説明

電気温水器における給湯制御装置

【課題】熱湯が不用意に給湯されることを防止する。
【解決手段】電気温水器10からの湯に水を混合する混合弁21と、混合弁21を介して給湯温度Tを制御する制御回路31とを設け、制御回路31は、給湯温度Tの安全制限値と電気温水器の上部温度、下部温度に基づいて湯と水の最大混合比を算出し、混合弁21の高温側の開度を、この最大混合比に対応する高温側の最大開度に制限しながら、給湯温度Tが設定温度になるように混合弁21を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャワーなどに給湯する給湯温度が過大になることを防止し、高度の安全性を実現することができる電気温水器における給湯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気温水器には、沸き上げた湯に水を混合して給湯する混合弁を組み合わせ、適温の湯をシャワーなどに給湯することがある。
【0003】
混合弁は、制御回路と組み合わされており、制御回路は、混合弁からの給湯温度が、外部から設定する設定温度になるように混合弁を開閉制御する。このときの制御回路は、給湯温度が変動しないように、混合弁を速やかに駆動し、湯と水との混合比を適切に調節することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、電気温水器からの湯は、特に沸上げ後の初回の給湯の際などにおいて大量のエアを含むことがあり、そのときの混合弁は、混合比を安定に調節することができず、思わぬ高温の熱湯を給湯するおそれがあるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、高温の熱湯を不用意にシャワーなどに給湯するおそれがなく、高度の安全性を容易に実現することができる電気温水器における給湯制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、電気温水器からの湯に水を混合して給湯する混合弁と、混合弁を介して給湯温度を制御する制御回路とを備えてなり、制御回路は、混合弁の高温側の開度を給湯温度の安全制限値に基づく高温側の最大開度に制限しながら給湯温度が設定温度になるように温度制御することをその要旨とする。
【0007】
なお、制御回路は、給湯温度の安全制限値に基づいて湯と水との最大混合比を算出し、混合弁の高温側の開度を最大混合比に対応する高温側の最大開度に制限することができる。
【0008】
また、制御回路は、給湯温度の安全制限値と、電気温水器の上部温度、下部温度とに基づいて湯と水との最大混合比を算出し、混合弁の高温側の開度を最大混合比に対応する高温側の最大開度に制限することができる。
【0009】
さらに、制御回路は、給湯停止中の給湯温度が安全制限値より高いことを検出して混合弁を低温側にリセットしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、制御回路は、混合弁の高温側の開度を制限することにより、給湯温度を検出する温度センサが故障しても、混合弁を高温側に過大に駆動することがなく、高温の熱湯が不用意に給湯される事態を有効に防ぎ、高度の安全性を容易に実現することができる。
【0011】
なお、制御回路は、給湯温度が安定するまで混合弁を低速駆動することにより、電気温水器からの湯にエアが混入して混合弁において湯と水との混合比を安定に調節することができないときであっても、給湯温度の変動を小さく抑えることができ、混合弁を介して高温の熱湯がシャワーなどに不用意に給湯されるおそれがない。ただし、制御回路は、前回の給湯終了からたとえば3時間の所定時間以上が経過していないこと、すなわち今回の給湯が電気温水器の沸上げ完了後の最初の給湯動作でないこと、または給湯温度の実測値が安定していることに基づいて給湯温度の安定を検出することができ、給湯温度の安定を検出すると、混合弁を通常の速度により高速駆動する。
【0012】
また、制御回路は、給湯停止中の給湯温度が許容制限値より高いことを検出して混合弁を低温側にリセットすることにより、次回の給湯時に熱湯が出てしまうことを防止することができる。混合弁からの湯を検出する流量センサが故障した場合も全く同様である。なお、制御回路は、次回の給湯時において、混合弁を低温側から高温側に駆動し、給湯温度を円滑に設定温度に一致させることができる。ただし、制御回路は、混合弁の高温側の開度を全閉にし、低温側の開度を全開にすることにより、混合弁を低温側にリセットするものとする。
【0013】
制御回路は、設定温度に許容値を加えて許容制限値を算出することにより、設定温度に従って許容制限値を適切に設定変更することができる。なお、このときの許容値は、たとえば10℃程度に設定するのがよい。
【0014】
また、制御回路は、給湯停止中の給湯温度が安全制限値より高いことを検出して混合弁を低温側にリセットし、次回の給湯時に熱湯が出てしまうことを一層有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】全体ブロック系統図
【図2】混合弁の構成説明図
【図3】動作説明線図
【図4】プログラムフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
電気温水器における給湯制御装置は、電気温水器10に組み合わせる混合弁21と、制御回路31とを備えてなる(図1)。
【0018】
