説明

電気活性挿入化合物の調製方法及び得られる電極物質

本発明は、少なくとも部分的にリチウム化した遷移金属オキシアニオン-系リチウム-イオン可逆電極物質を調製するにあたり、前記リチウム-イオン可逆電極物質の前駆体を提供する工程と、前記前駆体を加熱する工程と、液相を含むオキシアニオンを備える溶融体を生産するのに十分な温度でそれを融解する工程と、前記溶融体の凝固を誘導し、及びリチウム電池における使用にとっての可逆性リチウムイオンの脱挿入/挿入サイクルを可能にする固体電極を得るための条件下に、それを冷却する工程とを含む方法に関する。本発明は、また、上述した方法によって得られるリチウム化したか、又は部分的にリチウム化したオキシアニオン-系-リチウム-イオン可逆電極物質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池適用のための遷移金属リン酸塩系電気活性化合物の調製方法に、及び前記方法によって製造する、リチウム電池での使用のためのLiFePO4及び非-化学量論的か又はドープしたLiFePO4及び他の類似体リン酸塩のような物質(材料)に関する。
【背景技術】
【0002】
(リチウム電池及びそれらの合成用の遷移金属リン酸塩-系電極物質)
Goodenough(グーデナフ)がリチウム及びリチウム-イオン電池での使用のためのリチウムイオン可逆(reversible)リン酸鉄-系(-based)電極の価値を指摘したので(J. Electrochemical Society(ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサエティ)、第144巻、第4号、pp. 1188-1194及び米国特許(US Pat.)の第5,810,382号;第6,391,493号Bl及び第6,514,640号B1明細書)、若干のグループは、秩序化した(ordered、規則的)-かんらん石(olivine、橄欖石)、修飾化した(modified、改質)かんらん石又は菱面体のナシコン(nasicon)構造及び鉄以外の(other that)遷移金属を含む他の化学的類似体(analogs)のリチウム化した(lithiated)リン酸鉄を作製するための合成方法を開発している。
【0003】
これまで、電池適用における使用のための電気化学的に活性なリン酸塩-系電極を製造するために、この業界において説明されるほとんどの処理及び材料は、リチウム及びリン酸塩であって、個々にか、又はその組合せとして用いる化学物質を含むものと密に(intimately、完全に)混合される鉄+2前駆体を用いて得られる固相反応(solid state reaction、固体状態反応)に基づいている。鉄+2シュウ酸塩及び酢酸塩は、より一層高いレベルに、例えば、Fe+3への遷移金属の酸化を避けるために、不活性のか又は部分的な還元性の雰囲気下に遂行される合成にとってのより一層多く用いられる出発物質、例えば(Sony(ソニー社)の特許協力条約(PCT)国際公開(WO)第00/60680号A1(パンフレット)及びSonyのPCT WO 00/60679号A1参照)である。優れた(改良された)電気化学的性能を有するLiFePO4活性陽極(cathode)物質もまた、物質合成の間に、有機前駆体として導入されるC(炭素)を用いて得られた(カナダ国特許出願(Canadian Application)第2,307,119号、出願公開日付(laid-open date)2000年10月30日明細書)。LiFePO4への炭素粉末(粉体)又はC-被膜(coating)の追加は、通常、純粋なLiFePO4に対して周囲温度で10-9-10-10(10-9-10-10)Scm-1の範囲において、粉体の電子導電性を増加させる。近年、Fe2O3又はFePO4のようなFe+3前駆体から得られるLiFePO4の固体-状態合成が説明された。これらの合成は、還元性のガス又は前駆体を用いる(WO 02/27824として刊行されたPCT(PTC)/CA2001/001350、WO 02/27823として刊行されたPCT/CA2001/001349)か、又は分散したC粉体と混合される原料化学物質の直接的還元(所謂、炭素還元(carbothermic reduction))によって遂行される(Valence(バレンス)のPCT WO 01/54212 A1)。
【0004】
これらのすべての固体-状態合成反応の方法(way、やり方、形)は、反応物質の比較的長い反応時間(数時間)及び密な機械的分散を要し、なぜなら、固体状態における合成及び/又は粒子成長が比較的緩徐な拡散係数によって特徴付けられるからである。さらに、最終的な電極物質の粒度(粒径)、成長及び粒度分布は、化学的前駆体の粒子寸法(particle dimensions)から制御するのが幾分困難であるか、又は反応性-焼結法から見て、反応性物質上の分散したか、又は被覆された炭素の存在によって部分的に抑制される。
【0005】
純粋な又はドープしたLiFePO4を、固体状態において及び高い温度、例えば850℃で成長させるという最近の試みは、20ミクロン(μm)の単一粒大きさ(single grain sized)を有し、リン化鉄不純物と及び元素の炭素と密に混合される、リン酸鉄を導き、このようにして、固有の導電率(intrinsic conductivity)評価を難しくさせた(Electrochemical and Solid-State Letters(エレクトロケミカル・アンド・ソリッド・ステート・レターズ)、6、(12)、A278-A282、2003年)。
【0006】
電極物質としての、LiFePO4、ドープしたか、又は部分的に置換したLiFePO4及び遷移金属リン酸塩-系類似体を作製するために以前に例証された合成手法は、いずれも直接的な溶融状態相の処理を意図しておらず、そこでは、液体の、リン酸塩-含有(phosphate-containing)相を用いて、合成、ドーピングを達成するか、又は電気化学的に活性な、リチウム化したか又は部分的にリチウム化した遷移金属リン酸塩-系電極物質、特に、鉄、マンガン、又は融解/冷却処理の結果として濃密な形態(dense form)において得られるそれらの混合物から作製され、随意に、1種又はそれよりも多い種類の合成、ドーピング又は部分的置換工程を備えるリン酸塩-系物質を、単純に融解し、及び調製する。
【0007】
実際において、電極物質としての使用のためのリン酸塩における最も多くの既知の合成の努力(work)は、固体状態における急速な粒子成長及び還元性条件下のリン酸鉄の部分的な分解、そのようなものか、又は高過ぎる温度での前駆体化学物質の不可逆的分解のようなものを避けるために、低温での作用(working)を示唆する。
【0008】
(融解処理による金属リン酸塩の調製)
無機のリン酸塩、ピロリン酸塩又は五酸化リンが、酸化鉄及び他の酸化物と一緒に用いられ、融解され、及びガラス化(vitrification)、アルカリ及びアルカリ土類放射性元素のような有害な金属廃棄物によって安定する(US Pat. 5,750,824)が、1100-1200℃の範囲における温度で得られる融解物の化学的な調合(formulation)は、双方のFe+2及びFe+3が存在しながら変動する。その目的は、実際には、安定なガラス質の組成物を得ることであって、電気化学的活性にとって適切な特定の調合及び構造、即ち、高い可逆性のリチウム-イオン挿入-脱挿入(desinsertion、否挿入)が可能なものではなかった。
【0009】
より一層低い温度、例えば800℃で、酸化ナトリウム-五酸化リンの溶融物において観察される三価鉄(第二鉄)-二価鉄(第一鉄)又はMn+2-Mn+3の比についての追加的な文献はまた、Physics and Chemistry of Glasses(フィジックス・アンド・ケミストリ・グラスイズ)(1974年)、15(5)、113-5にも見出せる(酸化ナトリウム-五酸化リン溶解物における三価鉄-二価鉄の比。Yokokawa, Toshio(よこかわとしお); Tamura, Seiichi(たむらせいいち); Sato, Seichi(さとうせいち); Niwa, Kichizo(にわきちぞう). Dep. Chem., Hokkaido Univ., Sapporo, Japan.(北海道大学理学部化学部門、札幌所在), Physics and Chemistry of Glasses, (1974), 15(5), 113-15)。
【0010】
ロシアの刊行物は、X-線回折調査をするために、ピロリン酸リチウムを含有するLiCl-KCl-系溶融物からのLiCoPO4結晶の空気中での成長を記述するが、リチウム-イオン電池における使用のための、感空気性(air sensitive)鉄を含有する電気化学的に活性なリチウム-イオン挿入性(inserting)リン酸塩陽極の調製のための処理において、何ら溶融物の使用に関する言及も示唆もされてない。リチウム・コバルト・ダブル・オルトリン酸塩LiCoPO4の合成及びX-線回折調査。Apinitis(アピニティス), S.; Sedmalis(セドマリス), U. Rizh. Telchnol. Univ.(リガ.テクノロ.ユニバ.), Riga(リガ), USSR(ソ連、ロシア). Latvijas PSR Zinatnu Akademijas Vestis(ラトビア・PSR・ジナツ・アカデミア・ベスティス), Kimijas Serija(キミア・セリア) (1990年), (3), 283-4.)。
【0011】
ロシアの著者による別の努力は、式Li3Fe2(PO4)3のリン酸三価鉄を含有する超イオン伝導体として使用するためのM+3(等原子価(isovalent)及びヘテロ原子価カチオンを含む)リン酸塩の溶融物からの結晶成長を説明する。このような物質が電極物質として電気化学的に活性であり得るということは、どこにも示されないし、示唆もされず、更に、等原子価の金属を含むそれらの調合は、このような使用のために適合されない。さらに、これらのリン酸塩含有物質は、十分に(fully、完全に)酸化し、及び放電状態で標準的に組み立てられるリチウム-イオン電池において役立たない(そのより一層低い酸化状態における遷移金属及び物質合成後の電極において存在する可逆性リチウム-イオンを伴う)。超イオン伝導体結晶Li3M2(PO4)3(M=Fe3+、Cr3+、Sc3+)の合成及び成長。Bykov(ビコフ), A. B.; Demyanets(デミャンツ), L. N.; Doronin(ドロニン), S. N.; Ivanov-Shits(イワノフ-シッツ), A. K.; Mel’nikov(メルニコフ), O. K.; Timofeeva(ティモフェバ), V. A.; Sevast’yanov(セバスチャノフ), B. K.; Chirkin(キルキン), A. P., Inst. Kristallogr.(インスト.クリスタログラ.), USSR. Kristallografya(クリスタログラフィア)(1987年), 32(6), 1515-19。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以前の技術は、何ら、どのようにして、簡便で、及び迅速な処理を用いて、リチウム化したリン酸塩電極を作製するかを教示せず、ここでは、リン酸塩陽極調合物を、溶融状態において調製し、及びリチウム電池、特にリチウム-イオン電池(放電又は部分的に放電された状態における合成)における使用のために最適化される電気化学的特性を持つ、固体の陽極物質を得るために冷却する。実際において、リン酸塩-系陽極物質についての以前の技術は、良好な電気化学的に活性な調合及び化学量論、例えば:適切な粒度及び至適な電気化学的活性を有するLiFePO4調合物を達成するために、温度を可能な限り低い(450-750℃)のがより一層良い一方で、850-950℃よりも高い温度で、全体的な鉄のFeoまでの還元、又は鉄又は他の金属リン酸塩の酸化物及びP2O5までの、又は鉄リン化物までの単純な熱分解を避けることを示唆する。実際において、純粋なリチウム化したリン酸塩の融解は、電気化学的に活性なものとはいわないまでも、部分的又は全体的な分解を伴わないことを、予期又は説明されなかったし;なおさら、化学的合成及びリン酸塩陽極調合物の溶融体を組み合わせる処理もなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の記載)
