説明

電気泳動表示装置、電子機器、電子時計、電気泳動表示装置の駆動方法

【課題】高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う電気泳動表示装置等を提供する。
【解決手段】 表示手段3と、使用環境温度を検出する温度検出手段41、42と、表示手段の表示を制御する制御手段60と、を含み、制御手段は、表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、高温警告表示を行う第2モードと、第1色と第2色の単一色表示を交互に行う第3モードと、を切り替え、第1モードから第2モードへの切り替えを、第1モード時に温度検出手段が検出した使用環境温度が閾値温度以上である場合に行い、第2モードから第3モードへの切り替えを、第2モードに切り替わって所定の時間が経過した後に行い、第3モードから第2モードへの切り替えを、第3モード時において、第1色と第2色の単一色表示を所定の回数実行した後に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置、電子機器、電子時計、電気泳動表示装置の駆動方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても画像を保持できるメモリー性を有する表示パネルが開発され、電子時計等にも使用されている。メモリー性を有する表示パネルとしては、EPD(Electro Phoretic Display)すなわち電気泳動表示装置や、メモリー性液晶表示装置等が知られている。
【0003】
これらのパネルには正常な表示が保証される動作温度が定められている。例えば、動作温度を超える使用環境温度で使用した場合、異常な表示がされる、電池寿命や製品寿命が短くなる等の品質上の問題が生じる可能性があった。そのため、使用環境温度が動作温度の範囲を超えた場合には、直ちに表示を停止するといった措置がとられていた。例えば画面全体を白などの背景色だけで表示して、通常の表示ができないことを知らせていた。
【0004】
しかし、表示を停止するだけだと、使用者はパネル自体の故障であると誤解する可能性がある。そこで、特許文献1の発明では、EPDのメモリー性を利用して、表示が停止されている理由を表示し続けることで、使用者が故障であると誤解することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−128044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の発明では、表示が停止されている理由を固定のメッセージ(例えばCOLD)で表示する。そのため、メッセージが長時間表示された後に、通常の表示に戻ると、長時間の表示による影響で通常表示のコントラストが低下する可能性がある。
【0007】
つまり、EPDの電気泳動粒子がマイクロカプセルの壁に固着してしまい、表示を切り替えても所望のコントラストが得られない可能性がある。そして、この電気泳動粒子の固着は高温状態(例えば40℃以上)で生じやすい。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う電気泳動表示装置等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、電気泳動表示装置であって、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持してなり、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を複数配置する表示手段と、使用環境温度を検出する温度検出手段と、前記表示手段の表示を制御する制御手段と、を含み、前記制御手段は、前記表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、前記使用環境温度が高温であることを警告する高温警告表示を行う第2モードと、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に行う第3モードと、を切り替える切り替え制御を行い、前記第1モードから前記第2モードへの前記切り替え制御を、前記第1モード時において前記温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度以上である場合に行い、前記第2モードから前記第3モードへの前記切り替え制御を、前記表示モードが第2モードに切り替わって所定の時間が経過した後に行い、前記第3モードから前記第2モードへの前記切り替え制御を、前記第3モード時において、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に所定の回数実行した後に行う。
【0010】
(2)この電気泳動表示装置において、前記制御手段は、前記第2モードから前記第1モードへの前記切り替え制御を、前記第2モード時において前記温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度未満である場合に行ってもよい。
【0011】
これらの発明によれば、制御手段は、表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、使用環境温度が高温であることを警告する高温警告表示を行う第2モードと、第1色の単一色表示と第2色の単一色表示とを交互に行う第3モードと、を切り替える。
【0012】
温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度以上である場合に高温警告表示が行われ(第2モード)、第2モードになって所定の時間が経過すると画面全体の単一色表示が行われる(第3モード)。
【0013】
第3モードでは、第1色と第2色の単一色表示が交互に行われる。表示色を変更すると電気泳動粒子が現在とは異なる電極側に移動する。そのため、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う電気泳動表示装置等を提供できる。なお、電極とは後述する画素電極と共通電極を指す。
【0014】
