説明

電気泳動表示装置およびその駆動方法、電子機器

【課題】フルカラーまたはそれに準じる表示が可能であって高コントラストの画像表示が可能な電気泳動表示装置およびその駆動方法、電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置された第1および第2基板と、第1基板および第2基板の間に配置され、第1色に着色された複数の第1帯電粒子および第2色に着色された第2帯電粒子と、これら第1および第2帯電粒子を保持する分散媒とを有する電気泳動層と、第1基板の電気泳動層側に配置され互いに独立駆動される第1画素電極および第2画素電極と、第2基板の電気泳動層側に配置される対向電極と、電気泳動層より第1基板側の位置に設けられる反射電極と、を備え、第1帯電粒子が、第1波長領域で透過性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有し、第2帯電粒子が、第2波長領域で反射性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置およびその駆動方法、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、着色粒子を用いたカラー表示可能な電気泳動表示装置が提案されている。しかしながら、コントラストが低いという課題が存在し、十分な表示性能を有する電気泳動表示装置は提案されていなかった。
【0003】
特許文献1には、1つの画素を2つのサブ画素に分離して、それぞれに2色のカラー粒子を保持させて表示を行う装置が記載されている。具体的には、サブ画素ごとに赤色と青色の2色の粒子を用いて表示を行う方法が記載されているが、白表示、黒表示、赤表示、青表示の4色の表示のみが可能である。さらに、黒表示は、赤粒子と青粒子を分散媒中にランダムの分布させているため、対向基板側から入射した外光が各粒子において吸収されず、青色および赤色の光が外部に漏れることによって、はっきりとした黒表示を行うことができないおそれがある。
【0004】
また、特許文献2では、隔壁等で1つの画素を複数のサブ画素に分離して、各サブ画素をそれぞれ駆動する方法が記載されている。ここでは、各サブ画素内に保持された着色粒子と分散媒とにおける色の関係は、補色の関係にあり、例えば、黄色粒子と青色分散媒とを用いている。フルカラー表示を行うには、2色の色の任意の制御を行う必要がある。しかしながら特許文献2では、粒子の位置による階調等の制御は可能であるが、分散媒の色は制御できていないため、4色表示しかできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−310182号公報
【特許文献2】特開2010−72617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の構成においてはフルカラーに近い表示ができず、しかも黒表示が浮いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、フルカラーまたはそれに準じる表示が可能であって高コントラストの画像表示が可能な電気泳動表示装置およびその駆動方法、電子機器を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に配置され、第1色に着色された複数の第1帯電粒子および第2色に着色された第2帯電粒子と、これら第1および第2帯電粒子を保持する分散媒とを有する電気泳動層と、前記第1基板の前記電気泳動層側に配置され互いに独立駆動される第1画素電極および第2画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動層側に配置される対向電極と、前記第1基板に設けられる反射電極と、を備え、前記第1帯電粒子が、第1波長領域で透過性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有し、前記第2帯電粒子が、第2波長領域で反射性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、基本的に、第1帯電粒子の第1色、第2帯電粒子の第2色、これら第1色および第2色の混合色、白、黒の5色表示が可能となり、多様な表現を実現できる。また、第2基板側から入射する光の一部が反射電極によって反射されて、より明るい表示、特に、紙により近い白表示を実現できる。
【0010】
また、前記第1波長領域と前記第2波長領域との差が、光強度のピーク波長の10%以下である構成としてもよい。
これによれば、第1および第2帯電粒子のいずれにおいても吸収されず、外部にリークしてしまう光を減らすことができる。このため、はっきりとした良好な黒表示を実現できる。
【0011】
また、画素ごとに、前記第1画素電極に接続される第1トランジスタと、前記第2画素電極に接続される第2トランジスタと、を備え、前記第1帯電粒子および第2帯電粒子がプラスあるいはマイナスのいずれかの極性に帯電している構成としてもよい。
【0012】
これによれば、各トランジスタを介して各画素電極にそれぞれ入力される電圧の印加条件によって、画素内における第1および第2帯電粒子の分布状態を制御することができるので、上記5色の表現とこれらの階調表現も可能になる。
【0013】
また、前記第1トランジスタのドレイン電極に接続された第1接続電極と、前記第2トランジスタのドレイン電極に接続された第2接続電極と、を有し、複数の前記第1画素電極どうしが、これら前記第1画素電極よりも前記第1基板側の層に形成された第1接続電極により相互に接続され、複数の前記第2画素電極どうしが、これら前記第2画素電極よりも前記第1基板側の層に形成された第2接続電極により相互に接続されている
構成としてもよい。
【0014】
これによれば、複数の第1画素電極どうし、複数の第2画素電極どうしをそれぞれ同時に駆動させることができる。
【0015】
また、前記第1基板上に前記第1接続電極および前記第2接続電極を覆う被覆層が設けられ、前記被覆層には前記第1および第2接続電極を部分的に露出させる複数の貫通孔が形成されており、前記貫通孔を介して露出する前記第1接続電極の一部が前記第1画素電極として機能し、前記貫通孔を介して露出する前記第2接続電極の一部が前記第2画素電極として機能する構成とされている構成としてもよい。
これによれば、画素電極を別途形成する必要がなくなるので構成が簡素化されて製造が容易になる。
【0016】
また、前記反射電極の表面に散乱性が付与されている構成としてもよい。
これによれば、反射電極によって反射される反射光を散乱させることでより表示色の発色性が向上するとともに、白表示における外光の正反射を軽減させることが可能である。
【0017】
また、前記反射電極に対して電位の入力が可能な構成とされていてもよい。
これによれば、反射電極に対して帯電粒子をはじく電位を入力することによって、反射電極上に帯電粒子が移動してきてしまうことを防止して、対向電極側へとスムーズに移動させることができる。これにより、表示の切り換えを短時間で安定して行えるようになる。
【0018】
また、面方向における前記反射電極と前記画素電極との間の距離が、前記画素電極と前記対向電極との間の距離よりも長い構成としてもよい。
これによれば、画素電極から対向電極側へと帯電粒子を移動させる動作のときに、反射電極上に帯電粒子が移動してきてしまうことを防止することができる。
【0019】
また、黒表示の際には、透過性を有する前記第1帯電粒子が、反射性を有する前記第2帯電粒子よりも前記対向電極側に配置される構成としてもよい。
これによれば、対向基板側から入射した外光のうち、第1色以外の光の一部が第1帯電粒子において吸収され、第1帯電粒子を透過した光のうち第2色の光が第2帯電粒子において反射され、それ以外の光は吸収される。そして、第2帯電粒子において反射された第2色の光は第1帯電粒子において吸収されることとなる。これにより、はっきりとした黒表示が得られる。
【0020】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、互いに対向配置された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に配置され、第1の色に着色された複数の第1帯電粒子および第2の色に着色された第2帯電粒子と、これら第1および第2帯電粒子を保持する分散媒とを有する電気泳動層と、前記第1基板の前記電気泳動層側の面に配置され互いに独立駆動される複数の第1画素電極および複数の第2画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動層側に配置される対向電極と、前記第1基板に設けられる反射電極と、を備え、前記第1帯電粒子が、第1波長領域で透過性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有し、前記第2帯電粒子が、第2波長領域で反射性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記第1画素電極および前記対向電極に対して電圧を印加することにより前記第1帯電粒子を前記対向電極側に移動させる第1の動作と、前記第2画素電極および前記対向電極に対して電圧を印加することにより前記第2帯電粒子を前記対向電極側に移動させる第2の動作と、を有し、透過性を有する前記第1帯電粒子を、反射性を有する前記第2帯電粒子よりも前記対向電極側に配置させることを特徴とする。
【0021】
これによれば、基本的に、第1帯電粒子の第1色、第2帯電粒子の第2色、これら第1色および第2色の混合色、白、黒の5色の表示が可能となり、多様な表現を実現できる。また、第2基板側から入射する光の一部が反射電極によって反射されてより明るい表示が得られ、特に、紙により近い白表示を実現できる。
【0022】
また、前記第1の動作と前記第2の動作との間において、電圧の印加タイミングあるいは印加電圧の大きさに差を設ける駆動方法としてもよい。
これによれば、画素内における第1および第2帯電粒子の分布範囲、分布状態等を制御することができるので、上記した5色の表現に加えてこれら5色の階調表現を実現することができ、明度や彩度の調整も行えるため、略フルカラーに近い表現が可能となる。
【0023】
また、前記第1の動作において前記反射電極に対して前記第1帯電粒子をはじく電位を印加し、前記第2の動作において前記反射電極に対して前記第2帯電粒子をはじく電位を印加する駆動方法としてもよい。
【0024】
これによれば、反射電極に対して対向電極側へ移動させる帯電粒子をはじく電位を入力することによって帯電粒子の移動がスムーズになり、表示の切り換えを短時間で安定して行えるようになる。
【0025】
また、前記第1画素電極と前記第2画素電極とに互いに異なる電圧を印加する第1プリセット動作と、前記第1プリセット動作とは反対の極性の電圧を前記第1画素電極および前記第2画素電極に印加する第2プリセット動作と、を有し、単数あるいは複数画面の書き換えごとに前記第1プリセット動作および前記第2プリセット動作を交互に実施する駆動方法としてもよい。
【0026】
これによれば、各画素電極と対向電極との間に直流電圧が印加されることを防止して、電極の腐食や電気泳動材料の劣化を抑制することができる。
【0027】
