説明

電気機器用筐体

【課題】スライド移動によりロック及びロック解除する上蓋及び下蓋を有する電気機器用筐体に関し、一方の蓋のスライド移動を行う際のユーザの利便性を維持し得る電気機器用筐体を提供する。
【解決手段】プリンタ筐体1は、上面に固定カバー体20、上蓋30、下面に下蓋40を有する。上蓋30は、用紙収容部25を覆い、スライド移動及び回動可能に配設される。上蓋30は、上蓋ロック方向Cへのスライド移動でロックされ、上蓋解除方向Oへのスライド移動でロック解除される。下蓋40は、電池収納部45を覆い、下蓋ロック方向Lへのスライド移動でロックされ、下蓋解除方向Uへのスライド移動でロック解除される。上蓋30のスライド移動時に、上蓋30に対する力の反力が下蓋40に作用した場合、下蓋40のスライド規制片42と電池収納部45の凸部48が当接し、下蓋40の下蓋解除方向Uへのスライド移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド移動によりロック及びロック解除する上蓋及び下蓋を有する電気機器用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に電気機器を収容する電気機器用筐体に関し、当該筐体の一面に開口部を有し、当該開口部を閉塞可能な蓋を有するものが存在する。そして、当該蓋をスライド移動させることにより、蓋が開口部を閉塞した状態を維持するロック状態と、蓋が開口部を開放可能な解除状態にし得る電子機器用筐体も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、携帯用のプリンタ装置に係る発明が記載されている。特許文献1記載のプリンタ装置の筐体は、印刷に係る電子機器を収納すると共に、被記録媒体である用紙を収納する用紙収納部を有している。そして、用紙収納部に連通する開口部には、蓋が当該用紙収納部の上方を覆うように配設されている。当該蓋は、スライド移動可能な支軸により、筐体の一端部に回動可能に軸支されている。そして、蓋が用紙収納部に係る開口部を閉塞した状態で、当該蓋を筐体の他端部方向へスライド移動させると、当該蓋は、他端部に形成されたロック機構によりロック状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−160238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、電子機器用筐体は、相互に対向する2つの面(例えば、上面と下面)に、それぞれ、スライド移動によりロック状態、解除状態となる蓋を設け得る。この場合において、一方の蓋をスライド移動させ、ロック状態若しくは解除状態に移行させる際には、蓋が配設されている2つの面に対して、相互に対向する力を加えることで、当該電子機器用筐体を固定支持しつつ、対象となる蓋を電子機器用筐体に対して相対的にスライド移動させる必要がある。
【0006】
そして、この場合において、上記相互に対向する力を2つの蓋を介して、電気機器用筐体に作用させた場合、一方の蓋をスライド移動させる力の反力により、他方の蓋もスライド移動してしまう場合がある。例えば、電気機器用筐体を、両手の親指で一方の蓋に、両手の他の指で他方の蓋に力を作用させるように把持した場合、一方の蓋を両手の親指でスライド移動させる際に、他方の蓋もスライド移動してしまう場合がある。このような場合、ユーザの意図と無関係に、他方の蓋がロック状態又は解除状態となってしまい、ユーザに対する利便性を欠いてしまう。
【0007】
本発明は、スライド移動によりロック及びロック解除する上蓋及び下蓋を有する電気機器用筐体に関し、一方の蓋のスライド移動を行う際のユーザの利便性を維持し得る電気機器用筐体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る電気機器用筐体は、上面と下面を有する箱状に形成され、内部に電気機器を収容する電気機器用筐体であって、前記上面において前記電気機器用筐体の一端側に形成された上面開口と、前記下面における前記一端側に形成された下面開口とを有する筐体本体と、前記一端側から当該一端側と対向する他端側へ向かう第1方向に従って、前記上面開口を覆う所定の上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記他端側から前記一端側へ向かう第2方向に従って、前記上蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される上蓋と、前記第1方向に従って、前記下面開口を覆う所定の下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記第2方向に従って、前記下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除されると共に、前記筐体本体内部に対向する内側面における前記下面開口の開口縁に対応する所定位置に形成された第1規制部と、を有する下蓋と、前記下面開口の開口縁であって、スライド移動する下蓋の第1規制部に対応する所定位置に形成され、前記第1方向及び前記第2方向への下蓋のスライド移動に伴い、前記第1規制部と当接する第2規制部と、を備え、前記下蓋は、前記下面方向への成分を含み、前記上蓋をスライド移動させる力が、当該上蓋に対して作用すると共に、前記上面方向への成分を含み、前記筐体本体を支持する力が前記下蓋に作用した場合に、当該下蓋の第1規制部と前記第2規制部の当接により、スライド移動を規制されることを特徴とする。
【0009】
当該電気機器用筐体は、当該電気機器用筐体の一端側において、上面に形成された上面開口を覆う上蓋と、下面に形成された下面開口を覆う下蓋と、を有する。上蓋は、第1方向に従って上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、第2方向に従って上蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される。そして、下蓋は、第1方向に従って下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、第2方向に従って下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される。当該電気機器用筐体において、上蓋又は下蓋のスライド移動を行う場合、電気機器用筐体は、上面から下面へ向かう力と、下面から上面へ向かう力により、筐体本体を固定しつつ、上蓋又は下蓋をスライド移動させることを要する。上蓋ロック位置へ上蓋を第1方向に従ってスライド移動する際に、下蓋に対して、下面から上面へ向かう力を作用させていると、上蓋を第1方向へスライド移動させる力の反力が、下蓋を第2方向へ移動させる力として作用する。当該電気機器用筐体においては、下蓋が第2方向へスライド移動しようとする際に、下蓋の第1規制部と第2規制部が当接するので、下蓋の第2方向へのスライド移動が規制される。これにより、当該電気機器用筐体は、上蓋のロックを行う際に、下蓋のロックが解除されることを防止し得る。又、下蓋には、下面から上面へ向かう力が作用するため、第1規制部と第2規制部は、より多くの面をもって当接する。従って、当該電気機器用筐体は、上蓋のロックを行う際における電気機器用筐体の固定に要する力を有効に活用しつつ、この場合における下蓋のロック解除を、確実に防止し得る。
