説明

電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法

【課題】濃縮排液の量を劇的に低減し、電気脱イオン装置単体でも液利用率が極めて高い電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を提供すること。
【解決手段】脱イオン室、濃縮室及び電極室を有すると共に、一対の電極に電圧を印加することで脱イオン室から脱イオン液を得る電気脱イオン装置において、該濃縮室は、隔膜により2室以上に分割され、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室C1とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室C2により構成され、一次濃縮室C1は脱イオン室Dの陰極側又は陽極側の一方又は両方に配置され、脱イオン室Dと一次濃縮室C1の接合体と、二次濃縮室C2は交互に積層され、一次濃縮室C1を経由する一次濃縮液循環系14と、二次濃縮室C2を経由する二次濃縮液循環系15の2つの濃縮液循環系を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造分野、電力分野、医製薬製造、食品工業などの各種の産業または研究施設において使用される電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気脱イオン装置は、例えば、基本的にはカチオン交換膜とアニオン交換膜で形成される隙間にイオン交換体としてアニオン交換体とカチオン交換体の混合イオン交換体を充填して脱イオン室とし、当該イオン交換体に被処理液を通過させると共に、前記両イオン交換膜を介して被処理液の流れに対して直角方向に直流電流を作用させて、両イオン交換膜の外側に流れている濃縮室中に被処理液中イオンを電気的に排除しながら脱イオン液を製造するものである。
【0003】
従来の電気脱イオン装置は、濃縮室が一室の構造であり、装置単体での濃縮倍率を上げると拡散によって濃縮成分が濃縮室から脱イオン室へイオン交換膜を介して移動して処理水質を悪化させるため、濃縮倍率に上限があった。すなわち、従来の電気脱イオン装置では濃縮倍率は10倍程度のものが一般的であり、装置単体で見たときの液利用率は決して高くはなかった。そのため、処理液と同時に大量の濃縮液が生成した。例えば、処理量1000L/h以上のような大型の電気脱イオン装置からは10倍の濃縮倍率で運転すると110L/h以上もの大量の濃縮液が生成するという問題があった。従来、電気脱イオン装置の液利用率を高める方法としては、電気脱イオン装置の濃縮液を前段に戻す方法、再度別の濃縮装置によって濃縮する方法あるいは電気脱イオン装置を純液製造装置のシステムの一部に組み込み、液利用率を向上させる方法等が知られていた。
【0004】
しかしながら、電気脱イオン装置の濃縮水をさらに別の装置で濃縮する場合、そのための装置の設置スペースが必要になるだけでなく、コストを上昇させる。また、システム全体で液の利用率を高める方法は、前段の装置との運転工程の調整などを行う必要があり、装置の設計や運転操作も複雑になる。特に電気脱イオン装置の前段の装置が複雑であればそれだけ、運転操作も面倒になる。従って、電気脱イオン装置単体で濃縮倍率を高めることができれば、極めて都合がよい。
【0005】
一方、特開2001−976号公報には、電気透析装置の濃縮室を隔膜により2室に分割し、そのうちの陰極側濃縮室に陽極側濃縮室とは異なる供給水を流入、排出させることで濃縮室内での硬度成分の析出、蓄積を防止して脱イオン水を製造する濃縮室を2室に分割した脱イオン水製造装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−976号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2001−976号公報記載の濃縮室を2室に分割した脱イオン水製造装置は、濃縮室を経由する濃縮水循環系を備えることの記載はない。このため、濃縮室内での硬度成分の析出、蓄積を防止し長期間安定して脱イオン性能を維持するものの、濃縮倍率を高め水の利用率を高めるものではない。
【0007】
従って、本発明の目的は、濃縮排液の量を劇的に低減し、電気脱イオン装置単体でも液利用率が極めて高い電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、濃縮室を2室以上に分割した特定構造の電気脱イオン装置において、該一次濃縮室を経由する一次濃縮液循環系と、該二次濃縮室を経由する二次濃縮液循環系の2つの循環系を備えたものとすれば、二次濃縮液循環系からブローされる濃縮排液の量を劇的に低減し、電気脱イオン装置単体でも液利用率が極めて高い運転ができること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、脱イオン室、濃縮室及び電極室を有すると共に、一対の電極に電圧を印加することで脱イオン室から脱イオン液を得る電気脱イオン装置において、該濃縮室は、隔膜により2室以上に分割され、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室により構成され、該一次濃縮室は脱イオン室の陰極側又は陽極側の一方又は両方に配置され、該脱イオン室と該一次濃縮室の接合体と、該二次濃縮室は交互に積層され、該一次濃縮室を経由する一次濃縮液循環系と、該二次濃縮室を経由する二次濃縮液循環系の2つの濃縮液循環系を備えることを特徴とする電気脱イオン装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、脱イオン室、濃縮室及び電極室を有し、該濃縮室は、隔膜により2室以上に分割され、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室により構成され、該一次濃縮室は脱イオン室の陰極側又は陽極側の一方又は両方に配置され、該脱イオン室と該一次濃縮室の接合体と、該二次濃縮室は交互に積層された電気脱イオン装置において、被処理液を脱イオン室に流入させ、一対の電極に電圧を印加することで脱イオン室から脱イオン液を得、二次濃縮室から被処理液の0.0001〜1体積%の濃縮液を循環運転して系外へ排出することを特徴とする電気脱イオン装置の運転方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法によれば、二次濃縮液循環系からブローされる濃縮排液の量を劇的に低減し、電気脱イオン装置単体でも液利用率が極めて高い運転ができる。