説明

電気機器筐体

【課題】 電気機器筐体において、トップケースに設けた受部としての切起し片で背面パネルを位置決めする場合に、切起し片の形成箇所に存在する隙間から筐体内部に水が浸入することを防ぐ。
【解決手段】 板金製のトップケース1と背面パネルとを有する。トップケース1に設けられる受部Rとしての切起し片5を、トップケース1の側板部15に形成することによって天板部12から切起し片5を抹消する。受部Rとしての切起し片5は、ねじ締め作業時に相手方部位としての背面パネルの当り縁を受け止める作用を発揮する。好ましくは、側板部15に対する切起し片5の上端部の曲り角度を水切り可能な値に定める。トップケース1の縁枠部と背面パネルとの重なり箇所をビス止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器筐体、特に、筐体内部に水が浸入してその筐体に内蔵されている配線基板や端子といった電気部品を濡らすことを防ぐための対策を講じた電気機器筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
トップケースとリアパネルとフロントパネルとをビス止めすることによって構成された筐体構造が公知である(たとえば、特許文献1参照)。また、電子機器の筐体構造として、修理点検の便を図るための研究も行われている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、電子機器用筐体に関してねじの使用数を減らすため研究(たとえば、特許文献3参照)や、電子機器のキャビネット構造に関して保管輸送費の低減などを図る研究(たとえば、特許文献4参照)も行われている。さらに、空気調和機の室外機ユニットにおいては、パネルのネジ止め箇所に隣接してそのパネルの切断を可能にするためのスリットを形成しておくことによって、リサイクル時にねじを外すことなくパネルを分解することができるようにした技術が提案されている(たとえば、特許文献5参照)。
【0003】
上掲の各特許文献のうち、特許文献1には、トップケースの後側端部に下向き小突部を形成しておき、その下向き小突部をリアパネルの上側折曲片の係入孔に係合させるという構成を採用すると、ビス止め箇所の数を減らすことができるとされている。
【0004】
一方、DVDドライブなどを内蔵する横長偏平箱形の従来の電気機器筐体(従来例)にあっては、板金製のトップケースとこのトップケースの後端に配備された背面パネルとをビス止めしたものが知られている。
【0005】
図7はこの種の従来例による電気機器筐体の外観を示した概略斜視図、図8はその筐体のトップケースの要部の拡大斜視図、図9はその筐体のトップケースと背面パネルとのビス止め箇所を説明的に示した図7のIX−IX線に沿う部分の概略拡大断面図である。
【0006】
図7の筐体は、ボトムケース(図に現れていない)と、そのボトムケースの後端に固着された背面パネル(図に現れていない)と、トップケース1と、フロントパネル2とを備えていて、フロントパネル2には、DVDドライブの使用対象であるディスクの出入口3や磁気記録再生装置の使用対象である磁気テープカセットの出入口4などが備わっている。
【0007】
この種の筐体にあっては、トップケース1を板金製として、同じく板金製の背面パネルをその後方からねじ込まれる取付けビスによってトップケース1にビス止めするという構造を採用する場合、取付けビスをねじ込むときの組立作業性を改善したり組立後の筐体強度を高めたりする対策の講じられることがある。このような観点から、図7に示した筐体では、トップケース1の天板部12の横方向一列に並んだ複数箇所(図例では3箇所)に内向きの切起し片5を形成する加工を行っておき、その加工によって天板部12に具備された複数箇所の切起し片5を上記した組立作業性を改善や組立後の筐体強度の向上に役立たせるようにしてある。
【0008】
すなわち、図8に例示した上記切起し片5では、横方向の両端部がトップケース1の天板部12から破断されずに連設された状態で内向きに折り曲げられ、かつ、切起し工程で切起し片5の前後両側に切り目を形成させることによってその切起し片5を天板部12の内側へ膨らみ出させてある。
【0009】