【0010】
そして、請求項2記載の電気機器用筐体は、上面と下面を有する箱状に形成され、内部に電気機器を収容する電気機器用筐体であって、前記上面において前記電気機器用筐体の一端側に形成された上面開口と、前記下面において前記一端側と対向する他端側に形成された下面開口とを有する筐体本体と、前記一端側から前記他端側へ向かう第1方向に従って、前記上面開口を覆う所定の上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記他端側から前記一端側へ向かう第2方向に従って、前記上蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される上蓋と、前記第2方向に従って、前記下面開口を覆う所定の下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記第1方向に従って、前記下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除されると共に、前記筐体本体内部に対向する内側面における前記下面開口の開口縁に対応する所定位置に形成された第1規制部と、を有する下蓋と、前記下面開口の開口縁であって、スライド移動する下蓋の第1規制部に対応する所定位置に、前記第1方向及び前記第2方向への下蓋のスライド移動に伴い、前記第1規制部と当接する第2規制部と、を備え、前記下蓋は、前記下面方向への成分を含み、前記上蓋をスライド移動させる力が、当該上蓋に対して作用すると共に、前記上面方向への成分を含み、前記筐体本体を支持する力が前記下蓋に作用した場合に、当該下蓋の第1規制部と前記第2規制部の当接により、スライド移動を規制されることを特徴とする。
【0011】
当該電気機器用筐体は、当該電気機器用筐体の一端側の上面に形成された上面開口を覆う上蓋と、電気機器用筐体の他端側の下面に形成された下面開口を覆う下蓋と、を有する。上蓋は、第1方向に従って上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、第2方向に従って上蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される。そして、下蓋は、第2方向に従って下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、第1方向に従って下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される。当該電気機器用筐体において、上蓋又は下蓋のスライド移動を行う場合、電気機器用筐体は、上面から下面へ向かう力と、下面から上面へ向かう力により、筐体本体を固定しつつ、上蓋又は下蓋をスライド移動させることを要する。上蓋を上蓋ロック位置から第2方向に従ってスライド移動する際に、下蓋に対して、下面から上面へ向かう力を作用させていると、上蓋を第2方向へスライド移動させる力の反力が、下蓋を第1方向へ移動させる力として作用する。当該電気機器用筐体においては、下蓋が第1方向へスライド移動しようとする際に、下蓋の第1規制部と第2規制部が当接するので、下蓋の第1方向へのスライド移動が規制される。これにより、当該電気機器用筐体は、上蓋のロック解除を行う際に、下蓋のロックが解除されることを防止し得る。又、下蓋には、下面から上面へ向かう力が作用するため、第1規制部と第2規制部は、より多くの面をもって当接する。従って、当該電気機器用筐体は、上蓋のロック解除を行う際における電気機器用筐体の固定に要する力を有効に活用しつつ、この場合における下蓋のロック解除を、確実に防止し得る。
【0012】
又、請求項3記載の電気機器用筐体は、請求項1又は請求項2記載の電気機器用筐体であって、前記下面開口は、前記電気機器の駆動源となる電池が収納される電池収納部における開口部を構成し、前記下蓋は、前記電池収納部に臨む電池蓋であることを特徴とする。
【0013】
当該電気機器用筐体は、上蓋のスライド移動に伴い、電池蓋のロックが解除される事態を防止し得る。即ち、当該電気機器用筐体は、ユーザの意図と無関係に電池蓋のロックが解除される事態を防止することができ、電池収納部内に収納されていた電池の脱落等に起因する事故等を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るプリンタ筐体の外観斜視図である。
【図2】プリンタ筐体の断面図であり、(a)は、図1におけるA−A断面を示し、(b)は、図1におけるB−B断面を示す。
【図3】上蓋ロック機構部を示す断面図である。
【図4】プリンタ筐体下面側の構成を示す説明図である。
【図5】下蓋の構成を示す説明図である。
【図6】下蓋におけるロック状態、解除状態に関する説明図であり、図4におけるC−C断面を示す。
【図7】第2実施形態に係るプリンタ筐体の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電気機器用筐体を、携帯用プリンタ装置100の筐体に具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態に係る携帯用プリンタ装置100の概略構造について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、携帯用プリンタ装置100は、プリンタ筐体1を有している。プリンタ筐体1は、平面視「A6サイズ」又は「A7サイズ」程度の長方形で、厚みが略2cm程度の略直方体形状をなす。そして、プリンタ筐体1は、本体ケース10と、固定カバー体20と、上蓋30と、下蓋40とにより構成される。プリンタ筐体1は、後述する印刷機構部50等の電気機器等を、その内部に収容する。
【0017】
本体ケース10は、略箱型に形成されており、プリンタ筐体1の主要部を構成する。本体ケース10上面において、固定カバー体20が、本体ケース10の長辺方向の一端部側に配設されている。当該固定カバー体20の下方には、後述する印刷機構部50が配設される。
【0018】
プリンタ筐体1の上面は、固定カバー体20と、上蓋30により構成される。上蓋30は、印刷機構部50に隣接する用紙収容部25の上方を覆うように配設されており、固定カバー体20と対向する端部において、上蓋支持機構部31により回動可能に軸支されている(図2(b)参照)。上蓋支持機構部31は、上蓋30の回動軸をプリンタ筐体1の長辺方向に沿ってスライド移動可能に配設されている。これにより、上蓋30は、用紙収容部25の上方を覆った状態(即ち、上蓋30を閉じた状態)において、固定カバー体20に接近する方向(以下、上蓋ロック方向C)及び固定カバー体20から離間する方向(以下、上蓋解除方向O)にスライド移動し得る。
【0019】
そして、上蓋30は、板バネ32と、ロック片33を有する。板バネ32は、上蓋30の用紙収容部25側に配設されている。図2(a)に示すように、上蓋30を閉じた場合、用紙収容部25内の用紙5を下方へ押圧し、ピックアップローラ54上面に押し付ける。ロック片33は、上蓋30における固定カバー体20側の辺の両端部近傍に配設されている。上蓋30を閉じ、上蓋ロック位置にスライド移動した場合、ロック片33は、後述する上蓋ロック機構部60と協働することで、上蓋30の開放動作(即ち、上方向への回動動作)を制限する。
