電気機器の配線構造

【課題】 電気部品接続用のスナップ端子のリード線が引っ張られても、そのリード線の配線基板に半田付けされる基端部にストレスが掛からないように、作業性よく、かつ確実にリード線の途中部分を係止できる電気機器の配線構造を提供する。
【解決手段】 電気機器の配線基板9に設けた係止部15に、電気部品8を接続するためのスナップ端子10のリード線11の中間部が係止されるとともに、リード線11の基端部が半田付けで前記配線基板9に接続される配線構造において、前記係止部15を第1係止溝16A,16Bと第2係止溝17とで構成する。第1係止溝16A,16Bは、前記リード線11が挿通されて直交する2方向X,Yのうちの少なくとも一方向Xに沿ったリード線の移動を阻止する。第2係止溝17は、リード線11が挿通されて、少なくとも他方向Yに沿ったリード線11の移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機器における電池のような電気部品を接続するための配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】例えば出力電圧が9Vの乾電池を電源とする電気機器の場合、その電気機器のハウジングに形成された乾電池収容空間に出し入れ自在に収容される乾電池と、電気機器の配線基板とは、スナップ端子のリード線を介して電気的に接続される。すなわち、スナップ端子のリード線が配線基板に半田付けされ、そのスナップ端子が乾電池の端子に着脱自在に嵌合される。
【0003】このように、乾電池と配線基板とがスナップ端子のリード線で接続される電気機器では、電池交換の際に乾電池の端子に対してスナップ端子を着脱させるので、このときスナップ端子のリード線が引っ張られて、配線基板上のリード線半田付け部にストレスが掛かり、リード線が断線するおそれがある。
【0004】そこで、従来は、このような電池交換などの際に、スナップ端子のリード線を断線させない対策として、図7に示すように、電気機器のハウジング31の仕切壁31aなどに切欠状のリード線嵌合部32を形成して、スナップ端子33のリード線34の中間部を前記リード線嵌合部32に噛み合わせることにより、リード線34が引っ張られても、配線基板35のリード線半田付け部36にストレスが掛からないようにしたものがある。
【0005】しかし、このような構造では、リード線34の特定箇所を選んで前記リード線嵌合部32に噛み合わせないと、断線防止の効果が上がらない場合が多く、電気機器の組立時にリード線34の噛み合わせ位置を特定する必要があり、組立作業が煩雑になるという問題点がある。
【0006】また、スナップ端子のリード線を断線させない対策の他の例として、図8に示すように、電気機器のハウジング41の内面に例えば複数本のボス42を一体成形し、これらのボス42に前記スナップ端子33のリード線34の途中部分を蛇行状に引っ掛けることにより、リード線34が引っ張られても、配線基板43のリード線半田付け部44にストレスか掛からないようにしたものがある。
【0007】しかし、この場合には、前記ボス42にリード線34を引っ掛ける作業が煩雑で作業効率が悪いばかりか、ボス42に引っ掛けたリード線34が、組立後にほぐれてボス42から抜け易いという問題点がある。
【0008】また、スナップ端子のリード線を断線させない対策のさらに他の例として、図9に示すように、配線基板53に開口54を形成し、この開口54に通したスナップ端子33のリード線34の途中部分を、開口54と配線基板53の端縁との間の部分53aに巻き付けることにより、リード線34が引っ張られても、配線基板53のリード線半田付け部55にストレスが掛からないようにしたものがある。
【0009】しかし、この場合には、開口54にリード線34を通して巻き付ける作業が煩雑であり、しかもリード線34を配線基板53に半田付けした後に大きなスナップ端子33を開口54に通すことは、通常、困難であるから、前記半田付けの前にリード線34の巻付け作業を行わなければならないという制約があるので、さらに作業効率が悪くなる。
【0010】本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、電気部品接続用のスナップ端子のリード線が引っ張られても、そのリード線の配線基板に半田付けされる基端部にストレスが掛からないように、作業性よく、かつ確実にリード線の途中部分を係止できる電気機器の配線構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電気機器の配線構造は、電気機器の配線基板に設けた係止部に、電気部品接続用のスナップ端子のリード線の中間部が係止されるとともに、リード線の基端部が半田付けで前記配線基板に接続されており、前記係止部は、前記リード線が挿通されて直交する2方向のうちの少なくとも一方向に沿ったリード線の移動を阻止する第1係止溝と、リード線が挿通されて少なくとも他方向に沿ったリード線の移動を阻止する第2係止溝とを有している。
【0012】この配線構造によれば、配線基板の係止部の第1係止溝と第2係止溝にスナップ端子のリード線の中間部を挿通させて係止することにより、リード線はその係止部で直交する2方向のいずれへの移動も阻止されるので、スナップ端子への電気部品の着脱時などにおいてスナップ端子のリード線が引っ張られても、配線基板に半田付けされる前記リード線の基端部にストレスが掛かることがなく、リード線の断線を確実に阻止できる。また、前記係止部へのリード線の係止は、第1および第2の係止溝にリード線を挿通させるだけでよく、作業性がよく、確実に係止することができる。