なお、第2モード時において温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度未満である場合に、再び通常表示が行われてもよい(第1モード)。ここで、再び通常表示に戻るときの閾値温度は、高温警告表示に変化する場合の閾値温度と同じであってもよいし、判断の慎重のためヒステリシスをもっていてもよい。
【0015】
再び通常表示に戻った場合であっても、高温時における電気泳動粒子の固着が防止されているため、高温警告表示の影響を受けることなく、コントラストの高い表示がされる。なお、閾値温度とは例えば40℃であってもよいし、それよりも高い温度であってもよい。また、所定の時間とは10分〜1時間であってもよいし、温度に応じて時間が変化してもよい。
【0016】
(3)この電気泳動表示装置において、前記表示手段は、一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応して形成された画素電極と、他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向して形成された共通電極と、を含み、前記制御手段は、前記共通電極および前記画素電極の少なくとも一方に駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、前記共通電極と前記画素電極との間に生じた電界によって前記電気泳動粒子を移動させることで表示を更新し、前記表示モードが第3モードである場合には、前記駆動パルス信号の振幅を、前記第1モード、前記第2モードにおける前記駆動パルス信号の振幅よりも小さくしてもよい。
【0017】
本発明によれば、高温時にはEPDを構成する材料自体の内部抵抗値が低下してリーク電流が流れるため、高温時に電極の駆動を行う第3モードにおいて駆動パルス信号の振幅を小さくすることでリーク電流を減らす。
【0018】
このことにより、リーク電流の影響によるEPDの劣化を防止して、表示品質を保つことができる。
【0019】
(4)この電気泳動表示装置において、前記制御手段は、前記表示モードが第2モードである場合に、前記高温警告表示の背景色を、前記第1色と前記第2色の中間色としてもよい。
【0020】
本発明によれば、使用環境温度が高温である場合に高温警告表示を行う第2モードにおいて、背景色を中間色とすることで高温時における電気泳動粒子の固着を生じにくくする。
【0021】
例えば二粒子系の電気泳動方式では、第1色の電気泳動粒子と、第2色の電気泳動粒子とを含む。このとき、第1色表示又は第2色表示を行った場合に、高温時における電気泳動粒子の固着が生じやすくなる。そこで、画面全体の大きな割合を占める高温警告表示の背景部分の色を、第1色と第2色の中間色にすることで、電気泳動粒子の固着をさらに生じにくくする。
【0022】
(5)本発明は、前記のいずれかに記載の電気泳動表示装置を含む電子機器である。
【0023】
本発明の電子機器の電気泳動表示装置は、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う。そのため、高温にさらされる可能性のある電子機器であっても、長期にわたり品質の優れた表示を行うことが可能になる。
【0024】
(6)本発明は、前記のいずれかに記載の電気泳動表示装置と、時刻を計時して、前記時刻を表す時刻信号を出力する計時手段と、を含み、前記表示手段は、前記時刻信号に基づいて前記時刻を表示する電子時計である。
【0025】
本発明の電子機器の電気泳動表示装置は、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う。そのため、例えば内部が高温になり得る乗用車に搭載される電子時計であっても、長期にわたり品質の優れた表示を行うことが可能になる。
【0026】
(7)本発明は、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持してなり、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を複数配置する表示手段と、使用環境温度を検出する温度検出手段と、前記表示手段の表示を制御する制御手段と、を含む電気泳動表示装置の制御方法であって、前記表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、前記使用環境温度が高温であることを警告する高温警告表示を行う第2モードと、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に行う第3モードと、を切り替える切り替え制御工程を含み、前記切り替え制御工程は、前記第1モード時において前記温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度以上である場合に、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行う工程と、前記表示モードが第2モードに切り替わって所定の時間が経過した後に、前記第2モードから前記第3モードへの切り替えを行う工程と、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に所定の回数実行した後に、前記第3モードから前記第2モードへの切り替えを行う工程と、を含む。
【0027】
本発明によれば、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う電気泳動表示装置の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態におけるEPDを含む電子時計の表示例を示す図。
【図2】第1実施形態における表示モードの切り替えを示す状態遷移図。
【図3】第1実施形態におけるEPDを含む電子時計のブロック図。
【図4】第1実施形態におけるEPDのブロック図。
【図5】第1実施形態における表示部の画素の構成例を示す図。
【図6】図6(A)は電気泳動素子の構成例を示す図。図6(B)〜図6(C)は電気泳動素子の動作の説明図。
【図7】図7(A)は駆動パルス信号の例を示す図。図7(B)は画素の変化を示す図。
【図8】第1実施形態のフローチャート。
【図9】第1変形例におけるEPDを含む電子時計の表示例を示す図。
【図10】第2変形例における駆動パルス信号の例を示す図。
【図11】適用例における車載用ディスプレイ(電子機器の1つ)の図。
