説明

電気機器

【課題】移動および高さ調整を可能にする機構を、筐体に収められる機器の配置を制限することなく省スペース化することが可能な電気機器を提供すること。
【解決手段】筐体と、ローラーと、下端でローラーを回転可能に支持するとともに上端で筐体を支持し、下端から上端までの高さを変化させるように作動するリンク機構と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動および高さ調整が可能な電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動できる機能、および筐体の高さを調整できる機能が求められる電気機器の一つに、金融機関(例えば、銀行)の窓口業務などで使用される現金処理装置がある。このような現金処理装置は、設置場所を変更するときや保守作業を行うときのために移動可能であることが求められ、操作者の利便性を向上させるために設置場所の環境に応じて筐体の高さが変更可能であることが求められている。そのため、このような現金処理装置には、通常、筐体を移動させる移動機構と筐体の高さを変化させる高さ調整機構とが一体化された機械部品が取り付けられる。
【0003】
図6は移動機構および高さ調整機構を備えた機械部品が現金処理装置に取り付けられた状態を示す図である。図6(a)は側面図を示し、図6(b)は正面図を示す。
【0004】
図6に示す機械部品は、ローラーとローラーを支持する固定部材とで構成されるキャスター61と、キャスター61の上端に固定された台座62と、台座62の上面に鉛直に固定されたボルトである主軸63と、主軸63に係合するナット64と、を有する。主軸63は、図6に示すように、ナット63を係合した状態で、筐体底部65に予め設けられた穴に差し込まれる。なお、この穴は、筐体底部65を貫通して筐体内部66まで通じている。
【0005】
図6に示すような機械部品は、通常、1つの筐体に4つ以上取り付けられている。そして、各機械部品のキャスター61が主軸63を介して筐体(筐体底部65および筐体内部66)を支持しているため、キャスター61の回転により筐体の移動が可能になる。
【0006】
また、ナット63を回転させる力が加えられると、ナット63は鉛直方向に移動する。この移動により主軸63の筐体に差し込まれた部分の深さが変化する。この深さを変化させることによって筐体の高さを変化させることが可能となる。
【0007】
しかし、図6に示す機械部品を用いる場合、主軸63を収納するスペース(穴)を筐体に確保しなければならない。そのため、筐体に収められる機器の配置が制限されるという問題が起こり得る。
【0008】
上記問題を解決する一つの手段として、特許文献1に開示されている装置を適用することが考えられる。
【0009】
特許文献1には、キャスターと、キャスターの上方に固定された台座と、台座の上面に固定されたジャッキと、ジャッキの上端に固定されたフランジとで構成される装置が開示されている。ジャッキには、水平方向に配置された主軸と、主軸が回転するとピボット運動を行う4本のアームとが、設けられている。
【0010】
特許文献1に開示された装置では、ジャッキの主軸を回転させると、4本のアームがそれぞれピボット運動することによって、フランジの高さを変化させることが可能になる。図6に示す現金処理装置において、主軸63およびナット64の代わりに特許文献1に開示されたようなジャッキが台座62の上に取り付けられると、筐体内部に高さ調整機構(主軸63)を収納するためのスペースが不要になる。これにより、筐体に収められる機器の配置を制限することなく筐体の高さを調整できるようになる。
【特許文献1】特開2002−160893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された装置は、キャスターの上方に配置された台座にジャッキが取り付けられた構造なので、設置場所には、高さ方向に、キャスターの高さとジャッキの高さと台座の高さとを合計した大きさのスペースが必要になる。そのため、特許文献1に開示されている装置を図6に示す機械部品に適用させると、高さ方向のスペースが狭い場所では、現金処理装置を設置できないという問題が起こり得る。
【0012】
本発明は、移動および高さ調整を可能にする機構を、筐体に収められる機器の配置を制限することなく省スペース化することが可能な電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明による電気機器は、
筐体と、
