説明

電気浸透脱水方法及び装置

【課題】脱水物の含水率を効率よく低下させることができる電気浸透脱水方法及び装置を提供する。
【解決手段】濾布よりなるコンベヤベルト1がローラ2,3間にエンドレスに架け渡されており、無端回動可能とされている。コンベヤベルト1の搬送方向に陽極ユニット21〜25が配列されている。陽極ユニット21〜25と陰極板4との間に通電すると共に陽極ユニット21〜25の陽極板33で汚泥をプレスすることにより、汚泥が電気浸透脱水される。電気浸透脱水処理される汚泥を撹拌する撹拌羽根8などの撹拌手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の生物処理汚泥、上水汚泥などの含水物を脱水するための電気浸透脱水方法及び装置に関するものであり、特に含水物を撹拌してから電気浸透脱水するようにした電気浸透脱水方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水の生物処理過程で発生する汚泥などの含水物を脱水処理する方法として、電気浸透脱水が周知である(特許文献1〜5、非特許文献1)。この電気浸透脱水処理では、被処理含水物に通電して、マイナスに荷電した汚泥を陽極側に引き寄せ、一方、汚泥の間隙水を陰極側に移動させて分離させながら加圧力をかけて脱水するため、機械的脱水処理の場合に比べて、脱水効率が高く、汚泥の含水率を更に低減することが可能である。
【0003】
特許文献1の電気浸透脱水装置は、無端回動する下側フィルタベルト(陰極)と無端回動する上側プレスベルト(陽極)との間で汚泥を電気浸透脱水処理するように構成したものである。
【0004】
特許文献2の電気浸透脱水装置は、上側プレスベルトとは別個に陽極としての電極ドラムを配置し、この電極ドラムによって上下のベルトを挟圧するように構成している。
【0005】
特許文献3の電気浸透脱水装置は、無端回動するコンベヤベルトの上に汚泥を供給し、コンベヤベルトの下側の陰極板とコンベヤベルトの上方の陽極ユニットとの間で含水物を挟圧すると共に電流を通電して電気浸透脱水するように構成したものである。陽極ユニットはコンベヤ移動方向に複数個配設されている。各陽極ユニットの底面部には水平な陽極板が設置されている。この陽極板はエアシリンダによって押し下げ可能とされると共に、スプリングによって引き上げ可能とされている。コンベヤは、陽極板を上昇させた状態で、1スパン(陽極ユニットの設置間隔)分だけ含水物を移動させる。
【0006】
特許文献4,5の電気浸透脱水装置は、両極を有した左右1対の濾板の間に2葉の濾布を配置している。濾布同士の間に汚泥を供給し、濾布を介して汚泥を挟圧すると共に、電極間に通電することにより、汚泥が電気浸透脱水処理される。処理後は、濾板を離反させ、次いで濾布同士を離反させて脱水物を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−189311
【特許文献2】特開平6−154797
【特許文献3】WO2007/143840
【特許文献4】特公平7−73646
【特許文献5】特許第3576269
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】水処理管理便覧(平成10年9月30日丸善)P.339〜341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献のような電気浸透脱水処理を行うにあたって、被処理汚泥となる一次脱水汚泥内には空隙が多く存在する。電気浸透脱水処理時にこの空隙部分には電流が流れないので、空隙を多く含んだ汚泥を電気浸透脱水処理しても、脱水汚泥の含水率が低下しにくい。
【0010】
また、一次脱水汚泥は表面がやや乾燥していることがある。このように乾燥した部分は、電気抵抗が高く、電気浸透脱水処理時に電流が流れにくく、電気浸透脱水効率が低下する。
【0011】