このため、濃縮液を前段に戻したり、更に濃縮する等の再利用する必要がないため、装置が単純化でき設計し易いものとなる。また、濃縮排液から有価物を効率的に回収することができる。
また、脱イオン室の両側に一次濃縮室が設置される電気脱イオン装置の場合、直接高濃度の濃縮液が脱塩室に拡散することはなく、処理液の水質を低下させることはない。
また、脱イオン室を2つの小脱イオン室に区画させた電気脱イオン装置においては、濃縮室の数を減少させることができ、濃縮室を流れる濃縮液の濃度をより濃厚とすることができる。
また、一次濃縮室にイオン交換体を充填すれば、一次濃縮室の電気抵抗を下げ、印加電圧を低減することができるため、直流電源の運転コストを削減することができる。また、一次濃縮室に脱イオン機能を持たせることができるため、高濃度濃縮を促進する。
また、二次濃縮室にイオン交換体を充填すれば、一次濃縮室と同様に運転コストを削減することができる。また、イオン交換体が二次濃縮室を循環するイオンを吸着する担体としての役割を果たし、高濃度濃縮を促進する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の電気脱イオン装置において、脱塩室としては、公知の電気脱イオン装置における脱塩室と同様のものであり、陽極側がアニオン交換膜で区画され陰極側がカチオン交換膜で区画され被処理液が通液されるイオン交換体が充填された1又は複数の室であり、例えば、特開2001−239270号公報の従来技術欄に記載された従前の電気式脱イオン水製造装置の脱塩室構造、あるいは特開2001−239270号公報記載の陽極側がアニオン交換膜で区画され陰極側がカチオン交換膜で区画され且つ当該アニオン交換膜と当該カチオン交換膜の間に位置する中間イオン交換膜で区画される第1小脱塩室と第2小脱塩室を内包し、被処理水が該第1小脱塩室と該第2小脱塩室にこの順序で直列に通水される1つ又は複数の脱塩室が挙げられる。
【0013】
脱塩室に充填されるイオン交換体としては、カチオン交換体、アニオン交換体及びカチオン交換体とアニオン交換体の混合イオン交換体が挙げられる。これらは脱塩の目的によって適宜決定される。また、イオン交換体の形態としては、特に制限されず、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、特開2002−306976号記載の多孔質イオン交換体が挙げられる。脱塩室のSVは、通常50〜500/h、好ましくは100〜400/hである。
【0014】
本発明の電気脱イオン装置において、濃縮室は、上記の特定構造のものであり、一次濃縮室及び二次濃縮室ともに、合成樹脂で成型された内部がくり抜かれた枠体、ゴムパッキン又はガスケット様の枠体等の使用により形成される。濃縮室の内部空間には、膜同士の密着を防止し、流路の確保をするために、導電性又は非導電性水透過性体を配置してもよい。非導電性水透過性体としては、例えば、メッシュ状物、不織布、織布及びこれ以外の多孔質体などが挙げられ、このうちメッシュ状物が網目の選定が容易であると共に水透過性に優れ、濃縮室の差圧上昇を招き難い点で好ましい。
【0015】
該濃縮室の隔膜としては、一次濃縮室と二次濃縮室で異なる濃縮液が流れ、両者が互いに混合しないでイオン交換が行われるような機能を有するものであればよく、例えばイオン交換膜が挙げられる。イオン交換膜はカチオン交換膜又はアニオン交換膜を用いることができ、被処理液から除去したい成分がカチオンかアニオンかによって、イオン交換膜が選択される。
【0016】
一次濃縮室を経由する一次濃縮液循環系に供給される供給液としては、特に制限されず、脱イオン室に供給される被処理液から分岐して供給される液であっても、被処理液からの分岐ラインとは別途のラインから供給される液であってもよい。一次濃縮液は、常時循環運転される。従って、一次濃縮液を循環運転するために一次濃縮液貯蔵タンク及び循環ポンプを設置する。なお、一次濃縮液の濃度を適正に制御できるように、一次濃縮液循環配管には一次濃縮液の一部を系外に排出するブロー配管を設置することが好ましい。一次濃縮液の濃度は被処理液の10〜1000倍濃厚にするように濃縮室の厚さ、印加電流、濃縮液のLVなどが調節される。
【0017】
二次濃縮室を経由する二次濃縮液循環系は、一次濃縮液循環系とは独立する循環系であり、該二次濃縮液循環系に供給される供給液としては、特に制限されず、脱イオン室に供給される被処理液から分岐して供給される液であっても、被処理液からの分岐ラインとは別途のラインから供給される液であってもよい。二次濃縮液は常時循環運転される。従って、二次濃縮液を循環運転するために二次濃縮液貯蔵タンク及び循環ポンプを設置する。また、二次濃縮液の濃度を適正に制御できるように、二次濃縮液循環配管には二次濃縮液の一部を系外に排出するブロー配管を設置する。二次濃縮液の濃度は一次濃縮液の10〜1000倍濃厚にするように濃縮室のLV、厚さ、印加電流などが調節される。二次濃縮液の排出量は被処理液の0.0001〜1%であり、劇的に低減している。この場合、電気脱イオン装置の濃縮倍率は10〜10となる。
