説明

電気紡糸方法

重合体繊維を電気紡糸する方法、及び得られた電気紡糸された繊維が開示される。電気紡糸方法において重合体は、電気紡糸処理の前に、そしてその間に、架橋反応を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気紡糸方法に関し、得られた電気紡糸繊維に関し、そして電気紡糸方法に用いられる重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気紡糸の方法は微細な繊維を形成するために電荷を使用する。その方法は、分配用針を有する紡糸口金、シリンジポンプ、電源及びアースされたコレクションデバイスからなっている。溶液での又は溶融物としての重合体はシリンジに置かれ、シリンジポンプにより針先端に送られ、そこでそれらは液滴を形成する。針に電圧を適用したときに、液滴は帯電した液体ジェットに伸ばされる。そのジエットは通常、ナノメートルサイズの大きさの微細な繊維のマットとしてコレクタ上に付着されるまで連続的に細長く伸ばされる。得られた繊維は、防護布、傷包帯のような、そして触媒のための支持体又は担体としてのような広い種々の適用において有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
繊維を形成するために、重合体溶融物又は溶液は、十分な粘度を有しなければならず、そうでなければ液体ジェットよりも液滴が形成される。典型的には、必要な粘度を提供するために重合体溶液又は溶融物に増粘剤を包含させる。しかしながら、増粘剤は、得られた繊維の性質に有害な作用を与える可能性があり、この理由のために、それらの使用は最少であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、紡糸口金とアース源(ground source)との間の電界の存在下に、重合体の電気的に伝導性(電導性)の溶液から繊維を電気紡糸する方法を提供する。重合体は電気紡糸処理の前に及びその間に架橋反応を受けて、繊維形成を可能にする重合体溶液の粘度上昇を生じ、そして増粘剤の使用を最少にする。
【0005】
本発明はまた、シラン、好ましくはカルボキシル及びヒドロキシル基、そして随意的にアミン又はアミド基のような窒素含有基を含有する、得られた電気紡糸繊維を提供する。シラン基は、架橋又は粘度上昇を提供する。カルボキシル、ヒドロキシル、アミン及びアミド基は、水素結合及び粘度上昇を提供する。カルボン酸の形でのカルボキシル基及び窒素含有基は良好な電荷輸送基である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】基本的な電気紡糸システムを示す。
【図2】不織マットの走査電子顕微鏡(SCM)画像をシミュレートしている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な記載
以下の詳細な記載の目的のために、本発明は他のように表現的に特定する以外は、種々の別の変更及び工程順序を想定することができることが理解されるべきである。さらに、いずれかの操作例において以外、又は他のように示す場合以外は、全ての数の表現、例えば本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量は、“約”と言う用語により、あらゆる場合において修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、他のように示されないかぎり、以下の本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により得られるべき所望の性質に依存して変化させることができる概数である。少なくとも、そして特許請求の範囲の範囲に均等の教義の適用を制限するための試みとしてではなく、各々の数値パラメータは報告された有効数字の桁数から考えて、そして通常の四捨五入の適用により少なくとも解釈されるべきである。本発明の広い範囲を記載している数値範囲及びパラメータは概数であるにもかかわらず、特定例に記載されている数値はできる限り正確に報告されている。しかしながら、どの数値も、それらのそれぞれの試験測定において見い出される標準の変動値から必ず生ずる或る誤差を本来的に含有する。
【0008】
また、本明細書に挙げられたどの数値範囲も、そこに含まれるすべての準範囲(サブレンジ)を包含することが意図されることが理解されるべきである。例えば“1〜10”の範囲は、挙げられた1の最小値と、挙げられた10の最大値との間の(及びそれら両値を包含する)すべての準範囲、即ち1に等しいか又は1より大の最小値及び10に等しいか又は10未満の最大値を有するすべての準範囲を包含することを意図する。
