説明

電気絶縁型スイッチング素子駆動装置

【課題】駆動信号の伝達抜けを抑制すること。
【解決手段】第1及び第2のパルストランス、所定のデューティ比をもったデューティ信号を生成するデューティ信号生成手段、スイッチング素子駆動信号及びデューティ信号が入力され、スイッチング素子駆動信号の状態により選択される第1又は第2のパルストランスをデューティ信号に応じて駆動するパルストランス駆動手段、第1及び第2のパルストランスの出力を整流した電力によって作動する第1及び第2のエッジ検出手段及び制御駆動手段であって、第1のパルストランスの整流前出力におけるエッジに応じたオンオフ信号を出力する第1のエッジ検出手段、第2のパルストランスの整流前出力におけるエッジに応じたオンオフ信号を出力する第2のエッジ検出手段、及び第1及び第2のエッジ検出手段の出力に基づいて駆動対象スイッチング素子を駆動する制御駆動手段、を備える電気絶縁型スイッチング素子駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルストランスを介して電力及び信号を一次側から二次側に伝達し、二次側において伝達された信号に基づいてスイッチング素子を駆動する電気絶縁型スイッチング素子駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デューティ比制御されたパルスから成る制御信号を発生する制御回路と、制御信号を分周して互いに高レベル期間と低レベル期間とが交互に配された第1、第2の制御信号を出力する分周回路と、パルストランスとこのパルストランスに発生する逆起電圧をクランプするクランプ回路とにより構成され、第1の制御信号に同期して動作することにより第1の駆動信号を発生する第1の駆動回路と、パルストランスとこのパルストランスに発生する逆起電圧をクランプするクランプ回路とにより構成され、第2の制御信号に同期して動作することにより第1の駆動信号とは高レベル期間と低レベル期間とが交互に配された第2の駆動信号を発生する第2の駆動回路と、第1の駆動信号と上記第2の駆動信号とを合成した信号をスイッチング素子を駆動する駆動信号と成す合成回路とを備えたスイッチング素子駆動回路についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−307653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の回路においては、パルストランスを介して伝達された、必ずしも正確な矩形波とはなっていない駆動信号を用いてスイッチング素子の駆動を行なっているため、駆動信号の伝達抜けを生じる場合がある。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、駆動信号の伝達抜けを抑制することが可能な電気絶縁型スイッチング素子駆動装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
第1及び第2のパルストランスと、
所定のデューティ比をもったデューティ信号を生成するデューティ信号生成手段と、
スイッチング素子駆動信号及び前記デューティ信号が入力され、前記スイッチング素子駆動信号の状態により選択される前記第1又は第2のパルストランスを前記デューティ信号に応じて駆動するパルストランス駆動手段と、
前記第1及び第2のパルストランスの出力を整流した電力によって作動する第1及び第2のエッジ検出手段、及び制御駆動手段であって、前記第1のパルストランスの整流前出力におけるエッジに応じたオンオフ信号を出力する第1のエッジ検出手段、前記第2のパルストランスの整流前出力におけるエッジに応じたオンオフ信号を出力する第2のエッジ検出手段、及び前記第1及び第2のエッジ検出手段の出力に基づいて駆動対象スイッチング素子を駆動する制御駆動手段と、
を備える電気絶縁型スイッチング素子駆動装置である。
【0006】
この本発明の一態様によれば、パルストランスから出力された、必ずしも正確な矩形波となっていない電圧信号を、駆動制御に適した状態で再生することができる。従って、スイッチング素子駆動信号の伝達抜けを抑制することができる。
【0007】
本発明の一態様において、
前記パルストランス駆動手段は、
前記デューティ信号がHi状態のときに、前記第1又は第2のパルストランスに接続された第1又は第2のスイッチング素子をオン状態とするように構成され、
前記第1又は第2のパルストランスを駆動開始する際に前記デューティ信号がLow状態であるときに、前記第1又は第2のスイッチング素子を一時的にオン状態とするための一時パルス信号を出力する一時パルス信号発生手段を有することを特徴とするものとしてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様において、
前記制御駆動手段は、前記駆動対象スイッチング素子をオフ状態としてから所定時間経過後に、基準電位と駆動対象スイッチング素子の駆動端子の間をより低インピーダンス化するものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様において、