【図12】比較例の電子時計の表示の図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図8を参照して説明する。ここでは、まず図12を参照して比較例のEPDにおける問題を説明してから、本実施形態のEPDを説明する。なお、第1実施形態および比較例のEPDは電子時計の一部(表示部を含む)として用いられているものとする。
【0030】
1.1.比較例のEPDの問題
図12は、比較例のEPDを含む電子時計100の正面図である。電子時計100の表示部103には、比較例のEPDが用いられている。
【0031】
EPDでは、高温状態(例えば40℃以上)では構成材料自体の内部抵抗値が低下するために、表示を更新する場合に駆動パルス信号に基づく電圧を印加するとリーク電流が多く流れてしまう。
【0032】
すると、例えば電子時計で使用されている場合、電池寿命低下の問題を生じてしまう。そのため、従来からEPDが高温状態である場合、表示の更新を停止して画面全体を白表示、又は黒表示にして高温状態であることをユーザーに知らせていた。
【0033】
しかし、画面全体を白表示、又は黒表示にすることは、使用者に故障との誤解させる可能性がある。そこで、比較例のEPDは、高温状態において理由表示(図12の中段の図におけるHIGH TEMP)を含む高温警告表示を行い、使用者に電子時計100が高温状態にあることを知らせる。
【0034】
このとき、表示の更新は行われないので、リーク電流の影響によるEPDの劣化を防止でき、消費電力も抑えることができる。
【0035】
しかしながら、高温状態において長時間一定の表示を続けると、後述するマイクロカプセルの壁に電気泳動粒子が固着してしまう可能性がある。電気泳動粒子の固着が生じると、固着した粒子の影響によって所望のコントラストが得られない可能性がある。
【0036】
図12の下段の図は、高温状態において長時間高温警告表示を行った(図12の中段)後に、通常の時刻表示に復帰した場合の例を示す。高温警告表示が行われる前の時刻表示(図12の上段)と比べると、数字のコントラストが低下して視認性が悪くなっている。また、理由表示(HIGH TEMP)が行われた部分は他の背景部分と色が異なっている。
【0037】
比較例のEPDでは、このように高温警告表示の後にコントラストが低下する可能性がある。本実施形態のEPDでは、高温時における電気泳動粒子の固着を防止することで、コントラストの高い表示を行うことが可能である。
【0038】
1.2.本実施形態のEPDの表示例
図1は、本実施形態のEPDを含む電子時計1の正面図である。電子時計1の表示部3には、本実施形態のEPDが用いられている。
【0039】
本実施形態のEPDは、表示モードとして、第1モード(ST1)、第2モード(ST2)、第3モード(ST3)を有している。第1モードでは通常表示を行い、第2モードでは高温警告表示を行い、第3モードでは電気泳動粒子の固着を防止する表示を行う。
【0040】
図1において、左上の図は第1モード(ST1)、右上の図は第2モード(ST2)、下の図は第3モード(ST3)におけるEPDを含む電子時計1の表示例である。
【0041】
なお、図1のTC1、TC2、TC3、TC4は表示モードの遷移を表す。第1モードから第2モードへの遷移をTC1とし、第2モードから第1モードへの遷移をTC4としている。第2モードから第3モードへの遷移をTC2とし、第3モードから第2モードへの遷移をTC3としている。本実施形態のEPDでは、第3モードから第1モードへの遷移、および第1モードから第3モードへの遷移はない。
【0042】
電子時計1は、時計ケース2と、時計ケース2に連結された一対のバンド4とを備える。時計ケース2の正面には、EPDの表示部3がある。また、時計ケース2の側面には操作ボタン6、7が設けられている。これらの操作ボタンは、例えば表示部3の表示や設定を変更する入力手段として用いられる。
【0043】
表示部3の表示は、EPDの表示モードに応じて切り替わる。表示モードは通常は第1モード(ST1)になっている。図1の例では、第1モードの通常表示は、時刻表示である。
【0044】
そして、使用環境温度が閾値温度以上である場合に、EPDの表示モードは第2モードに切り替わる(TC1)。第2モード(ST2)は、使用環境温度が高温であることを警告する高温警告表示を行う。
【0045】
EPDは例えば使用環境温度を測る温度センサー(図外)と温度検出回路(図外)を含んでいてもよい。そして、閾値温度はあらかじめ決められた固定値であってもよいし、例えば使用者が操作ボタン6、7によって設定可能であってもよい。なお、使用環境温度とはEPDが使用される周囲の温度を指してもよいし、EPDの表示部における温度を指してもよい。
【0046】
図1の例では、EPDの表示モードが第2モードである場合には、高温警告表示として“HIGH TEMP”の文字を含む表示がされる。例えば、電子時計1の使用者は、高温警告表示を見ることで、より温度の低い場所に電子時計1を移動させるなどの対応をとることができる。
【0047】
もし、電子時計1の使用者が適切な対応を行い、使用環境温度が閾値温度より低くなった場合には、EPDの表示モードは第1モードに戻る(TC4)。
【0048】
高温警告表示にもかかわらず、使用者がより温度の低い場所に電子時計1を移動させるなどの対応をとらない可能性がある。このとき、高温状態で長時間、高温警告表示を続けると、前記のように電気泳動粒子の固着が生じる可能性がある。
【0049】
本実施形態のEPDでは、第2モードになってから所定の時間が経過すると表示モードが第3モードになる(TC2)。第3モードは、高温時における電気泳動粒子の固着を防止する単一色表示を行う。
【0050】
図1の例では、第3モードである場合には、高温警告表示の背景色(白色)を画面全体に表示する単一色表示を行い、その後に反転させた単一色表示(黒色)を行い、再び高温警告表示の背景色(白色)の単一色表示を行う。
【0051】
第3モードでは、反転させた単一色表示によって電気泳動粒子を逆方向に移動させるため、高温時における電気泳動粒子の固着を防止する。なお、図1の第3モードの例では、白色から黒色への変化と、黒色から白色への変化を含むので、DCバランスもとられている。
【0052】
単一色表示が所定の回数だけ行われると第3モードは終了し、再び第2モードに戻ることになる(TC3)。なお、第2モードに戻ると、第2モードになってからの経過時間が再び測定される。EPDは、例えば経過時間を計るタイマー(図外)を含んでいてもよい。
