説明

電気機器

【課題】引き出し可能な引き出し部に接続されたケーブルに加わる負荷を抑制することが可能な電気機器を提供する。
【解決手段】電気機器10は、筐体12と、ケーブル34、35が接続される被接続体30が収納され、筐体12の外側へ引き出し可能に配置された引き出し部31と、一端部が筐体12に連結され、他端部が引き出し部31に連結され、引き出し部31の引き出し位置に応じて伸縮するケーブル保持部40とを備え、被接続体30に接続されたケーブル34、35が、ケーブル保持部40を介して配線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子回路を構成する電子機器が所定単位ごとに取り付けられたユニットを、ユニット搭載枠に搭載して筐体内に収納した電子装置が記載されている。
このユニット搭載枠は、前面側に引き出し可能に取り付けられている。更に、ユニット搭載枠は、引き出された後に、前部が下がるように回動可能に取り付けられている。電子装置に接続されるケーブルは、ユニット搭載枠の引き出し及び回動に伴う繰出し相当分だけ見込んで筐体内で一部が湾曲して配線されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−353883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、引き出し可能な引き出し部に接続されたケーブルに加わる負荷を抑制することが可能な電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る電気機器は、筐体と、
ケーブルが接続される被接続体が収納され、前記筐体の外側へ引き出し可能に配置された引き出し部と、
一端部が前記筐体に連結され、他端部が前記引き出し部に連結され、前記引き出し部の引き出し位置に応じて伸縮するケーブル保持部とを備え、
前記被接続体に接続された前記ケーブルが、前記ケーブル保持部を介して配線されている。
【0006】
第1の発明に係る電気機器において、前記ケーブル保持部は、前記引き出し部の引き出し方向に対して実質的に直交する軸回りに回転するヒンジ部を介して折り畳み可能に連結された複数の被配線部材を有し、
一端側に位置する前記被配線部材が前記筐体に連結され、他端側に位置する前記被配線部材が前記引き出し部に連結されることが好ましい。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る電気機器は、筐体と、
ケーブルが接続される被接続体が収納され、前記筐体の外側へ引き出し可能に配置された引き出し部と、
前記引き出し部の引き出し位置に応じて伸縮するケーブル保持部とを備え、
前記ケーブル保持部は、前記筐体に、前記引き出し部の引き出し方向に対して実質的に直交する第1の軸を中心として一端部が回転可能に取り付けられる第1の被配線部材と、
前記第1の被配線部材の他端部に、前記第1の軸と実質的に平行な第2の軸を中心として一端部が回転可能に取り付けられる第2の被配線部材と、
前記第2の被配線部材の他端部に、前記第1の軸と実質的に平行な第3の軸を中心として一端部が回転可能に取り付けられ、前記引き出し部に、前記第1の軸と実質的に平行な第4の軸を中心に他端部が回転可能に取り付けられる第3の被配線部材とを有し、
前記被接続体に接続された前記ケーブルが、前記ケーブル保持部を介して配線されている。
【0008】
第2の発明に係る電気機器において、前記第1〜第3の被配線部材は、それぞれケーブルダクトを有し、
前記ケーブルは、前記ケーブルダクト内に配線されることが好ましい。
【0009】
第2の発明に係る電気機器において、前記第1〜第3の被配線部材は、それぞれ上下方向に複数設けられたケーブルダクトを有し、
前記各ケーブルダクトに配線される前記ケーブルは、機械的特性が異なってもよい。
【0010】
第2の発明に係る電気機器において、前記ケーブルダクトは、上下方向に2つ設けられ、
一方の前記ケーブルダクトに配線される前記ケーブルを光ケーブルとし、他方の前記ケーブルダクトに配線される前記ケーブルを電気ケーブルとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気機器においては、本発明の構成を有さない場合と比較して、引き出し可能な引き出し部に接続されたケーブルに加わる負荷を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインバータの正面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】同インバータの部分平断面図である。
【図4】同インバータの内部構成図である。