前記駆動対象スイッチング素子における異常状態を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により検出された異常状態を示す信号を、前記第1及び第2のパルストランスのうち駆動されていない方のパルストランスを介して出力する異常状態伝達手段と、
を備えるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動信号の伝達抜けを抑制することが可能な電気絶縁型スイッチング素子駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0012】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1について説明する。電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1は、パルストランスを介して電力及び信号を一次側から二次側に伝達し、二次側において伝達された信号に基づいてスイッチング素子を駆動する装置である。
【0013】
図1は、本発明の第1実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1の構成例である。
【0014】
(一次側)
電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1は、一次側の構成要素として、デューティ信号生成回路10と、パルストランス駆動信号生成回路12と、第1のスイッチング素子14と、第2のスイッチング素子16と、電源18とを有する。
【0015】
デューティ信号生成回路10は、例えば50%のデューティ比をもった電圧信号(デューティ信号)をパルストランス駆動信号生成回路12に出力する。
【0016】
パルストランス駆動信号生成回路12には、デューティ信号の他、二次側の駆動対象スイッチング素子60を駆動するための信号である、スイッチング素子駆動信号が入力される。図2は、本発明の第1実施例に係るパルストランス駆動信号生成回路12の構成例である。パルストランス駆動信号生成回路12は、例えばスイッチング素子駆動信号とデューティ信号を入力とするアンドゲート12Aと、反転ゲート12Bにより反転されたスイッチング素子駆動信号とデューティ信号を入力とするアンドゲート12Cとを有する。アンドゲート12Aの出力は第1のスイッチング素子14に、アンドゲート12Cの出力は第2のスイッチング素子16に、それぞれ出力される。
【0017】
図3は、このような構成において、入力されるスイッチング素子駆動信号(図中(A))、及びデューティ信号(図中(B))、第1のスイッチング素子14に出力される電圧信号(図中(C))、第2のスイッチング素子16に出力される電圧信号(図中(D))の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【0018】
第1のスイッチング素子14、及び第2のスイッチング素子16は、Nチャネルトランジスタである。第1のスイッチング素子14は、入力された電圧信号が閾値を超えてオン状態となったときに電源18と第1のパルストランス20の一次側巻線を導通させる。また、第2のスイッチング素子14は、入力された電圧信号が閾値を超えてオン状態となったときに電源18と第2のパルストランス22の一次側巻線を導通させる。
【0019】
係る構成及び動作によって、各パルストランスが飽和状態となるのを回避することができ、二次側への継続的な電力供給が可能となる。また、駆動対象スイッチング素子60の制御におけるデューティ比に特段の制限が生じないため(0[%]〜100[%]まで可能である)、制御自由度が高いものとなっている。更に、デューティ信号生成回路10が単独でよいため装置の規模や消費電流を抑制することができ、発信周波数が単独であるためノイズ対策が容易となる。
【0020】
(二次側)
次に、電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1が有する二次側の構成要素について説明する。電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1は、二次側の構成要素として、ダイオード30、32と、コンデンサ34と、第1のエッジ検出回路40と、第2のエッジ検出回路42と、制御駆動回路44と、を有する。
【0021】
ダイオード30及びコンデンサ34は、第1のパルストランス20の二次側巻線の出力を整流して負荷側に出力する。また、ダイオード32及びコンデンサ34は、第2のパルストランス22の二次側巻線の出力を整流して負荷側に出力する。第1のエッジ検出回路40、第2のエッジ検出回路42、及び制御駆動回路44は、これらによって整流された電力を供給されて作動する。そして、第1のエッジ検出回路40には第1のパルストランス20の二次側巻線の整流前出力が、第2のエッジ検出回路42には第2のパルストランス22の二次側巻線の整流前出力が、それぞれ電圧信号として入力される。
【0022】
図4は、第1のエッジ検出回路40の構成例である。第1のエッジ検出回路40は、例えばコンデンサ40Aと、抵抗40Bと、基準電圧発生器40Cと、Nチャネルトランジスタ40Dと、反転ゲート40Eと、を有する。なお、第2のエッジ検出回路42は、これと同一の構成であってよい。
【0023】