【0053】
1.3.表示モードの遷移
図2は、本実施形態におけるEPDの表示モードの切り替えを示す状態遷移図である。なお、図1と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。
【0054】
前記の通り、本実施形態のEPDの表示モードは、通常の場合、通常表示を行う第1モードである(ST1)。しかし、使用環境温度が閾値温度以上である場合に、EPDの表示モードは第2モードに切り替わる(TC1)。
【0055】
そして、第2モードでは高温警告表示が行われる(ST2)、使用環境温度が閾値温度より低くなった場合には、EPDの表示モードは第1モードに戻る(TC4)。
【0056】
使用環境温度が閾値温度以上のままであれば、第2モードに切り替わってから所定の時間の経過後に、第3モードに切り替わる(TC2)。第3モードでは単一色表示、および反転した単一色表示が所定の回数繰り返される(ST3)。その後、再び第2モードに戻る(TC3)。
【0057】
このような表示モードの切り替えにより、本実施形態におけるEPDは高温時における電気泳動粒子の固着を防止してコントラストの高い表示を行う。
【0058】
ここで、再び本実施形態のEPDが電子時計の一部として使用される例を用いて説明を行う。以下に、EPDを含む電子時計の構成ブロック図を示し、EPDの駆動方法等について詳しく説明する。
【0059】
1.4.ブロック図
図3は、本実施形態のEPDを含む電子時計1のブロック図である。図1の例の電子時計1は、例えば図3の構成によって実現可能である。
【0060】
電子時計1は、図3に示すように、EPD10、発振回路11、分周回路12、計時カウンター13、スイッチ15、16、時刻修正回路17を含む。ここで、EPD10は表示制御回路60、タイマー22、温度センサー41、温度検出回路42を含む。なお、図3では電源の記載を省略しているが、電子時計1は1次電池を含んでいてもよいし、発電装置と2次電池を含んでいてもよい。
【0061】
1.4.1.電子時計に特有の構成要素
発振回路11は、例えば水晶振動子等の基準発振源を高周波発振させ、基準発振信号を生成する。
【0062】
分周回路12は、発振回路11で生成された基準発振信号を分周して所定の基準信号(例えば、1Hzの信号)を生成する。
【0063】
計時カウンター13は、分周回路12で生成された基準信号をカウントして、例えば現在時刻を計時する。計時カウンター13は電子時計1の計時手段として機能する。計時カウンター13は、例えば現在時刻を表す時刻信号を表示制御回路60に出力する。
【0064】
スイッチ15、16は、外部からの入力手段である操作ボタン6、7(図1参照)を押すことでオン状態となる。スイッチ15、16は、操作ボタン6、7の入力を検出する入力検出手段である。スイッチ15、16は、検出した操作ボタン6、7の入力に応じた信号を、時刻修正回路17、および表示制御回路60に出力する。
【0065】
時刻修正回路17は、各スイッチ15、16からの信号に基づいて時刻修正信号を生成し、計時カウンター13に出力する。計時カウンター13は、時刻修正信号に従って時刻信号の修正を行う。
【0066】
1.4.2.EPDに含まれる構成要素
温度センサー41は、EPD10の使用環境温度を検出するセンサーである。特に、表示部3の温度を検出することが好ましい。温度検出回路42は、温度センサー41で検出された温度が所定の範囲に含まれているか否かに応じた信号を、表示制御回路60に入力する。温度センサー41、温度検出回路42により、EPD10の温度検出手段が構成される。
【0067】
タイマー22は、分周回路12から基準信号を受け取る。そして、表示制御回路60からの指示に従い時間をカウントする。タイマー22は、例えばアップカウンターであり、所定の値になったことを知らせる信号を表示制御回路60に出力する。具体的には、タイマー22によって、EPD10の表示モードが第2モードになってからの時間が測定される。
【0068】
表示制御回路60は、表示部3に表示させる内容、および表示モードを制御する。表示制御回路60は、通常、表示モードを第1モードとしている。この例の場合、計時カウンター13からの時刻信号に基づいて、表示部3に時刻表示を行わせる(図1参照)。なお、表示制御回路60はEPD10の制御手段であり、表示部3はEPD10の表示手段である。
【0069】
表示制御回路60は、温度検出回路42からの信号に基づいて、使用環境温度が閾値温度以上の場合に表示モードを第2モードとする。そして、タイマー22からの信号に基づいて、第2モードになってから所定の時間が経過した場合に、表示モードを第3モードとする。表示制御回路60は、表示部3に表示モードに応じた表示を行わせる(図1参照)。
【0070】
ここで、EPD10の表示動作の詳細について、図4〜図7(B)を用いて説明する。なお、図4では表示動作に直接関係のない温度センサー41、温度検出回路42、タイマー22の図示を省略している。また、これらの要素からの信号、時刻信号、スイッチ15、16からの信号についても図示を省略している。
【0071】
1.5.EPDの表示動作の詳細
1.5.1.EPDの構成
図4は、本実施形態のアクティブマトリックス方式のEPDの構成を示す図である。なお、駆動方式はセグメント方式であってもよい。
【0072】
EPD10は、表示制御回路60、表示部3を含む。表示制御回路60は、表示部3を制御し、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、コントローラー63、共通電源変調回路64、記憶部160を含む。
【0073】
走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、共通電源変調回路64は、それぞれコントローラー63と接続されている。コントローラー63は、例えば時刻信号などの入力信号や記憶部160から読み出される画像信号等に基づいて、これらを総合的に制御する。
【0074】
記憶部160は、SRAM、DRAM、その他のメモリーであってもよく、少なくとも表示部3に表示させる画像のデータ(画像信号)を記憶している。また、記憶部160には、コントローラー63によって制御に必要な情報が記憶されてもよい。
【0075】