【0018】
一次濃縮室及び二次濃縮室は、イオン交換体が充填されていても、充填されていなくてもいずれでもよいが、一次濃縮室と二次濃縮室の少なくとも一方には、アニオン交換体又はカチオン交換体単床、又はアニオン交換体とカチオン交換体が1:9〜9:1の体積比で混合された混床が充填されていることが好ましい。これらのイオン交換体は、濃縮したい成分に応じて決定される。イオン交換体の形態としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、特開2002−306976号公報記載の多孔質イオン交換体が挙げられる。いずれも電気抵抗を低減し、濃縮倍率を高くすることができるという点で好ましい。
【0019】
一次濃縮室及び二次濃縮室の厚さとしては、共に、それぞれ0.5〜6mmが好ましく、特に1.0〜5.0mmが好ましい。0.5mm未満であると、濃縮室の構造を維持することが難しく、一次濃縮室と二次濃縮室のイオン交換膜が接触しやすくなり、濃縮室の性能を発揮できない。また通水差圧も上昇しやすい。一方、6mmを超えると電気抵抗が高くなり、消費電力が増大する。濃縮室のLVは、通常5〜200m/h程度である。
【0020】
被処理液としては、特に制限されないが、例えば半導体製造分野におけるウエハー洗浄排水、酸やアルカリ成分を含有する水、単成分からなる廃液、実験室などで使用される試薬などが挙げられる。ウエハー洗浄排水としては、NH、HF、HSO、TMAH、HPO、IPAなどが単成分又は複数混合して含有される水が挙げられる。電気脱イオン装置に掛ける直流電流の電流密度としては、定電流で0.1〜5A/dmが好ましい。
【0021】
次に、本発明の第1の実施の形態における電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を図1を参照して説明する。図1は脱カチオン液を得ることを目的とした電気脱カチオン装置のフロー図である。図1中、符号Dは脱カチオン室、C1は一次濃縮室、C2は二次濃縮室、Eは電極室、Aはアニオン交換膜、Cはカチオン交換膜をそれぞれ示す。なお、図1中、一次濃縮液及び二次濃縮液は被処理液から分岐して供給されるが、図面ではその記載を省略した(図2以降も同様である)。
【0022】
電気脱カチオン装置1aは、電気脱カチオン装置本体11a、2つの脱カチオン室Dに被処理液をそれぞれ流入させる被処理液流入配管12、2つの脱カチオン室Dの処理液を流出させる脱カチオン液流出配管13、4つの一次濃縮室C1を経由する一次濃縮液循環配管14、3つの二次濃縮室C2を経由する二次濃縮液循環配管15及び二次濃縮液循環配管15から分岐する二次濃縮液ブロー配管16を備える。
【0023】
電気脱カチオン装置本体11aは、陽極室E及び陰極室Eが両端に配置され、陽極側がアニオン交換膜Aで区画され陰極側がカチオン交換膜Cで区画されるカチオン交換体が充填された脱カチオン室D、Dと、脱カチオン室Dと脱カチオン室Dの間に濃縮室C1、C2を配置すると共に、陽極室側から陰極室側に向けて順に、濃縮室C1、C2、脱カチオン室D、濃縮室C1、C2、脱カチオン室D、濃縮室C1、C2及び一次濃縮室C1を配置したものである。
【0024】
濃縮室は、カチオン交換膜Cにより、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室C1とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室C2に分割され、一次濃縮室C1は脱カチオン室Dの陰極側に配置され、脱カチオン室Dと一次濃縮室C1の接合体と、二次濃縮室C2が交互に積層されたものである。なお、一次濃縮室C1にはカチオン交換体が充填されている。また、電極室Eに隣接する室を一次濃縮室C1とすることにより、不純物成分が電極室Eに拡散することがなく、該不純物成分による電極Eの腐食の問題を回避することができる。
【0025】
次に、電気脱カチオン装置1aの運転方法を説明する。カチオン性不純物を含む被処理液は、被処理液流入配管12を通って脱カチオン室Dに流入し、一対の電極Eに電圧を印加することで脱カチオン室Dから脱カチオン液を得ることができる。脱カチオン室Dで除去されたカチオン性不純物は、カチオン交換膜Cを透過し、一次濃縮室C1に流入する。一次濃縮室C1は、カチオン交換体が充填されているため、電気抵抗を下げ、印加電圧を低減することができるため、直流電源の運転コストを削減することができる。また、一次濃縮室C1は脱イオン機能を有するため、カチオン性不純物は、カチオン交換膜Cを透過し、二次濃縮室C2に流入する。このため、二次濃縮室C2からカチオン性不純物が濃縮倍率10〜10にまで高濃度に濃縮された濃縮液を得ることができる。すなわち、二次濃縮液ブロー配管16から系外へ排出される濃縮液は、被処理液の0.0001〜1体積%の量であり、劇的に低減することができる。また、濃縮倍率が高いため、アルカリを効率的に回収することができる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態における電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を図2を参照して説明する。図2は脱アニオン液を得ることを目的とした電気脱アニオン装置のフロー図である。図2において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。但し、図2中、符号Dは脱アニオン室をそれぞれ示す。
【0027】