そして、この切起し片5が形成されているトップケース1を背面パネルにビス止めする組立工程では、図9のように、天板部12の後端の全幅部分に曲成されたリブ状の縁枠部13と切起し片5の後側端面51との相互間隙間に、同図に示した背面パネル6の上端に曲成されているリブ61を嵌め込んでそのリブ61を前後に動かないように位置決めしておき、その状態で、トップケース1の縁枠部13のビス挿通孔14に挿通させた取付けビス7を背面パネル6のねじ孔63にねじ込んで締め付けるというねじ締め作業が行われている。この組立工程では、取付けビス7によるビス止め操作初期(ねじ込み初期)にリブ61が切起し片5の前側端面51に突き当たるために、背面パネル6に加えられる前向きの押込み力が切起し片5によって受け止められる。その結果、ビス止め操作初期に取付けビス7の先端によって押された背面パネル6が撓んで前方へ逃げるといった現象が回避されて、取付けビス7によるビス止め作業を熟練を要することなく迅速かつ確実に行うことができるようになる。また、フロントパネル1と背面パネル6とをビス止め操作を経て取り付けた後では、背面パネル6のリブ61が、フロントパネル1側の横方向一列に並んだ上記切起し片5とフロントパネル1の縁枠部13とによって挟まれているので、背面パネル6の前後方向での撓み変形が防止されて組立後の筐体強度の向上に役立つ。以上より、上記した切起し片5は、組立作業中及び組立後において、背面パネル6を受け止める受部としての機能を果している。そのため、図7〜図9では、切起し片5に受部を表す符号としてのRを併記してある。
【0010】
【特許文献1】特開2005−64084号公報
【特許文献2】特開平5−343880号公報
【特許文献3】特開2001−298276号公報
【特許文献4】特開平8−8547号公報
【特許文献5】特開2000−269661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図7〜図9を参照して説明した従来例による構造を採用すると、トップケース1の受部Rとしての切起し片51の形成箇所には、切起し工程で形成される切り目が開くことによって形成される隙間S(図9参照)がそのまま放置され、しかも、その隙間Sがトップケース1の天板部12に位置していることになる。そのため、この筐体を採用した電気機器を水平に定置してある場合に、湯飲みや花瓶の水などがトップケース1の上にこぼれ落ちると、その水が切起し片5の形成箇所から隙間Sを通過して筐体の内部に入るという事態が起こり得る。そして、そのような事態が起こると、筐体に収容されている配線基板や端子類、その他の電気電子部品が水に濡れて性能上問題を生じたり、場合によっては電気的なショートが発生したりするおそれがある。
【0012】
これらの問題やおそれを無くするためには、受部Rを切起し片51によって形成する代わりに、上記した切り目が開くことによって形成される隙間Sの存在しない絞り部、すなわち切り目を有しない絞り部によってその受部Rを形成しておくことが考えられ、そのようにすると、筐体内部への水の浸入を確実に防止することができる。しかし、その一方で、切り目を有しない絞り部を板金に加工するとどうしてもその絞り部が台形状に形作られるために、絞り部の形成箇所のスペースが切起しによる場合に比べて広くなることを避けられなくなる。また、そのような台形に形作られた絞り部を採用すると、図9に示したリブ61の端面が絞り部の傾斜面に滑りやすい状態で突き当たることになるので、リブ61ないし背面パネル6の位置決め作用が低下して、ビス止め操作初期に取付けビス7の先端によって押された背面パネル6が撓んで前方へ逃げるといった現象が起こりやすくなって組立作業性が低下するだけでなく、取付け後においても、リブ61の端面が絞り部の傾斜面に滑りやすい状態で突き当たっているだけであるので、背面パネル6の前後方向での撓み変形を防ぐ作用が低下して筐体強度の向上を図りにくくなることになる。
【0013】
これら点に関し、上掲の特許文献1に見られるトップケースの下向き小突部を、上記した受部として利用することが考えられるけれども、その下向き小突部が切起し片で形成されているか絞り部で形成されているかが不明であり、仮に切起し片で形成されているとすると、上記したような筐体内部への水の浸入に伴う問題が生じ、仮に絞り部で形成されているとすると、上記したような組立作業性や組立後の筐体強度が低下するおそれがある、ということになる。