【0020】
尚、上蓋30が当該上蓋ロック位置から所定の上蓋解除位置(図2(b)参照)まで、上蓋解除方向Oへスライド移動すると、当該上蓋30は、上蓋ロック機構部60による制限が解除され、上蓋30の開放動作、及び上蓋30の閉塞動作(即ち、下方向への回動動作)を自在に行い得る。上蓋ロック機構部60については、後に詳細に説明する。
【0021】
用紙収容部25は、上方が開放された箱型に形成されており、本体ケース10内部に配設された仕切板25Aが当該用紙収容部25の底面を構成する。用紙収容部25は、上蓋30を開いた場合(図2(a)参照)、用紙収容部25の開口部を介して、被記録媒体である用紙5を積層状態で複数枚収容し得る。尚、用紙5としては、カットシート状の感熱紙が用いられる。感熱紙は、感熱発色タイプや感熱穿孔タイプ等を含む。
【0022】
そして、排紙口15は、上蓋ロック位置に位置する上蓋30と固定カバー体20の間に形成される。排紙口15は、用紙収容部25から印刷機構部50を経由して搬送された用紙5を、プリンタ筐体1外部へ排紙する。上蓋30の排紙口15側の端部近傍には、一組の指置き部16が、携帯用プリンタ装置100の幅方向両側に形成されている。当該指置き部16は、上蓋30表面に滑り止め加工を施すことで形成される。上蓋30のスライド移動等を行う際に、ユーザは、自己の指(例えば、親指)を当該指置き部16に置いて上蓋30の操作を行うことで、確実に小さい力で上蓋30のスライド移動等を行い得る。
【0023】
ここで、携帯用プリンタ装置100における印刷機構部50について、図面を参照しつつ説明する。印刷機構部50は、サーマルヘッド51と、プラテンローラ52と、ペーパーガイド53と、ピックアップローラ54と、分離ブロック55を有している。
【0024】
前記サーマルヘッド51は、ラインヘッド型のサーマルヘッドであり、用紙5の搬送方向に直交する方向に、複数の発熱体部を有している。携帯用プリンタ装置100は、用紙5の搬送方向に直交する方向へ延びるライン毎に文字や画像等を印刷し得る。尚、1ライン印刷する際の印刷幅は、用紙5における短編の幅に略等しく設定されている。又、当該サーマルヘッド51は、回動枢支部を中心にして回動可能に軸支されており、回動枢支部を中心に回動することで、プラテンローラ52の上側周面に接離可能である。又、サーマルヘッド51の背面(上面側)には、コイルスプリング58が係止されている。サーマルヘッド51の発熱体部は、コイルスプリング58により、プラテンローラ52側に付勢され、プラテンローラ52の上面に当接する。
【0025】
プラテンローラ52は、サーマルヘッド51の発熱体部の下方において、回転自在に軸支されており、駆動モータ(図示せず)の駆動に従って回転駆動する。当該プラテンローラ52は、用紙5を排紙口15へ向かって搬送すると共に、プラテンローラ52上側周面に搬送された用紙5を、サーマルヘッド51の発熱体部と共に挟持する。これにより、サーマルヘッド51の発熱体部の熱は、感熱紙である用紙5に確実に伝達される。これにより、携帯用プリンタ装置100は、所望の印刷を用紙5に施し得る。
【0026】
ペーパーガイド53は、用紙収容部25から搬送された用紙5を、プラテンローラ52の外周面に沿って、サーマルヘッド51の発熱体部とプラテンローラ52の上面へ案内する。当該ペーパーガイド53は、プラテンローラ52の外周面と対向する面に曲面を有している。当該曲面は、プラテンローラ52の外周面に沿って形成されている。又、ペーパーガイド53は、当該ペーパーガイド53の背面側に配設された押圧コイルバネ56により、プラテンローラ52方向へ付勢されている。
【0027】
ピックアップローラ54と、分離ブロック55は、印刷機構部50の用紙収容部25と隣接する部分に配設されている(図2等参照)。ピックアップローラ54は、駆動モータ(図示せず)の駆動により回転駆動し、用紙5を用紙収容部25から印刷機構部50へ向かって搬送する。上述したように、用紙収容部25において、用紙5は、板バネ32により仕切板25A方向へ押圧されている。従って、用紙収容部25に収納された用紙5のうち、最下層の用紙5がピックアップローラ54の上面に当接する。従って、ピックアップローラ54は、駆動モータの駆動に伴い回転することで、当該用紙5を搬送し得る。
【0028】
分離ブロック55は、用紙5の搬送方向下流側において、プラテンローラ52及びピックアップローラ54近傍に配設されている。分離ブロック55は、ピックアップローラ54の回転駆動と協働することで、用紙収容部25から搬送される用紙5を一枚ずつに分離する。これにより、用紙収容部25における最下層の用紙5のみが、分離ブロック55と、印刷機構部50の下部に配設されたガイド板57との間を通過する。
【0029】
印刷機構部50による印刷時の動作について説明する。用紙5に対する印刷を開始する際において、先ず、ピックアップローラ54が、駆動モータの駆動に従って、回転駆動し、用紙収容部25の用紙5が、分離ブロック55に向かって搬送する。ピックアップローラ54及び分離ブロック55の協働により、用紙5は、一枚に分離されて搬送される。分離された用紙5は、ガイド板57上面に沿って、ペーパーガイド53の曲面下部へ至る。当該用紙5は、プラテンローラ52の回転駆動に従って、当該プラテンローラ52の外周面及びペーパーガイド53の曲面の間を搬送され、サーマルヘッド51の発熱体部の下方へ案内される。サーマルヘッド51の発熱体部の下方に到達すると、用紙5は、当該サーマルヘッド51により、プラテンローラ52に向かって押圧される。この時、サーマルヘッド51の発熱体部により、所望の印刷が用紙5表面に施される。印刷が施された用紙5は、プラテンローラ52の回転駆動に従って、排紙口15を介して、プリンタ筐体1外部へ排紙される。
【0030】
次に、上蓋30を閉じた状態にロックする上蓋ロック機構部60について、図面を参照しつつ詳細に説明する。上蓋ロック機構部60は、上蓋30に形成されたロック片33と協働し、上蓋30を閉じた状態に保持する。
【0031】
当該上蓋ロック機構部60は、本体ケース10の両長辺に沿って、固定カバー体20近傍に配設されている。即ち、携帯用プリンタ装置100においては、2つの上蓋ロック機構部60が配設されているが、その構成は対称形である。従って、一の上蓋ロック機構部60の構成について説明し、他方の上蓋ロック機構部60については、その説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、上蓋ロック機構部60は、案内支持ブロック61と、作動部材62と、樹脂バネ体63と、連動リンク体65により構成される。案内支持ブロック61は、本体ケース10の一対の長辺に沿い、前記上蓋30のロック片33に対応する位置において、本体ケース10の内部に固設されている。当該案内支持ブロック61は、用紙5の搬送方向に長辺を有する略直方体状に形成されている。
【0033】
