説明

電気機器

【課題】充填した樹脂が硬化時に収縮作用が発生してもパッキンの変形を抑制して組立て作業性も低下することがない電気機器を提供する。
【解決手段】電気機器は、パッキン本体の内部に平板状の補強部材17aが設けられているので、ケース体内の樹脂充填が収縮してパッキン17に引っ張り応力が加わったとしてもケース体内側方向への変形量を最小限に抑えることができる。このため、ケース体とパッキン17との間に隙間が形成されにくくなり、未硬化の充填樹脂が流出することを防止できる。また、パッキン17の硬度を高くする必要がないのでケース体への嵌め合わせ作業に影響がなく、作業性の低下を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を収容したケース体内に充填材を充填する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を実装した基板を、金属製などの箱状のケース体に収容する場合には、筒状に形成したケース体に基板を軸方向に沿って収容し、パッキンを介してケース体の他端側の開口部を閉塞した後、ケース体の一端側の開口部からウレタンやポリエステル等の樹脂を充填する方法が知られている。このようにケース体内に充填された樹脂を硬化させることで、比較的形成が容易で汎用性があるケース体を用いつつ、防水性を確保した電気機器を提供することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の電気機器の製造方法では、充填した樹脂が硬化時に収縮作用が発生してパッキン自体が樹脂充填側に引っ張られるようにケース体内側方向に変形し、ケースとパッキンとの間に隙間が形成されて未硬化の充填樹脂が流出してしまうという問題があった。
【0005】
この不具合を解消するために、硬化時の変形を少ない硬度の高いパッキンを使用することも考えられるが、パッキンの硬度が高いとケースへの嵌め合わせ作業が行ないにくくなり、作業性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、充填した樹脂が硬化時に収縮作用が発生してもパッキンの変形を抑制して組立て作業性も低下することがない電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の電気機器は、筒状に形成され、少なくとも一端側に開口部を有するとともに、内部に保持部が形成されたケース体と;板状に形成され、前記筒状のケース体の保持部に保持された状態で前記ケース体に収容される基板と;この基板に実装された電子部品と;前記開口部から前記ケース体内に充填され、前記電子部品の少なくとも一部を覆った状態で硬化される充填材と;ケース体の開口部を閉塞する蓋部と;ケース体と蓋部との間に挟着される平板状の弾性体からなるパッキン本体を有し、このパッキン本体の内部に設けられた平板状の補強部材が設けられたパッキンと;を具備していることを特徴とする。
【0008】
ケース体は、例えば、金属などにより筒状に押し出し形成されたものなどが用いられる。
【0009】
基板は、例えば、複数の電子部品が実装された回路基板であり、例えば、電子部品を両面に実装した両面実装プリント配線基板などが用いられる。
【0010】
充填材は、例えば、ウレタンやシリコーン樹脂などの流動性、放熱性および絶縁性に優れた熱硬化性の部材が用いられる。
【0011】
保持部は、ケース内側に設けられた基板を所定の位置に保持する部分であり、基板を保持可能な構成であればよい。
【0012】
蓋部は、ケース体の開口部を閉塞するようにケース体の端部側に取付けられる部材であり、周縁部がケース体の端部側と接合する。周縁部の内側には端子台等が設けられていてもよい。
【0013】
パッキンは、ケース体と蓋部との間に挟着されるパッキン本体を有している。このパッキン本体は、例えばシリコーンゴム等の合成樹脂製の平板状の弾性体から形成されている。このパッキン本体の内部には、金属製、セラミック製または合成樹脂製の比較的剛性の高い平板状の補強部材が設けられている。補強部材は、パッキン本体と一体成形されていてもよく、パッキン本体に形成された挿入開口から挿入してパッキン本体の内部に収容されていてもよい。
【0014】