【0013】本発明の請求項2に係る電気機器の配線構造は、請求項1の構成において、前記第1および第2係止溝が、前記配線基板の端縁に開口している。
【0014】前記電気機器の配線構造によれば、配線基板の端縁に開口する係止溝にリード線を係止させるので、リード線が配線基板上の回路部品と干渉するのを回避でき、リード線を収まりよく配線できる。
【0015】本発明の請求項3に係る電気機器の配線構造は、請求項2の構成において、前記第1係止溝が、前記端縁から基板内方へ真直に延びており、前記第2係止溝が、前記端縁から基板内方へ真直に延びた入口部分と、この入口部分の内端から前記端縁に平行に延びる中間部分と、この中間部分の内端から前記端縁に向かって端縁の手前まで延びる内方部分とを有している。
【0016】前記電気機器の配線構造によれば、リード線の係止部において、第1係止溝に係止するリード線部分では、基板の端縁に平行な方向への移動が阻止され、第2係止溝に係止するリード線部分では、基板の端縁に平行な方向への移動と、基板内方への移動とが阻止されるので、リード線の中間部をより確実に配線基板の係止部に係止できる。また、第1係止溝へのリード線の係止は、リード線を基板の端縁から基板内方に向けて挿入することにより容易に係止でき、第2係止溝へのリード線の係止は、リード線を基板の端縁から基板内方、基板端縁に平行な方向、および基板端縁に向かう方向へと、この順序で挿入することにより、容易に係止できる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態に係る電気機器の配線構造を図1ないし図4にしたがって説明する。図1はこの実施形態の配線構造を有する電気機器である放射温度計を表側から見た斜視図を示し、図2はその温度計の裏蓋を開けた状態を裏側から見た斜視図を示す。図1に示す投射温度計1は、起動ボタン2を押して先端部の投射口3から計測対象物に向けて赤色のレーザビームを投射し、計測対象物を特定させるとともに、計測対象物から放射される赤外線を先端部の入射窓4から集光し、集光した赤外線エネルギを分析して、計測対象物の表面温度を表示部5に数値で表示するようにしたものである。
【0018】前記温度計1の裏側には、図2に示す裏蓋6で閉止される電池収容凹部7が形成されており、この電池収容凹部7に温度計1の電源であるスナップ端子式の乾電池(出力電圧9V)8が収容される。前記電池収容凹部7の下側、つまり温度計1の表側寄りには、温度計1の配線基板9が配置されており、その配線基板9と前記乾電池8とはスナップ端子10を介して電気的に接続されている。すなわち、先端部にスナップ端子10が接続されたリード線11の基端部は、前記配線基板9の表面9b(温度計1の表側を向く面)に半田付けされ、そのリード線11が前記電池収容凹部7の底面に形成された開口7aから電池収容凹部7側に引き出されており、そのスナップ端子10を前記乾電池8のスナップ端子8aに嵌合させることにより、配線基板9に乾電池8が電気的に接続される。
【0019】図3は前記配線基板9の一部を裏側から見た斜視図である。この配線基板9の一側部の端縁9aには、前記スナップ端子10のリード線11の中間部を係止する係止部15が形成されている。この係止部15は、リード線11が挿通されて、配線基板9の前記端縁9aに沿った方向Xへのリード線11の移動を阻止する2つの第1係止溝16A,16Bと、同じくリード線11が挿通されて、前記一方向Xおよびこれと直交する他の方向Yへのリード線11の移動を阻止する1つの第2係止溝17とからなる。
【0020】前記2つの第1係止溝16A,16Bは、配線基板9の前記端縁9aに開口し、基板内方へ真直に延びる切欠溝であり、これら両係止溝16A,16Bは、前記端縁9aに沿った方向Xに並べて近接配置されている。また、前記第2係止溝17は、配線基板9の前記端縁9aに開口し、端縁9aから基板内方へ真直に延びた入口部分17aと、この入口部分17aの内端から端縁9aに平行に延びる中間部分17bと、この中間部分17bの内端から端縁9aに向かって端縁9aの手前まで延びる内方部分17cとを有するフック状の切欠溝であり、前記第1係止溝16Bに隣接して配置されている。
【0021】前記配線基板9の表面9bに基端部が半田付けされた前記スナップ端子10のリード線11の中間部は、図4に示すように配線基板9の前記係止部15に係止される。すなわち、先ずスナップ端子10が配線基板9の裏面9c側に出るように、リード線11を第1係止溝16Aに挿通する。次に、スナップ端子10が配線基板9の表面9b側に出るように、隣接するもう一方の第1係止溝16Bにリード線11を挿通する。次に、スナップ端子10が配線基板9の裏面9c側に出るように、隣接する第2係止溝17の入口部分17aから中間部分17bへ、さらに中間部分17bから内方部分17cへとリード線11を挿通する。これにより、係止部15に係止するリード線11のうち、第1係止溝16A,16Bに係止する部分では、X方向への移動が阻止され、第2係止溝17に係止する部分では、X方向だけでなくこれと直交するY方向への移動も阻止される。その結果、スナップ端子10のリード線11の中間部が、配線基板9の係止部15に確実に係止される。また、リード線11の係止部15への係止作業も容易であるから、作業効率も向上する。さらに、配線基板9の端縁9aに開口する係止溝16A,16B,17にリード線11を係止させるので、リード線11が配線基板9上の回路部品と干渉するのを回避でき、リード線11を収まりよく配線できる。
【0022】このように、前記温度計1では、スナップ端子10のリード線11の中間部が配線基板9の前記係止部15に確実に係止されるので、乾電池8の交換等において、リード線11が引っ張られても、そのリード線11の基端部が半田付けされている配線基板9の表面9bの半田付け部18にストレスが掛かることがなく、このようなストレスによるリード線11の断線を防止できる。
