説明

電気浸透脱水方法及び装置

【課題】電解質溶液や電気浸透脱水の脱水濾液を汚泥等の含水物に添加して汚泥の電気伝導率を高め、脱水物の含水率を低下させるようにした電気浸透脱水方法及び装置において、脱水物の含水率を効率よく更に低下させることができる電気浸透脱水方法及び装置を提供する。
【解決手段】濾布よりなるコンベヤベルト1がローラ2,3間にエンドレスに架け渡されており、無端回動可能とされている。コンベヤベルト1の搬送方向に陽極ユニット21〜25が配列されており、途中の陽極ユニット23,24間にスプレーノズル12が設けられている。電解質溶液や、脱水工程前半側のトレー6で集められた濾液がスプレーノズル12から脱水途中の汚泥に添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の生物処理汚泥、上水汚泥などの含水物を脱水するための電気浸透脱水方法及び装置に関するものであり、特に脱水助剤を被処理含水物に添付するようにした電気浸透脱水方法及び装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
排水の生物処理過程で発生する汚泥などの含水物を脱水処理する方法として、電気浸透脱水が周知である(特許文献1〜5、非特許文献1)。この電気浸透脱水処理では、被処理含水物に通電して、マイナスに荷電した汚泥を陽極側に引き寄せ、一方、汚泥の間隙水を陰極側に移動させて分離させながら加圧力をかけて脱水するため、機械的脱水処理の場合に比べて、脱水効率が高く、汚泥の含水率を更に低減することが可能である。
【0003】
特許文献1の電気浸透脱水装置は、無端回動する下側フィルタベルト(陰極)と無端回動する上側プレスベルト(陽極)との間で汚泥を電気浸透脱水処理するように構成したものである。
【0004】
特許文献2の電気浸透脱水装置は、上側プレスベルトとは別個に陽極としての電極ドラムを配置し、この電極ドラムによって上下のベルトを挟圧するように構成している。
【0005】
特許文献3の電気浸透脱水装置は、無端回動するコンベヤベルトの上に汚泥を供給し、コンベヤベルトの下側の陰極板とコンベヤベルトの上方の陽極ユニットとの間で含水物を挟圧すると共に電流を通電して電気浸透脱水するように構成したものである。陽極ユニットはコンベヤ移動方向に複数個配設されている。各陽極ユニットの底面部には水平な陽極板が設置されている。この陽極板はエアシリンダによって押し下げ可能とされると共に、スプリングによって引き上げ可能とされている。コンベヤは、陽極板を上昇させた状態で、1スパン(陽極ユニットの設置間隔)分だけ含水物を移動させる。
【0006】
特許文献4,5の電気浸透脱水装置は、両極を有した左右1対の濾板の間に2葉の濾布を配置している。濾布同士の間に汚泥を供給し、濾布を介して汚泥を挟圧すると共に、電極間に通電することにより、汚泥が電気浸透脱水処理される。処理後は、濾板を離反させ、次いで濾布同士を離反させて脱水物を取り出す。
【0007】
このような電気浸透脱水方法では、脱水量は通電量に比例するため、汚泥の電気伝導率を上げると脱水ケーキの含水率は下がりやすい。そこで、脱水効率を高めるために、次の(a)〜(c)のようにして含水物の電気伝導率を高めることが提案されている。
(a) 脱水ろ液を回収し、脱水前汚泥に添加することで、脱水後ケーキのpHおよび電気伝導率を調整する(特許文献1)。
(b) 食塩や硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの電解質を汚泥に添加する(特許文献4)。
(c) 導電活性剤を汚泥に添加する(特許文献2。ただし、特許文献2には、導電活性剤とは具体的にはどのようなものであるか記載されていない。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−189311
【特許文献2】特開平6−154797
【特許文献3】WO2007/143840
【特許文献4】特公平7−73646
【特許文献5】特許第3576269
