説明

電気機器収納箱

【課題】 溶接をすることなく雨水等の浸入を防ぐことができる水切り枠を備えた電気機器収納箱を提供する。
【解決手段】 水切り枠7を、開口部6の左右辺に沿って形成した縦枠7aと、開口部6上辺に沿って形成した横枠7bとで構成し、夫々独立させて形成した。横枠7bは天板3から連続形成して左右の縦枠7aの上端部を覆う幅を有し、左右に突出した端部は折り曲げて片17を有すると共に、縦枠7aは側板2から連続形成して側板2から縦枠7aに至る側板側前面枠11aと、天板から横枠に至る天板側前面枠11bとに重なり部を設け、天板側前面枠11bを側板側前面枠11aの前側で重なるよう配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器や通信機器等を収納する電気機器収納箱に関し、特に屋外で使用される電気機器収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
配電用の電気機器を収納したり通信機器等の電子機器を収納する電気機器収納箱は、前面を開口して内部に機器を収納するよう構成した箱本体と、開口された前面を閉塞するために箱本体に蝶着された扉板とで構成され、溶接により各面板が連結されていた。
このような収納箱のうち、屋外に設置されるものは、箱本体の開口部周縁にフランジ状に突出させた水切り枠が設けられている。そして、対向する扉板の裏面にはゴム製のパッキンが取り付けられ、扉板で閉塞した際に開口部周縁部に隙間が発生しないようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
一方で、溶接工程が無く、ネジ止めによる組み立てを可能として設置現場での組み立てを可能として、運搬や保管のコストを削減できるようにした電気機器収納箱がある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−321450号公報
【特許文献2】特開2003−318560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の開口部周縁に形成された水切り枠は、箱本体と扉体の間に雨水等が入り込んでも、電気機器を収納した内部にまで雨水等が入り込まないように、上部に設けた横枠と左右に設けた縦枠を溶接して連結されていたため、水切り枠の作製が面倒であった。
一方で、現場で組み立てるタイプの収納箱は、溶接工程を設けることなく防水性能を発揮できる水切り枠を作製することが難しく、屋外で使用するものに対して適用するこが難しかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、溶接をすることなく雨水等の浸入を防ぐことができる水切り枠を備えた電気機器収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、左右側板、天板、底板、及び背板の各板体により5面を閉塞して電気機器の収納空間を形成した箱本体と、当該箱本体の前面開口部を閉塞するために箱本体に蝶着した扉体とを有し、前記箱本体の開口部周縁に水切り枠を備えた電気機器収納箱において、前記水切り枠は、開口部の左右辺に沿って設けた縦枠と、開口部上辺に沿って設けた横枠とを備えて夫々独立して形成され、前記横枠は左右に設けた前記縦枠を越える長さを有して、その端部は下方に折り曲げた折り曲げ片を備えて成ることを特徴とする。
この構成により、水切り枠の上部を構成する横枠が左右の縦枠上部を覆って、折り曲げ片が雨水の回り込みを防ぎ、更に縦枠と横枠との間に僅かに隙間があっても雨水等がその隙間から侵入するのを防ぐことができる。そのため、溶接作業等の接続操作をしなくても良好な水切り枠を設けることができ、水切り枠を容易に作製できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、縦枠は側板から連続形成される一方、横枠は天板から連続形成され、側板から縦枠に至る側板側前面枠と、天板から横枠に至る天板側前面枠とが重なり部を有し、天板側前面枠が側板側前面枠の前側に配置されることを特徴とする。
この構成により、天板側前面枠が側板側前面枠の前に配置されて両者が重ねられるので、天板と側板の連結部を雨水が浸入し難い構造にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水切り枠の上部を構成する横枠が左右の縦枠上部を覆うし、折り曲げ片が雨水の回り込みを防ぐし、更に縦枠と横枠との間に僅かに隙間があっても雨水等がその隙間から侵入するのを防ぐことができる。そのため、溶接作業等の接続操作をしなくても良好な水切り枠を設けることができ、水切り枠を容易に作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る電気機器収納箱の一例を示し、図1は斜視図、図2は扉体を外した箱本体の正面図である。箱本体1は、側板2、天板3、底板4、背板5を備え、前面開口部6の周囲には水切り枠7が設けられている。そして、扉板8が箱本体1の前面の右端部に蝶着されている。
【0010】
各板体は夫々鋼板を折り曲げて分離形成され、夫々端部には隣接する板体を連結するための連結手段が設けられている。また、箱本体1は周囲縁部から水切り枠7の形成部(開口部6)までの前面を閉塞する平坦な前面枠11を有し、水切り枠7はこの前面枠11を介して、側板2或いは天板3から連続形成されている。
尚、この水切り枠7は、開口部6の左右辺及び上辺に設けられ、開口部6の下辺は扉板8で閉塞した際に開口部6を閉塞する為に前方に突出させた帯状の枠辺12のみ形成されている。
【0011】
扉板8は箱本体1の前面を覆い、側辺8aを周囲に有して水切り枠7を収容する奥行きを有するよう形成され、左側端部に開閉操作するためのハンドル13を備えている。また、水切り枠7は、扉体8を閉じた際に開口部6を閉塞した際に箱本体1内への水の浸入を防ぐ為に前方に突出させた帯状の枠辺15と、扉体8の裏面に設置されたパッキン(図示せず)に密着させて雨水の浸入を防止するための閉塞枠16とを有し、断面L字状に形成されている。