本発明は、脱水物の含水率を効率よく低下させることができる電気浸透脱水方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の電気浸透脱水方法は、陽極と陰極との間で被処理含水物を挟み、圧搾しながら両極間に通電して脱水する電気浸透脱水方法において、被処理含水物を撹拌した後、電気浸透脱水することを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の電気浸透脱水方法は、請求項1において、被処理含水物を一次脱水処理し、この一次脱水処理後の含水物を撹拌した後、電気浸透脱水することを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の電気浸透脱水方法は、請求項2において、電気抵抗が一次脱水処理後の含水物の80%以下となるように撹拌を行うことを特徴とするものである。ここで、電気抵抗は同一重量の撹拌前後の含水物を0.1〜1.0kgf/cmの所定圧で圧縮して測定したときのものである。
【0015】
請求項4の電気浸透脱水方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該撹拌手段は、撹拌羽根、モーノポンプ、スクリュ又は土練機であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の電気浸透脱水装置は、対向配置された電極と、対向する電極間に通電する通電手段と、対向する電極同士の間に配置された濾材と、該濾材同士の間又は濾材と一方の電極との間で被処理含水物を挟圧するための挟圧手段とを有する電気浸透脱水装置において、該被処理含水物を撹拌する撹拌手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、被処理含水物を撹拌処理してから電気浸透脱水処理する。好ましくは、被処理含水物を凝集処理した後、一次脱水処理し、一次脱水汚泥(ケーキ)を撹拌してから電気浸透脱水処理する。この一次脱水ケーキを撹拌すると、シート状もしくはブロック状の一次脱水ケーキが砕かれることにより、均一な厚さに調整されやすくなり、電気浸透脱水効果が高くなる。また、一次脱水ケーキ中の汚泥粒子は、ペッドと称される集合体を形成し、不均一に存在している。撹拌によりペッドとペッドの結合が破壊され、また、ペッド自身も破砕されて汚泥粒子が分散した状態となるため、一次脱水ケーキは剪断強度が下がり軟らかくなる。
【0018】
通常、電気浸透脱水時には一次脱水ケーキに1kgf/cm以下程度の低圧力を印加するが、撹拌により一次脱水ケーキが軟らかくなるため、低い印加圧力でも圧縮されて空隙がなくなり、見かけ密度が高くなる。見かけ密度が高くなると、単位電極面積あたりで電気浸透脱水できる一次脱水ケーキ量が多くなる。
【0019】
一次脱水ケーキを撹拌することにより、表面と内部で不均一であった一次脱水ケーキの水分濃度が均一になる。一次脱水ケーキの水分濃度が均一になると共に、汚泥粒子の分散により一次脱水ケーキ中の水分は毛管水でつながった状態になる。これにより一次脱水ケーキの電気抵抗が下がり、電気浸透脱水効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係る電気浸透脱水方法を説明するフロー図である。
【図2】(a)図は実施の形態に係る電気浸透脱水装置の概略的な縦断面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図3】実施の形態に係る電気浸透脱水装置のコンベヤベルト搬送時の概略的な縦断面図である。
【図4】別の実施の形態に係る電気浸透脱水装置の概略的な縦断面図である。
【図5】実験に用いられる電気浸透脱水装置の概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、被処理含水物を撹拌してから電気浸透脱水処理を行う。好ましくは、被処理含水物を一次脱水し、この一次脱水処理物を撹拌してから電気浸透脱水処理を行う。第1図はこの好ましい形態を示すフロー図である。
【0022】
第1図の通り、被処理含水物に凝集剤を添加した後、一次脱水機に供給して一次脱水する。一次脱水機からの一次脱水ケーキを撹拌機に供給して撹拌した後、電気浸透脱水装置に供給して電気浸透脱水処理し、二次脱水ケーキとする。撹拌機や電気浸透脱水装置に脱水促進剤を添加してもよい。脱水促進剤を撹拌時や撹拌前に添加すると、脱水促進剤が撹拌によって汚泥中に均一に分散するようになる。
【0023】
本発明において、電気浸透脱水処理に供される被処理含水物としては特に制限はないが、各種産業排水の処理過程で発生する濃縮汚泥(含水率95〜99重量%(以下、含水率の単位は「%」と記す。)の汚泥)が例示される。