請求項1の電気機器は、パッキン本体の内部に平板状の補強部材が設けられているので、ケース体内の樹脂充填が収縮してパッキンに引っ張り応力が加わったとしてもケース体内側方向への変形量を最小限に抑えることができる。このため、ケースとパッキンとの間に隙間が形成されにくくなり、未硬化の充填樹脂が流出することを防止できる。
【0015】
また、パッキンの硬度を高くする必要がないのでケース体への嵌め合わせ作業に影響がなく、作業性の低下を避けることができる。
【0016】
請求項2は、請求項1記載の電気機器において、パッキンの補強部材は、ケース体の開口部と蓋部との挟着部分よりも内側に設けられていることを特徴とする。
【0017】
補強部材は、ケース体の開口部と蓋部との挟着部分には存在しないので、パッキン本体の挟着部分における弾性が損なわれることがなく、防水機能を維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気機器によれば、パッキン本体の内部に平板状の補強部材が設けられているので、充填した樹脂が硬化時に収縮作用が発生してもパッキンの変形が抑制されて未硬化の充填樹脂が流出することを防止することが可能となり、パッキンの硬度を高くする必要がないので組み立て作業性も低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す電気機器の分解斜視図である。
【図2】同上電気機器の製造方法の説明図である。
【図3】同上電気機器のパッキンを示す図面であり、それぞれ(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1ないし図3に第1の実施の形態を示し、図1は電気機器の分解斜視図、図2は電気機器の製造方法の説明図、図3は電気機器のパッキンを示す図面であり、それぞれ図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
【0022】
図1および図2の電気機器は、放電灯点灯装置11であり、この放電灯点灯装置11は、ケース体12に基板13を収納して構成され、高輝度放電ランプ(HID)などの放電灯を点灯させるものである。
【0023】
ケース体12は、例えばアルミニウムなどの金属の押し出し成形などにより角筒状に形成されたケース本体15と、このケース本体15の両端部に取り付けられたシール部材であるパッキン16,17および蓋部18,19とを備えている。
【0024】
押し出し成形のケース本体15は、一端部に開口部21を備えるとともに、他端部に開口部22を備えた中空筒状の堅牢な構造体であるが、共通金型にて切り出し長さを変更するだけで容易にサイズ調整が可能であり、汎用性に優れ、製造コストを抑制可能な部品である。また、このケース本体15の内側の両側部には、基板13の両側部が嵌合される一対の保持部としての溝部23,23が互いに対向して設けられている。これら溝部23,23は、軸方向である長手方向全体に亘って直線状に形成され、両端部が各開口部21,22に臨んでおり、これら溝部23,23間に基板13が嵌合・保持されることで、ケース本体15内には、基板13の一主面である表面側に第1空間部25が区画されるとともに、基板13の他主面である裏面側に第2空間部26が区画される。本実施の形態では、第1空間部25が広く、第2空間部26が狭く形成されている。
【0025】
また、開口部21は、パッキン16と蓋部18とにより覆われている。パッキン16は、ケース本体15内に充填される充填材である合成樹脂Pの隙間からの漏れを防止するもので、弾力性および可撓性を有する部材により形成されている。また、蓋部18は、例えばケース本体15と同様の金属により形成され、ねじS1などによりパッキン16とともにケース本体15に固定可能である。
【0026】
蓋部18の外面側には端子台51がねじ等の手段によって取付けられている。端子台51の主面側には4つのリード線挿入孔52、52が設けられている。
【0027】
ここで、合成樹脂Pは、例えばウレタン、あるいはシリコーン樹脂などの流動性、絶縁性および放熱性を有する液状の部材で、かつ、熱硬化性の部材とする。
【0028】
一方、開口部22は、パッキン17と蓋部19とにより閉塞されている。パッキン17は、パッキン16と同様に、ケース本体15内に充填される合成樹脂Pの隙間からの漏れを防止するもので、シリコーンゴム等の合成樹脂製の弾力性および可撓性を有する平板状のパッキン本体によって形成されている。また、蓋部19は、例えばケース本体15と同様の金属により形成され、ねじS2などによりパッキン17を挟着しながらケース本体15に固定可能である。