【0009】
この出願において、他のように特定的に述べない限り、単数の使用は複数を包含し、複数の使用は単数を包含する。また、この出願において“及び/又は”を、或る場合において明白に使用することができるけれども、“又は”の使用は他のように特定的に述べない限り、“及び/又は”を意味する。
【0010】
“重合体”という用語はまた、共重合体及びオリゴマーを包含することを意味する。“アクリル”と言う用語はメタクリルを包含することを意味し、そして(メタ)アクリルにより表現される。
【0011】
図1に関して、電気紡糸システムは、3つの主要な構成部分、電源1、紡糸口金3、電気的にアースされたコレクタ4からなる。直流又は交流を、電気紡糸法において使用することができる。重合体溶液5をシリンジ7中に含有させる。シリンジポンプ9は制御された速度で溶液を紡糸口金3中に押し通す。溶液の液滴は、針11の先端で形成する。典型的には5〜30キロボルト(kV)の電圧の印加の際、液滴は帯電される。したがって、液滴は表面電荷と外部電界により発揮された力との間で静電気反発作用を受ける。これらの電気力は、液滴をねじ曲げ、そして重合体溶液の表面張力に究極的には打ち勝って、針11の先端からの液体ジェット13の噴出を生ずる。その帯電の故に、アースされたコレクタ4にそのジェットは引き降ろされる。コレクタ4に向かってのその走行中、ジェット13は微細な繊維の形成に導く延伸作用を受ける。帯電した繊維は、図2において一般に示されるように、ランダムに配向された不織マットとしてコレクタ4上に付着される。
【0012】
本発明の重合体はアクリル重合体であることができる。本明細書において用いられるものとして“アクリル”重合体と言う用語は、1種以上のエチレン不飽和重合可能な材料の重合を生ずる当業者に周知の重合体を称する。本発明において使用するために適当である(メタ)アクリル重合体は、当業者により理解されているような任意の広い種々の方法により調製されることができる。(メタ)アクリル重合体は、シラン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、及び随意的に窒素含有基を含有する不飽和の重合可能な材料の付加重合により形成されることができる。シラン基の例は、限定なしに、構造Si−Xn(但し、nは1〜3の範囲の値を有する整数であり、そしてXは塩素、アルコキシエステル及び/又はアシルオキシエステルから選ばれる)を有する基を包含する。そのような基は、空気中の水分を包含する水の存在下に加水分解してシラノール基を形成し、これは縮合して−Si−O−Si−基を形成する。
【0013】
そのような(メタ)アクリル重合体を調製するのに使用するために適当であるシラン含有エチレン不飽和の重合可能な材料の例は、限定なしに、エチレン不飽和アルコキシシラン及びエチレン不飽和アシルオキシシランを包含し、そのさらに特定的な例は、ビニルトリメトキシシランのようなビニルシラン、ガンマ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びガンマ−アクリルオキシプロピルトリエトキシシランのようなアクリラトアルコキシシラン;及びガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン及びガンマ−メタクリルオキシプロピルトリス−(2−メトキシエトキシ)シランのようなメタクリラトアルコキシシラン;例えば、アクリラトプロピルトリアセトキシシラン及びメタクリラトプロピルトリアセトキシシランのようなアクリラトアセトキシシラン、メタクリラトアセトキシシラン、及びエチレン不飽和アセトキシシランを含むアシルオキシシランを包含する。或る態様において、付加重合の際、得られた加水分解可能なシリル基のSi原子が重合体の主鎖から少なくとも2個の原子により分離されている(メタ)アクリル重合体を生ずる単量体を使用することが望ましいだろう。好ましい単量体は、アルキル基が2〜3個の炭素原子を含有し、そしてアルコキシ基が1〜2個の炭素原子を含有する、(メタ)アクリルオキシアルキルポリアルコキシシラン、特に(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシランである。
【0014】
或る態様において、合計の単量体混合物において用いられるシラン含有エチレン不飽和重合可能な材料の量は、(メタ)アクリル重合体を調製するのに用いられる合計単量体組み合わせの重量に基づいて、0.2〜20重量パーセント、好ましくは5〜10重量パーセントの珪素を含有するシラン基を含む(メタ)アクリル重合体の生成を生ずるように選ばれる。