電気脱アニオン装置1bは、電気脱アニオン装置本体11b、2つの脱アニオン室Dに被処理液をそれぞれ流入させる被処理液流入配管12、2つの脱アニオン室Dの処理液を流出させる脱アニオン液流出配管13、4つの一次濃縮室C1を経由する一次濃縮液循環配管14、3つの二次濃縮室C2を経由する二次濃縮液循環配管15及び二次濃縮液循環配管15から分岐する二次濃縮液ブロー配管16を備える。
【0028】
電気脱アニオン装置本体11bは、陽極室E及び陰極室Eが両端に配置され、陽極側がアニオン交換膜Aで区画され陰極側がカチオン交換膜Cで区画されるアニオン交換体が充填された脱アニオン室D、Dと、脱アニオン室Dと脱アニオン室Dの間に濃縮室C1、C2を配置すると共に、陰極室側から陽極室側に向けて順に、濃縮室C1、C2、脱カチオン室D、濃縮室C1、C2、脱カチオン室D、濃縮室C1、C2及び一次濃縮室C1を配置したものである。
【0029】
濃縮室は、アニオン交換膜Aにより、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室C1とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室C2に分割され、一次濃縮室C1は脱アニオン室Dの陽極側に配置され、脱アニオン室Dと一次濃縮室C1の接合体と、二次濃縮室C2が交互に積層されたものである。なお、一次濃縮室C1にはアニオン交換体が充填されている。
【0030】
次に、電気脱アニオン装置1bの運転方法を説明する。アニオン性不純物を含む被処理液は、被処理液流入配管12を通って脱アニオン室Dに流入し、一対の電極Eに電圧を印加することで脱アニオン室Dから脱アニオン液を得ることができる。脱アニオン室Dで除去されたアニオン性不純物は、アニオン交換膜Aを透過し、一次濃縮室C1に流入する。一次濃縮室C1は、アニオン交換体が充填されているため、電気抵抗を下げ、印加電圧を低減することができるため、直流電源の運転コストを削減することができる。また、一次濃縮室C1は脱イオン機能を有するため、アニオン性不純物は、アニオン交換膜Aを透過し、二次濃縮室C2に流入する。このため、二次濃縮室C2からアニオン性不純物が濃縮倍率10〜10にまで高濃度に濃縮された濃縮液を得ることができる。電気脱アニオン装置1bによれば、電気脱アニオン装置1aと同様の効果を奏する他、濃縮液から、酸を効率的に回収することができる。
【0031】
次に、本発明の第3の実施の形態における電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を図3を参照して説明する。図3は電気脱イオン装置のフロー図である。図3において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0032】
電気脱イオン装置1cは、電気脱イオン装置本体11c、2つの脱イオン室Dに被処理液をそれぞれ流入させる被処理液流入配管12、2つの脱イオン室Dの処理液を流出させる脱イオン液流出配管13、6つの一次濃縮室C1を経由する一次濃縮液循環配管14、3つの二次濃縮室C2を経由する二次濃縮液循環配管15及び二次濃縮液循環配管15から分岐する二次濃縮液ブロー配管16を備える。
【0033】
電気脱イオン装置本体11cは、陽極室E及び陰極室Eが両端に配置され、陽極側がアニオン交換膜Aで区画され陰極側がカチオン交換膜Cで区画されるカチオン交換体とアニオン交換体の混合イオン交換体が充填された脱イオン室D、Dと、脱イオン室Dと脱イオン室Dの間に濃縮室C1、C2、C1を配置すると共に、陰極室側から陽極室側に向けて順に、濃縮室C1、C2、C1、脱イオン室D、濃縮室C1、C2、C1、脱イオン室D、濃縮室C1、C2、C1を配置したものである。
【0034】
濃縮室は、アニオン交換膜A及びカチオン交換膜Cにより、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室C1、C1とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室C2に3分割され、一次濃縮室C1は脱イオン室Dの陽極側と陰極側の双方に配置され、脱イオン室Dと2つの一次濃縮室C1、C1の接合体と、二次濃縮室C2が交互に積層されたものである。なお、一次濃縮室C1にはカチオン交換体とアニオン交換体の混合イオン交換体が充填されているが、これに限定されず、脱塩室の陽極側に配置される一次濃縮室C1にはアニオン交換体単床を、脱塩室の陰極側に配置される一次濃縮室C1にはカチオン交換体床を充填してもよい。
【0035】
次に、電気脱アニオン装置1cの運転方法を説明する。イオン性不純物を含む被処理液は、被処理液流入配管12を通って脱イオン室Dに流入し、一対の電極Eに電圧を印加することで脱イオン室Dから脱イオン液を得ることができる。脱イオン室Dで除去されたイオン性不純物のうち、アニオン性不純物は、アニオン交換膜Aを透過し、陽極側に位置する一次濃縮室C1に流入する。一次濃縮室C1は、混合イオン交換体が充填されているため、電気抵抗を下げ、印加電圧を低減することができるため、直流電源の運転コストを削減することができる。また、一次濃縮室C1は脱イオン機能を有するため、アニオン性不純物は、アニオン交換膜Aを透過し、陽極側に位置する二次濃縮室C2に流入する。一方、脱イオン室Dで除去されたイオン性不純物のうち、カチオン性不純物は、カチオン交換膜Cを透過し、陰極側に位置する一次濃縮室C1に流入する。一次濃縮室C1は同様に、脱イオン機能を有するため、カチオン性不純物は、カチオン交換膜Cを透過し、陰極側に位置する二次濃縮室C2に流入する。このため、二次濃縮室C2からアニオン性不純物とカチオン性不純物が濃縮倍率10〜10にまで高濃度に濃縮された濃縮液を得ることができる。電気脱アニオン装置1cによれば、脱イオン室Dの両側に一次濃縮室C1が設置されるため、直接高濃度の濃縮液が脱イオン室Dに拡散することはなく、処理液の水質を低下させることはない。
【0036】