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】水処理管理便覧(平成10年9月30日丸善)P.339〜341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電気浸透脱水方法において、脱水の駆動力となるカチオンの多くは脱水前半で濾液とともに排出される。このため、被処理含水物に予め電解質を添加した場合、脱水後半ではカチオン不足により汚泥の電気伝導率が下がるようになり、脱水ケーキの到達含水率が下がりにくい。脱水後半までカチオンを保持するため被処理含水物に大量の電解質を添加すると、脱水ケーキの含水率は低下するが、脱水初期に電流が流れすぎてエネルギー消費量が増大する。
【0011】
なお、特許文献1の濾液再生利用の場合、脱水前半では電気伝導率の高い濾液が発生するが、脱水後半の濾液は電気伝導率が低い。特許文献1では、脱水により発生する濾液を全て回収、再利用するため、電気伝導率が高くない濾液を再利用することになる。このため添加濾液量が増え、高含水率の汚泥を電気浸透脱水することになるため、到達含水率が下がりにくい。
【0012】
本発明は、被処理含水物に電解質を添加して汚泥の電気伝導率を高め、脱水物の含水率を低下させるようにした電気浸透脱水方法及び装置において、脱水物の含水率を効率よく更に低下させることができる電気浸透脱水方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の電気浸透脱水方法は、陽極と陰極との間で被処理含水物を挟み、圧搾しながら両極間に通電して脱水する電気浸透脱水方法であって、脱水助剤を被処理含水物に添加する電気浸透脱水方法において、脱水助剤を脱水途中の被処理含水物に添加することを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の電気浸透脱水方法は、請求項1において、脱水助剤は電解質含有液であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の電気浸透脱水方法は、請求項2において、電解質含有液は電気浸透脱水装置の脱水濾液であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の電気浸透脱水方法は、請求項2において、電解質含有液は、脱水工程初期の脱水濾液であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の電気浸透脱水装置は、対向配置された電極と、対向する電極間に通電する通電手段と、対向する電極同士の間に配置された濾材と、該濾材同士の間又は濾材と一方の電極との間で被処理含水物を挟圧するための挟圧手段と、を有する電気浸透脱水装置において、脱水助剤を脱水途中の被処理含水物に添加する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の電気浸透脱水装置は、請求項5において、該添加手段は、脱水濾液を回収して被処理含水物に添加する脱水濾液の回収添加手段であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の電気浸透脱水装置は、請求項6において、該脱水濾液の回収添加手段は、脱水工程の初期の脱水濾液のみを回収添加するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項8の電気浸透脱水装置は、請求項7において、前記濾材は濾布ベルトであり、上面に被処理含水物を担持するように且つベルト長手方向に移動可能に配置されており、該濾布ベルトの下側に陰極が配置され、該濾布ベルトの上方に陽極が配置されており、該陽極は、該濾布ベルトの長手方向に複数個配列されており、前記挟圧手段は、該陽極を押し下げるものであり、前記脱水濾液の回収添加手段は、濾布ベルトの移動方向の上流側部分で濾布ベルトを透過した脱水濾液を回収し、該上流側部分よりも下流側の部分において被処理含水物に添加するよう構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、脱水工程の途中で被処理含水物に脱水助剤を添加するので、脱水工程後半の脱水効率が向上する。上述の通り、脱水工程の前半では、被処理含水物中に電解質が多く存在するので、脱水効率が高い。本発明では、電解質が減少してくる後半においても、脱水助剤の添加により脱水効率が高くなるので、含水率の低い脱水物を得ることができる。
【0022】
脱水助剤として脱水濾液を用いると、脱水助剤コストが低いものとなる。
【0023】