【図5】同インバータのケーブル保持部が収縮した状態を示す平面図である。
【図6】図5のA方向矢視図である。
【図7】同インバータのケーブル保持部が伸展した状態を示す平面図である。
【図8】図7のB方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0014】
図1〜図3に示す本発明の一実施の形態に係る直列多重インバータ(電気機器の一例、以下、単に「インバータ」という。)10は、筐体12と、筐体12の内部に配置された入力トランス14、電力変換部16、及び制御部18とを有している(図4参照)。筐体の内部は、上下方向に延びる仕切り板13(図3参照)によって左右方向に例えば3つの区画に仕切られ、入力トランス14、電力変換部16、及び制御部18は、各区画に配置されている。
【0015】
入力トランス14には、1次側に1次巻線22が設けられている。1次巻線22には、商用電源(三相交流電源)24が接続される。入力トランス14の2次側には、1次側とは絶縁された、例えば、第1〜第9の2次巻線26が設けられている。
【0016】
電力変換部16は、例えば、線間電圧が3.3kVや6.6kVの3相高圧電源を、誘導電動機等の交流負荷28に供給することができる。電力変換部16は、例えば、各出力相につき3つのセルインバータ(不図示)を有している。
【0017】
制御部18は、複数の光通信線17により電力変換部16のセルインバータと接続されている。制御部18は、光通信を介して必要な信号を各セルインバータに送信することにより、電力変換部16に電力変換動作を行わせることができる。
また、制御部18は、光通信により、予め決められた周期で、各セルインバータの内部の予め決められた箇所の電圧、電流、及び温度等を監視することができる。
ここで、制御部18として機能するコントロールユニット(被接続体の一例)30が収納された引き出し部31は、図2及び図3に示すように、筐体12の内部の収納効率を向上させるため、筐体12の前面から外側へ引き出して配線作業等をすることができるようになっている。具体的には、引き出し部31は、筐体12の内部の右側部に設けられた、前後方向に延びるスライドレール(不図示)に取り付けられ、収納位置から前方へ移動することができる。
コントロールユニット30に接続される、電源線及び信号線等の電気ケーブル34(図5及び図8参照)及び光ケーブル35(図8参照)は、図2及び図3に示したケーブル保持部40を介して配線される。
【0018】
次に、ケーブル保持部40について詳細に説明する。
ケーブル保持部40は、第1〜第3の被配線部材42a、42b、42cを有し、引き出し部31の例えば下部と筐体12の内部の仕切り板13とを連結するように設けられている。ケーブル保持部40は、引き出し部31が収納位置にある状態においては、図5に示すように折り畳まれる。ケーブル保持部40は、引き出し部31が引き出し位置にある状態においては、図7に示すように伸展する。
即ち、ケーブル保持部40は、引き出し部31の引き出し位置に応じて伸縮することができる。
【0019】
第1の被配線部材42aは、例えば板状の部材である。図5及び図7に示すように、第1の被配線部材42aの一端部は、筐体12の内部の仕切り板13に設けられたブラケット52に、第1のヒンジ部54aを介して取り付けられている。この第1のヒンジ部54aは、上下方向に延びる(引き出し部31の引き出し方向に対して直交する)第1の軸を有しているため、第1の被配線部材42aは、この第1の軸を中心に回転することが可能である。なお、ここに言う「直交」とは、厳密な意味での直交ではない。即ち、「直交」とは、設計上又は製造上の誤差が許容され、「実質的に直交」という意味である(以下、同様)。
【0020】
第2の被配線部材42bは、例えば板状の部材である。第2の被配線部材42bは、平面視して、端部が実質的に直角に折り曲げられた折り曲げ部42bmを有している。この折り曲げ部42bmには、図6に示すように、電気ケーブル34(図5、図7及び図8参照)及び光ケーブル35(図8参照)を通すための孔56が形成されている。
第2の被配線部材42bの一端部は、第1の被配線部材42aの他端部に、第2のヒンジ部54bを介して取り付けられている。この第2のヒンジ部54bは、上下方向に延びる(引き出し部31の引き出し方向に対して直交する)第2の軸を有しているため、第2の被配線部材42bは、この第2の軸を中心に第1の被配線部材42aに対して相対回転することが可能である。
【0021】