【0015】
本発明において使用するために適当な(メタ)アクリル重合体は、1種以上の上記シラン含有エチレン不飽和重合可能な材料、そして好ましくはカルボン酸基又はその無水物のようなカルボキシルを含むエチレン不飽和重合可能な材料の反応生成物であることができる。適当なエチレン不飽和酸及び/又はその無水物の例は、限定なしに、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸スルホエチルのようなエチレン不飽和スルホン酸及び/又は無水物、及び1つのカルボキシル基がアルコールでエステル化されているマレイン酸水素ブチル及びフマル酸水素エチルのようなマレイン酸及びフマル酸の半エステルを包含する。
【0016】
カルボキシル官能性を導入するための他の重合可能なエチレン不飽和単量体の例はアルキル基に1〜12個の炭素原子を含有し、そしてアリール基に6〜12個の炭素原子を含有する、シクロアルキルを包含するアルキル及びアリール(メタ)アクリレートである。そのような単量体の特定の例は、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート及びフェニルメタクリレートを包含する。
【0017】
重合可能なカルボキシル−含有エチレン不飽和単量体の量は、(メタ)アクリル重合体を調製するために用いられる合計単量体組み合わせの重量に基づいて、55重量パーセントまで、好ましくは15.0〜45.0重量%のカルボキシル含有量を提供するのに十分であるのが好ましい。好ましくは、カルボキシル基の少なくとも一部分は、重合体の酸価が100%樹脂固体基準について20〜80の範囲内、好ましくは30〜70の範囲内であるようにカルボン酸から誘導される。
【0018】
本発明において用いられる(メタ)アクリル重合体はまた、ヒドロキシル官能性エチレン不飽和重合可能な単量体を用いることにより典型的に達成されるヒドロキシル官能性を含有する。そのような材料の例は、ヒドロキシアルキル基において2〜4個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを包含する。特定の例は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを包含する。ヒドロキシ官能性エチレン不飽和単量体の量は、(メタ)アクリル重合体を調製するために用いられる合計単量体組み合わせの重量に基づいて0.5〜6.5重量パーセント、好ましくは1〜4重量パーセントのような6.5重量パーセントまでのヒドロキシル含有量を提供するのに十分な量である。
【0019】
(メタ)アクリル重合体は、窒素−含有エチレン不飽和単量体から導入された窒素官能性を随意的に含有する。窒素官能性の例は、アミン、アミド、尿素、イミダゾール及びピロリドンである。適当なN−含有エチレン不飽和単量体の例は、限定なしに、p−ジメチルアミノエチルスチレン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを包含するアミノ−官能性エチレン不飽和重合可能な材料;アクリルアミド、メタクリルアミド、n−メチルアクリルアミド及びn−エチル(メタ)アクリルアミドを包含するアミド−官能性エチレン不飽和材料;メタクリルアミドエチルエチレン尿素を包含する尿素官能性エチレン不飽和単量体である。
【0020】
使用される場合、窒素−含有エチレン不飽和単量体の量は、(メタ)アクリル重合体を調製するのに用いられる合計単量体組み合わせの重量に基づいて0.2〜5.0重量パーセント、好ましくは0.4〜2.5重量パーセントのような5重量パーセントまでの窒素含有量を提供するために十分な量である。
【0021】
上記重合可能な単量体の他に、他の重合可能なエチレン不飽和単量体を、(メタ)アクリル重合体を調製するために使用できる。そのような単量体の例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートのようなポリ(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエン及びアルファ−メチルスチレンのような芳香族ビニル単量体;モノオレフィン及びジオレフィン炭化水素、有機酸及び無機酸の不飽和エステル、及び不飽和酸のエステル及びニトリルを包含する。そのような単量体の例は、1,3−ブタジェン、アクリロニトリル、酪酸ビニル、酢酸ビニル、塩化アリル、ジビニルベンゼン、イタコン酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、ならびにそれらの混合物を包含する。存在する場合、ポリアクリレートのような多官能性単量体は、典型的には20重量パーセントまでの量で使用される。存在する場合、単官能性単量体は、70重量パーセントまでの量で使用され、そのパーセンテージは(メタ)アクリル重合体を調製するために使用される合計単量体組み合わせの重量に基づいている。