また、透過性を有する第1帯電粒子を、反射性を有する第2帯電粒子よりも前記対向電極側に配置させる駆動方法としてもよい。
【0028】
これによれば、対向基板側から入射した外光のうち、第1色以外の光の一部が第1帯電粒子において吸収され、第1帯電粒子を透過した光のうち第2色の光が第2帯電粒子において反射され、それ以外の色の光は吸収される。そして、第2帯電粒子において反射された第2色の光は第1帯電粒子において吸収されることとなる。これにより、はっきりとした黒表示を実現できる。
【0029】
また、多数の前記第1帯電粒子が前記対向電極上で互いに重なるように多層状態で積層される駆動方法としてもよい。
これによれば、第2基板側から入射した光が多層の第1帯電粒子を透過する際に方向を随時異ならせて反射するため、乱反射に似た作用が得られ、明るい表示が得られる。つまり、光が複数の第1帯電粒子を透過することによって指向性のない乱反射となり、かつ対向電極近傍でこの現象が起こるため、視野角の広い表示が得られる。
【0030】
本発明の電子機器は、上記の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする。
これによれば、先に記載の電気泳動表示装置を備えた構成とされているので、明るく視認性の良好なフルカラーに近い表示の行える信頼性に優れた高品位の電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態である電気泳動表示装置の概略構成を示す図。
【図2】電気泳動表示装置の具体的な構成例を示す等価回路図。
【図3】第1実施形態の素子基板側における1画素の具体的な構成例を示す平面図。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図
【図5】電気泳動表示装置の製造時における電気泳動層の形成工程を示す断面図。
【図6】電気泳動表示装置の動作原理について示す図。
【図7】観測側から見たときに視認される着色粒子の面積による階調の違いについて示す画素の概念図。
【図8】(a)は、白表示時における粒子の分布状態を示す図、(b)は、赤表示時における粒子の分布状態を示す図、(c)は、青表示時における粒子の分布状態を示す図、(d)は、黒表示時における粒子の分布状態を示す図。
【図9】(a),(b)は、暗い赤表示時における粒子の分布状態を示す図である。
【図10】暗い青表示時における粒子の分布状態を示す図。
【図11】(a),(b)は、マゼンタ表示時における粒子の分布状態を示す図である。
【図12】(a),(b)は、淡い赤表示時における粒子の分布状態を示す図である。
【図13】視感度補正後の波長を光強度の分布図。
【図14】連続してマゼンタ表示を行う際の駆動方法を示すタイミングチャート図。
【図15】黒表示を連続して行う際の駆動方法を示すタイミングチャート図。
【図16】(a)は、変形例1における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図、(b)は、変形例2における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図、(c)は、変形例3における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図、(d)は、変形例4における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図である。
【図17】赤表示時の駆動方法の変形例における帯電粒子の分布状態を示す図である。
【図18】第2実施形態の電気泳動表示装置の構成を示す部分断面図。
【図19】第3実施形態の電気泳動表示装置の構成を示す部分断面図。
【図20】(a)は、暗い赤表示時における粒子の分布状態を示す図、(b)は、マゼンタ表示時における粒子の分布状態を示す図。
【図21】電気泳動表示装置の変形例2を示す部分断面図。
【図22】赤色の反射粒子とシアン色の透明粒子との反射スペクトルを示す図。
【図23】青色の透過粒子と黄色の反射粒子との反射スペクトルを示す図。
【図24】本発明の電気泳動表示装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0033】
(第1実施形態の電気泳動表示装置)
図1は、本発明の一実施形態である電気泳動表示装置の概略構成を示す図であり、(a)は外観図、(b)は等価回路である。
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、半導体装置からなる素子基板300と、素子基板300に対向配置された対向基板310と、これらの間に挟持される電気泳動層32とにより構成されている。これら素子基板300と対向基板310とが重なる領域には複数の画素40がマトリクス状に配置された画像表示部5が形成されている。また、画像表示部5の外側の領域、すなわち対向基板310よりも外側に張り出した非表示部6には、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62および共通電位回路72が実装されており、当該領域に形成された接続端子を介して、画像表示部5内から延出された配線(走査線66(66A,66B)、データ線68A,68B、共通電位線69)とそれぞれ接続されている。また、対向基板310よりも外側に張り出した素子基板300上には、接続基板201を介して、上記各駆動回路を駆動するための外部回路基板202が接続されている。
【0034】
図2は、電気泳動表示装置の具体的な構成例を示す等価回路図である。
図2に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、素子基板300の一面側に(第1基板30上に:図4)、互いに交差する方向に延在する複数の走査線66と複数のデータ線68A,68Bとが設けられている。ここで、本実施形態の走査線66は、画像表示部5内において2つに分岐された第1走査線66Aおよび第2走査線66Bを有する。
【0035】
1画素40内には、電気泳動材料からなる電気泳動層32、2つの選択トランジスタ(第1トランジスタ)TR1、選択トランジスタ(第2トランジスタ)TR2、2つの画素電極(第1画素電極)35A,画素電極(第2画素電極)35B、対向電極37、接続電極(第1接続電極)44A、接続電極(第2接続電極)44B、および反射電極13が備えられている。
【0036】
選択トランジスタTR1は、ゲートに第1走査線66Aが接続され、ソースにデータ線68Aが接続され、ドレインに画素電極35A(電気泳動層32)が接続されている。選択トランジスタTR2は、ゲートに第2走査線66Bが接続され、ソースにデータ線68Bが接続され、ドレインに画素電極35B(電気泳動層32)が接続されている。
【0037】
データ線68A,68Bの延在方向で隣り合う画素40A、画素40Bのうち画素40Aにおいては、選択トランジスタTR1,TR2のそれぞれのゲートにm行の走査線66が接続されている。そして、選択トランジスタTR1のソースにN(A)列のデータ線68Aが接続され、選択トランジスタTR2のソースにN(B)列のデータ線68Bが接続されている。
【0038】
ここで、選択トランジスタTR1,TR2のドレインと保持容量線(不図示)との間に保持容量が配置された構成とすることも可能である。保持容量線は、例えば走査線66と同時に走査線66と平行方向に形成される。また電気泳動層32に電圧を印加するための、保持容量以外の手段を具備しても良い。
【0039】
接続電極44Aは、選択トランジスタTR1のドレインに接続されるとともに画素電極35Aに接続され、接続電極44Bは、選択トランジスタTR2のドレインに接続されるとともに画素電極35Bに接続されている。
【0040】
反射電極13は、各画素電極35A,35Bどうしの間に存在し、対向電極37の電位とほぼ同電位の電圧が印加される。この反射電極13は少なくともその表面(電気泳動層32側の面)に反射性を有している。
【0041】
図3は、第1実施形態の素子基板側における1画素の具体的な構成例を示す平面図、図4は、図3のB−B線に沿う断面図である。
まず、素子基板300の構成について詳述する。
図3に示すように、電気泳動表示装置100は、1画素2TFT型の構成をなすものであって、画素40ごとに、選択トランジスタTR1,TR2と、接続電極44A,44Bと、複数の画素電極35A,35Bと、反射電極13と、を第1基板30上に備えてなる素子基板300を具備する。
【0042】
画素電極35Aおよび画素電極35Bは1画素内にそれぞれ複数ずつ設けられており、本実施形態ではいずれも平面視円形状を呈する。複数の画素電極35Aどうしは、それぞれがコンタクトホールH1を介して接続される接続電極44Aにより相互に接続され、複数の画素電極35Bどうしは、それぞれがコンタクトホールH2を介して接続される接続電極44Bにより相互に接続されている。
【0043】
選択トランジスタTR1のドレイン電極41dは接続電極44Aを介して複数の画素電極35Aに接続され、選択トランジスタTR2のドレイン電極41dは接続電極44Bを介して複数の画素電極35Bに接続されている。そして、複数の画素電極35Aには選択トランジスタTR1を介してデータ線68Aからのデータ電位が印加され、複数の画素電極35Bには選択トランジスタTR2を介してデータ線68Bからのデータ電位が印加されるようになっている。これにより、複数の画素電極35Aと複数の画素電極35Bとを互いに独立に駆動可能な構成とされている。
【0044】
各接続電極44A,44Bは、平面視櫛歯形状を呈し、2方向(例えば、走査線66A,66Bあるいはデータ線68A,68Bの延在方向)に沿って延在する2辺からなり、全体的にL字状を呈する幹部441と当該幹部441によって連結された複数の枝部442とを有してなる。複数の枝部442は、幹部441の延在方向とは異なる方向(ここでは、枝部442の各辺に対して約60°の方向。これに限らず、例えば45°の方向とすることもできる)に、互いに平行して延在しており、すべての枝部442の延在長さを異ならせてある。幹部441の角部(屈曲部分)付近から延出する枝部442が最も長く、この中央の枝部442から遠ざかる枝部442ほど短い長さとなっている。
【0045】
平面視櫛歯形状を呈する接続電極44A,44Bは、互いにかみ合うようにして画素40内に配置されている。つまり、一方の接続電極44Aの枝部442aの両側に他方の接続電極44Bの枝部442b,442bが存在する状態となっている。
接続電極44Aの各枝部442aは複数の画素電極35Aに対応し、接続電極44Bの各枝部442bは複数の画素電極35Bに対応している。
【0046】
反射電極13は、電位の入力が可能な構成とされており、選択トランジスタTR1,TR2上を覆うようにして画素領域のほぼ全体にベタ状に形成され、画素電極35A,35Bに対応する位置に平面視円形状の複数の開口13A,13Bを有している。開口13A,13Bの直径は、画素電極35A,35Bの直径よりも小さい直径であって、面方向で画素電極35A,35Bと反射電極13との間に隙間が形成されることのない寸法に設定されている。このため、反射電極13としてのデッドエリアがなく明るい画像表示が得られる。
【0047】