第3の被配線部材42cは、例えば板状の部材である。第3の被配線部材42cの一端部は、第2の被配線部材42bの他端部(折り曲げ部42bm)に、第3のヒンジ部54cを介して取り付けられている。この第3のヒンジ部54cは、上下方向に延びる(引き出し部31の引き出し方向に対して直交する)第3の軸を有しているため、第3の被配線部材42cは、この第3の軸を中心に第2の被配線部材42bに対して相対回転することが可能である。
一方、第3の被配線部材42cの他端部は、引き出し部31の下部に固定されたブラケット58に、第4のヒンジ部54dを介して取り付けられている。この第4のヒンジ部54dは、上下方向に延びる(引き出し部31の引き出し方向に対して直交する)第4の軸を有しているため、第3の被配線部材42cは、この第4の軸を中心に引き出し部31に対して相対回転することが可能である。
【0022】
前述の第1〜第3の被配線部材42a、42b、42cには、それぞれ第1〜第3の上側ケーブルダクト62a〜62c及び第1〜第3の下側ケーブルダクト64a〜64cが取り付けられている。第1〜第3の上側ケーブルダクト62a〜62cは、図6及び図8に示すように、それぞれ、第1〜第3の下側ケーブルダクト64a〜64cの上側に配置されている。即ち、第1〜第3の被配線部材42a、42b、42cには、第1〜第3の軸が延びる方向に複数のケーブルダクトが配置されている。
【0023】
第1の上側ケーブルダクト62a及び第1の下側ケーブルダクト64aは、図5に示すケーブル保持部40が折り畳まれた状態(引き出し部31が収納位置にある状態)において、第1の被配線部材42aの背面側に、長手方向が水平方向となるように配置されている。
【0024】
第2の上側ケーブルダクト62b及び第2の下側ケーブルダクト64bは、ケーブル保持部40が折り畳まれた状態において、第2の被配線部材42bの前面側に、長手方向が水平方向となるように配置されている。
【0025】
第3の上側ケーブルダクト62c及び第3の下側ケーブルダクト64cは、ケーブル保持部40が折り畳まれた状態において、第3の被配線部材42cの前面側に、長手方向が水平方向となるように配置されている。
【0026】
引き出し部31に収納されたコントロールユニット30に接続される電気ケーブル34及び光ケーブル35の配線ルートは、以下の通りである。
図示しない機器から延びる電気ケーブル34は、第1の上側ケーブルダクト62aの内部を通り、第1の被配線部材42aから第2の被配線部材42bへと渡る。次いで、電気ケーブル34は、第2の上側ケーブルダクト62bの内部を通り、折り曲げ部42bmに形成された孔56を通って、第3の被配線部材42cへと渡る。更に、電気ケーブル34は第3の上側ケーブルダクト62cの内部を通り、コントロールユニット30(引き出し部31)へと渡って配線される。
【0027】
セルインバータから延びる光ケーブル35は、第1〜第3の下側ケーブルダクト64a〜64cを通って配線される。光ケーブル35に関する配線ルートは、第1〜第3の下側ケーブルダクト64a〜64cを通る点を除き、電気ケーブル34に関する配線ルートと同様であるので、その説明は省略する。
このように、機械的特性(例えば可撓性)が異なるケーブル(電気ケーブル34及び光ケーブル35)が別々に配線されているので、外部から加えられる負荷に対して強いケーブルが、弱いケーブルに対して損傷を与える可能性が低減される。また、ケーブル交換等の保守作業の観点から、取り扱いが容易となる。
【0028】
次に、ケーブル保持部40の伸縮動作について説明する。
まず、引き出し部31が収納位置にある状態においては、ケーブル保持部40は、第1〜第3の被配線部材42a〜42cが重なるようにして折り畳まれている。
次に、収納位置にある引き出し部31が引き出されると、第3の被配線部材42cが引き出し部31の下部に設けられたブラケット58に引っ張られ、第2の被配線部材42bが第3の被配線部材42cに引っ張られ、第1の被配線部材42aが第2の被配線部材42bに引っ張られ、それぞれ両端部の実質的に平行に延びる軸(各ヒンジの軸)回りに回転しながら移動する。即ち、ケーブル保持部40が伸展する。
【0029】
反対に、引き出し位置にある引き出し部31が収納位置へと戻されると、第3の被配線部材42cが引き出し部31の下部に設けられたブラケット58に押され、第2の被配線部材42bが第3の被配線部材42cに押され、第1の被配線部材42aが第2の被配線部材42bに押され、それぞれ両端部のヒンジ回りに回転しながら移動する。即ち、ケーブル保持部40が縮み、折り畳まれる。
【0030】
このように、ケーブルが引き出し部31の引き出し位置に応じて伸縮するケーブル保持部40を介して配線されるので、引き出し部31の引き出し量が大きい場合であっても、ケーブルに加わる負荷が抑制される。
【0031】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0032】