【0022】
(メタ)アクリル重合体は、α,α’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド及びt−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートのような過酸化物;過酢酸t−ブチル;過安息香酸t−ブチル、過炭酸イソプロピル;ペルオキシ炭酸ブチルイソプロピル;及び同様な化合物のような重合開始剤の存在下にエチレン不飽和重合可能な単量体の溶液重合により、典型的に形成される。使用される開始剤の量はかなり変化させることができる;しかしながら、殆どの場合、使用される共重合可能な単量体の合計重量に基づいて0.1〜10重量パーセントの開始剤を使用することが望ましい。連鎖調整剤又は連鎖移動剤を重合混合物に加えることができる。ドデシルメルカプタン、第三級メルカプタン、オクチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンのようなメルカプタン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプトアルキルトリアルコキシシランならびにシクロペンタジェン、酢酸アリル、カルバミン酸アリル及びメルカプトエタノールのような他の連鎖移動剤をこの目的のために使用できる。
【0023】
アクリル重合体の調製ための単量体の混合物についての重合反応は、例えば米国特許第2,978,437号、同第3,079,434号及び同第3,307,963号に詳細に例示されているような付加重合体業界に周知である慣用の溶液重合法を用いて、有機溶媒媒体中で行われることができる。単量体の重合において使用できる有機溶媒は、例えばアルコール、ケトン、芳香族炭化水素又はそれらの混合物のような、アクリル又はビニル重合体を調製するにあたってしばしば使用される実質的に任意の有機溶媒を包含する。使用できる上記タイプの有機溶媒の例示はエタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールを包含する2〜4個の炭素原子を含有する低級アルカノールのようなアルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジプロピレングリコールモノエチルエーテルのようなエーテルアルコール;メチルエチルケトン、メチルn−ブチルケトン及びメチルイソブチルケトンのようなケトン;酢酸ブチルのようなエステル;及びキシレン、トルエン及びナフサのような芳香族炭化水素である。
【0024】
或る態様において、エチレン不飽和成分の重合は、50℃〜150℃、又は或る場合において、80℃〜120℃のような0℃〜150℃で行われる。
【0025】
上記のようにして造られた重合体は通常、溶媒中に溶解され、そして典型的には合計溶液重量に基づいて約15〜80重量パーセント、好ましくは20〜60重量パーセントの樹脂固形分含有量を有する。重合体の分子量は、ポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたとき、典型的には、3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜100,000の範囲である。
【0026】
電気紡糸適用のために、上記のような重合体溶液を水と混合して架橋反応を開始させ、そして繊維形成のために必要な粘度に上昇させることができる。典型的には約5〜20重量パーセント、好ましくは10〜15重量パーセントの水を、該重合体溶液に加え、その重量によるパーセンテージは重合体溶液と水との合計重量に基づいている。架橋反応を触媒作用をさせるために、好ましくは水溶性有機アミンのような塩基を、該水−重合体溶液に加える。その粘弾性挙動を良好に制御するために電気紡糸用配合物に、随意的にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド及び/又はセルロース増粘剤のような増粘剤を加えることができる。使用する場合、増粘剤は、重合体溶液の重量に基づいて20重量パーセント以下、典型的には1〜6重量パーセントの量で存在する。