次に、本発明の第4の実施の形態における電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を図4及び図5を参照して説明する。図4は脱カチオン液を得ることを目的とした電気脱カチオン装置の他のフロー図であり、図5は図4におけるD2の構造を示す簡略図である。図4及び図5において、図1と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、電気脱カチオン装置1dにおいて、電気脱カチオン装置1aと異なる点は脱イオン室構造にある。なお、図4中、符号D2は他の脱カチオン室を示す。
【0037】
電気脱カチオン装置1dの脱塩室D2は、図5に示すように、一側のカチオン交換膜Cと他側のアニオン交換膜Aとその中間に位置する中間イオン交換膜18で2つの小脱イオン室d1、d2に区画され、一方の小脱イオン室d1の流出配管12aと他方の小脱イオン室d2の流入管12bが連接されたものである。小脱イオン室d1、d2に充填されるイオン交換体としては、特に制限されず、カチオン交換体、アニオン交換体、カチオン交換体とアニオン交換体の混合イオン交換体のいずれであってもよい。また、中間イオン交換膜もアニオン膜、カチオン膜のいずれであってもよく、また、例えば流入方向において二分し、一方をアニオン膜、他方をカチオン膜とする複式膜であってもよい。
【0038】
電気脱カチオン装置1dによれば、電気脱カチオン装置1aと同様の効果を奏する他、イオン交換体が充填された脱イオン室一つ当たりの濃縮室の数を半分にすることができ、電気抵抗を著しく低減することができる。また、濃縮室の数が少なくなったことによって、濃縮室を流れる濃縮液の濃度をより濃厚とすることができる。また、カチオンとアニオンの混合成分の処理性能が向上する。特に、酸又はアルカリなどのアニオン又はカチオン成分のどちらか一方が多く含まれている混合成分を処理する場合、小脱塩室d1に除去したい成分を取れるイオン交換体を充填し、小脱塩室d2を混床にすることで処理性能が向上する。そして、アニオンやカチオンのうち除去しにくい成分を選択的に除去できる。
【0039】
次に、本発明の第5の実施の形態における電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を図6及び図5を参照して説明する。図6は脱アニオン液を得ることを目的とした電気脱カアニオン装置の他のフロー図である。図6及び図5において、図2と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、電気脱カチオン装置1eにおいて、電気脱カチオン装置1bと異なる点は脱イオン室構造にある。なお、図6中、符号D2は他の脱アニオン室を示し、図5に示す脱塩構造を有するものである。
【0040】
電気脱アニオン装置1eの脱塩室D2は、図5に示すように、電気脱カチオン装置1dの脱塩室構造と同じである。電気脱アニオン装置1eによれば、電気脱カチオン装置1bと同様の効果を奏する他、脱塩室を分割した効果については、電気脱カチオン装置1dと同様の効果を奏する。
【0041】
次に、本発明の第6の実施の形態における電気脱イオン装置及び電気脱イオン装置の運転方法を図7及び図5を参照して説明する。図7は脱イオン液を得ることを目的とした電気脱イオン装置の他のフロー図である。図7及び図5において、図3と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、電気脱カチオン装置1fにおいて、電気脱カチオン装置1cと異なる点は脱イオン室構造にある。なお、図7中、符号D2は他の脱イオン室を示し、図5に示す脱塩構造を有するものである。
【0042】
電気脱イオン装置1fの脱塩室D2は、図5に示すように、電気脱カチオン装置1dの脱塩室構造と同じである。電気脱イオン装置1fによれば、電気脱カチオン装置1cと同様の効果を奏する他、脱塩室を分割した効果については、電気脱カチオン装置1dと同様の効果を奏する。
【0043】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0044】
カチオン成分の除去性能を調べるために、図1の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件において、6000時間運転した。被処理液の一部はそのまま濃縮液及び電極液として使用した。一次濃縮液及び二次濃縮液はそれぞれ5Lのタンクを用いて循環運転した。また、16.8ml/週で二次濃縮液を排液し、同量の被処理液を二次濃縮室に常に供給した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液のNa濃度並びに処理液中の水質をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
(電気脱イオン装置)
・脱イオン室:幅100mm、高さ300mm、厚さ8mm、4セル
・一次濃縮室:幅100mm、高さ300mm、厚さ3mm、6セル
・二次濃縮室:幅100mm、高さ300mm、厚さ3mm、5セル
・脱イオン室及び一次濃縮室充填イオン交換樹脂:カチオン交換樹脂IR120B(ロームアンドハース社製)
・イオン交換膜:カチオン交換膜(ネオセプタC66−10F)、アニオン交換膜(ネオセプタAHA)(ともにアストム社製)
・被処理液:超純水にNaOHを添加してNaを0.1mgNa/Lの濃度で含有させた水
・処理液量:100L/h(SV=104h−1
・一次濃縮液及び二次濃縮液の循環液流量:30L/h(LV=16〜20m/h)
・電流密度:0.2A/dm
【実施例2】
【0046】