当該案内支持ブロック61は、縦案内溝61Aと、横案内溝61Bと、窓部61Cと、を有している。縦案内溝61Aは、案内支持ブロック61の内側面(本体ケース10長手方向中心軸側の面)に開放面を有する凹状に形成されている。当該縦案内溝61Aは、上下方向に延びており、ロック片33の上下移動が可能に形成されている。
【0034】
横案内溝61Bは、案内支持ブロック61の外側面(本体ケース10の長辺側側面に対向する面)に、案内支持ブロック61の長手方向に沿って凹状に形成されている。当該横案内溝61Bは、作動部材62をスライド移動可能に保持する。
【0035】
そして、窓部61Cは、案内支持ブロック61の内面に穿設されている。当該窓部61Cには、第1規制ブロック62A及び第2規制ブロック62Bが挿通される。又、窓部61Cは、作動部材62のスライド移動距離を一定範囲に規制する。
【0036】
作動部材62は、横案内溝61Bに嵌合されており、前後方向(案内支持ブロック61の長手方向)へスライド移動可能に取り付けられている。作動部材62は、第1規制ブロック62Aと、第2規制ブロック62Bと、溝部62Cと、を有している。
【0037】
第1規制ブロック62Aは、第2規制ブロック62Bとの間に、縦案内溝61Aの幅寸法と同じ間隔を隔てた位置に、横向きに突出している。第2規制ブロック62Bは、作動部材62の一端部(用紙収容部25側端部)において、横向きに突出している。又、第2規制ブロック62Bは、その下面側に傾斜面を有している。当該傾斜面は、第1規制ブロック62A側ほど下位置となるように傾斜している。
【0038】
溝部62Cは、第1規制ブロック62Aと第2規制ブロック62Bの間に形成された間隔により構成される。当該溝部62Cは、縦案内溝61Aと同一寸法の幅を有し、上下方向に伸びている。
【0039】
尚、当該作動部材62は、第2規制ブロック62B等が形成された端部と逆側の端部において、ピン及び縦長孔を介して、連動リンク体65と連結されている。
【0040】
樹脂バネ体63は、その一端部を案内支持ブロック61の外面に形成された係合部に係合することにより、案内支持ブロック61に取り付けられる。樹脂バネ体63の自由端側部分(以下、先端部)は、縦案内溝61Aに嵌合されており、樹脂バネ体63の弾性力により、上方向に付勢されている。
【0041】
連動リンク体65は、作動部材62の端部と連結されると共に、プラテンローラ52の回動軸に回動自在に被嵌されている。従って、連動リンク体65は、作動部材62のスライド移動に応じて、プラテンローラ52の回動軸を軸に回動する。
【0042】
そして、当該連動リンク体65は、第1カム体65Aと、第2カム体65Bを備えている。第1カム体65Aは、連動リンク体65の回動に応じて、ペーパーガイド53の前面に対して、当接又は離間する。第2カム体65Bは、第1カム体65Aと、一体的に形成されている。従って、第2カム体65Bは、第1カム体65Aの当接又は離間(即ち、連動リンク体65の回動)に連動して、サーマルヘッド51の下面と当接又は離間する。
【0043】
次に、上蓋30を上蓋ロック位置に移動させる際の上蓋ロック機構部60の動作について、図面を参照しつつ説明する。上蓋30を上蓋ロック位置に移動させる場合、ユーザは、用紙収容部25を覆うように、上蓋30を下方へ回動した後、当該上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させる。
【0044】
上蓋30を開いている場合、作動部材62の溝部62Cは、縦案内溝61Aと直線状に並び、上下方向に連通する(図3(c)参照)。これにより、樹脂バネ体63の先端部は、当該樹脂バネ体63の弾性力により、溝部62C内に上向きに進入する。作動部材62は、溝部62C内に位置する樹脂バネ体63先端部により、そのスライド移動を規制されている。
【0045】
ユーザが上蓋30を下方へ回動し、当該上蓋30が用紙収容部25の上方を覆う位置へ至ると、上蓋30のロック片33は、上方から縦案内溝61A内へ進入し、作動部材62の溝部62C内部に位置する(図3(b)参照)。この時、ロック片33は、溝部62Cに位置している樹脂バネ体63の先端部に当接し、当該樹脂バネ体63の先端部を、溝部62Cの下方(即ち、縦案内溝61A下部)へ押し出す。ここで、上蓋30及び作動部材62は、上蓋ロック方向Cへスライド移動可能に配設されている。従って、樹脂バネ体63の先端部を溝部62Cから押し出すことにより、作動部材62は、上蓋ロック方向Cへスライド移動可能となる。
【0046】
その後、ユーザが、用紙収容部25の上方を覆っている上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させると、ロック片33は、第1規制ブロック62Aに当接しつつ、上蓋ロック方向Cへスライド移動する。即ち、作動部材62は、上蓋30の上蓋ロック方向Cへのスライド移動に連動して、横案内溝61Bに沿って、上蓋ロック方向Cへスライド移動する。
【0047】
この時、作動部材62の上蓋ロック方向Cへのスライド移動に連動して、連動リンク体65が時計周りに回動する。即ち、第1カム体65Aは、ペーパーガイド53の前面から離れる方向に回動する。従って、ペーパーガイド53は、押圧コイルバネ56の付勢力により、プラテンローラ52の外周面に向かって付勢される。又、第2カム体65Bは、当該連動リンク体65の回動により、サーマルヘッド51の下面から離れる方向に回動する。従って、サーマルヘッド51の発熱体部は、コイルスプリング58の付勢力により、プラテンローラ52の上面に押圧される。従って、当該携帯用プリンタ装置100は、上蓋30をロックすることにより、確実に印刷可能な状態となる。
【0048】
そして、上蓋30が上蓋ロック位置に位置すると、ロック片33は、窓部61Cの固定カバー体20側に位置する(図3(a)参照)。この時、ロック片33の上方には、窓部61C上面が位置する。従って、上蓋30は、上方への回動を規制された状態となり、上蓋30の開放がロックされる。
【0049】
続いて、上蓋30のロックを解除する際における上蓋ロック機構部60の動作について説明する。この場合、ユーザは、上蓋ロック位置に位置する上蓋30を、上蓋解除方向Oへ上蓋解除位置(図3(b)参照)までスライド移動させる。
【0050】
上蓋30を上蓋ロック位置から上蓋解除方向Oへスライド移動させると、ロック片33は、第2規制ブロック62Bに当接しつつ、上蓋解除方向Oへスライド移動する。即ち、作動部材62は、上蓋30の上蓋解除方向Oへのスライド移動に連動して、横案内溝61Bに沿って、上蓋解除方向Oへスライド移動する。
【0051】
ここで、連動リンク体65は、作動部材62の上蓋解除方向Oへのスライド移動に連動して、反時計周りに回動する。即ち、第1カム体65Aは、ペーパーガイド53の前面に接触する方向に回動する。従って、ペーパーガイド53は、押圧コイルバネ56の付勢力に逆らって、プラテンローラ52の外周面から離間する。又、第2カム体65Bは、当該連動リンク体65の回動により、サーマルヘッド51の下面に当接する方向に回動する。従って、サーマルヘッド51の発熱体部は、コイルスプリング58の付勢力に逆らって、プラテンローラ52の上面から離間される。従って、当該携帯用プリンタ装置100は、上蓋30のロックを解除することで、搬送不良を起こした用紙5等を容易に除去し得る状態となる。