(純粋か、部分的に置換したか、又はドープしたリチウム化遷移金属リン酸塩陽極を製造するための新しい方法)
本発明は、溶融相、好ましくは、融解したリン酸塩-含有液相の使用に基づいて、リン酸塩-系のような、リチウム化したか、又は部分的にリチウム化した遷移金属オキシアニオン-系の電極物質を得るための新しい方法に関する。この方法は、リチウム-イオン可逆電極物質の前駆体を提供する工程(ステップ)と、電極物質前駆体を加熱する工程と、リン酸塩のようなオキシアニオンであって、液相含有のもの(an oxyanion, such as phosphate, containing liquid phase、オキシアニオン含有液相)を備える(具える)溶融体(物)を生産(生成)するのに十分な温度でそれを融解(溶融、溶解)する工程と、その凝固(solidification、凝結、固化)を誘導(誘発)し、及びリチウム電池における使用にとっての可逆性リチウムイオンの脱挿入/挿入サイクルを可能にする固体の電極物質を得るための条件(状況)下に溶融体を冷却する工程とを含む(具える)。これらの工程のいずれも、非反応性の又は部分的に還元性の雰囲気下に遂行することができる。好適例(好適な実施形態)によれば、この方法は、前躯体を加熱及び/又は融解するときにその同じものを化学的に反応させる工程を含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲に用いるように、用語の前駆体は、既に合成された少なくとも部分的なリチウム化遷移金属オキシアニオンの、好ましくはリン酸塩の電極物質を、又は自然発生的な(naturally occurring)リチウム化遷移金属オキシアニオンの、好ましくはトリフィライト(triphylite、トリフィル石)のようなリン酸塩鉱物であって、望ましい公称上の調合(nominal formulation)を持つものか、又は化学反応体の混合物であって、反応するときに、リン酸塩-系のような、少なくとも部分的なリチウム化遷移金属オキシアニオンの、正しい調合の電極物質を作製するのに必要なすべての化学元素を含むものを意味する。混合物は、他の金属及び非-金属の元素の添加剤、又はC又は他の炭素質の化学物質又は金属性鉄、又はそれらの混合物のような還元体化学物質を含んでよい。
【0015】
本発明の好適例によると、C又はガスのような、還元性化学物質の存在において、反応体又は最終生産物の熱分解又は更なる還元を制限するために、溶融リン酸塩含有相(相を含む溶融リン酸塩)が得られる温度は、リチウム化遷移金属リン酸塩物質の融点と、その温度よりも300℃高い温度、より一層好ましくはこの温度よりも高い150℃よりも低い温度(300°C above, more preferably less that 150°C above that temperature)との間である。最終生産物の融解温度よりも高い温度を制限する別の利点は、温度が1200℃を超えるときのエネルギーコスト及び炉装置のより一層高いコストが避けられることである。
【0016】
本発明の別の具体例によれば、融解リン酸塩含有相が得られる温度は、リチウム化遷移金属リン酸塩物質の融点よりも300℃高い間の固定温度と200℃、より一層好ましくは融点のものよりも低い100℃との間の温度であり(between a fixed temperature between 300°C above the melting point of the lithiated transition metal phosphate material and 200°C, more preferably 100°C under that melting point)、その場合には、最終的なリチウム化遷移金属リン酸塩は、冷却すると溶融体から凝固される。
【0017】
また、本発明による方法を、公称上の式AB(XO4)Hのリチウム化又は部分的なリチウム化遷移金属オキシアニオン-系電極物質を調製するのに用いることもでき、式中、
Aはリチウムであり、それは、A金属の20%原子未満で示される別のアルカリ金属によって部分的に置換され得、
Bは、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物の中から選ばれる、+2の酸化レベルでの主要な酸化還元金属であり、それは、+1及び+5の間の酸化レベルでの1種又はそれよりも多い種類の追加的金属で、主要な+2の酸化還元金属の35%原子未満の、0を含んで示されるものによって部分的に置換され得、
XO4は、XがP、S、V、Si、Nb、Mo又はその組合せである任意のオキシアニオンであり、
Hは、XO4オキシアニオンの35%原子未満の、0を含んで示されるフッ化物、水酸化物又は塩素アニオン(chloride anion)である。
【0018】
上記電極物質は、好ましくはリン酸塩-系であって、及び秩序化又は修飾化かんらん石構造を持っていてよい。
【0019】
また、本発明による方法を、公称上の式Li3-xM′yM″2-y(XO4)3の電極物質を調製するのに用いてもよく、式中:0≦x<3、0≦y≦2であり;M′及びM″は同じか、又は異なる金属であり、少なくとも1方は酸化還元遷移金属であり;XO4は、主として、別のオキシアニオンによって部分的に置換され得るPO4であり、そこでは、XはP、S、V、Si、Nb、Mo又はその組合せのいずれかである。電極物質は、好ましくは菱面体のナシコン構造の特長を持つ。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲に用いるように、用語“公称上の式”は、原子種の相対比がわずかに、普通の一般なXRDパターンによって及び化学的分析によって確認されるように、0.1%から5%までのオーダ(桁、次数)、及びより一層典型的には、0.5%から2%までにおいて、変動し得るという事実に言及する。
【0021】
また、本発明による方法を、公称上の式Li(FexMn1-x)PO4を持つリン酸塩-系電極物質を調製するのに用いることもでき、式中、1≧x≧0であり、これは電気を通し得る。
【0022】
概して、本発明の方法及び材料を用いて、米国特許第(US) 5,910,382号; US 6,514,640 Bl、US 6,391,493 B1明細書; 欧州特許第(EP) 0931 361号Bl、EP 1 339 119明細書、及びWO 2003/069701において制限を伴わずに記載されるような、以前の特許及び出願において意図される、ほとんどの遷移金属リン酸塩-系電極物質を製造することができる。
【0023】
本発明による方法は、リチウム化したか、又は部分的に非-化学量論的な(non-stoichiometric、不定比の)公称上の式を持つ部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質を提供することができ、優れた電子導電率、及び随意に、優れたイオン-拡散の特長を有する、遷移金属の、又はオキシアニオンの固溶体、又はわずかにドープした公称上の式のものを提供する。本明細書及び特許請求の範囲に用いるような用語“優れた電子導電率”は、陽極物質の改善された容量を意味し、LiFePO4の場合に、任意の電子導電率の添加剤又はSEM観察下に電荷を散逸させ得るリン酸塩を使用しないで、固体-状態合成反応によって得られるLiFePO4の導電率と比較して、1桁の大きさよりも大きいだけ電気を通す(この場合において、任意のC又は他の電子的に導電性の被覆添加剤の使用なしでは、SEM観察のそれは、例えば、伝導性の添加剤なしでの純粋な化学量論的なLiFePO4物質を用いて達成され得ない)。
【0024】
本発明は、溶融相、好ましくは溶融リン酸塩-豊富相(-rich phase)の使用に基づく新しい合成方法を提供し、リチウム化又は部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質を作製するが、この場合、リチウム化又は部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-系電極調合物が好ましく、第1に、それらが放電された(リチウム化した)状態において組み立てられるリチウム電池における使用にとって非常に適しているからであり、第2には、リチウム化(還元した)電極調合物が、若干のリン酸塩結晶構造に対して、更にまた、それらの対応する溶融形態に対してより一層大きな熱安定性を許すからである。
【0025】
本発明の別の好適例によれば、溶融相は、少なくとも陽極物質をその溶解状態で凝固前に備え、及び加熱又は融解工程の間に化学的に前駆体を反応させることによってか、又は単に前駆体を融解することによって得られ、この場合、前駆体は、既に、少なくとも部分的にリチウム化した遷移金属リン酸塩系陽極物質を備える。
【0026】
本発明の別の好適例によれば、少なくとも加熱及び融解の工程の間に用いる雰囲気は、部分的な還元性雰囲気である。部分的な還元性雰囲気によって、本発明者等は、雰囲気が、CO、H2、NH3、HC及びまたCO2、N2及び他の不活性ガスのようなガスを、選定された割合及び温度において備え、酸化還元遷移金属が、固定された酸化レベルで、例えば、AB(XO4)H化合物における+2であって、前記酸化還元遷移金属を金属状態に還元するのに足りる還元性にならずに、もたらされるか、又は維持されるという事実に言及する。HCによって、本発明者等は、ガス又は蒸気の形態における任意の炭化水素又は炭素質の生成物を意味する。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲において、用語“酸化還元遷移金属”は、0よりも高い、例えば、Fe+2及びFe+3の1種よりも多い酸化状態を持ち得る遷移金属を意味し、電池の動作(操作)の間の還元/酸化サイクルによって電極物質として作用する。
【0028】
本発明の別の具体例によれば、不活性又は非反応性の雰囲気を用い、及び熱的条件だけ及び溶融遷移金属系リン酸塩相におけるリチウムの存在を用いて、酸化還元遷移金属をその望ましい酸化状態、例えば、LiFePO4場合に、Fe+2において、安定にする。
【0029】