【0014】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、受部の形成箇所に工夫を講じることによって、その受部として切起し片を採用したとしても、筐体内部への水の浸入に伴う問題が生じにくくなり、また、組立作業性や組立後の筐体強度が低下するおそれを少なくすることのできる電気機器筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る電気機器筐体は、板金製のトップケースとこのトップケースの後端に配備された背面パネルとを有して箱形に形成されている筐体本体の上記トップケースに、上記背面パネルに対する受部としての切起し片が形成されている。そして、上記切起し片の形成箇所が上記トップケースの側板部に選定されている。
【0016】
この構成であると、受部としての切起し片をトップケースの天板部に設けておく必要がなくなる。そのため、天板部から切起し片を抹消することが可能になり、そのために、天板部に水がこぼれ落ちても、その水が天板部の切起し片の形成箇所に存在する隙間から筐体内部に浸入するという事態を生じる余地がなくなる。また、切起し片の形成箇所がトップケースの側板部に選定されていることにより、たとえ水がトップケースの上にこぼれ落ちて、その水が側板部を伝い落ちたとしても、切起し片の形成箇所の隙間から筐体内部に浸入するという事態は、切起し片が天板部に形成されている場合に比べて極端に起こりにくくなる。
【0017】
本発明では、上記切起し片の上端部と下端部とが上記側板部に連続していて、上記側板部に対する切起し片の上端部の曲り角度が、側板部の外面を伝い落ちてきた水が切起し片側に伝い落ちることを阻止し得る水切り可能な値に定められていることが望ましい。この構成を採用すると、切起し片が側板部に上端部と下端部とで両持ちされた構成になるので、その切起し片が、その端面に加わる荷重に対して大きな耐荷重性を発揮するようになる。そのため、一定の耐荷重性が要求される受部としての機能がそれだけ高められる。しかも、トップケースの側板部に対する切起し片の上端部の曲り角度が、側板部の外面を伝い落ちてきた水が切起し片側に伝い落ちることを阻止し得る水切り可能な値に定められているという構成を採用したことにより、伝い落ちてきた水が切起し片の形成箇所に生じている隙間を経て筐体内部に浸入するという事態が確実に阻止されるという利点がある。なお、上記した水切り可能な値は、垂直な側板部に対して90度よりも小さくない値である。
【0018】
本発明では、上記トップケースの後端に曲成された縁枠部が背面パネルに重ね合わされてその重なり箇所が背面パネルの後方からねじ込まれた取付けビスによってビス止めされていると共に、上記受部が、そのビス止め操作初期に背面パネルに加えられる前向きの押込み力を、その背面パネルに接触して受け止めるようになっているという構成を採用することが可能であって、この構成を採用すると、冒頭で説明した取付けビスのねじ込み作業を伴う組立作業性や組立後の筐体強度の向上が図られる。
【0019】
本発明では、上記受部が、トップケースの側板部に形成された上記切起し片と、そのトップケースの天板部に形成されてその内側に突出された切り目を有しない絞り部とを含み、それらの切起し片と絞り部とが、上記ビス止め操作初期に背面パネルに加えられる前向きの押込み力を、その背面パネルに接触して受け止めるようになっている、という構成を採用することも可能である。この構成によると、トップケースの側板部に形成されている受部としての切起し片のほか、トップケースの天板部に形成されている受部としての絞り部によっても、上記した組立作業性や組立後の筐体強度の向上が図られる。
【0020】
本発明に係る電気機器筐体は、板金製のトップケースとこのトップケースの後端に配備された背面パネルとを有して箱形に形成されている筐体本体の上記トップケースの天板部に、上記背面パネルに対する受部としての切起し片が形成されている電気機器筐体において、上記切起し片の形成箇所を、トップケースの天板部からその側板部に変更することによって天板部から切起し片を抹消してあり、トップケースの側板部に形成された切起し片は、切起し工程で形成される切り目が、上記受部の相手方部位としての上記背面パネルの当り縁に沿う方向に延び、かつ、その上端部と下端部とが上記側板部に連続していて、上記側板部に対する切起し片の上端部の曲り角度が、側板部の外面を伝い落ちてきた水が切起し片側に伝い落ちることを阻止し得る水切り可能な値に定められ、上記トップケースの後端に曲成された縁枠部が背面パネルに重ね合わされてその重なり箇所が背面パネルの後方からねじ込まれた取付けビスによってビス止めされていると共に、切起し片でなる上記受部が、そのビス止め操作初期に背面パネルに加えられる前向きの押込み力をその背面パネルに接触して受け止めるようになっている、という構成を採用すことによっていっそう具体化される。