【0052】
そして、上蓋30が上蓋解除位置に位置すると、作動部材62の溝部62Cは、案内支持ブロック61の縦案内溝61Aと上下に連通する。これにより、樹脂バネ体63の先端部は、縦案内溝61Aの下部から溝部62C内へ進入し、溝部62Cに位置するロック片33に下方から当接する(図3(b)(c)参照)。そして、縦案内溝61A上部と溝部62Cが上下方向に連通しているので、ロック片33は、何らの制限を受けることなく、上方向に移動可能となる。即ち、これにより、上蓋30の上方向への回動が可能となり、上蓋ロック機構部60によるロックが解除される。
【0053】
次に、プリンタ筐体1の下面側(固定カバー体20、上蓋30に対向する面)の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図4に示すように、プリンタ筐体1は、本体ケース10の下面側に、電池収納部45を有している。第1実施形態に係る電池収納部45は、本体ケース10の下面側において、用紙収容部25と同一側の端部(即ち、固定カバー体20と逆側の端部)に形成されている。当該電池収納部45は、固定カバー体20の下面側を開放した箱型に形成されており、内部に、携帯用プリンタ装置100の電源として機能する電池70を収納する。又、図6に示すように、電池収納部45の底面は、用紙収容部25と同様に、仕切板25Aにより構成される。
【0054】
電池収納部45の開口部には、下蓋40が、電池収納部45開口縁に沿って、スライド移動可能に取り付けられる。従って、プリンタ筐体1の下面は、本体ケース10の下面と、下蓋40により構成される。下蓋ロック方向Lへスライド移動し、下蓋ロック位置(図6(a)参照)に位置すると、下蓋40は、後述する下蓋ロック片41及び係合部46等により、電池収納部45を閉塞した状態でロックされる。又、下蓋ロック位置(図6(a)参照)から下蓋解除方向Uへスライド移動し、下蓋解除位置(図6(b)参照)に位置すると、下蓋40は、電池収納部45の開口部を開放し、電池収納部45から着脱し得る。尚、下蓋40の構成については、後に詳細に説明する。
【0055】
電池収納部45は、係合部46と、ガイド壁47と、を有している。係合部46は、電池収納部45の開口縁の内、下蓋40のスライド移動方向(下蓋ロック方向L、下蓋解除方向U)に直交する2つの端縁近傍に、2つずつ穿設されている。各係合部46は、下蓋40を下蓋ロック方向Lへスライド移動させた場合に、当該下蓋40に形成された下蓋ロック片41によって挿通される。即ち、下蓋40が下蓋ロック位置に位置する場合、係合部46は、下蓋40の下蓋ロック片41と協働し、当該下蓋40を下蓋ロック位置にロックする。
【0056】
ガイド壁47は、プリンタ筐体1の長辺に沿った2箇所において、電池収納部45底面から立設されている。即ち、各ガイド壁47は、下蓋40のスライド方向(即ち、下蓋ロック方向L及び下蓋解除方向U)に沿って延びる壁状に形成されている。当該ガイド壁47は、下蓋40をスライド移動する際に、当該下蓋40(例えば、ガイド片43等)と当接することで、下蓋40のスライド移動方向を所定方向に案内する。そして、ガイド壁47は、電池70が電池収納部45に収納された場合、当該電池70の側面に沿って位置する。従って、ガイド壁47は、電池収納部45に収納された電池70を所定の取付位置にガイドする役割を果たす。
【0057】
プリンタ筐体1の幅方向中心側のガイド壁47は、電池収納部45の一側面から所定寸法離間した位置に形成されている。当該ガイド壁47と電池収納部45の一側面の間の空間は、ガイド溝47Aとして機能する。下蓋40をスライド移動する際に、下蓋40の一側面が当該ガイド溝47A内を移動する。従って、ガイド溝47Aは、下蓋40のスライド移動方向を所定方向に案内する。
【0058】
又、ガイド壁47は、上下移動規制片49を、電池収納部45外側側面の所定位置に有している。上下移動規制片49は、電池収納部45の外側方向に所定寸法突出している。下蓋40が下蓋ロック位置に位置する場合、上下移動規制片49は、上下移動規制片49上面において、下蓋40に形成されたガイド片43下面と当接する。即ち、下蓋40は、下蓋40のガイド片43とガイド壁47の上下移動規制片49により、下蓋40の上下方向への移動を規制される。
【0059】
そして、ガイド壁47は、当該ガイド壁47の下面に、側面視略三角形状の凸部48を有している。当該凸部48は、後述する下蓋40のスライド規制片42と協働することにより、下蓋40のスライド移動を補助的に規制する。この点については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0060】
図4、図5に示すように、下蓋40は、下蓋ロック方向Lへ向かって突出した下蓋ロック片41と、側面視略三角形状のスライド規制片42と、ガイド片43と、を有している。下蓋ロック片41は、電池収納部45における係合部46に対応する位置に4つ形成されている。下蓋ロック片41は、不図示の係合爪を、当該下蓋ロック片41の先端部分に有している。下蓋40が下蓋ロック位置(図6(a)参照)に位置する場合、下蓋ロック片41の係合爪は、電池収納部45の係合部46開口縁と係合する。即ち、下蓋40が下蓋ロック位置に位置する場合、下蓋ロック片41は、係合部46と協働することで、下蓋40のスライド移動(即ち、下蓋40の開き動作)をロックする。
【0061】
スライド規制片42は、下蓋40の内側面(電池収納部45側の面)において、2つのガイド壁47下面に対向する所定位置に、それぞれ1つずつ形成されている。スライド規制片42は、下蓋40の内側面からガイド壁47下面に向かって、所定寸法突出している。下蓋40をスライド移動する際に、スライド規制片42は、ガイド壁47下面に突出形成された凸部48と当接し、下蓋40のスライド移動を補助的に規制する。
【0062】
ガイド片43は、下蓋40のスライド移動方向に沿う両辺に2つずつ、互いに離間して形成されている。当該ガイド片43は、電池収納部45の内側方向に突出形成され、下蓋40をスライド移動する際に、電池収納部45に立設されたガイド壁47と当接する。即ち、ガイド片43は、ガイド壁47と協働することで、下蓋40のスライド移動方向を、下蓋ロック方向L又は下蓋解除方向Uにガイドする。下蓋40が下蓋ロック位置に位置する場合、各ガイド片43の下面は、前述した上下移動規制片49上面と当接する。即ち、下蓋40は、下蓋40のガイド片43とガイド壁47の上下移動規制片49により、下蓋40の上下方向への移動を規制される。
【0063】
又、下蓋40表面には、指置き部44が、下蓋40の幅方向にわたって帯状に形成されている。当該指置き部44は、下蓋40表面において、やや下蓋解除方向U下流側に形成されている。
【0064】
尚、各スライド規制片42は、下蓋40のスライド移動方向に沿った各辺に形成された2つのガイド片43に挟まれ、且つ、各ガイド片43から所定寸法離間した位置に形成される。更に、当該スライド規制片42は、下蓋40の指置き部44と異なる位置に設けられている。従って、指置き部44を用いて、下蓋40を開閉する際に、下蓋40のスライド規制片42近傍は、ガイド壁47の凸部48に応じて十分に撓みうる。これにより、当該下蓋40は、下蓋40を十分に開閉しやすいものとなる。