なお、反射電極13は、すべての画素40において共通であるとしたがこれに限られることはなく、画素40ごとに独立して設けてもよい。この場合は、画素電極35Aおよび画素電極35Bのうち、例えば複数の画素電極35Aが反射電極13と電気的に接続された構成としておく。対向電極37上に分布した粒子を画素電極35A側へと引き寄せる際には、反射電極13と画素電極35Aとに同一電圧を印加する。電気泳動層32と反射電極13との間には保護膜43が存在しており、この保護膜43に印加される電圧だけ低い電圧が反射電極13から粒子に印加されるため、粒子が反射電極13上の保護膜43の表面に吸着するのを防止することができる。
【0048】
このため、保護膜43の膜厚は厚い方がよく、2μm以上、より好ましくは10μm以上が好適である。または、セルギャップdの5%以上、より好ましくは50%以上が好適である。このような条件であれば、反射電極13から粒子に印加される電圧は、常に画素電極に印加される電圧よりも小さくかつ同極性のものとなる。このため、反射電極13の電位が粒子の移動を阻害することがなくなる。
【0049】
ここで、セルギャップdは電気泳動表示装置100における画素電極35A,35Bと対向電極37との距離(およそ、素子基板300と対向基板310との間の距離)である。図4では20μmである。ただし、20μmに限らない。
【0050】
図3および図4に示すように、第1基板30は厚さ0.5mmのガラス基板からなり、その表面上に厚さ300nmのアルミニウム(Al)からなるゲート電極41e(走査線66)が形成されている。そして、このゲート電極41eを覆うようにして第1基板30の表面全体に酸化シリコン膜からなる厚さ300nmのゲート絶縁膜41bが形成され、ゲート電極41eの直上に厚さ50nmのa−IGZO(In、Ga、Znの酸化物)からなる半導体層41aが形成されている。
【0051】
このゲート絶縁膜41b上には、厚さ200nmのAlからなるソース電極41c(データ線68A,68B)およびドレイン電極41dがゲート電極41eおよび半導体層41aと一部重なるようにそれぞれ設けられている。ソース電極41cとドレイン電極41dは半導体層41aに一部乗り上げるようにして形成されている。また、同じく厚さ200nmのアルミニウム(Al)からなる接続電極44A,44Bがゲート絶縁膜41b上に形成されている。これら接続電極44A,44Bはソース電極41cおよびドレイン電極41dと同時にパターン形成されるもので、接続電極44A(接続電極44B)は選択トランジスタTR1(選択トランジスタTR2)のドレイン電極41dに接続されている。
【0052】
ここで、選択トランジスタTR1(選択トランジスタTR2)としては、一般的なa−SiTFT、ポリSiTFT、有機TFT、酸化物TFT等が使用可能である。また、構造もトップゲート、ボトムゲート構造共に可能である。
【0053】
選択トランジスタTR1(選択トランジスタTR2)および接続電極44A,44B上にはこれらを覆うようにして、厚さ300nmの水素化窒化珪素からなる層間絶縁膜(被覆層)42Aと、厚さ1μmの感光性アクリルからなる層間絶縁膜(被覆層)42Bがこの順で積層されている。層間絶縁膜42B上には、厚さ200nmのAlからなる反射電極13と、この反射電極13を覆うようにして、厚さ10μmの感光性アクリルからなる保護膜(被覆層)43とが形成されている。複数の画素電極35A,35Bは保護膜43の表面に配置される。
【0054】
反射電極13は、画像表示部5におけるすべての画素40に共通して設けられるもので、画像表示部5の外側で電源と接続されている。ここで、反射電極13に散乱性を付与してもよい。この場合、反射電極13の表面上に別途金属酸化膜を成膜してもよいし、反射電極13を構成する金属パターンの表面を酸化させて構成してもよい。酸化物としては、例えば、アルミナ、チタニア等が挙げられる。反射光を散乱させることでより表示色の発色性が向上するとともに、白表示における外光の正反射を軽減することができる。
【0055】
なお、層間絶縁膜42A,42Bおよび保護膜43の材料として、ここではアクリルを用いているがこれ以外の材料を用いることも可能であり、シリコン酸化膜等の無機絶縁膜、有機絶縁膜であってもよい。
【0056】
保護膜43上には、1画素ごとに、厚さ50nmのAlからなる複数の画素電極35Aおよび複数の画素電極35Bが設けられている。これら複数の画素電極35A,35Bのうち、画素電極35Aどうしは、保護膜43、層間絶縁膜42A,42Bおよびゲート絶縁膜41bの厚さ方向を貫通するコンタクトホールH1を介して個々に接続される接続電極44Aによって互いに電気的に接続され、画素電極35Bどうしは、コンタクトホールH2を介して個々に接続される接続電極44Bを介して互いに電気的に接続されている。これら接続電極44A,44Bは、それぞれ選択トランジスタTR1,TR2のドレイン電極41dを延設してなることから、選択トランジスタTR1,TR2のスイッチが閉じたときに各接続電極44A,44Bを通じて画素電極35A,35Bにそれぞれデータ線68A,68Bからの画像信号が供給される。よって、1画素内に配置された画素電極35Aおよび画素電極35Bは互いに独立に駆動されるようになっている。このように、第1基板30から画素電極35A,35Bまでの要素により、素子基板300が構成されている。
【0057】
素子基板300上には、電気泳動層32を介して対向基板310が対向配置されている。
対向基板310は、厚さ0.5nmのガラス基板からなる第2基板31と、その電気泳動層32側の表面上に形成された厚さ100nmのITOからなる対向電極37とにより構成されている。対向電極37が視認側なので透明電極を用いる。
【0058】
対向電極37は、素子基板300側に設けられた島状の複数の画素電極35Aおよび複数の画素電極35Bの面積の総和よりも広い面積を有し、少なくとも画素40内の表示に寄与する領域において一繋がりの電極(ベタ電極)となっている。対向電極37には、必要に応じて、電極の無い切り欠き部を設けても良い。
【0059】
ここで、対向電極37、画素電極35Aおよび画素電極35Bに用いる電極の構成材料としては、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、またはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド等のマトリックス樹脂中に、NaCl、LiClO、KCl、LiBr、LiNO、LiSCN等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした錫酸化物(FTO)、錫酸化物(SnO)、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
また、画素電極35A,35Bに用いる電極の材料として、金属、シリサイド、銀などのペースト等を用いて反射性を有するように構成してもよい。また、これら画素電極35A,35Bは、視認側とは反対側に位置するため、ITOのような透明電極を用いることも可能である。
【0061】
また、第1基板30および第2基板31としては、PET基板以外の有機絶縁基板や薄ガラス等の無機ガラス基板、あるいは無機材料および有機材料からなる複合基板を用いてもよい。
【0062】
上述した構成の素子基板300と対向基板310との間には電気泳動層32が挟持されてなり、このような電気泳動層32は、シリコーンオイルからなる透明な分散媒21中に、PETからなる反射性を有する青色の負帯電粒子(第2帯電粒子)26(B)と、透過性を有する赤色の正帯電粒子(第1帯電粒子)27(R)とが複数個ずつ保持されてなる。
【0063】
分散媒21の材料としては、実質的に無色透明であることが好ましい。このような分散媒としては、比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。かかる分散媒の材料としては、上記以外にも、例えば各種類(蒸留水、純水、イオン交換水等)、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、シクロへキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエンのような長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、ピラジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩、流動パラフィンなどの鉱物油類、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の植物油類、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系液体またはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。分散媒21として気体や真空を用いても良い。
【0064】
また、分散媒21中には、必要に応じて、例えば、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等カップリング剤やその他の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
【0065】
分散媒21中に含まれる、帯電粒子、無帯電粒子および透明粒子は、それぞれいかなるものを用いることができ、特に限定はされないが、染料粒子、顔料粒子、樹脂粒子、セラミックス粒子、金属粒子、金属酸化物粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0066】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、三酸化アンチモン、硫化亜鉛、亜鉛華等の白色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料、フェロシアン化第二鉄等のシアン色顔料、あるいは無機酸化鉄等のマゼンタ色顔料等が挙げられる。無機顔料、有機顔料を用いることも出来る。
これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
上記顔料の代わりに染料を用いて染料粒子を構成できる。この場合は白色顔料に染料を混入させても良いし、着色の顔料と混ぜて用いても良い。例えばカルボニウム系のマゼンタ等の染料を用いることもできる。
【0068】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、スチレンとアクリロニトリルを共重合したAS樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。また、分散媒21中に含まれる各種粒子としては、粒子の中心を空洞にした構造のものを用いても良い。このような構成によれば、粒子の表面で光を散乱させることに加えて、粒子内部の、空洞を構成する壁面においても光を散乱させることができ、光の散乱効率を向上させることが可能となる。よって、白、及びその他の色の発色性を向上させることができる。
【0070】