ここで、コンデンサ40A及び抵抗40Bがハイパスフィルタとして機能するため、入力された電圧信号のエッジ(立ち上がり及び立ち下がり)に応じた電圧(立ち上がりには高い電圧、立ち下がりには低い電圧)が短時間の間、Nチャネルトランジスタ40Dに印加される。Nチャネルトランジスタ40Dがオン状態となると反転ゲート40Eに入力される電圧信号は低くなり(以下、電圧信号がLow状態と称する)、Nチャネルトランジスタ40Dがオフ状態となると反転ゲート40Eに入力される電圧信号は高くなる(以下、電圧信号がHi状態と称する)。従って、第1のエッジ検出回路40に入力された電圧信号の立ち上がり時にのみNチャネルトランジスタ40Dがオン状態となり、その時に反転ゲート40Eに入力される電圧信号がLow状態となり、最終的に出力される電圧信号がHi状態となる。これによって、第1のエッジ検出回路40は、入力された電圧信号の立ち上がり時においてHi状態の電圧信号を出力することとなる。
【0024】
図5は、制御駆動回路44の構成例である。制御駆動回路44は、例えばフリップフロップ44Aと、反転ゲート44Bと、Pチャネルトランジスタ44Cと、Nチャネルトランジスタ44Dと、抵抗44Eと、を有する。
【0025】
フリップフロップ44AのS(Set)端子には第1のエッジ検出回路40の出力が、フリップフロップ44AのR(Reset)端子には第2のエッジ検出回路42の出力が、それぞれ入力される。
【0026】
ここで、第2のエッジ検出回路42の出力がLow状態で第1のエッジ検出回路40の出力がHi状態となったタイミングから、第1のエッジ検出回路40の出力がLow状態で第2のエッジ検出回路42の出力がHi状態となったタイミングまでの時間では、反転ゲート44BにHi状態の電圧信号が出力される。また、これ以外の時間では、反転ゲート44BにLow状態の電圧信号が出力される。従って、反転ゲート44Bに出力される信号は、一次側に入力されたスイッチング素子駆動信号を再生したものとなる。
【0027】
そして、反転ゲート44Bによって反転された電圧信号は、Pチャネルトランジスタ44C及びNチャネルトランジスタ44Dによって再度反転され、抵抗44Eを介して駆動対象スイッチング素子60のゲートに印加される。これによって、一次側に入力されたスイッチング素子駆動信号に基づいて駆動対象スイッチング素子60が駆動される。駆動対象スイッチング素子60は、例えばIGBTやパワーMOSFETである。
【0028】
なお、図1において駆動対象スイッチング素子60に併記されたスイッチング素子は、電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1の全部又は一部と駆動対象スイッチング素子60のセットが並列に複数個用いられてインバータとして機能する場合のイメージを表したものである。また、これに限らず、1セットでコンバータとして機能するものとしてもよい。
【0029】
係る構成によって、パルストランスから出力された、必ずしも正確な矩形波となっていない電圧信号を、駆動制御に適した状態で再生することができる。各エッジ検出回路の出力信号はオンオフ信号、すなわち矩形波の電圧信号となるからである。従って、スイッチング素子駆動信号の伝達抜けを抑制することができる。
【0030】
本実施例の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1によれば、スイッチング素子駆動信号の伝達抜けを抑制することができる。
【0031】
<第2実施例>
以下、本発明の第2実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置について説明する。本実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置は、第1実施例のパルストランス駆動信号生成回路12に、パルストランス駆動開始時の遅延を防止するための構成を追加したものである。従って、ここでは、パルストランス駆動信号生成回路12についてのみ説明する。
【0032】
まず、パルストランス駆動開始時の遅延について説明する。第1実施例の如き装置においては、スイッチング素子駆動信号とデューティ信号の位相の組み合わせによって、パルストランスの駆動開始が遅延する場合がある。図6は、係る現象を説明するための説明図である。図示する如く、いずれかのパルストランスを駆動開始する際(スイッチング素子駆動信号が立ち上がる際、又は立ち下がる際)に、デューティ信号がLow状態であると、次にデューティ信号がHi状態となるまでパルストランスが駆動開始されないという現象が生じる。これによって、パルストランスの駆動開始が最大でデューティ信号の反周期分遅れることとなる。また、駆動対象スイッチング素子60の駆動開始タイミングも、スイッチング素子駆動信号に対して遅れることとなる。
【0033】
図7は、係る課題を改善することが可能な、本発明の第2実施例に係るパルストランス駆動信号生成回路12の構成例である。図示する如く、第2実施例に係るパルストランス駆動信号生成回路12は、第1実施例と共通するアンドゲート12A、反転ゲート12B、及びアンドゲート12Cに加えて、1−shotパルス発生回路12D、及びオアゲート12E、12Fを有する。
【0034】