【0024】
被処理含水物の凝集処理に用いる凝集剤としては特に制限はなく、汚泥性状等に応じて、凝集効果に優れたものが用いられるが、一般的には、塩化アルミニウム(AlCl)、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド(Al(SO)、その他、水酸化アルミニウム(Al(OH))又は酸化アルミニウム(Al)を塩酸(HCl)又は硫酸(HSO)で溶解したものなどのアルミニウム塩などのアルミニウム系凝集剤や、塩化第二鉄(FeCl)、硫酸第二鉄(Fe(SO)、硫酸第一鉄(FeSO)等の鉄塩などの鉄系凝集剤、その他、シリカ系凝集剤などの各種の無機系凝集剤の1種又は2種以上を用いることができる。好ましくはポリ硫酸第2鉄が用いられる。
【0025】
無機系凝集剤と高分子凝集剤とを併用してもよい。併用する高分子凝集剤としては、アニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等の各種の高分子凝集剤を用いることができるが、両性高分子凝集剤(両性ポリマー)を用いることが好ましい。両性高分子凝集剤としては、アミノ基若しくはアンモニウム塩基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸若しくはその塩の共重合体が好ましく、アミノ基又はアンモニウム塩基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアミン硫酸塩又は塩酸塩、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルアミン塩酸塩などの(メタ)アクリロイルオキシアルキル3級アミン塩、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキル4級アンモニウム塩などを挙げることができる(ここで、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。「(メタ)アクリロイル」についても同様である。)。これらのモノマーは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、(メタ)アクリロイルオキシアルキル4級アンモニウム塩は脱水効果に優れるので好適に用いることができ、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド及びメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドを特に好適に用いることができる。
【0026】
また、(メタ)アクリル酸又はその塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリル酸カルシウムなどを挙げることができる。これらの中で、アクリル酸及びアクリル酸ナトリウムを特に好適に用いることができる。
【0027】
両性高分子凝集剤には、さらに他のコモノマーを共重合することができる。他のコモノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、マレイン酸、アクリル酸メチルなどを挙げることができる。これらのコモノマーの共重合量は、通常20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0028】
これらの高分子凝集剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
これらの凝集剤の添加量は、所望の含水率の脱水汚泥が得られるように適宜決定される。なお、一次脱水に使用する凝集剤として剪断力の弱いポリマー凝集剤を用いると、撹拌時に凝集剤ポリマーが切れやすくなり、電気浸透脱水時に汚泥から水が離脱しすくなる。
【0030】
一次脱水機としては、多重円板脱水機、遠心脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、フィルタプレス等の機械的脱水装置等が例示される。
【0031】