また、このような電気泳動粒子の分散媒21中における分散性を向上させることを目的に、各粒子の表面に、分散媒21と相溶性の高い高分子を物理的に吸着させたり、化学的に結合させたりすることができる。これらの中でも、電気泳動粒子の表面からの離脱着の問題から、高分子が化学的に結合しているものが特に好ましい。かかる構成とすれば、電気泳動粒子の見かけの比重が小さくなる方向に作用して、電気泳動粒子の分散媒21での親和性、すなわち分散性を向上させることができる。
【0071】
このような高分子としては、例えば、電気泳動粒子と反応性を有する基と帯電性官能基を有する高分子、電気泳動粒子と反応性を有する基と長鎖アルキル鎖、長鎖エチレンオキシド鎖、長鎖フッ化アルキル鎖、長鎖ジメチルシリコーン鎖等を有する高分子、および、電気泳動粒子と反応性を有する基と帯電性官能基と長鎖アルキル鎖、長鎖エチレンオキシド鎖、長鎖フッ化アルキル鎖、長鎖ジメチルシリコーン鎖等を有する高分子等が挙げられる。
【0072】
上述したような高分子において、電気泳動粒子と反応性を有する基としては、例えば、エポキシ基、チオエポキシ基、アルコキシシラン基、シラノール基、アルキルアミド基、アジリジン基、オキサゾン基、およびイソシアネート基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を選択して用いることができるが、用いる電気泳動粒子の種類等に応じて、選択するようにすればよい。
【0073】
電気泳動粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.02〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0074】
素子基板300および対向基板310の周縁部には、電気泳動層32(画像表示部5)の周囲全体を取り囲むように配置されたシール材16(図5)が形成されており、これら素子基板300、対向基板310およびシール材16によって電気泳動層32が封止されている。
【0075】
図5に、電気泳動表示装置の製造時における電気泳動層の形成工程を示す。
製造時において電気泳動層32を形成する際は、素子基板300の周縁部(非表示部)にセルギャップに対応した所定高さのシール材16を平面視枠状に形成する(図5(a))。次に、シール材16によって囲まれた領域(画像形成領域)に、ディスペンサー等で電気泳動材料7を滴下した後(図5(b))、素子基板300上にシール材16を介して対向基板310を貼り合わせることによって(図5(c))、素子基板300と対向基板310との間に電気泳動層32を有した電気泳動表示装置100が完成する。ここで、素子基板300側でなく、対向基板310側にシール材16を形成してもよい。
【0076】
なお、本実施形態においては素子基板300、対向基板310およびシール材16によって囲まれた空間内に、分散媒21と、互いに極性の異なる2色の負帯電粒子26(B)および正帯電粒子27(R)とが封入されてなる非カプセル型の電気泳動層32とした。これにより、仕切りによる開口率の低下やコントラストの低下を防止することができ、コントラストの高い、明るく、くっきりとした表現が可能になる。
【0077】
また、上記した構成以外にも、例えば、素子基板300と対向基板310との間に、分散媒21および帯電粒子26,27を封入したマイクロカプセルを複数配置してなるカプセル型の電気泳動層としてもよい。さらに、素子基板300と対向基板310との間に設けられた隔壁によって分離された領域に電気泳動材料(分散媒21および帯電粒子26,27)を封入した構成であってもよい。
【0078】
次に、本実施形態の電気泳動表示装置の動作原理について述べる。
図6は、電気泳動表示装置の動作原理について示す図である。なお、実際には画素電極と反射電極とは異なる層に形成されているが、説明を分かりやすくするために、反射電極を画素電極と同層で示している。
【0079】
図示していないが、最初に画素電極35Aにマイナス電圧VLを印加して赤の正帯電粒子27(R)を画素電極35Aに集合させ、画素電極35Bにプラス電圧VHを印加して青の負帯電粒子26(B)を画素電極35Bに集合させる。
【0080】
次に図6に示すように、画素電極35Aおよび画素電極35Bに対してそれぞれ同じ大きさのマイナス電圧VLを印加すると、例えば画素電極35A上に赤色の正帯電粒子27(R)が複数吸着し、対向電極37上に複数の青色の負帯電粒子26(B)が分布する。一方、画素電極35Aおよび画素電極35Bに対してそれぞれ同じ大きさのプラス電圧VHを印加すると、例えば画素電極35B上に青色の負帯電粒子26(B)が複数吸着し、対向電極37上に赤色の正帯電粒子27(R)が複数分布する。
【0081】
このように、画素電極35A,35Bのそれぞれに印加する電圧を介して、帯電粒子26,27を画素電極35A,35B側と対向電極37側とに非対象に分布させることにより表示を制御することができる。
【0082】
図7は、観測側から見たときに視認される着色粒子の面積による階調の違いについて示す画素の概念図である。ここでは、分かりやすくするために赤粒子のみを用いて説明する。
図7(a)は、マイナス電圧VLが印加された画素電極35A上に赤色の正帯電粒子27(R)が吸着した状態である。この状態で対向基板310側から電気泳動層32を見ると、画素電極35A上の赤粒子の分布面積に応じた小さなドットと、反射電極13からの反射光によって表現される白色とにより、若干赤みを帯びた白表示として見える。
【0083】
図7(b)は、画素電極35Aに対してマイナス電圧Vl(Vl<VL)を印加して、図7(a)の状態において画素電極35A上に吸着していた赤色の正帯電粒子27(R)の一部を対向電極37側へと移動させた状態である。この状態で対向基板310側から電気泳動層32を見ると、図7(a)の状態よりも大きい赤ドットの分布が見える。画素全体では淡い赤表示となる。
【0084】
図7(c)は、電気泳動層32における複数の正帯電粒子27(R)の全てを対向電極37側へと移動させた状態である。この状態で、対向基板310側から電気泳動層32を見ると画素全体が赤色に見える。
このように、電気泳動表示装置では、対向基板310側から電気泳動層32を見たときに視認される着色粒子の面積により階調を制御するように構成されている。
【0085】
次に、本実施形態の電気泳動表示装置における具体的な動作(表示方法)について述べる。
図8(a)は、白表示時における粒子の分布状態を示す図である。
画素電極35Aにマイナス電圧VLを印加するとともに、画素電極35Bにプラス電圧VHを印加することにより、画素電極35A上に赤色の正帯電粒子27(R)を吸着させ、画素電極35B上に青色の負帯電粒子26(B)を吸着させる。この状態の場合、対向基板310側から電気泳動層32へ入射した光は、粒子が吸着していない反射電極13で反射し、対向基板310から観測者側へと出射する。これにより、明るい表示、すなわち明るい白表示が実現できる。
【0086】
ここで、反射電極13の表面を酸化して形成した酸化物で構成しておく、あるいは反射電極13の表面に酸化膜を形成しておくことによって、反射率が向上するだけでなく、反射光を乱反射させることができる。その結果、メタリックな反射ではなく、紙のような白い色に、より近い白表示を実現できるようになる。
【0087】
また、この状態は、電気泳動表示装置の表示画像を切り換えるときのプリセット状態でもある。電気泳動材料はメモリー性を有するため、表示画像を書き換えるときに画像表示部5における表示をクリアにするプリセット動作を行い、粒子の分布状態をリセットする必要がある。このリセットされた状態(プリセット状態)を基準として、そこから新たな表示画像の書き換え動作を行う。
【0088】
図8(b)は、赤表示時における粒子の分布状態を示す図である。
ここでは、まず、図8(a)に示したプリセット状態を基準として、その後、画素電極35Aと35Bにプラス電圧VHを印加した。これにより、プリセット状態から引き続き、画素電極35B上には青色の負帯電粒子26(B)が吸着した状態のままとなる。また、プリセット状態において画素電極35A上に吸着していた赤色の正帯電粒子27(R)は全て対向電極37側へと移動する。
【0089】
ここで、赤色の正帯電粒子27(R)は透明粒子(透過粒子)であることから、対向基板310側から入射した光は、正帯電粒子27(R)を透過した後に素子基板300側の反射電極13において反射されて、再度、正帯電粒子27(R)を透過して外部に出射する。この際、赤色の正帯電粒子27(R)において赤色以外の光が吸収されて、赤い光のみが対向基板310側から外部に出て行くことになる。このときの出射光(表示画像)の明るさは反射電極13の面積に比例する。このため、画素電極35A,35Bが存在する領域にも反射性を付与することが好ましい。すなわち、反射電極13と同様に、画素電極35A,35Bの表面を金属の酸化物で構成してもよいし、金属層の表面に別途酸化膜を形成してもよい。
【0090】
ここで、透明粒子とは、可視光領域において特定波長領域の光を吸収し、それ以外の波長の光を散乱または透過させる粒子のことである。本実施形態においては、赤色の約600〜800nmの光を散乱または透過させている。なお、可視光以外の領域は不問とする。また、特定波長の光の吸収は多いほうが発色やコントラストの点で好ましく、少なくとも80%以上、できれば90%以上が好適である。
【0091】
図8(c)は、青表示時における粒子の分布状態を示す図である。
青表示を行う際においても、図8(a)に示したプリセット状態を基準として行う。
プリセット後、画素電極35Aおよび画素電極35Bにマイナス電圧VLをそれぞれ印加して、赤色の正帯電粒子27(R)を画素電極35A上に保持させたままとするとともに、プリセット時に画素電極35B上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)を対向電極37側へと全て移動させることによって、青表示を行う。
【0092】
青色の負帯電粒子26(B)は反射粒子であり、対向基板310側から入射した光はこの負帯電粒子26(B)において反射される。このとき、青色以外の光は負帯電粒子26(B)において吸収され、青色光のみが負帯電粒子26(B)において反射されて対向基板310から出射する。このときの青表示の明るさは、対向電極37上に分布した青色の負帯電粒子26(B)の実効的な分布面積に比例する。そのため、十分な青色光の反射が行えるような範囲(厚さ)で、対向電極37上に青色粒子を2次元あるいは3次元的に分布させることが好ましい。
【0093】
青色の負帯電粒子26(B)における青色光の反射率は極力高いことが望ましく、少なくとも60%以上、より好ましくは90%以上の反射率を有していることである。さらに、青色以外の光の反射率は低い程よく、できれば10%以下、より好ましくは5%以下が好適である。
【0094】
また、少なくとも反射において拡散反射(乱反射)の成分を有していることが望ましい。ここで、反射粒子とは、可視光領域において特定波長領域の光を吸収し、それ以外の波長の光を散乱または反射させる粒子を指す。本実施形態においては、青色の波長、約400〜500nmの光を散乱または反射させている。なお、可視光領域以外は不問とする。
【0095】
図8(d)は、黒表示時における粒子の分布状態を示す図である。
黒表示を行う際においても、図8(a)に示したプリセット状態を基準として行う。