図1の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。但し、図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、カチオン成分を除去する目的で使用したものであり、脱塩室及び一次濃縮室には、カチオン交換樹脂を充填して使用した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液のNa濃度並びに処理液中の水質をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0047】
図1の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図4の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記運転条件とした以外は実施例1と同様の方法で行った。但し、図4の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、カチオン成分を除去する目的で使用したものであり、2つの小脱塩室及び一次濃縮室には、カチオン交換樹脂を充填して使用した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液のNa濃度並びに処理液中の水質をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
(電気脱イオン装置)
・小脱イオン室d1の厚さ:8mm
・小脱イオン室d2の厚さ:4mm
【実施例4】
【0048】
図1の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図7の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。但し、図7の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、カチオン成分を除去する目的で使用したものであり、2つの小脱塩室及び一次濃縮室には、カチオン交換樹脂を充填して使用した。また、2つの小脱塩室の厚さは実施例3に示したものである。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液のNa濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
図1の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図8の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件とした以外は実施例1と同様の方法で行った。6000時間後の濃縮液及び処理液のNa濃度並びに処理液中の水質をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。なお、表1中、濃縮液は一次濃縮液で示した。
【0050】
(図8の電気脱イオン装置)
図8の電気脱イオン装置1gは、特開2001−239270号公報の従来技術欄に記載された装置であって、陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜を交互に配し、両膜の間に脱塩室と濃縮室を交互に形成したものである。但し、比較例1では、カチオン成分を除去する目的で使用したものであり、脱塩室及び濃縮室には、カチオン交換樹脂を充填して使用した。
・濃縮室:幅100mm、高さ300mm、厚さ3mm
【0051】
比較例2
図4の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図9の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件とした以外は実施例3と同様の方法で行った。6000時間後の濃縮液及び処理液のNa濃度並びに処理液中の水質をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。なお、表1中、濃縮液は一次濃縮液で示した。
【0052】
(図9の電気脱イオン装置)
図9の電気脱イオン装置1hは、特開2001−239270号公報に記載された装置であって、陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜を交互に配し、両膜の間に脱塩室と濃縮室を交互に形成したものであり、脱塩室は図5に示す構造をとるものである。但し、比較例2では、カチオン成分を除去する目的で使用したものであり、脱塩室及び濃縮室には、カチオン交換樹脂を充填して使用した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果より、濃縮室が2又は3室に分割された実施例1〜4は濃縮倍率が約10倍でも、16MΩ・cm以上の処理水質が出るのに対し、濃縮室が1室の比較例1及び2では濃縮倍率が10倍で処理水質は悪化した。これは、濃縮成分であるカチオン性不純物が濃縮室から脱イオン室へイオン交換膜を介して移動して処理水質を悪化させたものと思われる。
【実施例5】
【0055】
アニオン成分の除去性能を調べるために、図2の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液中のCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
【0056】
(電気脱イオン装置)
・脱イオン室及び一次濃縮室充填イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂IRA402BL(ロームアンドハース社製)
・被処理液:超純水にHClを添加してClを0.1mgCl/Lの濃度で含有させた水
【実施例6】
【0057】