図8は、1−shotパルス発生回路12Dの構成例である。1−shotパルス発生回路12Dは、バッファゲート12Gと、抵抗12Hと、コンデンサ12Iと、エクスクルーシブオアゲート12Jとを有する。
【0035】
1−shotパルス発生回路12Dに入力されるスイッチング素子駆動信号が立ち上がる際、及び立ち下がる際には、バッファゲート12G、抵抗12H、コンデンサ12Iによって電圧の伝達が遅延することにより、エクスクルーシブオアゲート12Jに入力される2つの電圧信号が一時的に異なるものとなる。これによって、スイッチング素子駆動信号が立ち上がる際、及び立ち下がる際に、短時間の間、Hi状態の電圧信号が1−shotパルス発生回路12Dから出力される。
【0036】
図9は、パルストランス駆動信号生成回路12に1−shotパルス発生回路12Dを加えた場合の、入力されるスイッチング素子駆動信号(図中(A))、及びデューティ信号(図中(B))、1−shotパルス発生回路12Dの出力信号(図中(A#))、第1のスイッチング素子14に出力される電圧信号(図中(C))、第2のスイッチング素子16に出力される電圧信号(図中(D))の時間的変化を示すタイミングチャートである。図示する如く、図6の例ではパルストランスの駆動開始が遅延していたタイミングにおいて、1−shotパルス発生回路12Dの出力信号が、パルストランス駆動信号生成回路12の出力の抜けを埋めることとなるため、スイッチング素子駆動信号の立ち上がり時及び立ち下がり時に、より迅速にパルストランスの駆動を開始することができる。従って、駆動対象スイッチング素子60の制御において、スイッチング素子駆動信号の変化に対するレスポンスを高めることができる。
【0037】
本実施例の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置によれば、第1実施例で説明した効果に加え、パルストランス駆動開始の遅延を防止して、駆動対象スイッチング素子60の制御において、スイッチング素子駆動信号の変化に対するレスポンスを高めることができる。
【0038】
また、本実施例の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置がコンバータとして機能する場合、出力電圧の精度向上、スイッチング周波数の向上、スイッチング素子の小型化及び低コスト化、コンバータ用インダクタの小型化及び低コスト化等を図ることができる。
【0039】
また、本実施例の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置がインバータとして機能する場合、スイッチング周波数の向上等を図ることができる。
【0040】
<第3実施例>
以下、本発明の第3実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置について説明する。本実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置は、第1実施例又は第2実施例における制御駆動回路44を、自己の駆動インピーダンスを変更可能な構成に置換したものである。従って、ここでは、制御駆動回路44についてのみ説明する。
【0041】
図10は、本発明の第3実施例に係る制御駆動回路44の構成例である。図示する如く、第3実施例に係る制御駆動回路44は、第1実施例又は第2実施例と共通するフリップフロップ44A、反転ゲート44B、Pチャネルトランジスタ44C、Nチャネルトランジスタ44D、抵抗44Eに加えて、Nチャネルトランジスタ44F、コンデンサ44G、基準電圧発生器44H、コンパレータ44I、及びSW−Driver44Jを有する。これらの第1実施例又は第2実施例に追加された構成要素は、フリップフロップ44Aの出力端子と制御駆動回路44の出力端子とを接続している。
【0042】
ここで、フリップフロップ44Aの出力がHi状態からLow状態になると、Nチャネルトランジスタ44Fがオフ状態となり、図中U#点の電位が上昇しようとするが、コンデンサ44Gにある程度の電荷が蓄えられるまではコンパレータ44Iの基準電位まで到達しない。従って、これらの構成はタイマーとして機能し、SW−Driver44Jは、フリップフロップ44Aの出力がHi状態からLow状態になってから所定時間経過後にオン状態となる。
【0043】
従って、駆動対象スイッチング素子60をオフ状態としてから(=フリップフロップ44Aの出力がHi状態からLow状態となってから)所定時間経過後に、グランド端子と駆動対象スイッチング素子60のゲート端子の間を、より低インピーダンス化することとなる。
【0044】
一方、フリップフロップ44Aの出力がLow状態からHi状態になると、Nチャネルトランジスタ44Fがオン状態となり、図中U#点がグランド端子と短絡し、その電位が速やかに低下する。
【0045】
図11は、第3実施例において、第1のエッジ検出回路40から入力される信号(図中(F))、第2のエッジ検出回路42から入力される信号(図中(H))、フリップフロップ44Aの出力信号(図中(Q))、Pチャネルトランジスタ44C及びNチャネルトランジスタ44Dからの出力信号(図中(T))、コンパレータ44Iの出力信号(図中(U))、及びSW−Driver44Jの状態の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【0046】