一次脱水ケーキの含水率範囲は、有機物比が0.8以上の一次脱水ケーキについては含水率80%以下、有機物比が0.5以下の一次脱水ケーキについては含水率70%以下であることが好ましい。
【0032】
撹拌機としては、回転翼式、回転スクリュ式など各種のものを用いることができる。
【0033】
本発明では、撹拌後の一次脱水ケーキの電気抵抗が、撹拌前と比べ90%以下となるよう撹拌するのが望ましく、特に80%以下となるよう撹拌するのが望ましい。
【0034】
脱水促進剤としては、電解質のほか、排水処理設備から排出される濃縮塩や、電気浸透脱水設備の前段から排出される特に電気伝導率の高いろ液、汚泥粒子のゼータ電位を大きくする分散剤を用いてもよい。脱水促進剤は、撹拌機、電気浸透脱水設備内の撹拌機、又は電気浸透脱水途中に添加されるのが特に望ましい。
【0035】
本発明において、電気浸透脱水処理装置としては特に制限はなく、前述の各種の電気浸透脱水処理装置を用いることができる。また、その電気浸透脱水処理条件にも特に制限はないが、例えば次のような条件を採用することができる。
加圧力:0.1〜200kPa
印加電圧量:20〜100V
脱水時間:5〜60分
【0036】
第2図(a)及び第3図は、本発明で用いるのに好適な電気浸透脱水装置の長手方向(ベルト回動方向)に沿う縦断面図であり、第2図(b)は第2図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第2図は脱水工程の様子を示しており、第3図は、この電気浸透脱水装置のベルト送り工程の様子を示している。
【0037】
濾布よりなるコンベヤベルト1がローラ2,3間にエンドレスに架け渡されており、無端回動可能とされている。
【0038】
このコンベヤベルト1の上面側が搬送側となっており、下面側が戻り側となっている。コンベヤベルト1の搬送側の下面に板状の陰極4が配置されている。この陰極4は金属などの導電材よりなる板状部材であり、上下方向に貫通する多数の孔を有している。陰極4はローラ2の直近からローラ3の直近まで延在している。
【0039】
このコンベヤベルト1の上面(搬送部)の搬送方向上流部に被処理含水物(この実施の形態では一次脱水ケーキよりなる汚泥S)を供給するようにホッパー5が設けられている。このホッパー5内に、モータMによって回転駆動される撹拌羽根8が設置されている。
【0040】
陰極4の下側に、陰極4の前記孔を通って落下してくる濾液を受けとめるトレー6が設けられている。
【0041】
トレー6で集められた濾液は、配管7を介して水処理設備へ送られる。なお、一部の濾液をホッパー5に返送して汚泥に添加してもよい。
【0042】
コンベヤベルト1の搬送部の上方に陽極ユニット21,22,23,24,25が設置されている。なお、第2図(b)の通り、コンベヤベルト1の搬送部の両サイドに側壁板20が立設されており、コンベヤベルト1上の汚泥が側方へはみ出ないように構成されている。陽極ユニット21〜25は側壁板20,20間に配置されている。
【0043】
この実施の形態では陽極ユニットがコンベヤベルト搬送方向に5個配置されているが、これに限定されない。陽極ユニットは、コンベヤベルト搬送方向に通常は2〜5個程度配置されていればよい。
【0044】
各陽極ユニット21〜25は、下面に固着された陽極板33と、エアシリンダ(図示略)を有している。エアシリンダは、上端が電気浸透脱水装置の本体に固定され、エアシリンダ内にエアを供給すると、陽極板33が下方に移動する。エアシリンダからエアを排出すると、陽極板33が引き上げられて、上昇する。
【0045】
エアシリンダの上端は電気浸透脱水装置の本体であるビーム(図示略)に取り付けられている。このビームは、コンベヤベルト1の上方に固定設置されている。
【0046】
各陽極ユニット21〜25の陽極板33に対しては、直流電源装置(図示略)から直流電流が通電される。
【0047】
この実施の形態では、コンベヤベルト1から送り出された脱水汚泥が保有する熱を利用して脱水汚泥からの水分の蒸発を促進させるために開放型のスクリュコンベヤ40が設置されている。このスクリュコンベヤ40は、ホッパ41と、ケーシング42と、該ケーシング42内に配置されたスクリュ43と、スクリュ43を駆動するモータ44等を備えている。ケーシング42は、スクリュ軸心線と直交方向の縦断面形状が略U字形となっており、上部が大気に開放している。スクリュコンベヤ40としては、2軸以上の多軸スクリュコンベヤ等が好適であるが、これに限定されない。