本発明の別の好適例は、電極前駆体を、加熱し、随意に反応させ、及び融解し、随意に反応させる工程の少なくとも1種の間での、C又は固体、液体又はガス状の炭素質物質の存在に特徴付けられる。前記Cは、合成の間に、化学的に不活性か、又は反応生成物と適合性(低い反応性)であるべきであり、随意に、それは、酸化還元遷移金属を、その+2の酸化状態において保つために微量酸素(oxygen traces)の侵入を捕捉し得るか、又は若干の場合には、酸化還元遷移金属を、その+2の酸化状態にまで部分的に又は全体的に還元し得るべきである。
【0030】
本発明の別の好適例は、1種又はそれよりも多い種類の固体-液体又は液体-液体の相分離が融解工程の間に発生し、従って、C粉体、Fe2P、未反応固体又は他の固体又は液体の非混和性相を含む、他の不純物からの溶融陽極物質の分離及び精製を許し、それらは、液体溶融陽極物質と非-混和性の他の相において存在するという事実によって特徴付けられる。あるいはまた、本発明は、冷却工程の間の分離及び精製を可能にし、そこで、溶融相において可溶性である不純物又は分解生成物を、冷却及び結晶化の工程の間に退けることができる。
【0031】
本発明の方法によって、ドーピング又は置換元素、添加剤、金属、メタロイド(准金属)、ハライド、他の複合体オキシアニオン(XO4)、及び酸化物-オキシアニオン(O-XO4)システムは、ここでのXは非制限的に、Si、V、S、Mo及びNbでよく、加熱、及び/又は反応の工程の間にか、又は好ましくは、リチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質が溶融状態にある一方において、陽極物質調合を用いて組み込むことができる。本発明によって意図される、ドープするか、非-化学量論的か、又は部分的に置換される調合の例には、制限されないが、US 6,514,640 B1に開示されるものが含まれる。例えば、リン酸塩電極前駆体の熱分解から生じる生成物の部分的な可溶性からもたらされる他のドーピングの効果はまた、本発明の方法及び材料に包含される。
【0032】
本発明の別の具体例によれば、冷却及び凝固の工程は、急速であり、液相を急冷し、及びその他の(otherwise)準安定性の非-化学量論的電極調合又はドープした組成物を得る。
【0033】
本発明の方法を用いて得られる別の物質には、それらが、固有の電子伝導特性、随意にイオン的に高められたLi+イオン拡散特性を持つ一方で、純粋な公称上の調合を、おそらく、制限的ではないが、若干のリチウム及び遷移金属の部位逆置換(site reciprocal substitution)を伴う若干の程度の非-化学量論の結果として、持つという事実がある。
【0034】
本発明の別の好適例は、融解リチウム化遷移金属リン酸塩相であって、また、他の添加剤又は不純物を含むものの制御された冷却及び結晶化に基づくもので、このような添加剤又は不純物を結晶化又は他のそれに次ぐ熱処理の間に沈殿(析出)させて、添加剤又は不純物を含む少なくとも別の相と混ぜ合わせた(intermixed)リチウム化遷移金属リン酸塩(phophosphate、phosphate)陰極物質の微結晶から作製される密に混合された複合物質を製造するためのもので、前記相は、複合物質をLi-イオン可逆電極として用いるときに、電子的な、又はLi+イオンの拡散の高められる特性を持つ。
【0035】
本発明の別の好適例によれば、電極前駆体物質は、化学的に反応するのに必要で、及び選定される、すべての元素を含む化学物質の混合物を備えており、本質的に、リン酸塩-系陽極調合でありながら、液体状態であるものを与える。好ましくは、電極前駆体のために用いる化学物質は、安価であり、大規模に入手可能な汎用品(commodity)物質又は自然発生的な化学物質であり、LiFeO4の場合、鉄、酸化鉄、リン酸塩鉱物及び汎用品リチウム、又はLi2CO3、LiOH、P2O5、H3PO4、アンモニウム又はリチウム水素化リン酸塩:のようなリン酸塩化学物質が包含される。あるいはまた、化学物質を、加熱又は融解の工程の間に合成反応を促進するために、互いに組み合わせるか、又は部分的に組み合わせる。炭素質の添加剤、ガス又は単純な熱的条件を用いて、最終的なリチウム化生成物において酸化還元遷移金属の酸化レベルを制御する。
【0036】
別の具体例では、本発明の方法は、溶融処理を、C坩堝及び蓋の存在、及び不活性か、又はわずかに還元的な雰囲気の、好ましくは700及び1200℃の間、より一層好ましくは900及び1100℃の間に及ぶ温度での使用において遂行するという事実によって特徴付けられる。あるいはまた、融解性(melting)添加剤を加熱及び/又は融解の工程の間に用いる場合、幾分かより一層低い温度を用いることができる。融解性添加剤によって、低温融解性リン酸塩化学物質(例を挙げると、例えば、P2O5、LiH2PO4、Li3PO4、NH4H2PO4、Li4P2O7)又は溶融工程の間にか、又は冷却工程の後に、最終的なリン酸塩-系電極調合に寄与し得る他の低温融解性添加剤、LiCl、LiF、LiOHを意味する。
【0037】
本発明の1種の重要な選択肢は、酸化還元遷移金属を、そのより一層低い、リチウム化するか、又は部分的にリチウム化して放電した状態で、加熱、随意に、反応工程を含んだ間に、及び融解、随意に、Cのような任意の還元体の添加剤を伴わない反応工程を含んだ間に、及び不活性雰囲気下に、酸化還元金属の熱安定性又は還元が、より一層低い放電状態で、リチウムイオンの存在によって安定化した化学的調合において保証されるのに足りる高い加熱及び融解温度の唯一の使用によって、保つことができるという事実によって特徴付けられる。本発明の若干の具体例では、LiFePO4又はLi(FeMn)PO4混合物を、例えば、Fe+2から、Fe+2/Fe+3混合物から、Fe0/Fe+3混合物又は純粋なFe+3含有前駆体から中立に(indifferently)合成し、及び/又は溶融することができるという事実を確認し、及びこれはC又は他の還元性添加剤又は雰囲気を用いない。
【0038】
(発明の利点):
リン酸塩-系調合のような、リチウム化又は部分的なリチウム化酸化還元遷移金属オキシアニオンの融解に基づく方法(及びそのように得られる物質)及びそれによって得られる電極物質の若干の利点は、本発明の以下の例から現れる。
【0039】
この業界において熟練した者(当業者)には、溶融-相の製造方法は、固体-状態合成及び/又は焼結反応に対して、リン酸塩系電極物質を合成又は変換するための、迅速で、安価な方法の可能性を提示する。さらに、前駆体成分(構成物)を、融解工程の前、及び特にその間に化学的に組み合わせることは、出発反応体としての自然発生的な鉱物を包含する、広範囲に入手できる汎用品化学物質からの直接的な溶融-支援合成(melt-assisted synthesis)を可能にする。
【0040】
融解工程が、通常、比較的高温で、例えば900-1000℃の間で遂行されるという事実にもかかわらず、この方法は、固体-液体又は液体-液体の相分離を可能にし、それは、リチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質精製に寄与し、そのとき、前駆体は、既に、リチウム化遷移金属リン酸塩物質の不純な液相を形成する化学元素の合成によって作製される、粗製のリチウム化遷移金属リン酸塩-系である。専門家に既知である加熱のすべての手段は、大きなバッチにか又は連続処理に適用できる、燃焼、抵抗性及び誘導的な加熱手段を包含して、本発明によって意図される。
【0041】
この方法は、C又は他の還元性の添加剤又は雰囲気の存在下、又は何らの還元性薬剤なしで、電極物質を加熱及び溶融する温度を単純に選定することによって遂行することができ、このようにして、異なる条件は、異なる酸化還元金属、及び異なる欠陥性のか又はドープした結晶構造を有する異なるリチウム化リン酸塩-系電極物質が調製されるのを可能にする。
【0042】
融解及び冷却の工程は、電池、塗料又は陶芸(ceramic art)において既知の手段を用い、粉砕(grinding、磨砕)、篩い分け(sieving、篩別)及び分級(分類)によって得られるような異なる粒度(粒径)及び分布の範囲における比較的高い粒子上部密度の形態(particle top density form)の電極物質をもたらす。
【0043】
さらに、純粋なか、ドープしたか、又は部分的に置換した電極物質の複合調合物は、溶融相における添加剤元素の可溶化を介して、容易に及び迅速に作製することができ、それは、しかる後、冷却され、及びそれらの結晶性形態において凝固して、部分的にか、又は全体的に添加剤を結晶構造から放出し、又はあるいはまた、迅速急冷によって、それらのアモルファス(非晶質)又は結晶の欠陥性(不完全な)形態において、例えば、電子導電性又はLi-イオン拡散を最適化する。実現の好ましい態様は、溶融相における添加剤溶解性の熱処理を利用して、リチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質及び/又は、添加剤の1部分又は全体を含む分離相を有する複合物質を包含するドープした電極物質を形成する。かかる(このような)ドープしたか又は複合材料の電極物質は、優れた電子導電性又は優れたLi-イオン拡散率を持つ。
【0044】
本発明の方法はまた、合成のリチウム化又は部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質の、又はあるいはまた、リチウム化遷移金属リン酸塩の自然鉱石の再処理又は精製を、加熱/融解/冷却処理のいずれかの工程で可能にする。
【0045】
本発明の別の特長は、濃密なリン酸塩-系電極物質を、まず融解し、次に冷却することによって、次いで、何らかの適した常用の破壊(crushing、破砕)、粉砕、ジェットミリング/分級/メカノフュージョン(mecanofusion、mechanofusion)の技術によって、粒度及び分布の制御を容易にすることである。当業者に対して入手可能な大きさの典型的な粒子又は凝集物(agglomerate、集塊)は、1ミクロンの100分の1又は10分の1から数ミクロンまでの間に及ぶ。
【0046】
本発明の方法が、純粋な電極物質、特にCを用いない合成を可能にするので、何らかのかけ離れた(ulterior)C被膜又は追加的な無関係な合成処理、並びに当業者に既知の任意の他の表面処理は、作製及び制御するのが容易になる。
【0047】
溶融工程に基づく方法は、重大な方法簡略化を、リン酸塩-系陽極物質を作製するための他の既知の固体状態の処理に対して可能にし、それは、本発明の溶融方法が、広く入手可能な原料化学物質の混合物又は天然鉱物でさえも、並びに前駆体としての予備-合成された電極物質の使用を可能にするからである。目下、既知の固体状態反応処理は、完了すべき合成反応のために、反応粉体の密な混合及び比較的長い滞留時間を必要とする。これに反して、高温での溶融相は、急速な混合及び合成反応、並びに融解状態における添加剤、置換元素及びドーパントの導入を可能にする。
【0048】
より一層詳しくは、溶融状態は、最適化し、ドープし、部分的にか、又は全体的に置換したリチウム化、又は部分的なリチウム化リン酸塩陽極物質の製造を促進し、陽極物質には、純粋なリン酸塩以外の他金属、ハライド又はオキシアニオン(XO4)又は酸化物-オキシアニオンが含まれる。
【0049】