電気温水器10は、タンク11の下部にヒータ12を組み込んで形成されている。タンク11の下部は、減圧弁14を介して水道等の水源Wに接続されており、タンク11の上部は、リリーフ弁16、混合弁21に分岐接続されている。なお、タンク11の側面には、下部温度T1 、上部温度T2 を検出する温度センサ13a、13aが付設されている。
【0019】
混合弁21は、周面に開口部21cを形成する弁体21bをハウジング21aに組み込んで構成されている(図2)。ただし、図2(B)、(C)は、それぞれ同図(A)のX−X線矢視相当の動作説明図である。ハウジング21aには、高温側のポート21a1 、低温側のポート21a2 、給湯側のポート21a3 が形成されており、低温側のポート21a2 には、逆止弁21eが内装されている。弁体21bは、ポート21a1 、21a2 、21a3 の合流部分に回転自在に組み込まれており、ハウジング21aに搭載するたとえばステップモータ形の駆動モータ21dに連結されている。
【0020】
混合弁21は、高温側のポート21a1 が電気温水器10の上部に接続されており(図1、図2)、逆止弁21eを介して低温側のポート21a2 が減圧弁14の出口側に分岐接続されている。また、混合弁21の給湯側のポート21a3 は、蛇口A1 付きの混合水栓A、シャワーB1 用の混合水栓Bの各高温側に分岐接続されており、混合水栓A、Bの低温側は、水源Wに接続されている。なお、混合弁21の給湯側には、給湯側のポート21a3 からの湯の流量Qを検出する流量センサ23、給湯温度Tを検出する温度センサ24が設けられている。
【0021】
制御回路31には、温度センサ13a、13aからのタンク11の下部温度T1 、上部温度T2 が入力され、流量センサ23からの流量Q、温度センサ24からの給湯温度Tが入力されている。また、制御回路31には、混合水栓A、Bの近傍に配設するコントローラ32からの設定温度Ts が併せ入力されており、制御回路31の出力は、混合弁21の駆動モータ21dに接続されている。
【0022】
混合弁21は、駆動モータ21dを介して弁体21bを正逆に回転させることにより、開口部21cを介して低温側のポート21a2 、高温側のポート21a1 を給湯側のポート21a3 に連続的に連通させる(図2)。すなわち、混合弁21は、弁体21bを介し、低温側のポート21a2 を全開にし、高温側のポート21a1 を全閉にして高温側の開度θ=0%を実現し(同図(B))、低温側のポート21a2 を全閉にし、高温側のポート21a1 を全開にして開度θ=100%を実現するまで(同図(C))、高温側の開度θを正逆に連続的に変化させることができる。
【0023】
そこで、混合弁21は、高温側の開度θに従って、電気温水器10からの湯と水源Wからの水とを混合して任意の混合比Mを実現し(図3の曲線Q1 、Q2 …)、任意の給湯温度Tの湯を混合水栓A、Bに給湯することができる。なお、曲線Q1 、Q2 …は、混合弁21からの湯の流量Q=Q1 、Q2 …(ただし、Q1 >Q2 …)により、開度θに対する混合比Mが変化することを示している。
【0024】
制御回路31は、たとえば図4のプログラムフローチャートに従って動作する。
【0025】
電源が投入されると、制御回路31のプログラムが起動し、プログラムは、流量センサ23からの流量Q、温度センサ24からの給湯温度Tと、タンク11の下部温度T1 、上部温度T2 と、コントローラ32からの設定温度Ts とを読み取る(図4のプログラムステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。次に、プログラムは、混合水栓A、Bが全閉であり、流量Q≦Qn であって給湯停止中であることを確認すると(2)、給湯温度Tの許容制限値Tc =Ts +Ta を算出する(9)。ただし、Qn >0は、混合弁21が正常に作動し得る流量Qの最小値であり、Ta は、たとえば10℃程度の許容値である。つづいて、プログラムは、T>Tc またはT>Tm のいずれかの状態がたとえば5秒程度の所定時間以上継続したことにより((10)〜(12))、混合弁21を低温側にリセットして待機する((13)、(1)、(2)…(13))。ただし、Tm は、給湯温度Tの安全制限値であり、Tm ≒60℃に設定するものとする。
【0026】
すなわち、制御回路31は、設定温度Ts に許容値Ta を加えて許容制限値Tc を算出し(9)、給湯停止中の給湯温度Tが許容制限値Tc より高いこと、給湯停止中の給湯温度Tが安全制限値Tm より高いことのいずれかを検出して混合弁21を低温側にリセットし((10)〜(13))、混合弁21を高温側の開度θ=0%に駆動することができる。ただし、図4において、プログラムステップ(10)、(11)は、その実行順序を入れ換えてもよいものとする。
【0027】
混合水栓A、Bの一方または双方が開かれ、混合弁21からの流量Q>Qn になると、プログラムは、給湯が開始されたことを検出し(2)、前回の給湯終了からたとえば3時間の所定時間以上が経過しているか否かを判別する(3)。前回の給湯終了から所定時間以上経過していると(3)、プログラムは、給湯温度Tが十分に安定していない限り(4)、混合弁21の駆動速度を強制的に低速モードにセットする(5)。前回の給湯終了から所定時間以上経過しておらず(3)、または給湯温度Tが十分安定していることが確認されると(4)、プログラムは、混合弁21を通常モードにセットする(6)。なお、制御回路31は、低速モードにおいて、混合弁21の駆動モータ21dの駆動速度を通常モードの数分の1相当、たとえば1/2相当にまで低下させるものとする。
【0028】