プリセット後、まず、画素電極35Aにプラス電圧VHを印加して対向電極37上に赤色の正帯電粒子27(R)を移動させる。これにより、複数の正帯電粒子27(R)は、対向電極37の表面を覆うように分布することとなる。
【0096】
画素電極35Aに対してプラス電圧VHを印加した後、これに続けて、画素電極35Bに対してマイナス電圧VLを印加し、対向電極37側へと青色の負帯電粒子26(B)を移動させる。対向電極37側へと移動した青色の負帯電粒子26(B)は、対向電極37の表面上に分布している赤色の正帯電粒子27(R)の下に配置され、これら正帯電粒子27(R)と重なるようにして3次元的に分布する。このように、対向電極37の直下に赤色の正帯電粒子27(R)を配置した後、これら正帯電粒子27(R)の直下に負帯電粒子26(B)を配置させることによって、黒表示にする。
【0097】
対向基板310側から入射した光はまず透過粒子である赤色の正帯電粒子27(R)において赤色以外の光の一部が吸収されて赤色光のみが青色の負帯電粒子26(B)に到達する。そして、赤色光は青色の負帯電粒子26(B)において吸収される。また、正帯電粒子27(R)を透過することなく負帯電粒子26(B)に直接到達した外光は、そのうちの青色光のみが負帯電粒子26(B)において反射されて、それ以外の色の光は吸収される。負帯電粒子26(B)において反射された青色光は赤色の正帯電粒子27(R)において吸収される。これにより、黒表示となる。
【0098】
次に、赤粒子および青粒子による階調制御を行った際の表示を示す。
図9(a),(b)は、暗い赤表示時における粒子の分布状態を示す図である。
まず、図8(a)に示すプリセット状態を基準として、その後、画素電極35Aにプラス電圧VHを印加して赤色の正帯電粒子27(R)を対向電極37側へと移動させた。その後、画素電極35BにVl1(VL<Vl1<0)を印加して、プリセット時に画素電極35B上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)の一部を対向電極37側へと移動させて、対向電極37の表面上に広く分布する正帯電粒子27(R)の直下に配置させる。これら赤色の正帯電粒子27(R)と青色の負帯電粒子26(B)とが3次元的に分布する一部の領域は黒ドットとなる。このため、対向基板310側から電気泳動層32を見ると、赤表示領域内に複数の黒ドット表示領域が混在して暗い赤表示となる。
このように、赤色粒子と青色粒子の分布範囲による黒表示領域と赤表示領域の面積を制御することによって、任意の明度を表現することができる。
【0099】
各粒子の分布面積の制御は、画素電極35A,35Bに対してそれぞれ印加する電圧の大きさ、印加時間、印加タイミングによって制御する。例えば、先に移動を開始した赤の正帯電粒子27(R)が、まだ対向電極37に到達していない時に青の負帯電粒子26(B)の移動を開始しても良い。
【0100】
また、赤表示領域と黒表示領域における各面積とは、対向基板310側(対向電極37上)における各色の帯電粒子の2次元的、3次元的な広がりを全て考慮した、対向基板310側から観測される実効的な面積である。
【0101】
ここで、黒表示は、青色の階調表示を応用している。
階調表示を行うことができるのは、各画素が複数の画素電極35A,35Bの集合体からなり、かつ、各画素電極35A,35Bを各選択トランジスタTR1,TR2によって独立して制御しているからである。
【0102】
図10は、暗い青表示時における粒子の分布状態を示す図である。
図8(a)に示すプリセット動作を実行した後、画素電極35Aに対してプラス電圧Vh1(0<Vh1<VH)を印加して、プリセット時に画素電極35A上に吸着していた赤色の正帯電粒子27(R)の一部を対向電極37側へと移動させる。その後、画素電極35Bに対してマイナス電圧VLを印加して、画素電極35B上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)を全て対向電極37側へと移動させる。赤色の正帯電粒子27(R)と青色の負帯電粒子26(B)とが3次元的に分布する領域は黒ドットとなることから、対向基板310側から電気泳動層32を見ると、青表示領域内に複数の黒ドット領域A(Bk)が混在して暗い青表示となる。
【0103】
図11(a),(b)は、マゼンタ表示時における粒子の分布状態を示す図である。
図8(a)に示すプリセット動作を実行した後、画素電極35Aに対してプラス電圧Vh2(0<Vh2<VH)を印加すると同時に、画素電極35Bに対してマイナス電圧Vl2(VL<Vl2<0)を印加する。これにより、赤ドット領域A(R)と青ドット領域A(B)とが混在してマゼンタ表示が得られる。ここでは、各画素電極35A,35Bに対して同時に所定の電圧を印加して、各色の粒子の重なりを少なくして黒表示を少なくしている。
なお、各画素電極35A,35Bに対して電圧を印加するタイミングは同時に限らない。また、赤ドット領域A(R)と青ドット領域(B)の面積を変えて色調を制御できる。
【0104】
図12(a),(b)は、淡い赤表示時における粒子の分布状態を示す図である。
図8(a)に示すプリセット動作を実行した後、画素電極35Aに対してプラス電圧Vh3(0<Vh3<VH)を印加して、画素電極35Bに対してマイナス電圧VLを印加する。このようにして、複数の赤色の正帯電粒子27(R)を対向電極37側へと移動させる。正帯電粒子27(R)によって覆われない領域は白表示となる。このため、白表示領域A(W)と赤ドット領域A(R)とが混在し、彩度の低い赤表示が得られる。
【0105】
図13は、視感度補正後の波長と光強度の分布概念図である。
図13に示すように、赤色の透明粒子と青色の反射粒子とでは反射スペクトルが重ならない。重なった波長の光は、赤色粒子および青色粒子のいずれにおいても吸収されることなく外部に出射することとなるため、良好な黒表示を実現することができない。重なる波長の光の強度は他の光強度(赤色および青色の光強度)のMax値の10%以下が望ましい。さらに、良好な黒表示を得るためには2%以下が望ましい。
【0106】
以上、説明したように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、1画素において、白表示、黒表示、赤表示、青表示、マゼンタ表示(赤粒子と青粒子の色の混色)の5色の表示を得ることができる。また、各表示色における階調を制御することにより明度や彩度の調整も行えるため5色以上の色表示を得ることができ、ほぼフルカラーに近い表現が可能となる。これにより、多様な表現を実現できるようになる。
また、対向基板310側から入射する光の一部が反射電極によって反射されて、より明るい表示が可能になるとともに、特に、紙により近い白表示を実現することができる。
また、電気泳動層32は、互いの波長領域を異ならせた透過粒子および反射粒子の2種類の帯電粒子26(B),27(R)を有しており、黒表示の際、各帯電粒子においても吸収されずに外部にリークしてしまう光を減らすことができる。これにより、はっきりとした良好な黒表示を実現することができる。
また、本実施形態では、電気泳動層32として、マイクロカプセルや隔壁等の仕切りを用いずに構成されたものであることから、このような仕切りによる開口率の低下やコントラストの低下がなく、高コントラストで明るいくっきりとした表現が可能となる。
【0107】
次に、電気泳動表示装置の具体的な駆動方法について述べる。
以下の説明において、0VとはGND電圧あるいはVcomを意味する。
図14は、連続してマゼンタ表示を行う際の駆動方法を示すタイミングチャート図である。対向電極37はVcomである。
まず、第1のプリセット動作を実施する。
プリセット期間T11において、走査線66A,66Bに選択電圧Vghを印加して、データ線68Aを介して画素電極35Aにマイナス電圧VLを印加するとともにデータ線68Bを介して画素電極35Bにプラス電圧VHを印加することによって、各画素電極35A,35B上に帯電粒子27(R)、26(B)をそれぞれ集合させる。これにより白表示となり、リセット状態となる。
【0108】
次に、書き込み期間T12において、画素電極35Aに対してプラス電圧Vh(0<Vh<VH)を印加すると同時に、画素電極35Bに対してマイナス電圧Vl(VL<Vl<0)を印加し、画素電極35A上に吸着していた赤色の正帯電粒子27(R)の一部を対向電極37側へと移動させるとともに、画素電極35B上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)の一部を対向電極37側へと移動させる。ここで、図11(b)に示したように対向電極37上における青色の負帯電粒子26(B)の分布面積と、赤色の正帯電粒子27(R)の分布面積とは略等しく、これによって赤色と青色との混色表示、すなわちマゼンタ表示となる。
【0109】
その後、画像保持期間T13において各データ線68A、68Bおよび各画素電極35A,35Bを0Vにし、各帯電粒子26(B),27(R)の分布状態、すなわち画素の表示状態を保持する。
なお、電気泳動表示装置の電源スイッチが入っていれば各データ線68A、68Bおよび各電極35A,35B,37にGND電位が入力され、電源スイッチが切ってあればフローティング状態となる。
【0110】
次に、第2のプリセット動作を実行する。
このプリセット動作は、画像を書き換える際に実施するもので、連続表示を行う場合にも同様に行う。
例えば、連続してマゼンタ表示を行う場合には、先のプリセット動作時とは異なる極性の電圧を各画素電極35A,35Bに対して印加する。つまり、画素電極35Aに対してプラス電圧VHを印加するとともに、画素電極35Bに対してマイナス電圧VLを印加して、先のプリセット動作時に各画素電極35A,35Bに印加した電圧の極性を逆転させる。これにより、各画素電極35A,35B上に各帯電粒子26(B),27(R)が集合して、表示がリセットされる。
【0111】
次に、書き込み期間T22において、画素電極35Aに対してマイナス電圧Vl(VL<Vl<0)を印加すると同時に、画素電極35Bに対してプラス電圧Vh(0<Vh<VH)を印加し、画素電極35A上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)の一部を対向電極37側へと移動させるとともに、画素電極35B上に吸着していた赤色の正帯電粒子27(R)の一部を対向電極37側へと移動させる。これにより、先の表示と同様にマゼンタ表示となる。
【0112】
その後、画像保持期間T23において各データ線68A、68Bおよび各画素電極35A,35Bを0Vにし、各粒子26(B),27(R)の分布状態、すなわち画素の表示状態を保持する。
図示していないが、画像保持期間T13、T23において選択トランジスタTR1、TR2を導通させ、0Vをデータ線68A、68Bから画素電極35A、35Bに書き込んでも良い。
【0113】
次に、連続して黒表示を行う際の駆動方法を説明する。ここで対向電極37の電位はVcomである。
図15は、黒表示を連続して行う際の駆動方法を示すタイミングチャート図である。
まず、プリセット期間T11において、走査線66A,66Bに選択電圧Vgh(選択トランジスタTR1,TR2をONにする電圧)を印加することにより、データ線68Aを介して画素電極35Aにマイナス電圧VLを印加するとともに、データ線68Bを介して画素電極35Bにプラス電圧VHを印加する。これによって、各画素電極35A,35B上に帯電粒子27(R)、26(B)をそれぞれ集合させる。
