説明

電気機器収納用箱体

【課題】扉体の着脱作業が容易であるとともに防水性にも富んだ電気機器収納用箱体を提供する。
【解決手段】開口の上縁部及び下縁部に沿って、箱本体2の前面よりも前方へ突出する庇部材4、4を取り付け、各庇部材4にヒンジ孔9、9を設ける一方、扉体3にヒンジピン21を設置し、ヒンジピン21をヒンジ孔9に挿通させることで、扉体3を庇部材4、4に軸着した。当該構成により、箱本体2内部への水の浸入を防止機能、すなわち防水性の向上を図ることができる上、蝶番等を用いた従来の収納箱と比較して扉体3の着脱を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤や配電盤、制御盤等の各種電気機器を収納するための電気機器収納用箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤や配電盤等の各種電気機器を収納するための電気機器収納用箱体としては、特許文献1に開示されているようなものが従来一般的に知られている。
当該周知の電気機器収納用箱体は、前面に開口を有する箱本体と、該前面開口を開閉する扉体とからなり、扉体は、その左右何れか側縁に取り付けられた蝶番等のヒンジ部材を介して、箱本体の前面開口側縁に蝶着されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−100669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電気機器収納用箱体において、扉体を、閉塞時に箱本体前面の開口縁部をも覆うように外付けすると、扉体の着脱作業は容易となるものの、防水性に乏しいという問題がある。一方、扉体を、閉塞時に箱本体の前面開口内へ収納可能に取り付けると、防水性を若干向上することはできるものの、扉体の着脱作業が煩わしくなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、扉体の着脱作業が容易であるとともに防水性にも富んだ電気機器収納用箱体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、前面に開口を有する箱本体と、前記開口を開閉する扉体とを備え、前記扉体の一方側縁の上部及び下部を前記箱本体に軸着してなる電気機器収納用箱体であって、前記開口の少なくとも上縁部に沿って、前記箱本体の前面よりも前方へ突出する庇部材を取り付け、前記庇部材にヒンジ孔を設ける一方、前記扉体にヒンジピンを設置し、前記ヒンジピンを前記ヒンジ孔に挿通させることで、前記扉体を前記庇部材に軸着したことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、箱本体の開口周縁に、いったん前方へ折り曲げた後、更に上下左右外方へ折り返してなる水切り部を形成するとともに、庇部材を、前記水切り部の上方位置に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、箱本体の開口の少なくとも上縁部に沿って、箱本体の前面よりも前方へ突出する庇部材を取り付けている。したがって、上方からの箱本体内部への水の浸入を防止機能、すなわち防水性の向上を図ることができる。
また、庇部材にヒンジ孔を設ける一方、扉体にヒンジピンを設置し、扉体を庇部材に軸支させる構成としている。したがって、蝶番等を用いた従来の収納箱と比較して扉体の着脱を容易に行うことができるし、ヒンジ孔やヒンジ部材等が損傷した場合、箱本体までもを交換する必要がなく、廃棄物を削減することができ、環境問題に配慮した収納箱とすることができる。
さらに、請求項2に記載の発明によれば、箱本体の開口周縁に、いったん前方へ折り曲げた後、更に上下左右外方へ折り返してなる水切り部を形成するとともに、庇部材を、水切り部の上方位置に取り付けている。したがって、箱本体内部への水の浸入防止機能を一層向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態となる電気機器収納用箱体(以下、単に収納箱と称す)について、図面をもとに説明する。
【0009】
図1は、扉体3が開放された状態にある収納箱1を示した斜視説明図である。また、図2(a)は、箱本体2を示した斜視説明図であり、図2(b)は、扉体3を示した斜視説明図である。さらに、図3は、分解状態にある箱本体2を示した斜視説明図である。
収納箱1は、前面に開口を有する箱本体2と、箱本体2の前面上縁及び前面下縁に沿って固着され、箱本体2の一部として構成される庇部材4、4と、当該庇部材4、4に取り付けられ、箱本体2の開口を開閉する扉体3とからなる。
【0010】
箱本体2は、天板、左右両側板、背板、及び底板を有して前面を除く5面(上面、左右両側面、後面、及び下面)が閉塞された函状体に成形されてなり、内部に、分電盤や配電盤等の各種電気機器を収納可能としている。また、箱本体2の前面には、箱本体2内部と連通する開口が開設されているとともに、当該開口の上下左右を囲むように天板、左右両側板、及び底板と連結された開口縁部5が設けられており、開口縁部5の上縁部及び下縁部には、庇部材4、4を固着するためのネジ孔6、6・・が穿設されている。さらに、開口縁部5の開口側の端縁には、いったん前方へ折り曲げられた後に上下左右外方へ折り返されてなる水切り部12が設けられている。
【0011】
庇部材4は、側面視がL字状となる(図4に示す)ように帯状の板部材を折り曲げ、箱本体2の開口縁部5に当接される当接部4aと、箱本体2への固着状態において箱本体2前面よりも前方へ突出して開口の上方を覆う折り返し部4bとを設けてなるものであって、当接部4aには、開口縁部5に固着するための固着ネジ7、7を挿通可能な丸孔8、8が穿設されている。また、折り返し部4bの左右両部には、後述する扉体3のヒンジピン21を挿通可能なヒンジ孔9、9が穿設されている。
さらに、庇部材4の左右両端部には、折り返し部4bの左右両端面を被覆する樹脂製のカバー部材10、10が取り付けられている。該カバー部材10は、図5に示す如く、側方から折り返し部4b内へ挿入される挿入部10aと、当該挿入部10aと一体的に成形され、折り返し部4bの側端面を被覆するフランジ状のカバー部10bとからなり、挿入部10aの庇部材4への取付状態においてヒンジ孔9と対応する位置には、ヒンジピン21を挿通可能とされた挿通孔10cが設けられている。