【0065】
続いて、第1実施形態に係るプリンタ筐体1において、上蓋30をロックする際における下蓋40の動作について、図6を参照しつつ詳細に説明する。尚、図6は、図4に示すプリンタ筐体1の矢視Cにおける断面図であるが、便宜上180度回転させ、上蓋30が上、下蓋40が下になるように示している。
【0066】
上述したように、下蓋40が下蓋ロック位置に位置する場合、当該下蓋40は、下蓋ロック片41及び係合部46の協働により、当該下蓋ロック位置にロックされている。この時、図6(a)に示すように、下蓋40のスライド規制片42は、ガイド壁47下面に形成された凸部48よりも下蓋解除方向U上流側の位置で、当該凸部48に隣接している。
【0067】
ここで、上蓋30を上蓋ロック位置へ向かって、上蓋ロック方向Cへスライド移動する。尚、図6(a)は、ここでの説明と異なり、上蓋30が上蓋ロック位置にある状態を示す。この場合、ユーザは、上蓋30をプリンタ筐体1下面に向かって押圧しつつ、上蓋ロック方向Cへスライド移動させる。この時、ユーザは、プリンタ筐体1を所定位置に固定するため、上蓋30からプリンタ筐体1下面へ押圧する力に対向して、下蓋40からプリンタ筐体1上面へ押圧する力を作用させる。
【0068】
このような状態の例としては、例えば、ユーザがプリンタ筐体1の2つの長辺側を自らの手で夫々把持する状態が挙げられる。この場合、ユーザの手の親指は、上蓋30に対して、プリンタ筐体1下面(図6における下向きの力)へ向かう力を加え、ユーザの手における他の4本の指は、下蓋40に対して、プリンタ筐体1上面(図6における上向きの力)へ向かう力を加える。即ち、このように力を加えることで、指とプリンタ筐体1との摩擦力を高めて、手の中にプリンタ筐体1の位置を固定する。そして、この場合において、ユーザの親指は、上蓋30に対して、上蓋ロック方向Cへ向かう力を加える。これにより、指が上蓋30表面を滑ることはなく、上蓋30は、固定されている本体ケース10に対して、上蓋ロック方向Cへスライド移動する。
【0069】
ここで、上蓋30に対して、当該上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させる力を作用させている場合に、下蓋40をプリンタ筐体1上面側へ押圧していると、下蓋40には、上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させる力の反力が作用する。即ち、当該下蓋40には、下蓋40を下蓋解除方向U(即ち、上蓋ロック方向Cと逆方向)へスライド移動させる力が作用する。
【0070】
この反力の作用により、下蓋40が下蓋解除方向Uへスライド移動しようとする際に、下蓋40に形成されたスライド規制片42は、下蓋解除方向U下流側に位置する凸部48と当接する。即ち、上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させる際に、下蓋40は、スライド規制片42及び凸部48の当接により、下蓋ロック位置から下蓋解除方向Uへのスライド移動を規制される。
【0071】
又、この状態においても、上蓋30には、プリンタ筐体1下面へ向かう力が作用し、下蓋40には、プリンタ筐体1上面へ向かう力が作用している。即ち、下蓋40が下蓋解除方向Uへスライド移動する際に、スライド規制片42は、ガイド壁47上面に向かって下方に移動することで、スライド規制片42の突出方向において、凸部48と重複する部分が大きくなる。つまり、スライド規制片42は、凸部48とより強く接触(干渉)する。この結果、当該プリンタ筐体1は、上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させる際に、下蓋ロック位置から下蓋解除方向Uへの下蓋40のスライド移動を、スライド規制片42及び凸部48の当接により、確実に規制し得る。
【0072】
尚、下蓋40を下蓋ロック方向Lへスライド移動し、下蓋ロック位置へ移動させる場合、スライド規制片42は、ガイド壁47下面と当接しつつ、下蓋ロック方向Lへ移動する。この時、スライド規制片42は、下蓋ロック方向Lの上流側から凸部48に当接する(図6(b)参照)。そして、スライド規制片42と凸部48の互いに対向する斜面同士が摺接することにより、当該スライド規制片42が凸部48を下蓋ロック方向Lへ乗り越える。尚、スライド規制片42が凸部48を下蓋ロック方向Lへ乗り越えるためには、下蓋40が局所的に撓み、プリンタ筐体1下面側へ移動する必要がある。下蓋40は、その後、下蓋ロック位置に移動し、下蓋ロック片41及び係合部46の協働により、ロックされる(図6(a)参照)。
【0073】
以上説明したように、第1実施形態に係るプリンタ筐体1は、固定カバー体20の逆側端部の上面にスライド移動可能に取り付けられた上蓋30と、上蓋30と同一端部の下面にスライド移動可能に取り付けられる下蓋40と、を有する。上蓋30は、上蓋ロック方向Cに従って上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、上蓋解除方向Oに従って上蓋解除位置へスライド移動することでロックが解除される。そして、下蓋40は、下蓋ロック方向L(即ち、上蓋ロック方向Cと同一方向)に従って下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、下蓋解除方向U(即ち、上蓋解除方向Oと同一方向)に従って下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される。本実施形態は、ユーザが指置き部16を用いることなく、上蓋30と下蓋40とに指をかけて挟んだ状態で、上蓋30を開閉しようとしたときに、特に有効である。
【0074】
プリンタ筐体1において、上蓋30又は下蓋40のスライド移動(ロック又はロック解除)を行う場合、上面から下面へ向かう力と、下面から上面へ向かう力により、プリンタ筐体1が固定された状態で、上蓋30又は下蓋40をスライド移動させることを要する。ここで、上蓋30を上蓋ロック方向Cに従って上蓋ロック位置へスライド移動する際に、下蓋40に対して、下面から上面へ向かう力を作用させていると、上蓋30を上蓋ロック方向Cへスライド移動させる力の反力が、下蓋40を下蓋解除方向Uへ移動させる力として作用する。
【0075】
第1実施形態に係るプリンタ筐体1においては、この状況下で、下蓋40が下蓋解除方向Uへスライド移動しようとする際に、下蓋40のスライド規制片42と凸部48が当接する(図6(a)参照)。従って、当該プリンタ筐体1は、この場合における下蓋40の下蓋解除方向Uへのスライド移動を規制し得る。これにより、当該プリンタ筐体1は、上蓋30のロックを行う際に、下蓋40のロックが解除されることを防止し得る。又、下蓋40には、下面から上面へ向かう力が作用するため、スライド規制片42と凸部48は、上下方向において、相互に重複する部分が大きくなり、より強く接触(干渉)する。従って、当該プリンタ筐体1は、上蓋30のロックを行う際におけるプリンタ筐体1の固定に要する力を有効に活用しつつ、この場合における下蓋40のロック解除を、確実に防止し得る。
【0076】