なお、電気浸透脱水では、脱水工程の初期では電気伝導率の高い濾液が発生するが、脱水工程の後半の濾液は電気伝導率が低い。本発明では、脱水工程の初期に発生する電気伝導率の高い濾液を回収して脱水途中の被処理含水物に添加することが好ましい。これにより、電気伝導率が高くなり、脱水率が十分に向上し、含水率の低い脱水物を得ることが可能となる。また、電気伝導率の低い脱水工程後半の濾液については含水物に添加しないので、濾液添加に伴う被処理含水物の含水率上昇が小さくなり、これによっても含水率の低い脱水物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)図は実施の形態に係る電気浸透脱水装置のプレス脱水時の概略的な縦断面図、(b)図及び(c)図は(a)図のB−B線及びC−C線に沿う断面図である。
【図2】(a)図は実施の形態に係る電気浸透脱水装置のベルト送り工程における概略的な縦断面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図3】別の実施の形態に係る電気浸透脱水装置の概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図(a)及び第2図(a)は実施の形態に係る電気浸透脱水装置の長手方向(ベルト回動方向)に沿う縦断面図であり、第1図(b)、(c)は第1図(a)のB−B線、C−C線に沿う断面図、第2図(b)は同(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第1図は脱水工程の様子を示しており、第2図は、この電気浸透脱水装置のベルト送り工程の様子を示している。
【0026】
濾布よりなるコンベヤベルト1がローラ2,3間にエンドレスに架け渡されており、無端回動可能とされている。
【0027】
このコンベヤベルト1の上面側が汚泥の搬送側となっており、下面側が戻り側となっている。コンベヤベルト1の搬送側の下面に板状の陰極4が配置されている。この陰極4は金属などの導電材よりなる板状部材であり、上下方向に貫通する多数の孔を有している。陰極4はローラ2の直近からローラ3の直近まで延在している。
【0028】
このコンベヤベルト1の上面の搬送方向上流部に被処理含水物(この実施の形態では汚泥S)を供給するようにホッパー5が設けられている。
【0029】
陰極4の下側に、陰極4の前記孔を通って落下してくる濾液を受けとめるトレー6,7が設けられている。
【0030】
トレー6はコンベヤベルト1の搬送方向上流側に配置されており、トレー7はそれよりも搬送方向下流側に配置されている。この実施の形態では、後述の通り、コンベヤベルト1の搬送方向に陽極ユニット21〜25が配列されており、トレー6は前半側の陽極ユニット21〜23の下側に配置され、トレー7は後半側の陽極ユニット24,25の下側に配置されている。
【0031】
トレー6で集められた濾液は、濾液貯槽8に導入され、ポンプ及び配管(図示略)を介して後述のスプレーノズル12に供給可能とされている。
【0032】
トレー7で集められた濾液は、配管11を介して水処理設備へ送られる。
【0033】
コンベヤベルト1の搬送部の上方に陽極ユニット21,22,23,24,25が設置されている。なお、第1図(b),(c)の通り、コンベヤベルト1の搬送部の両サイドに電気絶縁性材料よりなる側壁板20が立設されており、コンベヤベルト1上の汚泥が側方へはみ出ないように構成されている。陽極ユニット21〜25は側壁板20,20間に配置されている。
【0034】
この実施の形態では陽極ユニットがコンベヤベルト搬送方向に5個配置されているが、これに限定されない。陽極ユニットは、コンベヤベルト搬送方向に通常は2〜5個程度配置されていればよい。
【0035】
各陽極ユニット21〜25は、下面に固着された陽極板33と、エアシリンダ(図示略)を有している。エアシリンダは、上端が電気浸透脱水装置の本体に固定され、エアシリンダ内にエアを供給すると、陽極板33が下方に移動する。エアシリンダからエアを排出すると、陽極板33が引き上げられて、上昇する。
【0036】
エアシリンダの上端は電気浸透脱水装置の本体であるビーム(図示略)に取り付けられている。このビームは、コンベヤベルト1の上方に固定設置されている。
【0037】