図2の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用した以外は実施例5と同様の方法で行った。但し、図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、アニオン成分を除去する目的で使用したものであり、脱塩室及び一次濃縮室には、アニオン交換樹脂を充填して使用した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液中のCl濃度並びに処理液中の水質をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
【実施例7】
【0058】
図2の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図6の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記運転条件とした以外は実施例5と同様の方法で行った。但し、図6の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、アニオン成分を除去する目的で使用したものであり、2つの小脱塩室及び一次濃縮室には、アニオン交換樹脂を充填して使用した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液中のCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表2示す。
(電気脱イオン装置)
・小脱イオン室d1の厚さ:8mm
・小脱イオン室d2の厚さ:4mm
【実施例8】
【0059】
図2の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図7の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用した以外は実施例5と同様の方法で行った。但し、図7の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、アニオン成分を除去する目的で使用したものであり、2つの小脱塩室及び一次濃縮室には、アニオン交換樹脂を充填して使用した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液中のCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
【0060】
比較例3
図2の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図8の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件とした以外は実施例5と同様の方法で行った。6000時間後の濃縮液及び処理液中のCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。なお、表2中、濃縮液は一次濃縮液で示した。
【0061】
比較例4
図6の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図9の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件とした以外は実施例7と同様の方法で行った。6000時間後の濃縮液及び処理液中のCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。なお、表2中、濃縮液は一次濃縮液で示した。
【0062】
【表2】

【0063】
表2の結果より、濃縮室が2又は3室に分割された実施例5〜8は濃縮倍率が約10倍でも、16MΩ・cm以上の処理水質が出るのに対し、濃縮室が1室の比較例3及び4では濃縮倍率が10倍で処理水質は悪化した。これは、濃縮成分であるアニオン性不純物が濃縮室から脱イオン室へイオン交換膜を介して移動して処理水質を悪化させたものと思われる。
【実施例9】
【0064】
カチオン成分とアニオン成分の混合成分の除去性能を調べるために、図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置を使用し、下記装置仕様及び運転条件とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液中のNa及びCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。
【0065】
(電気脱イオン装置)
・脱イオン室及び一次濃縮室充填イオン交換樹脂:カチオン交換樹脂IR120Bとアニオン交換樹脂IRA402BL(共にロームアンドハース社製)の体積比1:1の混合イオン交換樹脂
・被処理液:超純水にNaOH及びHClを添加してNaとClをそれぞれ0.1mgNa/Lと0.1mgCl/Lの濃度となるように含有させた水
【実施例10】
【0066】
図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図7の装置と同様の構成の電気脱イオン装置を使用したこと以外は、実施例9と同様の方法で行った。但し、図7の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置は、アニオン成分及びカチオン成分を共に除去する目的で使用したものであり、2つの小脱塩室及び一次濃縮室には、上記の混合イオン交換樹脂を充填して使用した。6000時間後の一次濃縮液、二次濃縮液及び処理液中のNaとCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。ただし、脱イオン室の厚さはそれぞれ下記の通りである。
・小脱イオン室d1の厚さ:8mm
・小脱イオン室d2の厚さ:4mm