本発明の方法の1種の極めて重要な特長は、優れた導電率の、及びおそらくはより一層大きなLi-イオン拡散率の電極物質を得るのが可能であることが見出されたことであり、例えば、本質的には、電子導電性のLiFePO4が、本発明の方法を用いて、即ち、ドープピングLiFePO4なしで、Li、Fe、P及びO以外の元素と共に得られた。おそらくではあるが、制限なく、これは、化学量論的外の(off-stoichiometric)組成物及び/又は逆の(相互的な)イオン部位置換の結果である。
【0050】
同様に、Li(FeMn)PO4、LiFe(0.9)Mg(0.1)PO4又はドープしたLiFePO4のようなリン酸塩-系電極調合物は、本発明に従って調製され、電子導電性及び高いLi-イオン拡散の最適化を可能にした。本発明によって、より一層廉価なFe前駆体(Fe+2のリン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩の代わりの、Fe、Fe2O3、Fe3O4、FePO4等)を使用可能にする事実に加え、本発明はまた、他の固体-状態処理、例えば、液体-相可溶化、置換及びドーピング、次いで急冷又は熱処理によって入手不可能な新しい構造を設計し、とりわけ、制御された結晶化又は沈殿を達成することをも可能にする。
【0051】
本発明の別の特殊性は、本発明によって、より一層大きな化学量論比率の窓(ウインドウ)を有し、及び/又は任意のFe3+/Fe2+比率を有する、FePO4又はLiFePO4のようなより一層低い純度の前駆体が使用される可能性を提示することであり、それは、加熱及び融解の工程の温度を組み合わせた溶融状態における相分離が、組合せにおけるか、又は冷却凝固処理を伴わない化学量論、調合を修正することができるからである。
【0052】
リチウム化又は部分的なリチウム化リン酸塩-系調合物のために用いる酸化還元金属に応じて、本発明は、正常な空気下に、又は鉄含有物質の場合には、まさに、C容器及びC蓋を用い、及び単純にこの処理の加熱、融解及び冷却の工程の間に空気に曝すことを制限することによって、作用する可能性を提示する。
【0053】
本発明の方法は、溶融相の使用に基づいて、無機-無機の複合材料を調製する可能性を包含し、溶融相は、不純物、又は溶融状態、1種よりも多い種類の(more that one)液体溶融相だけにおいて可溶な添加剤を備えることができるか、又はそれは、溶融相と共に共存する追加的固体相を備えてよく、従って冷却すると、リチウム化又は部分的にリチウム化されて、及び別の固体相と密に混合されて、電極物質として有益な電子的又はイオン的な伝導性の特長を持つ固体遷移金属リン酸塩-系電極物質を包含する複合材料システムをもたらす。興味深い電気化学的結果は、また、Cr及び特にMo添加剤を用いて達成され、Moを用いて多少ドープされたLiFePO4から作製されるドープされたか、又は複合材料の電極物質を創出し、溶融状態からの熱的冷却(thermal cooling)の間にLiFePO4構造から排除される相を含む。
【0054】
(図面の説明)
図1は融解後のC-被覆LiFePO4の加圧されたペレット(小球)の拡大写真であり、液体溶融相及びC含有固体の外被(crust)-相の間の相分離を示している。
図2は、元の未溶融C-被覆LiFePO4の、及びLiFePO4パターンを示す溶融相のXRD図表を示す。
図3は、80℃での、及び陽極としての炭化した(carbonated)LiFePO4-溶融体を用いる、重合体(高分子)電解質電池のサイクリック・ボルタンメトリーの(cyclic voltametric、環式の電解電量計の)図表(20mv/h)であり;増分容量(dQ)を電圧Li+/Li0の関数において提供する。
図4は、溶融体トリフィライト鉱石の頂部表面の、X-線(X-rayu)分析によって定まる主要な相の組成物の条件での拡大SEM写真である。
図5は、溶融体トリフィライト鉱石のスライス(薄片)及びSi、Al及びCaのための表面マッピング組成物の拡大SEM写真である。
図6は、MoドープしたLiFePO4-溶融体及び焼戻し(急冷)の前及び後の双方のMo表面マッピング組成物の拡大SEM写真である。
図7は、陽極としてのLiFeO4-溶融体を用いる液体電解質電池の出力試験であり;陽極容量を、公称上の容量(159.9mAh/g)を用いて正規化(normalize)し、及び種々の放電率(速度)xCについて定め、xは1/x時間における公称上の容量を放電するための時間を表す。
【実施例】
【0055】
(例)
(例1)
炭素被覆等級(グレード)からのLiFePO4の調製であって、次の液体-溶融相工程を含む:
≒(約)1.6重量%の炭素被膜を有する純粋な炭素被覆LiFePO4結晶(“LiFePO4-C”と称する)は、FePO4、Li2CO3及び有機炭素被膜前駆体の間の固体-状態反応によって還元性雰囲気において作製され、PCT出願の02/27823 A1に従い、カナダの会社のPhostech Lithium Inc(フォステック・リチウム社)(www. phostechlithium.com)から入手された。約10重量%のグリセリンと混合した30gのこの化合物を、55,000lbsの下で5分間の間に加圧し、約3″(インチ、1インチ=約2.54cmとして、約7.62cm)の直径及び約8mmの厚さのペレットを与えた。次いで、このペレットを、アルミナセラミック板状体(プレート)上に堆積し、及び気密のオーブン室(チャンバー)において加熱し、アルゴン下に気体の連続流(定常流、continuous flow)を用い、周囲温度から950℃±30℃まで4時間にて保ち、4時間950℃±30℃で放置し、及び次いで950℃±30℃から周囲温度にまで8時間で冷却した。グレイ(灰色)の溶融鉱物相が観察され、大きな結晶が冷却すると形成され、それは、大部分のセラミック支持体(サポート)上で流れた。驚くべきことに、この溶融相は別の炭素-系(を基とする)クラスト(外被)相から分けられ、それは、より一層小さな約1″の直径を有するが、元のペレットの形状を保存した(図1参照)。次いで、溶融相の溶融鉱物物質(材料)を、その炭素外被から分析のために分離した。X-線回折(XRD)は、特に、驚くべきことに溶融相が主としてLiFePO4からなると見出されることを証明した(“LiFePO4-溶融体”として識別される)。LiFePO4-溶融粉体のXRDによって定められるような相組成(位相成分、Phase composition)の結果物は、乳鉢で結晶を粉砕(磨砕)することによって得られ、表1において溶融工程前の元の炭素被覆LiFePO4についての組成の結果物と比較してまとめる。粉末化(粉末状)LiFePO4-溶融体のXRDスペクトル(スペクトラ)を、図2において熱処理前のLiFePO4-CのXRDスペクトルと比べて与える。
【0056】
【表1】

【0057】
著しくまた、表1に示すように、LiFePO4相含量は、91.7%から94%(2.54%の増加)にまで融解処理後に増加する。このことが、融解の間での、液相分離、及びLiFePO4-C及び他の不純物からの炭素、又は加熱融解工程についてもたらされる二次反応からの生成物のような固体不純物の放出を介したLiFePO4精製と関係ある(linked to)べきと仮定される。LiFePO4-溶融相上で実行されるLECO実験(C分析)は、炭素被膜からLiFePO4液体-溶融相の分離を確認するが、それはLiFePO4-溶融体が炭素を含まないからである。同時に、C外被のXRD分析は、数パーセントのピロリン酸リチウム及びリチウム化酸化鉄不純物を有する若干の残留LiFePO4に関連するFe2Pの存在を確認する。この第1の例は、溶融状態において、材料の著しい分解を伴わないで調製されるLiFePO4の実現可能性を明らかに示し、更に、融解過程の間に観察される相分離は、LiFePO4液相を、残留不純物、もしあるなら炭素及び高温熱処理に関連する分解生成物から分離する有益な効果を持つ。この融解過程の別の実際的な利益は、LiFePO4を、高密度形態(dense form)、結晶性において、又は冷却温度プロファイルに依存しないで、導くことである。粉末状溶融LiFePO4は、元のLiFePO4-Cについての1.24とは対照的に2.4のタップ密度を有する。高温DSC試験をLiFePO4-C及びLiFePO4-溶融体上で実行したが、LiFePO4が、分解されずに、980℃近くの頂点を持つ幅広い融合ピークを伴って融解すると確認される。
【0058】
(例2)
次の融解過程によって得られるLiFePO4の電気化学的特徴付け:
例1のLiFePO4-溶融体生成物の電気化学的特徴付けを行い、本発明に従う過程の性能を確認した。約5gのLiFePO4-溶融体を、瑪瑙乳鉢において十分完全に破砕、及び粉砕した。その後、溶融LiFePO4の粉体を、有機C-前駆体を用いてC-被覆した: これは、Marca(マルカ) M. Doeff(ドゥーフ)等によって記載されるような1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物処理である[Electrochemical and Solid-State Letters (エレクトロケミカル・アンド・ソリッド-ステート・レターズ), 第6巻(第10号) A207-209(2003年)]。このようにして、LiFePO4-溶融体(3.19g)を、乳鉢において1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物[0.16g; Aldrich(アルドリッチ社)の製品]及び10mLのアセトンと共に粉砕した。アセトンの蒸発後、混合物を、CO/CO2(各ガスの50%容量)の流れ下に、オーブン内に配置した回転チャンバーにおいて加熱した。チャンバーは、まず、CO/CO2を、周囲温度で20分(20mn)の間に流すことによって空気排気し、100分(100mn)にて650℃±5℃にまで加熱し、及び60分(60mn)間この温度で維持し、及び次いで周囲温度にまで冷却した。この過程は、0.33重量%の C-被膜を有するLiFePO4-溶融体(“C-LiFePO4-溶融体”と称する)の炭素被覆等級を与えた(LECO)。C-LiFePO4-溶融体は、元のLiFePO4-Cについての1.24とは対照的に1.9のタップ密度を持つ。
【0059】
カソード(陽極)被膜スラリーを、アセトニトリル、C-LiFePO4-溶融体(101.3mg)、ポリエチレンオキシド(Aldrichの製品; 82.7mg)、400,000の分子量、及びケッチェンブラック(Ketjenblack)[Akzo-Nobel(アクゾ-ノーベル社)の製品; 16.7mg]炭素粉末を十分完全に混ぜることによって調製した。このスラリーを、1.539cm2の面積のステンレス鋼支持体上に被覆し、その組成は、41重量%のポリエチレンオキシド、7.46重量%のケッチェンブラック及び51.54重量%のC-LiFePO4-溶融体である。ボタン型(タイプ)電池を、組み立て、グローブボックスにおいて、1.97mgの活性物質陽極装填(active material cathode loading)(1.28mg/cm2、0.78C/cm2)、30重量%のLiTFSI[3M(スリーエム社)の製品]電解質を含むポリエチレンオキシド5.106(Aldrichの製品)、及びアノード(陰極)としてのリチウム箔(フォイル)を用いて密閉した。次いで、電池を、VMP2 multichannel potensiostat(多チャネル・ポテンシオスタット)[Bio-Logic−Science Instruments(バイオ-ロジック-サイエンス・インスツルメンツ)の製品]を用い、80℃にて、20mV/時間の走査速度で、3.0Vと3.7Vの電圧の間に対してのLi+/Li0で試験した。ボルタンメトリーの走査を図3において報告するが、対応するクーロン力の(coulombic、coulumbic)データが、理論上のクーロン力の値と関連して、計られた活性質量(active mass、活動量)から推論されたが、それらを表2において報告する。C-LiFePO4-溶融体の電解電量走査(図3参照)は、例1において、同じ条件で調製し、及び試験するリチウムポリマー電池構成にて用いるLiFePO4-Cと類似している。