【0114】
次に、書き込み期間T12において、まず、画素電極35Aに対してプラス電圧VHを印加すると同時に、画素電極35Bを0V(Vcom)にして、画素電極35A上に吸着した赤色の正帯電粒子27(R)を対向電極37側へと移動させるとともに、画素電極35B上における青色の負帯電粒子26(B)の保持状態を維持させる。
そして、赤色の正帯電粒子27(R)の対向電極37側への移動動作開始後に、所定の時間(図中の「書き込み時間差」)をおいて、画素電極35Bに対してマイナス電圧VL)を印加する。これにより、画素電極35B上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)をすべて対向電極37側へと移動させ、先に対向電極37の表面上に分布させておいた赤色の正帯電粒子27(R)の下方に配置させる。その結果、黒表示となる。
【0115】
その後、画像保持期間T13においてデータ線68A、68Bおよび各画素電極35A,35Bを0Vにし、各粒子26(B),27(R)の分布状態、すなわち画素の表示状態を保持する。
なお、電気泳動表示装置の電源スイッチが入っていれば各データ線68A、68Bおよび各電極35A,35B,37にGND電位が入力され、電源スイッチが切ってあればフローティング状態となる。
【0116】
次に、プリセット期間T21を実行する。
ここでは、走査線66A,66Bに選択電圧Vghを印加することによりデータ線68A,68Bを介して、先のプリセット動作時とは異なる極性の電圧を各画素電極35A,35Bに対して印加する。つまり、画素電極35Aに対してプラス電圧VHを印加するとともに、画素電極35Bに対してマイナス電圧VLを印加して、先のプリセット動作時に各画素電極35A,35Bに印加した電圧の極性を逆転させる。これにより、各画素電極35A,35B上に各帯電粒子26(B),27(R)が集合して、表示がリセットされる。
【0117】
次に、書き込み期間T22において、まず、画素電極35Bに対してプラス電圧VHを印加すると同時に、画素電極35Aを0Vにして、画素電極35B上に吸着した青色の負帯電粒子26(B)を対向電極37側へと移動させるとともに、画素電極35A上における赤色の正帯電粒子27(R)の保持状態を維持させる。
そして、青色の負帯電粒子26(B)の対向電極37側への移動動作開始後に、所定の時間(図中の「書き込み時間差」)を置いて、画素電極35Aに対してマイナス電圧VLを印加する。これにより、画素電極35A上に吸着していた一部の青色の負帯電粒子26(B)を対向電極37側へと移動させ、先に対向電極37の表面上に分布させておいた赤色の正帯電粒子27(R)の下方に配置させる。その結果、黒表示となる。
【0118】
その後、画像保持期間T23において各データ線68A、68Bおよび各画素電極35A,35Bを0Vにし、各帯電粒子26(B),27(R)の分布状態、すなわち画素の表示状態を保持する。
【0119】
ここでは、表示を切り換える際に実施するプリセット動作において、各画素電極35A,35Bに印加する電圧の極性を逆転させる動作は、複数画面の書き換え毎に行ってもよい。
【0120】
また、書き込み期間T12,T22において、画素電極35A,35Bに電圧を印加するタイミングに差を設ける方法は上記方法に限らない。例えば、赤粒子を移動させるフィールドと、青粒子を移動させるフィールドとを異ならせてもよい。また、画素電極35A、35Bに印加する電圧の絶対値や印加時間を画素電極35A,35B間で変えて、粒子の移動速度を制御して、赤と青粒子の対向基板上の粒子の積層順を制御しても良い。
【0121】
なお、上記プリセット期間T11、T21においては、走査線を順次選択して画像データを書き込む方法を用いたが、画面全体に設けられた全ての走査線を一括選択して全ての走査線に同時に画像データを書き込む方法を用いてもよい。
また、複数の走査線を同時に選択して、これら複数の走査線ごとに一括して画像データを書き込む方法を用いてもよい。
さらに、図14および図15には示していないが、反射電極13に対して、例えば、画素電極35A,35Bのいずれかの電圧、あるいは対向電極37と同一の電圧を印加して、帯電粒子26(B),27(R)の移動を制御してもよい。
図15のT12、T22中の「書き込み時間差」の時に、青粒子を放出する画素電極35A、35BにVcomが印加されているが、その電圧に限らない。画素電極35A、35Bに集合した青粒子を保持する電圧であれば何でも良い。
また、電気泳動表示装置100の駆動方法は、上記に限らず、他の駆動方法を用いることが可能である。
【0122】
次に、黒表示を行う際の他の駆動方法について述べる。
【0123】
(変形例1)
図16(a)は、変形例1における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図である。
ここでは、各画素電極35A,35Bに互いに異なる極性の電圧を印加してプリセット動作を行った後に、これら画素電極35A,35Bに対してプリセット動作時とは反極性の電圧を同時に印加する。このようにして、対向電極37側に赤色と青色の各帯電粒子26(B),27(R)を混在せしめた。赤色と青色の各帯電粒子26(B),27(R)が対向電極37上およびその近傍において3次元的にランダムに存在することにより、対向基板310側から入射した外光が各帯電粒子26(B),27(R)において吸収されて黒表示となる。なお、対向電極37と接する青色の負帯電粒子26(B)の反射光が視認されるため多少青味かかった表示色となるが、黒に近い表示を行うことができる。
【0124】
(変形例2)
図16(b)は、変形例2における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図である。
ここでは、各画素電極35A,35Bに互いに異なる極性の電圧を印加してプリセット動作を行った後に、まず、画素電極35Aに対してプリセット動作時とは反極性の電圧(例えばプラス電圧)を印加して、全ての赤色の正帯電粒子27(R)を対向電極37側へと移動させる。次に、画素電極35Bに対して所定の電圧を印加することにより、青色の負帯電粒子26(B)を分散媒21中に浮遊させる。このような状態においても黒表示は可能である。
【0125】
(変形例3)
図16(c)は、変形例3における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図である。
プリセット動作後の、書き込み期間において、画素電極35Aに対してプラス電圧を、画素電極35Bにマイナス電圧を印加すると同時に、反射電極13に対してプラス電圧を印加する。この場合、赤色の正帯電粒子27(R)は対向電極37側、青色の負帯電粒子26(B)は反射電極13側に移動している。電圧印加時における両方の帯電粒子26(B),27(R)の移動方向が異なるので、これら両方の帯電粒子26(B),27(R)を同時に移動させることができる。
【0126】
例えば、画素電極35Aにマイナス電圧VLを印加するとともに画素電極35Bにプラス電圧VHを印加してプリセット動作を行った後、対向電極37にGND電位を印加し、画素電極35Aにプラス電圧(例えばプラス電圧VH)を印加することによって、赤色の正帯電粒子27(R)を対向電極37側へと移動させる。また、画素電極35Bにマイナス電圧VLを印加するとともに反射電極13に対してプラス電圧(例えばプラス電圧VHよりも高電圧)を印加することにより、画素電極35B上に吸着していた青色の負帯電粒子26(B)を反射電極13上に移動させる。
【0127】
これにより、対向基板310側から入射した外光のうち、赤色光以外の光が正帯電粒子27(R)において吸収されて赤色光のみが反射電極13上に吸着した青色の負帯電粒子26(B)に入射して吸収される。また、正帯電粒子27(R)において吸収されずに負帯電粒子26(B)に直接入射した外光は、そのうちの青色以外の光が吸収されるとともに青色光のみが反射される。負帯電粒子26(B)において反射された青色光は赤色の正帯電粒子27(R)において吸収される。これにより、黒表示となる。
【0128】
(赤表示の変形例)
図17(a)は、赤表示の変形例の駆動方法の変形例における帯電粒子の分布状態を示す図である。
ここでは、電気泳動層32内に保持される正帯電粒子27(R)の数を増やした。
プリセット動作を行った後、画素電極35Aに対してマイナス電圧VLを印加するとともに、画素電極35Aに対してプラス電圧VHを印加することにより、対向電極37上には増量された赤色の正帯電粒子27(B)が互いに重なるように多層状態で分布する。
【0129】
そして、対向基板310側から入射した光は多数の正帯電粒子27(R)を透過する際に方向を随時異ならせて、最終的に対向基板310側から出射する。これは、乱反射に似た作用であり、その結果、明るい赤表示が得られる。つまり、光が複数の赤粒子を透過することによって指向性のない乱反射となり、かつ対向電極37近傍でこの現象が起こるため視野角の広い赤表示となる。
【0130】
図17(b)は、同図(a)における黒表示時の帯電粒子の分布状態を示す図である。
ここでは、画素電極35Aにマイナス電圧VLを印加するとともに画素電極35Bにプラス電圧VHを印加してプリセット動作を行った後、まず、画素電極35Aに対してプラス電圧Vh(Vh<VH)を印加して対向電極37上に一部の正帯電粒子27(R)を分布させる。一部の正帯電粒子27(R)であるが、粒子数が多いため対向電極37を覆っている。対向電極37を覆う粒子量は、図8(b)のように赤の光が透過できる量である。
【0131】
その後、所定の時間をおいた後、画素電極35Bにマイナス電圧VLを印加して全ての負帯電粒子26(B)を正帯電粒子27(R)の下方(直下)に分布させる。ここでは対向基板310近傍の粒子分布は図8(d)と同じ状態となり、同様の黒表示が実現できる。
ここで黒表示も対向電極37近傍で黒色を作成しているため視角が広い。もちろん青表示は図8(c)と同様のため同じ理由で視角が広い。
このように、多量の赤粒子を用いることで視角の広い電気泳動装置が実現できる。
【0132】
以上述べたように、本実施形態の電気泳動表示装置100では、各帯電粒子26(B),27(R)の分布状態を制御することによって、基本的に、赤、青、マゼンタ、白、黒の5色の表示が可能となり、多様な表現を実現することができる。また、電圧の印加条件(印加時間、印加タイミング、印加電圧の大きさ等)を制御することにより、上記した5色の表現に加えてこれら5色の階調表現を実現することができ、明度や彩度の調整も行えるため、フルカラーあるいはこれに近い表現を実現することができる。
【0133】
また、画素電極35A,35Bから対向電極37側へと帯電粒子26(B),27(R)をそれぞれ移動させる際、反射電極13に対して移動対象の帯電粒子をはじく電位を入力することによって、反射電極13上に帯電粒子が移動してきてしまうことを防止でき、その結果、対向電極37側へと帯電粒子をスムーズに移動させることができる。これにより、表示の切り換えを短時間で安定して行えるようになる。
【0134】