【0023】図5および図6は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、先の実施形態における配線基板9の係止部15を、図5に示すようにしたものであり、その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。すなわち、この実施形態では、前記係止部15における第2係止溝17を、配線基板9の端縁9aから基板内方へ真直に延びた入口部分17aと、この入口部分17aの内端から端縁9aに平行に延びる中間部分17bとを有するL字状の切欠溝としたものであり、先の実施形態の場合のような中間部分17bの内端から端縁9aに向かって端縁9aの手前まで延びる内方部分17cが省略されている。第1係止溝16A,16Bについては先の実施形態の場合と同様であり、係止部15へのリード線11の係止手順も、図6に示すように先の実施形態の場合とほぼ同様である。
【0024】この実施形態の場合、図6に示すように、係止部15に係止するリード線11のうち、第2係止溝17に係止する部分では、Y方向へのリード線11の移動が阻止されるが、この部分でX方向への移動は阻止されない。しかし、X方向への移動の阻止は第1係止溝16A,16Bで果たされているので、リード線11は、係止部15全体により、X方向およびY方向への移動が阻止される。
【0025】なお、前記各実施形態では、乾電池8を電気機器の配線基板9に接続するスナップ端子10のリード線11を係止する場合について説明したが、これに限らず、例えば電気機器の本体に設けられる配線基板と、その本体に着脱自在に取り付けられる蓋体に設けられる電気部品とを電気的に接続するリード線を係止する場合にも、同様にして容易かつ確実に係止でき、蓋体を着脱する場合にリード線が引っ張られても、配線基板におけるリード線の半田付け部にストレスが掛かってリード線が断線するのを確実に防止できる。
【0026】
【発明の効果】以上のように、本発明の電気機器の配線構造によれば、電気機器の配線基板に設けた係止部に、電気部品接続用のスナップ端子のリード線の中間部が係止されるとともに、リード線の基端部が半田付けで前記配線基板に接続されており、前記係止部は、前記リード線が挿通されて直交する2方向のうちの少なくとも一方向に沿ったリード線の移動を阻止する第1係止溝と、リード線が挿通されて少なくとも他方向に沿ったリード線の移動を阻止する第2係止溝とを有しているので、スナップ端子への電気部品の着脱時などにおいてスナップ端子が引っ張られても、前記リード線の配線基板の半田付け部にストレスが掛かることがなく、リード線の断線を確実に阻止できる。また、前記係止部へのリード線の係止は、第1および第2の係止溝にリード線を挿通させるだけでよく、作業性がよく確実に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線構造を有する電気機器を表側から見た斜視図である。
【図2】同電気機器の裏蓋を開けた状態を裏側から見た斜視図である。
【図3】同電気機器の配線基板の一部を示す斜視図である。
【図4】同電気機器の配線基板の係止部にスナップ端子のリード線が係止された状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る配線構造を構成する配線基板の一部を示す斜視図である。
【図6】同配線基板の係止部にスナップ端子のリード線が係止された状態を示す斜視図である。
【図7】従来例の斜視図である。
【図8】他の従来例の斜視図である。
【図9】さらに他の従来例の斜視図である。
【符号の説明】
1…放射温度計(電気機器)、8…乾電池(電気部品)、9…配線基板、9a…端縁、10…スナップ端子、11…リード線、15…係止部、16A,16B…第1係止溝、17…第2係止溝、17a…入口部分、17b…中間部分、17c…内方部分、X,Y…直交する2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気機器の配線基板に設けた係止部に、電気部品接続用のスナップ端子のリード線の中間部が係止されるとともに、リード線の基端部が半田付けで前記配線基板に接続されており、前記係止部は、前記リード線が挿通されて直交する2方向のうちの少なくとも一方向に沿ったリード線の移動を阻止する第1係止溝と、リード線が挿通されて少なくとも他方向に沿ったリード線の移動を阻止する第2係止溝とを有している電気機器の配線構造。
【請求項2】 請求項1において、前記第1および第2係止溝は、前記配線基板の端縁に開口している電気機器の配線構造。
【請求項3】 請求項2において、前記第1係止溝は、前記端縁から基板内方へ真直に延びており、前記第2係止溝は、前記端縁から基板内方へ真直に延びた入口部分と、この入口部分の内端から前記端縁に平行に延びる中間部分と、この中間部分の内端から前記端縁に向かって端縁の手前まで延びる内方部分とを有している電気機器の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2001−119166(P2001−119166A)
【公開日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−299131
【出願日】平成11年10月21日(1999.10.21)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】