この発明の作用などについては、後述する実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る電気機器筐体は、従来例の受部の形成箇所を変更するだけの簡単な対策を講じるだけで、受部として高い位置決め精度を発揮しかつ形成スペースが狭くて済む切起し片を採用したとしても、筐体内部への水の浸入に伴う問題が生じにくくなるだけでなく、組立作業性や組立後の筐体強度が低下するおそれが少なくなるという効果を奏し得る。したがって、仮に使用中にユーザが湯飲みや花瓶などの水を筐体の上に不慮にこぼしたとしても、その水が筐体内部に浸入して配線基板や端子類、電気電子機器などに悪影響を与えたり電気的にショートを生起したりするといった危険性が解消されて電気機器の安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る電気機器筐体のトップケース1の要部を示した概略斜視図、図2は図1の部分拡大図、図3は図2のIII−III線に沿う部分の拡大断面図である。また、図4はトップケース1と背面パネル6とのビス止め箇所を図2のIV−IV線に沿う方向から見て示した横断平面図である。
【0023】
この実施形態に係る電気機器筐体は、その基本構成が図7を参照して説明した従来例と同様であって、ボトムケースと、そのボトムケースの後端に固着された背面パネルと、板金製のトップケース1と、フロントパネルとを備える横長偏平な箱形に形成された筐体本体を備えていて、フロントパネルにはディスクの出入口や磁気記録再生装置の使用対象である磁気テープカセットの出入口などが備わっている。
【0024】
そして、この実施形態の筐体では、従来例と同様にトップケース1に切起し片5が形成されていて、その切起し片5が背面パネルに対する受部Rとして機能するようになっているけれども、その受部Rとしての切起し片5の形成箇所が従来例とは相違している。すなわち、従来例では、受部Rとしての切起し片5がトップケース1の天板部12に形成されていたのに対し、この実施形態ではその切起し片5の形成箇所を変更してトップケース1の側板部15に選定してあり、天板部12からは切起し片5を抹消してある。
【0025】
図3又は図4に示したように、トップケース1の側板部15に形成されている上記切起し片5は、切起し工程で形成される切り目が上下方向(筐体の高さ方向)に延び、その上端部と下端部とが側板部15に連設されて連続している。したがって、切起し工程で形成される上記切り目が開くことによって形成されている隙間Sが、切起し片5の前後で前向き又は後向きに開口している。これに対し、切起し片5自体によって形成されている受部Rの相手方部位としての背面パネル6の幅方向端部に曲成されている上下方向(筐体の高さ方向)に長いリブ65が、トップケース1の天板部12の後端の全幅部分に曲成されたリブ状の縁枠部13と切起し片5の後側端面51との相互間隙間に嵌め込まれて前後に動かないように位置決めされていると共に、トップケース1の上記縁枠部13のビス挿通孔14に挿通させた取付けビス7が、背面パネル6のねじ孔63にねじ込まれて締め付けられている。したがって、トップケース1の縁枠部13と背面パネル6との重なり箇所が取付けビス7によってビス止めされている。
【0026】
上記した取付けビス7のねじ締め作業を伴う組立工程では、取付けビス7によるビス止め操作初期(ねじ込み初期)にリブ65の端面である当り縁66が切起し片5の後側端面51に突き当たるために、背面パネル6に加えられる前向きの押込み力が切起し片5によって受け止められる。その結果、ビス止め操作初期に取付けビス7の先端によって押された背面パネル6が撓んで前方へ逃げるといった現象が回避されて、取付けビス7によるビス止め作業を熟練を要することなく迅速かつ確実に行うことができる。また、フロントパネル1と背面パネル6とをビス止め操作を経て取り付けた後では、背面パネル6のリブ65が、切起し片5とフロントパネル1の縁枠部13とによって挟まれているので、背面パネル6の前後方向での撓み変形が防止されて組立後の筐体強度の向上の低下が抑制される。以上より、上記した切起し片5は、組立作業中及び組立後において、背面パネル6を受け止める受部としての機能を果している。