各陽極ユニット21〜25の陽極板33に対しては、直流電源装置(図示略)から直流電流が通電される。
【0038】
陽極ユニット23と陽極ユニット24との間にスプレーノズル12が配置され、コンベヤベルト1上の汚泥に対しタンク8内の脱水濾液を噴霧して添加するよう構成されている。この実施の形態では、スプレーノズル12はコンベヤベルト1の幅方向に2個設けられているが、1個又は3個設けられてもよい。また、コンベヤベルト幅方向に長いスリット状噴霧口を有したスプレーノズルを設置してもよい。
【0039】
このように構成された電気浸透脱水装置によって汚泥の脱水処理を行うには、ホッパー5内に供給された汚泥Sをコンベヤベルト1上に送り出し、各陽極ユニット21〜25に直流電流を通電すると共に、各陽極ユニット21〜25のエアシリンダにエアを供給し、この汚泥を陽極ユニット21〜25の陽極板33で上方から押圧する。
【0040】
電圧は、陽極ユニット21〜25が正、陰極板4が負となるように印加される。各陽極ユニット21〜25に対し同一の電圧を印加するのが装置の運転管理を容易とする点からして好適であるが、搬送方向下流側ほど電圧を高くしたり、逆に低くしたりしてもよい。また、各陽極ユニットの電流値が同一となるように通電制御してもよい。
【0041】
各陽極ユニット21〜25のエアシリンダに対し同一の圧力のエアを供給してもよく、下流側の陽極ユニットほど供給エア圧を大きく又は小さくするようにしてもよい。
【0042】
このように陽極ユニット21〜25と陰極板4との間に通電すると共に陽極ユニット21〜25の陽極板33で汚泥をプレスすることにより、汚泥が電気浸透脱水される。そして、脱水濾液がコンベヤベルト1を透過し、陰極板4の孔を通過してトレー6,7上に落下する。トレー6上に落下した濾液は、電気伝導率が高いので、スプレーノズル12からコンベヤベルト1上の添加すべく貯槽8に貯留される。
【0043】
第1図のように各陽極ユニット21〜25に通電する共に、陽極ユニット21〜25によって汚泥をプレスするときには、コンベヤベルト1は停止している。陽極ユニット21〜25によって所定時間プレス及び通電を行った後、各陽極ユニット21〜25のエアシリンダからエアを排出し、陽極板33を上昇させる。そして、コンベヤベルト1を陽極ユニット21〜25の配列ピッチの1ピッチ分だけ移動させる。これにより、陽極ユニット25の下側に位置していた汚泥は、脱水汚泥として送り出され、各陽極ユニット21〜24の下側に位置していた汚泥はそれぞれ1段だけ下流側の陽極ユニット22〜25の下側に移動する。また、ホッパー5から未脱水処理汚泥が陽極ユニット21の下側に導入される。
【0044】
この実施の形態では、コンベヤベルト1を1ピッチ分だけ送り移動させている間に、スプレーノズル12から貯槽8内の脱水濾液を噴霧し、コンベヤベルト1上の汚泥Sに添加する。
【0045】
コンベヤベルト1が1ピッチ分だけ送り移動した後、スプレーノズル12からの脱水濾液の噴霧を停止し、次いで、各陽極ユニット21〜25の陽極板33を押し下げると共に各陽極ユニット21〜25と陰極4との間に通電し、汚泥の電気浸透脱水処理を行う。以下、この工程を繰り返すことにより、汚泥を電気浸透脱水処理する。
【0046】
このトレー6からの電気伝導率の高い濾液を脱水途中の被処理汚泥Sに添加することにより、脱水工程後半における被処理汚泥の電気伝導率が高くなり、陽極ユニット24,25と陰極板4との間の汚泥の電気伝導率が高くなり、脱水性が向上する。これにより、得られる脱水汚泥の含水率が低いものとなる。
【0047】
また、トレー7上に落下した電気伝導率の低い濾液については、汚泥に添加しないので、被処理汚泥の含水率上昇も抑制され、これによっても、得られる脱水汚泥の含水率が低いものとなる。
【0048】
さらに、この実施の形態では、脱水工程前半の被処理汚泥に対し脱水濾液を添加しないので、脱水工程前半における過剰通電も防止される。ただし、本発明では、ホッパー5に導入される被処理汚泥の電気伝導率が低いときには、貯槽8内の脱水濾液の一部をホッパー5内の電気浸透脱水処理前の汚泥や、それよりも前段側の汚泥に添加して被処理汚泥の電気伝導率を高くしてもよい。
【0049】
この実施の形態では、陽極ユニット23,24間にスプレーノズル12を配置している。このスプレーノズル12付近では汚泥はある程度脱水されて含水率が低くなっているため、スプレーノズル12から脱水濾液をスプレー添加した後、陽極ユニットで汚泥をプレスしても、陽極ユニット23,24間のスペースから汚泥が漏れ出すことはない。