【0029】
図3に示すように、パッキン17の内部には、金属板からなる平板状の補強部材17aがパッキン本体17bと一体成形することによって配設されている。パッキン本体17bの内側部分は、ケース本体15内に向けて突出した突状部17cが設けられており、パッキン本体17bの周縁に鍔状に設けられた弾性挟着部17dよりも厚肉であり、かつ突状部17cの周縁がケース本体15の開口部22に嵌合されるように成形されている。なお、補強部材17aは、パッキン本体17bに形成された挿入開口から挿入してパッキン本体の内部に収容されていてもよい。
【0030】
補強部材17aは、パッキン17のケース体15の開口部22と蓋部19との挟着によって変形する弾性挟着部17dには存在せず、弾性挟着部17dよりも中心側の突状部17c内に設けられている。このため、補強部材17aが設けられていても、ケース体15の開口部22と蓋部19との挟着による弾性挟着部17dの弾性が損なわれることがなく、パッキン17による防水機能を維持することができる。
【0031】
基板13は、四角形板状の基板本体31と、この基板本体31の表面、あるいは裏面に実装された点灯回路部品である電子部品32、33a、33bなどを備えている。基板本体31は、例えばガラスエポキシなどの絶縁性の部材により形成されている。基板本体31の端部には、その長手方向へ突出するスペーサ42が取付けられており、基板本体31の端部とパッキン17との間で連通部を形成している。すなわち、スペーサ42の先端がパッキン17に接触することで、基板本体31の端部とパッキン17とが所定の距離だけ離間され、基板13の端部に連通部が区画される。スペーサ42は、基板本体31に略直交する方向、すなわち基板本体31の厚み方向に沿って面方向を有する板状に形成されており、溝部23,23よりも大きく形成され、基板本体31の側方に一主面が向けられている。さらに、これらスペーサ42は、例えば基板本体31の両側部から所定の距離分幅方向の中心側に位置し、溝部23,23が形成されたケース本体15の内面の両側部に当接することで、基板13の幅方向位置をケース体12に対して位置決め可能に構成されている。
【0032】
また、電子部品32は、例えばコンデンサ、抵抗器、インダクタ、トランジスタ、あるいはICなどであり、基板本体31上に形成された図示しないパターンなどとともに、所定の回路、ここでは図示しない放電灯を点灯させるインバータを備えた点灯回路を、基板本体31上に形成している。なお、各図において、電子部品32、33a、33bは一部のみを記載し、その配置は任意に設定可能である。
【0033】
次に、上記第1の実施の形態の放電灯点灯装置11の製造方法を説明する。なお、図2においては、説明の便宜上、端子台51を省略している。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、開口部22にパッキン17と蓋部19とを固定して開口部22を閉塞したケース本体15を、開口部21を上側とした状態で保持し、各電子部品32を実装した基板13の基板本体31の両側部をケース本体15の溝部23,23に嵌合させ、ケース本体15の軸方向へと摺動させて挿入することで、基板13をケース本体15内に軸方向に沿って収納する。
【0035】
このとき、スペーサ42の先端がパッキン17に接触することで、基板本体31の端部とパッキン17との間に連通部が形成されるとともに、ケース本体15の内部において、基板本体31の表面側に第1空間部25が、裏面側に第2空間部26が、それぞれ区画される。
【0036】
この状態で、図2(b)に示すように、ここでは開口部21からノズルNなどにより合成樹脂Pを第1空間部25へと注入すると、この第1空間部25へと流れ込んだ合成樹脂Pの一部が、基板13とケース体12の内面との隙間、あるいは、基板13下方端部側の連通部などを介して第2空間部26へと回り込む。
【0037】
なお、合成樹脂Pを第2空間部26へと注入した場合でも、同様の作用により合成樹脂Pが第1空間部25へと回り込む。
【0038】
