説明

電気機器収納箱

【課題】 螺着作業を必要とせず、設置現場において容易に組立が可能な電気機器収納箱を提供する。
【解決手段】 側板1、天板2、及び底板3の互いが当接する当接辺に、互いの板体同士を係合させて連結するための枠部連結手段を設けた。この枠部連結手段は、互いに箱本体内に向けて略45°の傾斜を有し、連結した際に互いに当接する帯状の当接板14と、その先端部に設けた弾性係止手段とで構成され、弾性係止手段は互いに係合する第1係合片17a、第2係合片17bとを有し、板体の当接板同士を密着させる押圧操作により、双方の第1係合片17aと第2係合片17bとが係合し、側板1、天板2、及び底板3同士は連結される。背板4は、各板体に設けられた帯状突起8bに係止されて組み付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器や通信機器等を収納する電気機器収納箱に関し、特に設置現場で組み立て可能な電気機器収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
配電用の電気機器を収納したり通信機器等の電子機器を収納する従来の収納箱は、アングル枠等を溶接接続してフレームを形成し、その周囲各面に閉塞板を溶接やネジ止めにより取り付けて形成したり、金属板を折り曲げて背板及び側板等を連続形成し、天板や底板等をその金属板に溶接等により取り付けてフレームレスで形成していた。
【0003】
しかし、上記フレーム構造或いはフレームレス構造のものは、何れも組み立てた状態で工場出荷され、保管及び運搬は完成された状態で成される。そのため、保管のために広いスペースが必要であったし、運搬する際も効率が悪く一度に多くの収納箱を運搬することができなかった。
そのため、特許文献1に開示されているような収納箱が提案されている。これは、個々の板体の端部に折り曲げ面を設け、この折り曲げ面同士をネジで螺着して連結し、収納箱を完成させる構成であり、組み立てるまでは各板を重ねて保管及び運搬ができるため、保管のためのスペースが僅かで済むし、運搬のコストも軽減することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−152430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、分解した状態で運搬できるが、その場合設置現場でのネジを用いた螺着組立作業が必要であり、設置作業に時間を要することになり作業者への負担が大きかった。また、ネジ等の小さな部材が必要なためその管理が面倒であった。
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、螺着作業を必要とせず、設置現場において容易に組立が可能な電気機器収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、左右側板、天板、底板、及び背板により5面を閉塞して電気機器を収納する箱本体を形成し、該箱本体の前面に扉を設けて開閉可能とした電気機器収納箱であって、左右側板、天板、及び底板同士の当接辺に、互いの板体を係合させて連結するための枠部連結手段を設けると共に、左右側板、天板、及び底板の背部に背板を連結するための背板連結手段を設け、前記枠部連結手段を、互いに箱本体内に向けて略45°の傾斜を有して当接辺の略全長に亘り形成され、連結した際に互いに当接する当接板と、その先端部に設けた弾性係止手段とで構成し、前記当接板同士を密着させる操作で、前記弾性係止手段同士が係止し、左右側板、天板、及び底板同士が連結されることを特徴とする。
この構成により、左右側板、天板、及び底板の各板体は、互いの当接部に全長に亘り略45°の傾斜を有する当接板を有するので、堅牢にでき扱い易い。そして、別途ネジ等の連結手段を使用する事無く押圧操作で連結でき、簡易な操作で左右側板、天板、及び底板の各板体同士を連結することが可能となる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、弾性係止手段は、当接板に延設した複数の弾性片と、その先端に設けた係合片とから成り、前記係合片は互いに係合する第1係合片と第2係合片とで構成されると共に、第1及び第2係合片が当接板の全長に亘り交互に設けられ、更に連結する板体同士で第1係合片と第2係合片とが対応するよう各板体の対向する当接辺は非対称に形成されてなることを特徴とする。