【0050】
本発明では、スプレーノズル12からコンベヤベルト1上の汚泥に添加する濾液の電気伝導率は500mS/m以上特に1000mS/m以上であることが好ましく、また通常は2500mS/m以下、特に2000mS/m以下であることが好ましい。全脱水処理時間を100%とした場合、通常は最初の60%以下特に40%以下の時間帯で得られる脱水濾液を回収し、スプレーノズル12によって被処理汚泥に添加するのが好ましい。スプレーノズル12の配置位置は、この実施の形態では3番目と4番目の陽極ユニット23,24の間となっているが、これに限定されない。最上流側の陽極ユニットの前端部から最下流側の陽極ユニットの末端部までの全脱水部の長さを100%とした場合、スプレーノズル12の位置は最上流側から50%以降、例えば50〜80%、とりわけ50〜70%とするのが好ましい。
【0051】
コンベヤベルト1上の汚泥に添加する濾液の量は、スプレーノズル12よりも下流側のコンベヤベルト1上に存在する汚泥重量に対し5重量%以上特に10重量%以上であることが好ましく、通常は20重量%以下、特に15重量%以下であることが好ましい。
【0052】
上記実施の形態の電気浸透脱水装置では陽極ユニット23,24間にスプレーノズル12を配置しているが、第3図のように両サイドの側壁板20にスプレーノズル13を設け、各スプレーノズル13からコンベヤベルト1上の汚泥Sに脱水濾液を噴霧添加するようにしてもよい。
【0053】
このようにすれば、陽極ユニット23,24同士の間の隙間を小さくし、汚泥プレス時に該陽極ユニット23,24間から汚泥が漏れ出すことを防止することができる。
【0054】
本発明では、陽極ユニット23と24との間及び陽極ユニット24と25との間のようにコンベヤベルト1の搬送方向の複数個所にスプレーノズルを配置してもよい。
【0055】
上記実施の形態では、陽極ユニット21〜25とコンベヤベルト1及び陰極4によって汚泥を電気浸透脱水するようにしているが、本発明は別型式の電気浸透脱水装置にも適用可能である。例えば、陽極ドラムと、陰極を兼ねるコンベヤベルトとの間で汚泥Sを挟圧する電気浸透脱水装置にも本発明を適用できる。また、濾材同士の間で被処理物を挟圧する形式の電気浸透脱水装置にも適用することができる。例えば、前記特許文献4(特公平7−73646)、特許文献5(特許第3576269)、非特許文献1(水処理管理便覧P.340表8・6)のように1対の濾板間で圧搾膜及び電極を介して汚泥を挟圧する加圧圧搾型電気浸透脱水装置にも適用することができる。
【0056】
本発明は、図示以外の型式の電気浸透脱水装置を用いた電気浸透脱水方法にも適用できる。
【0057】
本発明では、脱水濾液以外の電解質溶液を脱水途中の被処理含水物に添加するようにしてもよい。このような電解質溶液としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウムなどの塩の溶液や、塩酸、硫酸、硝酸などの酸の溶液が例示される。この溶液の塩の濃度は電気伝導率が前記の好適な範囲となるように選定される。脱水濾液に塩を溶解させ、これを脱水途中の被処理含水物に添加するようにしてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0059】
第3図に示す電気浸透脱水装置を用い、含水率78%の下水処理汚泥を電気浸透脱水処理した。運転条件は次の通りである。
【0060】
陽極ユニットのコンベヤベルト搬送方向の配列数:4個
スプレーノズル13の位置:2番目と3番目の陽極ユニットの間
汚泥供給速度:12L/hr
陽極ユニットへの印加電圧:60V
【0061】
<比較例1>
脱水助剤を添加することなく、上記の条件で汚泥の電気浸透脱水処理を行った。脱水濾液についてはすべて水処理設備に送った。この結果、脱水汚泥の含水率は67.1%、消費電力は1429WHであった。
【0062】
<比較例2>
上記比較例1において、スプレーノズル13からNaSO水溶液(濃度120g/L)をホッパー5内の汚泥に対し2体積%の割合で添加した。この結果、脱水汚泥の含水率は62.4%、消費電力は1651WHであった。
【0063】
<実施例1>