【0012】
扉体3は、板状部材の上下左右縁部を後方へ折り曲げて函状体に成形してなるもので、該折り曲げ加工により形成された上面及び下面には、ヒンジ部材20のヒンジピン21を挿通させるための軸孔22が穿設されている。該軸孔22は、上面及び下面の左右両部に設けられており、右開き又は左開きの何れにも対応可能とされている(尚、本実施例の収納箱1では、左開きとされている)。
また、扉体3の右側縁内部であって、その上部及び下部には、ヒンジピン21を備えたヒンジ部材20が、ヒンジピン21を軸孔22から上方又は下方へ突出させた状態で設置されている。当該ヒンジ部材20は、図6に示す如く、出没動作可能に設けられたヒンジピン21、該ヒンジピン21を突出方向へ付勢するバネ部材23、ヒンジピン21を没入方向へ動作させるための操作部材24とからなる。尚、25は、ヒンジ部材20を扉体3に固着するためのネジである。
【0013】
以上のような箱本体2、扉体3、及び庇部材4、4を有する収納箱1は、箱本体2の上下縁部に庇部材4、4をネジ止めより固着するとともに、当該庇部材4、4の左又は右のヒンジ孔9、9にヒンジピン21、21を挿通させて扉体3を片開き可能に取り付けることにより、組み立てられる。
【0014】
上述したような収納箱1によれば、箱本体2の前面に設けられた開口縁部5の上縁部及び下縁部に庇部材4を固着しているため、上方からの箱本体2内部への水の浸入を防止機能、すなわち防水性の向上を図ることができる。
また、庇部材4にヒンジ孔9、9・・を設ける一方、扉体3に出没動作可能なヒンジピン21を有するヒンジ部材20、20を設置し、扉体3を庇部材4に軸支させる構成としている。したがって、蝶番等を用いた従来の収納箱と比較して扉体3の着脱を容易に行うことができるし、ヒンジ孔9やヒンジ部材20等が損傷した場合、箱本体2までもを交換する必要がなく、廃棄物を削減することができ、環境問題に配慮した収納箱1とすることができる。
【0015】
さらに、開口縁部5の開口側の端縁をいったん前方へ折り曲げた後に上下左右外方へ折り返すことにより、開口周縁に水切り部12を形成している。したがって、箱本体2内部への水の浸入防止機能を一層向上することができる。
加えて、扉体3を、板状部材の上下左右縁部を後方へ折り曲げた函状体に成形しているため、扉体3の強度を向上することができ、扉体3の歪みや破損を効果的に防止することができる。
【0016】
なお、本発明の収納箱に係る構成は、上記実施形態に記載の態様に何ら限定されるものではなく、箱本体、庇部材、及び扉体に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0017】
たとえば、庇部材を箱本体に固着するにあたり、庇部材と箱本体との間に防水性を有するシール部材を介在させてもよい。当該シール部材を介在させることにより、防水性の更なる向上を図ることができる。
また、扉体を庇部材に軸着するためのヒンジ部材についても適宜変更可能であって、L字状に折り曲げられた棒状部材とし、当該棒状部材を、軸孔を介して上方又は下方へ突出する突出位置と、扉体内部に収納される没入位置との間を移動可能に設けるとともに、扉体に、棒状部材を突出位置及び没入位置で維持するための切り欠き部を形成するといった構成を採用することも可能である。
【0018】
さらに、扉体に、扉体を閉塞状態で施解錠するための錠部材を設けてもよいことは言うまでもない。
加えて、上記実施形態では、庇部材を開口の上下両方に取り付けているが、庇部材を開口の上側のみに取り付け、扉体の下部は、箱本体から突設されたヒンジ孔を有する軸支片に軸支させる構成としてもよい。当該構成にあっても、防水性の向上、扉体の着脱作業の簡略化を図ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】扉体が開放された状態にある収納箱を示した斜視説明図である。
【図2】(a)は、箱本体を示した斜視説明図であり、(b)は、扉体を示した斜視説明図である。
【図3】分解状態にある箱本体を示した斜視説明図である。
【図4】固着状態にある庇部材を示した部分断面説明図である。
【図5】カバー部材を示した斜視説明図である。
【図6】扉体を取り付けた状態を示した部分断面説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・収納箱、2・・箱本体、3・・扉体、4・・庇部材、4a・・当接部、4b・・折り返し部、5・・開口縁部、6・・ネジ孔、8・・丸孔、9・・ヒンジ孔、10・・カバー部材、10a・・挿入部、10b・・カバー部、10c・・挿通孔、12・・水切り部、20・・ヒンジ部材、21・・ヒンジピン、22・・軸孔、23・・バネ部材、24・・操作部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する箱本体と、前記開口を開閉する扉体とを備え、前記扉体の一方側縁の上部及び下部を前記箱本体に軸着してなる電気機器収納用箱体であって、
前記開口の少なくとも上縁部に沿って、前記箱本体の前面よりも前方へ突出する庇部材を取り付け、前記庇部材にヒンジ孔を設ける一方、前記扉体にヒンジピンを設置し、
前記ヒンジピンを前記ヒンジ孔に挿通させることで、前記扉体を前記庇部材に軸着したことを特徴とする電気機器収納用箱体。
【請求項2】
箱本体の開口周縁に、いったん前方へ折り曲げた後、更に上下左右外方へ折り返してなる水切り部を形成するとともに、庇部材を、前記水切り部の上方位置に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の電気機器収納用箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−130208(P2009−130208A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304904(P2007−304904)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】