又、下蓋40は、電池70が収納される電池収納部45を覆う。上蓋30のロックを行う際に、下蓋40のロックが解除された場合、電池収納部45に収納されていた電池70は、ユーザの意図と無関係に電池収納部45から脱落する虞がある。この点、第1実施形態に係るプリンタ筐体1は、上蓋30の上蓋ロック方向Cへのスライド移動に伴い、下蓋40のロックが解除される事態を防止し得る。即ち、当該プリンタ筐体1は、電池収納部45内に収納されていた電池70の脱落等に起因する事故等を防止し得る。
【0077】
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態とは異なる実施形態(以下、第2実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。第2実施形態においても、本発明を、携帯用プリンタ装置100の筐体に適用した場合について説明する。
【0078】
第2実施形態に係るプリンタ筐体1は、上面に、固定カバー体20と、上蓋30を有する。この固定カバー体20及び上蓋30の構成については、第1実施形態と同一の構成である。即ち、上蓋30は、第1実施形態と同様に、本体ケース10に対して、上蓋支持機構部31によりスライド移動及び回動可能に配設されている。又、当該上蓋30は、第1実施形態と同様に、上蓋ロック方向Cに従って、上蓋ロック位置にスライド移動すると、上蓋ロック機構部60によりロックされる(図2、図3参照)。そして、当該上蓋30は、上蓋ロック位置から上蓋解除方向Oへスライド移動することにより、用紙収容部25の上方を開放し得るように構成されている。これらの点については、上述した第1実施形態で既に説明済みであるため、その詳細に関する説明を省略する。
【0079】
そして、第2実施形態に係るプリンタ筐体1において、下蓋40は、第1実施形態と異なり、固定カバー体20側の端部に取り付けられる。又、第1実施形態と同様に、下蓋40は、電池70を収納する電池収納部45の開口縁に取り付けられる。尚、第2実施形態においては、本体ケース10に対する下蓋40及び電池収納部45の位置が異なるのみであり(図7参照)、下蓋40の構成及び電池収納部45の構成は、第1実施形態と同様である。下蓋40及び電池収納部45の構成については、第1実施形態において既に説明済みであるため、その説明を省略する。
【0080】
第2実施形態に係るプリンタ筐体1においても、上蓋30を上蓋ロック位置から上蓋解除方向Oへスライド移動する場合、ユーザは、上蓋30をプリンタ筐体1下面に向かって押圧しつつ、上蓋解除方向Oへスライド移動させる。この時、ユーザは、プリンタ筐体1を所定位置に固定するため、上蓋30からプリンタ筐体1下面へ押圧する力に対向して、下蓋40からプリンタ筐体1上面へ押圧する力を作用させる。
【0081】
ここで、上蓋30に対して、当該上蓋30を上蓋解除方向Oへスライド移動させる力を作用させている場合に、下蓋40をプリンタ筐体1上面側へ押圧していると、下蓋40には、上蓋30を上蓋解除方向Oへスライド移動させる力の反力が作用する。即ち、当該下蓋40には、下蓋40を下蓋解除方向U(即ち、第2実施形態における上蓋解除方向Oと逆方向)へスライド移動させる力が作用する。
【0082】
この反力の作用により、第2実施形態に係るプリンタ筐体1においても、下蓋40が下蓋解除方向Uへスライド移動しようとする際に、下蓋40に形成されたスライド規制片42は、下蓋解除方向U下流側に位置する凸部48と当接する。即ち、第2実施形態においては、上蓋30を上蓋解除方向Oへスライド移動させる際に、下蓋40は、スライド規制片42及び凸部48の当接により、下蓋ロック位置から下蓋解除方向Uへのスライド移動を規制される。
【0083】
又、この状態においても、上蓋30には、プリンタ筐体1下面へ向かう力が作用し、下蓋40には、プリンタ筐体1上面へ向かう力が作用している。即ち、下蓋40が下蓋解除方向Uへスライド移動する際に、スライド規制片42は、ガイド壁47下面に向かって上方に移動することで、スライド規制片42の突出方向において、凸部48と重複する部分が大きくなる。つまり、スライド規制片42は、凸部48とより強く接触(干渉)する。この結果、第2実施形態に係るプリンタ筐体1は、上蓋30を上蓋解除方向Oへスライド移動させる際に、下蓋ロック位置から下蓋解除方向Uへの下蓋40のスライド移動を、スライド規制片42及び凸部48の当接により、確実に規制し得る。尚、凸部48は、上蓋30における指置き部16に対向する位置に設けることが望ましい。
【0084】
尚、第2実施形態においても、下蓋40を下蓋ロック方向Lへスライド移動し、下蓋ロック位置へ移動させる場合、スライド規制片42は、ガイド壁47下面と当接しつつ、下蓋ロック方向Lへ移動する。この時、スライド規制片42は、下蓋ロック方向Lの上流側から凸部48に当接する。そして、当該スライド規制片42が凸部48を下蓋ロック方向Lへ乗り越えると、下蓋40は、下蓋ロック位置に移動し、下蓋ロック片41及び係合部46の協働により、ロックされる。
【0085】
以上説明したように、第2実施形態に係るプリンタ筐体1は、固定カバー体20の逆側端部の上面にスライド移動可能に取り付けられた上蓋30と、上蓋30と逆側端部の下面にスライド移動可能に取り付けられる下蓋40と、を有する。上蓋30は、上蓋ロック方向Cに従って上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、上蓋解除方向Oに従って上蓋解除位置へスライド移動することでロックが解除される。そして、下蓋40は、下蓋ロック方向L(即ち、上蓋解除方向Oと同一方向)に従って下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、下蓋解除方向U(即ち、上蓋ロック方向Cと同一方向)に従って下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される。
【0086】
プリンタ筐体1において、上蓋30又は下蓋40のスライド移動(ロック又はロック解除)を行う場合、上面から下面へ向かう力と、下面から上面へ向かう力により、プリンタ筐体1が固定された状態で、上蓋30又は下蓋40をスライド移動させることを要する。ここで、上蓋30を上蓋ロック位置から上蓋解除方向Oに従ってスライド移動する際に、下蓋40に対して、下面から上面へ向かう力を作用させていると、上蓋30を上蓋解除方向Oへスライド移動させる力の反力が、下蓋40を下蓋解除方向Uへ移動させる力として作用する。
【0087】
第2実施形態に係るプリンタ筐体1においては、この状況下で、下蓋40が下蓋解除方向Uへスライド移動しようとする際に、下蓋40のスライド規制片42と凸部48が当接する。従って、当該プリンタ筐体1は、この場合における下蓋40の下蓋解除方向Uへのスライド移動を規制し得る。これにより、当該プリンタ筐体1は、上蓋30のロックを解除する際に、下蓋40のロックが解除されることを防止し得る。又、下蓋40には、下面から上面へ向かう力が作用するため、スライド規制片42と凸部48は、上下方向において、相互に重複する部分が大きくなり、より強く接触(干渉)する。従って、当該プリンタ筐体1は、上蓋30のロックを解除する際におけるプリンタ筐体1の固定に要する力を有効に活用しつつ、この場合における下蓋40のロック解除を、確実に防止し得る。