また、黒表示を得る際には、透過性を有する赤色の正帯電粒子27(R)を先に移動させて、反射性を有する青色の負帯電粒子26(B)よりも対向電極37側に配置させることにより、対向基板310側から入射した外光を各粒子において吸収させることができて良好なはっきりとした黒表示が実現される。
【0135】
また、単数あるいは複数画面の書き換えごとに第1プリセット動作と第2プリセット動作とを交互に実施することによって、画素電極35A,35Bと対向電極37との間に、それぞれ直流電圧が印加されることを防止して、電極の腐食や電気泳動材料の劣化を抑制することができ、高信頼性の電気泳動表示装置100となる。
【0136】
また、上述した表示方法の説明は帯電粒子を移動させる際の電圧印加方法の例示であり、他の方法も可能である。
例えば、反射電極13に印加する電圧を対向電極37と同じ電圧にした場合は次のような設定を行なう。
この場合は対向電極37から画素電極35A,35B側へと帯電粒子を移動させる際は問題ないが、画素電極35A,35Bから対向電極37側へと帯電粒子を移動させる動作のときに、反射電極13上に帯電粒子が移動してきてしまうことがある。これを避けるために、面方向における画素電極35A,35Bと反射電極13との距離を、対向電極37と画素電極35A,35Bとの距離(セルギャップd)よりも長くなるように設定する。または、反射電極13上に絶縁膜を形成し、反射電極13の電位が帯電粒子に影響しないように設定する。
【0137】
他の例として、反射電極13に交流電圧を印加する方法もある。そこでは、帯電粒子を対向電極37側へと移動させる時に、2フィールド用いて移動させる。例えば、プリセット後の最初のフィールドにおいて画素電極35A上に吸着していた正帯電粒子27(R)を対向電極37側へと移動させる際、画素電極35Aにプラス電圧を印加するとともに反射電極13に対してもプラス電圧を印加する。これで正帯電粒子27(R)が反射電極13上に移動することを防止できて、画素電極35A上から対向電極37側へとスムーズに移動する。すなわち、反射電極13上へ移動してきた正帯電粒子27(R)は反射電極13の電圧によってはじかれて、対向電極37へと移動するようになる。
【0138】
また、次のフィールドにおいて画素電極35B上に吸着していた負帯電粒子26(B)を対向電極37側へと移動させる際は、画素電極35Bにマイナス電圧を印加するとともに、反射電極13にもマイナス電圧を印加する。これにより、反射電極13上に移動してきた負帯電粒子26(B)がはじかれて対向電極37側へとスムーズに移動することとなる。
【0139】
さらに、対向電極37から画素電極35A,35B側へと負帯電粒子26(B)および正帯電粒子27(R)を移動させる場合には、反射電極13に対して対向電極37と同じ電圧を印加する。
このように、反射電極13に対して印加する電圧によって各帯電粒子26(B),27(R)のいずれかの移動制御の補助を行うことができる。
【0140】
また、次の表示画像に書き換える場合(表示が同一の場合も含む)には、一度画像をリセットする。このとき、先の画像を表示する前に実行した第1のプリセット動作時に各画素電極35A,35Bに対して印加した電圧の極性と、次の画像を表示する前に実行する第2のプリセット動作時に各画素電極35A,35Bに対して印加する電圧の極性とを交換する。
これにより、画素電極35A,35Bと対向電極37とを含めた3つの電極によって完全な交流駆動が可能となる。したがって、各電極の腐食や電気泳動材料の劣化を防止することができる。
【0141】
(第2実施形態の電気泳動表示装置)
図18は、第2実施形態の電気泳動表示装置の構成を示す部分断面図である。
図18に示すように、第2実施形態における電気泳動表示装置102は、素子基板300の表面(電気泳動層32側の表面)に島状の複数の画素電極が設けられておらず、各選択トランジスタTR1,TR2のドレイン電極41dにそれぞれ接続された接続電極44A,44Bの一部が画素電極として機能する構成となっている点において異なっている。
【0142】
本実施形態では、接続電極44A,44B上を覆っている層間絶縁膜42A,42Bおよび保護膜43に、各接続電極44A,44Bを部分的に露出させるための平面視円形状の貫通孔が複数形成されている。そして、これら接続電極44A,44Bのうち、第1の貫通孔49aを介して露出する接続電極44Aの一部が上記の画素電極35Aとして機能し、第2の貫通孔(不図示)を介して露出する接続電極44Bの一部が上記の画素電極35Bとして機能する。このため、例えば、接続電極44Aにマイナス電圧VLが印加された場合、赤色の正帯電粒子27(R)は貫通孔49a内に入り込み、該貫通孔49a内において露出する接続電極44A上に集合(吸着)することとなる。
接続電極44A,44BはAlからなり、反射性を有している。このため、それぞれに印加される電圧によって帯電粒子26(B),27(R)の移動を制御するとともに外光を対向基板310側へと反射させる作用も含む。
【0143】
反射電極13上には保護膜43が形成されている。このため、帯電粒子には保護膜43を介して反射電極13から低電圧が印加されることになる。よって、反射電極13上、すなわち保護膜43上に帯電粒子26(B),27(R)が付着することが防止される。このため、保護膜43の厚さは、帯電粒子26(B),27(R)の移動制御に影響を与えることなく、帯電粒子26(B),27(R)の吸着を防止することができる値に設定される。ここで、保護膜43は、厚さ2μm以上、より好ましくは10μm以上である。または、セルギャップdの5%以上、より好ましくは50%以上である。
【0144】
また、上記した構成によれば、画素電極を別途形成する必要がないので構成を簡素化できるとともに製造が容易になる。
【0145】
なお、反射電極13は、画像表示部5全体にベタ状に形成されており、各画素において共通の構成となっているが、画素ごとに独立して設けてもよい。この場合は、反射電極13を、貫通孔を介して下層の接続電極44A,44Bと電気的に接続させておく。ここで、画素内において複数の反射電極13ごとに2つのグループに分け、第1グループにおける複数の反射電極13どうしを接続電極44Aを介して互いに接続させ、第2グループにおける複数の反射電極13を接続電極44Bにおいて互いに接続させることにより、各グループの複数の反射電極13ごとに互いに独立して駆動させることが可能となる。
またこの時、反射電極13が帯電粒子26(B),27(R)に印加する電圧は常に接続電極44A,44Bに印加される電圧よりも小さく、同極性のものとなる。このため、反射電極13の電位が帯電粒子26(B),27(R)の移動を阻害することがなくなる。
【0146】
(第3実施形態の電気泳動表示装置)
図19は、第3実施形態の電気泳動表示装置の構成を示す部分断面図である。
図19に示すように、第3実施形態における電気泳動表示装置について述べる。
本実施形態の電気泳動表示装置103では、第1基板30側において、ゲート絶縁膜41b上に形成された選択トランジスタTR1,TR2と、画素電極35A,35Bに接続される接続電極44A,44Bと、を覆うようにして層間絶縁膜42Aが形成されており、さらにこの層間絶縁膜42A上に感光性アクリルから成る厚さ2μmの層間絶縁膜53が形成されている。本実施形態における層間絶縁膜53の表面53aは凹凸形状とされており、層間絶縁膜42とは反対側の電気泳動層32側へと突出する複数の凸部53Aを多数有している。これら複数の凸部53Aは少なくとも1つの画素内に存在し、各凸部53Aの平面視形状や断面形状、高さ等は不均一とされているとともに、その位置もランダムな配置とされている。
【0147】
このような層間絶縁膜53上には、表面53aの形状に倣うようにして所定の厚さの反射電極13が設けられている。反射電極13はAlなどを用いて形成され、その膜厚は層間絶縁膜53の厚さに比べて薄く、層間絶縁膜53の表面53aすなわち凸部53Aの外形を反映させた形状となっている。これにより、反射電極13の表面13aが散乱面となり、白表示時における外光の正反射を軽減することができる。
【0148】
なお、反射電極13上に形成された保護膜43は平坦化膜として機能している。
【0149】
(変形例1)
図20(a)は、暗い赤表示時における粒子の分布状態を示す図、(b)は、マゼンタ表示時における粒子の分布状態を示す図である。
図8,9,10のように今までは画素電極35A,35Bから対向電極37に移動する粒子はほとんど全てが対向電極37近傍に位置するとの説明を行なってきた。しかし、実際には一部の粒子が分散媒21中に位置することもある。これを示した例が図20(a)、(b)である。
図20(a)は図9(a)の変形例である。青の負帯電粒子26(B)の一部が分散媒21中に位置している。その結果、暗い赤表示が得られる。
図20(b)は図11(a)の変形例である。赤と青の帯電粒子27(R)、26(B)の一部が分散媒21中に位置している。その結果、マゼンタ表示が得られる。
この状態においても対向電極37の視認側から見た粒子の実効的分布の面積により階調や混色を表示できる。
また図示しないが、図8(a)の白状態においても一部の粒子が分散媒21中に位置する状態であっても良い。このように今まで説明した全ての図において一部の粒子が分散媒中に位置していても良い。
【0150】
(変形例2)
図21は、電気泳動表示装置の変形例2を示す部分断面図である。
図21に示すように、ここでは、Alからなる反射フィルム(反射電極)80が第1基板の裏面に設けられている。この反射フィルム80は、透明接着剤を介して第1基板30の裏面に貼り合わされている。なお、反射フィルム80の代わりにAl等の金属を第1基板30の裏面上に直接形成してもよい。また、本例では、選択トランジスタTR1、TR2側に反射フィルムを設けないために保護膜43を用いていない。
このように、素子基板300の裏面側に反射フィルム80を設ける構成であれば、反射フィルム80をベタ状に形成することができるので反射性が高まるとともに製造が容易になる。
【0151】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0152】
上記の実施形態においては、電気泳動層32を構成する帯電粒子として、青色の負帯電粒子26(B)と赤色の正帯電粒子27(R)とを備えた構成について述べたが、帯電粒子の色の組み合わせ及び帯電極性はこれに限らず、帯電粒子の色および極性は様々な組み合わせにすることができる。また、反射粒子および透明粒子の色の組み合わせおよび極性についても上記したものに限らない。
【0153】
帯電粒子の色の組み合わせとしては、互いに補色の関係となる色が好ましく、例えば、緑色とマゼンタ、青色と黄色などのような組み合わせにしてもよい。
ここで、分散媒21内に赤色の反射粒子と、シアン色の透明粒子とが保持された電気泳動層の場合、各色の帯電粒子における透過と反射(散乱)におけるスペクトルの共通波長の制約は上記した通りである。図22に示す赤色(R)の反射粒子とシアン色(C)の透明粒子との反射スペクトル、図23に示す、青色(B)の透過粒子とイエロー(Y)の反射粒子との反射スペクトルにおいて、各組み合わせにおける色粒子どうしの反射スペクトルの重なりは2%以下である。
【0154】
これによれば、白表示、黒表示、一方の帯電粒子の色表示、他方の帯電粒子の色表示、およびこれら2種類の帯電粒子の色の混色表示の5色を、各色の階調表示を含めて表現することが可能である。したがって、明るく高コントラストのフルカラー表示が可能な電気泳動表示装置が得られる。