表示部3には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68とが形成されており、これらの交差位置に対応して複数の画素40が設けられている。
【0076】
走査線駆動回路61は、m本の走査線66(Y、Y、…、Y)により各画素40に接続されている。走査線駆動回路61は、コントローラー63の制御に従って1行目からm行目までの走査線66を順次選択することで、画素40に設けられた駆動用TFT48(図5参照)のオンタイミングを規定する選択信号を供給する。
【0077】
データ線駆動回路62は、n本のデータ線68(X、X、…、X)により各画素40に接続されている。データ線駆動回路62は、コントローラー63の制御に従って、画素40のそれぞれに対応する1ビットの画像データを規定する画像信号を画素40に供給する。なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合には、ローレベルの画像信号を画素40に供給し、画像データ「1」を規定する場合には、ハイレベルの画像信号を画素40に供給するものとする。
【0078】
表示部3には、また、共通電源変調回路64から延びる低電位電源線49(Vss)、高電位電源線50(Vdd)、共通電極配線55(Vcom)、第1のパルス信号線91(S)、第2のパルス信号線92(S)が設けられており、それぞれの配線は画素40と接続されている。共通電源変調回路64は、コントローラー63の制御に従って上記配線のそれぞれに供給する各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化、Hi−Z)を行う。
【0079】
1.5.2.画素部分の回路構成
図5は、図4の画素40の回路構成図である。なお、図4と同じ配線には同じ番号を付しており、説明は省略する。また、全画素に共通の共通電極配線55については記載を省略している。
【0080】
画素40には、駆動用TFT(Thin Film Transistor)48と、ラッチ回路70と、スイッチ回路80が設けられている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成をとる。
【0081】
駆動用TFT48は、N−MOSトランジスタからなる画素スイッチング素子である。駆動用TFT48のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子に接続されている。ラッチ回路70は転送インバーター70tと帰還インバーター70fとを備えている。インバーター70t、70fには、低電位電源線49(Vss)と高電位電源線50(Vdd)から電源電圧が供給される。
【0082】
スイッチ回路80は、トランスミッションゲートTG1、TG2からなり、ラッチ回路70に記憶された画素データのレベルに応じて、画素電極35(図6(B)、図6(C)参照)に信号を出力する。なお、Vaは、1つの画素40の画素電極へ供給される電位(信号)を意味する。
【0083】
ラッチ回路70に画像データ「1」(ハイレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG1がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号Sを供給する。一方、ラッチ回路70に画像データ「0」(ローレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG2がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号Sを供給する。このような回路構成により、表示制御回路60はそれぞれの画素40の画素電極に対して供給する電位(信号)を制御することが可能である。
【0084】
1.5.3.表示方式
本実施形態のEPD10は、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式であるとする。分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものであるとすると、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示できる。ここでは、EPD10は、基本色として黒色と白色とを表示可能であるとして説明する。そして、黒色を表示している画素を白色で表示すること、又は白色を表示している画素を黒色で表示することを反転と表現する。
【0085】
図6(A)は、本実施形態の電気泳動素子132の構成を示す図である。電気泳動素子132は素子基板130と対向基板131(図6(B)、図6(C)参照)との間に挟まれている。電気泳動素子132は、複数のマイクロカプセル120を配列して構成される。マイクロカプセル120は、例えば無色透明な分散液と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)127と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)126とを封入している。本実施形態では、例えば白色粒子127は負に帯電しており、黒色粒子126は正に帯電しているとする。
【0086】
図6(B)は、EPD10の表示部3の部分断面図である。素子基板130と対向基板131は、マイクロカプセル120を配列してなる電気泳動素子132を狭持している。表示部3は、素子基板130の電気泳動素子132側に、複数の画素電極35が形成された駆動電極層350を含む。図6(B)では、画素電極35として画素電極35Aと画素電極35Bが示されている。画素電極35により、画素ごとに電位を供給することが可能である(例えば、Va、Vb)。ここで、画素電極35Aを有する画素を画素40Aとし、画素電極35Bを有する画素を画素40Bとする。画素40A、画素40Bは画素40(図4、図5参照)に対応する2つの画素である。
【0087】
一方、対向基板131は透明基板であり、表示部3において対向基板131側に画像表示がなされる。表示部3は、対向基板131の電気泳動素子132側に、平面形状の共通電極37が形成された共通電極層370を含む。なお、共通電極37は透明電極である。共通電極37は、画素電極35と異なり全画素に共通の電極であり、電位Vcomが供給される。
【0088】