【0060】
【表2】

【0061】
この電池試験は、C-LiFePO4-溶融体の電気化学的特性が高温処理にもかかわらず未-溶融(非-溶融、un-melted)のLiFePO4に対して全く等しいこと、及び融解が元の未-処理のC-被覆LiFeO4よりも高密度で、及び著しく大きな粒子を導くという事実を確認する。第1の放電クーロン効率(92.3%)は、LiFePO4-溶融体におけるLiFePO4相の純度(94.01%)に近い。活性質量(1.97mg)及び第1の放電クーロン効率(92.3%)から、LiFePO4-溶融体についての156.8mAh/gの比容量(specific capacity)を推論した。
【0062】
(例3)
次の融解過程によるLiFePO4の精製:
本発明者等は、Phostech Lithium Inc. から非常に少ない(低い)炭素被膜を有する開発上のLiFePO4-Cバッチを入手した(<0.1重量%)。このLiFePO4-Cは、ブラウン(茶色)ビーズの形態、約5mmの直径であった。混合機(ミキサー)で粉体に破壊した後、この化合物の約226グラムを、100oz(100オンス、1oz=約28.3495gとして、約2.83495kg)の黒鉛坩堝において配置し、及び気密のオーブンにおいて、アルゴンガス流下、周囲温度から980℃±5℃にまで約100分にて加熱し、980℃±5℃に1時間の間維持し、及び次いで約50℃にまで約3時間にて冷却した。この工程の間に、約225グラム±1gの塊(ブロック)の結晶性物質で、ディープグリーン(深緑)色、及び表面上に長い針状体(ニードル)を有するものを得た。次いで、結晶性物質のこの塊を、乳鉢において、及び次にボールミルにおいてトルエンを用いて30分の間に破砕した。乾燥後、ペールグリーン(淡緑色)の粉体を得た。次いで、この粉体の約30グラムを、2″ID(内径)の黒鉛坩堝において、冷却を約6時間の間実行したこと以外では226グラムのバッチについてのものと同じ条件の下で、再び熱処理した。この工程において、約30グラム±1gの塊の結晶性物質で、225グラムのバッチについてのものと類似した態様(外観)を有するものを得た。粉体のXRDスペクトル(分析)を、LiFePO4-C、LiFePO4-溶融体、及び2回溶融されるLiFePO4-溶融体上で実行した。例1におけるように、溶融過程がLiFePO4の構造を保存し、及び更に化合物の精製を誘導したことは明らかであり、LiFePO4の発生で、LiFePO4-Cについての88.8%から、最初の融解についての92.6%及び2回の融解過程の後の93.7%までのもので、5.5%のLiFePO4純度の増加に対応するものの観点から言える。
【0063】
加えて、ICP(誘導結合プラズマ発光)分析を実行し、LiFePO4-Cについての1200ppmから第1のLiFePO4-溶融体についての300ppm及び第2のLiFePO4-溶融体についての<100ppmにまでの硫黄含量における減少を示した。
【0064】
(例4)
次の天然トリフィル石の相分離による融解及び精製:
たとえトリフィル石の鉱石産出が十分でないとしても、その純度における鉱石融解の影響を評価することに対する若干の関心があった。したがって、いくらかの鉱石を、Excalibur Mineral Corp.(エクスキャリバー・ミネラル社)(Peekskill(ピークスキル)、NY(ニューヨーク)、USA(米国)所在)から購入した。表3において提供するXRD分析は、鉱石が主としてLiFePO4系であることを指示する。約1cm3の片のトリフィル石の鉱石を、アルミナセラミック板状体上に堆積させ、及びアルゴン下に、例3のLiFePO4-Cの226gのバッチについて用いるのと同じ条件の下に加熱した。この熱処理の後、約1″の直径の光沢がある(glossy)鉱石被覆物(ore deposit、鉱床)を、深緑色のマウンドの形態で得た。興味深いことに、頂部外被のマットの態様は異なる組成を指示するように思え、それで、主要元素(要素)の分布をSEM(操作型電子)顕微鏡上のX-線分析によって定めることが決められた。このようにして、溶融鉱石被覆物を有する結晶性板状体を、エポキシ接着剤で封入し、ダイヤモンド切削ツール(工具)を用い、主要な直径に垂直方向に切断した。まず、頂部の主要元素(Fe、O、P、Mn、Mg、Ca、Si、Al)の地図作製法(cartographies)を確立し、及びそれらの結果を図4においてまとめる。この図面は、鉱石の融解が液体-液体の相及び液体-固体の相の分離を誘発したことを明らかに指示する。ケイ素(silicium)-系の溶融豊富相及びカルシウム-系の溶融豊富相によって囲まれたFeOの良好に画成された結晶を、特に、観察することができる。主要な相は、Li(Fe、Mn、Mg)PO4からなっているが、LiFePO4の主要な液体におけるMn及びMgの混和性の結果として、Fe、Mn及びMgの相対的な25:9:1の原子比を有する。図5は、Si、Al及びCaについての試料薄片の写像(マッピング)を与え、おそらく、溶融したか又は固体の相を示し、同じ主要なLi(Fe、Mn、Mg)PO4の相における内包物として分散されるか、又は冷却及び凝固の間に凝離される(segregated)。ケイ素豊富相は、Si、Fe、O、Mn、K、Pから構成され、Si、O及びPの間の68:21:4.5の相対的な原子比を有し、これはおそらく、ケイ酸塩及びリン酸塩を含み、表面で観察されるのと同じ組成を有するLi(Fe、Mn、Mg)PO4において分散する。カルシウム豊富相は、Ca、Mn、Feを含み、25:25:10の相対的な原子比を有するリン酸塩から構成され、おそらく、かんらん石相として、Li(Fe、Mn、Mg)PO4において分散する。アルミニウム豊富相は、Fe及びAlを含み、14:7の相対的な原子比を有するリン酸塩から構成され、Li(Fe、Mn、Mg)PO4において分散する。このことは、融解の際の鉱石相の再組織化(reorganization)、及び内包物としての“不純な”相の分離を確認する。これらの内包物は、望ましいLi(Fe、Mn、Mg)PO4の主要相から、直接には溶融体から(相分離)、又は通常の採鉱過程(破砕、粉砕、選別、洗浄・・・)による冷却後に分離することができる。
【0065】
【表3】

【0066】
(例5)
FePO4、Li2CO3及びC-前駆体原材物質からの直接的なLiFePO4の調製:
すべての先の実験は、合成又は天然LiFePO4鉱石の異なる形態の溶融過程に対する強い興味を明らかに確立させた。この過程の範囲を拡大するために、本発明者等は、WO 02/27823 A1に記載されるように、還元性雰囲気におけるLiFePO4合成において普通に用いる原料前駆体、FePO4、Li2CO3及びC-前駆体からの直接的なLiFePO4合成の実行可能性を研究した。これのために、Phostech Lithium Inc.によって提供され、相対モル比が2:1のFePO4・2H2O:Li2CO3で0.5重量%のC-前駆体を有する予め混合されたものを用いた。2つの25ozの黒鉛坩堝を、約5gの量の予混物で満たした。坩堝の1つを、約100mg(約2重量%)の純粋なLiFePO4粉体によってその前に満たし、実施例1で得られ、溶融状態におけるときの反応媒体として作用させた。次に、双方の坩堝を、気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に90分(mn)の間維持し、及び次いで周囲温度にまで約6時間にて冷却した。形成される結晶性物質は、灰色で、金属的な形態及び長いニードルを有していた。それは、乳鉢において破壊、及び粉砕され、灰色の粉体にされた。XRD分析(表4参照)は、双方の化合物が主にLiFeO4であることを示し、予備-合成されたLiFePO4の添加による主な違いは、LiFePO4のわずかに高い収率、及び73.80%から78.80%へのその結晶化度の増加である。
【0067】
【表4】

【0068】
(例6)
FePO4及びLi2CO3原料前駆体からの直接的なLiFePO4の調製:
例5を補充するために、WO 02/27823 A1に記載されているように還元性雰囲気におけるLiFePO4合成において普通に用いる原料前駆体、FePO4及びLi2CO3からの直接的なLiFePO4合成の実行可能性を研究した。このように、FePO4・2H2O(Chemische Fabrik Budenheim KG(ケミッシェ・ファブリク・ブデンハイム社)、ドイツ国の製品; 37.4g)及び電池等級Li2CO3(Limtech Lithium Industries Inc(リムテク・リチウム・インダストリ社)、カナダ国; 7.4g)を、乳鉢において完全に混合した。この混合物を、2″ID黒鉛坩堝において配置し、スパチュラでわずかに圧縮し、及び次いで気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約100分(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。本発明者等は、XRDによって定まる92.3%のLiFePO4純度の溶融体鉱物のペレットを入手した。この結果及び例5は、溶融過程が、単なるLiFePO4精製又はLiFePO4-Cからの非C-被覆LiFePO4の生成より一般的で、及び最終的な化合物の化学的前駆体からの調製を可能にすることを意味した。この結果は、明らかに、第1の驚くべきLiFePO4-溶融体の調製が、LiFePO4合成にとっての、改良された、及び簡略化された代用される産業過程を設計する大きな機会であることを確認した。Li2CO3の代わりのリチウム源としてのLiOH、LiCl及びLiFを用いて、似た条件下に実験を繰り返したが、双方の場合に、>90%の純度のLiFePO4が得られた。
【0069】
(例7)
Fe3(PO4)及びLi3PO4原料前駆体からの直接的なLiFePO4の調製:
Fe3(PO4)2・8H2O(50.16g)及びLi3PO4(Aldrichの製品; 11.58g)を、乳鉢において完全に混合し、アルミナセラミック坩堝に注入し、及び気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分(mn)の間維持し、そして約50℃にまで約3時間にて冷却した。この材料を用い、例1にて説明したようにではあるが、炭素被膜を用いずに、電池を組み立て、及び試験した。電気化学応答はLiFeO4に特長的であった。
【0070】
(例8)
980℃での空気酸化に対するLiFePO4の安定性:
溶融過程によって得られた驚くべき結果のために、本発明者等は、980℃で、空気酸化に対する純粋な溶融LiFePO4の安定性を評価したかった。そこで、本発明者等は、例1において得られる約2gのLiFeO4を、アルミナセラミック坩堝において配置し、及び空気下で980℃に加熱されたオーブンの中にそれを設置した。10分(mn)後、溶融LiFePO4を有する坩堝を、急速に水に浸し、及び収集した鉱物を乳鉢において破砕及び粉砕し、薄い緑色の粉体を得た。驚くべきことに、LiFeO4は、XRDによって測定されるように、まだ約81%の純度(最初の純度94%の86%)である。本発明者等は、この実験から、有限の回数の間、空気に対し、溶融LiFePO4を曝し、特に水又は油のような液体においてか、又はガスにおいて、液相の噴霧(アトマイゼーション、微粒化、原子化)のような過程によって、それを急冷することが可能であると結論付けることができる。別の実験を、空気下に980℃で、10分(mn)の代わりに1分(mn)の暴露時間によって実行した。水中での迅速なな急冷の後、XRDは、最初のLiFePO4純度の>95%以上が保持されたことを示す。同様の結果を、水の代わりの油での急冷によっても得た。
【0071】
(例9)
Fe2O3、(NH4)2HPO4及びLi2CO3原料前駆体から直接的なLiFePO4の調製:
溶融過程がLiFePO4を原料前駆体から生産するのに効率的であるので、本発明者等は、LiFePO4を汎用産業原料物質から、合成の材料費用を減らす目的で生産する可能性を考慮した。顕著に、特殊化学物質としてのFePO4は、材料コストの重要な1部分を示し、本発明者等は、それから、Fe源としてのFe2O3に基づく過程に依存する決断をした。このようにして、第1の実験として、瑪瑙乳鉢において、本発明者等は、Fe2O3(Aldrichの製品;15.97g)、Li2CO3(Limtechの製品;7.39g)及び(NH4)2HPO4(Aldrichの製品;26.41g)を完全に混合した。次に、この混合物を、2″IDの黒鉛坩堝に配置し、アルゴン流下、気密のオーブンにおいて、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分(mn)の間維持し、そして約50℃にまで約3時間にて冷却した。XRD分析は、本発明者等が、>94%の純度のLiFePO4を調製したことを指示する。第2の実験は、最終的な>95%の純度(XRD)を有し、Fe2O3の代わりに、Fe3O4(Aldrichの製品;15.43g)で実行した。第3の実験は、Fe源としてFe2O3(Aldrichの製品;159.7g)、Li2CO3(Limtechの製品;73.9g)及び(NH4)2HPO4(Aldrichの製品;264.1g)を用いて実行した。乳鉢において、成分を完全に混合する代わりに、それらを、1分(mn)未満の間、1リットルのNalgene(ナルゲン)瓶(ボトル)で手により振とうした(handshaken)だけであった。前述したように、熱処理の後、>93%の純度を有するLiFePO4が得られた。合成過程の間の液相の形成により、成分の微細粒子の密な(intimate、均質)混合は、高純度生成物を得るのに本質的ではない。第4の実験を、第1の実験におけるのと同じ前駆体及び同じ量を用いて行ったが、前駆体を、2″IDの黒鉛坩堝においてまさに直接計量した:Li2CO3、Fe2O3及び(NH4)2HPO4を何ら混合しない。第1の実験におけるのと似た熱処理の後、>90%の純度のLiFePO4が得られた。この実験は、(NH4)2HPO4の代わりに、(NH4)H2PO4によって繰り返し、似た結果を得た。短い反応時間のた
めに最適化しないにもかかわらず、この例は、固体を用いて現在使用されている合成反応と対照的に、効率的な混合及び溶融状態における反応動力学(速度論)による極めて短い反応時間についての潜在的能力を示す。
【0072】
(例10)
FePO4及びLi2CO3原料前駆体からの直接的なLiFePO4の調製:
瑪瑙乳鉢において、本発明者等は、FePO4・2H2O(Chemische Fabrik Budenheim KGの製品;74.8g)及びLi2CO3(SQM(SQM社)、チリ国の製品;14.78g)を完全に混合した。次に、この混合物を、別の100ozの黒鉛坩堝で覆われている100ozの黒鉛坩堝に注入し、及び空気下に、オーブンにおいて、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約105分(mn)の間維持し、そして約100℃まで約20分(mn)間にて冷却した。驚くべきことに、X-線回折分析は、本発明者等が、89%の純度を有するLiFePO4を得たことを指示する。次いで、炭素の存在下、又は黒鉛坩堝において、密封しないまでも、調製したLiFePO4を980℃での空気下に溶融するのが可能であることが示される。
【0073】
(例11)
MnO2、Li2CO3及び(NH4)2HPO4原料前駆体からの直接的なLiMnPO4の調製:
瑪瑙乳鉢において、本発明者等は、MnO2(Aldrichの製品;8.69g)、Li2CO3(Limtechの製品;3.69g)及び(NH4)2HPO4(Aldrichの製品;13.21g)を完全に混合した。次に、この混合物を、2″IDの黒鉛坩堝に注入し、及びアルゴン流下、気密のオーブンにおいて、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分(mn)の間維持し、及び約50℃まで約3時間にて冷却した。XRD分析は、本発明者等が>94%の純度のLiMnPO4を調製したことを確認する。
【0074】
(例12)
MnO2、Li2CO3、Fe2O3及び(NH4)2HPO4原料前駆体からの直接的なLi(Fe、Mn)PO4の調製:
瑪瑙乳鉢において、本発明者等は、MnO2(Aldrichの製品;4.35g)、Fe2O3(Aldrichの製品;3.39g)、Li2CO3(Limtechの製品;3.69g)及び(NH4)2HPO4(Aldrichの製品;13.21g)を完全に混合した。次に、この混合物を、2″IDの黒鉛坩堝に配置し、アルゴン流下、気密のオーブンにおいて、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、約50℃まで約3時間にて冷却した。XRD分析は、本発明者等が>90%の純度を有するLi(Mn、Fe)PO4を調製したことを確認する。
【0075】
(例13)
FePO4、Li2CO3及びMoO3原料前駆体から直接的にモリブデンによってドープされるLiFePO4の調製:
この例において、本発明者等は、MoでドープするLiFePO4の調製の可能性を示す。第1の実験(E1)において、本発明者等は、瑪瑙乳鉢で、FePO4・2H2O(Chemische FabrikBudenheim KGの製品;18.68g)、Li2CO3(Limtechの製品;3.66g)及びMoO3(Aldrichの製品;144mg)を完全に混合した。次に、この混合物を、2″IDの黒鉛坩堝に注入し、及びアルゴン流下、気密のオーブンにおいて、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。第2の実験(E2)は、FePO4・2H2O(18.68g)、Li2CO3(Limtechの製品;3.58g)及びMoO3(432mg)で実行した。表5において与えるXRD分析(解析)は、それぞれ97.8%(E1)及び96.4%(E2)の純度を有する純粋なLiFePO4に特長的であった。Mo相の仮の属性もまた、与えられた。
【0076】
【表5】

【0077】
E2試料のMEB観察は、本発明者等が、粒界(grains boundaries)で堆積するLiFePO4及びMo豊富相で作製される複合物質を調製することが可能だったことを指示する(図6参照)。E2主要元素の分布は、SEM顕微鏡でのX-線分析により定められるが、Mo中間相が、Feをも含むMo豊富リン酸塩相であることを指示するようである。本発明者等は、また、Mo添加が微結晶の寸法を減少させることを観察した。さらに、E2試料の粉砕は、青い着色(有色)の粉体を与え、これは、制限的でないが、LiFePO4相でのMoの部分的な溶解に、及び/又はイオン欠陥、複雑な遷移金属イオン、又はLiFePO4結晶構造での有色中央誘導(colored center induction)に関係があるかもしれない。
【0078】
この材料を用いて、例1にて説明したようにではあるが、炭素被膜なしで、電池を組み立てて、試験した。電気化学応答は、76%(129mAh/g)の第1の充電クーロン効率及び充電容量の95%に対応する第1の放電(122mAh/g)を有するLiFePO4に特長的であった。しかし、C-被膜が使われないことを考えれば、利用率(容量)は、驚くほど高く、Mo-添加LiFePO4相において、より一層高い電子導電性又はLi-イオン拡散率を示唆する。
【0079】
(例14)
MoドープLiFePO4の焼戻し:
例13において調製される材料の500mgを、石英アンプル(ampula)での減圧下に封止した。980℃での10分(mn)間の熱処理の後、アンプルを、水中で直ちに急冷した。急冷した物質を、Mo SEM写像を含む顕微鏡法によって、例13におけるように分析した(図6参照)。急冷は、物質及びより一層微細な分布の不規則性(disorder、乱れ)を誘導するが、LiFePO4結晶構造の外側でまだMo豊富相を保つ。
【0080】
(例15)
FePO4、Li2CO3及びCr2O3原料前駆体から直接にクロムによってドープするLiFePO4の調製:
本発明者等は、CrでドープされるLiFePO4を調製する可能性を探ることを目的とした。第1の実験(E1)において、本発明者等は、瑪瑙乳鉢にてFePO42H2O(18.68g)、Li2CO3(3.58g)及びCr2O3(Aldrichの製品;76mg)を十分に混合した。次いで、この混合物を、2″IDの黒鉛坩堝中に注ぎ、及びアルゴン流下に、気密のオーブンにおいて、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約80分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。第2の実験(E2)を、FePO42H2O(18.68g)、Li2CO3(3.36g)及びCr2O3(228mg)によって実行した。XRD分析(表6参照)は、それぞれ91.5%(E1)及び89.2%(E2)の純度を有するLiFePO4に特長的であったが、電子的に伝導の金属性Crの存在を示す。
【0081】
【表6】

【0082】
(例16)
FePO4及びLi2CO3原料前駆体からの、CO/CO2雰囲気下での、C添加剤又は黒鉛坩堝の不存在下における直接的なLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、FePO4・2H2O(37.37g)及びLi2CO3(7.39gr(グラム))を完全に混合した。次に、この混合物を、アルミナセラミック坩堝において配置し、及び気密のオーブンにおいて、CO/CO2(3:1)の流れの下に、周囲温度から980℃±5℃にまで約100分にて加熱し、980℃±5℃で約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。この材料を用いて、例1にて説明したようにではあるが、炭素被膜なしで、電池を組み立てて、試験した。電気化学応答は、LiFeO4に特長的であった。
【0083】
(例17)