【0048】
このように構成された電気浸透脱水装置によって汚泥の脱水処理を行うには、ホッパー5内に供給された汚泥Sを撹拌羽根8で撹拌した後、コンベヤベルト1上に送り出し、各陽極ユニット21〜25に直流電流を通電すると共に、各陽極ユニット21〜25のエアシリンダにエアを供給し、この汚泥を陽極ユニット21〜25の陽極板33で上方から押圧する。
【0049】
電圧は、陽極ユニット21〜25が正、陰極板4が負となるように印加される。各陽極ユニット21〜25に対し同一の電圧を印加するのが装置の運転管理を容易とする点からして好適であるが、搬送方向下流側ほど電圧を高くしたり、逆に低くしたりしてもよい。また、各陽極ユニットの電流値が同一となるように通電制御してもよい。
【0050】
各陽極ユニット21〜25のエアシリンダに対し同一の圧力のエアを供給してもよく、下流側の陽極ユニットほど供給エア圧を大きく又は小さくするようにしてもよい。
【0051】
このように陽極ユニット21〜25と陰極板4との間に通電すると共に陽極ユニット21〜25の陽極板33で汚泥をプレスすることにより、汚泥が電気浸透脱水される。そして、脱水濾液がコンベヤベルト1を透過し、陰極板4の孔を通過してトレー6上に落下する。トレー6上に落下した濾液は、水処理設備に送られて処理する。なお、このトレー6からの電気伝導率の高い濾液をホッパー5内に供給するようにした場合には、被処理汚泥の電気伝導率が高くなり、陽極ユニット21〜25と陰極板4との間の汚泥の電気伝導率が高くなり、脱水性が向上する。これにより、得られる脱水汚泥の含水率が低いものとなる。
【0052】
第2図のように各陽極ユニット21〜25に通電すると共に、陽極ユニット21〜25によって汚泥をプレスするときには、コンベヤベルト1は停止している。陽極ユニット21〜25によって所定時間プレス及び通電を行った後、各陽極ユニット21〜25のエアシリンダからエアを排出し、第3図の通り、陽極板33を上昇させる。そして、コンベヤベルト1を陽極ユニット21〜25の配列ピッチの1ピッチ分だけ移動させる。これにより、陽極ユニット25の下側に位置していた汚泥は、脱水汚泥として送り出され、各陽極ユニット21〜24の下側に位置していた汚泥はそれぞれ1段だけ下流側の陽極ユニット22〜25の下側に移動する。コンベヤベルト1の搬送面の末端側上の脱水汚泥は、ローラ3を通り過ぎた位置でコンベヤベルト1からズリ落ちる如く落下し、スクリュコンベヤ40のホッパ41内に導入される。また、ホッパー5から未脱水処理汚泥が陽極ユニット21の下側に導入される。次いで、各陽極ユニット21〜25の陽極板33を押し下げると共に各陽極ユニット21〜25と陰極4との間に通電し、汚泥の電気浸透脱水処理を行う。以下、この工程を繰り返すことにより、汚泥を電気浸透脱水処理する。
【0053】
スクリュコンベヤ40のホッパ41内に落下した脱水汚泥は、スクリュ43によって攪拌されながらケーシング42内を移動する。この間に脱水汚泥はほぐされ、比表面積が増大し、脱水汚泥中の水蒸気が大気中に放散される。このスクリュコンベヤ40のケーシング42の上面部が開放しているので、水蒸気は速やかに大気に放散される。これにより、スクリュコンベヤ40から送り出される脱水汚泥の含水率は、ホッパ41に導入されたときよりも低下する。
【0054】
上記実施の形態の電気浸透脱水装置では陽極ユニット2 1〜25とコンベヤベルト1及び陰極4によって汚泥を電気浸透脱水するようにしているが、本発明は別型式の電気浸透脱水装置にも適用可能である。例えば、第4図のように陽極ドラム61と、陰極を兼ねるコンベヤベルト62との間で汚泥Sを挟圧する電気浸透脱水装置60にも本発明を適用できる。また、図示はしないが、本発明は濾材同士の間で被処理物を挟圧する形式の電気浸透脱水装置にも適用することができる。例えば、前記特許文献4(特公平7−73646)、特許文献5(特許第3576269)、非特許文献1(水処理管理便覧P.340表8・6)のように1対の濾板間で圧搾膜及び電極を介して汚泥を挟圧する加圧圧搾型電気浸透脱水装置にも適用することができる。これらの場合も、被処理含水物、好ましくは一次脱水汚泥を撹拌手段で撹拌してから電気浸透脱水装置に供給する。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0056】