共通電極層370と駆動電極層350との間に設けられた電気泳動表示層360に電気泳動素子132が配置されており、電気泳動表示層360が表示領域となる。共通電極37と画素電極(例えば、35A、35B)との間の電位差に応じて、画素毎に所望の表示色を表示させることができる。
【0089】
図6(B)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも高電位である。このとき、負に帯電した白色粒子127が共通電極37側に引き寄せられ、正に帯電した黒色粒子126が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは白を表示していると視認される。
【0090】
図6(C)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも低電位である。このときは逆に、正に帯電した黒色粒子126が共通電極37側に引き寄せられ、負に帯電した白色粒子127が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは黒を表示していると視認される。なお、図6(C)の構成は図6(B)と同様であり説明は省略する。また、図6(B)、図6(C)ではVa、Vb、Vcomを固定された電位として説明したが、実際にはVa、Vb、Vcomは駆動パルス信号に基づく電圧であり、時間とともに電位が変化する。
【0091】
図7(A)は、駆動パルス信号の例を示す図である。Vaは画素電極35Aに与えられ、Vbは画素電極35Bに与えられる。そして、図7(B)は画素40A、40Bの反射率(色)の変化を示す図である。なお、図7(B)は反射率の変化の概要を示すものであって、正確な反射率の推移を表すものではない。そして、図7(A)〜図7(B)のST1(第1モード)、ST2(第2モード)、ST3(第3モード)は、EPDの表示モードを表す。
【0092】
図7(A)では、時刻tより前は駆動停止状態であり、共通電極と画素電極の間に電位差は生じていない。このとき、図7(B)のように、画素40Aは黒色、画素40Bは白色であるとする。
【0093】
時刻t〜時刻tでは、表示モードは第1モードであり、通常表示を行うために画素40Aと画素40Bとが更新される。図7(A)では、画素40Aを黒色から白色に、画素40Bを白色から黒色に変化させる場合の駆動パルス信号を示している。図7(B)のように、時刻t1では、画素40Aは白色、画素40Bは黒色に変化している。
【0094】
その後、表示モードは高温警告表示を行う第2モードに変化する。このとき、時刻t〜時刻tでは、警告のメッセージ“HIGH TEMP”(図1参照)を表示するために、駆動パルス信号に基づく電圧の印加が行われるとする。このとき、画素40Aを白色に、画素40Bを黒色にするように、駆動パルス信号に基づく電圧の印加が行われる。図7(B)のように、画素40Aと画素40Bは、時刻t〜時刻tで色の変化はない。
【0095】
時刻t〜時刻tでは、高温警告表示が続けられている。このとき、表示の更新はなく、Va、Vb、Vcomは共にローレベルVであって、共通電極と画素電極の間に電位差は生じない。図7(B)のように、表示色に変化はない。
【0096】
第2モードに変化してから所定の時間(ここでは、時刻t〜時刻t)が経過すると、第3モードに変化する。第3モードでは、まず、白色の単一色表示が行われる。そのため、時刻t〜時刻tで画素40A、画素40Bを共に白色にするように、駆動パルス信号に基づく電圧の印加が行われ(図7(A))、図7(B)のように時刻tで白色になっている。
【0097】
次に、高温時における電気泳動粒子の固着を防止するために、反転した単一色表示(黒色)が行われる。そのため、時刻t〜時刻tで画素40A、画素40Bを共に黒色にするように、駆動パルス信号に基づく電圧の印加が行われ(図7(A))、図7(B)のように時刻tで黒色になっている。
【0098】
そして、第2モードに戻って高温警告表示を行う前に、再び高温警告表示の背景色である白色の単一色表示が行われる。そのため、時刻t〜時刻tで画素40A、画素40Bを共に白色にするように、駆動パルス信号に基づく電圧の印加が行われ(図7(A))、図7(B)のように時刻tで白色になっている。
【0099】
そして、第3モードで所定回数(この例では白色、黒色、白色の3回)の単一色表示が行われた後に、第2モードに戻る。第2モードでは、時刻t〜時刻tで、警告のメッセージ“HIGH TEMP”を表示するために、駆動パルス信号に基づく電圧の印加が行われ、その後に表示の更新を停止する。
【0100】
なお、第3モードで所定回数は3回に限らず5回、7回などであってもよい。反転させながら単一色表示を行う回数を増やすことにより、電気泳動粒子の固着を防止する効果が高まる。
【0101】
1.6.フローチャート
図8は、本実施形態のEPDの表示制御回路が行う制御のフローチャートである。
【0102】
表示制御回路は、現在の表示モードを確認し(S10)、表示モードによって異なる処理を行う。
【0103】
表示制御回路は、現在の表示モードが第1モードである場合には以下の処理を行う(S10 第1モード)。まず、使用環境温度が閾値温度以上であれば(S20Y)、表示モードを第2モードに設定する(S22)。そしてS10に戻る。ここで、閾値温度は例えば40℃である。
【0104】
第1モードであって、使用環境温度が閾値温度未満(S20N)であれば、通常表示を行う(S24)。そしてS10に戻る。ここで、通常表示とは通常の温度状態で行われる表示であって、例えば電子時計に本実施形態のEPDが使用された場合には時刻表示等である(図1参照)。
【0105】
表示制御回路は、現在の表示モードが第2モードである場合には以下の処理を行う(S10 第2モード)。まず、使用環境温度が閾値温度未満になっていれば(S30N)、表示モードを第1モードに設定する(S32)。そしてS10に戻る。
【0106】
第2モードであって、使用環境温度が閾値温度以上であれば(S30Y)、タイマーをカウントアップする(S34)。タイマーは第2モードに切り替わってからの時間を計測する。
【0107】
そして、タイマーが所定値になった場合に(S40Y)、表示モードを第3モードに設定する(S42)。そしてS10に戻る。タイマーが所定値になることは、第2モードに切り替わってから所定の時間(例えば10分〜1時間)が経過したことを意味する。