つづいて、プログラムは、次の手順に従って混合弁21の高温側の最大開度θm を算出する(7)。すなわち、安全制限値Tm と、タンク11の下部温度T1 、上部温度T2 とに基づいて最大混合比Mm =(Tm −T1 )/(T2 −T1 )を算出し、図3の安全曲線Fに従って、最大混合比Mm に対応する高温側の最大開度θm =f(Mm )を見出す。ただし、図3において、安全曲線Fは、流量Qに拘らず、最大混合比Mm を実現し得る混合弁21の高温側の開度θを十分な安全裕度を見込んでプロットしたものである。なお、最大混合比Mm を算出するに際し、下部温度T1 に代えて、たとえば下部温度T1 の過去数日間の最低値データに基づいて算出される水温Tw を使用してもよい。
【0029】
その後、プログラムは、混合弁21を高温側、低温側に駆動して給湯温度Tが設定温度Ts になるように温度制御する(8)。ただし、このときのプログラムは、混合弁21の高温側の開度θ≦θm に制限するとともに、駆動モータ21dの駆動速度を低速モード、通常モードに従って切り換えるものとする。すなわち、制御回路31は、安全制限値Tm に基づいて混合弁21の高温側の開度θを制限することができる。なお、このときの温度制御は、給湯温度T、設定温度Ts による一般的なクローズドループ制御としてもよいが、混合比M=(Ts −T1 )/(T2 −T1 )を算出し、高温側の開度θ=g(Q、M)を実現するオープンループ制御としてもよい。ただし、θ=g(Q、M)は、図3の曲線Q1 、Q2 …によって示される混合弁21の混合特性である。プログラムは、給湯が継続される限り、プログラムステップ((8)、(1)、(2)…(8))を繰り返す。
【0030】
なお、プログラムは、今回の給湯が前回の給湯終了から所定時間以上経過していないこと(3)、すなわち今回の給湯が沸上げ後の最初の給湯動作でないこと、または給湯温度Tが十分安定していることを条件にして(4)、混合弁21を通常モードに切り換える(6)。ただし、給湯温度Tの安定は、給湯温度Tの実測値により判定する他、給湯開始後、十分な時間が経過したことにより判定してもよい。その後、制御回路31は、混合弁21を高温側または低温側に高速駆動し(8)、給湯温度Tの制御性を向上させることができる。
【0031】
以上の説明において、混合弁21は、図2に示す他、逆止弁21eを内蔵しないものを含む任意の形式を使用することができる。また、流量センサ23は、流量Q>Qn を検出するオンオフセンサであってもよく、このときのプログラムは、プログラムステップ(8)において、クローズドループ制御による温度制御を実行する。なお、図4において、混合弁21を低速モードに設定する条件は、プログラムステップ(3)のみとしてもよい。
【0032】
また、図4において、プログラムステップ(9)〜(13)の全部を削除してもよく、プログラムステップ(3)〜(7)の全部を削除してもよい。また、後者の場合、プログラムステップ(10)、(11)の一方を削除してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、電気温水器からの湯に水を混合して適温の湯を給湯する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
T…給湯温度
Ts …設定温度
Tm …安全制限値
T1 …下部温度
T2 …上部温度
Mm …最大混合比
θ…開度
θm …最大開度
10…電気温水器
21…混合弁
31…制御回路

特許出願人 タカラスタンダード株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気温水器からの湯に水を混合して給湯する混合弁と、該混合弁を介して給湯温度を制御する制御回路とを備えてなり、該制御回路は、前記混合弁の高温側の開度を給湯温度の安全制限値に基づく高温側の最大開度に制限しながら給湯温度が設定温度になるように温度制御することを特徴とする電気温水器における給湯制御装置。
【請求項2】
前記制御回路は、給湯温度の安全制限値に基づいて湯と水との最大混合比を算出し、前記混合弁の高温側の開度を最大混合比に対応する高温側の最大開度に制限することを特徴とする請求項1記載の電気温水器における給湯制御装置。
【請求項3】
前記制御回路は、給湯温度の安全制限値と、電気温水器の上部温度、下部温度とに基づいて湯と水との最大混合比を算出し、前記混合弁の高温側の開度を最大混合比に対応する高温側の最大開度に制限することを特徴とする請求項1記載の電気温水器における給湯制御装置。
【請求項4】
前記制御回路は、給湯停止中の給湯温度が安全制限値より高いことを検出して前記混合弁を低温側にリセットすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の電気温水器における給湯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−293917(P2009−293917A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184046(P2009−184046)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2000−235769(P2000−235769)の分割
【原出願日】平成12年8月3日(2000.8.3)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)
【Fターム(参考)】