Fe2O3、(NH4)2HPO4及びLi2CO3原料前駆体からの、不活性雰囲気下での、炭素添加剤又は黒鉛坩堝の不存在下における直接的なLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、Fe2O3(15.98g)、Li2CO3(7.39g)及び(NH4)2HPO4(26.4g)を完全に混合した。次に、この混合物を、アルミナセラミック坩堝中に注ぎ、及び気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。この材料を用いて、例1にて説明したようにではあるが、炭素被膜なしで、電池を組み立てて、試験した。電気化学応答は、LiFeO4に特長的であった。
【0084】
(例18)
Fe2O3及びLiH2PO4原料前駆体からの、Fe+3反応物質から始まる不活性雰囲気下での、炭素添加剤又は黒鉛坩堝なしでの、直接的なLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、Fe2O3(15.98g)及びLiH2PO4(Aldrichの製品;20.8g)を完全に混合した。次に、この混合物を、アルミナセラミック坩堝中に注ぎ、及び気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。この材料を用いて、例1にて説明したようにではあるが、炭素被膜なしで、電池を組み立てて、試験した。電気化学応答は、LiFePO4に特長的であって、Fe+3のリチウム化鉄+2リン酸塩にまでの熱的還元が可能であることを示す。
【0085】
(例19)
Fe、Fe2O3及びLiH2PO4原料前駆体からの、不活性雰囲気下での、C添加剤又は黒鉛坩堝の欠損下ではあるが、還元性薬剤としてのFe0の存在下での、直接的なLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、Fe(Aldrichの製品;5.58g)、Fe2O3(15.97g)及びLiH2PO4(31.18g)を完全に混合した。次に、この混合物を、アルミナセラミック坩堝中に注ぎ、及び気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から1000℃±5℃まで約100分にて加熱し、1000℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。この材料を用いて、例1において説明したようにではあるが、炭素被膜なしで、電池を組み立てて、試験した。電気化学応答は、LiFeO4に特長的であった。
【0086】
(例20)
Fe及びLiH2PO4原料前駆体からの、CO/CO2雰囲気下での直接的なLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、Fe粉末(11.17g)及びLiH2PO4(20.79g)を完全に混合した。次に、この混合物を、アルミナセラミック坩堝中に注ぎ、及び気密のオーブンにおいて、CO/CO2流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。この材料を用いて、例1にて説明したようにではあるが、炭素被膜なしで、電池を組み立てて、試験した。電気化学応答は、LiFeO4に特長的であった。この例は、CO/CO2のような緩衝化した(buffered)ガス混合物が本発明の過程の条件において、Fe0をFe+2にまで酸化させることができることを示す。
【0087】
(例21)
Fe2O3、Li2CO3、(NH4)2HPO4及びMgHPO4原料前駆体からの直接的なマグネシウムドープLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、Fe2O3(15.17g)、Li2CO3(7.39g)、(NH4)2HPO4(25.09g)及びMgHPO4(Aldrichの製品;1.2g)を完全に混合した。次に、この混合物を、2″IDの黒鉛坩堝に配置し、及び気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。XRD及びICP分析は、本発明者等が、>90%の純度を有するLiFe0.95Mg0.05PO4かんらん石固溶体を得たことを指示する。
【0088】
(例22)
Fe2O3及びLiH2PO4原料前駆体からの直接的なLiFePO4の調製:
本発明者等は、瑪瑙乳鉢において、Fe2O3(15. 98g)、LiH2PO4(20.8g)及びEBN1010黒鉛粉末(Superior Graphite(シューペリア・グラファイト社)の製品;1.2g)を完全に混合した。次に、この混合物を、アルミナセラミック坩堝中に注ぎ、及び気密のオーブンにおいて、アルゴン流下、周囲温度から980℃±5℃まで約100分にて加熱し、980℃±5℃に約60分間(mn)の間維持し、そして約50℃まで約3時間にて冷却した。本発明者等は、その表面で主として炭素から構成される小さな外被を有する結晶性物質を得た。セラミックが、>90%純度のLiFePO4としてXRDによって識別された。第2の似た実験を、同量のFe2O3及びLiH2PO4を用いるが、1.2gの代わりに600mgの黒鉛を用いて実行した。このようにして、本発明者等は、>90%純度のLiFeO4を得た。
【0089】
(例23)
LiFePO4の電気化学的特徴付け:
2kgの量のLiFePO4(XRDによる94%の純度)を、いくつかのバッチで、Fe2O3、(NH4)2HPO4及びLi2CO3から例9の第1実験において開示するように調製した。これらの2kgを、アルミナ乳鉢において即座に破壊して、約1mmのチャンク(塊)の形態にした。LiFePO4のバッチを、更に、遊星形ミルPM100(Retsch GmbH & Co. KG(レッチェ社)、ドイツ国の製品)を用い、磨砕した。このようにして、200gのLiFePO4を、10分間(mn)、12gの20mmジルコニア・ボールと共にジルコニア・ジャー(広口壜)内で、更に90分間(mn)、440gの3mmジルコニア・ボールと共に、双方の場合に90ccのイソ-プロパノールと共に、湿式ミル(微粉砕)した。粒度及び分布(分散)を表7に与え、平均寸法は1.44μmであった。
【0090】
【表7】

【0091】
遊星形ミルで磨砕した20gのLiFePO4を、アセトン中に溶解する6重量%の酢酸セルロース(Aldrichの製品)と混合した。次に、この混合物を乾燥させ、及び700℃で、1時間、アルゴン雰囲気下に処理し、この物質中に残っている炭素の量は、元素分析により定まるように1.23重量%であった。複合陽極電極は、炭素-被覆物質、導電性薬剤としてのEBN1010(Superior Graphiteの製品)及び結合剤としてのPVdFを、80/10/10の重量割合で用いて調製した。これらの被膜密度は、例1において開示するLiFePO4-Cを用いた似た被膜を有する1.2の代わりに、1.7であり、被膜密度の40%増加に相当する。陽極被膜の電気化学的性能は、金属リチウムを陰極として、25μmのポリプロピレンのCelgard(商標、セルガード)に含浸させたEC:DMC(1:1)の1MLiClO4を電解質として用いるコイン・セル・バッテリにおいて、室温で調査した。陽極表面は、1.5cm2であり、4.4mg/cm2のLiFePO4荷重を有した。第1の低速走査ボルタンメトリー(20mV/h)は、3.0V及び3.7Vの電圧の間に対してのLi+/Li0で、周囲温度でVMP2多チャネル・ポテンシオスタット(potensiostat)(Bio-Logic-Science Instruments(バイオ-ロジック-サイエンス・インスツルメンツ社)の製品)を用いて実行した。さらに、出力試験を、インテンシオスタティック(intentiostatic)実験(図7参照)によって実行し、速度(率)を第1の低速走査ボルタンメトリー(159.9mAh/g)から得られる比容量から算出した。溶融過程による安価な前駆体から調製され、及び目下利用可能なミリング機械によって磨砕されるLiFePO4は、高い率を支持することができる。
【0092】
代わりの磨砕をまた、実験室Jet-Mill(ジェット-ミル)を用い、条件(時間、気流、・・)を調節しながら実行し、1から5μmの平均寸法のLiFePO4粉体を得た。
【0093】
無論、本発明の実施形態の上記説明は、制限的ではなく、及びまた、当業者にとって明らかと思われるすべての可能な変形及び実施形態が包含される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】ペレットの図面代用写真である。
【図2】溶融相のXRD図である。
【図3】サイクリック・ボルタンメトリーの図である。
【図4】溶融体トリフィライト鉱石の頂部表面の図面代用写真である。
【図5】表面マッピング組成物の図面代用写真である。
【図6】表面マッピング組成物の図面代用写真である。
【図7】液体電解質電池の出力試験の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にリチウム化した遷移金属オキシアニオン-系リチウム-イオン可逆電極物質を調製するにあたり、
前記リチウム-イオン可逆電極物質の前駆体を提供する工程と、
前記前駆体を加熱する工程と、
液相を含むオキシアニオンを備える溶融体を生産するのに十分な温度で、それを融解する工程と、
前記溶融体の凝固を誘導し、及びリチウム電池における使用にとっての可逆性リチウムイオンの脱挿入/挿入サイクルを可能にする固体電極を得るための条件下に、それを冷却する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記オキシアニオン-系リチウム(Li)-イオン可逆電極物質がリン酸塩系であり、及び前記溶融体がリン酸塩含有液相を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記前駆体が、既に合成された少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩電極物質、自然発生的なリチウム化遷移金属リン酸塩鉱物、及びリチウム化遷移金属リン酸塩系電極物質を提供し得る化学反応体の混合物からなる群より選ばれる、請求項2の方法。
【請求項4】
前記混合物が、追加的に、リチウム化遷移金属リン酸塩系物質に対する添加又は置換の化学元素、又は炭素(C)、炭素質の化学物質、金属性鉄又はそれらの混合物を包含する還元性元素を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
前記加熱及び/又は融解及び/又は凝固を、非反応性又は部分的な還元性の雰囲気下に遂行する、請求項1〜4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記前躯体を加熱及び/又は融解するときにそれを化学的に反応させる工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項の方法。
【請求項7】
融解工程を、少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩電極物質の融解温度よりも150℃低い温度と、前記温度よりも300℃高い温度との間の温度で遂行する、請求項2の方法。
【請求項8】