さらに、図2(c)に示すように、合成樹脂Pが所定量、ここでは合成樹脂Pの液面がケース本体15の高さ寸法の半分程度の位置まで充填されると、パッキン16および蓋部18により開口部21を覆い、これらパッキン16および蓋部18をケース本体15に固定する。このとき、基板13から導出されたリード線を蓋部18の図示しない挿通孔を介して端子台51に接続する。
【0039】
次いで、この状態で、図2(d)に示すように、ケース体12を、開口部21,22が水平方向に向くように、換言すれば、基板13の面方向が上下方向、ここで基板13の一主面側の第1空間部25が上側、第2空間部26が下側となるように倒す。
【0040】
このとき、液状の合成樹脂Pは、自重により下側の第2空間部26の全てを充填するように流動し、基板13が合成樹脂Pに埋没する。そして、合成樹脂Pの流動によって合成樹脂Pの液面が、突出電子部品33aの頂部と略同位置で、他の電子部品32、33bの全体を埋没させる高さ位置となり、液面とケース本体15の内面との間に空間が形成される。
【0041】
そして、この状態で、図2(e)に示すように、ケース体12を所定温度、例えば80℃下で所定時間、例えば1時間熱処理することで合成樹脂Pを硬化させて、放電灯点灯装置11を完成する。
【0042】
この後、基板13に接続したリード線により、端子台51を介して外部から入力された電力を高周波交流電力に変換する点灯回路の出力により放電灯が点灯される。
【0043】
本実施形態の放電灯点灯装置11は、パッキン本体17bの内側である突状部17c内に平板状の補強部材17aが設けられているので、ケース体15内の樹脂充填Pが収縮してパッキン17に引っ張り応力が加わったとしてもケース体15内側方向への変形量を最小限に抑えることができる。このため、ケース体15とパッキン17との間に隙間が形成されにくくなり、未硬化の充填樹脂Pが流出することを防止できる。
【0044】
また、パッキン17の硬度を高くする必要がないのでケース体15への嵌め合わせ作業に影響がなく、作業性の低下を避けることができる。
【0045】
さらに、放電灯を点灯させるインバータ点灯回路などの点灯回路部品としての電子部品32を実装した基板13をケース体12に収納して、このケース体12内にて基板13を合成樹脂Pに確実に埋没させた放電灯点灯装置11を構成することができ、放電灯点灯装置11の放熱性および絶縁性を確保して、信頼性を向上できる。
【0046】
なお、上記各実施の形態において、ケース体12に注入する充填材は、液状で絶縁性および放熱性などを有するものであれば、上記合成樹脂Pに限定されるものではない。
【0047】
そして、電気機器は、放電灯を点灯させる点灯回路部品を用いた放電灯点灯装置に限らず、その他の電力変換装置や、別の電気機器などにも適用することもでき、同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
11…電気機器としての放電灯点灯装置、12…ケース体、13…基板、17…パッキン、17a…補強部材、19…蓋部、21…開口部、23…保持部、32…電子部品、P…充填材である合成樹脂。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、少なくとも一端側に開口部を有するとともに、内部に保持部が形成されたケース体と;
板状に形成され、前記筒状のケース体の保持部に保持された状態で前記ケース体に収容される基板と;
この基板に実装された電子部品と;
前記開口部から前記ケース体内に充填され、前記電子部品の少なくとも一部を覆った状態で硬化される充填材と;
ケース体の開口部を閉塞する蓋部と;
ケース体と蓋部との間に挟着される平板状の弾性体からなるパッキン本体を有し、このパッキン本体の内部に設けられた平板状の補強部材が設けられたパッキンと;
を具備していることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
パッキンの補強部材は、ケース体の開口部と蓋部との挟着部分よりも内側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−77312(P2011−77312A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227477(P2009−227477)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】