この構成により、弾性片の先端に係合片が設けられるので、弾性片の作用で第1係合片と第2係合片同士をスムーズに連結させることができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、左右側板、天板、及び底板は、何れも箱本体の背面の一部となる背面枠体を有し、背板連結手段を前記背面枠体の端部に備えたことを特徴とする。
この構成により、左右側板、天板、及び底板に背面の一部を設けるので、左右側板、天板、及び底板の各板体を更に堅牢にできる。また、背板を箱本体の背面に比べて小さくでき、扱い易くなる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、背板連結手段が、背面枠体の端部から前方へ突出した帯状突起であると共に、対応する背板周囲に前記帯状突起を把持する把持手段を有し、左右側板、天板、及び底板を連結した枠体内において、背板を前方から押圧操作することで背板と各板体とが連結されることを特徴とする。
この構成により、押圧操作により背板を組み付けでき、簡易な操作で箱本体を組み立てることができる。また、背板周囲に設けた把持手段により背板を堅牢にでき、背板が扱い易くなる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明において、左右側板、天板、及び底板の夫々に設けられた一対の当接板の一方の当接面にはパッキンが全長に亘り貼設されてなることを特徴とする。
この構成により、連結した左右側板、天板、及び底板の隙間はパッキンにより閉塞されるので、箱本体の気密性を高めることができ、雨水等の浸入を防ぐ事が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧操作で各板体を連結でき、ネジ等の連結手段を使用する事無く簡易な操作で連結することが可能となる。また、各板体は、周囲に板本体から折り曲げ形成した連結手段を有するので堅牢にでき扱い易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は本発明に係る電気機器収納箱の一例を示し、図1は蓋板を省略した箱本体の斜視図、図2は図1の分解斜視図、図3は図2の正面図を示している。各図において、1は側板、2は天板、3は底板、4は背板であり、各板体は鋼板を折り曲げて形成され、図示しない扉を取り付ける箱本体の正面は大きな開口部5を有している。尚、この実施形態では、開口部5が正方形であり、上下左右を閉塞する左右側板1,1、天板2、底板3の各板体は同一寸法で形成されている。
【0013】
図4は、側板1の斜視図を示し、6は隣接する天板2や底板3と連結する枠部連結手段を備えた当接辺(第1当接辺6a、第2当接辺6b)、7は前面側に配置される開口枠形成辺、8は背面側に配置される背面枠形成辺である。但し、後述するように、左右側板1,1、天板2、底板3の枠部連結手段は同一の構成であり、この実施形態では、側板1,天板2、底板3は同一の寸法であるため、図4の斜視図は天板2及び底板3の斜視図でもある。以下、側板1の構成を説明し、天板2、底板3の説明を省略する。
【0014】
開口枠形成辺7は、側板本体1aから略直角に折り曲げて形成された前面枠7aと、図示しない扉により閉塞した際に気密性を高めるための枠状突起10を形成するために、前面枠7aの端部から前方に向けて起立させた起立片7bとで形成されている。
一方、背面枠形成辺8は、側板本体1aから略直角に折り曲げて形成された箱本体の背面周囲を構成する背面枠体8aと、その先端を側板本体1aに平行となる前方に向けて折り曲げ形成した帯状突起8bとで形成されている。この帯状突起8bは、背板4を連結する背板連結手段となっている。
また、12は帯状のゴム片から成るパッキンであり、一対の当接辺6a,6bのうちの第1当接辺6aに貼着されている。
【0015】
このように、側板(及び天板、底板)の前面側に前面側枠部及び前面枠を設けると共に、背面側に背面枠体及び帯状突起を設けることで、側板を堅牢にでき、扱い易くなる。従って、他の天板、底板も堅牢にでき扱いやすいし、箱体自体を堅牢な構造にできる。
【0016】
第1当接辺6a、及び第2当接辺6bに形成された枠部連結手段は以下のように構成されている。側板本体1aの内面に対して45°の傾斜を有するよう折り曲げ形成された当接板14と、この当接板14の先端に設けられた弾性係止手段15とで構成され、弾性係止手段15は、当接板14の途中から先端に向けて設けられた弾性片16と、その先端に連続形成された係合片17とで構成されている。