上記比較例2において、NaSO水溶液を2番目と3番目の陽極ユニット同士の間のスプレーノズル13からコンベヤベルト1の送り移動時にのみ添加した。添加量は、スプレーノズル13の位置よりも下流側のコンベヤベルト1上の汚泥に対して2体積%とした。この結果、脱水汚泥の含水率は61.3%、消費電力は1379WHであった。
【0064】
以上の結果をまとめると、次の表1の通りである。
【0065】
【表1】

【0066】
<考察>
実施例1のように、電気浸透脱水途中で脱水助剤を添加することにより、到達含水率及び消費電力を低下させることができる。
【0067】
比較例1では、脱水後半にてカチオンが不足し、電気浸透の効果が十分に得られなかったために到達含水率がおもわしくないものと考えられる。
【0068】
また、比較例2では、大きな消費電力となってしまっている。これは、脱水初期には汚泥に比較的カチオンが含まれているにもかかわらず助剤を添加したため、必要以上に電流が流れすぎたものと考えられる。また、比較例2では、脱水助剤の効果により比較例1よりも到達含水率が向上しているものの、実施例1よりも高い含水率となってしまっている。これは、入口汚泥に脱水助剤を添加しているため、脱水工程の後半ではカチオン量が不足してしまったためと考えられる。
【符号の説明】
【0069】
1 コンベヤベルト
2,3 ローラ
4 陰極
5 ホッパー
6,7 トレー
8 貯槽
12,13 スプレーノズル
21〜25 陽極ユニット
33 陽極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間で被処理含水物を挟み、圧搾しながら両極間に通電して脱水する電気浸透脱水方法であって、
脱水助剤を被処理含水物に添加する電気浸透脱水方法において、
脱水助剤を脱水途中の被処理含水物に添加することを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項2】
請求項1において、脱水助剤は電解質含有液であることを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項3】
請求項2において、電解質含有液は電気浸透脱水装置の脱水濾液であることを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項4】
請求項2において、電解質含有液は、脱水工程初期の脱水濾液であることを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項5】
対向配置された電極と、
対向する電極間に通電する通電手段と、
対向する電極同士の間に配置された濾材と、
該濾材同士の間又は濾材と一方の電極との間で被処理含水物を挟圧するための挟圧手段と、
を有する電気浸透脱水装置において、
脱水助剤を脱水途中の被処理含水物に添加する手段を備えたことを特徴とする電気浸透脱水装置。
【請求項6】
請求項5において、該添加手段は、脱水濾液を回収して被処理含水物に添加する脱水濾液の回収添加手段であることを特徴とする電気浸透脱水装置。
【請求項7】
請求項6において、該脱水濾液の回収添加手段は、脱水工程の初期の脱水濾液のみを回収添加するよう構成されていることを特徴とする電気浸透脱水装置。
【請求項8】
請求項7において、前記濾材は濾布ベルトであり、上面に被処理含水物を担持するように且つベルト長手方向に移動可能に配置されており、
該濾布ベルトの下側に陰極が配置され、該濾布ベルトの上方に陽極が配置されており、
該陽極は、該濾布ベルトの長手方向に複数個配列されており、
前記挟圧手段は、該陽極を押し下げるものであり、
前記脱水濾液の回収添加手段は、濾布ベルトの移動方向の上流側部分で濾布ベルトを透過した脱水濾液を回収し、該上流側部分よりも下流側の部分において被処理含水物に添加するよう構成されていることを特徴とする電気浸透脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189274(P2011−189274A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57589(P2010−57589)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】