被配線部材の数は、3つに限定されるものではない。被配線部材の数は、2つ以上とすることができる。
ケーブルは、光ケーブルと電気ケーブルに限定されるものではない。
【0033】
被配線部材を連結するヒンジは、上下方向に延びる軸を有していたが、例えば水平方向に延びる軸を有していてもよい。即ち、各被配線部材が水平方向に延びる軸回りに回転しながら伸展するように構成されてもよい。この場合、ケーブルダクトは、引き出し方向から見て、左右方向に並んで配置される。
【0034】
電気機器の他の例として、ロボットの制御装置、ポンプの制御装置、工作機械の制御装置、プラントの制御装置、及び防災監視システムの制御装置等が挙げられる。
また、電気機器の更に他の例として、引き出し部を有するサーバラックに収納された電子計算機等が挙げられる。
【符号の説明】
【0035】
10:インバータ、12:筐体、13:仕切り板、14:入力トランス、16:電力変換部、17:光通信線、18:制御部、22:1次巻線、24:商用電源、26:2次巻線、28:交流負荷、30:コントロールユニット、31:引き出し部、34:電気ケーブル、35:光ケーブル、40:ケーブル保持部、42a:第1の被配線部材、42b:第2の被配線部材、42bm:折り曲げ部、42c:第3の被配線部材、52:ブラケット、54a:第1のヒンジ部、54b:第2のヒンジ部、54c:第3のヒンジ部、54d:第4のヒンジ部、56:孔、58:ブラケット、62a:第1の上側ケーブルダクト、62b:第2の上側ケーブルダクト、62c:第3の上側ケーブルダクト、64a:第1の下側ケーブルダクト、64b:第2の下側ケーブルダクト、64c:第3の下側ケーブルダクト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
ケーブルが接続される被接続体が収納され、前記筐体の外側へ引き出し可能に配置された引き出し部と、
一端部が前記筐体に連結され、他端部が前記引き出し部に連結され、前記引き出し部の引き出し位置に応じて伸縮するケーブル保持部とを備え、
前記被接続体に接続された前記ケーブルが、前記ケーブル保持部を介して配線されている電気機器。
【請求項2】
請求項1記載の電気機器において、前記ケーブル保持部は、前記引き出し部の引き出し方向に対して実質的に直交する軸回りに回転するヒンジ部を介して折り畳み可能に連結された複数の被配線部材を有し、
一端側に位置する前記被配線部材が前記筐体に連結され、他端側に位置する前記被配線部材が前記引き出し部に連結されている電気機器。
【請求項3】
筐体と、
ケーブルが接続される被接続体が収納され、前記筐体の外側へ引き出し可能に配置された引き出し部と、
前記引き出し部の引き出し位置に応じて伸縮するケーブル保持部とを備え、
前記ケーブル保持部は、前記筐体に、前記引き出し部の引き出し方向に対して実質的に直交する第1の軸を中心として一端部が回転可能に取り付けられる第1の被配線部材と、
前記第1の被配線部材の他端部に、前記第1の軸と実質的に平行な第2の軸を中心として一端部が回転可能に取り付けられる第2の被配線部材と、
前記第2の被配線部材の他端部に、前記第1の軸と実質的に平行な第3の軸を中心として一端部が回転可能に取り付けられ、前記引き出し部に、前記第1の軸と実質的に平行な第4の軸を中心に他端部が回転可能に取り付けられる第3の被配線部材とを有し、
前記被接続体に接続された前記ケーブルが、前記ケーブル保持部を介して配線されている電気機器。
【請求項4】
請求項3記載の電気機器において、前記第1〜第3の被配線部材は、それぞれケーブルダクトを有し、
前記ケーブルは、前記ケーブルダクト内に配線されている電気機器。
【請求項5】
請求項3記載の電気機器において、前記第1〜第3の被配線部材は、それぞれ上下方向に複数設けられたケーブルダクトを有し、
前記各ケーブルダクトに配線されている前記ケーブルは、機械的特性が異なる電気機器。
【請求項6】
請求項5記載の電気機器において、前記ケーブルダクトは、上下方向に2つ設けられ、
一方の前記ケーブルダクトに配線されている前記ケーブルは光ケーブルであり、他方の前記ケーブルダクトに配線されている前記ケーブルは電気ケーブルである電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−156197(P2012−156197A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12113(P2011−12113)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】