当接板14の途中から先端に向けて複数のスリット14aが等間隔で設けられ、スリット14aにより分離された当接板14の個々の先端部が弾性片16となり、この弾性片16は、当接板14に直交する方向に弾性変形可能となっている。
【0017】
こうして形成された弾性片16のうち、所定の弾性片16に係合片17(17a,17b)が設けられ、第1係合片17aと第2係合片17bは互いに係合する形状となっている。第1当接辺6aは、第1係合片17aの間に第2係合片17bを配置して形成した3つの係合片から成る第1複合係合片19aを複数備えて構成され、他方の第2当接辺6bには、第2係合片17bの間に第1係合片17aを配置して形成した3つの係合片から成る第2複合係合片19bを複数備えて構成されている。
この第1複合係合片19a及び第2複合係合片19bが、板体を連結操作した際に、互いに当接して係合するよう第1当接辺6a及び第2当接辺6bの枠部連結手段は形成され、この第1当接辺6aと第2当接辺6bとが当接すると共に係合して、隣接する板体同士は連結される。
【0018】
図5は、第1係合片17aと第2係合片17bの係合状態を説明する要部断面図であり、(a)は係合前、(b)は係合状態を示している。この場合、一方の当接板14が側板1の当接板14であり、他方の当接板14が天板2或いは底板3の当接板14となる。そして、このような係合が1つの複合係合片19a,19bの中で交互に且つ互い違いに実施される。
【0019】
一方、背板4の周囲4辺には、側板1、天板2、及び底板3の背部に形成された帯状突起8bを把持する把持手段が設けられている。図6は背板4と側板1の連結手段を示し、(a)は連結前、(b)は連結状態を示している。図6において、21は背板4に形成された把持手段としての把持片である。この把持片21は、背板4の各辺をU字状に折り曲げ形成され、折り曲げた先端部には挿入した帯状突起8bを係止する係止段部21aが形成されている。そして、対応する帯状突起8bは、図示するように先端を折り返して形成した係止片22を有し、挿入した帯状突起8bは、係止片22が係止段部21aに係止して抜けないように形成されている。
【0020】
このように形成された各板体は次のように連結されて箱本体は組み立てられる。最初に左右側板1,1、天板2、底板3を連結して前後に開口された枠体を作成する。尚、この実施形態では、周囲の各面を構成する板体は同一形状の板体が使用される。
連結は夫々の板体の第1当接辺6aと第2当接辺6bを合わせて合致させるよう押圧操作して行われる。この操作で、第1係合片17aと第2係合片17bとが係合する。そして、第1係合片17aの間に第2係合片17bを配置した第1複合係合片19aと、第2係合片17bの間に第1係合片17aを配置して形成した第2複合係合片19bとが係合することで歯合状に係合動作し、結果として係止作用を発揮し外れ難くなる。また、係合後は当接板14の作用により連結部は直交した安定状態を保つことができるし、当接板14に貼着したパッキン12により連結部は密着し、閉塞される。
尚、この連結操作は、各板体の連結に対して任意の順番で実施すれば良く、連結部の連結作用は周囲4面の連結に対して同様に作用し、強固に連結される。
【0021】
枠体を作成した後、背板4を組み付ける。枠体の作成により、個々の板体の帯状突起8bが連結されて、箱本体内奧部に枠状の突起が形成され、この突起に背板4を係止させることで背板4は組み付けられる。背板は、前面開口部5から挿入し、この個々の帯状突起8bに把持片21を合致させて押圧操作することで、把持片21内に各帯状突起8bが入り込み、連結さられる。
尚、開放された前面に取り付けられる扉は、前面縁部に設けられた枠状突起10に蝶番を用いて取り付ければよい。
【0022】
このように、別途ネジ等の連結手段を使用する事無く、簡易な操作で左右側板、天板、底板、及び背板の各板体同士を連結することができ、設置現場において螺着作業を必要とせず、容易に組み立てることができる。
そして、左右側板、天板、及び底板の各板体は、対向する辺に45°の傾斜を有する当接板を備え、各板体の背部には背面の一部を成す背面枠形成辺を備え、更に各板体の前面側には開口枠形成辺を備えるので、左右側板、天板、及び底板の各板体を堅牢にできる。また、背板を箱本体の背面に比べて小さくでき、扱い易くなる。
また、弾性片の先端に係合片が設けられているので、弾性片の作用で第1係合片と第2係合片同士をスムーズに連結させることができる。