融解工程を、少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩電極物質の融解温度と前記温度よりも150℃高い温度との間の温度で遂行する、請求項2の方法。
【請求項9】
加熱の及び融解の工程を部分的な還元性雰囲気下に遂行し、前記雰囲気が、CO、H2、NH3、HC及び他のガスとのそれらの混合物を含む群から選ばれる少なくとも1種の還元性ガスを備える、請求項2の方法。
【請求項10】
少なくとも前記加熱及び融解を、不活性又は非-反応性の雰囲気下に遂行する、請求項1〜9のいずれか1項の方法。
【請求項11】
少なくとも前記加熱及び融解を、炭素、又は固体、液体又は気体の炭素質物質の存在下に遂行する、請求項1〜9のいずれか1項の方法。
【請求項12】
少なくとも前記加熱及び融解を、炭素の存在下に、炭素の存在が酸化的雰囲気を妨げるのに十分な周囲空気の下に操作される囲い(enclosure、閉鎖容器)において遂行する、請求項1〜9のいずれか1項の方法。
【請求項13】
炭素の存在が酸化的雰囲気を妨げるのに十分な周囲空気の下に蓋を用いて操作される黒鉛又は黒鉛-ケイ素の坩堝から、囲いが全体的にか又は部分的に作製されている、請求項12の方法。
【請求項14】
溶融液相が本質的に溶融リン酸塩相であり、及び前記電極前駆体が、合成のリチウム化又は部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質、又は自然発生的なリン酸塩-系鉱物か、又はその混合物のいずれかを備え、前記冷却工程の後に得られるリン酸塩-系電極物質のものに似た公称上の化学的調合を持つ、請求項1〜11のいずれか1項の方法。
【請求項15】
前記前駆体が、望ましい公称上の調合の前記少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-系電極物質を提供し得る化学反応体の混合物を備え、化学反応体の前記混合物が、随意に、C(炭素)、炭素質の化合物又は金属性鉄を包含する、追加的な置換元素、化学的添加剤又は還元性薬剤を備える、請求項1〜11のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記化学反応体間、及び随意に前記化学反応体と、前記加熱及び/又は前記融解中の部分的な還元性雰囲気との間に、少なくとも1種の合成反応を遂行する工程を含み、前記合成反応が、前記電極物質にとって望ましい公称上の調合を提供する、請求項13記載の方法。
【請求項17】
化学的に互いに反応するときに望ましい公称上の調合の前記リチウム化リン酸塩-系電極物質を作製するのに必要な比においてすべての元素を含む原料化学物質を、前記前駆体が備え、化学反応体の前記混合物が、随意に、C、炭素質の化合物又は金属性鉄を包含する、追加的な置換元素、化学的添加剤又は還元性薬剤を備える、請求項2の方法。
【請求項18】
前駆体が、H3PO4、P205、アンモニウム又はリチウムのモノ又はジ-ヒドロゲノリン酸塩、Li3PO4、Li2CO3、LiCl、LiF及びLiOHを備える群から選ばれる難なく入手可能な化学物質を含み、及び酸化還元遷移金属の場合、2、3又は4の酸化状態を有する少なくとも1種の金属酸化物又はリン酸塩、もしあるなら鉄、FeO、FeO、Fe203及びFe304の場合において、Fe3(PO4)3、FePO4及びその混合物を含み; 前記汎用化学物質が、加熱工程に先立ち化学的に接触されるか、又は組み合わせられる、請求項15の方法。
【請求項19】
融解工程を、液-液又は液-固の相分離を前記液相において提供するための条件下に遂行し、そこで、前記少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩-含有液を、C粉体、FexP、未反応の固体、又は他の固体又は液体の非-混和性相を包含する、何らかの残留不純物から分離する、請求項2〜16のいずれか1項の方法。
【請求項20】
冷却工程を、望ましい公称上の調合及び結晶構造を有する前記電極物質の結晶化を許す条件下に遂行する、請求項2〜18のいずれか1項の方法。
【請求項21】
前駆体がまた、少なくとも1種のドーピングの添加剤、又はリン酸塩-含有液相において可溶か、又は部分的に可溶な少なくとも1種の置換物の元素を含み、前記ドーピングの元素又は置換物の元素が、冷却及び凝固の際の少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩固体相において可溶又は不溶である、請求項2〜20のいずれか1項の方法。
【請求項22】
前駆体がまた、酸化物、ハライド、オキシアニオン又は有機金属化合物及びそれらの混合物として導入される金属及びアニオンを備えるドーピングの添加剤又は置換物の元素を含む、請求項21の方法。
【請求項23】
冷却工程が、結晶構造又は微細に分散した離れた相における欠陥の内包物、物質をLi-イオン可逆電極として用いるときに電子導電性又はLi-イオンの拡散性に寄与するパーコラント(percolant)又はそれ以外を伴って制御される結晶性成長を許す、少なくとも部分的なリチウム化遷移金属リン酸塩相の熱処理を含む、請求項21の方法。
【請求項24】
前記冷却を、望ましい公称上の調合を有する前記電極物質の急冷、及びアモルファス(非晶質)又は短-距離-結晶性構造(short-distance-crystalline structures)であって、随意に、物質をLi-イオン可逆電極として用いるときに電子導電性又はLi-イオンの拡散性に寄与する構造的に統合されるドーピング、置換及び追加的な元素を含むものを許す条件下に遂行する、請求項21の方法。
【請求項25】
ドーピングの添加剤が、酸化物、オキソ・アニオン、オキソ・ハライド、ハライド、有機金属性のもの又はそれらの混合物として導入されるモリブデンを含み、及びそのモリブデンが、リチウム化遷移金属リン酸塩相の構造においてか、又は結晶粒(crystal grains)の外側の離れたモリブデン豊富相としてか、又は双方で存在し、及びLi-イオン可逆電極として物質性能に寄与する、請求項23又は24の方法。
【請求項26】
モリブデンが、リチウム化遷移金属リン酸塩相において存在する他のすべての遷移金属に対して比較して、0.1及び10%原子の間の濃度で存在する、請求項25の方法。
【請求項27】
前記加熱及び融解を、同じ物質の蓋を用いて遂行する、請求項2〜10のいずれか1項の方法。
【請求項28】
坩堝が同じ物質(黒鉛又は黒鉛-ケイ素)の蓋を持ち、及び坩堝及び蓋が、少なくとも加熱の工程及び融解の工程の間に周囲空気中に設置される、請求項13の方法。
【請求項29】
次いで、固体電極物質の空気に対する短い暴露(露出)及び水/油における急冷を行う、請求項1〜28のいずれか1項の方法。
【請求項30】
固体電極物質を、粉末形態又は小粒子の小さな凝集物に小さくする工程を含む、請求項2〜29のいずれか1項の方法。
【請求項31】
前記固体電極物質を、複合電極としてのその電気化学的性能を最適化するために、破壊、粉砕、微粒化、ジェットミリング、メカノフュージョン、篩別又は分級によって粉末形態又は小粒子の小さな凝集物に小さくする、請求項30の方法。
【請求項32】
個々の平均粒度が20ナノメータ及び5ミクロン(マイクロメータ)の間であり、及び凝集物平均粒度が100ナノメータ及び15ミクロンの間である、請求項30又は31の方法。
【請求項33】
リチウム-イオン可逆電極性能を最適化するために、電池産業において用いるC又は他の化学的添加剤を、化学的にか、又は機械的に適用することによって、個々の粒子又は凝集物を外的に処理する工程を含む、請求項30〜32のいずれか1項の方法。
【請求項34】
請求項1の方法であって、
公称上の式AB(X04)Hで、
式中、Aはリチウムであり、それはA金属の20%原子未満で示される別のアルカリ金属を用いて部分的に置換され得、
Bは、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物の中から選ばれる、+2の酸化レベルでの主要な酸化還元金属であり、それは、+1及び+5の間の酸化レベルでの1種又はそれよりも多い種類の追加的金属によって部分的に置換され得、及び前記主要な+2の酸化還元金属の0を包含する35%原子未満を示し、
X04は、XがP、S、V、Si、Nb、Mo又はその組合せのいずれかである任意のオキシアニオンであり、
Hは、X04オキシアニオンの0を包含する35%原子未満を示すフッ化物、水酸化物又は塩素アニオンである
の少なくとも部分的にリチウム化した電極物質を製造する、方法。
【請求項35】
前記少なくとも部分的なリチウム化電極物質が、秩序化か、又は修飾化したかんらん石構造を持つ、請求項34の方法。
【請求項36】
前記少なくとも部分的なリチウム化電極物質が、少なくともリン酸塩-系電極物質を備える、請求項34の方法。
【請求項37】
リン酸塩-系電極物質が公称上の式LiFeP04を持つ、請求項36の方法。
【請求項38】
リン酸塩-系電極物質が、公称上の式LiFeP04を持ち、及び何らのC添加剤も伴わない固体状態反応によって作製されるLiFeP04と比較して、優れた電子伝導を持つ、請求項37の方法。
【請求項39】
リン酸塩-系電極物質が、公称上の式Li(Fex-Mnl-x)P04を持ち、式中1≧x≧0であり、及び電気を通し得る、請求項36の方法。
【請求項40】
請求項1〜31のいずれか1項の方法であって、
公称上の式Li3-xM′yM″2-y(X04)3で、
式中:0≦x<3、0≦y≦2であり、ここで、M′及び M″は同じか、又は異なる金属であり、そのうちの1種は少なくとも酸化還元遷移金属であり、及びX04は、主として、非置換か、又はXがP、S、V、Si、Nb、Mo又はその組合せのいずれかである任意のオキシアニオンを用いて部分的に置換されるP04である
の少なくとも部分的にリチウム化した電極物質を調製する、方法。
【請求項41】
前記融解を、わずかに非-化学量論的な電極物質を得る形(方法)で行い、このような非-化学量論が、電気を通し得る電極物質を製造するのに十分であり、及び/又は前記わずかに非-化学量論的な電極物質における優れたリチウム-イオン拡散を持つ、請求項31又は40の方法。
【請求項42】
リチウム化したか、又は部分的にリチウム化したオキシアニオン-系リチウム-イオン可逆電極物質であって、請求項1〜34のいずれか1項に規定する方法によって得られる、電極物質。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515762(P2007−515762A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545870(P2006−545870)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002182
【国際公開番号】WO2005/062404
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(303055165)ウニヴェルシテ ド モントリオール (3)
【出願人】(506214909)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック (9)
【出願人】(506215205)フォステック リシウム インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】