【0108】
タイマーが所定値になっていない場合には(S40N)、高温警告表示を行う(S44)。そしてS10に戻る。
【0109】
表示制御回路は、現在の表示モードが第3モードである場合には以下の処理を行う(S10 第3モード)。まず、画面全体を高温警告表示の背景色で単一色表示する(S52)。例えば、画面全体を白色で表示する(図1参照)。
【0110】
ここで、画面全体で反転した単一色表示(反転単一色表示)を行うことで、電気泳動粒子を現在とは逆の電極側に移動させて、高温時における電気泳動粒子の固着を防止する。例えば、反転単一色表示とは、画面全体を黒色で表示することである。
【0111】
表示制御回路は、反転が所定回数行われたかを確認する(S54)。もし、所定回数に達していないときは(S54N)、反転単一色表示(S50)を行い、その後に再び高温警告表示の背景色で単一色表示を行う(S52)。
【0112】
単一色表示の反転が所定回数行われた場合(S54Y)、タイマーをクリアして(S56)、表示モードを第2モードに設定する(S58)。そしてS10に戻る。
【0113】
本実施形態のEPDは、第3モードにおいて、第1色(例えば黒色)と第2色(例えば白色)の単一色表示が交互に行われる。そのため、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行う電気泳動表示装置等を提供できる。
【0114】
2.第1変形例
本発明の第1実施形態の第1変形例について図9を参照して説明する。なお、図1〜図8と同じ要素には同じ符号を付しており、説明は省略する。
【0115】
図9は、第1変形例のEPDを含む電子時計1の正面図である。第1モードST1、第3モードST3は第1実施形態(図1参照)と同じである。しかし、第2モードST2Aでは、高温警告表示の背景色が第1色(例えば黒色)と第2色(例えば白色)の中間色(例えば灰色)で表示されている。
【0116】
中間色とは、第1色と第2色の中間の色を意味する。例えば、図7(B)の反射率R(黒色に対応)とR(白色に対応)の間の反射率で表される色であり、第1色と第2色のちょうど中間の色に限るわけではない。図9の例(ST2A)では、さらに濃い灰色であってもよいし、逆に薄い灰色であってもよい。
【0117】
第1色、又は第2色で表示をする場合、電極間にかける電力(電位差×時間)は、中間色に比べて大きくなる。そのため、第1色、又は第2色の表示を行い、高温状態で長時間経過すると、マイクロカプセルの壁に電気泳動粒子が固着してしまう可能性が高くなる。
【0118】
そこで、本変形例では、第2モードST2Aにおいて、画面全体の大きな割合を占める高温警告表示の背景部分の色を第1色と第2色の中間色にすることで、電気泳動粒子の固着をさらに生じにくくしている。なお、その他の構成については、第1実施形態と同じであり説明を省略する。
【0119】
3.第2変形例
本発明の第1実施形態の第2変形例について図10を参照して説明する。なお、図1〜図9と同じ要素には同じ符号を付しており、説明は省略する。
【0120】
図10は、第2変形例のEPDにおける駆動パルス信号の例を示す図である。第1モードST1、第2モードST2での駆動パルス信号は第1実施形態(図7(A)参照)と同じである。しかし、第3モードST3での駆動パルス信号は、振幅が他のモードの場合よりも小さくなっている。図10の例では、第3モードST3での駆動パルス信号は、ハイレベルとしてVではなく、Vよりも低いVHRを用いている。
【0121】
高温時にはEPDを構成する材料自体の内部抵抗値が低下してリーク電流が流れる。そのため、高温時に表示の更新を行うと、EPDの表示品質が低下したり、製品寿命が短くなったりする恐れがある。
【0122】
そこで、本変形例では、高温で電極の駆動を行う必要がある第3モードにおいては、駆動パルス信号の振幅を小さくすることでリーク電流を減らしている。このことにより、リーク電流の影響によるEPDの劣化を防止して、表示品質を保つことができる。なお、その他の構成については、第1実施形態と同じであり説明を省略する。
【0123】
4.適用例
本発明の適用例について図11を参照して説明する。図1の表示例で示したように、本
発明のEPDは高温状態で使用される可能性のある電子時計に好適に適用できる。電子時計は、高温の室内に放置される可能性がある。そのため、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行うEPDを備えることは、視認性を高め、製品の性能を向上させる。
【0124】
ここで、電子時計に限らず、高温状態で使用され得る用途の電子機器にとって、本実施形態で示したEPDを備えることは、製品の性能を向上させることになる。
【0125】
例えば、図11は自動車200に用いられる車載用表示機器202のディスプレイ210を表す。ディスプレイ210は例えば、カーナビゲーションシステムの一部であってもよい。
【0126】
このようなディスプレイは、小型であり、自動車200の車内で画像を表示するために高コントラストである必要がある。一方、夏の昼間などに高温状態で車内に放置される可能性がある。そのため、高温時における電気泳動粒子の固着を防止し、コントラストの高い表示を行うEPDをディスプレイ210に用いることは、視認性を高め、製品の性能を向上させる。このように、本発明のEPDは高温状態で使用され得る用途の電子機器に好適に適用できる。
【0127】
5.その他
前記の第1実施形態、変形例、適応例に用いられるEPDは、黒粒子および白粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものでもよいし、一粒子系の電気泳動が行われるものでもよいし、また、白黒以外の色の組み合わせを用いてもよい。
【0128】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0129】