更に、連結した左右側板、天板、及び底板の間はパッキンにより閉塞されるので、箱本体の気密性を高めることができ、雨水等の浸入を防ぐ事が可能となる。
【0023】
尚、上記実施形態では、側板1、天板2、底板3を同一の板体で構成しているが、長方形状の箱体の場合は、左右側板1,1を同一形状の板体、天板2と底板3を同一形状の板体として2種類の板体で構成すればよい。また、周囲4面を構成する板体や背板4を孔や窓等の無い板体としているが、電線や信号線を挿通するための穴を穿設しても良く、同様に連結できるし、各板体の強度が大きく劣化するようなことがない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
上記電気機器収納箱体は、ネジ等の固定手段を使用せずに組み立てる事ができる金属製箱体であり、一面を開放可能とした金属製箱体として汎用性を有し、他の用途でも使用できる。例えば、物品を収納するロッカーや整理棚としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電気機器収納箱の実施形態の一例を示し、扉を省略した箱本体の斜視図である。
【図2】図1の箱本体の分解斜視図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】側板の斜視図である。
【図5】側板と天板或いは底板との連結構造を示す要部断面説明図であり、(a)は分離した状態、(b)は連結した状態を示している。
【図6】側板と背板の連結構造を示す要部断面説明図であり、(a)は分離した状態、(b)は連結した状態を示している。
【符号の説明】
【0026】
1・・側板、2・・天板、3・・底板、4・・背板、5・・開口部、6・・当接辺、8a・・背面枠体、8b・・帯状突起(背板連結手段)、12・・パッキン、14・・当接板、15・・弾性係止手段、16・・弾性片、17・・係合片、17a・・第1係合片、17b・・第2係合片、21・・把持片(把持手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側板、天板、底板、及び背板により5面を閉塞して電気機器を収納する箱本体を形成し、該箱本体の前面に扉を設けて開閉可能とした電気機器収納箱であって、
左右側板、天板、及び底板同士の当接辺に、互いの板体を係合させて連結するための枠部連結手段を設けると共に、左右側板、天板、及び底板の背部に背板を連結するための背板連結手段を設け、
前記枠部連結手段を、互いに箱本体内に向けて略45°の傾斜を有して当接辺の略全長に亘り形成され、連結した際に互いに当接する当接板と、その先端部に設けた弾性係止手段とで構成し、
前記当接板同士を密着させる操作で、前記弾性係止手段同士が係止し、左右側板、天板、及び底板同士が連結されることを特徴とする電気機器収納箱。
【請求項2】
弾性係止手段は、当接板に延設した複数の弾性片と、その先端に設けた係合片とから成り、前記係合片は互いに係合する第1係合片と第2係合片とで構成されると共に、第1及び第2係合片が当接板の全長に亘り交互に設けられ、
更に連結する板体同士で第1係合片と第2係合片とが対応するよう各板体の対向する当接辺は非対称に形成されてなる請求項1記載の電気機器収納箱。
【請求項3】
左右側板、天板、及び底板は、何れも箱本体の背面の一部となる背面枠体を有し、背板連結手段を前記背面枠体の端部に備えて成る請求項1又は2記載の電気機器収納箱。
【請求項4】
背板連結手段が、背面枠体の端部から前方へ突出した帯状突起であると共に、対応する背板周囲に前記帯状突起を把持する把持手段を有し、左右側板、天板、及び底板を連結した枠体内において、背板を前方から押圧操作することで背板と各板体とが連結される請求項3記載の電気機器収納箱。
【請求項5】
左右側板、天板、及び底板の夫々に設けられた一対の当接板の一方の当接面にはパッキンが全長に亘り貼設されてなる請求項1乃至4の何れかに記載の電気機器収納箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−300702(P2007−300702A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124281(P2006−124281)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】