これによって、対向アームの作動による駆動対象スイッチング素子60の誤点弧を防止することができる。すなわち、本実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置の全部又は一部と駆動対象スイッチング素子60のセットが並列に複数個用いられた場合に、並列に接続された他の装置の駆動により駆動対象スイッチング素子60がオン状態となってしまうことを防止することができる。
【0047】
また、駆動対象スイッチング素子60をオフ状態としてから所定時間経過後にグランド端子と駆動対象スイッチング素子60のゲート端子の間をより低インピーダンス化するため、急激な電圧変化によって駆動対象スイッチング素子60等が故障する等の不都合を抑制することができる。
【0048】
本実施例の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置によれば、第1実施例又は第2実施例で説明した効果に加え、急激な電圧変化を回避して駆動対象スイッチング素子60等を保護すると共に、対向アームの作動による駆動対象スイッチング素子60の誤点弧を防止することができる。
【0049】
<第4実施例>
以下、本発明の第4実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置4について説明する。本実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置4は、第1ないし第3実施例の構成に加え、駆動対象スイッチング素子60における異常状態を検出して一次側に伝達するための構成を備えるものである。
【0050】
図12は、本発明の第4実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置4の構成例である。電気絶縁型スイッチング素子駆動装置4は、第1ないし第3実施例の構成に加え、異常検出回路46と、異常情報伝達駆動回路48と、ダイオード30、32の両端を短絡させるためのPチャネルトランジスタ50、52と、負電圧検出回路54と、を備える。
【0051】
図13は、異常情報伝達駆動回路48の構成例である。異常検出回路46は、過電流検出や過熱検出等、周知の異常検出動作を行ない、駆動対象スイッチング素子60が正常な状態であるときにHi状態の電圧信号を出力し、駆動対象スイッチング素子60が異常な状態であるときにLow状態の電圧信号を出力する。異常情報伝達駆動回路48は、例えば、異常検出回路46の出力信号及びフリップフロップ44Aの出力信号が入力されるオアゲート48Aと、異常検出回路46の出力信号及び反転ゲート48Bにより反転されたフリップフロップ44Aの出力信号が入力されるオアゲート48Cと、各オアゲートに出力を伝達するバッファゲート48D、48Eと、を備える。
【0052】
ここで、異常検出回路46の出力信号がLow状態となると、Pチャネルトランジスタ50、52のうち、パルストランスが駆動されていない側のトランジスタがオン状態となる。この結果、駆動されている側のパルストランスから供給されている電力が駆動されていない側のパルストランスを通ってグランド端子に流れることとなり、駆動されていない側のパルストランスの一時側巻線に、通常駆動時とは逆の向きに電力が流れることとなる。
【0053】
これによって、第1のスイッチング素子14又は第2のスイッチング素子16のうちオンオフ制御されていない方のドレイン−ソース間電圧が負電圧に遷移する。この負電圧の大きさは、第1のスイッチング素子14又は第2のスイッチング素子16の寄生ダイオードの順方向電圧Vf(例えば−0.7[V]程度)である。
【0054】
こうして生じた負電圧を負電圧検出回路54によって検出する。図14は、負電圧検出回路54の構成例である。負電圧検出回路54は、例えば各パルストランスの一次側巻線に入力端子が接続され、スイッチング駆動信号によって導通側を選択するアナログスイッチ54Aと、基準電圧発生器54Bと、コンパレータ54Cと、を有する。係る構成によって、駆動対象スイッチング素子60が異常状態である場合に、Hi状態の電圧信号を外部(一次側)に出力する。
【0055】
係る構成によって、二次側の異常を一次側に伝達することが可能となり、各種フェールセーフ処理等を迅速に実行することができる。また、フォトカプラ等の手段を備える場合に比して、コスト抑制や部品の信頼性向上を図ることができる。
【0056】
本実施例の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置4によれば、二次側の異常を一次側に伝達することができる。
【0057】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置1の構成例である。
【図2】本発明の第1実施例に係るパルストランス駆動信号生成回路12の構成例である。
【図3】入力されるスイッチング素子駆動信号、及びデューティ信号、第1のスイッチング素子14に出力される電圧信号、第2のスイッチング素子16に出力される電圧信号の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図4】第1のエッジ検出回路40の構成例である。