第5図に示すカラム型の電気浸透脱水試験機を用い、攪拌した一次脱水ケーキを電気浸透脱水した。この電気浸透脱水試験機は、縦型の直径100mmのカラム60内に一次脱水ケーキを収容し、ピストン61をエアシリンダ62で下降させるようにしたものである。カラム60の下端部には多孔板よりなるカソード63が設けられている。ピストンの下面にはアノード64が設けられている。アノードとカソード間に電流を流し、攪拌前後の一次脱水ケーキの電気抵抗を測定した。また、濾液をビーカーに受け、電子天秤で秤量した。試験条件を以下に示す。
【0057】
<一次脱水ケーキ>
ベルトプレス脱水機で含水率80.6%に脱水した有機汚泥主体の一次脱水ケーキを用いた。厚さ約5mmのブロック状の塊となっている。
【0058】
<撹拌条件>
実施例1:一次脱水ケーキを薬匙で撹拌する。
比較例1:撹拌なし(ブロック状のまま)。
比較例2:一次脱水ケーキを砕き、2mmふるいを通過させる。
【0059】
<電気浸透脱水条件>
一次脱水ケーキ量:170g
脱水時間:10min
印加電圧:60V
圧力:0.32kgf/cm
【0060】
<電気抵抗測定条件>
一次脱水ケーキ170gをカラム内に収容し、圧力を0.32kgf/cm印加した。デジタルメーターでアノード、カソード間の一次脱水ケーキの電気抵抗を測定した。
【0061】
<試験結果>
上記の条件で汚泥の電気浸透脱水処理を行った結果を表1に示す。表1中の電気抵抗は、上記の撹拌条件による撹拌を行い、カラムに収容して上記圧力を加えた直後の値である。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の通り、実施例は比較例と比べ到達含水率を大幅に低下させることができた。一次脱水ケーキを砕いた比較例2でも、比較例1より含水率を2%下げることができる。しかし、実施例1は実施例1より含水率を6%低下させることができた。電気抵抗比は実施例1で0.73(撹拌前の73%)となり、比較例2に比べ電気抵抗が低減している。
【0064】
以上の実施例及び比較例より、本発明によると電気浸透脱水汚泥の含水率が低下することが認められた。
【符号の説明】
【0065】
1 コンベヤベルト
2,3 ローラ
4 陰極
5 ホッパー
6 トレー
8 貯槽
9 ポンプ
21〜25 陽極ユニット
33 陽極板
40 スクリュコンベヤ
43 スクリュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間で被処理含水物を挟み、圧搾しながら両極間に通電して脱水する電気浸透脱水方法において、
被処理含水物を撹拌した後、電気浸透脱水することを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項2】
請求項1において、被処理含水物を一次脱水処理し、この一次脱水処理後の含水物を撹拌した後、電気浸透脱水することを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項3】
請求項2において、電気抵抗が一次脱水処理後の含水物の80%以下となるように撹拌を行うことを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該撹拌手段は、撹拌羽根、モーノポンプ、スクリュ又は土練機であることを特徴とする電気浸透脱水方法。
【請求項5】
対向配置された電極と、
対向する電極間に通電する通電手段と、
対向する電極同士の間に配置された濾材と、
該濾材同士の間又は濾材と一方の電極との間で被処理含水物を挟圧するための挟圧手段と
を有する電気浸透脱水装置において、
該被処理含水物を撹拌する撹拌手段を備えたことを特徴とする電気浸透脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−212525(P2011−212525A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80893(P2010−80893)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】