【0027】
上記のようにして調製された電気紡糸用配合物は次に、架橋反応に粘度を上昇させることを可能にするために貯蔵される。粘度が十分に高いがしかしゲルに達していないとき、配合物を上記のような電気紡糸法に付する。
【0028】
電気紡糸方法のために、典型的に粘度は、好ましくは50〜250センチストークの範囲内であるような少なくとも5センチストークであって且つ2,000センチストーク未満、通常は1,000センチストーク未満である。ASTMD−1544に従う泡粘度計で粘度を測定する。電気紡糸用配合物を貯蔵する時間は温度、架橋官能性及び触媒のような多くの要因により左右されるだろう。典型的には2時間までであって1分ほどのような低い時間貯蔵されるであろう。
【0029】
電気紡糸法に付す場合、上記配合物は典型的には5〜5,000ナノメートルのような、5,000ナノメートルまでの直径、さらに典型的には50〜700ナノメートルのような50〜1,200ナノメートルの範囲内の直径を有する繊維を生成する。それらの繊維はまた、リボン形状を有することができ、そしてこの場合において直径は繊維の最大の寸法を意味することが意図される。典型的にはリボン形状繊維の幅は、500〜5000ナノメートルのような5000ナノメートルまで、そして5〜200ナノメートルのような200ナノメートルまでの厚さである。
【実施例】
【0030】
以下の例は、本発明の一般的な原理を示すために提供される。しかしながら、本発明は提供された特定の例に限定されるものとして考えられるべきでない。全ての部は他のように示されない限り重量による。
【0031】
例A、B及びC
アクリルシラン重合体の合成
下記の表1においての例A〜Cの各々について、反応フラスコはかき混ぜ機、熱電対、窒素入口及びコンデンサを備えていた。次に仕込み物Aを加え、そして窒素雰囲気下に還流温度(75℃〜80℃)に加熱しながらかき混ぜた。還流しているエタノールに、仕込み物B及び仕込み物Cを、3時間にわたって同時に加えた。反応混合物を2時間還流条件に維持した。次に、仕込み物Dを30分の期間にわたって加えた。反応混合物を2時間還流条件に維持し、次に30℃に冷却した。
【0032】
【表1】


1 アーチェル ダニエル ミッドランド カンパニー(Archer Daniel Midland Co.)から市販の変性エチルアルコール、200標準強度。
2 GEシリコーンから市販のガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン。
3 サルトマー(Sartomer)カンパニー インコーポレーテッドから市販のジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート。
4 イー.アイ.デュポン ド ネモラス&カンパニー インコーポレーテッドから市販の2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)。
5 可溶性部分のMn;重合体は、テトラヒドロフランに完全には溶解性ではない。
【0033】
例1、2及び3
アクリル−シランナノ繊維
例 1
例Cからのアクリル−シラン樹脂溶液(8.5グラム)を、ポリビニルピロリドン(0.2グラム)及び水(1.5グラム)とブレンドした。
配合物を215分間、室温で貯蔵した。得られた配合物の一部分を10mlシリンジに装入し、そしてシリンジポンプを介して1.6ミリリットル/時間の速度で紡糸口金(1/16インチ外径及び0.010インチ内径のステンレススチール管)に送り出す。約21kV電位を適用した高電圧源を介して、アースしているアルミニウムコレクタにこの管を接続した。送り出し管及びコレクタを箱の中に入れ、窒素パージさせて、25パーセント未満の相対湿度を維持した。約100〜200ナノメートルの厚さ及び500〜700ナノメートルの幅を有するリボン形状ナノ繊維を、アースされたアルミニウムパネル上に集め、そして光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡により特徴づけた。
【0034】
例 2