ローラーと、
下端で前記ローラーを回転可能に支持するとともに上端で前記筐体を支持し、前記下端から前記上端までの高さを変化させるように作動するリンク機構と、
を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リンク機構を筐体内に収納させることなく筐体の高さを調整できるので、筐体に収められる機器の配置が制限されない。また、リンク機構がローラーを直接支持しているので、ローラーの上方に位置してリンク機構を固定させる台座が不要であり、設置場所において高さ方向の省スペース化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の電気機器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の電気機器は、金融機関で窓口業務を行う者に使用され、机の下または横に設置される現金処理装置とし、この現金処理装置の筐体内部には、現金を収納する機器、現金の入出を行う機器などが配置されている。
【0017】
図1は、本実施形態の現金処理装置の構造の一例を説明するための図である。図1(a)は側面図を示し、図1(b)は正面図を示す。
【0018】
本実施形態の現金処理装置は、図1に示すように、ローラー1、2と、固定部材3、4と、主軸5と、アーム支持部材6、7と、アーム8〜11と、ベアリング12と、筐体13と、を有する。本実施形態では、これらの構成のうち、固定部材3、4と、主軸5と、アーム支持部材6と、アーム支持部材7と、アーム8〜11とからなる構成をリンク機構と称することとする。
【0019】
この現金処理装置では、筐体13の底面に配置されたベアリング12にリンク機構が取り付けられ、このリンク機構にローラー1、2が車軸14を中心として回転可能に取り付けられている。すなわち、筐体13の底面に、ベアリング12およびリンク機構を介してローラー1、2が取り付けられて、筐体13が支持されている。よって、ローラー1、2が回転することにより、筐体13の移動が可能になる。また、本実施形態の現金処理装置では、リンク機構が、筐体13とローラー1、2との間隔を連続的に変化させることができるので、筐体13の底面からの高さの調整が可能になる。以下に、このローラー1、2、およびリンク機構の詳細な構成について説明する。
【0020】
ローラー1およびローラー2は、固定部材3に設けられた車軸14の両側にそれぞれ回転可能に支持される。図1では、説明のためにローラー2が車軸14から取り外された状態となっているが、実際は、図2に示すようにローラー2は車軸14の片側に回転可能に取り付けられる。なお、本実施形態では2台のローラーが用いられているが、ローラーの数は特に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態のリンク機構は、ベアリング12を介して筐体13に取り付けられた固定部材4と、車軸14を介してローラー1、2を支持している固定部材3とが、アーム8、10およびアーム9、11を介して接続された構成である。
【0022】
具体的には、固定部材3には、車軸14に加え、アーム8、9を揺動可能に取り付けるための軸15および軸16が設けられている。また、固定部材4には、アーム10、11を揺動可能に取り付けるための軸17および軸18が設けられている。固定部材4は、図1(a)に示すように、ローラー1、2の進行方向に対して斜め上の方向に向かって延びた形状である。これにより、図1に示す現金処理装置は、図6に示す現金処理装置と同様に、ローラー1、2を進行方向に指向しやすいものとなる。
【0023】
アーム8は、ピボット運動できるように、一端が固定部材3の軸15に取り付けられ、他端がアーム支持部材6に設けられた軸19に取り付けられる。アーム9は、ピボット運動できるように、一端が固定部材3の軸16に取り付けられ、他端がアーム支持部材7に設けられた軸20に取り付けられる。アーム10は、ピボット運動できるように、一端が固定部材4の軸17に取り付けられ、他端がアーム8と同様に軸19に取り付けられる。アーム11は、ピボット運動できるように、一端が固定部材4の軸18に取り付けられ、他端がアーム9と同様に軸20に取り付けられる。したがって、アーム8とアーム10は、軸19によって互いに揺動可能に連結され、アーム8は軸15によって固定部材3に、アーム10は軸17によって固定部材4にそれぞれ連結されている。同様に、アーム9とアーム11は、軸20によって互いに揺動可能に連結され、アーム9は、軸16によって固定部材3に、アーム11は、軸18によって固定部材4にそれぞれ連結されている。