【0088】
又、下蓋40は、電池70が収納される電池収納部45を覆う。上蓋30のロックを解除する際に、下蓋40のロックが解除された場合、電池収納部45に収納されていた電池70は、ユーザの意図と無関係に電池収納部45から脱落する虞がある。この点、第2実施形態に係るプリンタ筐体1は、上蓋30の上蓋解除方向Oへのスライド移動に伴い、下蓋40のロックが解除される事態を防止し得る。即ち、当該プリンタ筐体1は、電池収納部45内に収納されていた電池70の脱落等に起因する事故等を防止し得る。
【0089】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
例えば、上述した実施形態においては、下蓋40にスライド規制片42を形成し、電池収納部45開口縁近傍に位置するガイド壁47下面に、凸部48を形成する構成であったが、本発明は、この態様に限定されるものではない。例えば、下蓋40にスライド規制片42を形成し、電池収納部45開口縁近傍に凹部を形成してもよい。この場合、下蓋40が下蓋ロック位置に位置すると、スライド規制片42が凹部に嵌入する。又、電池収納部45開口縁に凸部48を形成し、下蓋にスライド規制凹部を形成してもよい。この場合、下蓋40が下蓋ロック位置に位置すると、凸部48がスライド規制凹部に嵌入する。即ち、プリンタ筐体1の固定に要する力と同じ向きに、蓋若しくは蓋に摺接する開口縁の少なくとも一方に突出部、他方に突出部とスライド移動方向において干渉する受け部を備えるように構成してもよい。
【0090】
又、上述した実施形態においては、スライド規制片42と凸部48の組は2組であったが、この態様に限定されるものではない。スライド規制片42と凸部の組は、プリンタ筐体1の構成に応じて適宜変更可能である。
【0091】
更に、上述の実施形態においては、下蓋40は、下蓋ロック片41と、電池収納部45の係合部46によりロックされ、下蓋40のスライド規制片42と、ガイド壁47の凸部48は補助的なロック機能を果たしていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、スライド規制片42と、凸部48により、下蓋40をロックするように構成することも可能である。この場合、スライド規制片42を、各ガイド片43との距離を短くすることが望ましい。これにより、スライド規制片42近傍の撓み量が少なくなり、スライド規制片42は、凸部48と更に強く接触する。
【符号の説明】
【0092】
1 プリンタ筐体
10 本体ケース
20 固定カバー体
25 用紙収容部
30 上蓋
31 上蓋支持機構部
33 ロック片
40 下蓋
41 下蓋ロック片
42 スライド規制片
45 電池収納部
46 係合部
48 凸部
50 印刷機構部
60 上蓋ロック機構部
70 電池
C 上蓋ロック方向
O 上蓋解除方向
L 下蓋ロック方向
U 下蓋解除方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面を有する箱状に形成され、内部に電気機器を収容する電気機器用筐体であって、
前記上面において前記電気機器用筐体の一端側に形成された上面開口と、前記下面における前記一端側に形成された下面開口とを有する筐体本体と、
前記一端側から当該一端側と対向する他端側へ向かう第1方向に従って、前記上面開口を覆う所定の上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記他端側から前記一端側へ向かう第2方向に従って、前記上蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される上蓋と、
前記第1方向に従って、前記下面開口を覆う所定の下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記第2方向に従って、前記下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除されると共に、前記筐体本体内部に対向する内側面における前記下面開口の開口縁に対応する所定位置に形成された第1規制部と、を有する下蓋と、
前記下面開口の開口縁であって、スライド移動する下蓋の第1規制部に対応する所定位置に形成され、前記第1方向及び前記第2方向への下蓋のスライド移動に伴い、前記第1規制部と当接する第2規制部と、
を備え、
前記下蓋は、
前記下面方向への成分を含み、前記上蓋をスライド移動させる力が、当該上蓋に対して作用すると共に、前記上面方向への成分を含み、前記筐体本体を支持する力が前記下蓋に作用した場合に、
当該下蓋の第1規制部と前記第2規制部の当接により、スライド移動を規制されること
を特徴とする電気機器用筐体。
【請求項2】
上面と下面を有する箱状に形成され、内部に電気機器を収容する電気機器用筐体であって、
前記上面において前記電気機器用筐体の一端側に形成された上面開口と、前記下面において前記一端側と対向する他端側に形成された下面開口とを有する筐体本体と、
前記一端側から前記他端側へ向かう第1方向に従って、前記上面開口を覆う所定の上蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記他端側から前記一端側へ向かう第2方向に従って、前記上蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除される上蓋と、
前記第2方向に従って、前記下面開口を覆う所定の下蓋ロック位置へスライド移動することでロックされ、前記第1方向に従って、前記下蓋ロック位置からスライド移動することでロックが解除されると共に、前記筐体本体内部に対向する内側面における前記下面開口の開口縁に対応する所定位置に形成された第1規制部と、を有する下蓋と、
前記下面開口の開口縁であって、スライド移動する下蓋の第1規制部に対応する所定位置に、前記第1方向及び前記第2方向への下蓋のスライド移動に伴い、前記第1規制部と当接する第2規制部と、
を備え、
前記下蓋は、
前記下面方向への成分を含み、前記上蓋をスライド移動させる力が、当該上蓋に対して作用すると共に、前記上面方向への成分を含み、前記筐体本体を支持する力が前記下蓋に作用した場合に、
当該下蓋の第1規制部と前記第2規制部の当接により、スライド移動を規制されること
を特徴とする電気機器用筐体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電気機器用筐体であって、
前記下面開口は、
前記電気機器の駆動源となる電池が収納される電池収納部における開口部を構成し、
前記下蓋は、
前記電池収納部に臨む電池蓋であること
を特徴とする電気機器用筐体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−51287(P2011−51287A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203977(P2009−203977)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】