【0067】
比較例5
図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図8の装置と同様の構成の電気脱イオン装置を使用したこと以外は実施例9と同様の方法で行った。6000時間後の濃縮液及び処理液中のNaとCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。なお、表3中、濃縮液は一次濃縮液で示した。
【0068】
比較例6
図3の装置と同様の構成からなる電気脱イオン装置に代えて、図9の装置と同様の構成の電気脱イオン装置を使用したこと以外は実施例9と同様の方法で行った。6000時間後の濃縮液及び処理液中のNaとCl濃度並びに処理液の水質をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。なお、表3中、濃縮液は一次濃縮液で示した。
【0069】
【表3】

【0070】
表3の結果より、濃縮室が3室に分割された実施例9〜10は濃縮倍率が約10倍でも、16MΩ・cm以上の処理水質が出るのに対し、濃縮室が1室の比較例5及び6では濃縮倍率が10倍で処理水質は悪化した。これは、濃縮成分であるアニオン性不純物及びカチオン性不純物が濃縮室から脱イオン室へイオン交換膜を介して移動して処理水質を悪化させたものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】脱カチオン液を得るための電気脱カチオン装置のフロー図である。
【図2】脱アニオン液を得るための電気脱カチオン装置のフロー図である。
【図3】脱イオン液を得るための電気脱カチオン装置のフロー図である。
【図4】図1の電気脱カチオン装置の脱塩室構造が異なる他のフロー図である。
【図5】図4の電気脱カチオン装置の脱塩室の構造を示す簡略図である。
【図6】図2の電気脱カチオン装置の脱塩室構造が異なる他のフロー図である。
【図7】図3の電気脱イオン装置の脱塩室構造が異なる他のフロー図である。
【図8】従来の電気脱イオン装置のフロー図である。
【図9】従来の電気脱イオン装置の脱塩室構造が異なる他のフロー図である。
【符号の説明】
【0072】
1a〜1h 電気脱イオン装置
11a〜11h 電気脱イオン装置本体
12 被処理液流入管
13 処理液流出管
14 一次濃縮液循環系
15 二次濃縮液循環系
16 二次濃縮液ブロー配管
C1 一次濃縮室
C2 二次濃縮室
D 脱塩室
C カチオン交換膜
A アニオン交換膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱イオン室、濃縮室及び電極室を有すると共に、一対の電極に電圧を印加することで脱イオン室から脱イオン液を得る電気脱イオン装置において、
該濃縮室は、隔膜により2室以上に分割され、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室により構成され、該一次濃縮室は脱イオン室の陰極側又は陽極側の一方又は両方に配置され、
該脱イオン室と該一次濃縮室の接合体と、該二次濃縮室は交互に積層され、
該一次濃縮室を経由する一次濃縮液循環系と、該二次濃縮室を経由する二次濃縮液循環系の2つの濃縮液循環系を備えることを特徴とする電気脱イオン装置。
【請求項2】
前記脱イオン室は、一側のカチオン交換膜と他側のアニオン交換膜とその中間に位置する中間イオン交換膜の隔膜で2つの小脱イオン室に区画され、一方の小脱イオン室の流出配管と他方の小脱イオン室の流入管が連接されたものであることを特徴とする請求項1記載の電気脱イオン装置。
【請求項3】
前記濃縮室の隔膜は、カチオン交換膜又はアニオン交換膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の電気脱イオン装置。
【請求項4】
前記一次濃縮室と前記二次濃縮室の少なくとも一方には、アニオン交換体又はカチオン交換体単床、又はアニオン交換体とカチオン交換体が1:9〜9:1の体積比で混合された混床が充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電気脱イオン装置。
【請求項5】
前記中間イオン交換膜は、カチオン交換膜あるいはアニオン交換膜の単一膜、又はアニオン交換膜及びカチオン交換膜の両方を配置した複式膜であることを特徴とする請求項2記載の電気脱イオン装置。
【請求項6】
脱イオン室、濃縮室及び電極室を有し、
該濃縮室は、隔膜により2室以上に分割され、希薄な濃縮液が供給される一次濃縮室とそれよりも濃厚な濃縮液が供給される二次濃縮室により構成され、該一次濃縮室は脱イオン室の陰極側又は陽極側の一方又は両方に配置され、
該脱イオン室と該一次濃縮室の接合体と、該二次濃縮室は交互に積層された電気脱イオン装置において、
被処理液を脱イオン室に流入させ、一対の電極に電圧を印加することで脱イオン室から脱イオン液を得、二次濃縮室から被処理液の0.0001〜1体積%の濃縮液を循環運転して系外へ排出することを特徴とする電気脱イオン装置の運転方法。
【請求項7】
前記脱イオン室は、一側のカチオン交換膜と他側のアニオン交換膜とその中間に位置する中間イオン交換膜の隔膜で2つの小脱イオン室に区画され、一方の小脱イオン室の流出配管と他方の小脱イオン室の流入管が連接されたものであることを特徴とする請求項6記載の電気脱イオン装置の運転方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−175350(P2006−175350A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371029(P2004−371029)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】