【図5】制御駆動回路44の構成例である。
【図6】スイッチング素子駆動信号とデューティ信号の位相の組み合わせによって、パルストランスの駆動開始が遅延するという現象を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2実施例に係るパルストランス駆動信号生成回路12の構成例である。
【図8】1−shotパルス発生回路12Dの構成例である。
【図9】パルストランス駆動信号生成回路12に1−shotパルス発生回路12Dを加えた場合の、入力されるスイッチング素子駆動信号、及びデューティ信号、1−shotパルス発生回路12Dの出力信号、第1のスイッチング素子14に出力される電圧信号、第2のスイッチング素子16に出力される電圧信号の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の第3実施例に係る制御駆動回路44の構成例である。
【図11】第3実施例において、第1のエッジ検出回路40から入力される信号、第2のエッジ検出回路42から入力される信号、フリップフロップ44Aの出力信号、Pチャネルトランジスタ44C及びNチャネルトランジスタ44Dからの出力信号、コンパレータ44Iの出力信号、及びSW−Driver44Jの状態の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の第4実施例に係る電気絶縁型スイッチング素子駆動装置4の構成例である。
【図13】異常情報伝達駆動回路48の構成例である。
【図14】負電圧検出回路54の構成例である。
【符号の説明】
【0060】
1、4 電気絶縁型スイッチング素子駆動装置
10 デューティ信号生成回路
12 パルストランス駆動信号生成回路
12D 1−shotパルス発生回路
14 第1のスイッチング素子
16 第2のスイッチング素子
18 電源
20 第1のパルストランス
22 第2のパルストランス
30、32 ダイオード
34 コンデンサ
40 第1のエッジ検出回路
42 第2のエッジ検出回路
44 制御駆動回路
44F Nチャネルトランジスタ
44G コンデンサ
44H 基準電圧発生器
44I コンパレータ
44J SW−Driver
46 異常検出回路
48 異常情報伝達駆動回路
50、52 Pチャネルトランジスタ
54 負電圧検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のパルストランスと、
所定のデューティ比をもったデューティ信号を生成するデューティ信号生成手段と、
スイッチング素子駆動信号及び前記デューティ信号が入力され、前記スイッチング素子駆動信号の状態により選択される前記第1又は第2のパルストランスを前記デューティ信号に応じて駆動するパルストランス駆動手段と、
前記第1及び第2のパルストランスの出力を整流した電力によって作動する第1及び第2のエッジ検出手段、及び制御駆動手段であって、前記第1のパルストランスの整流前出力におけるエッジに応じたオンオフ信号を出力する第1のエッジ検出手段、前記第2のパルストランスの整流前出力におけるエッジに応じたオンオフ信号を出力する第2のエッジ検出手段、及び前記第1及び第2のエッジ検出手段の出力に基づいて駆動対象スイッチング素子を駆動する制御駆動手段と、
を備える電気絶縁型スイッチング素子駆動装置。
【請求項2】
前記パルストランス駆動手段は、
前記デューティ信号がHi状態のときに、前記第1又は第2のパルストランスに接続された第1又は第2のスイッチング素子をオン状態とするように構成され、
前記第1又は第2のパルストランスを駆動開始する際に前記デューティ信号がLow状態であるときに、前記第1又は第2のスイッチング素子を一時的にオン状態とするための一時パルス信号を出力する一時パルス信号発生手段を有することを特徴とする、
請求項1に記載の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置。
【請求項3】
前記制御駆動手段は、前記駆動対象スイッチング素子をオフ状態としてから所定時間経過後に、基準電位と駆動対象スイッチング素子の駆動端子の間をより低インピーダンス化することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置。
【請求項4】
前記駆動対象スイッチング素子における異常状態を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により検出された異常状態を示す信号を、前記第1及び第2のパルストランスのうち駆動されていない方のパルストランスを介して出力する異常状態伝達手段と、
を備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気絶縁型スイッチング素子駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−130780(P2010−130780A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302464(P2008−302464)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】