例Bからのアクリル−シラン樹脂溶液(8.5グラム)を、ポリビニルピロリドン(0.1グラム)及び水(1.5グラム)とブレンドした。その配合物を、210分間室温で貯蔵した。得られた溶液の一部分を10mlシリンジに装入し、そしてシリンジポンプを介して、0.2ミリリットル/時間の速度で例1の紡糸口金に送った。電気紡糸のための条件は、例1に記載されたとおりであった。100〜200ナノメートルの厚さ及び900〜1200ナノメートルの幅を有するリボン形状ナノ繊維を、アースされたアルミニウムホイル上に集め、そして光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡により特徴づけた。
【0035】
例 3
例Aからのアクリル−シラン樹脂(8.5グラム)を、ポリビニルピロリドン(0.1グラム)及び水(1.5グラム)とブレンドした。その配合物を225分間室温で貯蔵した。得られた溶液の一部分を10mlシリンジに装入し、そして1.6ミリリットル/時間の速度でシリンジポンプを介して、例1において記載されたような紡糸口金に送った。電気紡糸のための条件は例1において記載されたとおりであった。100〜200ナノメートルの厚さ及び1200〜5000ナノメートルの幅を有するリボン形状ナノ繊維を、アースされたアルミニウムホイル上に集め、そして光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡により特徴づけた。ナノ繊維のサンプルを2時間110℃でオーブン中で乾燥させた。測定可能な重量損失は観察されなかった。このことはナノ繊維が完全に架橋されたことを示す。
【0036】
この発明の特定の態様が、例示の目的のために上に記載された事実から見れば、特許請求の範囲に規定された本発明から離れることなしに、本発明の詳細の多くの変更がなされることができることは当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸口金とアース源(ground source)との間の電界の存在下に重合体の電導性溶液から繊維を電気紡糸する方法であって、該重合体が電気紡糸の前に及び電気紡糸の間に架橋反応を受ける、上記方法。
【請求項2】
重合体が、重合体主鎖に沿って架橋可能な基を含有する、請求項1の方法。
【請求項3】
架橋可能な基が水分と反応性である、請求項2の方法。
【請求項4】
架橋可能な基がシラン基である、請求項3の方法。
【請求項5】
重合体が(メタ)アクリル重合体である、請求項2の方法。
【請求項6】
重合体が、シラン基を含有する(メタ)アクリル重合体である、請求項2の方法。
【請求項7】
重合体が、架橋可能な基を含有する他に、カルボキシル及びヒドロキシルから選ばれた基をまた含有する、請求項2の方法。
【請求項8】
重合体が、シラン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及び窒素−含有基を含有する、請求項2の方法。
【請求項9】
シラン基が、合計重合体重量に基づいて0.2〜20重量パーセントの珪素の量で重合体中に存在する、請求項2の方法。
【請求項10】
重合体が、合計重合体重量に基づく重量によるパーセンテージで、
(a)珪素として測定して0.2〜20パーセントのシラン基、
(b)1〜45パーセントのカルボキシル基、
(c)0.5〜6.5パーセントのヒドロキシル基、及び
(d)0.2〜5.0パーセントの窒素基、
を含有する、請求項8の方法。
【請求項11】
溶液が増粘剤を含有する、請求項1の方法。
【請求項12】
増粘剤がポリビニルピロリドンである、請求項11の方法。
【請求項13】
ポリビニルピロリドンが、溶液の合計の重量に基づいて20重量パーセント以下の量で存在する、請求項12の方法。
【請求項14】
電気紡糸処理の前及びその間に架橋された重合体を含む、電気紡糸された繊維。
【請求項15】
5〜5,000ナノメートルの直径を有する、請求項14の電気紡糸された繊維。
【請求項16】
−Si−O−Si−架橋を有する、請求項14の電気紡糸された繊維。
【請求項17】
架橋された(メタ)アクリル重合体である請求項14の電気紡糸された繊維。
【請求項18】
−Si−O−Si−架橋を有する(メタ)アクリル重合体である、請求項14の電気紡糸された繊維。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−512472(P2010−512472A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541448(P2009−541448)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/084381
【国際公開番号】WO2008/073662
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】