【0012】
図3は側板2(右側板)と天板3の連結構造を示している。この図3に示すように、側板2、天板3は、周囲4辺が直角に折り曲げられて周囲を囲む縁体18が形成され、強度アップが図られると共に、隣接する板体との連結面が形成されている。そして、水切り枠7は左右に設けられた縦枠7aと上部に設けられた横枠7bとが独立して形成され、縦枠7aは側板2と一体に形成され、横枠7bは天板3と一体に形成されている。
【0013】
天板3は、前面側に水切り枠7の上部を覆う庇部19が連続形成され、下側に折り返して庇部19を2重に形成し、更に下方に折り曲げて前面枠11の一部を成す上部前面枠11bと横枠7bが形成されている。また、上部前面枠11bは、上端が天板3の幅と略等しく形成され、下部は横枠7bにかけて窄み形成されているし、天板3の左右の縁体18には側板2と連結するための爪片20が突設され、連結手段の一方が形成されている。更に、この横枠7bのうち略水平な底面を構成する枠辺15は、左右端部に突出部を有し、下方に折り曲げた折り曲げ片17が形成されている。
【0014】
一方、側板2の前面側には前面枠11の一部を成す側部前面枠11aと縦枠7aが折り曲げ形成されている。側部前面枠11aは側板2と同一の幅(高さ)を有し、縦枠7aまで平坦な長方形で形成され、縦枠7aは横枠7bの下部に配置されるよう形成されている。また、側板2上面の縁体18には天板3に設けられた爪片20を挿入にて連結するためのスリット状の挿入孔21が形成され、連結手段の他方が形成されている。
【0015】
このように形成された側板2と天板3は互いの連結手段を係合させて連結される。即ち、爪片20が挿入孔21に挿入され、挿入された爪片20は折り曲げられる。そして、重ね合わせられた前面枠11の4隅は裏面にL字状の補強金具23が組み付けられ、前面側からネジ止めされる。
尚、箱本体1を構成する他の背板2、底板4も同様に周囲に縁体が形成されているし、互いに隣接するための爪片或いは挿入孔を備えている。
【0016】
図4は、図2のA部の拡大図を示し、水切り枠7の縦枠7aと横枠7bの連結部を示している。この図4に示すように、横枠11bは縦枠11aの上端の位置に対して幅Tだけ突出させて長く形成され、縦枠11aは横枠11bの下面に当接するか、僅かに隙間を有するよう配置されている。また、ハッチング部は上部前面枠11bと側部前面枠11aの重なり部Bを示している。天板3から形成された上部前面枠11bは側板2から形成された側部前面枠11aの前方に配置されて重ね合わせられ、下端部が幅Tの重なり部Bを有し、上部に向けて更に広い重なり部Bが形成されている。
尚、横枠11bの端部突出量(幅T)は、雨水の浸入を防止するのに加えて重なり部Bの幅と関係するため、少なくとも10mm程度設けることが好ましく、十分な重なり部Bの形成が可能となる。また、折り曲げ片17は5mm程度の長さとするとで、十分な隙間の閉塞作用を奏することができる。
【0017】
このように、水切り枠の上部を構成する横枠が左右の縦枠上部を覆って、折り曲げ片が雨水の回り込みを防ぎ、更に縦枠と横枠との間に僅かに隙間があっても雨水等がその隙間から侵入するのを防ぐことができる。そのため、溶接作業等の接続操作をしなくても良好な水切り枠を設けることができ、水切り枠を容易に作製できる。
また、天板側前面枠を側板側前面枠の前に配置して重ねることで、固着操作しなくても防水性能を維持することが可能となる。
更に、水切り枠の作製に溶接工程がないので、収納箱全体の溶接工程を無くして作製することが可能となり、屋外で設置する収納箱であっても設置する現場まで分解した状態で持ち込む事が可能となり、作業者の負担を軽減できる。
【0018】
尚、上記実施形態では、水切り枠7の横枠7bを左右に直線状に形成しているが、中央付近から左右に僅かに下り傾斜を設けて形成しても良い。また、横枠7bの左右端部に設けられた折り曲げ片17は下方に垂下するよう折り曲げなくても良く傾斜させる程度でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電気機器収納箱の実施形態の一例を示し、扉板を開けた状態の斜視図である。
【図2】図1の正面図であり、扉板を外した状態を示している。
【図3】側板と天板の連結構造を示す要部斜視図であり、(a)は連結前、(b)は連結後を示している。
【図4】図2のA部拡大図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・箱本体、2・・側板、3・・天板、4・底板、5・・背板、6・・開口部、7・・水切り枠、7a・・縦枠、7b・・横枠、8・・扉板、17・・折り曲げ片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側板、天板、底板、及び背板の各板体により5面を閉塞して電気機器の収納空間を形成した箱本体と、当該箱本体の前面開口部を閉塞するために箱本体に蝶着した扉体とを有し、前記箱本体の開口部周縁に水切り枠を備えた電気機器収納箱において、
前記水切り枠は、開口部の左右辺に沿って設けた縦枠と、開口部上辺に沿って設けた横枠とを備えて夫々独立して形成され、前記横枠は左右に設けた前記縦枠を越える長さを有して、その端部は下方に折り曲げた折り曲げ片を備えて成ることを特徴とする電気機器収納箱。
【請求項2】
縦枠は側板から連続形成される一方、横枠は天板から連続形成され、側板から縦枠に至る側板側前面枠と、天板から横枠に至る天板側前面枠とが重なり部を有し、天板側前面枠が側板側前面枠の前側に配置される請求項1記載の電気機器収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−166601(P2008−166601A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356206(P2006−356206)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】