また、補色でなくても透過または反射強度が重ならなければどういう組み合わせでも良い。例えば赤、青の代わりに緑っぽい赤、緑っぽい青を用いて明るい表示を実現できる。
【0155】
帯電粒子を対向電極37近傍に位置させることで表示を行い、対向電極37や画素電極35A、35Bにおいて粒子位置のメモリー性を持たせることで表示のメモリー性を持たせる事ができる。
プリセット時の表示として図8(a)に示す白表示を用いたが、同図(d)の黒表示を用いることもできる。
【0156】
また、画素電極35A,35Bの平面形状は上記したものに限らず、ストライプ、楕円、多角形等を用いてもよい。2種類の帯電粒子を対向電極37上に分布させる際、各粒子の分布範囲の少なくとも一部を重ならせることが可能な形状となっていればよい。
図1(b)および図2に示した等価回路は、1トランジスタ1キャパシタ構造(1T1C構造)をベースとしている。これ以外の等価回路を用いることも可能である。例えば、2トランジスタ1キャパシタ回路等である。
【0157】
[電子機器]
次に、上記各実施形態の電気泳動表示装置を電子機器に適用した場合について説明する。
図24は、本発明の電気泳動表示装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。
図24(a)は、電子機器の一例である電子ブックを示す斜視図である。この電子ブック(電子機器)1000は、ブック形状のフレーム1001と、このフレーム1001に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー1002と、操作部1003と、本発明の電気泳動表示装置によって構成された表示部1004と、を備えている。
【0158】
図24(b)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計(電子機器)1100は、本発明の電気泳動表示装置によって構成された表示部1101を備えている。
【0159】
図24(c)は、電子機器の一例である電子ペーパーを示す斜視図である。この電子ペーパー(電子機器)1200は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体部1201と、本発明の電気泳動表示装置によって構成された表示部1202を備えている。
【0160】
例えば電子ブックや電子ペーパーなどは、白地の背景上に文字を繰り返し書き込む用途が想定されるため、消去時残像や経時的残像の解消が必要とされる。
なお、本発明の電気泳動表示装置を適用可能な電子機器の範囲はこれに限定されず、帯電粒子の移動に伴う視覚上の色調の変化を利用した装置を広く含むものである。
【0161】
以上の電子ブック1000、腕時計1100及び電子ペーパー1200によれば、本発明に係る電気泳動表示装置が採用されているので、明るく視認性の良好なフルカラーに近い表示の行える信頼性に優れた高品位の電子機器となる。
【0162】
なお、上記の電子機器は、本発明に係る電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部や、マニュアル等の業務用シート、教科書、問題集、情報シート等の電子ペーパーにも、本発明に係る電気泳動表示装置は好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0163】
13…反射電極、13a…表面、21…分散媒、26…帯電粒子、26…負帯電粒子(第2帯電粒子)、27…正帯電粒子(第1帯電粒子)、30…第1基板、31…第2基板、32…電気泳動層、35A,35B…画素電極、37…対向電極、40,40A,40B…画素、41d…ドレイン電極、42A,42B…層間絶縁膜(被覆層)、43…保護膜(被覆層)、44A,44B…接続電極、44A…接続電極(第1接続電極)、44B…接続電極(第2接続電極)、49a…貫通孔、100,102,103…電気泳動表示装置、TR1…選択トランジスタ(第1トランジスタ)、TR2…選択トランジスタ(第2トランジスタ)、1000…電子ブック(電子機器)、1100…腕時計(電子機器)、1200…電子ペーパー(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置された第1基板および第2基板と、
前記第1基板および前記第2基板の間に配置され、第1色に着色された複数の第1帯電粒子および第2色に着色された第2帯電粒子と、これら第1および第2帯電粒子を保持する分散媒とを有する電気泳動層と、
前記第1基板の前記電気泳動層側に配置され互いに独立駆動される第1画素電極および第2画素電極と、
前記第2基板の前記電気泳動層側に配置される対向電極と、
前記電気泳動層より前記第1基板側の位置に設けられる反射電極と、を備え、
前記第1帯電粒子が、第1波長領域で透過性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有し、
前記第2帯電粒子が、第2波長領域で反射性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有する
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第1波長領域と前記第2波長領域との重なりが、
前記第1波長領域および前記第2波長領域における光強度のMAX値の10%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
画素ごとに、第1の前記画素電極に接続される第1トランジスタと、第2の前記画素電極に接続される第2トランジスタと、を備え、
前記第1帯電粒子および第2帯電粒子がプラスあるいはマイナスのいずれかの極性に帯電している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記第1画素電極よりも前記第1基板側の層に形成され、前記第1トランジスタのドレイン電極に接続された第1接続電極と、前記第2トランジスタのドレイン電極に接続された第2接続電極と、を有し、
複数の前記第1画素電極どうしが前記第1接続電極により相互に接続され、
複数の前記第2画素電極どうしが前記第2接続電極により相互に接続されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記第1接続電極および前記第2接続電極を覆うようにして前記第1基板上に設けられた被覆層には、前記第1および第2接続電極を部分的に露出させる複数の貫通孔が形成されており、
第1の前記貫通孔を介して露出する前記第1接続電極の一部が前記第1画素電極として機能し、
第2の前記貫通孔を介して露出する前記第2接続電極の一部が前記第2画素電極として機能する構成とされている
ことを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記反射電極の表面に金属酸化膜が形成されている、あるいは前記反射電極の表面が酸化物で形成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
前記反射電極に対して電位の入力が可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項8】
黒表示の際には、透過性を有する前記第1帯電粒子が、反射性を有する前記第2帯電粒子よりも前記対向電極側に配置される
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項9】
互いに対向配置された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板の間に配置され、第1の色に着色された複数の第1帯電粒子および第2の色に着色された第2帯電粒子と、これら第1および第2帯電粒子を保持する分散媒とを有する電気泳動層と、前記第1基板の前記電気泳動層側の面に配置され互いに独立駆動される複数の第1画素電極および複数の第2画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動層側に配置される対向電極と、前記電気泳動層より前記第1基板側の位置に設けられる反射電極と、を備え、前記第1帯電粒子が、第1波長領域で透過性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有し、前記第2帯電粒子が、第2波長領域で反射性を有するとともにそれ以外の波長領域で吸収性を有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記第1画素電極および前記対向電極に対して電圧を印加することにより前記第1帯電粒子を前記対向電極側に移動させる第1の動作と、
前記第2画素電極および前記対向電極に対して電圧を印加することにより前記第2帯電粒子を前記対向電極側に移動させる第2の動作と、を有し、
透過性を有する前記第1帯電粒子を、反射性を有する前記第2帯電粒子よりも前記対向電極側に配置させる
ことを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項10】
前記第1の動作と前記第2の動作との間において、電圧の印加タイミングあるいは印加電圧の大きさに差を設ける
ことを特徴とする請求項9に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項11】
前記第1の動作において前記反射電極に対して前記第1帯電粒子をはじく電位を印加し、
前記第2の動作において前記反射電極に対して前記第2帯電粒子をはじく電位を印加する
ことを特徴とする請求項9または10に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項12】
前記第1画素電極と前記第2画素電極とに互いに異なる電圧を印加する第1プリセット動作と、
前記第1プリセット動作とは反対の極性の電圧を前記第1画素電極および前記第2画素電極に印加する第2プリセット動作と、を有し、
単数あるいは複数画面の書き換えごとに前記第1プリセット動作および前記第2プリセット動作を交互に実施する
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項13】
透過性を有する前記第1帯電粒子を、反射性を有する前記第2帯電粒子よりも前記対向電極側に配置させる
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項14】
多数の前記第1帯電粒子が前記対向電極上で互いに重なるように多層状態で積層される
ことを特徴とする請求項13に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項15】
請求項1から請求項8に記載の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−181451(P2012−181451A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45557(P2011−45557)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】