【0027】
図1〜図4を参照して説明した構造を有する電気機器筐体によると、トップケース1の天板部12から切起し片5が抹消されているので、その天板部12には切起し片5を加工することによって発生する隙間が存在しなくなる。そのため、トップケース1の上に水がこぼれ落ちたとしても、その水が天板部12の隙間から筐体内部に浸入するという事態は起こり得ない。
【0028】
一方、トップケース1の上に水がこぼれ落ちた場合、その水がトップケース1の側板部15を伝い落ちるということはあり得る。しかし、側板部15に形成されている切起し片5の形成箇所では、隙間Sが切起し片5の前後両側で前向き又は横向きに開口しているに過ぎないので、側板部15を伝い落ちた水がその隙間Sを通って筐体内部に浸入するという事態は起こりにくい。また、仮に隙間Sを通って筐体内部に水が浸入したとしても、その水は側板部15の内面を伝い落ちるだけであるので、受部Rとしての切起し片5の形成箇所の隙間Sから筐体内部に浸入した水で配線基板や端子類、電気電子部品などの濡れて損傷したり電気的なショートを発生したりするという事態の起こるおそれがほとんどなくなる。また、切起し片5が側板部15にその上端部と下端部とで両持ちされた構成になっているので、切起し片5が、その端面に加わる荷重に対して大きな耐荷重性を発揮する結果、ビス止め作業時に背面パネル6のリブ65がその切起し片5に強く押し付けられても、その切起し片5が曲がって位置決め作用を損なうという事態を生じない。
【0029】
本発明の他の実施形態では切起し片5の形状が図3のものとは相違している。すなわち、図5に示した他の実施形態に係る切起し片5は、その上端部と下端部とがトップケース1(図1参照)の上記側板部15に連続していて、その側板部15に対する切起し片5の上端部の曲り角度θが90度よりも小さくない角度(具体的には90度)に定められている。この形状を切起し片5によると、側板部15の外面を伝い落ちてきた水が切起し片5側に伝い落ちることがなくなるので、図5矢印Dのように水が切起し片5の形成箇所に入ることなく落下するようになり、隙間Sから筐体内部に水が浸入するという事態がさらに効果的に防止されるようになる。なお、この実施形態では、上記曲り角度θを90度に定めてあるけれども、この曲り角度θは90度より大きい角度であってもよい。言い換えると、側板部15の外面を伝い落ちてきた水が切起し片5側に伝い落ちることを阻止し得る水切り可能な値(角度)に定められていればよい。
【0030】
本発明のさらに他の実施形態では、切起し片5の形成箇所を変更してトップケース1の側板部15に選定してあり、天板部12からは切起し片5を抹消してあることに加えて、天板部12に受部Rとして作用する絞り部を形成しておくことが可能である。この事例を図6に示してある。同図において、トップケース1の側板部15に形成されている受部Rとしての切起し片5は図1〜図4又は図5に示した切起し片5と同様の構成及び作用を発揮する。これに対し、トップケース1の天板部12に形成された受部Rとしての絞り部8は、トップケース1の内側に突出されていてそれ自体が切り目を有していない。そのため、トップケース1に絞り部8が形成されているとしても、そのトップケース1には切起し片5を形成することに伴う隙間が存在していない。
【0031】
このものにおいて、切起し片5と絞り部8とは、図4などを参照して説明したビス止め操作初期に背面パネル(図6において不図示)に加えられる前向きの押込み力を、その背面パネルに接触して受け止めるようになっている。という構成を採用することも可能である。この構成によると、トップケース1の側板部15に形成されている受部Rとしての切起し片5のほか、トップケース1の天板部12に形成されている受部Rとしての絞り部8によっても、上記した組立作業性や組立後の筐体強度の向上が図られる。
【0032】
以上説明したそれぞれの実施形態において、切起し片5はその上端部と下端部とがトップケース1の側板部15に連設された両持ち構造になっているけれども、この点は、切起し片の上端部を残して他の辺を側板部15から切り離したものであってもよい。
【0033】