1,100…電子時計、2…時計ケース、3,103…表示部、4…バンド、6…操作ボタン、7…操作ボタン、10…EPD(電気泳動表示装置)、11…発振回路、12…分周回路、13…計時カウンター、15…スイッチ、16…スイッチ、17…時刻修正回路、22…タイマー、35,35A,35B…画素電極、37…共通電極、40,40A,40B…画素、41…温度センサー、42…温度検出回路、48…駆動用TFT(Thin Film Transistor)、49…低電位電源線(Vss)、50…高電位電源線(Vdd)、55…共通電極配線(Vcom)、60…表示制御回路、61…走査線駆動回路、62…データ線駆動回路、63…コントローラー、64…共通電源変調回路、66…走査線、68…データ線、70…ラッチ回路、80…スイッチ回路、91…第1のパルス信号線(S)、92…第2のパルス信号線(S)、120…マイクロカプセル、126…黒色粒子、127…白色粒子、130…素子基板、131…対向基板、132…電気泳動素子、160…記憶部、200…自動車、202…車載用表示機器、210…ディスプレイ、350…駆動電極層、360…電気泳動表示層、370…共通電極層、ST1…第1モード、ST2…第2モード、ST3…第3モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動表示装置であって、
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持してなり、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を複数配置する表示手段と、
使用環境温度を検出する温度検出手段と、
前記表示手段の表示を制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、前記使用環境温度が高温であることを警告する高温警告表示を行う第2モードと、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に行う第3モードと、を切り替える切り替え制御を行い、
前記第1モードから前記第2モードへの前記切り替え制御を、前記第1モード時において前記温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度以上である場合に行い、
前記第2モードから前記第3モードへの前記切り替え制御を、前記表示モードが第2モードに切り替わって所定の時間が経過した後に行い、
前記第3モードから前記第2モードへの前記切り替え制御を、前記第3モード時において、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に所定の回数実行した後に行う電気泳動表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示装置において、
前記制御手段は、
前記第2モードから前記第1モードへの前記切り替え制御を、前記第2モード時において前記温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度未満である場合に行う電気泳動表示装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の電気泳動表示装置において、
前記表示手段は、
一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応して形成された画素電極と、
他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向して形成された共通電極と、を含み、
前記制御手段は、
前記共通電極および前記画素電極の少なくとも一方に駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、前記共通電極と前記画素電極との間に生じた電界によって前記電気泳動粒子を移動させることで表示を更新し、
前記表示モードが第3モードである場合には、前記駆動パルス信号の振幅を、前記第1モード、前記第2モードにおける前記駆動パルス信号の振幅よりも小さくする電気泳動表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置において、
前記制御手段は、
前記表示モードが第2モードである場合に、前記高温警告表示の背景色を、前記第1色と前記第2色の中間色とする電気泳動表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気泳動表示装置を含む電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気泳動表示装置と、
時刻を計時して、前記時刻を表す時刻信号を出力する計時手段と、を含み、
前記表示手段は、
前記時刻信号に基づいて前記時刻を表示する電子時計。
【請求項7】
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持してなり、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を複数配置する表示手段と、使用環境温度を検出する温度検出手段と、前記表示手段の表示を制御する制御手段と、を含む電気泳動表示装置の制御方法であって、
前記表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、前記使用環境温度が高温であることを警告する高温警告表示を行う第2モードと、前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に行う第3モードと、を切り替える切り替え制御工程を含み、
前記切り替え制御工程は、
前記第1モード時において前記温度検出手段が検出した前記使用環境温度が閾値温度以上である場合に、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを行う工程と、
前記表示モードが第2モードに切り替わって所定の時間が経過した後に、前記第2モードから前記第3モードへの切り替えを行う工程と、
前記第1色の単一色表示と前記第2色の単一色表示とを交互に所定の回数実行した後に、前記第3モードから前記第2モードへの切り替えを行う工程と、を含む電気泳動表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−189762(P2012−189762A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52621(P2011−52621)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】