【0024】
軸19によってアーム8とアーム10を連結しているアーム支持部材6と、軸20によってアーム9とアーム11を連結しているアーム支持部材7は、水平方向に延びる主軸5によって接続されている。この主軸5は、一端には頭部21が設けられ、他端側には、図3に示すように、ねじが切られている。また、頭部21の隣には、アーム支持部材6が固定されている。さらに、主軸5のねじが切られている部分には、ナット部を有するアーム支持部材7が、主軸5の回転により主軸5に沿って移動できるように取り付けられている。
【0025】
なお、本実施形態では、図1(b)に示すように、頭部21には、六角レンチを用いて主軸5を回転させる六角形の穴が設けられているが、この穴の形状は、六角形に限定されない。この穴は、例えば、プラスドライバまたはマイナスドライバで回転できる形状であってもよい。
【0026】
ベアリング12は、固定部材4と筐体13との間に取り付けられる。ベアリング12によって、ローラー1、2およびリンク機構が、鉛直方向を回転軸として回転可能になる。なお、ベアリング12は、ローラー1、2およびリンク機構を回転させる必要がない場合には不要である。
【0027】
次に、本実施形態の現金処理装置について、高さを変化させる際のリンク機構の動作について説明する。
【0028】
現金処理装置が図2に示す状態のときに六角レンチを用いて頭部21を回転させると、アーム支持部材7がアーム支持部材6に向かって移動する。すると、図4に示すようにアーム8〜アーム11のピボット運動により、アーム支持部材7の水平方向に移動する力が鉛直方向に伝達される。これにより、固定部材3から固定部材4までの高さを連続的に変化させることが可能となる。すなわち、筐体13の底面からの高さを調整することが可能となる。
【0029】
本実施形態では、筐体内部に穴を設けることなく筐体を支持する構造であるので、筐体に収められる機器の配置が制限されることがない。また、台座を必要としないで筐体の高さを調整できるので、高さ方向に関して省スペース化することが可能となる。特に、図2に示すように、筐体の高さを最も低くする状態のときには、リンク機構の上端がローラーの上端とほぼ同じ高さになるので、ローラーの上方に位置する台座の上にジャッキが固定された構成の場合に比べ、設置場所に必要な高さ方向のスペースをより小さくできる。これは、リンク機構のアーム8、9の一端が、ローラー1、2を支持する車軸14が設けられた固定部材3に取り付けられているからである。すなわち、アーム8、9の一端が車軸14の近傍(少なくとも固定部材3におけるローラー1、2の上端よりも低い位置)に取り付けられているため、リンク機構の下端が車軸14とほぼ同じ高さ、すなわちローラー1、2の中心とほぼ同じ高さになっているからである。そして、固定部材3と固定部材4を近づけるようにアーム8〜11がピボット運動を行いリンク機構が縮小するとき、最終的に、リンク機構全体が、高さ方向に、ローラー1、2の中心からローラー1、2の上端近傍までの範囲に収まる。従って、リンク機構全体がローラー1、2よりも上方に配置されている場合に比べて、高さ方向のスペースを大幅に小型化できる。なお、固定部材3と固定部材4を遠ざけるようにアーム8〜11がピボット運動を行いリンク機構が広がったとき、筐体13を十分に高い位置に上昇できるようにアーム8〜11の長さが決められている。
【0030】
なお、本発明では、例えば図5に示すように、ピボット運動を行うアームの数を2本とする構成であってもよい。この場合、図1に示す現金処理装置に比べアームの数を減らすことができるので、経済性が優れたものとなる。図5では、リンク機構は、車軸14を介してローラー1、2を支持している固定部材3(不図示)が、アーム8を介して、筐体13の底面に固定されて主軸5を支持しているアーム支持部材6に接続されるとともに、アーム9を介して、主軸5に取り付けられているアーム支持部材7に接続された構成である。また、このリンク機構では、主軸5をぐらつかせないようにするために、筐体13の底面に固定された固定部材51とアーム支持部材6とで主軸5を支持している。図5では、主軸5が回転すると、アーム支持部材7の水平方向に移動する力が、アーム8およびアーム9によって鉛直方向に伝達される。これにより、図1に示す現金処理装置と同様、筐体13の底面からの高さを連続的に変化させることが可能となる。
【0031】