なお、図1〜図9では、説明を簡略にするために、同一又は相応する部分に同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る電気機器筐体のトップケースの要部を示した概略斜視図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う部分の拡大断面図である。
【図4】トップケースと背面パネルとのビス止め箇所を図2のIV−IV線に沿う方向から見て示した横断平面図である。
【図5】他の実施形態に係る切起し片を示した図3に相応する拡大断面図である。
【図6】さらに他の実施形態に係るトップケースの要部の概略斜視図である。
【図7】従来例による電気機器筐体の外観を示した概略斜視図である。
【図8】従来例に係るトップケースの要部の拡大斜視図である。
【図9】従来例に係るトップケースと背面パネルとのビス止め箇所を説明的に示した概略拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 トップケース
5 切起し片
6 背面パネル
7 取付けビス
12 天板部
13 トップケースの縁枠部
15 側板部
66 背面パネルの当り縁
R 受部
θ 側板部に対する切起し片の上端部の曲り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金製のトップケースとこのトップケースの後端に配備された背面パネルとを有して箱形に形成されている筐体本体の上記トップケースの天板部に、上記背面パネルに対する受部としての切起し片が形成されている電気機器筐体において、
上記切起し片の形成箇所を、トップケースの天板部からその側板部に変更することによって天板部から切起し片を抹消してあり、トップケースの側板部に形成された切起し片は、切起し工程で形成される切り目が、上記受部の相手方部位としての上記背面パネルの当り縁に沿う方向に延び、かつ、その上端部と下端部とが上記側板部に連続していて、上記側板部に対する切起し片の上端部の曲り角度が、側板部の外面を伝い落ちてきた水が切起し片側に伝い落ちることを阻止し得る水切り可能な値に定められ、
上記トップケースの後端に曲成された縁枠部が背面パネルに重ね合わされてその重なり箇所が背面パネルの後方からねじ込まれた取付けビスによってビス止めされていると共に、切起し片でなる上記受部が、そのビス止め操作初期に背面パネルに加えられる前向きの押込み力をその背面パネルに接触して受け止めるようになっていることを特徴とする電気機器筐体。
【請求項2】
板金製のトップケースとこのトップケースの後端に配備された背面パネルとを有して箱形に形成されている筐体本体の上記トップケースに、上記背面パネルに対する受部としての切起し片が形成されている電気機器筐体において、
上記切起し片の形成箇所を上記トップケースの側板部に選定したことを特徴とする電気機器筐体。
【請求項3】
上記切起し片の上端部と下端部とが上記側板部に連続していて、上記側板部に対する切起し片の上端部の曲り角度が、側板部の外面を伝い落ちてきた水が切起し片側に伝い落ちることを阻止し得る水切り可能な値に定められている請求項2に記載した電気機器筐体。
【請求項4】
上記トップケースの後端に曲成された縁枠部が背面パネルに重ね合わされてその重なり箇所が背面パネルの後方からねじ込まれた取付けビスによってビス止めされていると共に、上記受部が、そのビス止め操作初期に背面パネルに加えられる前向きの押込み力を、その背面パネルに接触して受け止めるようになっている請求項2又は請求項3に記載した電気機器筐体。
【請求項5】
上記受部が、トップケースの側板部に形成された上記切起し片と、そのトップケースの天板部に形成されてその内側に突出された切り目を有しない絞り部とを含み、それらの切起し片と絞り部とが、上記ビス止め操作初期に背面パネルに加えられる前向きの押込み力を、その背面パネルに接触して受け止めるようになっている請求項4に記載した電気機器筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−71956(P2008−71956A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249636(P2006−249636)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】