本発明の電気機器は、上述した現金処理装置に限定されるものではなく、移動および高さ調整が必要とされる電気機器であればよい。本発明をこのような電気機器に適用させた場合でもリンク機構の動作内容は変わらないので、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態の現金処理装置の構造の一例を説明するための図である。(a)は側面図を示し、(b)は正面図を示す。
【図2】図1に示す現金処理装置において、ローラーが実際に取り付けられた状態を示す図である。(a)は側面図を示し、(b)は正面図を示す。
【図3】図1に示す現金処理装置において、リンク機構の構造を説明するための図である。
【図4】図3に示す現金処理装置において、ローラーが実際に取り付けられた状態を示す図である。
【図5】本発明において、アームの数が2本の現金処理装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図6】移動機構および高さ調整機構を備えた機械部品が現金処理装置に取り付けられた状態を示す図である。(a)は側面図を示し、(b)は正面図を示す。
【符号の説明】
【0033】
1、2 ローラー
3、4 固定部材
5、63 主軸
6、7アーム支持部材
8、9、10、11 アーム
12 ベアリング
13 筐体
14 車軸
15、16、17、18、19、20 軸
21 頭部
61 キャスター
62 台座
64 ナット
65 筐体底部
66 筐体内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
ローラーと、
下端で前記ローラーを回転可能に支持するとともに上端で前記筐体を支持し、前記下端から前記上端までの高さを変化させるように作動するリンク機構と、
を有する電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器において、
前記リンク機構は、
回転可能な主軸と、
前記主軸に固定された第1のアーム支持部材と、
前記主軸の前記第1のアーム支持部材が固定される位置とは異なる位置に、前記主軸に沿って移動可能に取り付けられた第2のアーム支持部材と、
前記ローラーを回転可能に支持する第1の固定部材と、
ピボット運動可能に、一端が前記第1の固定部材における前記ローラーの上端よりも低い位置に取り付けられ、他端が前記第1のアーム支持部材に取り付けられた第1のアームと、
ピボット運動可能に、一端が前記第1の固定部材における前記ローラーの上端よりも低い位置に取り付けられ、他端が前記第2のアーム支持部材に取り付けられた第2のアームと、
前記筐体を支持する第2の固定部材と、
ピボット運動可能に、一端が前記第2の固定部材に取り付けられ、他端が前記第1のアーム支持部材に取り付けられた第3のアームと、
ピボット運動可能に、一端が前記第2の固定部材に取り付けられ、他端が前記第2のアーム支持部材に取り付けられた第4のアームと、
を有する電気機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電気機器において、
前記リンク機構は、
回転可能な主軸と、
前記主軸および前記筐体に固定された第1のアーム支持部材と、
前記主軸の前記第1のアーム支持部材が固定される位置とは異なる位置に、前記主軸に沿って移動可能に取り付けられた第2のアーム支持部材と、
前記ローラーを回転可能に支持する固定部材と、
ピボット運動可能に、一端が前記固定部材における前記ローラーの上端よりも低い位置に取り付けられ、他端が前記第1のアーム支持部材に取り付けられた第1のアームと、
ピボット運動可能に、一端が前記固定部材における前記ローラーの上端よりも低い位置に取り付けられ、他端が前記第2のアーム支持部材に取り付けられた第2のアームと、
を有する電気機器。
【請求項4】
請求項2に記載の電気機器において、
前記ローラーおよび前記リンク機構が鉛直方向の軸の周りで回転できるように、前記筐体の底面と前記第2の固定部材の間に取り付けられたベアリングを有する電気機器。
【請求項5】
前記電気機器は現金処理装置である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−121756(P2010−121756A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297971(P2008−297971)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)